説明

プロジェクタ及びその制御方法

【課題】装置が異常状態である旨を使用者に効果的に認識させることが可能なプロジェクタ及びその制御方法を提供する。
【解決手段】温度センサ24による検出温度が第1の所定温度T1以上の場合には、主制御部20は、画像制御部26に対して、赤色光用の液晶ライトバルブ14Rの画像形成領域に含まれるすべての画素の透過率を最大とするように指示をする。画像制御部26は、前記指示内容に応じた画像データを自ら生成してライトバルブ駆動部29に出力し、ライトバルブ駆動部29は、画像制御部26が生成した画像データに基づいて赤色光用の液晶ライトバルブ14Rを駆動する。さらに、主制御部20は、光源駆動部23に指示をして、緑色光及び青色光用のLED光源11G,11Bを消灯させることにより、画像全体が赤色一色からなる警告画像をスクリーンSCに投写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長域が異なる光をそれぞれ射出する複数の光源を備えたプロジェクタ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から射出された光を変調し、スクリーン等に画像を投写するプロジェクタにおいて、温度異常等、装置に生じた異常を検知する異常検知部を備えるとともに、前記異常を使用者に知らせる警告表示手段を備えたプロジェクタが知られている(例えば、特許文献1)。このようなプロジェクタは、LED(発光ダイオード)等からなるインジケータを警告表示手段として備えたり、投写画像の周縁部に警告を表す文字や記号等を合成したりして、使用者に対して警告を行うようになっている。なお、警告後も異常状態が継続する場合には、光源を強制的に消灯する等の安全処置が施される。
【0003】
【特許文献1】特開平5−93953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インジケータの点灯や点滅による警告表示は、プロジェクタと使用者との位置関係によっては使用者に気付かれず、異常状態が放置される恐れがある。例えば、温度異常の警告が気付かれずに放置され、安全処置が施された場合には、使用者にとっては、光源が突然消灯することになり利便性が悪い。
また、投写画像の周縁部に文字や記号等を合成する警告表示では、投写状況により文字等がスクリーンの外に投写されてしまう恐れがある。特許文献1に記載のプロジェクタは、警告表示時にズーム状態を変更して、文字や記号がスクリーン上に表示されるようにしているものの、使用者は、文字等が表示されたことよりも、ズーム状態が変更されたことに対して困惑してしまうため、警告内容が十分に認識されにくいという問題を有している。
【0005】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、装置が異常状態である旨を使用者に効果的に認識させることが可能なプロジェクタ及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプロジェクタは、波長域が異なる光をそれぞれ射出する複数の光源と、前記複数の光源が射出した光を変調する光変調装置と、前記光変調装置で変調された光を投写して、投写面に画像を表示させる投写光学系と、当該プロジェクタの異常を検知する異常検知部と、前記異常検知部が前記異常を検知した際に、前記複数の光源のうち一部の光源の輝度を低下させる光源駆動部とを有することを特徴とする。
【0007】
このプロジェクタによれば、異常検知部が異常を検知した際に、光源駆動部が、波長域が異なる複数の光源のうち一部の光源の輝度を低下させることから、表示される画像の色調が変わり、異常が生じている旨を効果的に使用者に認識させることが可能となる。さらに、光源の輝度を低下させるため、電力の消費や温度の上昇を抑制することが可能となる。特に、異常検知部によって検知された異常が高温異常である場合には、当該異常状態を緩和することが可能となる。
【0008】
このプロジェクタにおいて、前記光源駆動部は、前記異常検知部が前記異常を検知した際に、前記一部の光源を消灯させることが望ましい。
【0009】
このプロジェクタによれば、異常検知部が異常を検知した際に、光源駆動部が、波長域が異なる複数の光源のうち一部の光源を消灯させることから、画像の色調が著しく変化し、異常が生じている旨をより効果的に認識させることが可能となる。さらに、光源を消灯させるため、電力消費や温度上昇をより一層抑制することが可能となる。
【0010】
このプロジェクタにおいて、前記光変調装置は、前記異常検知部が前記異常を検知した際に、当該光変調装置を透過する光の量が増加するように変調状態を変更することが望ましい。
【0011】
