説明

プロジェクタ

【課題】照明光の照度を調整可能なプロジェクタであって、偏光フィルタによって照明装
置が大型化することを防止でき、偏光フィルタの設置や維持による負担を低減できるプロ
ジェクタを提供すること。
【解決手段】偏光変換素子91と第1偏光フィルタ42a,42b,42cとの間にセグ
メント表示型の光量調整用液晶パネル93を設け、この光量調整用液晶パネル93を通過
する光束の偏光状態を表示領域DA中に設けた複数の部分領域PA1,PA2単位で変調
するので、第1偏光フィルタ42a,42b,42cを通過する光量、すなわち画像表示
用液晶パネル41a,41b,41cの照明光量を調整することができ、液晶ライトバル
ブ40a,40b,40cによる表示画像のコントラストを高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等の光変調装置によって形成した画像を投射レンズにてスクリー
ン上に投射するプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタの照明装置として、照度分布を均一化するための2枚のフライアイレンズ
を備え、これら2枚のフライアイレンズの間に場所によって透過率を変化させ得る調光素
子を組み込んだものがある(特許文献1参照)。このプロジェクタでは、例えば映像信号
等の外部からの情報に基づいて調光素子を制御することにより、液晶ライトバルブ上での
照度分布を調整し、光量をスクリーン上の領域によって調整可能にしている。
【特許文献1】特開2003−131322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記プロジェクタでは、調光素子としてセグメント型液晶素子を用いて
おり、実際の調光に際しては、セグメント型液晶素子に付帯してその光入射側と光射出側
とに偏光フィルタを配置する必要があるので、これら偏光フィルタの取り付けのため照明
装置が大型化し、各偏光フィルタについてアライメントやメンテナンスが必要になってし
まう。
【0004】
そこで、本発明は、照明光の照度を調整可能なプロジェクタであって、偏光フィルタに
よって照明装置が大型化することを防止でき、偏光フィルタの設置や維持による負担を低
減できるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るプロジェクタは、(a)光束を射出する光源と
、(b)光源からの光束を偏光方向に応じて分離する偏光分離部と、(c)偏光分離部を
通過した光束の偏光状態を表示領域中に設けた複数の部分領域単位で変調するセグメント
表示型の第1液晶素子と、(d)第1液晶素子を経た光束のうち所定の偏光方向の光束を
選択的に透過させる中間偏光素子と、(e)中間偏光素子を通過した光束の偏光状態を画
像情報に応じて変調するドットマトリックス表示型の第2液晶素子と、を備える。
【0006】
上記プロジェクタによれば、偏光分離部と中間偏光素子との間にセグメント表示型の第
1液晶素子を設け、この第1液晶素子を通過する光束の偏光状態を表示領域中に設けた複
数の部分領域単位で変調するので、中間偏光素子を通過する光量すなわち第2液晶素子の
照明光量を調整することができ、第2液晶素子による表示画像のコントラストを高めるこ
とができる。
【0007】
また、本発明の具体的な態様又は側面によれば、上記プロジェクタにおいて、第1液晶
素子が、複数の部分領域において段階的に変調量を変化させる。この場合、第2液晶素子
の照明光量を多段階で調整することができる。
【0008】
本発明の別の態様によれば、第1液晶素子が、複数の部分領域における変調量の段階的
変化によって、複数の部分領域に対応して第2液晶素子上の表示領域に入射する照明光量
を調整する。この場合、照明光量の段階的調整によって第2液晶素子による表示画像のコ
ントラストを高めることができ、照明光量の調整による表示状態の切り替えが滑らかなも
のとなる。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、第1液晶素子が、システム光軸が交差する中心を含
む中央領域と、中央領域の周囲に設けられる環状の周辺領域とを複数の部分領域として有
し、中央領域と周辺領域とにおいて個別に変調量を調整することができる。この場合、偏
光分離部からの光束の射出位置に応じた調光が可能になり、例えば第2液晶素子に入射す
る照明光の角度範囲を少なくとも2種類に分けて各角度範囲で個別の調光を行うことがで
きる。
【0010】
本発明のさらに別の態様によれば、第1液晶素子が、所定方向に延びるストライプ状に
