説明

プレス成形装置及びプレス成形方法

【課題】バリの除去を行なう必要なく成形材料を出隅形状に成形することができるプレス成形装置を提供する。
【解決手段】上型2を分割して形成される上型半体7a,7bと、上型半体7a,7bを当接離間させる横シリンダー8と、横シリンダー8と上型半体7a,7bを取り付けた上型保持体9を上下動させる上シリンダー10を備える。また各上型半体7a,7bと下型1とが相互に接触し合う、上型半体7a,7bの成形面4に対して垂直で且つ上型半体7a,7bの横移動方向に対して斜めに交差するスライド面11,12を、上型半体7a,7bと下型1に設ける。そして上型半体7a,7bを合体して上型2を形成した状態で、下型1に上型2を型締めして成形する。また各上型半体7a,7bを離間する横方向に移動させることによって、スライド面11に対するスライド面12のスライドで、上型半体7a,7bを成形面4と垂直な斜め上方に移動させて型開きする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系成形材料などの成形材料で、建物の壁等において端部の出隅部に用いられる出隅化粧部材などを成形するために用いられる、プレス成形装置及びプレス成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント系成形材料3によって出隅化粧部材のような断面L字型の成形品6を作製するにあたっては、断面L字形の出隅形状に成形材料3を配置し、この出隅形状の成形材料3の出隅の各外面に凹凸模様をプレス成形した後、この成形材料3を養生・硬化することによって行なわれている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
図8は凹凸模様をプレス成形する方法の一例を示すものであり、まず図8(a)のように上面が断面三角形状の出隅形状に形成される下型1の上にセメント系などの成形材料3を押出して、成形材料3を断面L字形の出隅形状に賦型する。次に、成形面4に模様成形用凹凸21を設けた上型2を用い、下型1に上型2を型締めして、図8(b)のように出隅形状の成形材料3の各外面に上型2を押し当てることによって、図8(c)のように成形材料3の各外面に凹凸模様22をプレス成形する。この後に、図8(d)のように上型2を型開きして成形材料3から離型させることによって、断面L字型の各外面に凹凸模様22を形成した成形品6を得ることができるものである。
【0004】
ここで、上記のように上型2でプレス成形するにあたって、図9のように上型2を単に鉛直上下方向に移動させてプレス成形や離型を行なう場合には、未硬化の成形材料3からなる成形品6に成形される凹凸模様22から模様成形用凹凸21が抜ける抜け角θを確保する必要があるために、成形品6に形成することができる凹凸模様22の形状には制約があり、意匠性に限界がある。
【0005】
そこで図8のものでは、成形面4の入隅形状の頂部を境にして上型2を左右に分割して一対の上型半体7a,7bを形成し、図8(b)のように各上型半体7a,7bを成形材料3の各外面に対して垂直な方向で移動させてプレス成形し、また図8(d)のように各上型半体7a,7bを成形材料3の各外面に対して垂直な方向で移動させて離型するようにしている。このようにすることによって、上型2の模様成形用凹凸21に精度良く適合した凹凸模様22を成形材料3に形成することができると共に、成形された凹凸模様22がくずれるようなことなく、上型2を成形材料3から離型することができるものである。
【特許文献1】特開平3−178404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のように上型2として二つの上型半体7a,7bに分割したものを用いて成形材料3の各外面をプレス成形するにあたっては、各上型半体7a,7bの対向する端部が離れた状態から突き合わされるようになりつつプレス成形が行なわれるが、このように各上型半体7a,7bの端部が突き合わされる際に、出隅の頂部の部分の成形材料3が押し出されて、図8(c)のように上型半体7a,7bが当接し合う端部間にバリ23が生じることになる。従って、このバリ23を除去する仕上げ工程が必要になり、生産性の問題が生じるものであった。