説明

プロジェクタ装置

【課題】 偏光ビームスプリッタが限界温度を超えて高温となることを防止することが出来るプロジェクタ装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る液晶プロジェクタ装置は、ランプユニット4からの光を受けて映像光を生成する光学系2を具え、該光学系2には、ランプユニット4から発せられた光のP波及びS波の内、S波のみを抽出する機能を有する偏光ビームスプリッタ25が配備されると共に、偏光ビームスプリッタ25の光入射側の表面に接して後段スリット板24が配備され、該後段スリット板24には、偏光ビームスプリッタ25への光の入射を許容すべき複数箇所に複数のスリット24aが開設されている。後段スリット板24から光軸に沿ってランプユニット側へ離間した位置には、前段スリット板23が配備され、該前段スリット板23には、後段スリット板24の各スリット24aと光軸方向に互いに重なる複数箇所に、複数のスリット23aが開設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を光学系に導いて映像光を生成し、前方のスクリーンへ拡大投射するプロジェクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプロジェクタ装置は、ケーシングの内部に、光源となるランプと、偏光ビームスプリッタ、偏光板、液晶パネル、投射レンズ等から構成される光学系とを配備して構成される(特許文献1参照)。
偏光ビームスプリッタは、光のP波及びS波の内、一方の成分波のみを抽出する機能を有し、これによって液晶パネルには、偏光方向の揃った光が照射されることになる。
図6は、本発明の液晶プロジェクタ装置における偏光ビームスプリッタ(25)の構成を示しているが、偏光ビームスプリッタ(25)は、従来の液晶プロジェクタにおいても同様の構成を有しているので、以下、同図を用いて従来の偏光ビームスプリッタ(25)の構成について説明する。
【0003】
図6に示す如く、偏光ビームスプリッタ(25)は、偏光板(25a)の光出射側の表面にスリット状の2分の1波長板(25b)を接合して構成される。
偏光板(25a)の内部には、該偏光板(25a)に入射した光のP波を通過させると共にS波を反射する第1界面(125)と、S波を反射する第2界面(126)とが、偏光板(25a)の表面に対して45度の傾斜角度で交互に形成されている。
【0004】
第1界面(125)に入射した光の内、P波は、第1界面(125)を通過して2分の1波長板(25b)に至る。P波は2分の1波長板(25b)を通過することによって位相が反転され、S波となって出射される。一方、第1界面(125)で反射されたS波は第2界面(126)に至り、該第2界面(126)で反射されて、2分の1波長板(25b)の各スリット(25c)から出射される。従って、偏光ビームスプリッタ(25)からは、S波のみが出射されることになる。
【0005】
偏光ビームスプリッタ(25)においては、第2界面(126)に光が入射すると、該偏光ビームスプリッタ(25)の偏光機能が低下するため、偏光板(25a)の光入射側には、アルミニウム製のスリット板(24)が設置されている。スリット板(24)の各スリット(24a)は、第1界面(125)への光の入射を許容する位置に開設されており、該スリット板(24)によって、第2界面(126)への光の入射は阻止されることになる。
ここで、偏光ビームスプリッタ(25)の第1界面(125)とスリット板(24)に開設した複数のスリット(24a)との相対位置精度を維持すべく、スリット板(24)は、偏光ビームスプリッタ(25)の光入射側の表面に接触させて、或いは該表面に近接した位置に設置されている。
【特許文献1】特開平10−274752号公報 [G02B 27/28]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、偏光ビームスプリッタ(25)は、限界温度を超えると偏光機能が著しく低下するため、該限界温度を超えない範囲で使用する必要があるが、スリット板(24)は、偏光ビームスプリッタ(25)の表面に接触し、或いは該表面に近接した位置に設置されているため、光源からの光を受けて高温となったスリット板(24)から偏光ビームスプリッタ(25)へ熱が伝達されて、該偏光ビームスプリッタ(25)が限界温度を超えて高温となる問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、偏光ビームスプリッタが限界温度を超えて高温となることを防止することが出来るプロジェクタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプロジェクタ装置は、ケーシング(1)の内部に、光源と、該光源からの光を受けて映像光を生成する光学系(2)とを配備して構成され、該光学系(2)には、その光軸上に、互いに直交する方向に振動する光の第1成分波と第2成分波の内、第1成分波のみを抽出するための偏光ビームスプリッタ(25)が配備されている。偏光ビームスプリッタ(25)は、偏光板(25a)の光出射側の表面に2分の1波長板(25b)を接合して構成され、該偏光板(25a)には、前記第2成分波を通過させると共に第1成分波を反射する複数の第1界面(125)と、第1界面(125)にて反射された第1成分波を光出射方向に向けて反射する複数の第2界面(126)とが、光軸を交叉する方向に交互に形成されており、該偏光板(25a)の光入射側の表面に接して或いは近接してスリット板(24)が配備され、該スリット板(24)には、前記偏光板(25a)の第1界面(125)に対応する複数箇所に複数のスリット(24a)が開設されている。
【0009】
前記光学系(2)には、光軸に沿って前記スリット板(24)から光源側へ離間した位置に、前記スリット板(24)を後段スリット板として、前段スリット板(23)が配備され、該前段スリット板(23)には、後段スリット板(24)の各スリット(24a)と光軸方向に互いに重なる複数箇所に、複数のスリット(23a)が開設されている。
【0010】
上記本発明のプロジェクタ装置において、光源から発せされた光の内、偏光ビームスプリッタ(25)を構成する偏光板(25a)の第2界面(26)への光の入射は、前段スリット板(23)によってその大部分が阻止される。これによって、後段スリット板(24)が受ける不要光の量が従来よりも少なくなり、この結果、後段スリット板(24)の温度上昇が防止される。
【0011】
従って、上記本発明のプロジェクタ装置によれば、後段スリット板(24)が従来のプロジェクタ装置のスリット板の如く高温となることはなく、後段スリット板(24)から偏光ビームスプリッタ(25)へ伝達される熱量は小さなものとなる。
又、前段スリット板(23)は、光源からの光を受けて高温となるが、前段スリット板(23)は、偏光ビームスプリッタ(25)から離間した位置に設置されているので、前段スリット板(23)から偏光ビームスプリッタ(25)へ伝達される熱量も小さなものとなる。