配列された複数の帯状領域を複数の部分領域として有し、複数の帯状領域において個別に
変調量を調整することができる。この場合、偏光分離部からの光束の射出位置に応じた調
光が可能になり、例えば第2液晶素子に入射する照明光の角度状態を少なくとも2種類に
分けて各角度状態で個別の調光を行うことができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、第1液晶素子が、偏光分離部の射出側に近接して配
置され、分離された複数の偏光方向の光束のうち少なくとも1つの光束の偏光方向を変化
させる。この場合、偏光分離部による各偏光方向の分離光束の単位で照明光の光量調整が
可能になる。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、偏光分離部が、所定方向に延びるストライプ状に配
列されるとともに、第1の偏光方向に対応する第1出口と第1の偏光方向と異なる第2の
偏光方向に対応する第2出口とをそれぞれ有する複数の偏光分離プリズム部分を備え、第
1液晶素子が、複数の偏光分離プリズム部分のうち第1出口と第2出口とに対応してスト
ライプ状に配列された複数の帯状領域を複数の部分領域として有する。この場合、偏光分
離部の第1出口や第2出口に配置されるべき位相差板を省略して第1液晶素子にその機能
を持たせることができるとともに、偏光分離部による分離光束の単位で照明光の光量調整
が可能になる。
【0013】
本発明のさらに別の態様によれば、(f)第2液晶素子を経た照明光のうち所定の偏光
方向の光束を選択的に透過させる射出偏光素子と、(g)射出偏光素子を経た変調光を投
射する投射光学系と、をさらに備える。この場合、コントラストの高い画像を投射するこ
とができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明に係る第1実施形態のプロジェクタの光学系の構造を概念的に説明する
平面図である。このプロジェクタ100は、光源から射出された光束を画像情報に応じて
変調して光学像を形成し、この光学像をスクリーン上に拡大投射するための光学機器であ
り、光源装置10と、均一化光学系20と、偏光変換素子91と、光量調整用液晶パネル
93と、色分離導光光学系30と、光変調部40と、クロスダイクロイックプリズム50
と、投射レンズ60とを備える。ここで、光変調部40は、同様の構造を有する3つの液
晶ライトバルブ40a,40b,40cを含む。
【0015】
上記プロジェクタ100において、光源装置10は、照明用の光源として、放電発光型
の発光管11と、楕円型の主反射鏡であるリフレクタ12と、球面状の副反射鏡である副
鏡13と、コリメート用の平行化レンズ14とを備える。発光管11から周囲に放射され
た光束は、リフレクタ12で反射され、或いは副鏡13での反射を経てリフレクタ12で
さらに反射されて収束光束とされた後、平行化レンズ14によって平行光束とされて、前
方側すなわち均一化光学系20の第1フライアイレンズ23に入射する。なお、上述した
楕円面型のリフレクタ12に代えて、放物面等の各種凹面鏡を用いることができる。放物
面の凹面鏡を用いた場合、リフレクタ12の後段に平行化レンズ14を設けなくとも、光
源装置10から平行光束を射出させることができる。
【0016】
均一化光学系20は、均一化された照度の照明光を光変調部40等に供給するためのも
のであり、光源装置10から射出された光束を適当な状態に分割する第1及び第2フライ
アイレンズ23,24と、両フライアイレンズ23,24を経た光を重畳させる重畳レン
ズ25とを備える。均一化光学系20において、第1及び第2フライアイレンズ23,2
4は、それぞれマトリクス状に配置された複数の要素レンズ23a,24aからなり、第
1フライアイレンズ23を構成する要素レンズ23aによって平行化レンズ14を経た光
を分割して個別に集光し、第2フライアイレンズ24を構成する要素レンズ24aによっ
て第1フライアイレンズ23からの分割光束を適当な発散角にして射出させる。重畳レン
ズ25は、第2フライアイレンズ24から射出され後述する偏光変換素子91を経た照明
光を全体として適宜収束させて、後段の光変調部40に設けた液晶ライトバルブ40a,
40b,40cの被照明領域すなわち表示領域に対する重畳照明を可能にする。
【0017】
偏光変換素子91は、PBSアレイで形成された偏光分離部であり、第1フライアイレ
ンズ23により分割され第2フライアイレンズ24を経た各部分光束の偏光方向を一方向