このバリ23の発生は、特にセメント系の成形材料3を成形する際に顕著であり、生産性の向上を図るうえで解決が望まれているものであった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、バリの除去を行なう必要なく成形材料を出隅形状に成形することができるプレス成形装置及びプレス成形方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係るプレス成形装置は、下型1に上型2を型締めして、下型1の上の成形材料3を下面の成形面4が入隅形状に形成される上型2でプレスすることによって、出隅形状の成形品6を成形し、プレス成形の後に上型2を下型1から型開きするようにしたプレス成形装置において、成形面4の入隅形状の頂部を境にして上型2を左右に分割して形成される一対の上型半体7a,7bと、各上型半体7a,7bを当接離間させるように横方向に往復移動させる一対の横シリンダー8と、一対の横シリンダー8を固定的に取り付けると共に一対の上型半体7a,7bを当接離間する方向にスライド自在に取り付けた上型保持体9と、上型保持体9を上下方向に往復移動させる上シリンダー10とを備え、下型1に上型2を型締めした状態で上型2の各上型半体7a,7bと下型1とが相互に接触し合う、上型半体7a,7bの成形面4に対して垂直で且つ横シリンダー8による上型半体7a,7bの移動方向に対して斜めに交差するスライド面11,12を、各上型半体7a,7bと下型1にそれぞれ設け、一対の上型半体7a,7bを当接させて合体して上型2を形成した状態で、上シリンダー10によって上型保持体9と共に上型2を下動させて下型1に上型2を型締めするようにし、横シリンダー8で一対の各上型半体7a,7bを離間する横方向に移動させることによって、下型1のスライド面11に対する各上型半体7a,7bのスライド面12のスライドで、各上型半体7a,7bを成形面4と垂直な斜め上方に移動させて型開きするようにして成ることを特徴とするものである。
【0009】
また請求項2の発明は、請求項1において、上型2の下方に配置され、上型2の直下位置と、上型2の側方位置との間で下型1を往復移動自在にした下型搬送装置13と、下型搬送装置13によって上型2の直下に移動された下型1を下型搬送装置13の上から上昇させて保持する下シリンダー14とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0010】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、上型2を振動させる振動装置15を備えて成ることを特徴とするものである。
【0011】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、上型2に成形面4において開口する多数の微細孔を設け、型締めの際に、微細孔からエアを吸引するエア吸引手段を備えて成ることを特徴とするものである。
【0012】
また請求項5の発明は、請求項4において、型開きの際に、微細孔からエアを吐出させるエア吹き手段を備えて成ることを特徴とするものである。
【0013】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、下型搬送装置13で下型1が上型2の直下位置と側方位置の間で往復移動される際に、下型1の移動によって上型2の成形面4に離型剤を塗布する離型剤塗布装置16を、下型1に設けて成ることを特徴とするものである。
【0014】
また本発明の請求項7に係るプレス成形方法は、下型1の上に成形材料3を供給した後、この下型1を上型2の直下の位置に搬送し、次に、一対の上型半体7a,7bを当接させて合体することによって下面の成形面4が入隅形状に形成される上型2を下動させ、下型1の上に上型2を型締めすると共に、上型2の成形面4に設けた多数の微細孔からエアを吸引しながら、下型1の上の成形材料3を上型2でプレスすることによって、出隅形状の成形品6を成形し、次に上型2の成形面4に設けた多数の微細孔からエアを吹き出させながら,一対の各上型半体7a,7bを離間する横方向に移動させることによって、各上型半体7a,7bと下型1にそれぞれ設けた、上型半体7a,7bの成形面4に対して垂直で上型半体7a,7bの横移動方向に対して斜めに交差するスライド面11,12同士のスライドで、各上型半体7a,7bを成形面4と垂直な斜め上方に移動させて型開きし、この後に、下型1を上型2の側方へ搬送して、下型1から成形品6を取り出すことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一対の上型半体7a,7bを当接・合体させて上型2を形成した状態で、上型2を下型1に型締めして、下型1の成形材料3をプレス成形するようにしているので、一対の上型半体7a,7bの間に成形材料3が押し出されてバリが発生するようなことなく、成形を行なうことができるものである。