このプロジェクタによれば、異常検知部が異常を検知した際に、光変調装置が透過光量を増大させるため、光変調装置による光の遮断や吸収に伴う熱の発生が抑制され、温度上昇をさらに抑制することが可能となる。さらに、投写される光量が増大することになるため、異常が生じている旨をより効果的に認識させることが可能となる。
【0012】
このプロジェクタにおいて、前記光源は、固体光源素子で構成されていることが望ましい。
【0013】
このプロジェクタによれば、瞬時点灯・瞬時消灯が可能で、消灯(輝度低下)後すぐに再点灯(輝度復帰)させても光源に対する負担が小さい固体光源素子で光源が構成されているため、光源を消灯(輝度低下)した状態から短時間で安定した点灯状態に復帰させることが可能となり、利便性が向上する。
【0014】
このプロジェクタにおいて、前記複数の光源は、赤色光を射出する赤色光源、緑色光を射出する緑色光源、及び青色光を射出する青色光源を含み、前記光源駆動部は、前記異常検知部が前記異常を検知した際に、前記複数の光源のうち少なくとも前記赤色光源を除く光源の輝度を低下させることが望ましい。
【0015】
一般に、固体光源素子が射出する赤色光、緑色光、青色光を合成してカラー画像を表示させる際、ホワイトバランスを整えた状態では、赤色光の固体光源素子の電力消費が最も小さくなる。このため、赤色光源を除く光源の輝度を低下させることにより、電力消費や温度上昇を一層抑制することが可能となる。
【0016】
このプロジェクタにおいて、前記光源駆動部は、前記異常検知部が前記異常を検知した際に、前記複数の光源のうち少なくとも前記赤色光源を除く光源を消灯させることが望ましい。
【0017】
このプロジェクタによれば、異常検知部が異常を検知した際に、光源駆動部が、複数の光源のうち少なくとも赤色光源を除く光源を消灯させることから、画像の色調が著しく変化し、異常が生じている旨をより効果的に認識させることが可能となる。さらに、光源を消灯させるため、電力消費や温度上昇をより一層抑制することが可能となる。
【0018】
本発明のプロジェクタの制御方法は、波長域が異なる光をそれぞれ射出する複数の光源を備え、前記複数の光源から射出された光を変調して投写するプロジェクタの制御方法であって、当該プロジェクタの異常を検知する第1の工程と、前記第1の工程で前記異常が検知された際に、前記複数の光源のうち一部の光源の輝度を低下させる第2の工程とを備えたことを特徴とする。
【0019】
このプロジェクタの制御方法によれば、第1の工程で異常が検知された際に、第2の工程で、波長域が異なる複数の光源のうち一部の光源の輝度を低下させることから、表示される画像の色調が変わり、異常が生じている旨を効果的に使用者に認識させることが可能となる。さらに、光源の輝度を低下させるため、温度の上昇や電力の消費を抑制することが可能となる。
【0020】
このプロジェクタの制御方法において、前記第2の工程では、前記第1の工程で前記異常が検知された際に、前記複数の光源のうち一部の光源を消灯させることが望ましい。
【0021】
このプロジェクタの制御方法によれば、第1の工程で異常が検知された際に、第2の工程で、波長域が異なる複数の光源のうち一部の光源の輝度を消灯させることから、画像の色調が著しく変化し、異常が生じている旨をより効果的に認識させることが可能となる。さらに、光源を消灯させるため、電力消費や温度上昇をより一層抑制することが可能となる。
【0022】
また、上述したプロジェクタ及びその制御方法が、プロジェクタに備えられたコンピュータを用いて構築されている場合には、本発明は、その機能を実現するためのプログラム、或いは当該プログラムを前記コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体等の態様で構成することも可能である。記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコード等の符号が印刷された印刷物、プロジェクタの内部記憶装置(RAMやROM等のメモリ)、及び外部記憶装置等、前記コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係るプロジェクタについて、図面を参照して説明する。本実施形態のプロジェクタは、外部から入力される画像信号に応じた画像の投写を行うものである。
【0024】
図1は、本実施形態に係るプロジェクタの概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プロジェクタ1には、画像の投写を行う画像投写部10が備えられている。画像投写部10は、光源としてのLED光源11と、光変調装置としての液晶ライトバルブ14と、投写光学系としての投写レンズ16とを備えている。