この結果、偏光ビームスプリッタ(25)の温度上昇が最小限に抑制されるので、偏光ビームスプリッタ(25)が限界温度を超えて高温となることを防止することが出来る。
【0012】
具体的構成において、前記前段スリット板(23)と後段スリット板(24)との間には、インテグレータレンズ(22)が配備され、該インテグレータレンズ(22)は、両スリット板(23)(24)を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料から構成されている。
【0013】
該具体的構成において、前段スリット板(23)は、光源からの光を受けて高温となるが、前段スリット板(23)は、偏光ビームスプリッタ(25)から離間した位置に設置されているばかりでなく、前段スリット板(23)と偏光ビームスプリッタ(25)との間には、熱伝導率の低いインテグレータレンズ(22)が介在しているので、前段スリット板(23)から偏光ビームスプリッタ(25)へ伝達される熱量は、更に小さなものとなる。
【0014】
又、具体的構成において、前記前段スリット板(23)と後段スリット板(24)とが、偏光ビームスプリッタ(25)を構成する材料よりも高い熱伝導率を有する金属材料から構成されている。
該具体的構成によれば、前段スリット板(23)及び後段スリット板(24)は、高い熱伝導率を有しているため、光源からの光を受けて両スリット板(23)(24)に生じる熱は、高温となった領域から低温の領域へ効率的に伝達されることとなる。従って、両スリット板(23)(24)が局所的に高温となることはなく、両スリット板(23)(24)は、全体が略均一な温度となる。これにより、両スリット板(23)(24)に生じる熱は、両スリット板(23)(24)の表面全体から放熱されることとなり、この結果、高い放熱効率が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプロジェクタ装置によれば、偏光ビームスプリッタが限界温度を超えて高温となることを防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を液晶プロジェクタ装置に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
尚、以下の説明においては、図1に示す液晶プロジェクタ装置の映像投射方向を前方とし、該液晶プロジェクタ装置の前面に向かって左右を規定する。
全体構成
本発明に係る液晶プロジェクタ装置は、図1に示す如く下半ケース(12)及び上半ケース(11)からなる扁平なケーシング(1)を具え、該ケーシング(1)の表面には、複数の操作ボタンからなる操作部(15)が配備されると共に、ケーシング(1)の前面には、投射窓(13)が開設されている。又、ケーシング(1)の右側壁には、ケーシング(1)内の空気を外部に排出するための排気孔(14)が開設されている。
【0017】
図2及び図3に示す如く、ケーシング(1)の内部には、略L字状に伸びる合成樹脂製の光学系保持ケース(7)が配備されており、該光学系保持ケース(7)の内部には、光源となるランプユニット(4)と、該ランプユニット(4)から発せられる白色光を3原色の光に分離する光学系(2)(図5参照)と、該3原色の光を3原色用の液晶パネルに照射して3原色の映像光を生成し、生成した3原色の映像光をカラー映像光に合成する映像合成装置(3)とが配備されている。ランプユニット(4)は光学系保持ケース(7)の右端部に収容されると共に、映像合成装置(3)は光学系保持ケース(7)の前方の端部に収容され、光学系(2)は、ランプユニット(4)から映像合成装置(3)に至る光学系保持ケース(7)内の光路上に配備されている。
又、光学系保持ケース(7)の前方端縁には、投射レンズ(39)を保持する筒体(39a)の基端部が連結されている。更に、ケーシング(1)の内部には、光学系保持ケース(7)の前方側に電源装置(9)が設置されている。
【0018】
図2に示す如く下半ケース(12)の右側壁には、第1排気ファン(61)及び第2排気ファン(62)からなる排気装置(6)が取り付けられている。第1排気ファン(61)は、その吸気方向をランプユニット(4)に向けて設置されると共に、第2排気ファン(62)は、その吸気方向を電源装置(9)に向けて設置されている。
【0019】
図4に示す如く、映像合成装置(3)の下方位置には、映像合成装置(3)を冷却するための冷却ユニット(5)が配備されている。該冷却ユニット(5)は、第1ファン(52)と第2ファン(53)とを具え、該第1ファン(52)及び第2ファン(53)を設置すべき下半ケース(12)の底壁には、それぞれ底面吸気窓(図示省略)が開設されている。両冷却ファン(52)(53)からの空気は、冷却ユニット(5)のハウジング(54)内に形成された流路を通じて映像合成装置(3)に吹き付けられることになる。
以下、本発明の液晶プロジェクタ装置の各部構成について詳細に説明する。
【0020】
光学系(2)
図5に示す如く、ランプユニット(4)からの白色光は、第1インテグレータレンズ(21)、前段スリット板(23)、第2インテグレータレンズ(22)、後段スリット板(24)、偏光ビームスプリッタ(25)及びフィールドレンズ(20)を経て、第1ダイクロイックミラー(26)に導かれる。
第1インテグレータレンズ(21)及び第2インテグレータレンズ(22)は、耐熱ガラス製のフライアイレンズから構成され、ランプユニット(4)から発せられる白色光の照度分布を均一化する機能を有している。又、前段スリット板(23)及び後段スリット板(24)は、アルミニウム薄板から構成され、偏光ビームスプリッタ(25)に対する不要な入射光を遮断する機能を有している。
【0021】
図6に示す如く、偏光ビームスプリッタ(25)は、偏光板(25a)の光出射側の表面にスリット状の2分の1波長板(25b)を接合して構成される。又、偏光板(25a)の光入射側の表面には、後段スリット板(24)が密着して取り付けられている。
偏光板(25a)の内部には、偏光板(25a)に入射した光のP波を通過させると共にS波を反射する第1界面(125)と、第1界面(125)にて反射されたS波を前方に向けて反射する第2界面(126)とが、偏光板(25a)の表面に対して45度の傾斜角度で交互に形成されている。後段スリット板(24)の各スリット(24a)は、各第1界面(125)への光の入射を許容する位置に開設されており、後段スリット板(24)によって、第2界面(126)への光の入射は阻止されることになる。
【0022】
第1界面(125)に入射した光の内、P波は、第1界面(125)を通過して2分の1波長板(25b)に至る。該P波は更に2分の1波長板(25b)を通過することによって位相が反転され、S波となって出射される。一方、第1界面(125)で反射されたS波は第2界面(126)に至り、該第2界面(126)で反射されて、2分の1波長板(25b)の各スリット(25c)から出射される。従って、偏光ビームスプリッタ(25)からはS波のみが出射されることになる。