また、下型1に上型2を型締めした状態で上型2の各上型半体7a,7bと下型1とが相互に接触し合う、上型半体7a,7bの成形面4に対して垂直で且つ上型半体7a,7bの横移動方向に対して斜めに交差するスライド面11,12を、各上型半体7a,7bと下型1にそれぞれ設け、各上型半体7a,7bを離間する横方向に移動させることによって、下型1のスライド面11に対する各上型半体7a,7bのスライド面12のスライドで、各上型半体7a,7bを成形面4と垂直な斜め上方に移動させて型開きするようにしたので、各上型半体7a,7bを成形面4で成形品6に成形した凹凸模様がくずれるようなことなく、上型2を成形品6から離型させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
図6は本発明のプレス成形装置の全体を示すものであって、基台25が工場等の床に設置してあり、この基台25は成形エリアA1から供給・取り出しエリアA2へと一直線状に配置してある。この基台25の上面には多数本の平行なコロ26を基台25の長手方向の全長に配列して形成されるコロコンベアからなる下型搬送装置13が設けてある。この下型搬送装置13において、成形エリアA1では長手方向(搬送方向)の複数箇所においてコロ26を設けない部分が形成してあり、このコロ26を設けない複数の各箇所において、下シリンダー14が基台25に固定して設けてある。
【0018】
下シリンダー14は図1〜図4に示すように下型搬送装置13の下側に設けてあって、上方に突出するシリンダーロッド28を備えて形成されるものであり、エアーや油圧等によってシリンダーロッド28を上下動させることができるようにしてある。このシリンダーロッド28の上端には受けプレート29が取り付けてあり、シリンダーロッド28の上下動に従って、コロ26を設けていない箇所を通して受けプレート29をコロ26の上面より上側位置と下側位置の間で上昇下降させることができるようにしてある。受けプレート29の下面にはガイドシャフト30が下方へ突設してあり、基台25に設けたガイドスリーブ31にこのガイドシャフト30を上下スライド自在に挿着することによって、傾きなく安定した状態にガイドして受けプレート29を上昇下降させるようにしてある。
【0019】
この各下シリンダー14を設けた複数箇所において、基台25の上方に架構体33が設けてある。架構体33は下型搬送装置13を幅方向(搬送方向と垂直な方向)に横切るように配置されるものであり、基台25に立設した支柱34の上端に取り付けてある。この複数の各架構体33の中央部には上シリンダー10が取り付けてある。上シリンダー10は下方に突出するシリンダーロッド36を備えて形成されるものであり、エアーや油圧等によってシリンダーロッド36を上下動させることができるようにしてある。
【0020】
このシリンダーロッド36の下端には上型保持体9が取り付けてある。上型保持体9は、下型搬送装置13を幅方向(搬送方向と垂直な方向)に横切るように配置される水平板37と、水平板37の両端部に垂下して設けられる側板38とを具備して断面形状を下向き開口のコ字型に形成されるものである。水平板37の上面には、シリンダーロッド36の結合箇所の両側において、ガイドシャフト39が上方へ突設してあり、架構体33に設けたガイドスリーブ40にこのガイドシャフト39を上下スライド自在に挿着することによって、傾きなく安定した状態でガイドして上型保持体9を上昇下降させるようにしてある。
【0021】
各上型保持体9の水平板37の下面には下型搬送装置13の幅方向(搬送方向と垂直な方向)に直線状に配置されるガイドレール42が設けてあり、このガイドレール42に吊り下げた状態で一対の上型保持具43a,43bがスライダー46によってスライド自在に取り付けてある。各上型保持具43a,43bは対向する内側面と下面とで開口する上型固定凹所44を設けて横L字型に形成されるものである。そして複数の各上型保持体9に設けた一方の上型保持具43a間に渡るように上型半体7aを配置すると共に各上型保持具43aの上型固定凹所44に嵌め込んで固定することによって、成形エリアA1において下型搬送装置13と平行に上型半体7aが取り付けてあり、また複数の各上型保持体9に設けた他方の上型保持具43b間に渡るように上型半体7bを配置すると共に各上型保持具43bの上型固定凹所44に嵌め込んで固定することによって、成形エリアA1において下型搬送装置13と平行に、且つ上記上型半体7aと平行に、上型半体7bが取り付けてある。