の直線偏光に揃える役割を有する。この偏光変換素子91は、4つの同様の構造を有する
プリズム状の偏光素子部分92A,92Bを組み合わせたプリズムアレイであり、詳細な
図示を省略しているが、システム光軸OAに対して傾斜配置される偏光分離膜及び反射ミ
ラーを交互に配列した構成を具備する。前者の偏光分離膜は、各部分光束に含まれるP偏
光及びS偏光のうち、一方の偏光(例えばP偏光)を透過し、他方の偏光(例えばS偏光
)を反射する。反射された他方の偏光は、後者の反射ミラーによって曲折され、一方の偏
光の射出方向、すなわちシステム光軸OAに沿った方向に射出される。射出された偏光の
いずれか(例えばP偏光)は、偏光変換素子91の光束射出面にストライプ状に設けられ
る位相差板によって偏光変換され、すべての偏光が例えばS偏光に揃えられる。このよう
な偏光変換素子91を用いることにより、光源装置10から射出される光束を、一方向の
偏光に揃えることができるため、光変調部40において利用される光源光の利用率を向上
させることができる。
【0018】
光量調整用液晶パネル93は、セグメント表示型の第1液晶素子であり、偏光変換素子
91から入射した照明光に対して偏光方向を変調する。光量調整用液晶パネル93に入射
した照明光は、光量調整用液晶パネル93に電気的信号として入力された駆動信号又は制
御信号に応じて、部分領域単位で偏光状態を調節される。この光量調整用液晶パネル93
は、詳細な図示を省略しているが、一対の透明基板の間にTNモード等で動作する液晶層
を充填して構成され、入射側の透明基板の内側面上には、光透過性の共通電極等からなる
入射側の機能層が設けられ、射出側の透明基板の内側面上には、光透過性のパターン電極
や不透明な薄膜トランジスタからなる射出側の機能層が設けられている。
【0019】
図2は、光量調整用液晶パネル93の機能を説明する正面図である。この光量調整用液
晶パネル93は、矩形の枠内に矩形の表示領域DAを有し、この表示領域DAは、セグメ
ント表示用の2つの部分領域PA1,PA2に分かれている。一方の部分領域PA1は、
システム光軸OAが交差する中心Oを含む中央領域となっており、他方の部分領域PA2
は、中央領域に対応する部分領域PA1の周囲に設けられる環状の周辺領域となっている
。各部分領域PA1,PA2は、上述した光透過性のパターン電極に対応しており、セグ
メント型表示の単位となっている。つまり、各部分領域PA1,PA2ごと個別に偏光方
向の変調量の調節が可能になっており、同一の部分領域PA1,PA2内で偏光方向に関
して一様な変調量を達成できるようになっている。
【0020】
なお、光量調整用液晶パネル93は、単独で調光素子として機能するのではなく、光入
射側の偏光変換素子91と、光射出側の液晶ライトバルブ40a,40b,40cとの間
に挟まれてライトバルブ状の調光素子として機能する。具体的に説明するため、偏光変換
素子91から射出される偏光が例えばS偏光であるとし、液晶ライトバルブ40a,40
b,40cの入射側に配置される第1フィルタ42a〜42cが例えばS偏光を透過させ
るものとする。この場合において、例えば光量調整用液晶パネル93の透明基板間に挟ま
れたTN型液晶に所定以上の動作電圧が印可されて、光量調整用液晶パネル93の各部分
領域PA1,PA2がオン状態になると、偏光変換素子91から射出されたS偏光が光量
調整用液晶パネル93で作用をほとんど受けず略そのまま中間偏光素子である第1フィル
タ42a〜42cを通過するので、光量調整用液晶パネル93によって遮光が行われない
。一方、例えば光量調整用液晶パネル93の透明基板間に挟まれたTN型液晶にゼロの電
圧が印可されて、光量調整用液晶パネル93の各部分領域PA1,PA2がオフ状態にな
ると、偏光変換素子91から射出されたS偏光が光量調整用液晶パネル93で直交する偏
光方向に変化する作用を受けて中間偏光素子である第1フィルタ42a〜42cで略阻止
されるので、光量調整用液晶パネル93によって遮光が行われる。さらに、例えば光量調
整用液晶パネル93の透明基板間に挟まれたTN型液晶に中間の動作電圧が印可されて、
光量調整用液晶パネル93の各部分領域PA1,PA2が半オン状態になると、偏光変換
素子91から射出されたS偏光が光量調整用液晶パネル93で適当な偏光方向に変化する
作用を受けて中間偏光素子である第1フィルタ42a〜42cで適宜阻止されるので、中
間調の遮光が行われる。以上により、光量調整用液晶パネル93の表示領域DAに設けた
各部分領域PA1,PA2単位で液晶ライトバルブ40a,40b,40cに供給する照