【0023】
図5に示す如く、偏光ビームスプリッタ(25)を通過した光は、フィールドレンズ(20)を経て、第1ダイクロイックミラー(26)に至る。第1ダイクロイックミラー(26)は、光の青色成分のみを反射すると共に、赤色及び緑色成分を通過させる機能を有し、第2ダイクロイックミラー(27)は、光の緑色成分を反射すると共に、赤色成分を通過させる機能を有し、フィールドミラー(28)は、光の緑色成分を反射する機能を有している。従って、ランプユニット(4)から発せられた白色光は、第1及び第2ダイクロイックミラー(26)(27)によって、青色光、緑色光及び赤色光に分光され、映像合成装置(3)に導かれることになる。
【0024】
従来の液晶プロジェクタ装置の光学系は、図2に示す本発明の液晶プロジェクタ装置の光学系(2)を構成する前段スリット板(23)を具えていなかった。
図6は本発明の偏光ビームスプリッタ(25)の構成を示す図であるが、従来の液晶プロジェクタ装置の偏光ビームスプリッタ(25)も同様の構成を有しているので、同図を参照して、従来の液晶プロジェクタ装置について説明する。
偏光ビームスプリッタ(25)の第2界面(126)に光が入射すると、偏光ビームスプリッタ(25)の偏光機能が充分に発揮されなくなるため、偏光ビームスプリッタ(25)の第1界面(25)と後段スリット板(24)の各スリット(24a)との相対位置精度を維持すべく、後段スリット板(24)は、偏光ビームスプリッタ(25)の光入射側の表面に接触させて、或いは該表面に近接した位置に設置されている。
【0025】
ところで、偏光ビームスプリッタ(25)は、限界温度を超えると偏光機能が著しく低下するため、限界温度を超えない範囲で使用する必要があるが、後段スリット板(24)は、偏光ビームスプリッタ(25)の光入射側の表面に接触し、或いは該表面に近接した位置に設置されているため、ランプユニット(4)からの光を受けて高温となった後段スリット板(24)から偏光ビームスプリッタ(25)へ熱が伝達されて、偏光ビームスプリッタ(25)が高温となってしまう問題があった。
【0026】
これに対し、本発明の液晶プロジェクタ装置において、光学系(2)の光路上には、図7に示す如く、後段スリット板(24)からランプユニット(4)側へ離間した位置に、前段スリット板(23)が配備されており、前段スリット板(23)には、後段スリット板(24)の各スリット(24a)と光軸方向に互い重なる複数箇所に複数のスリット(23a)が開設されているため、偏光ビームスプリッタ(25)に対する不要な入射光の大部分は、前段スリット板(23)にて遮断されることになる。これによって、後段スリット板(24)が受ける不要光の量が従来よりも少なくなり、この結果、後段スリット板(24)が限界温度を超えて高温となることが防止される。
【0027】
前段スリット板(23)は、ランプユニット(4)からの光を受けて高温となるが、前段スリット板(23)は、偏光ビームスプリッタ(25)から離間した位置に設置されているばかりでなく、前段スリット板(23)と偏光ビームスプリッタ(25)の間には、熱伝導率の低い耐熱ガラス製の第2インテグレータレンズ(22)が介在しているので、前段スリット板(23)から偏光ビームスプリッタ(25)へ伝達される熱量は僅かなものとなる。
従って、本発明の液晶プロジェクタ装置の光学系(2)によれば、偏光ビームスプリッタ(25)の温度上昇を最小限に抑制することが出来、この結果、偏光ビームスプリッタ(25)が限界温度を超えて高温となることはない。
【0028】
映像合成装置(3)
図8及び図9に示す如く、映像合成装置(3)は、立方体状の色合成プリズム(31)の3つの側面にそれぞれ、青色用液晶パネル(33b)、緑色用液晶パネル(33g)及び赤色用液晶パネル(33r)を取り付けて構成される。
図8に示す如く、映像合成装置(3)は、光学系保持ケース(7)の蓋体(7a)に開設された開口(172)を通じて、該光学系保持ケース(7)内に収容されている。
図2に示す如く、3枚の液晶パネル(33b)(33g)(33r)の光入射側にはそれぞれ、入射偏光板ホルダ(36b)(36g)(36r)が取り付けられており、入射偏光板ホルダ(36b)(36g)(36r)には、後述する3枚の入射偏光板(32b)(32g)(32r)が保持されている。
【0029】
図5に示す第1ダイクロイックミラー(26)及びフィールドミラー(29a)によって反射された青色光は、フィールドレンズ(35b)に導かれ、フィールドレンズ(35b)、青色入射偏光板(32b)、青色用液晶パネル(33b)及び青色出射偏光板(34b)を経て、色合成プリズム(31)へ至る。
又、第2ダイクロイックミラー(27)によって反射された緑色光は、フィールドレンズ(35g)に導かれ、フィールドレンズ(35g)、緑色入射偏光板(32g)、緑色用液晶パネル(33g)及び緑色出射偏光板(34g)を経て、色合成プリズム(31)へ至る。
同様に、2枚のフィールドミラー(28)(29b)によって反射された赤色光は、映像合成装置(3)のフィールドレンズ(35r)に導かれ、フィールドレンズ(35r)、赤色入射偏光板(32r)、赤色用液晶パネル(33r)及び赤色出射偏光板(34r)を経て、色合成プリズム(31)へ至る。
【0030】
色合成プリズム(31)に導かれた3色の映像光は、色合成プリズム(31)により合成され、これによって得られるカラー映像光が、投射レンズ(39)を経て前方のスクリーンへ拡大投射されることになる。
【0031】
青色入射偏光板(32b)、緑色入射偏光板(32g)及び赤色入射偏光板(32r)はそれぞれ、図10に示す如く、サファイアガラス製のガラス基材(32a)の表面に合成樹脂製の偏光フィルム(32c)を接合して構成される。各入射偏光板(32b)(32g)(32r)は光を受けて発熱することになるが、偏光フィルム(32c)の温度が限界温度を超えると、偏光機能が著しく低下するため、図8及び図9に示す冷却装置(5)によって外気を吹き付けることにより、各入射偏光板(32b)(32g)(32r)を冷却している。
しかしながら、従来の液晶プロジェクタ装置において偏光フィルム(32c)の温度が限界温度を超えない様にするためには、冷却装置(5)の冷却ファンを高速で回転させる必要があり、この結果、冷却装置(5)から発生する騒音が増大する問題があった。
【0032】
そこで、ガラス基材(32a)の面積、即ち放熱面積を拡大することによって各入射偏光板(32b)(32g)(32r)の温度の低下を図るべく、偏光フィルム(32c)の面積を一定とし、ガラス基材(32a)の面積が異なる複数種類の緑色入射偏光板(32g)を作製し、該複数種類の緑色入射偏光板(32g)をそれぞれ液晶プロジェクタ装置に取り付けて、使用状態における偏光フィルム(32c)の温度を測定する実験を行なった。尚、偏光フィルム(32c)の大きさは20.8mm×16.3mm、室温は27℃である。実験結果を下記表1及び図11に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