【0025】
LED光源11は、マトリクス状に配列された複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)11aを有している。LED11a等の固体光源素子は、メタルハライドランプ等の放電型光源ランプに比べて、電源を含めて小型化が可能であるうえ、瞬時点灯・瞬時消灯が可能であること、消灯後すぐに再点灯させても光源に対する負担が小さく安定した発光が可能であること、色再現性が広く長寿命であること等、プロジェクタ用の光源素子として多くの利点を備えている。
【0026】
液晶ライトバルブ14には、複数の画素がマトリクス状に形成されており、LED光源11から射出した光を、画像信号に基づいて画素毎に変調することにより、画像信号に応じた画像光を形成する。液晶ライトバルブ14で形成された画像光は、投写レンズ16によって、スクリーンSC等の投写面に向けて拡大投写される。
【0027】
図2は、画像投写部10の構成をより詳細に説明するための説明図である。
図2に示すように、本実施形態のLED光源11は、それぞれ波長域の異なる3色(赤、緑、青)の色光R,G,Bを発する3つのLED光源11R(赤色光源),11G(緑色光源),11B(青色光源)で構成されており、各LED光源11R,11G,11Bから射出した色光R,G,Bは、偏光変換素子12に入射する。偏光変換素子12は、各LED光源11R,11G,11Bからの光を液晶ライトバルブ14(14R,14G,14B)で効率よく利用可能とするため、特定の偏光方向を有する偏光光に揃える機能を有している。偏光変換素子12を射出した偏光光は、ミラー13によって反射された後、それぞれ3つの液晶ライトバルブ14R,14G,14Bを照明する。
【0028】
液晶ライトバルブ14R,14G,14Bのそれぞれは、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル14aを備えており、液晶パネル14aの内面には、液晶に対して微小領域(画素)毎に駆動電圧を印加可能な透明電極(画素電極)がマトリクス状に形成されている(図示せず)。また、液晶パネル14aの入射側表面及び射出側表面には、それぞれ入射側偏光板14b及び射出側偏光板14cが貼り付けられている。入射側偏光板14b及び射出側偏光板14cは、それぞれ特定の偏光方向の偏光光のみを透過可能であり、入射側偏光板14bは、偏光変換素子12によって揃えられた偏光方向の偏光光を透過可能となっている。このため、各液晶ライトバルブ14R,14G,14Bに照射された各色光の大部分は入射側偏光板14bを透過して、液晶パネル14aに入射する。
【0029】
ここで、液晶パネル14aの各画素に、画像信号に応じた駆動電圧が印加されると、液晶パネル14aに入射した光は、駆動電圧に応じて変調され、画素毎に異なる偏光方向を有した偏光光となる。この偏光光のうち、射出側偏光板14cを透過可能な偏光成分のみが液晶ライトバルブ14R,14G,14Bから射出される。つまり、液晶ライトバルブ14R,14G,14Bが、画像信号に応じて、画素毎に異なる透過率で入射光を透過させることによって、階調を有する画像光が色光毎に形成される。液晶ライトバルブ14R,14G,14Bから射出した各色光からなる画像光は、クロスダイクロイックプリズム15に入射する。
【0030】
クロスダイクロイックプリズム15は、各液晶ライトバルブ14R,14G,14Bから射出された各色の画像光を、画素毎に合成してカラー画像を表す画像光を形成する。クロスダイクロイックプリズム15によって合成された画像光は、投写レンズ16によって拡大投写され、スクリーンSC等の投写面上に画像が表示される。
【0031】
図1に戻って、プロジェクタ1には、CPU等からなる主制御部20が備えられており、主制御部20には、主記憶部21、操作部22、光源駆動部23、温度センサ24、ファン駆動部25、画像制御部26が接続されている。
【0032】
主制御部20は、コンピュータとして機能し、主記憶部21に記憶されている制御プログラムに従って、プロジェクタ1の動作を統括制御する。主記憶部21は、フラッシュメモリ等のROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等によって構成され、前記制御プログラムを記憶するとともに、各種設定値等の記憶に用いられる。操作部22には、電源のオン・オフや、画質の調整等、プロジェクタ1に対して各種指示を行うための複数のキー等が備えられており、使用者が操作部22を操作すると、操作部22は、操作内容に応じた操作信号を主制御部20に出力する。
【0033】
