説明

プロジェクター、プロジェクションシステム、プロジェクターの制御方法、及び、プログラム

【課題】投射面のサイズが変化しても、違和感なく画像を投射できるプロジェクター、プロジェクションシステム、プロジェクターの制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】面積可変の投射領域201を備えた電動スクリーン2に画像を投射するプロジェクター11は、画像を投射する投射手段と、電動スクリーン2における投射領域201のサイズを検出するスクリーンサイズ検出手段と、スクリーンサイズ検出手段により検出された投射領域201のサイズが、所定のサイズより小さい場合に、所定のサイズの投射領域201に画像全体を投射する際の倍率で、投射手段により投射領域201内に画像の一部を投射させる投射制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター、プロジェクションシステム、プロジェクターの制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を投射するプロジェクターと組み合わせて使用される投射面として、モーターの動力によって展開及び収納が可能なスクリーンが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載のスクリーンは、プロジェクターに入力される映像信号に連動して、スクリーンの展開及び収納を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−325422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように展開及び収納可能なスクリーンを展開する間は、スクリーンのサイズが変化するため、展開が完了するまで投射できなかった。例えば、展開中に変化するスクリーンのサイズに合わせて画像を拡大/縮小した場合、画像の拡大率が急速に変化することとなり、見る人に奇異な印象を抱かせてしまうという問題があった。
本発明は、上述した課題に鑑み、例えばスクリーンの収納時または展開時のように、投射面のサイズが変化する場合であっても、違和感なく画像を投射可能なプロジェクター、プロジェクションシステム、プロジェクターの制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、面積可変の投射領域を備えた投射面に画像を投射するプロジェクターであって、画像を投射する投射手段と、前記投射面における前記投射領域のサイズを検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、前記所定のサイズの前記投射領域に前記画像全体を投射する際の倍率で、前記投射手段により前記投射領域内に前記画像の一部を投射させる投射制御手段と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、所定のサイズの投射領域に画像全体を投射する際の倍率で画像の一部を投射するので、例えば収納式スクリーンの収納時または展開時のように、投射面の投射領域のサイズが変化する場合であっても、変化する投射領域に画像を投射できる。また、投射領域のサイズが変化しても投射倍率が変化しないため、見る人に違和感を抱かせないように画像を投射できる。
【0006】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記投射制御手段は、前記検出手段により検出された前記投射領域のサイズが前記所定のサイズまたはそれ以上のサイズである場合には、前記画像の全体を前記投射手段により投射させることを特徴とする。
本発明によれば、例えば収納式スクリーンの展開が完了している場合など、投射領域が所定のサイズに達している場合は、設定操作等を要することなく画像全体を投射できる。
【0007】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記投射制御手段は、前記検出手段が検出した前記投射領域のサイズに基づいて、前記画像において前記投射領域に投射する範囲を選択し、選択された範囲が投射されるように前記光変調手段により光を変調させることを特徴とする。
本発明によれば、変調された光について倍率の変更等を行うことなく、投射領域のサイズに合わせて画像の一部を投射できる。
【0008】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記投射面を撮影する撮像手段を備え、前記検出手段は、前記撮像手段の撮影画像に基づいて、前記投射面の前記投射領域のサイズを検出することを特徴とする。
本発明によれば、投射面に特別な構成を設けることなく、投射面の投射領域のサイズをプロジェクターが容易に検出できる。
【0009】
また、本発明は、上記プロジェクターにおいて、前記検出手段は、前記投射面側から送信される前記投射領域のサイズに係る情報に基づいて、前記投射領域のサイズを検出することを特徴とする。
本発明によれば、投射面側の装置を利用して、投射領域のサイズを容易に特定できる。
【0010】
また、本発明のプロジェクターにおいて、前記投射手段は、光源と、前記光源が発した光を変調する光変調手段とを備え、前記投射制御手段は、前記光変調手段により変調された光の一部のみを前記投射領域に投射させるものとしてもよい。この場合、光変調装置は画像全体を投射する場合と同様に光を変調すればよいので、変調装置の制御が簡単になるという利点がある。
また、本発明のプロジェクターにおいて、矩形の前記画像を矩形の前記投射領域に投射する場合に、前記投射制御手段は、前記画像の一辺が前記投射領域の一辺に一致するように前記投射手段に投射させる構成としてもよい。この場合、投射領域の端と画像の端が一致して投射されるので、例えば投射領域のサイズが経時的に変化する場合に画像が投射領域の端から離れないため画像の変化が抑えられる。このため、投射領域のサイズに合わせて投射する画像を調整するとともに、投射領域のサイズが変化した場合の画像の変化の煩わしさを解消できる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明は、面積可変の投射領域を備えた投射面と、前記投射面の前記投射領域に画像を投射するプロジェクターとを備えたプロジェクションシステムであって、前記投射面は、前記投射領域のサイズを検出する投射領域検出手段と、前記投射領域検出手段により検出された前記投射領域のサイズに係る情報を前記プロジェクターに通知する通知手段と、を備え、前記プロジェクターは、画像を投射する投射手段と、前記投射面から通知される前記投射領域のサイズに係る情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段により取得された前記投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、前記所定のサイズの前記投射領域に前記画像全体を投射する際の倍率で、前記投射手段により前記投射領域内に前記画像の一部を投射させる投射制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、プロジェクターが投射領域のサイズを容易に特定することができ、この投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合には、所定のサイズの投射領域に画像全体を投射する際の倍率で画像の一部を投射するので、例えば収納式スクリーンの収納時または展開時のように、投射面の投射領域のサイズが変化する場合であっても、変化する投射領域に画像を投射できる。また、投射領域のサイズが変化しても投射倍率が変化しないため、見る人の違和感を想起させずに画像を投射できる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明は、画像を投射する投射手段を備え、面積可変の投射領域を備えた投射面に画像を投射するプロジェクターの制御方法であって、前記投射面における前記投射領域のサイズを検出し、検出された前記投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、前記所定のサイズの前記投射領域に前記画像全体を投射する際の倍率で、前記投射領域内に前記画像の一部を投射することを特徴とする。
