プロセス流れ処理のためのシステム及び方法
プロセス流れ処理のためのシステム及び方法。処理システムには、一般的に、脱塩ユニットの下流に結合された酸化ユニットを含むことが可能である。酸化ユニットは、プロセス流れ中の有機還元硫黄汚染物質を酸化して、下流での処理を促進することが可能である。脱塩ユニットは、酸化ユニットの生成物を転換して、鉱物流れを生成することが可能である。いくつかの例では、プロセス流れは、エチレン生産施設又は石油精製所のような工業操業所からの使用済苛性アルカリ流れであってもよい。脱塩ステップにおいて水酸化ナトリウム流れのような新鮮な苛性アルカリ流れを単離し、工業操業所に戻して利用することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にプロセス流れの処理に関し、更に詳しくは、その脱塩のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化は、プロセス流れを処理するための周知の技術であり、例えば廃水中の汚染物質を消滅させるために、広く用いられている。例えば湿式酸化には、酸化剤、一般的には酸素含有ガスからの分子状酸素、による望ましくない成分の高温及び高圧における水相酸化が含まれる。このプロセスによって、有機汚染物質を二酸化炭素、水及び酢酸のような生分解性短鎖有機酸に転換することができる。硫化物及びメルカプチドを始めとする無機構成成分も酸化することが可能であり、シアン化物は加水分解することが可能である。焼却の代替案として、多種多様な用途において、湿式酸化を利用して、例えば引き続く排出のために、プロセス流れを処理することが可能である。
【0003】
各種イオン回収法も広く知られている。技法の1つには、既に実質的に脱イオン化された流れから超純水を生産するためだけに殆ど排他的に用いられる連続的電気式脱イオン化(CEDI)システムが関与する。CEDI供給流は、典型的には、逆浸透処理流れである。CEDI供給流れ及び生成物流れは導電率が低く、従って、マトリックスの導電率を高めるため、セルには、通常、樹脂が充填される。セルは交互対をなすように配列され、各対は、一般的に、1つの超純水流れと1つの塩水廃棄流れとを生じさせる。CEDIモジュールの能力は、モジュールの両端の電極間に含まれるセル対の数によって規定される。典型的には、工業規模の用途の場合、モジュール当たり、約30〜120のセル対が用いられる。CEDIモジュールのハウジングは、一方の流れにおいて生産水を集水し、もう一方の流れにおいて廃棄イオン流れを集水するダクト系統を有するように構成される。工業用途は、典型的には、10アンペア以下の範囲内である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
各側面は、一般的にプロセス流れの処理システム及び方法に関する。
1つ以上の側面によれば、水性供給物を処理するためのシステムは、水性供給物の源に流体接続された酸化ユニットと、酸化ユニットの下流に流体接続され酸化ユニットの生成物を目標化合物に転換するように構成され配列された脱塩ユニットとを、含有してなる。
【0005】
1つ以上の側面によれば、使用済苛性アルカリを含む水性供給物を処理するためのシステムは、水性供給物の源に流体接続された酸化ユニットと、酸化ユニットの下流に流体的に接続され新鮮な苛性アルカリを生成するように構成され配列された電気化学的脱イオン化ユニットとを、含有してなる。
【0006】
1つ以上の側面によれば、水性流れの処理方法は、水性流れを酸化して酸化生成物を生成し、酸化生成物を転換して苛性アルカリを生成させることからなる。
【0007】
その他の側面、実施態様並びにこれらの例示的側面及び実施態様の利点については、詳細に後述する。更に、当然明らかなように、以上の情報及び下記の詳細説明は、様々な側面及び実施態様の説明のための単なる例でしかなく、請求の範囲に記載の側面及び実施態様の性質及び特性を理解するための概要又は構成を提示することを目的とするものである。添付の図面は、様々な側面及び実施態様を図解して、更によく理解できるようにするために掲載されており、本明細書に組み込まれて、その一部を構成している。図面は、明細書の残りの部分と共に、解説され請求の範囲に記載された側面及び実施態様の原理及び働きの説明に役立つ。
【0008】
以下では、添付の図面を参照して、少なくとも1つの実施態様の様々な側面について論考する。これらの図は、一定の比率で描くことを意図したものではないが、種々の図に例示された同じか又はほぼ同じ構成要素は、同様の番号によって表示されている。明瞭化のため、全ての図面において全ての構成要素が表示されているわけではない。これらの図は、図解及び説明のために提示されており、本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】1つ以上の実施態様による処理システムを例示した図である。
【図2】1つ以上の実施態様による苛性アルカリ流れ処理システムを例示した図である。
【図3】1つ以上の実施態様による連続的電気式脱イオン化ユニットの働きを例示した図である。
【図4A】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図4B】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図4C】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図4D】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図4E】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図5A】添付例において論考される試験条件及び結果を要約した表である。
【図5B】添付例において論考される試験条件及び結果を要約した表である。
【図6A】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図6B】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図6C】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図6D】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図6E】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図7A】添付例において論考される電流の効果に関するデータを例示したグラフである。
【図7B】添付例において論考される電流の効果に関するデータを例示したグラフである。
【図8A】1つ以上の実施態様におけるいくつかの異なるシステム配置についての質量収支を表わした図である。
【図8B】1つ以上の実施態様におけるいくつかの異なるシステム配置についての質量収支を表わした図である。
【図8C】1つ以上の実施態様におけるいくつかの異なるシステム配置についての質量収支を表わした図である。
【図8D】1つ以上の実施態様におけるいくつかの異なるシステム配置についての質量収支を表わした図である。