光源駆動部23は、主制御部20からの指示に基づいて、LED光源11への電力供給を制御することにより、LED光源11の点灯及び消灯を行う。温度センサ24は、サーミスタ等によって構成され、プロジェクタ1の内部温度を検出可能になっており、検出温度に応じた検出信号を主制御部20に出力する。ファン駆動部25は、主制御部20からの指示に基づいて空冷ファン27を駆動し、プロジェクタ1の内部を冷却することができる。なお、温度センサ24や空冷ファン27は、各々1つずつに限定されず、LED光源11や液晶ライトバルブ14等、温度管理が必要な部位毎に備えるようにしてもよい。
【0034】
ここで、主制御部20は、温度センサ24からの検出信号に基づいてプロジェクタ1の内部温度を認識し、空冷ファン27による冷却を制御する一方、空冷ファン27による冷却にも拘わらず内部温度が所定温度以上となるまで上昇した場合(例えば、空冷ファン27の吸気口や排気口付近に置かれた障害物等により通気が阻害される場合等)には、装置が高温異常であると判断する。つまり、温度センサ24と主制御部20とは、本発明の異常検知部に相当する。
【0035】
画像制御部26は、レシーバ28、ライトバルブ駆動部29に接続されており、主制御部20からの指示に基づいて、レシーバ28に入力された画像信号に対する各種処理、及び液晶ライトバルブ14による画像形成の制御を行う。
【0036】
外部から供給される画像信号は、レシーバ28に入力されて画像制御部26で処理可能な形式の画像データに変換された後、画像制御部26に出力される。画像制御部26は、レシーバ28から入力された画像データに対して、解像度を液晶ライトバルブ14の解像度(画素数)に合わせる解像度変換や、輝度調整、コントラスト調整、シャープネス調整等の各種画質調整、或いは、メニューやメッセージ等のOSD(オンスクリーンディスプレイ)画像を合成する処理を施し、ライトバルブ駆動部29に出力する。
【0037】
ライトバルブ駆動部29は、入力された画像データに応じて、液晶ライトバルブ14を駆動するための駆動信号を生成する。液晶ライトバルブ14が、この駆動信号に応じて光源光を変調することにより、画像データに応じた画像光が形成され、投写レンズ16から投写される。
【0038】
ここで、液晶ライトバルブ14の画像形成方法について図面を用いて説明する。
図3(a)〜(d)は、液晶ライトバルブ14(14R,14G,14B)の画像形成方法を説明するための説明図であり、液晶ライトバルブ14の正面図を示している。
【0039】
図3(a)に示すように、各液晶ライトバルブ14R,14G,14Bの液晶パネル14aには、複数の画素18pがマトリクス状に配列された画素領域18aが備えられており、液晶パネル14aがライトバルブ駆動部29からの駆動信号に応じて各画素18pの透過率を調整することによって画像信号に応じた画像光(画像)が形成される。本実施形態の画素領域18aは、アスペクト比(Ax:Ay)が4:3となっており、アスペクト比が4:3の画像を表示する際には、画素領域18aの全体で画像を形成する。
【0040】
一方、図3(b)〜(c)に示すように、画素領域18a内の一部の領域(以下、画像形成領域18eという)を用いて画像を形成する際には、当該画像形成領域18e内に画像信号に応じた画像を形成するとともに、画像形成領域18eの外側の領域(無効領域18n)に含まれるすべての画素18pの透過率を最小値に設定する。
例えば、画素領域18aのアスペクト比(4:3)と異なるアスペクト比(16:9等)の画像を表示する際には、図3(b)に示すように、画素領域18a中に、画像と同じアスペクト比を有する画像形成領域18eを定め、当該画像形成領域18e内に画像を形成する。また、液晶ライトバルブ14に形成する画像の大きさによって投写画像のサイズを変更する電子ズームを行う際には、図3(c)に示すように、ズーム倍率に応じた大きさの画像形成領域18e内に画像を形成し、あおり投写による投写光の台形歪を抑制する際には、図3(d)に示すように、あおり投写による投写画像が矩形となるような台形状の画像形成領域18e内に画像を形成する。
【0041】
次に、本実施形態のプロジェクタ1の動作について、図面を参照して説明する。
図4は、画像を投写中のプロジェクタ1の動作を説明するためのフローチャートである。プロジェクタ1は、画像信号に応じた画像を投写している間、温度センサ24からの検出信号に応じて空冷ファン27の制御を行う一方で、図4に示すフローに従った動作を行う。
【0042】
図4に示すように、ステップS101では、主制御部20は、温度センサ24による検出温度が第1の所定温度T1(正常か異常かを判断するための目安となる温度)以上か否かを判断する。第1の所定温度T1未満であれば、プロジェクタ1の内部温度は正常であると判断して当該ステップを繰り返し、第1の所定温度T1以上であれば、高温異常であると判断してステップS102に移行する。