本発明の制御方法を実行することにより、投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、所定のサイズの投射領域に画像全体を投射する際の倍率で画像の一部を投射するので、例えば収納式スクリーンの収納時または展開時のように、投射面の投射領域のサイズが変化する場合であっても、変化する投射領域に画像を投射できる。また、投射領域のサイズが変化しても投射倍率が変化しないため、見る人に違和感を抱かせないように画像を投射できる。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明は、画像を投射する投射手段を備え、面積可変の投射領域を備えた投射面に画像を投射するプロジェクターを制御するコンピューターが実行可能なプログラムであって、前記コンピューターを前記投射面における前記投射領域のサイズを検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、前記所定のサイズの前記投射領域に前記画像全体を投射する際の倍率で、前記投射手段により前記投射領域内に前記画像の一部を投射させる投射制御手段として機能させることを特徴とする。
本発明のプログラムを実行することにより、投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、所定のサイズの投射領域に画像全体を投射する際の倍率で画像の一部を投射するので、例えば収納式スクリーンの収納時または展開時のように、投射面の投射領域のサイズが変化する場合であっても、変化する投射領域に画像を投射できる。また、投射領域のサイズが変化しても投射倍率が変化しないため、見る人に違和感を抱かせないように画像を投射できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば投射面の投射領域のサイズが変化する場合であっても、見る人に違和感を抱かせないように、投射領域に画像を投射できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態に係るプロジェクターの使用状態における外観図である。
【図2】スクリーンの構成を示す正面図であり、(A)は完全展開状態を示し、(B)は収納中及び展開中の状態を示す。
【図3】プロジェクター及び電動スクリーンを含むプロジェクションシステムの機能的構成を示すブロック図である。
【図4】プロジェクションシステムによる投射状態の例を示す図であり、(A)は投射される画像の例を示し、(B)は収納状態の電動スクリーンの正面図であり、(C)は展開中の電動スクリーンの正面図であり、(D)は使用状態の電動スクリーンの正面図である。
【図5】図4の例における光変調装置の表示状態を示す図であり、(A)は電動スクリーンが完全に収容された状態を示し、(B)及び(C)は電動スクリーンの展開中を示し、(D)は完全展開状態を示す。
【図6】プロジェクションシステムの投射状態の別の例を示す図である。
【図7】図6の例における光変調装置の表示状態を示す図であり、(A)は投射される画像を示し、(B)及び(C)は電動スクリーンの展開中における表示状態を示す。
【図8】プロジェクターの動作を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態に係るプロジェクションシステムの機能的構成を示すブロック図である。
【図10】第2の実施形態におけるプロジェクターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係るプロジェクター11の使用状態における外観図である。また、図2は投射面である電動スクリーン2の構成を示す正面図であり、(A)は完全展開状態(使用状態)を示し、(B)は収納中及び展開中の状態を示す。
本実施形態では、プロジェクター11を電動スクリーン2の前面側に、電動スクリーン2の投射領域201の前方に設置し、プロジェクター11から投射領域201に画像を投射する構成を例に挙げて説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、電動スクリーン2(スクリーン)は、柔軟な幕で構成されるスクリーン部20と、スクリーン部20を巻き上げる巻上モーター23とを備え、非使用時にはスクリーン部20を上部のロール部26にロール状に巻いて収容可能な構成となっている。電動スクリーン2は、ロール部26を収容して塵埃から保護するスクリーンボックスを備える構成としてもよい。
スクリーン部20は、合成樹脂製のフィルムまたは織物で構成される基布の表面に、プロジェクター11の投射光を反射する投射領域201を形成したものである。投射領域201には、高い光再帰特性を持たせるため各種の表面加工が施されている。本実施形態の投射領域201は矩形であり、投射領域201の外側は投射光を反射しにくいマスク202となっている。マスク202の表面は、例えば黒色に着色され、つや消し加工等が施されている。
【0018】
図1及び図2(A)には、電動スクリーン2のスクリーン部20が完全に展開された状態を示す。スクリーン部20の上部には、巻上モーター23と、巻上モーター23の動力により回転するロール部26とが配置されている。電動スクリーン2は、後述するスクリーン用リモコン55から送信される信号を受信して巻上モーター23を動作させ、ロール部26を回転させることにより、図2(A)に示す完全展開状態(使用状態)から、図2(A)中に矢印で示すように、スクリーン部20を上方に巻き取る。
【0019】
図2(B)に示すように、スクリーン部20の収納中及び展開中は、投射領域201の一部がロール部26に巻かれているため、投射領域201は完全展開状態より上下方向に短い矩形となる。投射領域201の幅方向のサイズは収納中及び展開中も勿論変化しない。
プロジェクター11は、スクリーン部20を完全展開状態とした場合の投射領域201の位置およびサイズに合わせて設置されている。詳細には、完全展開状態の投射領域201全面に画像を投射するのに適した位置または向きに設置されている。
【0020】
スクリーン部20の下端には棒状のボトムバー203が取り付けられている。ボトムバー203はスクリーン部20の基布に比べて相当に重いものとして構成され、ロール部26から垂れ下がるスクリーン部20のたるみや曲がりを防いでいる。電動スクリーン2は、非使用時にはボトムバー203がロール部26にほぼ接するまでスクリーン部20が巻き取られて、コンパクトに収納できる。なお、図1〜図3にはボトムバー203を白色で示しているが、これは理解の便宜のためであり、通常はマスク202と同様に低反射率の表面を有する黒色に仕上げられる。
【0021】