【図9】1つ以上の実施態様に従って質量収支の要求を満たすのに必要なCEDI生成物流れ中のNaOHの測定力価を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つ以上の実施態様が一般的にプロセス流れの処理に関連している。これらのシステム及び方法は、1つ以上の容易に酸化可能な化合物で汚染されたプロセス流れの処理において一般的に有効であり得る。本明細書に記載のシステム及び方法は、プロセス流れを脱塩して下流処理を促進し及び/又は鉱物流れのような生成物を生成することが望ましいと考えられる多種多様な用途で、実施可能である。有利なことには、いくつかの実施態様は、上流での工業用途に対して供給する必要のある新しい、新鮮な又は補充の反応物の量を減らすのにとりわけ役立つ可能性がある。例えば、いくつかの実施態様では、使用済苛性アルカリ供給流を処理して、反応物として用いるために上流のエチレン生産施設又は石油精製所に戻すのに十分な力価と品質とを有する、水酸化ナトリウム流れのような、新しい苛性アルカリ流れを生じさせることが可能である。いくつかのシステム及び方法は、排出前の中和のために、例えば化学物質の添加による、pH補正の必要が軽減されるように、初期プロセス流れのpHレベルに対して調整されたpHレベルで流出するシステムを生じさせるのにも役立ち得る。実施態様によっては、例えば酸化処理ユニット及び脱塩処理ユニットの両方の、装置を効率よく利用し、それらの間の相乗作用を認識して、装置供給者及びエンドユーザの両方に対してかなりの利点をもたらすことが可能なものもある。
【0011】
当然明らかなように、本明細書において論考されるシステム及び方法の実施態様は、その応用において、下記記述又は添付図面において例示される構造又は構成の細部に制限されるものではない。これらのシステム及び方法は、他の実施態様で実施することが可能であり、様々な方法で実践又は実施することが可能である。本明細書では例証だけを目的として特定の実施例が提示されるが、これらは制限を意図したものではない。即ち、1つ以上のどの実施態様に関連して論考される作用、要素及び特徴も、他の任意の実施態様における同様の役割から排除するように意図されたものではない。また、本明細書において用いられる表現及び用語は説明のためのものであって、制限とみなすべきではない。「包含する」、「含有してなる」、「有する」、「含む」、「伴う」、及び、その変形の本明細書における利用は、その後に列挙される項目及びその同等物並びに追加項目を包含することを表わしている。
【0012】
1つ以上の実施態様によれば、システムは、処理すべきプロセス流れの源に流体接続することが可能である。プロセス流れは、処理のためそのシステムに一般的に供給可能な任意のプロセス流れであってよい。実施態様によっては、プロセス流れは、水性供給物であってよい。少なくとも1つの実施態様では、プロセス流れは廃水流れであってよい。プロセス流れは、システムの上流又は下流での操作によってシステム内を移動させることが可能である。スラリー又は他の供給流のような、システムによって処理すべき水性混合物の供給源は、プラント又は中間貯蔵容器からの直接配管の形態をとることが可能である。処理後、プロセス流れは、上流プロセスに戻すこともできるし、廃液としてシステムから排出することも可能である。
【0013】
典型的な操作において、開示のシステムは、地域社会供給源、産業供給源又は居住地供給源からプロセス流れを得ることが可能である。実施態様によっては、プロセス流れが、例えば、食品加工プラント、化学処理施設、ガス化事業、又は、パルプ及び製紙工場から生じる。少なくとも1つの実施態様では、プロセス流れは、エチレンプラント操業所又は石油精製所等の、一般的にポリオレフィンに関連したプロセスからの水性供給物とすることが可能である。例えば、実施態様によっては、水性供給物は、使用済苛性アルカリ供給流であってもよい。
【0014】
1つ以上の実施態様によれば、プロセス流れは、鉱物のような、溶存固形物を含んでいてもよい。実施態様によっては、鉱物は、更に詳細に後述するように、分離又は転換が可能であれば、生成物流れとしての価値を備える場合もある。他の実施態様では、鉱物は、プロセス流れを使用、処理又は廃棄に不十分なものにする汚染物とみなされる場合もある。従って、プロセス流れを脱塩して、生成物を抽出し、及び/又は、下流処理を容易化することが望ましいこともある。プロセス流れ中には、例として挙げるだけだが、塩化物、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、全有機性炭素(TOC)及び鉄を始めとする他の様々な成分が存在してもよい。
【0015】
1つ以上の実施態様によれば、プロセス流れは、1つ以上の目標イオンを含んでいてもよい。本明細書で論考するように、目標イオンの単離及び転換が望ましい場合もある。例えば、プロセス流れ中の目標イオンをシステムによって操作し、価値のある又は望ましい生成物流れを生成することも可能である。実施態様によっては、上流における消耗品又は反応物の消費による反応副生物として、プロセス流れに目標イオンが存在する。実施態様によっては、システムによって目標イオンが単離され、それを、目標化合物の形成又は生成に利用する。従って、プロセス流れ中に存在する目標イオンが、目標化合物の前駆体である場合もある。例えば、生成される目標化合物は、システムの上流のプロセス流れ中に目標イオンを生じさせた元の消耗品又は反応物である可能性もある。次に、目標化合物をシステムの上流に供給して、再利用することも可能である。実施態様によっては、目標化合物は、水酸化ナトリウム又は硫酸アンモニウムのような、苛性アルカリ化合物であってもよい。いくつかのシステム及び方法は、一般的に、目標化合物を含む生成物流れを生じさせてよい。少なくとも1つの実施態様の場合、プロセス流れは、石油精製所又はエチレン生産施設で用いられるような、工業用苛性塔又はMEROX(登録商標)型処理プロセスからの使用済苛性アルカリ流れであってよい。典型的には、使用済苛性アルカリ流れは、苛性塔における新鮮な苛性アルカリの消費による1つ以上の反応副生物を含んでいてもよい。1つ以上の実施態様によれば、一般的に、反応副生物は、対象の目標ナトリウムイオンを含んでいてもよい。例えば、反応副生物としての硫化ナトリウムには問題となる目標ナトリウムイオンが含まれる可能性がある。次に、システムによって目標イオンを転換し、目標化合物を生成することが可能である。例えば、目標ナトリウムイオンを転換して、目標化合物である水酸化ナトリウムを形成することが可能である。このシステムは、溶液中に水酸化ナトリウムを含む生成物流れを送り出すことが可能である。処理すべき使用済苛性アルカリ流れは、任意の新鮮な残留苛性アルカリ等を始めとする、他の化合物を含んでいてもよい。使用済苛性アルカリ流れから新鮮な苛性アルカリ流れを生成して、苛性塔に送り返すのが望ましい場合もある。
【0016】
1つ以上の実施態様によれば、処理すべきプロセス流れは、典型的には、少なくとも1つの望ましくない成分を含んでいる。望ましくない成分は、例えば公衆健康上の配慮、処理設計上の配慮、及び/又は、美観的配慮のために、水性混合物から除去する対象となる如何なる物質又は化合物であってもよい。例えば、望ましくない成分は、毒性であってもよい。実施態様によっては、望ましくない成分が、下流の分離又はイオン回収ユニットの膜による、下流操作を妨げる傾向を有する。例えば、望ましくない成分は、一般的に、好ましくない結果をもたらす可能性のあるプロセス流れの化学的酸素要求量(COD)レベルを高くする原因となるものと特徴付けられる。少なくとも1つの実施態様において、プロセス流れ中の望ましくない成分は、一般的に、酸化することが可能である。実施態様によっては、酸化することが可能な望ましくない成分は、有機化合物である。いくつかの無機成分、例えば硫化物、メルカプチド及びシアン化物、も酸化することができる。少なくとも1つの実施態様では、プロセス流れ中に硫化ナトリウムが存在する可能性がある。非制限的実施態様の1つでは、硫化ナトリウムがSとして少なくとも約25,000ppmまでの濃度で存在する可能性がある。