図11から、ガラス基材(32a)の偏光フィルム(32c)に対する面積比を178%以上に設置した場合には、偏光フィルム(32c)の温度が比較的低い温度で安定していることが分かる。一方、前記面積比を150%以下に設定した場合には、偏光フィルム(32c)の温度上昇が顕著であることが分かる。
更に、前記面積比を150%〜178%に設定した場合には、前記面積比に対する偏光フィルム(32c)の温度変化が不安定であることが分かる。これは、偏光フィルム(32c)からガラス基材(32a)への伝熱量とガラス基材(32a)からの放熱量とが略均衡しているため、前記伝熱量及び/又は放熱量が何らかの要因で多少変動することによって両者の大小関係が逆転し、これによって前記面積比に対する偏光フィルム(32c)の温度変化が不安定になるものと考えられる。
【0035】
以上の実験結果について考察すると、前記面積比を150%以下に設定した場合には、ガラス基材(32a)からの放熱量が偏光フィルム(32c)からガラス基材(32a)への伝熱量よりも小さくなるため、偏光フィルム(32c)の温度上昇が顕著となるものと考えられる。
【0036】
ここで、偏光フィルム(32c)の熱は、先ず、偏光フィルム(32c)が接合されたガラス基材(32a)の中央領域へ伝達され、該中央領域から周囲の外周領域へ徐々に伝達されることになる。しかしながら、ガラス基材(32a)は熱伝導率が低いため、偏光フィルム(32c)に発熱が生じたとしても、ガラス基材(32a)の中央領域から一定以上離れた外周領域の温度は、殆ど上昇しないこととなる。これによって、該外周領域からの放熱量は、僅かなものとなる。
従って、前記面積比を178%以上に設定した場合には、ガラス基材(32a)の表面積を拡大したとしても、放熱面積の拡大には繋がらないため、偏光フィルム(32c)の温度が略一定となるものと考えられる。
【0037】
そこで、上記実験結果に基づき、ガラス基材(32a)の偏光フィルム(32c)に対する面積比を、偏光フィルム(32c)の温度が比較的低い温度に安定し、且つガラス基材(32a)の表面積が最小となる178%に設定することとした。尚、青色入射偏光板(32b)、緑色入射偏光板(32g)及び赤色入射偏光板(32r)の偏光フィルム(32c)の大きさは20.8mm×16.3mm、ガラス基材(32a)の大きさは27.8mm×21.8mmに設定した。
これにより、冷却装置(5)の冷却ファンの回転数を低減させることが出来、この結果、冷却装置(5)から発生する騒音を低減させることが出来る。
【0038】
光学系保持ケース(7)
図5に示す光学系(2)を構成する前段スリット板(23)、第2インテグレータレンズ(22)、後段スリット板(24)、偏光ビームスプリッタ(25)、フィールドレンズ(20)、第1及び第2ダイクロイックミラー(26)(27)及び3枚のフィールドミラー(28)(29a)(29b)は、図12及び図13に示す合成樹脂製の一体成型品からなる光学系保持ケース(7)内に設置される。光学系保持ケース(7)の右端部には、ランプユニット(4)が収容されると共に、光学系保持ケース(7)の前方の端部には空間(70)が形成されており、該空間(70)の内部に上述の映像合成装置(3)が設置されることになる。
【0039】
光学系保持ケース(7)には、ランプユニット(4)から映像合成装置(3)へ至る光路に沿う両壁に、図5に示す前段スリット板(23)が設置されるべき第1設置溝(71)、第2インテグレータレンズ(22)が設置されるべき第2設置溝(72)、後段スリット板(24)及び偏光ビームスプリッタ(25)とが重ね合わされた状態で設置されるべき第3設置溝(73)、フィールドレンズ(20)が設置されるべき第4設置溝(74)、第1及び第2ダイクロイックミラー(26)(27)がそれぞれ設置されるべき第5及び第6設置溝(75)(76)、及び3枚のフィールドミラー(28)(29a)(29b)がそれぞれ設置されるべき第7乃至第9設置溝(77)(78a)(78b)が形成されている。
【0040】
図14及び図15は、各設置溝(71)〜(78b)に、光学系(2)を構成する前段スリット板(23)、第2インテグレータレンズ(22)、後段スリット板(24)、偏光ビームスプリッタ(25)、フィールドレンズ(20)、第1及び第2ダイクロイックミラー(26)(27)及び3枚のフィールドミラー(28)(29a)(29b)が設置された状態を示している。
【0041】
本発明の液晶プロジェクタ装置は、図5に示す3枚の液晶パネル(33r)(33g)(33b)として、対角線の長さが0.6インチの液晶パネルと0.7インチの液晶パネルとを互換性をもって使用することが可能となっている。
【0042】
図5に示す第1インテグレータレンズ(21)と第2インテグレータレンズ(22)との間隔は、使用する液晶パネルのサイズに応じて変更する必要があるが、従来の液晶プロジェクタ装置においては、光学系保持ケースの両壁に光路に沿って互いに離間した2つの溝部を形成し、該2つの溝部によって、第1インテグレータレンズ(21)及び第2インテグレータレンズ(22)をそれぞれ保持していたため、サイズの異なる複数種類の液晶パネルを使用可能とするためには、前記2つの溝部の間隔が異なる複数種類の光学系保持ケースを用意する必要があり、設計時間及び製造コストの増大を招く結果となっていた。
【0043】
これに対し、本発明の液晶プロジェクタ装置において、光学系保持ケース(7)には、第1インテグレータレンズ(21)を保持すべき2種類のレンズホルダ、即ち、図18(a)に示す0.6インチ用レンズホルダ(8a)と、図18(b)に示す0.7インチ用レンズホルダ(8b)とを互換性をもって取り付けることが出来る様になっている。尚、0.6インチ用レンズホルダ(8a)と0.7インチ用レンズホルダ(8b)は、後述する位置決めピンの位置が異なること以外は同一の構成を有しているので、0.6インチ用レンズホルダ(8a)についてのみ説明し、0.7インチ用レンズホルダ(8b)についての説明は省略する。
【0044】
図16に示す如く、0.6インチ用レンズホルダ(8a)は、第1インテグレータレンズ(21)を保持する板金製の矩形状の枠体(82)と、該枠体(82)から光学系保持ケース(7)の上面及び下面に沿って伸びる一対の板金製の取り付け板(83a)(83b)とを具えている。一対の取り付け板(83a)(83b)にはそれぞれ、下方に向けて一対の位置決めピン(81)(81)が突設されている。
【0045】
図14及び図15に示す如く、光学系保持ケース(7)の上壁には、前段スリット板(23)、第2インテグレータレンズ(22)、後段スリット板(24)、偏光ビームスプリッタ(25)及びフィールドレンズ(20)を挿入するための挿入口(180)が開設されている。