図3は、プロジェクター11及び電動スクリーン2を備えて構成されるプロジェクションシステム10の機能的構成を示すブロック図である。
電動スクリーン2は、電動スクリーン2の各部を制御する制御部21と、制御部21の制御に従って回転動作し、スクリーン部20の巻き上げ及び展開を行う巻上モーター23と、巻上モーター23の回転量を検出する回転検出部24とを備えている。
電動スクリーン2は、スクリーン用リモコン55により操作される。スクリーン用リモコン55は、スクリーン部20の展開及び収納を指示するスイッチ等を備え、これらスイッチの操作に対応した赤外線信号を送信する。電動スクリーン2は、スクリーン用リモコン55が送信する赤外線信号を受信するリモコン受光部22を備えている。リモコン受光部22は、受信した赤外線信号をデコードして、スクリーン用リモコン55における操作内容を示す操作信号を生成し、制御部21に出力する。
【0022】
制御部21は、リモコン受光部22から入力される操作信号に従って、巻上モーター23を動作させる。巻上モーター23は、制御部21から入力される駆動パルス或いは駆動電流に従って正転または逆転する。回転検出部24は、巻上モーター23の回転方向及び回転量を検出して、検出値を制御部21に出力する。制御部21は、回転検出部24から入力される検出値に基づいてフィードバック制御を行い、スクリーン用リモコン55による指示に対応した量だけスクリーン部20を展開または収納する。
回転検出部24は、例えばロータリーエンコーダーとして構成され、巻上モーター23の回転軸の回転量を検出する構成とすることができるが、ロール部26の回転量を検出するものであってもよい。また、巻上モーター23がステッピングモーターとして構成され、制御部21が出力する駆動パルスのパルス数に基づいて巻上モーター23の回転量を検出可能な場合には、回転検出部24を省略することができる。
【0023】
プロジェクター11は、パーソナルコンピューターや各種画像プレーヤー等の外部の画像供給装置(図示略)にI/F(インターフェイス)部101を介して接続され、これらの画像供給装置から入力される入力画像を電動スクリーン2に投射する。例えば、I/F部101は、USBインターフェイス、有線または無線LANインターフェイス、アナログ映像信号が入力されるVGA端子、デジタル映像信号が入力されるDVI(Digital Visual Interface)、NTSC、PAL、SECAM等のコンポジット映像信号が入力されるS映像端子、コンポジット映像信号が入力されるRCA端子、コンポーネント映像信号が入力されるD端子、HDMI(登録商標)規格に準拠したHDMIコネクター等を備え、上記の端子やコネクターを介して信号を入出力するインターフェイス回路を備えていてもよい。
上記の画像供給装置としては、ビデオ再生装置、DVD再生装置、テレビチューナー装置、CATVのセットトップボックス、ビデオゲーム装置等の画像出力装置、PC(Personal Computer)等が挙げられる。本実施形態では、画像供給装置としてPC13がI/F部101に接続され、このPC13からI/F部101にデジタル画像データが入力される例を挙げる。
【0024】
プロジェクター11は、大きく分けて光学的な画像の形成を行う投射部3(投射手段)と、この投射部3に入力される画像信号を電気的に処理する画像処理系とからなる。投射部3は、照明光学系31(光源)、光変調装置32(光変調手段)、及び投射光学系33から構成されている。照明光学系31は、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、LED(Light Emitting Diode)等からなる光源を備えている。また、照明光学系31は、光源が発した光を光変調装置32に導くリフレクター及び補助リフレクターを備えていてもよく、投射光の光学特性を高めるためのレンズ群(図示略)、偏光板、或いは光源が発した光の光量を光変調装置32に至る経路上で低減させる調光素子等を備えたものであってもよい。
光変調装置32は、例えば透過型液晶パネルを備えて構成され、この液晶パネルに後述する画像処理系からの信号を受けて画像を形成する。この場合、光変調装置32は、カラーの投影を行うため、RGBの三原色に対応した3枚の液晶パネルを備え、照明光学系31からの光はRGBの3色の色光に分離され、各色光は対応する各液晶パネルに入射する。各液晶パネルを通過して変調された色光はクロスダイクロイックプリズム等の合成光学系によって合成され、投射光学系33に射出される。
なお、光変調装置32は、3枚の透過型液晶パネルを用いた構成に限らず、例えば3枚の反射型の液晶パネルを用いることも可能であるし、1枚の液晶パネルとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイス(DMD)を用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせた方式等により構成してもよい。ここで、光変調装置32として1枚のみの液晶パネルまたはDMDを用いる場合には、クロスダイクロイックプリズム等の合成光学系に相当する部材は不要である。また、液晶パネル及びDMD以外にも、光源が発した光を変調可能な構成であれば問題なく採用できる。
【0025】
投射光学系33は、投射する画像の拡大・縮小および焦点の調整を行うズームレンズ、ズームの度合いを調整するズーム調整用モーター、フォーカスの調整を行うフォーカス調整用モーター等を備えている。投射光学系33は、光変調装置32で変調された入射光を、ズームレンズを用いて電動スクリーン2上に投射し、結像させる。
投射部3には、制御部103の制御に従って投射光学系33が備える各モーターを駆動する投射光学系駆動部121、及び、制御部103の制御に従って照明光学系31の光源を駆動する光源駆動部117が接続されている。
【0026】
画像処理系は、プロジェクター11全体を統合的に制御する制御部103を中心に構成され、制御部103が処理するデータや制御部103が実行する制御プログラム105Aを記憶した記憶部105、操作パネル45及びリモコン受光部41を介した操作を検出する入力処理部123、入力画像データを処理する表示制御部107、表示制御部107から出力される画像信号に基づいて光変調装置32を駆動して描画を行う光変調装置駆動部119を備えている。
【0027】
制御部103は、記憶部105に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより、プロジェクター11の各部を制御する。制御部103は、入力処理部123から入力される操作信号に基づいて、ユーザーが行った操作の内容を検出し、この操作に応じて表示制御部107、光変調装置駆動部119、投射光学系駆動部121及び光源駆動部117を制御して、電動スクリーン2に画像を投射させる。
【0028】
プロジェクター11の本体には、ユーザーが操作を行うための各種スイッチ及びインジケーターランプを備えた操作パネル45が配置されている。操作パネル45は入力処理部123に接続されており、入力処理部123は、制御部103の制御に従い、プロジェクター11の動作状態や設定状態に応じて操作パネル45のインジケーターランプを適宜点灯或いは点滅させる。この操作パネル45のスイッチが操作されると、操作されたスイッチに対応する操作信号が入力処理部123から制御部103に出力される。