【0017】
本発明の1つ以上の実施態様によれば、処理システムは、第1の処理ユニットを含むことが可能である。実施態様によっては、第1の処理ユニットが一般的にプロセス流れに作用して、その更なる処理を促進する。例えば、第1の処理ユニットは、望ましくない成分又はその分解生成物における1つ以上の特定の化学的結合を妨げるのに、有効であり得る。1つ以上の実施態様によれば、第1の処理ユニットは、下流処理、例えば脱塩ステップ、の有効性、耐用寿命及び/又は適切性を阻害する可能性のあるCODの一因となるような被酸化性汚染物を一般的に処理することができる。従って、第1の処理ユニットは、例えばCODを除去し又は安定化することによって、1つ以上の望ましくない成分の濃度を低下させ又はその性質を変化させることができる。例えば、第1の処理ユニットは、有機還元硫黄汚染物質を分解又は除去することができる。実施態様によっては、第1の処理ユニットは、本明細書において論考するように、下流での抽出のため、少なくとも1つの目標イオンを異なる又は望ましい形態にする。少なくとも1つの実施態様では、通常、更に詳細に後述するように、脱塩ステップに先立つ前処理ステップとして第1の処理ユニットを組み込むことができる。
【0018】
1つ以上の実施態様によれば、第1の処理ユニット又はステージは、酸化ユニットであってよい。酸化反応は、被酸化性有機汚染物を、二酸化炭素、水及び生分解性短鎖有機酸、例えば酢酸、に転換することが可能な1つの分解技法である。本発明の一側面は、1つ以上の望ましくない成分を含む水性混合物の酸化処理のためのシステム及び方法に関する。酸化ユニットは、硫化物を酸化して無毒性の硫酸イオンを生成し、かつプロセス流れ、例えば使用済苛性アルカリ流れ、の中に存在する他の化学種を酸化することができる。メルカプタンは実質的に無害にすることが可能であり、COD汚染物は、下流での操作にとって、より害の少ない安定な化合物に転換することが可能である。100%の酸化を実現することはできないので、酸化ユニットの酸化生成物には、依然として多少の望ましくない成分が存在する可能性がある。酸化生成物には、残留目標化合物、例えば水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウム、も存在する可能性がある。いくつかの非制限的実施態様の場合、典型的な酸化生成物は、炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムを含み得る。硫酸イオン及び炭酸イオンのような鉱物化生成物も形成され得る。少なくともいくつかの実施態様では、酸化プロセスによって、目標イオン、例えばナトリウム、の少なくとも1つの塩が形成され得る。例えば、ナトリウムは、酸化されたイオンとの塩錯体を、形成し得る。従って、酸化生成物は、元のプロセス流れの場合とは異なる形態で存在する目標イオン、例えばナトリウム、を含む可能性がある。例えば、いくつかの実施態様では、ナトリウムは、通常、酸化ユニットの上流において硫酸ナトリウムとして存在する可能性があるが、硫酸ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとして酸化ユニットから排出することが可能である。
【0019】
1つ以上の実施態様によれば、酸化ユニットにおいて任意の酸化剤を用いることができる。例えば、酸素ガス、オゾン、過酸化物及び過マンガン酸塩並びにそれらの組合せといった任意の酸素源を用いることができる。同様に、任意の酸化技法若しくは技術又はそれらの組合せを利用することも可能である。例えば、いくつかの実施態様では、光酸化技法を利用することができるが、そこでは、酸素の存在下における、還元分子の酸化形態への転換が、光分解によって開始される一連の化学反応によって、通常、実施される。少なくとも1つの実施態様では、例えば紫外光又は可視光を用い得る。1つ以上の実施態様によれば、酸化ユニットは一般的に液相酸化ユニットであり得る。少なくとも1つの実施態様では、液相酸化ユニットは、湿式空気酸化、湿式過酸化物酸化又は超臨界水酸化ユニットのような、湿式酸化ユニットであり得る。
【0020】
実施態様の1つでは、例えば、少なくとも1つの望ましくない成分を含む水性混合物又はプロセス流れの湿式酸化が行われる。水性混合物は、少なくとも1つの望ましくない成分を処理するのに十分な継続期間に亘って、高温及び超大気圧において、酸化剤で酸化される。いくつかの非制限的実施態様では、約150℃を超えるプロセス温度が係わる。より具体的に云うと、プロセス温度は約200℃を超えてもよい。実施態様によっては、プロセス温度が約250℃を超える。同様に、継続期間又は滞留時間は変わりうる。実施態様によっては、滞留時間が約半時間から10時間まで変動する。非制限的実施態様のいくつかでは、約1時間の滞留時間が必要とされるが、意図する用途の条件に応じて、より短いか又はより長い滞留時間を採用することが可能である。酸化反応によって、望ましくない成分中における1つ以上の化学結合の完全な状態を実質的に破壊することが可能である。本明細書で用いられる限りにおいて、「実質的に破壊する」は少なくとも約95%の破壊と定義される。本発明のプロセスは、通常、酸化することが可能なあらゆる望ましくない成分の処理に適用可能である。
【0021】
開示された湿式酸化プロセスは、酸化すべき化合物に適した任意の既知のバッチ式又は連続式の湿式酸化ユニットで実施することができる。典型的には、連続流湿式酸化システムでは、水相酸化が実施される。任意の酸化剤を用いることが可能である。酸化剤は、通常、空気、酸素富化空気又は実質的に純粋な酸素といった、酸素含有ガスである。本明細書で用いられる限りにおいて、「酸素富化空気」という語は、約21%を超える酸素含有率を有する空気と定義される。
【0022】
典型的な工程において、貯蔵タンクのような供給源からの水性混合物は導管を通って高圧ポンプまで流れ、このポンプで加圧される。水性混合物は、圧縮機によって供給される酸素含有加圧ガスと、導管内において、混合される。水性混合物は熱交換器を通って流れ、そこで、酸化が開始する温度まで加熱される。次に、加熱された供給混合物は入口から反応器に流入する。湿式酸化反応は一般的に発熱性であり、反応器内で発生した反応熱が混合物の温度を所望の値まで更に上昇させることが可能である。酸化反応の大部分は反応器内で生じるので、所望の程度の酸化を達成するのに十分な滞留時間が得られる。次に、酸化水性混合物及び酸素減少混合ガスは、反応器から熱交換器に移動する。高温酸化流出物が熱交換器を横断し、流入してくる原料水性混合物及び混合ガスによって冷却される。冷却された流出混合物は、圧力調節弁によって調節された導管を通って分離容器に流入し、そこで液体とガスとが分離される。液体流出物は下方の導管を通って分離容器から出てゆき、一方、排ガスは上方導管から放出される。下流の排ガス処理ユニットにおける排ガスの処理が、その組成及び大気への放出に関する要件によっては、必要になる可能性がある。湿式酸化流出物は、典型的には、放出前の精製のため、生物学的又は化学的処理プラントのような処理プラントに送り込まれてもよい。流出物は再循環して、湿式酸化システムによる更なる処理を施してもよい。本発明の1つ以上の実施態様によれば、流出物は、本明細書において更に詳述される脱塩又はイオン回収ユニットのような第2の単位操作に送ることも可能である。
【0023】