明光量を段階的に調整することができる。具体的には、例えば中央領域に対応する部分領
域PA1を常時オン状態とし、周辺領域に対応する部分領域PA2を投射画像の表示内容
に応じてオフ状態や半オン状態を含む多段階の中間状態にすることで、液晶ライトバルブ
40a,40b,40cに入射させる照明光の均一性を保持しつつ照明光量の段階的増減
を達成することができ、投射画像のコントラストを無理なく高めることができる。
【0021】
図1に戻って、色分離導光光学系30は、第1及び第2ダイクロイックミラー31a,
31bと、反射ミラー32a,32b,32cと、3つのフィールドレンズ33a,33
b,33cとを備え、均一化光学系20から出射した照明光を赤(R)、緑(G)、及び
青(B)の3色に分離するとともに、各色光を後段の液晶ライトバルブ40a,40b,
40cへ導く。より詳しく説明すると、まず、第1ダイクロイックミラー31aは、RG
Bの3色のうちR光を反射しG光及びB光を透過させる。また、第2ダイクロイックミラ
ー31bは、GBの2色のうちG光を反射しB光を透過させる。この色分離導光光学系3
0において、第1ダイクロイックミラー31aで反射されたR光は、反射ミラー32aを
経て入射角度を調節するためのフィールドレンズ33aに入射する。また、第1ダイクロ
イックミラー31aを透過し、第2ダイクロイックミラー31bで反射されたG光は、入
射角度を調節するためのフィールドレンズ33bに入射する。さらに、第2ダイクロイッ
クミラー31bを通過したB光は、リレーレンズLL1,LL2及び反射ミラー32b,
32cを経て入射角度を調節するためのフィールドレンズ33cに入射する。
【0022】
光変調部40を構成する各液晶ライトバルブ40a,40b,40cは、入射した照明
光の空間的強度分布を変調する非発光型の光変調装置である。液晶ライトバルブ40a,
40b,40cは、色分離導光光学系30から射出された各色光に対応してそれぞれ照明
される3つの画像表示用液晶パネル41a,41b,41cと、各画像表示用液晶パネル
41a,41b,41cの入射側にそれぞれ配置される3つの第1偏光フィルタ42a,
42b,42cと、各画像表示用液晶パネル41a,41b,41cの射出側にそれぞれ
配置される3つの第2偏光フィルタ43a,43b,43cとを備える。このうち、画像
表示用液晶パネル41a,41b,41cは、ドットマトリックス表示型の第2液晶素子
であり、光量調整用液晶パネル93と類似する構造を有するが、光量調整用液晶パネル9
3のようなセグメント表示型の第1液晶素子となっていない。
【0023】
この光変調部40において、第1ダイクロイックミラー31aで反射されたR光は、フ
ィールドレンズ33a等を介して液晶ライトバルブ40aに入射し、液晶ライトバルブ4
0aを構成する画像表示用液晶パネル41a上の表示領域を照明する。第1ダイクロイッ
クミラー31aを透過し、第2ダイクロイックミラー31bで反射されたG光は、フィー
ルドレンズ33b等を介して液晶ライトバルブ40bに入射し、液晶ライトバルブ40b
を構成する画像表示用液晶パネル41b上の表示領域を照明する。第1及び第2ダイクロ
イックミラー31a,31bを透過したB光は、フィールドレンズ33c等を介して液晶
ライトバルブ40cに入射し、液晶ライトバルブ40cを構成する画像表示用液晶パネル
41c上の表示領域を照明する。各画像表示用液晶パネル41a〜41cは、入射した照
明光の偏光方向の空間的分布を変調し、各画像表示用液晶パネル41a〜41cにそれぞ
れ入射した3色の光は、各画像表示用液晶パネル41a〜41cに電気的信号として入力
された駆動信号或いは画像信号に応じて、画素単位で偏光状態を調節される。この際、中
間偏光素子である第1偏光フィルタ42a〜42cによって、各画像表示用液晶パネル4
1a〜41cに入射する照明光の偏光方向が調整されるとともに、射出偏光素子である第
2偏光フィルタ43a〜43cによって、各画像表示用液晶パネル41a〜41cから射
出される変調光から所定の偏光方向の変調光が取り出される。以上により、各液晶ライト
バルブ40a,40b,40cは、それぞれに対応する各色の像光(2次元的な画像光)
を形成する。
【0024】
クロスダイクロイックプリズム50は、各液晶ライトバルブ40a,40b,40cか
らの各色の像光を合成する。より詳しく説明すると、クロスダイクロイックプリズム50
は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼
り合わせた界面には、X字状に交差する一対の誘電体多層膜51a,51bが形成されて