また、プロジェクター11は、ユーザーが使用するリモコン51から送信される赤外線信号を受光するリモコン受光部41を備えている。リモコン51は、プロジェクター11の電源オン/オフ、投射開始、投射する画像の切換、投射サイズの拡大/縮小、メニュー画面の表示/表示終了、メニュー操作等を指示する各種スイッチを備え、これらのスイッチの操作に対応した赤外線信号を送信する。リモコン受光部41は、リモコン51が送信した赤外線信号を受信し、デコードして、リモコン51における操作内容を示す操作信号を生成し、制御部103に出力する。
【0029】
表示制御部107は、制御部103の制御に従って、画像供給装置としてのPC13からI/F部101を介して入力される画像データに基づいて、表示信号を生成し、光変調装置駆動部119に出力する。
すなわち、表示制御部107は、I/F部101から入力される画像データを取得して、投射部3により電動スクリーン2に投射する画像をフレームメモリー115に展開する。この動作において、表示制御部107は、入力された画像データの解像度が光変調装置32の液晶パネルの表示解像度と異なる場合には解像度変換処理を行い、フレームメモリー115に展開した画像を更新する。
その後、表示制御部107は、フレームメモリー115に展開した画像を表示信号として光変調装置駆動部119に出力する。
光変調装置駆動部119は、表示制御部107から入力される表示信号に従って、光変調装置32の液晶パネルを駆動し、液晶パネルに画像を描画する。この液晶パネルに照明光学系31が発した光が照射されることにより、この照射光が変調され、投射光学系33を経て電動スクリーン2の投射領域201に投射される。
【0030】
また、表示制御部107は、後述する補正制御部103Aの制御に従って、台形歪み補正を実行する。台形歪み補正は、投射領域201に対するプロジェクター11の投射角度が水平でない場合に、投射領域201に投射される画像が台形状に歪むのを補正する機能である。この機能の実行時、表示制御部107は、フレームメモリー115に展開した画像を、上記の歪みを補償するように逆向きの台形状に変形させる。この変形された画像を光変調装置32の液晶パネルに描画することにより、投射領域201には歪みのない画像が投射される。
【0031】
プロジェクター11は、電動スクリーン2のスクリーン部20が収納中または展開中である場合に、この電動スクリーン2の投射領域201のサイズを検出し、検出した投射領域201のサイズに合わせた画像を投射する機能を備えている。
図1に示すように電動スクリーン2の正面に設置されたプロジェクター11は、上述したように、スクリーン部20を完全展開状態とした場合の投射領域201の位置およびサイズに合わせて設置されている。具体的には、完全展開状態の投射領域201全面に画像を投射するのに適した位置または向きに設置されている。また、投射光学系33のズーム倍率やフォーカスは、投射領域201の全体に画像を投射する場合に合わせて調整されている。プロジェクター11は、投射領域201のうちロール部26に巻かれていない、露出していて投射可能な部分に、投射領域201の全体に画像を投射する場合と同じ投射サイズ、投射倍率で画像を投射する。従って、投射領域201の一部がロール部26に巻かれている状態では、投射領域201に投射する画像の一部分のみを、露出している投射領域201に投射する一方、この露出している投射領域201からはみ出す部分は投射しない。
【0032】
プロジェクター11は、投射領域201のサイズを検出するため、撮像部47を備えている。撮像部47(撮像手段)は、投射光学系33が電動スクリーン2に画像を投射する方向と同方向を向くように設置されたデジタルスチルカメラであり、制御部103の制御により投射領域201を撮影し、撮影画像データを制御部103に出力する。ここで、撮像部47の画角は、電動スクリーン2が完全展開状態である場合に投射領域201の全体を撮影可能であることが望ましい。
【0033】
制御部103は、記憶部105が記憶する制御プログラム105Aを実行することにより、補正制御部103A、スクリーンサイズ検出部103B、投射サイズ算出部103C、投射範囲設定部103D、及び、投射制御部103Eの機能を実現する。
補正制御部103Aは、上述のように表示制御部107を制御して台形歪み補正機能を実現する。
スクリーンサイズ検出部103B(検出手段)は、撮像部47を制御して撮影を実行させ、撮像部47から出力される撮影画像データに基づいて、投射可能な投射領域201、すなわち露出している投射領域201のサイズを検出する。具体的には、スクリーンサイズ検出部103Bは撮影画像からスクリーン部20の外枠を構成するマスク202及びロール部26の画像を抽出する枠抽出処理を実行し、この枠内にある矩形を投射領域201として検出する。投射領域201が反射率の高い表面を有するのに対し、マスク202は黒色であり、ロール部26の表面も一般的に投射領域201ほど反射率が高くない。このため、枠検出処理のしきい値を、マスク202及びロール部26と投射領域201及び背景とが区別できる値に予め設定することで、マスク202及びロール部26を確実に検出できる。また、スクリーン部20の展開中及び収納中もロール部26の位置は変化しないので、電動スクリーン2の完全展開状態でロール部26の位置を事前に検出しておくことによって、より確実に撮影画像からロール部26の画像を抽出できる。さらに、投射領域201のサイズは、スクリーン部20の展開及び収納に伴って、巻き上げ方向(本実施形態では上下方向)にのみ変化し、巻き上げ方向と直交する方向においてはサイズ一定である。このため、巻き上げ方向における投射領域201の端の位置を検出することができれば、投射領域201のサイズを求めることができる。
【0034】
投射サイズ算出部103Cは、スクリーンサイズ検出部103Bが検出した投射領域201のサイズに対応する投射画像のサイズを求める。詳細には、スクリーンサイズ検出部103Bが検出した投射領域201のサイズを、完全展開状態の投射領域201のサイズと比較し、フレームメモリー115に展開された画像のうちどの程度を投射できるかを、例えば画像全体に対する割合として算出する。例えば、画像を投射可能な投射領域201が完全展開状態の半分のサイズである場合、投射サイズ算出部103Cは、投射する画像のサイズを、フレームメモリー115の画像の50%と算出する。なお、投射領域201のサイズが特定方向(本実施形態では巻き上げ方向)にのみ変化するような場合、投射サイズ算出部103Cは、投射領域201のサイズを、露出している投射領域201の、巻き上げ方向に沿った長さによって把握(検出)しても良い。
【0035】
投射範囲設定部103Dは、投射サイズ算出部103Cが算出したサイズに基づいて、フレームメモリー115に展開されている画像において、実際に投射部3により投射する範囲を設定する。上記の例のように投射する画像が画像全体の50%である場合、フレームメモリー115に展開された画像の50%に相当する範囲を、投射する範囲として設定する。ここで、投射範囲設定部103Dは、事前の設定に従って、フレームメモリー115の画像において投射する範囲の配置を切り換えることができる。
投射制御部103E(投射制御手段)は、投射範囲設定部103Dが設定した投射する範囲以外に画像が投射されないように、表示制御部107を制御して、フレームメモリー115に展開された画像のうち設定された範囲外を黒一色にする処理を行わせ、処理後の画像に基づいて光変調装置駆動部119を動作させ、光変調装置32の液晶パネルに描画を行い、投射部3によって画像を投射させる。投射制御部103Eは、フレームメモリー115に展開された画像の一部のみを投射する場合であっても、投射部3の投射倍率等は画像全体を投射するときと同じ値に設定する。
【0036】