典型的には、湿式酸化システム排ガス中における残留酸素を維持するため、十分な酸素含有ガスがシステムに供給されるし、典型的には、ガスの超大気圧は、選択された酸化温度において水を液相に保つのに十分である。例えば、約240℃における最低システム圧は約33気圧であり、約280℃における最低システム圧は約64気圧であり、約373℃における最低システム圧は約215気圧である。実施態様の1つでは、水性混合物は、約30気圧〜約275気圧の圧力下で酸化される。湿式酸化プロセスは、水の臨界温度である約374℃未満の高温で行なってもよい。実施態様によっては、湿式酸化プロセスは超臨界高温で行われる。反応室内における水性混合物の保持時間は、通常、所望の酸化の程度を達成するのに十分でなければならない。実施態様によっては、保持時間は、約1時間を超え、約8時間以下である。少なくとも1つの実施態様では、保持時間は少なくとも約15分以上、約6時間以下である。実施態様の1つでは、水性混合物は、約15分〜約4時間に亘って酸化される。もう1つの実施態様の場合、水性混合物は、約30分〜約3時間に亘って酸化される。
【0024】
1つ以上の実施態様によれば、湿式酸化プロセスは接触的湿式酸化プロセスであってもよい。酸化ユニットにおける酸化反応は、一般的に、触媒によって実現できる。少なくとも1つの処理すべき望ましくない成分を含む水性混合物が、一般的に、高温及び超大気圧下で触媒及び酸化剤と接触させられる。通常、有効量の触媒が、反応速度を高め、並びに/又は、COD及び/若しくはTOCの減少促進を始めとする、システムの全般的分解除去効率を改善するのに、十分である。触媒は、湿式酸化システムの全エネルギ必要量の減少にも役立ち得る。接触的湿式酸化は、伝統的な非接触的湿式酸化の有効な強化法として出現した。一般的に、接触的湿式酸化プロセスによれば、より低い温度及び圧力で、従って、より少ない資本経費で、より一層の分解を実現することが可能になる。処理すべき水性流れは、酸化剤と混合され、高温及び高圧下で触媒に接触させられる。典型的には、不均一触媒は、水性混合物が通過する吸着床上に存在するか又は酸化に先立って水性混合物と配合される固体粒子の形態で存在している。触媒は、湿式酸化ユニットの下流で酸化流出物から濾過して再利用することが可能である。
【0025】
少なくとも1つの実施態様では、触媒は、周期表のV族、VI族、VII族及びVIII族の任意の遷移金属であってよい。例えば、実施態様の1つでは、触媒はV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag又はそれらの合金若しくは混合物であってよい。遷移金属は、元素でもよく、金属塩のように化合物中に存在していてもよい。1つの実施態様では、遷移金属触媒はバナジウムである。もう1つの実施態様では、遷移金属触媒は鉄である。更にもう1つの実施態様では、遷移金属触媒は銅である。
【0026】
触媒は、湿式酸化システムの任意の箇所で水性混合物に添加することができる。触媒は水性混合物と混合することができる。実施態様の1つでは、触媒は、湿式酸化ユニットへ供給する水性混合物の源に添加することができ、その触媒源は貯蔵タンクに流体接続されている。実施態様によっては、触媒は、湿式酸化ユニットに直接添加される。他の実施態様では、触媒は、加熱及び/又は加圧に先立って水性混合物に供給される。
【0027】
酸化ユニットのような第1の処理ユニットは、一般的に、酸化生成物流れのような生成物流れを生じさせる。従って、酸化ユニットは、プロセス流れを酸化生成物流れに転換することができる。酸化生成物流れは、一般的に、本明細書において論考されるイオン回収又は脱塩ユニットにおけるような後続処理に適合し得る。酸化生成物は、一般的に、望ましくない成分を実質的に含んでいない。酸化生成物は、元のプロセス流れからの1つ以上の目標イオンを含んでいてもよく、所望の生成物を生成させるために、本明細書において論考される更なる処理に付してもよい。
【0028】
1つ以上の実施態様によれば、第2の処理ユニットは、第1の処理ユニットの下流に流体接続されていてもよい。第2の処理ユニットは、酸化生成物又は酸化生成物流れを受け入れて、更に処理を施すように構成することができる。いくつかの実施態様では、第2の処理ユニットは、一般的に、第1の処理ユニットの酸化生成物を転換して、目標化合物又は目標流れを形成することもできる。目標化合物は、一般的に、システムによって抽出のために単離することが可能であり、生成物流れとして有用である場合もあれば、その除去によって下流での操作が促進される場合もある。いくつかの実施態様では、第2の処理ユニットは、一般的に、酸化生成物流れを脱塩して、下流処理を促進し及び/又は貴重な鉱物が豊富な生成物流れを生成することもできる。第2の処理ユニットは、一般的に、イオンを抽出して、イオンの豊富な生成物流れ並びに鉱物含有率の低下した流れを生じさせることが可能な任意の技術を必要とするものであってもよい。例えば、第2の処理ユニットは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、炭酸塩及び硫酸塩を始めとする化合物のイオン回収の実施に有効であり得る。
【0029】
1つ以上の実施態様によれば、脱塩ユニットは、例えば、少なくとも1つのイオン交換樹脂床を含んでいてもよい。イオン交換には、通常、溶液と、通常、樹脂である固体との間における脱塩のためのイオン交換が係わり得る。即ち、イオン交換には、鉱物又は合成ポリマの表面に吸着されたイオンと、その表面に接触している溶液中のイオンとの、可逆交換が関与しうる。目標イオンを除去して、他のイオン、例えば水素イオン、と置換することが可能である。次に、水又は他の再生流体を定期的にイオン交換樹脂床に通して、樹脂に新しい水素イオンを補給し、水酸化ナトリウム流れのような目標化合物を含むすすぎ水を生じさせることによって、イオン交換床から目標イオンが回収される。
【0030】
例えば、カチオン性単量体を陰イオン交換樹脂の構造内で重合させるか、又はその逆を行なうことによって、高分子電解質構造を生じさせることができる。再生されると、この構造は水素の形態の陽イオン基とヒドロキシルの形態の陰イオン基を備え得る。電解質の導入によって、水素イオン及びヒドロキシルイオンが置換されて、それらの中和が生じ、イオン種によって樹脂が飽和することになる。水による再生によって、樹脂基の加水分解が生じ、この間に目標イオンが遊離して回収されることになる。石灰溶液を利用して、イオン交換樹脂床を再生し、水酸化ナトリウムのような目標化合物を生成することも可能である。
【0031】
1つ以上の実施態様によれば、濃縮又は分離操作を用いて、イオン回収又は脱塩を実施することも可能である。例えば、蒸留には、一般的に、蒸発及び蒸気を集めるための後続の凝縮が必要になる。結晶化プロセス及びナノ濾過のような濾過プロセスを実施することも可能である。濃縮側に加えられる圧力によって半透膜を強制的に通過させられる水から溶解塩及び金属イオンを除去する濾過プロセスを伴う、逆浸透プロセスを利用することも、同様に、可能である。
【0032】
1つ以上の実施態様によれば、脱塩又はイオン除去技術の例には、電気透析、電気式脱イオン化、容量性脱イオン化及び連続的電気式脱イオン化(CEDI)といった電気化学的操作を挙げることができる。1つ以上の実施態様によれば、脱塩ユニットには、一般的に低電圧及び低圧下で操作される静電プロセスに基づく容量性脱イオン化が関与し得る。生成された水は、ポンプで電極アセンブリに通される。水中のイオンは、逆極性に帯電した電極に引き付けられる。これによってイオンは電極で濃縮され、他方、水中のイオン濃度は低下する。次に、清浄化された水がユニットに通される。電極の容量に達すると、水流が停止され、電極の極性が反転される。これによって、イオンは、前に蓄積されていた電極から離れることになる。次に、濃厚な塩水溶液がユニットから排出される。
【0033】