図16に示す如く、光学系保持ケース(7)の上壁には、挿入口(180)を閉塞するための天板(179)が取り付けられている。天板(179)には、両レンズホルダ(8a)(8b)が挿入されるべき開口(171)と、両レンズホルダ(8a)(8b)を位置決めするための位置決め孔(78)(78)とが開設され、該天板(179)の位置決め孔(78)(78)には、両レンズホルダ(8a)(8b)の上側の取り付け板(83a)に突設された位置決めピン(81)(81)が嵌入されることになる。
同様に、光学系保持ケース(7)の底壁にも位置決め孔(78)(78)が開設されており、該位置決め孔(78)(78)には、下側の取り付け板(83b)に突設された位置決めピン(81)(81)が嵌入されることになる。
【0046】
図17に示す如く、両レンズホルダ(8a)(8b)はそれぞれ、上側の取り付け板(83a)に突設された位置決めピン(81)(81)が天板(179)の位置決め孔(78)(78)に嵌合した状態で、ネジ(182)(182)により天板(179)に締結される。この状態で、両レンズホルダ(8a)(8b)の下側の取り付け板(83b)に突設された位置決めピン(81)(81)を光学系保持ケース(7)の底壁の位置決め孔(78)(78)に嵌入せしめ、その後、天板(179)をネジ(181)(181)により光学系保持ケース(7)の上壁に締結することにより、第1インテグレータレンズ(21)が光路上の所定位置に取り付けられることになる。
【0047】
図18(b)に示す0.7インチ用ホルダ(8b)の各位置決めピン(81)(81)は、図18(a)に示す0.6インチ用ホルダ(8a)の各位置決めピン(81)(81)よりも枠体(82)から離間した位置に突設されており、これによって、図18(b)に示す0.6インチ用ホルダ(8b)の両位置決めピン(81)(81)と枠体(82)に取り付けられた第1インテグレータレンズ(21)の表面との間隔S3及びS4は、図18(a)に示す0.6インチ用ホルダ(8a)の両位置決めピン(81)(81)と枠体(82)に取り付けられた第1インテグレータレンズ(21)の表面との間隔S1及びS2よりも大きくなっている。この結果、0.7インチ用ホルダ(8b)の取り付け時の第1インテグレータレンズ(21)と第2インテグレータレンズ(22)との間隔d2は、0.6インチ用ホルダ(8a)の取り付け時の間隔d1よりも広くなる。
【0048】
上記間隔d1は、0.6インチの液晶パネルに適した間隔に設定されると共に、上記間隔d2は、0.7インチの液晶パネルに適した間隔に設定されている。
従って、本発明の液晶プロジェクタ装置によれば、第1インテグレータレンズ(21)を保持するレンズホルダを液晶パネルのサイズに応じて交換するだけで、サイズの異なる複数種類の液晶パネルの使用が可能となる。この結果、複数種類の光学系保持ケースを用意する必要がなくなり、従来に比べて、設計時間の短縮並びに製造コストの削減を図ることが出来る。
【0049】
冷却ユニット(5)
図4、図8及び図9に示す如く、映像合成装置(3)の下方には、該映像合成装置(3)を冷却するための冷却ユニット(5)が載置されている。
従来の液晶プロジェクタ装置において、冷却ユニットは、映像合成装置を構成する赤色、緑色及び青色の液晶パネルに対して専用の冷却ファンを配備し、3台の冷却ファンにより3枚の液晶パネルを冷却していた。
【0050】
ところで、図5に示す如く、ランプユニット(4)から3枚の液晶パネル(33b)(33g)(33r)へ至る光路長は、青色用液晶パネル(33b)へ至る青色用光路と、緑色用液晶パネル(33g)へ至る緑色用光路とが同じ長さで、赤色用液晶パネル(33r)へ至る赤色用光路のみが長くなっている。3枚の液晶パネル(33b)(33g)(33r)が受ける光の強度は、その光路長が長くなれば長くなるほど低下するため、赤色用液晶パネル(33r)が受ける光の強度が最も小さくなる。
ここで、3枚の液晶パネル(33b)(33g)(33r)の発熱量は、各液晶パネル(33b)(33g)(33r)が受ける光の強度に応じて変動するため、青色用液晶パネル(33b)の発熱量が最も大きく、赤色用液晶パネル(33r)の発熱量が最も小さくなる。
【0051】
そこで、本発明の液晶プロジェクタ装置においては、光路長の差によって生じる3枚の液晶パネル(33b)(33g)(33r)の発熱量の差に着目し、従来、赤色、緑色及び青色の液晶パネルに対してそれぞれ配備されていた3台の冷却ファンの内、発熱量の最も小さな赤色用液晶パネル(33r)専用の冷却ファンを省略し、2台の冷却ファンにより冷却ユニット(5)を構成した。
【0052】
図19に示す如く、冷却ユニット(5)は、第1ファン(52)と、第2ファン(53)と、略T字状のハウジング(54)とから構成される。ハウジング(54)の内部には、両冷却ファン(52)(53)から取り込まれた外気を図9に示す3枚の液晶パネル(33b)(33g)(33r)及び図5に示す3枚の入射側遮光板(32b)(32g)(32r)へ導くための流路が形成されている。又、第1ファン(52)と第2ファン(53)は、その空気吹き出し方向が互いに交叉する姿勢で設置されている。
【0053】
図20及び21に示す如く、ハウジング(54)は、上ハウジング半体(54a)と下ハウジング半体(54b)とを互いに接合して構成され、該ハウジング(54)には、第1ファン(52)が連結される第1取り付け口(57)と、第2ファン(53)が連結される第2取り付け口(58)とが、互いに90度の異なる方向に向けて開設されている。
上ハウジング半体(54a)の上壁には、第1取り付け口(57)に隣接した位置に、図5に示す青色入射側遮光板(32b)に向けて空気を吹き付けるための青色用第1吹き出し口(55b)と、青色用液晶パネル(33b)に向けて空気を吹き付けるための青色用第2吹き出し口(56b)とが開設されている。又、第2取り付け口(58)に隣接した位置に、図5に示す緑色入射側遮光板(32g)に向けて空気を吹き付けるための緑色用第1吹き出し口(55g)と、緑色用液晶パネル(33g)に向けて空気を吹き付けるための緑色用第2吹き出し口(56g)とが開設されている。
【0054】
更に、上ハウジング半体(54a)の上壁には、第1取り付け口(57)から導入される空気の流路に沿って第1取り付け口(57)から離間した位置に、図5に示す赤色入射側遮光板(32r)に向けて空気を吹き付けるための赤色用第1吹き出し口(55r)と、赤色用液晶パネル(33r)に向けて空気を吹き付けるための赤色用第2吹き出し口(56r)とが開設されている。
【0055】
一方、図21及び図22に示す如く、下ハウジング半体(54b)には、第1取り付け口(57)から直線状に伸びて青色用第1吹き出し口(55b)及び青色用第2吹き出し口(56b)へ至る第1の上流側流路部(151)と、第2取り付け口(58)から直線状に伸びて緑色用第1吹き出し口(55g)及び緑色用第2吹き出し口(56g)へ至る第2の上流側流路部(152)と、第1及び第2の上流側流路部(151)(152)を通過した空気が合流して赤色用第1吹き出し口(55r)及び赤色用第2吹き出し口(56r)へ至る下流側流路部(153)とが形成されている。