【0022】
また上型保持体9の左右の各側板38の外面にそれぞれ横シリンダー8が取り付けてある。横シリンダー8は側板38を通して内方に突出するシリンダーロッド45を備えて形成されるものであり、エアーや油圧等によってシリンダーロッド45を水平方向に進退作動させることができるようにしてある。そして一方の側板38に設けた横シリンダー8のシリンダーロッド43の先端は一方の上型保持具43aの外側の側面に、他方の側板38に設けた横シリンダー8のシリンダーロッド45の先端は他方の上型保持具43bの外側の側面にそれぞれ結合してあり、各上型保持具43a,43bは各横シリンダー8によって近接離間する横方向にスライドさせることができるようにしてある。このように各上型保持具43a,43bを近接離間させることによって、各上型保持具43a,43bに取り付けた一対の上型半体7a,7bを横方向に移動させて近接離間させることができるものである。
【0023】
上記のように一対の上型半体7a,7bを相互に近接させ、その対向する内側面同士を当接させて合体させることによって、下型搬送装置13に沿って長い形状の上型2が形成されるものである。また各上型半体7a,7bの下面が成形面4となるものであり、この成形面4には凹凸模様を成形するための模様成形用凹凸(図8の符号21参照)が形成してある。そして各上型半体7a,7bの成形面4はそれぞれ外方へ向けて同じ角度(具体的には45°)で下り傾斜する傾斜面に形成してあり、各上型半体7a,7bを合体させた上型2の下面は、この傾斜する一対の成形面4によって下方へ断面逆V字型に開口する入隅形状に形成されるものである。従って、各上型半体7a,7bは、成形面4の入隅形状の頂部を境にして上型2を左右に分割した形態に形成されることになるものであり、各上型半体7a,7bの成形面4の外側端部には成形材料3の流れ止めのための凸部48が突設してある。また各上型半体7a,7bにおいて、この凸部48の外側に、外方へ向けて斜め上方に傾斜する傾斜面としてスライド面12が形成してある。各上型半体7a,7bにおいてスライド面12は、それぞれの成形面4に対して垂直な面になるように、その傾斜角度(具体的には45°)を設定してあり、従って各上型半体7a,7bの下面は成形面4とスライド面12とで断面V字型になっている。
【0024】
下型1は上型2とほぼ同じ長さに形成されるものであり、その上面の幅方向の中央部に成形材料受け凸部49が突設してある。この成形材料受け凸部49は上型2の下面に形成される入隅形状に対応する出隅形状に形成してあり、成形材料受け凸部49の両側面はそれぞれ各上型半体7a,7bの成形面4とほぼ平行な面に形成してある。また下型1の上面には成形材料受け凸部49の外側において、上型2の両側部に設けた上記のスライド面12の直下位置に、外方へ向けて斜め上方に傾斜する傾斜面としてスライド面11が形成してある。このスライド面11は各上型半体7a,7bの成形面4に対して垂直な面として形成されるものであり、従って上型2の各上型半体7a,7bのスライド面12と平行な面になっている。
【0025】
次に、上記のように形成される本発明のプレス成形装置を用いて、出隅化粧部材のような断面L字型の成形品6を成形する方法を説明する。
【0026】
成形材料3としては、例えば、セメントを主原料とし、これに、シリカ、補強繊維、その他の材料(例えば、増粘剤、軽量化材、粉体等)を配合してドライブレンドし、これに水(セメント100質量部に対して100〜150質量部程度が好ましい)を加えて混練機で混合したものを用いることができる。なかでも本発明では特に、各材料の配合を調整するなどして、弾性限界応力を0.001〜0.2MPaにした成形材料3を用いるのが好ましい。これは、プレス成形の際に成形材料3の流動性を高く得ることができ、上型2の成形面4に設けた模様成形用凹凸の隅々に成形材料3を充填させることができるからである。成形材料3の弾性限界応力が0.2MPaを超えている場合には、未充填部分が残ってしまい、模様成形用凹凸に適合した凹凸模様を成形材料3に精度良く形成することができなくなる。なお、成形材料3の弾性限界応力を0.001MPa未満にするのは困難であるので、0.001MPaが実質的な下限となる。