1つ以上の実施態様によれば、連続的電気式脱イオン化(CEDI)プロセスを実施することが可能である。CEDIでは、一般的に、イオン交換樹脂及び膜と直流電流との組合せを利用して、化学物質を必要とせずに、水を連続的に脱イオン化する。CEDIは、電荷がモジュールに加えられる電気化学的プロセスである。電気化学的装置の電極は、通常、ステンレス鋼、酸化イリジウム、酸化ルテニウム及びプラチナといった様々な材料で製造することが可能である。電極は、また、様々な材料で、例えばチタンで、コーティングすることができる。電極によってH+及びOH-イオンが生成される。これらのイオンは、装置に掛けられた電位によって、供給流中のイオンと共に、移動する。モジュールは、膜によって隔てられたセルで構成される。セルの奥行きは、約0.1インチである。膜は、陰イオン及び陽イオンのいずれか一方だけを通過させる。こうして、イオン種がいくつかのセルに集中する一方、他のセルではイオンが減少することになる。イオン流は、モジュールに加えられる電流に、直接関連している。電子は、セルを横切って流れることはない。電子によってイオンが生じるが、CEDIモジュールを横切って流れるのはそれらのイオンである。
【0034】
このプロセスは、典型的には、イオン性膜によって隔てられたセルの利用に依存している。純水の導電率は極めて低いので、純水中を通ってイオンを輸送するのに必要な電圧は極めて高い。樹脂は、水セル中における導電率を高めるために用いられ、これによって所要電圧が低減する。樹脂は、約0.3〜約0.5mmの球体である。樹脂表面は、イオン電荷を有しており、陽イオン性(c)又は陰イオン性(a)である。陽イオン樹脂は、陰イオン性官能基を有しており、これらが陽イオン種を引き付ける(即ち、陽イオン樹脂は、陽イオンを引き付けるのでそう呼ばれる。)。こうして、陽イオンは、陽イオン樹脂上を移動することによってセルを横切って流れることができる。同様に、陰イオン樹脂は、陰イオンの輸送を可能にする。適用時、多くのイオン交換樹脂床が陰イオン樹脂と陽イオン樹脂の両方と混合され、その結果、セルを横切って両タイプのイオンを輸送することが可能になる。
【0035】
膜も陽イオン材料又は陰イオン材料で造られる。IonPure(商標)(シーメンス社)膜は、樹脂とポリエチレンとを混合し、シート状に押出すことによって製作される。これは、不均一構造と呼ばれる。ポリエチレンによって機械的強度が得られ、樹脂によって輸送特性が与えられる。陽イオン膜は陽イオンのみを通過させ、一方、陰イオン膜は陰イオンのみを通過させる。
【0036】
湿潤させると、樹脂及び膜は膨潤し得る。膨潤すると、樹脂は、最大で約100psiまでの力を壁及び膜に及ぼす。膜中の樹脂材料も膨張し、そのため不均質膜の構造が永久的に変わることになる。浄水用途の場合、IonPure(商標)膜の公称漏れ速度は、約20mL/hr/ft2/5psiである。ナトリウムイオンによって生じる膨潤の度合いはヒドロニウムイオンによるよりも低い。従って、高力価の塩水中において、不均質膜の樹脂が収縮すると、樹脂の多孔性が増すことになる。均質膜は樹脂だけで造られており、従って、電流束が増すことになる。均質膜は、不均質膜より高価であるが、その他の点では置き換え可能である。
【0037】
双極膜は、一方の側が陰イオン膜であり、もう一方の側が陽イオン膜である。双極膜は、最も高価なタイプの膜であり、水分解に用いられる。これらの膜は、水分解セルの代わりに用いることが可能である。双極膜は膜内への水拡散に依存しており、高速生産には適さない可能性がある。
【0038】
電源によって、装置の電極に直流電流が通される。電極は、モジュールの反対側の最も外側のセルである。電極セルは樹脂を含んでおらず、代わりに高力価の塩水を用いてセルに導電性をもたらしている。膜が電極に接触するのを防ぐため、セル内にプラスチックスクリーンが配置されている。
【0039】
陰極(−)は、典型的には、ステンレス鋼から作られるが、他の陽極材料を用いることも可能である。電子は、電源からこの電極を通して流れる。陰極セルでは、これによって水酸化イオンと水素ガスが生じることになる。
4H2O+4e- → 2H2(g)+4OH-
【0040】
金属ナトリウムへのナトリウムの還元(メッキ)は、電子を消費するための代替ルートである。しかしながら、ナトリウムメッキの電位要件がH2(g)の生成に必要な電位より高いので、これが生じることはない。水素生産速度はファラデーの法則から計算され、下記のように書くことが可能である。
【0041】
【数1】
【0042】
ここで、
【0043】
【数2】
【0044】
は、水素ガスのモル生産速度(モルH2/秒)であり、Aは電流(アンペア)であり、Fはファラデー定数(96,485クーロン/モル)である。
【0045】
陽極(+)は、耐食導体でコーティングされたチタンである。導体は、典型的には、白金、酸化イリジウム又は酸化ルテニウムである。酸化イリジウムは、シーメンス社製Cシリーズモジュールにおいてコーティングとして、通常、用いられている。高アンペア数の用途では、白金がより優れた材料であろう。電子がセル内の水から引き出され、電源に戻される。これによって酸素ガスが生成される。
2H2O−4e- → O2(g)+4H+
【0046】
酸素の生産速度は、下記の式から計算される。
【0047】
【数3】
【0048】
ここで、
【0049】
【数4】
【0050】
は、水素ガスのモル生産速度(モルO2/秒)であり、Aは電流(アンペア)であり、Fはファラデー定数(96,485クーロン/モル)である。
【0051】
図1を参照すると、処理システム100の操作は、工業用応用装置130から酸化ユニット110にプロセス流れを送ることを伴う。酸化ユニット110から出る酸化生成物流れは、脱塩ユニット120に向けられる。脱塩ユニット120によって、水酸化ナトリウム流れのような、目標化合物流れが生成される。この化合物流れを工業用応用装置130に送り返して、更に利用することが可能である。目標化合物流れは、工業用応用装置130に直接送り込むこともできるし、又は、その上流で反応物源140からの新しい反応物と混合することもできる。放出流れを再循環させて、脱塩ユニット120に戻し、更に処理し及び/又は目標化合物を抽出することもできる。従って、反応物がシステムによってプロセス流れから生成されるので、工業用応用装置130に対して添加する新鮮な反応物の量を少なくすることができる。
【0052】
一側面では、使用済苛性アルカリを処理して、水酸化ナトリウム生成物流れを回収することが可能である。エチレンプラント又は石油精製プラントでは、水酸化ナトリウムのような新鮮な苛性アルカリを用いて、プロセスガスから二酸化炭素及び硫化水素のような酸性ガスを除去し又は洗浄することが可能である。新鮮な苛性アルカリは、水中において約50%のNaOHであり、典型的には、苛性塔で利用するため約10%にまで希釈される。毎時約8トンもの新鮮な苛性アルカリを消費し得る。苛性塔は、メルカプタン、軽質炭化水素、アセトアルデヒド、ナフテン酸及びクレゾール酸のような有機化学種を凝縮させることも可能である。より多くの酸が洗浄されるので、もう役に立たなくなるまで、遊離苛性アルカリの量が減少させられる。この時点において、プラントでは、典型的に、システムから苛性アルカリを除去することになり、それは使用済苛性アルカリとして知られるようになる。
【0053】
典型的な使用済苛性アルカリ流れには、溶液中に溶解した炭酸ナトリウム、硫化物及び高分子量有機化合物が含まれている。液相の硫化物、炭酸塩及び有機酸を保持しているこの流れは、典型的には、高いpHを有する。この流れは、溶解固形物の含有量が多い可能性があるが、一般的には多くの脱塩プロセスに適さない。というのは、反応性硫化物及び有機化合物は、CEDIシステムの膜材料のような脱塩プロセスに適合しない可能性があるからである。ナトリウムのような陽イオンを除去すると硫化物が液体から遊離することになるが、このことは、硫化水素が臭気及び毒性の強い腐食性ガスであるため、多くの場合、望ましくない。