いる。一方の第1誘電体多層膜51aは、R光を反射し、他方の第2誘電体多層膜51b
は、B光を反射する。クロスダイクロイックプリズム50は、液晶ライトバルブ40aか
らのR光を誘電体多層膜51aで反射して進行方向右側に射出させ、液晶ライトバルブ4
0bからのG光を誘電体多層膜51a,51bを介して直進・射出させ、液晶ライトバル
ブ40cからのB光を誘電体多層膜51bで反射して進行方向左側に射出させる。このよ
うにして、クロスダイクロイックプリズム50によりR光、G光及びB光が合成され、カ
ラー画像による画像光である合成光が形成される。
【0025】
投射レンズ60は、投射光学系であり、クロスダイクロイックプリズム50を経て形成
された合成光による画像光を所望の拡大率で拡大してスクリーン(不図示)上にカラーの
画像を投射する。
【0026】
以上のプロジェクタ100によれば、偏光変換素子91と第1偏光フィルタ42a,4
2b,42cとの間にセグメント表示型の光量調整用液晶パネル93を設け、この光量調
整用液晶パネル93を通過する光束の偏光状態を表示領域DA中に設けた複数の部分領域
PA1,PA2単位で段階的に変調するので、第1偏光フィルタ42a,42b,42c
を通過する光量、すなわち画像表示用液晶パネル41a,41b,41cの照明光量を段
階的に調整することができ、液晶ライトバルブ40a,40b,40cによる表示画像の
コントラストを無理なく高めることができる。
【0027】
なお、図3は、図1及び図2に示す光量調整用液晶パネル93の変形例を説明する正面
図である。この場合、光量調整用液晶パネル93は、表示領域DA内に、セグメント表示
用の5つのストライプ状の部分領域PA21,PA22,PA23,PA24,PA25
に分割されている。これらの部分領域PA21〜PA25は、偏光変換素子91を構成す
る各偏光素子部分92A,92BのY方向に延びる出口に合わせてX方向に配列されてお
り、光源装置10の光源像が部分領域PA21〜PA25によって部分的に遮光されるこ
とを確実に防止しており、液晶ライトバルブ40a,40b,40cでの照明光の均一性
をより確保し易くなっている。なお、以上では、部分領域PA21,PA22,PA23
,PA24,PA25がY方向に延びるストライプであるとしたが、各部分領域PA21
,PA22,PA23,PA24,PA25をY方向に2つ以上の部分、具体的には3つ
のゾーンZ1,Z2,Z3に分割することもでき、この場合、マトリクス状の分布で照明
光の調光を行うことができる。
【0028】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態のプロジェクタについて説明する。なお、第2実施形態のプロジェ
クタは、第1実施形態のプロジェクタ100を変形したものであり、特に説明しない部分
は第1実施形態のプロジェクタ100と同様であるものとする。
【0029】
図4(A)は、本実施形態のプロジェクタにおける偏光変換素子191と光量調整用液
晶パネル193との配置関係等を説明する平面図であり、図4(B)は、偏光変換素子1
91の正面図であり、図4(C)は、光量調整用液晶パネル193の正面図である。また
、図5は、偏光変換素子191と光量調整用液晶パネル193との動作を説明する拡大平
面図である。なお、本実施形態のプロジェクタは、第1実施形態の偏光変換素子91(図
1参照)に対応する偏光変換素子191と、第1実施形態の光量調整用液晶パネル93(
図1参照)に対応する光量調整用液晶パネル193とを一体化した点に特徴がある。
【0030】
まず、偏光変換素子191は、偏光分離部として、システム光軸OAを挟んで、システ
ム光軸OAを挟んでX方向に関して対称に配列される4本の偏光変換素子部分92A,9
2Bを備える。これら偏光変換素子部分92A,92Bは、Y方向に延びる四角柱のブロ
ック状部材であり、互いに同一構造を有している。ここで、中央より左側の第1偏光変換
素子部分92Aは、第1、第2、及び第3プリズム81,88,89と、偏光分離膜83
と、反射膜84と、マスク86とを一組とした変換ユニットである。中央より右側の第2
偏光変換素子部分92Bも、同様に、第1、第2、及び第3プリズム81,88,89と
、偏光分離膜83と、反射膜84と、マスク86とを一組とした変換ユニットである。
【0031】
第1偏光変換素子部分92Aにおいて、第1プリズム81は、底面(XZ面に平行な面
)が平行四辺形である四角柱状の外形を有している。第2及び第3プリズム88,89は