【0027】
ここで、セメントとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメントなど公知のセメントを使用することができる。また、セメントと混合するシリカとしては、比表面積の大きい粉末シリカを用いるのが、出隅役物の靱性向上の面で、好ましく、具体的には、比表面積が3000〜200000cm/gのものを用いるのが好ましい。また、セメント100質量部に対して、シリカは20〜120質量部の割合で含有されていることが好ましく、20質量部未満であると、作製される出隅化粧部材の強度が低下し、逆に、120質量部を超えると、プレス成形に先立つ押出成形が困難となるおそれがある。また、補強繊維としては、L材、N材、ラミー、リンターなどのパルプ繊維、ビニロン、ポリプロピレン等を用いることができる。補強繊維の含有量はセメント100質量部に対して5〜25質量部であることが好ましく、5質量部未満であると、出隅役物の強度が不十分となり、逆に、25質量部を超えると、成形が困難となるおそれがある。また、その他の混入物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤や、樹脂系の中空体、シラスバルーン、パーライト等の軽量化材や、フライアッシュ等の粉体等を必要に応じて含有させることができる。
【0028】
そしてまず、この成形材料3を混練押し出し機から表面がフラットなL型の断面形状に押し出す。このとき成形材料3をトレー51の上に押し出すことによって、シート状の成形材料3をトレー51の上に載置する。トレー51は下型1の成形材料受け凸部49の出隅形状と同じ断面の逆V字型に形成されている。尚、混練押し出し機から成形材料3をシート状に押し出すようにしてもよく、この場合には、シート状の成形材料3はトレー51の上で屈曲してL型の出隅形状になる。
【0029】
この際には、下型2は下型搬送装置13の供給・取り出しエリアA2にあり、この下型2の成形材料受け凸部49の上にトレー51と共に成形材料3を載せて供給する。次に、下型搬送装置13上を供給・取り出しエリアA2から成形エリアA1へと下型1を搬送する。このとき、下シリンダー14のシリンダーロッド28は下動した状態にあり、受けプレート29は下型搬送装置13の上面より下側に位置しており、型搬送具13上を供給・取り出しエリアA2から成形エリアA1へと下型1を搬送するのに支障にならないようにしてある。またこのように下型1を成形エリアA1に搬送するときには、図1に示すように、上シリンダー10のシリンダーロッド36は矢印のように上動した状態にあり、上型保持体9と共に上型半体7a,7bは所定の高さに引き上げられており、また各横シリンダー8のシリンダーロッド45は矢印のように前進して突出した状態にあり、各上型半体7a,7bを近接させて当接させることによって、上型半体7a,7bを合体させて上型2が形成されている。ここで、上型半体7a,7bの各対向面には、一方にパッキン56を突出させて取り付けてあると共に、他方にパッキン受け凹所57が凹設してあり、上型半体7a,7bを当接させた際に、パッキン受け凹所57にパッキン56が嵌合し、上型半体7a,7bを気密性高く密着させることができるようにしてある。
【0030】
そして成形開始ボタンを押してオンにすると、まず図1のように下シリンダー14が作動して矢印のように受けプレート29が上動され、下型搬送装置13の上面より上に突出する。従って、下型搬送装置13の上の下型1は受けプレート29で下型搬送装置13の上方へ持ち上げられて支持される。次に、図2に示すように、上シリンダー10が矢印のように作動して上型保持体9が下動し、上型保持体9と共に上型2が押し下げられて、下型1の上に上型2が型締めされる。このように型締めすることによって、下型1の上の成形材料3が上型2によってプレスされ、成形材料3の出隅の各面が上型2の上型半体7a,7bの各成形面4によって成形されるものであり、各成形面4の模様成形用凹凸で成形材料3に凹凸模様を成形することができるものである(図8(c)を参照)。このとき、上型2の下降速度が最初は速く、上型2が成形材料3に接する程度の途中から遅くなるように、上シリンダー10の作動を制御するのが好ましい。またこのプレス成形の際には、下型1は受けプレート29で持ち上げた状態に支持されているので、下型搬送装置13に成形の際の圧力が作用して下型搬送装置13が破損されることを防ぐことができるものである。尚、このように下型1の上に上型2を型締めした状態では、上型2の各上型半体7a,7bのスライド面12と、下型1のスライド面11とは当接した状態にある。