【0054】
使用済苛性アルカリ液はWAOを利用して酸化され、次に、CEDIを利用して脱塩される。酸化によって、硫化物は、無害な硫酸塩に転換され、有機化合物は、比較的安定で脱塩プロセスに対してそれほど破壊的でない、炭酸塩及び短鎖有機酸に転換される。酸化された液は、次にCEDIプロセスに送られ、そこで、ナトリウムの一部が除去されて、水酸化ナトリウム生成物流れが生じる。残留流れは、ナトリウムイオンの除去によって多少脱塩され、この結果、流出流のpHの低下も起きる。
【0055】
1つ以上の追加単位操作を脱塩ユニットの下流に流体接続することが可能である。例えば、濃縮器は、目標生成物流れを、上流の工業操業所に送って利用する前に、その供給を受けて濃縮するように構成することが可能である。化学処理又は生物学的処理を伴うような精製ユニットが、放出前にシステムの流出流を処理するために、存在する場合もある。
【0056】
1つ以上の実施態様によれば、開示されたシステムは連続的に又は間欠的に運転することができる。実施態様によっては、湿式酸化システムは、制限するわけではないが、作動弁及びポンプといったシステム又はシステムの構成部品の少なくとも1つの作動パラメータを調整し又は調節するための制御装置を、含んでいてもよい。制御装置は、システムの少なくとも1つの作動パラメータを検出するように構成された少なくとも1つのセンサと、電子的に通信するようにしてもよい。制御装置は、一般的に、センサが発生する信号に応答して1つ以上の作動パラメータを調整するための制御信号を発生するように、構成することができる。
【0057】
制御装置は、典型的には、湿式酸化システムの構成部品との間で入力信号を受信し又は出力信号を送信するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)又は分散型制御システムのような、マイクロプロセッサベースの装置である。通信ネットワークによって、任意のセンサ又は信号発生装置を、コントローラ又は付随するコンピュータシステムからかなりの距離をあけて、なお、それらの間でデータの提供をしながら、配置することが可能になる。こうした通信機構は、無線プロトコルを利用する技法(これに限定するわけではないが)を始めとする、任意の適切な技法を利用して実現することが可能である。
【0058】
操業上の経済的配慮事項には、オペレータ時間、清浄水、機械及び計装のための電力並びにCEDI電極にアンペア数を提供するための電力が含まれる。CEDIを実施するための電気的コストは、抵抗と、ナトリウムが塩水セルに戻ることになる膜漏れの程度とによって決まる。CEDIを実施することによる経済的利点には、貴重なNaOHの生成が考えられる。更に、従来のWAOの使用済苛性アルカリ用途の場合、中和酸を購入して、酸化された使用済苛性アルカリのアルカリ性を中和しなければならない。アルカリ性のいくらかはCEDIによって除去されているので、中和酸の消費が更に節減される可能性がある。
【0059】
これら及びその他の実施態様の機能及び利点については、下記の例からより十分な理解が得られるであろう。これらの例は、事実上例証を意図したものであって、本明細書で論考される実施態様の範囲を制限するものとみなすべきではない。
【0060】
例
シーメンス社製CシリーズCEDIモジュールの標準バージョン及び改良バージョンを利用して、実験室試験が実施された。評価作業の目的は、無機塩の合成混合物からNaOH生成物流れを生成するためのCEDIプロセスの有効性を確認し、最大で18g/L NaOHに達するように意図して、生成し得るNaOH生成物の最大力価を求め、市販のNaOHの購入コストに対するこの応用例の経済的意義を評価することであった。3回の試験期間中に試験の報告がなされた。
【0061】
I.実験計画
A.試験1〜13
試験1〜13はシーメンス社製CシリーズCEDIモジュールで実施された。構成部品は下記に記載する。
● アルミニウム端板 − 陰極端板
● 陰極 − イリジウム製
● S型セルを造るために用いられたスクリーン
● 陽イオン膜
● 陽イオン樹脂と陰イオン樹脂との60/40v/v混合物を充填したプラスチックフレームであった1型セル。(電流の流れに対して垂直な)セルの横断面形状は平行な3つのセルから構成される。2つの外側チャンバは14″×1.3125″であり、中央チャンバは14″×1.25″である。セルの全横断面積は54.25″2(350cm2)である。
● 陰イオン膜
● やはり陽イオン樹脂の60/40v/v混合物を充填した2型セル(同じフレームが用いられるが、異なるダクト系に直接流れるように反転される)
● 陽イオン膜
● S型セル
● 陽イオン膜
● 1型セル
● 陰イオン膜
● 2型セル
● 陽イオン膜
● S型セル
● 陽極 − やはりイリジウム製
● アルミニウム端板 − 陽極端板
【0062】
各セルは、3つの供給ダクトオプションの1つと3つの放出ダクトオプションの1つとを備えている。
● S型セルは、塩水を供給し、処理済み塩水を放出するためにダクトが設けられた。これらのセルでH2、O2及びCO2ガスが発生し、従って、これらのガスもこの流れと共に排出された。
● 1型セルは、DI水を供給し、DI水を放出するためにダクトが設けられた。
● 2型セルは、DI水を供給し、NaOH生成物を放出するためにダクトが設けられた。場合によっては、2型セルへの供給流は、純粋なDI水ではなく再循環NaOH生成物ということもあった。
【0063】
セル構成を表わす表記は、−S12S12S+である。膜構成を表わす表記は、−caccac+である。いくつかの試験では極性が反転されたが、その場合、モジュールは+S21S21S−になる。モジュールの働きを表わした概略図が図3に示されている。図4A〜4Cに示された3つの異なる配管構成をそれぞれ評価した。
【0064】
モジュールへの電力は、直流電源及び電力制御装置によって供給した。電力制御装置によってモジュールに対するアンペア数を調節した。制御装置は、電圧及びアンペア数を表示した。負(黒)の電線を陰極タブに接続し、正(赤)の電線を陽極タブに接続することによって、配線を実施した。電気系統は、僅か8又は9アンペアの電力しか供給することができず、それを超えると、回路ブレーカが落ちることになる。電線は18ゲージであり、ほんの少しの間だけ作動した後で触ると暖かくなっていた。
【0065】
ロタメータによって供給流量を監視し、シリンダ及びストップウォッチを用いて流出流量を監視した。pH、ガス生成率及びガス組成は監視しなかった。生成されたガスは、再循環塩水と共に供給タンクに戻し、供給タンクの近くにガス抜き管を配置してガス抜きを施した。
【0066】
B.試験14〜17
図4Dには、これらの試験のための配管構成が示されている。この設備は、下記の例外はあるが、先行試験に記載のものと同様であった。
● より強力な電源及び電気ケーブルを利用した。この電源は、220VAC 30Aのコンセントに接続した。8ゲージの配線を利用し、これらの電線は、全ての試験について、触ると冷たい状態のままであった。従来の電源とは異なり、この電源は定電圧を供給し、その結果生じるアンペア数が表示された。
● 大電流の供給が可能な新電極。電極板は、重いチタン端子タブと白金で被覆した電極とを備えていた。
● セルの1つでは、従来のIonPure(商標)不均質膜ではなく、均質膜を用いた。
【0067】
C.試験50〜57
試験50〜57は、図4Eに示す配管構成で実施した。この設備は、下記の例外はあるが、先行試験に記載のものと同様であった。