図4は、プロジェクションシステム10による投射状態の例を示す図である。図4(A)は投射される画像の例を示す。また、(B)は収納状態の電動スクリーンの正面図であり、(C)は展開中の電動スクリーンの正面図であり、(D)は使用状態の電動スクリーンの正面図である。
【0037】
図4(A)にはプロジェクター11が投射領域201に投射する画像100の全体を示す。電動スクリーン2が図4(B)に示す収納状態から展開され、図4(C)に示すように途中まで展開された状態では、投射領域201の一部が投射可能な状態となっている。ここで、スクリーンサイズ検出部103Bは、撮像部47に撮影を実行させ、撮影画像に基づいてロール部26及びマスク202で囲まれる投射領域201のサイズを求める。
【0038】
ところで、図4(D)に示すように、電動スクリーン2の完全展開状態では投射領域201とロール部26との間にマスク202が位置しているため、プロジェクター11が投射するのは図中符号Tで示す上端位置より下の領域である。電動スクリーン2の展開中及び収納中は、上端位置Tより上の部分にも投射領域201が存在する。上端位置Tより上の部分は投射部3が画像を投射しない範囲であるから、プロジェクター11が仮に画像全体を投射しても、上端位置Tより上には投射光が当たらない。そこで、スクリーンサイズ検出部103Bは、上端位置Tよりも上の領域を除いた投射領域201のサイズを検出する。この処理は、予め撮像部47の撮影画像における上端位置Tの位置を設定し、枠検出処理によって投射領域201を抽出した際に、上端位置Tより下の部分のみを投射領域201として抽出することで実現できる。
なお、完全展開状態において投射領域201とロール部26との間にマスク202が無いタイプの電動スクリーン2を使用する場合には、上端位置Tと投射領域201の上端とが常に一致しているので、上端位置Tの位置に係る上記の処理は不要である。
【0039】
投射範囲設定部103Dは、事前の設定に従って、フレームメモリー115の画像において投射する範囲を上端側に設定する。これにより、展開途中の投射領域201には画像の上端が投射可能な投射領域201の上端に一致するように投射されるので、図4(C)に示す展開中の電動スクリーン2に対し、投射可能な投射領域201に、完全展開状態と同じ位置に画像を投射する。このままスクリーン部20を展開すると、投射領域201が拡大するにつれて画像の下部が徐々に現れるように見え、最終的に、図4(D)に示す完全展開状態で画像全体が投射される。
この図4(B)〜(D)に示す方法は、いわゆるワイプエフェクトと呼ばれる画像切換の方法と同様に見える。画像の位置が変わらずに画像が表示(投射)される範囲が変化するように見える点がワイプエフェクトの特徴であり、図4(B)〜(D)に示す方法も同様である。この方法を採用した場合、投射領域201のサイズが変化しても画像が移動しないため、投射画像が電動スクリーン2にもともと描画されているように見えるので、現実感のあるプロジェクションシステム10として消費者に訴求できる。
【0040】
ワイプエフェクトは投射画像の位置が動かないことに特徴がある。本実施形態では電動スクリーン2上部のロール部26からスクリーン部20が垂れ下がる構成としたので、投射領域201の上端と画像の上端とを揃えるとワイプエフェクトのようになるが、電動スクリーン2の構成が異なっていればこの限りでない。例えば、電動スクリーン2が右端に立設されるロール部26から左側にスクリーン部20を展開する構成であれば、投射領域201の右端と画像の右端を揃えればワイプエフェクトのように投射できる。つまり、スクリーン部20の展開及び収納時に移動しない側の端部に画像の端を揃えることで、ワイプエフェクトのような投射画像の変化を実現できる。
【0041】
図5は、図4の例における光変調装置の表示状態を示す図であり、(A)は電動スクリーン2が完全に収容された状態を示し、(B)及び(C)は電動スクリーン2の展開中を示し、(D)は完全展開状態を示す。
電動スクリーン2のスクリーン部20が完全にロール部26に収容された状態では投射領域201が露出していないため、投射範囲設定部103Dはフレームメモリー115の画像において投射する範囲を設定しない。このため、投射制御部103Eが表示制御部107を制御して光変調装置駆動部119に出力させる画像は、全体が非表示の範囲すなわち黒色となっているので、光変調装置32の液晶パネルの全画素が黒色の領域32Aとなっている。
スクリーン部20が展開されて投射領域201の一部が露出した状態では、投射範囲設定部103Dが画像の一部を投射する範囲として設定する。この範囲は上述のように画像の上端側に設定される。このため、図5(B)に示すように、光変調装置32の液晶パネルには、画像の上端から所定サイズの画像32Bが描画され、その下方は黒色の領域32Aとなっている。さらにスクリーン部20が展開され、投射可能な投射領域201のサイズが拡大すると、図4(C)に示すように、光変調装置32の液晶パネルに描画される画像32Bは、下端の位置が移動するように拡大される。この過程において液晶パネルに既に描画されていた画像32Bの上部は変化しない。そして、電動スクリーン2が完全展開状態になると、図5(D)に示すように光変調装置32の液晶パネル全体に画像32Bが描画され、黒色の領域32Aが無くなる。
【0042】
また、プロジェクター11は、展開中及び収納中の投射領域201に対し、画像の下端から投射することも可能である。
図6は、電動スクリーン2における投射状態の別の例を示す図である。
この図6に例示するように、プロジェクター11は、展開中及び収納中の投射領域201の下端と画像の下端とが揃うように画像を投射することができる。この方法では、スクリーン部20の展開中に、投射領域201の下端と画像の下端とが揃った状態のまま、投射領域201に合わせたサイズの画像が投射され、いわゆるスライドインエフェクトと呼ばれる画像切換の方法と同様に画像が変化する。また、スクリーン部20の収納中は、投射領域201の下端と画像の下端とが揃った状態のまま、投射領域201に合わせたサイズの画像が投射され、スライドアウトと呼ばれる画像切換の方法と同様に画像が変化する。この方法によれば、展開中及び収納中に移動する投射領域201の下端と画像の下端とが一致した状態を保つので、画像が投射領域201と一体となって動くように見える。このため、投射画像が電動スクリーン2にもともと描画されているように見えるので、現実感のあるプロジェクションシステム10として消費者に訴求できる。
【0043】
スライドイン/スライドアウトは、投射領域のサイズの変化に伴って画像が移動することに特徴がある。本実施形態では電動スクリーン2上部のロール部26からスクリーン部20が垂れ下がる構成としたので、投射領域201の下端と画像の下端とを揃えるとスライドイン/スライドアウトのようになるが、電動スクリーン2の構成が異なっていればこの限りでない。例えば、電動スクリーン2が右端に立設されるロール部26から左側にスクリーン部20を展開する構成であれば、投射領域201の左端と画像の左端を揃えればスライドイン/スライドアウトのように投射できる。つまり、スクリーン部20の展開及び収納時に移動する側の端に画像の端を揃えることで、スライドイン/スライドアウトエフェクトのような投射画像の変化を実現できる。
【0044】
図7は、図6の例における光変調装置の表示状態の例を示す図であり、(A)は投射される画像100を示し、(B)及び(C)は電動スクリーン2の展開中における表示状態を示す。
投射範囲設定部103Dは、フレームメモリー115に図7(A)に示す画像100が展開された状態で、投射サイズ算出部103Cが検出したサイズに基づいて画像100の下端側に投射する範囲100Aを設定する。