又、第1の上流側流路部(151)と下流側流路部(153)の間には、第1絞り部(59a)が形成されると共に、第2の上流側流路部(152)と下流側流路部(153)の間には、第2絞り部(59b)が形成されている。
【0056】
従って、第1ファン(52)からハウジング(54)の第1取り付け口(57)へ導入され、第1の上流側流路部(151)を通過して下流側流路部(153)へ流れる空気の量は、第1絞り部(59a)に生じる流路抵抗によって一定量に制限されるため、第1取り付け口(57)から導入された空気の内、一部の空気は、第1絞り部(59a)よりも上流側に開設された青色用第1吹き出し口(55b)及び青色用第2吹き出し口(56b)から吹き出されることになる。これによって、青色入射側遮光板(32b)及び青色用液晶パネル(33b)を十分に冷却することが出来る。
【0057】
同様に、第2ファン(53)からハウジング(54)の第2取り付け口(58)へ導入され、第2の上流側流路部(152)を通過して下流側流路部(153)へ流れる空気の量は、該第2絞り部(59b)に生じる流路抵抗によって一定量に制限されるため、第2取り付け口(58)から導入された空気の内、一部の空気は、第2絞り部(59b)よりも上流側に開設された緑色用第1吹き出し口(55g)及び緑色用第2吹き出し口(56g)から吹き出されることになる。これによって、緑色入射側遮光板(32g)及び緑色用液晶パネル(33g)を十分に冷却することが出来る。
【0058】
又、第1絞り部(59a)を通過した一定量の空気は、下流側流路部(153)を経て赤色用第1吹き出し口(55r)及び赤色用第2吹き出し口(56r)へ向けて直線的に流れることとなる。更に、第2絞り部(59b)を通過した一定量の空気は、下流側流路部(153)を経て、赤色用第1吹き出し口(55r)及び赤色用第2吹き出し口(56r)へ向かう空気の流れに合流することになる。この結果、第1取り付け口(57)から導入されて第1絞り部(59a)を通過した一定量の空気と、第2取り付け口(58)から導入されて第2絞り部(59b)を通過した一定量の空気とが、下流側流路部(153)を経て、赤色用第1吹き出し口(55r)及び赤色用第2吹き出し口(56r)から吹き出されることとなり、これによって、赤色入射側遮光板(32r)及び赤色用液晶パネル(33r)を十分に冷却することが出来る。
【0059】
従来の液晶プロジェクタ装置において、冷却ユニットは、赤色、緑色及び青色の液晶パネルに対してそれぞれ専用に配備された3台の冷却ファンから構成されていたが、上記本発明の液晶プロジェクタ装置によれば、2台の冷却ファン(52)(53)を用いて、3色分の入射側遮光板(32r)(32g)(32g)及び液晶パネル(33r)(33g)(33b)を十分に冷却することが出来る。これにより、省略された1台の冷却ファンの設置スペース分だけ、装置の小型化を図ることが出来ると共に、該冷却ファンの消費電力分だけ、動作時の総消費電力の低減を図ることが出来る。
【0060】
ランプユニット(4)
図2に示す如く、ランプユニット(4)は、光学系保持ケース(7)の右端部に収容されており、図23に示す如く、該光学系保持ケース(7)の右端部の後壁(174)には、吸気用ハウジング(45)が取り付けられ、該吸気用ハウジング(45)の端部には、ランプユニット(4)を冷却するためのランプ冷却ファン(42)が取り付けられている。
【0061】
図24及び図25に示す如く、ランプユニット(4)は、リフレクタ(46)と、該リフレクタ(46)の焦点位置に設けられたランプ(41)と、ランプ(41)の光出射方向に沿って前方に配備されたレンズ(47)と、矩形状の枠体からなるランプハウジング(140)とを具え、該ランプハウジング(140)の開口部にリフレクタ(46)及びレンズ(47)を取り付けて構成される。リフレクタ(46)の背面は、光学系保持ケース(7)の4つの側壁(174)(176)(177)(178)によって包囲されている。
【0062】
図24に示す如く、ランプユニット(4)は、ランプハウジング(140)の両側壁(140a)(140b)と光学系保持ケース(7)の両側壁(174)(176)とが互いに接した状態で、光学系保持ケース(7)の右端部内に収容されており、ランプハウジング(140)の後方側の側壁(140a)には、空気導入孔(141)が開設されている。又、リフレクタ(46)の後方側の側部(46a)には、空気導入孔(141)に対応する位置に開口(49a)が開設され、該開口(49)に金属製のメッシュフィルタ(48a)が設置されている。
【0063】
一方、ランプハウジング(140)の前方側の側壁(140b)には、空気導入孔(141)と対向する位置に空気排出孔(142)が開設されている。又、リフレクタ(46)の前方側の側部(46b)には、空気排出孔(142)に対応する位置に開口(49b)が開設され、該開口(49)に金属製のメッシュフィルタ(48b)が設置されている。
【0064】
図23に示す如く、光学系保持ケース(7)の右端部の後壁(174)には、ランプ冷却ファン(42)からの空気を光学系保持ケース(7)内に取り込むための第1取り込み孔(43)、第2取り込み孔(44a)及び第3取り込み孔(44b)が開設されている。第1取り込み孔(43)は、上下方向(幅方向)に長い矩形状の開口形状を有し、第2取り込み孔(44a)及び第3取り込み孔(44b)は、第1取り込み孔(43)の略3分の1の幅を有する矩形状に形成され、両取り込み孔(44a)(44b)の間には、光学系保持ケース(7)の後壁(174)の一部によって、第1取り込み孔(43)の略3分の1の幅を有する遮風壁(44c)が形成されている。
図24に示す如く、第1取り込み孔(43)は、ランプハウジング(140)の空気導入孔(141)及びリフレクタ(46)の開口(49a)に向けて開口し、第2取り込み孔(44a)及び第3取り込み孔(44b)は、リフレクタ(46)の背面に向けて開口している。
【0065】
図23に示す如く、光学系保持ケース(7)の右端部の右側壁(175)には、排気孔(170)が開設され、図2に示す如く、排気装置(6)を構成する第1排気ファン(61)が、該排気孔(170)に面して設置されている。該排気孔(170)は、排気装置(6)が取り付けられた下ケース半体(12)の右壁面に対して傾斜して形成されている。
図2に示す如く、下ケース半体(12)の後壁には、スリット状の背面吸気孔(19)が開設されており、該背面吸気孔(19)に面して図23に示すランプ冷却ファン(42)が設置されている。
【0066】
図24に示す如く、ランプ冷却ファン(42)によってケーシング(1)の背面吸気孔(19)から取り込まれた空気は、吸気用ハウジング(45)内の流路を経て、第1取り込み孔(43)、第2取り込み孔(44a)及び第3取り込み孔(44b)からランプユニット(4)へ向けて導入される。