● チタンのメッシュ電極板による新電極板を用い、塩水流ポート内に製作した。
● 先行試験の場合、陽極、陰極及び中央スクリーンセルへの塩水流は、個別には制御できなかった。バイパスされるセルがないことを保証するため、試験50〜57の場合、これらの塩水流のそれぞれを個別に制御することによってモジュールを改良した。
● 塩水セル内のスクリーンの織り方が、流体流に対して平行及び垂直ではなく斜めになるように構成した。これは、スクリーンにおいて懸念されるベーパロックを最小限に抑えようとして実施した。
【0068】
II.試験手順の説明
各実験の実施毎に、供給タンクに先ず塩水を充填した。DI水流を出し、ロタメータニードル弁を用いて水流の調整を行なった。次に主電源を入れ、それによってポンプを作動した。流量及びシステム背圧を各種調節弁を用いて調整した。直流電力制御装置を作動させ、試験アンペア数又は電圧に調整された。供給流及び各流出物の導電率及び温度を、Myron L Co.から市販されているULTRAMETER 6P II導電率メータを利用して、測定し、記録した。数分間に亘ってシステムを安定化させることができた。安定化は導電率計を用いて監視された。アンペア数及び電圧を記録し、供給流、生成物であるNaOH、及び、生成物である塩水の試料を採取した。いくつかの研究のため、一定期間にわたって複数試料を採取した。電源を切り、新鮮なDI水流を停止することによって、モジュールをシャットダウンした。
【0069】
H2及びO2ガスは塩水中の泡として発生する。H2の爆発下限(LEL)は4%である。火災及び爆発の危険は、塩水戻り管に換気フードへのガス抜きを設けることによって軽減された。仮想の40A フルスケールユニットの場合、H2をLELの10%未満まで希釈するには、3標準立方フィート/分の空気で十分であると、推定される。この試験作業ではLEL測定結果を収集しなかった。
【0070】
試験3〜13の場合、供給試料及び生成物試料を、HACH滴定法#8230によって分析した。この滴定を利用して、NaOH、Na2CO3及びNAHCO3の含有量を測定した。Na2SO4濃度を、HACH法#8051を用いて測光法によって測定した。
【0071】
試験14〜57の場合、pHは、Myron L Co ULTRAMETERを用いて、監視した。NaOH、Na2CO3及びNAHCO3の含有量を、Metohm 785 DMP Titrino自動滴定装置を用いた滴定によって監視した。
【0072】
試験57の終わりに当たって、CEDI膜を、ISI ABT WB−6走査型電子顕微鏡を用いて、分析した。
【0073】
III.供給流の説明
供給流の組成は、酸化された使用済苛性アルカリの予想される含有量に基づいている。
● 55g/LのNa2SO4
● 3.1g/LのNa2CO3
● 35g/LのNaHCO3
【0074】
全ての化学物質は、ミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrichから購入した試薬級化合物であった。DI水を溶剤として用いた。試験11及び12では、塩の用量を倍にして、飽和した上澄みを混合タンクからデカントすることによって調製した、上記よりも力価の高い供給流を用いた。試験13では、1/4の力価の供給流を用いた。試験50〜57は80g/LのNa2CO3溶液を用いて実施した。
【0075】
ほとんどの場合、供給流は、CEDIモジュールを通って再循環され、供給タンクに戻された。従って、供給流のナトリウム濃度は一定ではなかった。
【0076】
IV.試験結果
試験条件及び結果の要約表が、それぞれ、図5A及び5Bに示されている表1及び2に示されている。試験持続期間は、パラメータを記録し、試料を採取するのにかかる時間範囲であり、通常は1〜5分であった。報告された試験時刻はそれらのステップの終了時に記録された。
【0077】
電流効率は、ナトリウムイオンをNaOH生成物流れに輸送するために利用されたアンペア数の割合である。電流効率は、下記の式を用いてファラデーの法則から計算される。
【0078】
【数5】
【0079】
ここで、
【0080】
【数6】
【0081】
は、NaOH生成物流れにおけるナトリウムのモル流量であり(モルNa/秒)、Aは電流(アンペア)であり、Fはファラデー定数であり(96.485クーロン/モル)、n2はCEDIにおける2型セルの数であり(この場合は2)、ZNaはナトリウムイオンの電荷であり、ここでは+1である。
【0082】
一部の工程の期間中、電圧の関数としてアンペア数を監視するため、電力チャートを記録した。これらのチャートを、図6A〜6Eに示している。電力チャートは、表3に報告されている下記の公称条件における持続的操作中に記録した。
【0083】
表3
【表1】
【0084】
試験作業の終了時に、モジュールを分解した。膜の1つをSEMによって分析した。この膜によって、樹脂床セル内のDI水から陰極セル内の塩水が分離された。
【0085】
V.試験結果の論考
NaOHの生成に対するCEDIプロセスの有効性
全ての試験で、CEDIプロセスによって塩水からナトリウムイオンを抽出し、NaOH流を生成することが可能であることが、明らかになった。生成物流れにおけるNaOHの力価は0.14〜8g/L NaOHの範囲であった。炭酸塩及び硫酸塩のいずれか一方又は両方によって、生成物NaOHが多少汚染された。生成物流れにおけるNaOHの純度は、30%〜100%の純度であった。汚染源は、損傷又は多孔性による膜漏れに起因する可能性がある(下記参照)。
【0086】
アンペア数増大の効果
試験3、4及び5は、試験毎に電流を増大させて、同一条件で実施された同一試験である。Na回収率及び生成物流れにおけるNa濃度は、電流の増大につれて高くなった。流出物の温度も上昇した。電流効率は、電流の増大につれて低下した。電流効率が低下すると、電力の利用効率が悪くなり、その結果、温度が上昇する。
【0087】
図7A及び7Bには、結果をグラフで示している。
【0088】
より大きな電流で操作された試験14〜57の間に、アンペア数が大きくなると、時間が経つにつれて性能の低下が生じることが観測された。これが、高電圧における電流の動的挙動を示す図6A〜6Eに示されている。図6Cは、ユニットを起動すると、当初は時間の経過につれてアンペア数が増大することを示している。これは、生成物セル内にNaOHが生じ、それによって導電率が高くなり、従って定電圧におけるアンペア数が増大するためである。13:50頃に、電流が最大値11アンペアに達した。この後、電流は徐々に減少した。
【0089】
次に、システムは、生じたH2、O2及びCO2ガスが集まって定常気泡になり、これが時間とともに大きくなる潜在的ベーパロックを低減し又は排除するため、懸念されるセルに対する流れ及び圧力を個別に制御するように設計した。また、Na+の除去によるCO2ガスの生成を低減し又は排除するため、炭酸ナトリウムが供給流として置換された。電流の経時損失が観測された。大電流は、膜表面のDI側に影響した可能性がある。
【0090】
苛性アルカリ流量の効果
試験11及び12を同様の供給流及びアンペア数で実施した。これらの試験では、2型セルを通してNaOH生成物流れを再循環させた。生成物NaOHは、小さいパージ流によってシステムから出ていき、DI水によって補充された(即ち、供給及び放出)。こうして、セルを横切る流れの流量が維持されたが、より力価の高い生成物を有する、より小さい流れを生じさせるため、全滞留時間が延長された。
【0091】