ここで、投射制御部103Eの制御により、表示制御部107が光変調装置駆動部119に出力する画像は、画像100の上部が非表示すなわち黒色にされた画像となる。また、この画像の表示位置は、電動スクリーン2において引き出されている投射領域201の位置に対応する。具体的には、露出している投射領域201のうち、図6に符号Tで示す上端位置より下の領域に投射される。上端位置Tは光変調装置32の液晶パネルの上端に相当するので、投射制御部103Eは光変調装置32の液晶パネルの上部に範囲100Aの画像を描画する。即ち、図7(B)に示すように、光変調装置32の液晶パネルに画像32Bが表示される。
【0045】
電動スクリーン2が展開して投射領域201の大きさが変化すると、液晶パネルに描画される範囲100Aの大きさと、その表示位置との両方が変化する。投射制御部103Eは、変化後の投射領域201の大きさに合わせた範囲100Aの画像を、液晶パネルの上部を基準として描画し、該液晶パネル上の描画を更新し、例えば図7(C)に示すように、より拡大された画像32Bを表示するこのように、上述したスライドインと同様に画像を変化させることができる。
なお、プロジェクター11の投射領域201に対する投射角(あおり角)が0度でない場合には、光変調装置32の液晶パネルには、台形補正機能により台形に変形された画像32Bが描画され、完全展開状態においても台形の画像32Bの周囲には黒色の領域32Aが存在するが、図5(A)〜(D)及び図7(B)〜(C)では図示を省略する。
【0046】
図8は、プロジェクター11の動作を示すフローチャートである。
操作パネル45またはリモコン51の操作により投射実行が指示されると、プロジェクター11は図8の動作を開始する。
制御部103のスクリーンサイズ検出部103Bは、撮像部47を制御して撮影を実行させ(ステップS11)、撮影画像データを取得する(ステップS12)。スクリーンサイズ検出部103Bは、取得した撮影画像データから枠検出処理を行って投射領域201の画像を抽出し、上端位置T(図4(C))を加味して投射可能な投射領域201のサイズを求める(ステップS13)。
投射サイズ算出部103Cは、スクリーンサイズ検出部103Bが求めた投射領域201のサイズを、予め記憶部105に記憶している完全展開状態における投射領域201のサイズと比較し(ステップS14)、画像の一部のみ投射するか、画像全体を投射するかを判別する(ステップS15)。
【0047】
スクリーンサイズ検出部103Bが検出した投射領域201のサイズが完全展開状態におけるサイズにほぼ等しく、画像全体を投射する場合(ステップS15;No)、制御部103は後述するステップS18に移行して、投射制御部103Eが画像全体を投射部3により投射領域201に投射させる。
これに対し、スクリーンサイズ検出部103Bが検出した投射領域201のサイズが完全展開状態における投射領域201のサイズより小さく、画像の一部のみを投射する場合(ステップS15;Yes)、投射範囲設定部103Dが、記憶部105に予め記憶している投射方法の設定値を取得する(ステップS16)。投射方法の設定値とは、図4(B)〜(D)に示した投射領域201の上端と画像の上端とを揃えて投射する方法(ワイプエフェクト)と、図6に示した投射領域201の下端と画像の下端とを揃えて投射する方法(スライドイン/スライドアウト)とのいずれかを指定する情報である。この投射方法は、ユーザーが操作パネル45及びリモコン受光部41を操作して、メニュー画面を表示させ、このメニュー画面を利用して事前に、任意の内容に設定できる。設定された内容すなわち投射方法に関する情報は記憶部105に記憶されている。
【0048】
投射範囲設定部103Dは、記憶部105から取得した設定値により指定される方法で、フレームメモリー115に展開された画像のうち投射する範囲を設定し、投射制御部103Eの制御によって、設定された範囲外を黒色の領域にした画像が生成され(ステップS17)。その後、投射制御部103Eの制御により、表示制御部107から光変調装置駆動部119に、一部が黒色の領域となった画像を出力させ、光変調装置32の液晶パネルに描画を実行させて、当該画像を投射部3によって投射領域201に投射させる(ステップS18)。
その後、制御部103は、操作パネル45またはリモコン51の操作により投射終了が指示されたか否かを判別し(ステップS19)、投射を継続する場合は(ステップS19;No)ステップS11に戻り、投射終了の指示があった場合には(ステップS19;Yes)、本処理を終了する。
【0049】
以上のように、本発明を適用した第1の実施形態にかかるプロジェクションシステム10によれば、面積可変の投射領域201を備えた電動スクリーン2と、電動スクリーン2に画像を投射するプロジェクター11とを備え、プロジェクター11は、画像を投射する投射部3と、電動スクリーン2における投射領域201のサイズを検出するスクリーンサイズ検出部103Bと、スクリーンサイズ検出部103Bにより検出された投射領域201のサイズが、完全展開状態の投射領域201のサイズ(所定のサイズ)より小さい場合に、当該所定のサイズの投射領域201に画像全体を投射する際の倍率で、投射部3により投射領域201内に画像の一部を投射させる投射制御部103Eと、を備えるので、例えば収納式の電動スクリーン2のスクリーン部20の収納時または展開時のように、電動スクリーン2の投射領域201のサイズが変化する場合であっても、変化する投射領域201に画像を投射できる。また、投射領域201のサイズが変化しても投射倍率が変化しないため、見る人に違和感を抱かせないように画像を投射できる。
【0050】
また、制御部103は、スクリーンサイズ検出部103Bにより検出された投射領域201のサイズが所定のサイズまたはそれ以上のサイズである場合には、投射範囲設定部103D及び投射制御部103Eにより画像の全体を投射部3により投射させるので、特に設定操作等を要することなく展開中、収納中及び通常の使用時に投射領域201のサイズに対応して適切に画像を投射できる。
また、制御部103は、スクリーンサイズ検出部103Bが検出した投射領域201のサイズに基づいて、画像において投射領域201に投射する範囲を選択し、選択された範囲が投射されるように光変調装置32の液晶パネルに描画をさせて、光を変調させるので、光変調装置32により変調された光について倍率の変更等を行うことなく、投射領域201のサイズに合わせて画像の一部を投射できる。
【0051】
プロジェクター11は、電動スクリーン2を撮影する撮像部47を備え、スクリーンサイズ検出部103Bは、撮像部47の撮影画像に基づいて、電動スクリーン2の投射領域201のサイズを検出するので、電動スクリーン2に特別な構成を設けることなく、電動スクリーン2の投射領域201のサイズをプロジェクター11が容易に検出できる。
さらに、プロジェクター11の投射範囲設定部103D及び投射制御部103Eは、矩形の画像を矩形の投射領域201に投射する場合に、画像の一辺が投射領域201の一辺に一致するように投射部3に投射させることができる。そして、スクリーン部20の展開中または収納中に移動する側の投射領域201の一辺に画像の一辺を揃えて投射するスライドイン/スライドアウト状の投射、及び、移動しない側の投射領域201の一辺に画像を揃えて投射するワイプエフェクト状の投射を行うことができる。これらの方法で投射することにより、スクリーン部20の展開中及び収納中に画像が投射領域201と一体となって見えるので、投射画像が電動スクリーン2にもともと描画されているように見える。このため、現実感のあるプロジェクションシステム10として消費者に訴求できる。