第1取り込み孔(43)を通過した空気は、ランプハウジング(140)の空気導入孔(141)及びリフレクタ(46)のメッシュフィルタ(48a)を経て、リフレクタ(46)の内側に導入され、反対側のメッシュフィルタ(48b)及び空気排出孔(142)を経て、排気スリット(173)から光学系保持ケース(7)の外部へ排出される。排出された高温の空気は、第1排気ファン(61)によって吸い込まれ、ケーシング(1)の排気孔(14)からケーシング(1)の外部に排出されることになる。
【0067】
一方、図23に示す如く、第2取り込み孔(44a)と第3取り込み孔(44b)の間には遮風壁(44c)が設けられているので、第2取り込み孔(44a)を通過した空気は、リフレクタ(46)の上部に沿って流れ、第3取り込み孔(44b)を通過した空気は、リフレクタ(46)の下部に沿って流れることになる。
そして、リフレクタ(46)の上部及び下部に沿って流れる空気は、第1排気ファン(61)によって吸い込まれ、ケーシング(1)の排気孔(14)からケーシング(1)の外部に排出されることになる。
【0068】
従来の液晶プロジェクタ装置においては、図23に示す遮風壁(44c)が無く、第2取り込み孔(44a)と第3取り込み孔(44b)とが連通した1つの大きな送風口から空気を送り込むことにより、ランプユニット(4)を冷却していたが、十分な風量を与えているにも拘わらず、ランプユニット(4)から発せられる熱によって、図25に示す光学系保持ケース(7)の上壁(177)及び上壁(178)が変質して劣化する問題があった。
【0069】
この原因を分析したところ、1つの送風口から送り込まれた空気の大部分は、リフレクタ(46)の上下方向の中央部を該リフレクタ(46)の背面に沿って流れてしまうため、該中央部においてはある程度の冷却効果が得られるものの、光学系保持ケース(7)の上壁(177)及び上壁(178)に近接するリフレクタ(4)の上部及び下部領域においては、充分な冷却効果が得られないことが分かった。
【0070】
そこで、本発明の液晶プロジェクタ装置においては、ランプ冷却ファン(42)から吐出された空気をリフレクタ(46)の上部及び下部領域に向けて強制的に分流させることにより、上記問題を解決した。これにより、リフレクタ(46)の上部及び下部領域を充分に冷却することが出来、この結果、光学系保持ケース(7)の上壁(177)及び上壁(178)の温度が、従来の液晶プロジェクタ装置に比べて低下するので、光学系保持ケース(7)の変質による劣化を防止することが出来る。
【0071】
排気装置(6)
図2及び図3に示す如く、下半ケース(12)の右側壁には、第1排気ファン(61)及び第2排気ファン(62)からなる排気装置(6)が取り付けられている。第1排気ファン(61)は、その吸気方向をランプユニット(4)に向けて設置されると共に、第2排気ファン(62)は、その吸気方向を電源装置(9)に向けて設置され、両排気ファン(61)(62)の排気方向が互いに交叉している。
【0072】
図26及び図27に示す如く、排気装置(6)は、合成樹脂製のファンホルダ(63)と金属製のファンカバー(61)との間に、第1排気ファン(61)及び第2排気ファン(62)を挟持して構成される。ファンカバー(64)の上面及び下面には、ファンホルダ(63)の上壁及び下壁に開設された溝部(65)に係合するフック部(66)が突設されており、ファンカバー(64)は、フック部(66)がファンホルダ(63)の溝部(65)に係合した状態で、両側部にてネジ止めされている。
【0073】
従来の液晶プロジェクタ装置において、排気装置はランプユニット(4)に向けて設置された1台の排気ファンから構成されていた。このため、排気装置からはランプユニット(4)の周囲の高温の空気が排出されることとなり、該排気に触れたユーザが不快感を感じることがあった。
【0074】
本発明の液晶プロジェクタ装置において、排気装置(6)を構成する第1排気ファン(61)は、図2に示す如くランプユニット(4)に向けて設置されているため、該第1排気ファン(61)には、ランプユニット(4)から発せられる高温の空気が取り込まれることになる。一方、第2排気ファン(62)は、ランプユニット(4)から外れた領域に設置された電源装置(9)に向けて設置されているため、該第2排気ファン(62)には、前記第1排気ファン(61)に取り込まれる空気よりも低温の空気が取り込まれることになる。
ここで、両排気ファン(61)(62)の排気方向が互いに交叉しているので、第1排気ファン(61)から取り込まれた空気と第2排気ファン(62)から取り込まれた空気とが混合されて、排気孔(14)から排出されることとなり、この結果、従来のプロジェクタ装置に比べて排気温度が低下する。
【0075】
ところで、両排気ファン(61)(62)を設置するためにケーシング(1)の内部に必要となるスペースは、第1排気ファン(61)の排気方向と第2排気ファン(62)の排気方向との交差角度の増大に伴って拡大する。そこで、排気温度の低下効果が最大となる第1排気ファン(61)の排気方向と第2排気ファン(62)の排気方向の交差角度を求めるべく、該交差角度をパラメータとして排気温度の変化を測定する実験を行なったところ、該交差角度が40度〜60度の範囲にあるとき、排気温度の低下効果が最大となることを見出した。
【0076】
即ち、前記交差角度が40度よりも小さい場合には、両排気ファン(61)(62)から取り込まれた空気が十分に混合されることなく排出されることとなり、この結果、排気装置(6)の第1排気ファン側(61)からは高温の空気が排出され、第2排気ファン(62)側からは低温の空気が排出されることになる。
【0077】
これに対し、前記交差角度が40度〜60度にある場合には、第1排気ファン(61)から取り込まれた高温の空気と第2排気ファン(62)から取り込まれた低温の空気とが充分に混合されることとなり、この結果、排気温度が低下する。
【0078】
しかし、前記交差角度が60度よりも大きい場合には、交差角度が40度〜60度にある場合に比べて、交差角度の増大に対する排気温度の低下度が小さくなる。そして、交差角度が90度に近づくと、第1排気ファン(61)から取り込まれた高温の空気と、第2排気ファン(62)から取り込まれた低温の空気とが互いに衝突することとなり、これによって、後方へ向かう空気のスムーズな流れが阻害され、十分な排気効果が得られない。
【0079】
そこで、本実施例では、第1排気ファン(61)の排気方向と第2排気ファン(62)の排気方向の交差角度を40度に設定することとした。尚、第1排気ファン(61)と第2排気ファン(62)はそれぞれ、ケーシング(1)の右壁面に対して、20度の傾斜角度をもって取り付けられている。これにより、排気装置の設置スペースの増大に伴う装置の大型化を最小限に抑えつつ、排気温度の低下を図ることが出来る。