【0031】
また、上型2の各上型半体7a,7bにはそれぞれ振動装置15が設けてあり、振動装置15にエアを供給して作動させることによって、上型2に振動を与えることができるようにしてある。この振動は3500rpm程度が好ましい。そして下型1の成形材料3を上型2でプレス成形する際に、このように上型2を振動させることによって、上型2の上型半体7a,7bの各成形面4に設けた模様成形用凹凸の隅々に成形材料3を充填させることができ、成形性を高めることができるものである。振動は、上型2によるプレス成形の開始から終了までの間、継続することができるが、上型2を下降させる際に振動を開始するようにしてもよい。
【0032】
また、上型2の各上型半体7a,7bはそれぞれ内部がポーラスな樹脂や金属型などで形成してあって、各上型半体7a,7bの成形面4に開口する微細孔が形成してあり、この微細孔には各上型半体7a,7b内を通してエア配管が接続してあると共に、エア配管には三方弁などの切り替え弁を介して、真空ポンプなどで形成されるエア吸引手段と、エアポンプなどで形成されるエア吹き手段が接続してある(いずれも図示は省略)。そして下型1の成形材料3を上型2でプレス成形する際に、エア吸引手段の真空ポンプを作動させると共に切り替え弁を切替えて、微細孔からエアを吸引するようにしてある。このように成形面4に開口する微細孔からエアを吸引することによって、上型半体7a,7bの各成形面4に設けた模様成形用凹凸の隅々に成形材料3を充填させることができ、成形性を高めることができるものである。このエア吸引は、成形材料3の性状にもよるが、減圧度を−0.09MPa程度に設定して行なうのが好ましい。また上記のようにパッキン受け凹所57にパッキン56が嵌合して上型半体7a,7b間の気密性が高く保持されているので、エア吸引による成形性の向上の効果を高く得ることができるものである。
【0033】
上記のようにして成形材料3の出隅の各面を一対の上型半体7a,7bの各成形面4でプレス成形した成形品6を得ることができるが、一対の上型半体7a,7bは当接・合体させて上型2を形成した状態でプレス成形をしているものであり、一対の上型半体7a,7bの間に成形材料3が押し出されて成形品6にバリ(図8(c)を参照)が発生するようなことがなくなり、バリを成形品6から除去する手間を省くことができるものである。
【0034】
上記のようにして所定時間プレス成形を行ない、所定時間が経過すると、振動装置15の作動を停止すると共に真空ポンプの作動を停止する。そして上記の型締め状態から型開きを行なうために、一対の各横シリンダー8を作動させて各シリンダーロッド45を図3の矢印のように後退させる。このように各横シリンダー8のシリンダーロッド45を後退させると、一対の上型半体7a,7bは離間する方向にガイドレール42に沿って移動するが、このように各上型半体7a,7bが移動する際に、各上型半体7a,7bのスライド面12が下型1のスライド面11に対してスライドする。そしてスライド面11,12はそれぞれ外方へ向けて上り傾斜する傾斜面に形成されているので、スライド面11,12に沿った斜め上方に各上型半体7a,7bを持ち上げる力が作用し、図3に示すように、各上型半体7a,7bを斜め上方に移動させることができるものである。このように各上型半体7a,7bは離間しながら斜め上方へ移動するがスライド面11は上型半体7a,7bの各成形面4と垂直な傾斜面に形成されているので、各上型半体7a,7bは図3の矢印のようにその成形面4と垂直な方向に移動することになる。従って、各上型半体7a,7bは成形面4で成形された成形品6の各外面に対して垂直な方向で移動して離型するものであり、各上型半体7a,7bの模様成形用凹凸で成形品6に成形された凹凸模様がくずれるようなことなく、上型2の各上型半体7a,7bを成形品6から離型することができるものである。
【0035】