【0043】
ステップS102に移行した場合には、主制御部20は、投写画像を用いて使用者に対する警告表示を開始する。具体的には、主制御部20は、画像制御部26に対して、赤色光用の液晶ライトバルブ14Rの画像形成領域18eに含まれるすべての画素18pの透過率を最大とするように指示をする。画像制御部26は、前記指示内容に応じた画像データを自ら生成してライトバルブ駆動部29に出力し、ライトバルブ駆動部29は、画像制御部26が生成した画像データに基づいて赤色光用の液晶ライトバルブ14Rを駆動する(ステップS102a)。さらに、主制御部20は、光源駆動部23に指示をして、緑色光及び青色光用のLED光源11G,11Bを消灯(ステップS102b)させることにより、画像全体が赤色一色からなる警告画像をスクリーンSCに投写する。なお、ライトバルブ駆動部29は、緑色光及び青色光用の液晶ライトバルブ14G,14Bに対しては、レシーバ28から入力される画像データに応じた駆動を継続するが、LED光源11G,11Bが消灯するため、投写画像には反映されない。
【0044】
ステップS103では、主制御部20は、警告表示を行ったまま、所定時間(例えば、数秒)待機する。
【0045】
前記所定時間が経過し、ステップS104に移行すると、主制御部20は、画像制御部26に指示をして、赤色光用の液晶ライトバルブ14Rを、レシーバ28からの画像データに応じた駆動状態に復帰させるとともに、光源駆動部23に指示をして、緑色光及び青色光用のLED光源11G,11Bを再点灯させる。これにより、警告表示が終了し、画像信号に応じた画像の投写が再開する。
【0046】
使用者は、上記の警告表示により、プロジェクタ1が高温異常であること認識した後、プロジェクタ1の電源をオフにするか、或いは、高温異常となった要因を排除する(例えば、空冷ファン27の吸気口や排気口付近に障害物がある場合にはこれを取り除く)必要がある。
【0047】
ステップS105では、主制御部20は、温度センサ24からの検出温度が第1の所定温度T1以上であるか否かを判断し、依然として第1の所定温度T1以上である場合には、ステップS106に移行する。一方、例えば、使用者が高温異常となった要因を排除するなどした結果、検出温度が第1の所定温度T1未満となった場合には、ステップS101に戻る。
【0048】
ステップS106では、主制御部20は、温度センサ24からの検出温度が第1の所定温度T1より高い第2の所定温度T2(安全処置を施すべきか否かを判断するための目安となる温度)以上となったか否かを判断する。第2の所定温度T2未満であればステップS105に戻り、第2の所定温度T2以上になった場合には、ステップS107に移行する。
【0049】
内部温度が第2の所定温度T2以上となり、ステップS107に移行した場合は、主制御部20は、LED光源11(11R,11G,11B)の点灯がこれ以上継続することは装置にとって危険であると判断し、光源駆動部23に指示をして、3つのLED光源11R,11G,11Bを消灯させた後、処理を終了する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクタ1によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態のプロジェクタ1によれば、温度センサ24の検出温度が第1の所定温度T1以上となった際に、主制御部20が、光源駆動部23に指示をして、2つのLED光源11G,11Bを消灯させている。この結果、投写画像が、赤色光のみによって形成された画像に切り替わるため、異常が生じている旨を効果的に使用者に認識させることが可能となる。さらに、LED光源11G,11Bを消灯することにより、プロジェクタ1の電力消費や内部温度の上昇が抑制され、高温異常の状態を緩和することが可能となる。
【0051】
(2)本実施形態のプロジェクタ1によれば、温度センサ24の検出温度が第1の所定温度T1以上となった際に、主制御部20が、画像制御部26に指示をして、赤色光用の液晶ライトバルブ14Rにおける画像形成領域18e内の透過率を最大にしている。この結果、液晶ライトバルブ14Rを透過する光量が増大し、射出側偏光板14cで吸収される光量が低減するため、光が射出側偏光板14cで吸収されることによる発熱が抑制され、温度上昇をさらに抑制することが可能となる。さらに、透過率を最大にすることにより、投写される光量が増大するため、異常が生じている旨をより効果的に認識させることが可能となる。
【0052】
(3)本実施形態のプロジェクタ1によれば、瞬時点灯・瞬時消灯が可能で、消灯(輝度低下)後すぐに再点灯(輝度復帰)させても光源に対する負担が小さい固体光源素子(LED11a)で光源が構成されているため、光源を消灯(輝度低下)した状態から短時間で安定した点灯状態に復帰させることが可能となり、利便性が向上する。