、それぞれ底面が三角形である三角柱状の外形を有している。各第1プリズム81の両端
の斜面には、この斜面を充填してコーナを形成するように第2及び第3プリズム88,8
9が接合されており、全体として、底面が長方形の四角柱の外形をなす。
【0032】
以上のうち、第1プリズム81は、図5に示すように、XY面に対してともに平行な入
射面81a及び射出面81bと、これらの面81a,81bに対して45°の角度をなし
互いに平行な分離面81c及び反射面81dとを備える。ここで、分離面81cは偏光分
離膜83を支持し、反射面81dは反射膜84を支持する。なお、詳細な説明は省略する
が、第2プリズム88は、射出面88bと、分離面88cとを有し、第3プリズム89は
、反射面89dを有する。
【0033】
偏光分離膜83は、一対のプリズム81,88の分離面81c,88c間において、光
束の進行方向であるZ軸方向に対して45°傾斜した状態で配置されている。偏光分離膜
83は、入射光ILの光束に含まれるP偏光及びS偏光のうち、一方の偏光を透過し、他
方の偏光を反射する。この場合、偏光分離膜83は、入射光ILの偏光成分のうち、S偏
光を反射により第1の偏光として折り曲げ、P偏光を透過により第2の偏光として直進さ
せることによって分離するものとする。
【0034】
反射膜84は、一対のプリズム81,89の反射面81d,89d間において光束の進
行方向であるZ軸方向に対して所定角度、具体的には45°傾斜した状態で配置されてい
る。つまり、反射膜84は、第1プリズム81を挟んで偏光分離膜83に対向して平行に
配置されている。反射膜84は、偏光分離膜83により反射された第1の偏光をさらに反
射することで、その光路を第2の偏光と同一の方向に変換させる。
【0035】
マスク86は、第3プリズム89の入射側に接合されており、遮光性の材料からなる遮
光板としてプリズム89に直接入射する不要な光を遮断する。
【0036】
なお、第1偏光変換素子部分92Aに対向して配置される第2偏光変換素子部分92B
も、第1偏光変換素子部分92Aに対して鏡像関係の対称な構造を有する。第2偏光変換
素子部分92Bの構造や機能については詳細な説明を省略する。
【0037】
光量調整用液晶パネル193は、図5に示すように、入射側の透明基板193aと、入
射側機能層193bと、射出側の透明基板193dと、射出側機能層193eと、両透明
基板193a,193dに挟まれた液晶層193gとを備える。光量調整用液晶パネル1
93は、図4(B)にも示すように、射出側機能層193eに設けたパターン電極に対応
して、表示領域DA内にセグメント表示用の8つの部分領域PAa,PAbを有している
。これらの部分領域PAa,PAbは、Y方向に延びるストライプ状に配列された帯状領
域であり、各部分領域PAa,PAbにおいて個別に変調量を調整することができる。
【0038】
以上の第1偏光変換素子部分92Aでは、第1プリズム81に入射した入射光ILのう
ち、Z軸に平行な光線PL0が、偏光分離膜83により、反射される一方の偏光である第
1光線PL1と、通過する他方の偏光である第2光線PL2とに分岐される。この際、不
要な光がマスク86により遮断される。次に、偏光分離膜83により反射された第1光線
PL1は、再度反射膜84で反射され、長方形の出口である射出面81bからS偏光とし
て射出される。一方、偏光分離膜83を透過した第2光線PL2は、そのまま長方形の出
口である射出面88bからP偏光として射出される。ここで、両偏光変換素子部分92A
,92Bにおいて偏光分離膜83により反射された第1光線PL1は、反射膜84を経て
射出面81bに対向して配置された光量調整用液晶パネル193の部分領域PAbに入射
する。部分領域PAbに入射した第1光線PL1は、部分領域PAbがオン状態である場
合、光量調整用液晶パネル193で特に作用を受けることなく、S偏光として射出される
。一方、 両偏光変換素子部分92A,92Bにおいて偏光分離膜83を透過した第2光
線PL2は、射出面88bに対向して配置された光量調整用液晶パネル193の部分領域
PAaに入射する。部分領域PAaに入射した第2光線PL2は、部分領域PAaがオフ
状態である場合、光量調整用液晶パネル193で位相が反転し、S偏光として射出される
。結果的に、光量調整用液晶パネル193から射出される偏光は、全てS偏光に揃えられ
る。
【0039】
以上は、照明輝度を最大とした通常の使用状態であるが、光量調整用液晶パネル193
の部分領域PAaをオフ状態からオン状態に切り替えるならば、部分領域PAaからの射