【0052】
第1の実施形態では撮像部47の撮影画像に基づいて投射領域201のサイズを求める構成として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電動スクリーン2がスクリーン部20の展開に係る情報をプロジェクター11に送信し、この情報をもとにプロジェクター11が投射可能な投射領域201のサイズを求める構成としてもよい。この構成例について、第2の実施形態として説明する。
【0053】
[第2の実施形態]
図9は、本発明を適用した第2の実施形態に係るプロジェクションシステム10Aの機能的構成を示すブロック図である。
以下に説明する第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同様に構成される各部については同符号を付して説明を省略する。
【0054】
プロジェクションシステム10Aは、画像を投射するプロジェクター11Aと、画像が投射される投射領域201を有する電動スクリーン2Aとを組み合わせて構成され、プロジェクター11Aには画像供給装置としてPC13が接続されている。
プロジェクター11Aは、上記第1の実施形態におけるプロジェクター11に、通信部48を設けて構成される。また、電動スクリーン2Aは、上記第1の実施形態における電動スクリーン2に、制御部21に接続される通信部25を備えた構成である。
【0055】
電動スクリーン2Aの通信部25及びプロジェクター11Aの通信部48は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信、無線LAN、赤外線通信等の無線通信方式に準拠した通信機能を有し、相互に通信可能に構成されている。
通信部25(通知手段)は、制御部21が回転検出部24から取得する巻上モーター23の回転量、回転方向の値、或いは、これらの値をもとに制御部21が演算処理して求めたデータを、プロジェクター11へ送信する。通信部25が送信するデータとしては、例えば、投射可能な投射領域201のサイズ自体、或いは、展開されている投射領域201のサイズを、電動スクリーン2が完全展開状態にあるときの投射領域201のサイズに対する割合として求めたデータ等である。この場合、制御部21と回転検出部24とは協働して投射領域検出手段として機能する。
【0056】
プロジェクター11Aの通信部48は、制御部103が備えるスクリーンサイズ検出部103Bの制御により、電動スクリーン2Aから送信される無線信号を受信して、当該信号に含まれる情報をスクリーンサイズ検出部103Bに出力する。ここで、通信部48は、スクリーンサイズ検出部103Bとともに情報取得手段として機能する。スクリーンサイズ検出部103Bは、通信部48が受信した情報が巻上モーター23の回転量や回転方向の値であった場合には、これらの値に基づいて、投射可能な投射領域201のサイズを求める。また、通信部48が受信した情報が、投射領域201のサイズ自体、或いは、電動スクリーン2が完全展開状態にあるときのサイズに対する割合で示された投射領域201のサイズ等であった場合、スクリーンサイズ検出部103Bは、受信された情報を投射サイズ算出部103Cに出力する。この場合、投射サイズ算出部103Cは、通信部48が受信した情報に基づいて、フレームメモリー115に展開された画像データのうち投射する範囲を決定する。
【0057】
図10は、第2の実施形態におけるプロジェクター11Aの動作を示すフローチャートである。
操作パネル45またはリモコン51の操作により投射実行が指示されると、プロジェクター11Aは図10の動作を開始する。
スクリーンサイズ検出部103Bは、通信部48により電動スクリーン2Aから送信される情報を受信させ(ステップS21)、受信された情報をもとに投射領域201のサイズを取得する(ステップS22)。投射サイズ算出部103Cは、スクリーンサイズ検出部103Bが取得した投射領域201のサイズを、予め記憶部105に記憶している完全展開状態における投射領域201のサイズと比較し(ステップS23)、画像の一部のみ投射するか、画像全体を投射するかを判別する(ステップS15)。ここで、通信部48により受信された情報が、完全展開状態に対する現在の投射領域201のサイズの割合等を示す情報であった場合には、投射範囲設定部103Dは、この情報に基づいて画像の一部のみを投射するか全体を投射するかを判別する。
【0058】
スクリーンサイズ検出部103Bが検出した投射領域201のサイズが完全展開状態におけるサイズにほぼ等しく、画像全体を投射する場合(ステップS15;No)、制御部103は後述するステップS18に移行して、投射制御部103Eが画像全体を投射部3により投射領域201に投射させる。
これに対し、スクリーンサイズ検出部103Bが検出した投射領域201のサイズが完全展開状態より小さく、画像の一部のみを投射する場合(ステップS15;Yes)、投射範囲設定部103Dが、記憶部105に予め記憶している投射方法の設定値を取得する(ステップS16)。
投射範囲設定部103Dは、記憶部105から取得した設定値により指定される方法で、フレームメモリー115に展開された画像のうち投射する範囲を設定し、この設定した範囲外を黒色の領域にした画像を生成させる(ステップS17)。その後、投射制御部103Eの制御により、表示制御部107から光変調装置駆動部119に、一部が黒色の領域となった画像を出力させ、光変調装置32の液晶パネルに描画を実行させて、当該画像を投射部3によって投射領域201に投射させる(ステップS18)。
その後、制御部103は、操作パネル45またはリモコン51の操作により投射終了が指示されたか否かを判別し(ステップS19)、投射を継続する場合は(ステップS19;No)ステップS11に戻り、投射終了の指示があった場合には(ステップS19;Yes)、本処理を終了する。
【0059】
以上説明したように、本発明を適用した第2の実施形態に係るプロジェクションシステム10Aは、第1の実施形態に係るプロジェクションシステム10と同様に、面積可変の投射領域201を備えた電動スクリーン2Aと、電動スクリーン2Aに画像を投射するプロジェクター11Aとを備え、プロジェクター11Aが、画像を投射する投射部3と、電動スクリーン2における投射領域201のサイズを検出するスクリーンサイズ検出部103Bと、スクリーンサイズ検出部103Bにより検出された投射領域201のサイズが、完全展開状態の投射領域201のサイズ(所定のサイズ)より小さい場合に、当該所定のサイズの投射領域201に画像全体を投射する際の倍率で、投射部3により投射領域201内に画像の一部を投射させる投射制御部103Eと、を備えるので、例えば収納式の電動スクリーン2のスクリーン部20の収納時または展開時のように、電動スクリーン2の投射領域201のサイズが変化する場合であっても、変化する投射領域201に画像を投射できる。また、投射領域201のサイズが変化しても投射倍率が変化しないため、見る人に違和感を抱かせないように画像を投射できる。また、プロジェクター11Aのスクリーンサイズ検出部103Bは、電動スクリーン2Aから送信される投射領域201のサイズに係る情報に基づいて、投射領域201のサイズを検出するので、電動スクリーン2Aを使用して投射領域201のサイズを容易に検出できる。
【0060】