本実施例の排気装置(6)の排気温度並びに騒音を実測したところ、従来に比べて両排気ファン(61)(62)の回転数を落とした場合にも、排気温度が約10℃低下し、排気装置(6)から発生する騒音を約2dB低減出来ることが明らかとなった。
【0080】
更に、本発明の液晶プロジェクタ装置は、ランプユニット(4)が発する光の強度を低下させて消費電力の低減を図る低消費電力モードを有しており、該低消費電力モードの設定時には、前記第1及び第2排気ファン(61)(62)の回転数を低下させることにより、排気装置(6)から発生する騒音の更なる低減を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る液晶プロジェクタ装置の斜視図である。
【図2】該液晶プロジェクタ装置の上半ケースを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】該液晶プロジェクタ装置の上半ケースを取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図4】該液晶プロジェクタ装置の分解斜視図である。
【図5】該液晶プロジェクタ装置の光学系を示す図である。
【図6】後段スリット板及び偏光ビームスプリッタの断面図である。
【図7】前段スリット板、第2インテグレータレンズ、後段スリット板及び偏光ビームスプリッタを示す斜視図である。
【図8】光学系保持ケース、光合成装置及び冷却ユニットの分解斜視図である。
【図9】光合成装置及び冷却ユニットの分解斜視図である。
【図10】入射側偏光板を示す正面図である。
【図11】ガラスの偏光板に対する面積比と偏光板温度との関係を表わすグラフである。
【図12】光学系保持ケースの斜視図である。
【図13】光学系保持ケースの平面図である。
【図14】光学部品を設置した光学系保持ケースから第1及び後段スリット板を取り外した状態を示す分解斜視図である。
【図15】光学部品を設置した光学系保持ケースを示す斜視図である。
【図16】光学系保持ケース及び第1インテグレータレンズホルダを示す分解斜視図である。
【図17】光学系保持ケースに第1インテグレータレンズホルダを取り付ける方法を説明するための分解斜視図である。
【図18】光学系保持ケースに0.6インチ用レンズホルダを取り付けた状態と、0.7インチ用レンズホルダを取り付けた状態を示す断面図である。
【図19】冷却ユニットの平面図である。
【図20】冷却ユニットのハウジングの斜視図である。
【図21】該ハウジングの分解斜視図である。
【図22】該ハウジングを構成する下ハウジング半体の平面図である。
【図23】光学系保持ケースに対するランプ冷却ファンの取り付け状態を示す分解斜視図である。
【図24】ランプユニットの水平方向の断面図である。
【図25】ランプユニットの鉛直方向の断面図である。
【図26】排気装置の斜視図である。
【図27】排気装置からファンカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
(1) ケーシング
(14) 排気孔
(19) 背面吸気孔
(2) 光学系
(21) 第1インテグレータレンズ
(22) 第2インテグレータレンズ
(23) 前段スリット板
(24) 後段スリット板
(25) 偏光ビームスプリッタ
(3) 映像合成装置
(31) 色合成プリズム
(32b)、(32g)、(32r) 青色入射偏光板、緑色入射偏光板、赤色入射偏光板
(33b)、(33g)、(33r) 青色用液晶パネル、緑色用液晶パネル、赤色用液晶パネル
(39) 投射レンズ
(4) ランプユニット
(41) ランプ
(42) ランプ冷却ファン
(43) 第1取り込み孔
(44a)、(44b) 第2取り込み孔、第3取り込み孔
(44c) 遮風壁
(45) 吸気用ハウジング
(5) 冷却ユニット
(52) 第1ファン
(53) 第2ファン
(54) ハウジング
(55b)、(55g)、(55r) 青色用第1吹き出し口、緑色用第1吹き出し口、赤色用第1吹き出し口
(56b)、(56g)、(56r) 青色用第2吹き出し口、緑色用第2吹き出し口、赤色用第2吹き出し口
(59a)、(59b) 第1絞り部、第2絞り部
(151) 第1の上流側流路部
(152) 第2の上流側流路部
(153) 下流側流路部
(6) 排気装置
(61) 第1排気ファン
(62) 第2排気ファン
(7) 光学系保持ケース
(78) 位置決め孔
(8a) 0.6インチ用ホルダ
(8b) 0.7インチ用ホルダ
(81) 位置決めピン
(9) 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(1)の内部に、光源と、該光源からの光を受けて映像光を生成する光学系(2)とを配備して構成され、該光学系(2)には、その光軸上に、互いに直交する方向に振動する光の第1成分波と第2成分波の内、第1成分波のみを抽出するための偏光ビームスプリッタ(25)が配備され、該偏光ビームスプリッタ(25)は、偏光板(25a)の光出射側の表面に2分の1波長板(25b)を接合して構成され、該偏光板(25a)には、前記第2成分波を通過させると共に第1成分波を反射する複数の第1界面(125)と、第1界面(125)にて反射された第1成分波を光出射方向に向けて反射する複数の第2界面(126)とが、光軸を交叉する方向に交互に形成されており、該偏光板(25a)の光入射側の表面に接して或いは近接してスリット板(24)が配備され、該スリット板(24)には、前記偏光板(25a)の第1界面(125)に対応する複数箇所に複数のスリット(24a)が開設されているプロジェクタ装置において、
前記光学系(2)には、光軸に沿って前記スリット板(24)から光源側へ離間した位置に、前記スリット板(24)を後段スリット板として、前段スリット板(23)が配備され、該前段スリット板(23)には、後段スリット板(24)の各スリット(24a)と光軸方向に互いに重なる複数箇所に、複数のスリット(23a)が開設されていることを特徴とするプロジェクタ装置。
【請求項2】
前記前段スリット板(23)と後段スリット板(24)との間には、インテグレータレンズ(22)が配備され、該インテグレータレンズ(22)は、両スリット板(23)(24)を構成する材料よりも熱伝導率の低い材料から構成されている請求項1に記載のプロジェクタ装置。
【請求項3】
前記前段スリット板(23)と後段スリット板(24)とが、偏光ビームスプリッタ(25)を構成する材料よりも高い熱伝導率を有する金属材料から構成されている請求項1又は請求項2に記載のプロジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−25403(P2007−25403A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209287(P2005−209287)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】