出光がP偏光になり、中間偏光素子である第1偏光フィルタ42a〜42cで略阻止され
るので、液晶ライトバルブ40a〜40cに対する遮光が行われる。逆に、光量調整用液
晶パネル193の部分領域PAbをオン状態からオフ状態に切り替えるならば、部分領域
PAbからの射出光がP偏光になり、中間偏光素子である第1偏光フィルタ42a〜42
cで略阻止されるので、液晶ライトバルブ40a〜40cに対する遮光が行われる。以上
は、光量調整用液晶パネル193の部分領域PAa,PAbがオン・オフ動作する場合の
説明であったが、部分領域PAa,PAbが半オン状態を含む中間状態で段階的に動作す
る場合、液晶ライトバルブ40a〜40cに対して多段階で中間調の遮光が行われる。以
上により、各部分領域PAa,PAb単位で液晶ライトバルブ40a,40b,40cに
供給する照明光量を多段階で調整することができ、投射画像にムラが発生することを防止
しつつ、投射画像のコントラストを効率的に高めることができる。特に、第2実施形態の
偏光変換素子191では、光量調整用液晶パネル193の存在によって位相差板が不要と
なるので、構成部材の削減によるコスト削減等といった利点が生じる。
【0040】
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲にお
いて種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である

【0041】
例えば、上記第1実施形態において、光量調整用液晶パネル93を偏光変換素子91の
後段側に直近になるように配置しているが、光量調整用液晶パネル93の配置は、この例
に限定されるものではない。例えば、光量調整用液晶パネル93を重畳レンズ25の後段
に配置することができる。この際、2つの光量調整用液晶パネル93を、第1及び第2ダ
イクロイックミラー31a,31bの間と、第1ダイクロイックミラー31a及び反射ミ
ラー32aの間とにそれぞれ配置することもできる。
【0042】
例えば、上記第1実施形態等において、光量調整用液晶パネル93が例えばTNモード
で動作する液晶層で構成されるとしたが、例えばVAモードで動作する液晶層で構成され
るものとできる。この場合、光量調整用液晶パネル93のオン・オフ動作が反転する。
【0043】
また、上記実施形態の光源装置10に用いるランプとしては、高圧水銀ランプやメタル
ハライドランプ等種々のものが考えられる。また、光源装置10は、副鏡13を有しない
タイプの光源とすることができる。
【0044】
また、上記実施形態のプロジェクタ100では、光源装置10からの光を複数の部分光
束に分割するため、一対のフライアイレンズ23,24を用いていたが、この発明は、こ
のようなフライアイレンズすなわちレンズアレイを用いないプロジェクタにも適用可能で
ある。さらに、フライアイレンズ23,24をロッドインテグレータに置き換えることも
できる。
【0045】
また、上記実施形態では、透過型のプロジェクタに本発明を適用した場合の例について
説明したが、本発明は、反射型プロジェクタにも適用することが可能である。ここで、「
透過型」とは、画像表示用液晶パネル等を含む液晶ライトバルブが光を透過するタイプで
あることを意味しており、「反射型」とは、液晶ライトバルブが光を反射するタイプであ
ることを意味している。なお、光変調装置は液晶パネル等に限られず、例えばマイクロミ
ラーを用いた光変調装置であってもよい。
【0046】
また、プロジェクタとしては、投射面を観察する方向から画像投射を行う前面プロジェ
クタと、投射面を観察する方向とは反対側から画像投射を行う背面プロジェクタとがある
が、図1に示すプロジェクタの構成は、いずれにも適用可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、3つの画像表示用液晶パネル41a〜41cを用いたプロジ
ェクタ100の例のみを挙げたが、本発明は、1つの液晶パネルのみを用いたプロジェク
タ、2つの液晶パネルを用いたプロジェクタ、或いは、4つ以上の液晶パネルを用いたプ
ロジェクタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態のプロジェクタについて説明する平面図である。
【図2】光量調整用液晶パネルの機能を説明する正面図である。
【図3】図2等に示す光量調整用液晶パネルの変形例を説明する正面図である。
【図4】(A)〜(C)は、偏光変換素子と光量調整用液晶パネルとの配置関係等を説明する図である。
【図5】偏光変換素子と光量調整用液晶パネルとの動作を説明する拡大図である。