上記のように型開きして上型2の各上型半体7a,7bを成形品6から離型する際に、エア吹き手段のエアポンプを作動させると共に切り替え弁を切替えて、微細孔からエアを吹き出させるようにしてある。このように成形面4に開口する微細孔からエアを吹き出すことによって、上型半体7a,7bの各成形面4に成形材料3が付着したりすることなく、成形品6から上型半体7a,7bをきれいに離型させることができるものである。
【0036】
また、上記のように各横シリンダー8によって各上型半体7a,7bを離間する水平横方向に移動させることによって、スライド面11,12同士のスライドで各上型半体7a,7bは斜め上方へ移動するが、このときに、横シリンダー8の作動と同期させながら、上シリンダー10を作動させて図3の矢印のようにシリンダーロッド36を上動させ、上型保持体9を上昇させて各上型半体7a,7bを引き上げるようにしてある。このように上シリンダー10で各上型半体7a,7bを引き上げるようにすることによって、上型半体7a,7bのスライド面12と下型1のスライド面11の間に無理な力が作用することを防いで、各上型半体7a,7bをスムーズに斜め上方へ移動させることができるものである。
【0037】
上記のように型開きを行なった後、下シリンダー14が図4の矢印のように作動し、受けプレート29を下型搬送装置13の上面より下側へ下降させる。このように受けプレート29が下降すると、下型1は下型搬送装置13の上に載置される。この時点で、成形完了ランプが点灯するようにしてある。そして下型1を下型搬送装置13で成形エリアA1から供給・取り出しエリアA2に搬送し、下型1の上の成形品6をトレー51と共に取り出して、養生工程などの次工程に送り出すことができるものである。この後、エア吹き手段のエアポンプを停止させると共に切り替え弁を切替え、上型2の各上型半体7a,7bの成形面4に離型剤を塗布し、次の成形に備える。そして上記の図1〜図4の手順を繰り返すことによって、出隅化粧部材のような断面L字型の成形品6の成形を繰り返して行なうことができるものである。
【0038】
図7は本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり、下型1を供給・取り出しエリアA2に位置させた状態での、下型1の成形エリアA1側の端部に、図7(b)のように離型剤塗布装置16が設けてある。離型剤塗布装置16としては例えば、図7(c)のようにブラシ軸53の周囲にナイロンなどの多数のブラシ毛54を設けて形成される塗布ブラシ55を用いることができるものである。この塗布ブラシ55は下型1の両側にそれぞれ、上型半体7a,7bの成形面4と同じ傾斜角度で傾けて、ブラシ軸53を回転自在にして取り付けてある。そしてこのものにあって、供給・取り出しエリアA2において塗布ブラシ55に離型剤を供給した後、下型1を上型2の下側に導入するために、供給・取り出しエリアA2から成形エリアA1へと下型搬送装置13で移動させると、下型1は塗布ブラシ55を先頭にして移動することになり、この際に図7(a)のように、各塗布ブラシ55が上型1の各上型半体7a,7bの下面の成形面4に回転しながら接触し、上型半体7a,7bの成形面4に離型剤を塗布することができるものである。尚、この塗布ブラシ55の他に、離型剤を噴霧するノズルを下型1に設けておけば、離型剤を形成面4に塗布しながら塗布ブラシ55で刷り込むようにすることができるものである。このようにして、下型1を上型2の下側に導入させる際に、同時に上型2への離型剤の塗布を行なうことができるものであり、離型剤を塗布するため特別な手間が不要になるものである。また、塗布ブラシ55に離型剤を供給せずに、下型1を移動させると、上型半体7a,7bの成形面4に付着した成形材料の残りなどを除去することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態の一例の一部を示す正面図である。
【図2】同上の実施の形態の一例の一部を示す正面図である。
【図3】同上の実施の形態の一例の一部を示す正面図である。
【図4】同上の実施の形態の一例の一部を示す正面図である。
【図5】同上の実施の形態の一例の一部を示すものであり、(a)は平面図、(b)は一部の側面図である。
【図6】同上の実施の形態の一例を示すものであり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図7】本発明の実施の形態の他の一例を示す一部の概略図である。
【図8】従来例を示すものであり、(a)(b)(c)(d)はそれぞれ概略断面図である。