なお、上述した各実施形態は本発明を限定するものではなく、上記各実施形態とは異なる態様として本発明を適用することも可能である。例えば、上記各実施形態では電動スクリーン2、2Aは反射型のスクリーンであり、プロジェクター11、11Aが電動スクリーン2、2Aの前方から画像を投射するよう設置された構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電動スクリーン2、2Aが透過型のスクリーンとして構成され、プロジェクター11、11Aが電動スクリーン2、2Aの背面側から画像を投射する構成に本発明を適用することも勿論可能である。また、上記各実施形態では投射制御部103Eの制御により、一部を黒色にした画像を光変調装置32の液晶パネルに描画することで、画像の一部のみを投射する構成として説明したが、例えば、投射部3に、光変調装置32で変調された光の一部を遮る遮光部を設け、この遮光部を制御することで画像の一部のみの投射を実現することも可能である。この場合、光変調装置は画像全体を投射する場合と同様に光を変調すればよいので、変調装置の制御が簡単になるという利点がある。また、スクリーンサイズ検出部103Bが投射領域201のサイズを検出するために、撮像部47の撮影画像データを使用する構成、及び、電動スクリーン2Aが投射領域201のサイズに係る情報を送信し、この情報に基づいて投射領域201のサイズを取得する構成について説明したが、プロジェクター11、11Aの外部の装置が投射領域201のサイズに係る情報を生成して送信する構成としてもよい。また、電動スクリーン2は手動により展開及び収納されるものであってもよい。
【0061】
さらに、上記各実施形態において記憶部105が記憶していた制御プログラムや設定値等のデータを、可搬型の記録媒体に記憶した構成とすることも可能であるし、プロジェクター11、11Aに通信ネットワークを介して接続された他の装置が、当該装置からダウンロード可能に記憶した構成としてもよい。
また、図3及び図9に示したプロジェクションシステム10、10Aの各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、プロジェクションシステム10、10Aの具体的な細部構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
2、2A…電動スクリーン(スクリーン)、3…投射部(投射手段)、10、10A…プロジェクションシステム、11、11A…プロジェクター、21…制御部(投射領域検出手段)、23…巻上モーター、24…回転検出部(投射領域検出手段)、25…通信部(通知手段)、31…照明光学系(光源)、32…光変調装置(光変調手段)、33…投射光学系、47…撮像部(撮像手段)、48…通信部(情報取得手段)、100…画像、100A…投射する範囲、103…制御部、103A…補正制御部、103B…スクリーンサイズ検出部(検出手段、情報取得手段)、103C…投射サイズ算出部、103D…投射範囲設定部、103E…投射制御部(投射制御手段)、105…記憶部、105A…制御プログラム、107…表示制御部、115…フレームメモリー、201…投射領域、T…上端位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面積可変の投射領域を備えた投射面に画像を投射するプロジェクターであって、
画像を投射する投射手段と、
前記投射面における前記投射領域のサイズを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、前記所定のサイズの前記投射領域に前記画像全体を投射する際の倍率で、前記投射手段により前記投射領域内に前記画像の一部を投射させる投射制御手段と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
前記投射制御手段は、前記検出手段により検出された前記投射領域のサイズが前記所定のサイズまたはそれ以上のサイズである場合には、前記画像の全体を前記投射手段により投射させることを特徴とする請求項1記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記投射手段は、光源と、前記光源が発した光を変調する光変調手段とを備え、
前記投射制御手段は、前記検出手段が検出した前記投射領域のサイズに基づいて、前記画像において前記投射領域に投射する範囲を選択し、選択された範囲が投射されるように前記光変調手段により光を変調させることを特徴とする請求項1または2記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記投射面を撮影する撮像手段を備え、
前記検出手段は、前記撮像手段の撮影画像に基づいて、前記投射面の前記投射領域のサイズを検出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記検出手段は、前記投射面側から送信される前記投射領域のサイズに係る情報に基づいて、前記投射領域のサイズを検出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプロジェクター。
【請求項6】
面積可変の投射領域を備えた投射面と、前記投射面の前記投射領域に画像を投射するプロジェクターとを備えたプロジェクションシステムであって、
前記投射面は、
前記投射領域のサイズを検出する投射領域検出手段と、
前記投射領域検出手段により検出された前記投射領域のサイズに係る情報を前記プロジェクターに通知する通知手段と、を備え、
前記プロジェクターは、
画像を投射する投射手段と、
前記投射面から通知される前記投射領域のサイズに係る情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された前記投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、前記所定のサイズの前記投射領域に前記画像全体を投射する際の倍率で、前記投射手段により前記投射領域内に前記画像の一部を投射させる投射制御手段と、
を備えることを特徴とするプロジェクションシステム。
【請求項7】
画像を投射する投射手段を備え、面積可変の投射領域を備えた投射面に画像を投射するプロジェクターの制御方法であって、
前記投射面における前記投射領域のサイズを検出し、
検出された前記投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、前記所定のサイズの前記投射領域に前記画像全体を投射する際の倍率で、前記投射領域内に前記画像の一部を投射すること、
を特徴とするプロジェクターの制御方法。
【請求項8】
画像を投射する投射手段を備え、面積可変の投射領域を備えた投射面に画像を投射するプロジェクターを制御するコンピューターが実行可能なプログラムであって、
前記コンピューターを
前記投射面における前記投射領域のサイズを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記投射領域のサイズが所定のサイズより小さい場合に、前記所定のサイズの前記投射領域に前記画像全体を投射する際の倍率で、前記投射手段により前記投射領域内に前記画像の一部を投射させる投射制御手段と、
して機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−257071(P2012−257071A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128941(P2011−128941)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】