【符号の説明】
【0049】
10…光源装置、 11…発光管、 12…リフレクタ、 13…副鏡、 14…平行
化レンズ、 20…均一化光学系、 23…第1フライアイレンズ、 24…第2フライ
アイレンズ、 23a,24a…要素レンズ、 25…重畳レンズ、 30…色分離導光
光学系、 31a…第1ダイクロイックミラー、 31b…第2ダイクロイックミラー、
33a,33b,33c…フィールドレンズ、 40…光変調部、 40a,40b,
40c…液晶ライトバルブ、 41a,41b,41c…画像表示用液晶パネル、 42
a,42b,42c…第1偏光フィルタ、 43a,43b,43c…第2偏光フィルタ
、 50…クロスダイクロイックプリズム、 60…投射レンズ、 81…第1プリズム
、 88…第2プリズム、 89…第3プリズム、 83…偏光分離膜、 84…反射膜
、 86…マスク、 89…第3プリズム、 91…偏光変換素子、 92A…第1偏光
変換素子部分、 92B…第2偏光変換素子部分、 93…光量調整用液晶パネル、 1
00…プロジェクタ、 DA…表示領域、 OA…システム光軸、 PA1,PA2…部
分領域、 PA21〜PA25…部分領域、 PAa,PAb…部分領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を射出する光源と、
前記光源からの光束を偏光方向に応じて分離する偏光分離部と、
前記偏光分離部を通過した光束の偏光状態を表示領域中に設けた複数の部分領域単位で
変調するセグメント表示型の第1液晶素子と、
前記第1液晶素子を経た光束のうち所定の偏光方向の光束を選択的に透過させる中間偏
光素子と、
前記中間偏光素子を通過した光束の偏光状態を画像情報に応じて変調するドットマトリ
ックス表示型の第2液晶素子と、
を備えるプロジェクタ。
【請求項2】
前記第1液晶素子は、前記複数の部分領域において段階的に変調量を変化させる、請求
項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記第1液晶素子は、前記複数の部分領域における変調量の段階的変化によって、前記
複数の部分領域に対応して前記第2液晶素子上の表示領域に入射する照明光量を調整する
、請求項2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記第1液晶素子は、システム光軸が交差する中心を含む中央領域と、前記中央領域の
周囲に設けられる環状の周辺領域とを前記複数の部分領域として有し、前記中央領域と前
記周辺領域とにおいて個別に変調量を調整することができる、請求項2及び請求項3のい
ずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記第1液晶素子は、所定方向に延びるストライプ状に配列された複数の帯状領域を前
記複数の部分領域として有し、前記複数の帯状領域において個別に変調量を調整すること
ができる、請求項2及び請求項3のいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記第1液晶素子は、前記偏光分離部の射出側に近接して配置され、分離された複数の
偏光方向の光束のうち少なくとも1つの光束の偏光方向を変化させる、請求項1から請求
項5までのいずれか一項に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記偏光分離部は、前記所定方向に延びるストライプ状に配列されるとともに、第1の
偏光方向に対応する第1出口と前記第1の偏光方向と異なる第2の偏光方向に対応する第
2出口とをそれぞれ有する複数の偏光分離プリズム部分を備え、
前記第1液晶素子は、前記複数の偏光分離プリズム部分のうち前記第1出口と前記第2
出口とに対応してストライプ状に配列された複数の帯状領域を前記複数の部分領域として
有する、請求項6に記載のプロジェクタ。
【請求項8】
前記第2液晶素子を経た照明光のうち所定の偏光方向の光束を選択的に透過させる射出
偏光素子と、
前記射出偏光素子を経た変調光を投射する投射光学系と、
をさらに備える、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−169138(P2009−169138A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7662(P2008−7662)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】