【0053】
(4)本実施形態のプロジェクタ1によれば、温度センサ24の検出温度が第1の所定温度T1以上となった際に、赤色光用のLED光源11Rを除く2つのLED光源11G,11Bを消灯させている。一般に、LEDが射出する赤色光、緑色光、青色光を合成してカラー画像を表示させる際、ホワイトバランスを整えた状態では、赤色光のLEDの電力消費が最も小さくなる。このため、赤色光用のLED光源11Rを除く2つのLED光源11G,11Bを消灯させることにより、電力消費や温度上昇を一層抑制することが可能となる。
【0054】
(変形例)
なお、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
前記実施形態では、LED11aで構成されたLED光源11を用いているが、波長域が異なる光をそれぞれ射出する複数の光源を備えていれば、エレクトロルミネッセンス(EL)や半導体レーザー(LD)等の他の固体光源素子を用いてもよいし、固体光源以外の光源を用いることも可能である。
【0055】
前記実施形態では、プロジェクタ1の内部温度が第1の所定温度T1以上になった場合に、2つのLED光源11G,11Bを消灯しているが、LED光源11G,11Bの輝度を所定量低下させるだけでも同様の効果を得ることができる。この場合、警告表示を終了させる際には、低下させたLED光源の輝度を復帰させればよい。なお、LED光源の消灯は、LED光源の輝度を低下させることの一形態とみなすことができる。
【0056】
前記実施形態では、プロジェクタ1の内部温度が第1の所定温度T1以上になった場合に、液晶ライトバルブ14Rの画像形成領域18e内の透過率を最大にしているが、画素領域18a全体の透過率を最大にするようにしてもよい。また、設定する透過率は最大値に限られず、警告である旨を認識可能な透過率であればよいし、赤色光用の液晶ライトバルブ14Rにおける平均的な透過率よりも高い透過率であれば、前記実施形態の効果(2)、即ち、射出側偏光板14cにおける光の吸収による熱の発生を抑制する効果を得ることができる。
【0057】
前記実施形態では、プロジェクタ1の内部温度が第1の所定温度T1以上になった場合に、液晶ライトバルブ14Rの画像形成領域18e内の透過率を最大としているが、レシーバ28から入力される画像データに応じた画像形成を継続するようにしてもよい。この場合でも、LED光源11G,11Bが消灯することにより、赤色光のみからなる画像に切り替わるため、異常が生じている旨を効果的に認識させることが可能となる。また、この場合、画像制御部26においては、警告表示前と同一の動作処理を行っていれば済むため、警告表示を行うための制御が容易になる。また、警告用画像データを予め主記憶部21に記憶させておき、当該警告用画像データに基づいた画像(メッセージ等)を赤色光のみで投写するようにしてもよい。
【0058】
前記実施形態では、プロジェクタ1の内部温度が第1の所定温度T1以上になった場合に、2つのLED光源11G,11Bを消灯し、赤色光用のLED光源11Rのみを用いて警告表示を行っているが、警告表示の態様はこれに限定されず、他の色光用のLED光源を用い警告表示を行ってもよいし、1つのLED光源のみを消灯して2つのLED光源を用いて警告表示を行うようにしてもよい。
【0059】
前記実施形態では、警告表示を行った後、プロジェクタ1の内部温度がさらに上昇した場合にLED光源11の消灯を行っているが、警告表示後、所定時間が経過した後にLED光源11を消灯するようにしてもよい。
【0060】
前記実施形態では、プロジェクタ1の内部温度が第1の所定温度T1以上になった後に、警告表示を1回のみ行っているが、時間を隔てて複数回の警告表示を行うようにしてもよい。
【0061】
前記実施形態では、プロジェクタ1の内部温度が所定温度以上になった場合(高温異常の場合)の警告表示を説明したが、警告表示すべき異常は高温異常のみに限定されず、他の異常状態の警告表示にも適用可能である。例えば、光源を交換するためのカバーが開放状態で危険である旨を通知するために、本発明の警告表示を行うようにしてもよい。
【0062】
前記実施形態では、3つのLED光源11R,11G,11Bが発する3色(赤、緑、青)の色光R,G,Bを用いてカラー画像を形成する態様を示したが、LED光源(色光)の数は3つに限られず、例えば、前記の3色にシアン(C)を加えた4色でカラー画像を形成する場合にも本発明を適用することは可能である。
【0063】