【図9】他の従来例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 下型
2 上型
3 成形材料
4 成形面
6 成形品
7a,7b 上型半体
8 横シリンダー
9 上型保持体
10 上シリンダー
11 スライド面
12 スライド面
13 下型搬送装置
14 下シリンダー
15 振動装置
16 離型剤塗装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型に上型を型締めして、下型の上の成形材料を下面の成形面が入隅形状に形成される上型でプレスすることによって、出隅形状の成形品を成形し、プレス成形の後に上型を下型から型開きするようにしたプレス成形装置において、成形面の入隅形状の頂部を境にして上型を左右に分割して形成される一対の上型半体と、各上型半体を当接離間させるように横方向に往復移動させる一対の横シリンダーと、一対の横シリンダーを固定的に取り付けると共に一対の上型半体を当接離間する方向にスライド自在に取り付けた上型保持体と、上型保持体を上下方向に往復移動させる上シリンダーとを備え、下型に上型を型締めした状態で上型の各上型半体と下型とが相互に接触し合う、上型半体の成形面に対して垂直で且つ横シリンダーによる上型半体の移動方向に対して斜めに交差するスライド面を、各上型半体と下型にそれぞれ設け、一対の上型半体を当接させて合体して上型を形成した状態で、上シリンダーによって上型保持体と共に上型を下動させて下型に上型を型締めするようにし、横シリンダーで一対の各上型半体を離間する横方向に移動させることによって、下型のスライド面に対する各上型半体のスライド面のスライドで、各上型半体を成形面と垂直な斜め上方に移動させて型開きするようにして成ることを特徴とするプレス成形装置。
【請求項2】
上型の下方に配置され、上型の直下位置と、上型の側方位置との間で下型を往復移動自在にした下型搬送装置と、下型搬送装置によって上型の直下に移動された下型を下型搬送装置の上から上昇させて保持する下シリンダーとを備えて成ることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形装置。
【請求項3】
上型を振動させる振動装置を備えて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形装置。
【請求項4】
上型に成形面において開口する多数の微細孔を設け、型締めの際に、微細孔からエアを吸引するエア吸引手段を備えて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプレス成形装置。
【請求項5】
型開きの際に、微細孔からエアを吐出させるエア吹き手段を備えて成ることを特徴とする請求項4に記載のプレス成形装置。
【請求項6】
下型搬送装置で下型が上型の直下位置と側方位置の間で往復移動される際に、下型の移動によって上型の成形面に離型剤を塗布する離型剤塗布装置を、下型に設けて成ることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載のプレス成形装置。
【請求項7】
下型の上に成形材料を供給した後、この下型を上型の直下の位置に搬送し、次に、一対の上型半体を当接させて合体することによって下面の成形面が入隅形状に形成される上型を下動させ、下型の上に上型を型締めすると共に、上型の成形面に設けた多数の微細孔からエアを吸引しながら、下型の上の成形材料を上型の成形面でプレスすることによって、出隅形状の成形品を成形し、次に一対の各上型半体を離間する横方向に移動させることによって、各上型半体と下型にそれぞれ設けた、上型半体の成形面に対して垂直で且つ上型半体の横移動方向に対して斜めに交差するスライド面同士のスライドで、各上型半体を成形面と垂直な斜め上方に移動させると共に、上型の成形面に設けた多数の微細孔からエアを吹き出させながら型開きし、この後に、下型を上型の側方へ搬送して、下型から成形品を取り出すことを特徴とするプレス成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−98651(P2007−98651A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288779(P2005−288779)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】