前記実施形態では、光変調装置として、複数の透過型の液晶ライトバルブ14を用いているが、透過型の液晶ライトバルブを1枚のみ用いた構成としてもよい。また、反射型の液晶ライトバルブ等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。さらに、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源から射出した光を変調する微小ミラーアレイデバイス等を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】プロジェクタの概略構成を示すブロック図。
【図2】画像投写部の構成をより詳細に説明するための説明図。
【図3】(a)〜(d)は、液晶ライトバルブの画像形成方法を説明するための説明図。
【図4】画像を投写中のプロジェクタの動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0065】
1…プロジェクタ、10…画像投写部、11,11R,11G,11B…LED光源、11a…LED、12…偏光変換素子、13…ミラー、14,14R,14G,14B…液晶ライトバルブ、14a…液晶パネル、14b…入射側偏光板、14c…射出側偏光板、15…クロスダイクロイックプリズム、16…投写レンズ、18a…画素領域、18e…画像形成領域、18p…画素、20…主制御部、21…主記憶部、22…操作部、23…光源駆動部、24…温度センサ、25…ファン駆動部、26…画像制御部、27…空冷ファン、28…レシーバ、29…ライトバルブ駆動部、T1…第1の所定温度、T2…第2の所定温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長域が異なる光をそれぞれ射出する複数の光源と、
前記複数の光源が射出した光を変調する光変調装置と、
前記光変調装置で変調された光を投写して、投写面に画像を表示させる投写光学系と、
当該プロジェクタの異常を検知する異常検知部と、
前記異常検知部が前記異常を検知した際に、前記複数の光源のうち一部の光源の輝度を低下させる光源駆動部と、
を有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタであって、前記光源駆動部は、前記異常検知部が前記異常を検知した際に、前記一部の光源を消灯させることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロジェクタであって、前記光変調装置は、前記異常検知部が前記異常を検知した際に、当該光変調装置を透過する光の量が増加するように変調状態を変更することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロジェクタであって、前記光源は、固体光源素子で構成されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のプロジェクタであって、前記複数の光源は、赤色光を射出する赤色光源、緑色光を射出する緑色光源、及び青色光を射出する青色光源を含み、前記光源駆動部は、前記異常検知部が前記異常を検知した際に、前記複数の光源のうち少なくとも前記赤色光源を除く光源の輝度を低下させることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のプロジェクタであって、前記光源駆動部は、前記異常検知部が前記異常を検知した際に、前記複数の光源のうち少なくとも前記赤色光源を除く光源を消灯させることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項7】
波長域が異なる光をそれぞれ射出する複数の光源を備え、前記複数の光源から射出された光を変調して投写するプロジェクタの制御方法であって、
当該プロジェクタの異常を検知する第1の工程と、
前記第1の工程で前記異常が検知された際に、前記複数の光源のうち一部の光源の輝度を低下させる第2の工程と、
を備えたことを特徴とするプロジェクタの制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプロジェクタの制御方法であって、前記第2の工程では、前記第1の工程で前記異常が検知された際に、前記複数の光源のうち一部の光源を消灯させることを特徴とするプロジェクタの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−334093(P2007−334093A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167039(P2006−167039)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】