試験12では、生成物放出速度を増し、従って、苛性アルカリ流れの滞留時間を短縮した。他の点では、これらの試験は同一であった。滞留時間が短くなると、NaOH生成物流れの力価が減るが、Na回収率は、試験11の場合の4倍高くなり、電流効率も高くなった。これらの結果は、苛性アルカリ流れの滞留時間が長くなると、生成物の力価が増す可能性があるが、全Na回収率及び電気効率は低下する可能性があることを、示唆している。これは、苛性アルカリ流れの高い浸透圧がより多くのNa+イオンの輸送に抵抗するためであると思われるが、大電流を用いることによって克服可能であろう。
【0092】
塩水濃度の効果
試験13は、12と同様の条件で実施したが、供給塩水の力価は低かった。試験13は、セル間の漏れを最小限に抑えるため、セル間の差圧を注意深く調整して実施した。試験13は、2型セルからの生成物放出速度を低くして実施されたが、この場合、この試験の実施前には、電流効率及びナトリウム回収率の低下が予想された。意外にも、この試験によって、試験12の場合よりも電流効率が向上し、Na回収率が高くなることが分かった。力価の低い供給塩水を用いると、ナトリウム回収率が高まるように思われる。
【0093】
樹脂効果
試験7は、試験4と同様の条件で実施した。試験4では、CEDIの中央に樹脂充填供給セルを設けたが、試験7では、この中央セルにスクリーンを充填した。試験7の供給流は力価のより高い供給流であり、これがやはり結果に影響を及ぼし、検討を困難にすることになったであろう。というのも2つのパラメータが異なるためである。しかしながら、試験13の分析に基づいて、供給塩水の力価が高くなると電流効率の低下が生じることが予想されたが、試験7と試験と4を比較すると、電流効率は、意外にも、ほぼ同じである。これは、樹脂をスクリーンに置き換えてもプロセスの効率が低下しないことを示唆している。以降の試験は、みな、塩水セルにスクリーンを用いたもので行なった。
【0094】
膜の論考
試験14〜16中は、均質膜が用いられた。これらの試験では、生成物の汚染度が最も高かった。これが多孔性/拡散性に起因するものであったかどうか、あるいは、膜に裂傷があったか否かは明らかではない。
【0095】
塩水流量増加の効果
試験8及び12は同様の試験であった。試験8は、試験12よりも、塩水流量及び苛性アルカリ流量を、より高くして実施した。試験8の電流効率は、試験12より高く、苛性アルカリ生成物の力価は同様であった。これらの結果は、塩水の流量が増すと効率が向上することを表わしている可能性がある。
【0096】
排ガスの論考
このプロセスによれば、塩水再循環管に排ガスが発生した。排ガス生成速度及び組成は、測定しなかった。目視検査によれば、かなりのガス流が、戻り管に存在し、これがアンペア数を増大させた。このガスには、電極で生じた水素と酸素が、主として、含まれていた。CO2ガスは、供給流にNaHCO3が含まれるが、Na2CO3は含まれない試験でも発生した。
【0097】
走査型電子顕微鏡(SEM)の結果
この評価では多数の異なるセルパックを試験した。最後の試験の完了後、最後のセルパックを切り開き、膜の試料を保管した。DI水セルから陽イオンセルを単離する陽イオン膜を乾燥させ、金のスパッタリングを施し、SEMに配置して分析を行なった。膜の各側を分析し、結果を図7A及び7Bに示している。塩水側の像は、ポリエチレンシートマトリックス内に懸濁した樹脂粒子がどのように見えるかを示している。キャビティが樹脂より大きいが、SEMのための試料調製において必要な乾燥プロセス中に粒子が収縮したためであり、これは予想されたことである。DI水側の像は同様のものを示しているが、シートマトリックスが異なり、損傷を示している可能性があるように見える。
【0098】
DI水の論考
試験17〜57に亘って、DI水の調整が効果をもたらすことが観測された。一定条件でDI水の流量を増すと、電流が減少した(図6B)。同様に、DI水の相対圧力を高くすると、電流の減少が生じた。これに関連して、場合によっては、塩水の圧力又は流量を増すと電流が増大することが観測された(図6E)。電流の減少は、溶液中及び樹脂床中においてH+イオン及びOH-イオンを生じさせる水分解反応の結果であるかもしれない。これによって、導電率が高くなる可能性があるが、DI水流量を増すと、これらのイオンが洗い流されて、導電率が低下する。或いは水分解に関連して、塩水及び苛性アルカリセルからのイオンが膜を通ってDI水セル内に漏れ出し、これによって導電率が高くなる可能性がある。同様に、DI水の流量を増すと、これらのイオンをより速く洗い流す可能性がある。DI水の相対的圧力を高めると、一般的に、漏れ率が低下する。しかし、DI水が放出される時までにCEDIプロセスによって汚染イオンが除去されるので、漏れは容易に検出することができない。
【0099】
VI.結果
酸化された使用済苛性アルカリからNa+をNaOHとして回収することに関するCEDIの有効性が立証された。再循環を利用することによって、10%のNaといったより高い回収率を達成することが可能になる。望ましい流量で力価の高い苛性アルカリを生成させるためには、大きいアンペア数が必要になる可能性がある。
【0100】
予言的な例
図2には、エチレンプラントに関して予測されるプラントフローダイアグラム(PFD)を示している。表4には、Naの約10%が再循環されるプラントに関する質量収支を示している。この例の場合、CEDIユニットからの生成物NaOHは、全使用済苛性アルカリ流れの約55%の流量で、約1.8重量パーセントのNaOHになる。図8A〜8Dには、いくつかの異なる構成の収支を示している。図9には、例えば同様の収支に基づくことが可能な、質量収支の要求を満たすCEDI生成物流れ中のNaOHの力価を例示している。
【0101】
表4.10重量%NaOH塔供給流でNa回収率が10%であるエチレンプラントのナトリウム収支
【表2】
【0102】
このように少なくとも1つの実施態様のいくつかの側面について説明してきたが、当該技術者には様々な変更、修正及び改良が思い浮かぶことは、理解できるであろう。こうした変更、修正及び改良は、本開示の一部をなすように意図されており、本発明の範囲内に含まれるように意図されている。従って、以上の説明及び図面は、ただ例証だけを目的としたものであり、本発明の範囲は、付属の請求項及びその等価物の正しい解釈によって判断すべきである。
【符号の説明】
【0103】
100 処理システム
110 酸化ユニット
120 脱塩ユニット
130 工業用応用装置
140 反応物質源
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にプロセス流れの処理に関し、更に詳しくは、その脱塩のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化は、プロセス流れを処理するための周知の技術であり、例えば廃水中の汚染物質を消滅させるために、広く用いられている。例えば湿式酸化には、酸化剤、一般的には酸素含有ガスからの分子状酸素、による望ましくない成分の高温及び高圧における水相酸化が含まれる。このプロセスによって、有機汚染物質を二酸化炭素、水及び酢酸のような生分解性短鎖有機酸に転換することができる。硫化物及びメルカプチドを始めとする無機構成成分も酸化することが可能であり、シアン化物は加水分解することが可能である。焼却の代替案として、多種多様な用途において、湿式酸化を利用して、例えば引き続く排出のために、プロセス流れを処理することが可能である。
【0003】
各種イオン回収法も広く知られている。技法の1つには、既に実質的に脱イオン化された流れから超純水を生産するためだけに殆ど排他的に用いられる連続的電気式脱イオン化(CEDI)システムが関与する。CEDI供給流は、典型的には、逆浸透処理流れである。CEDI供給流れ及び生成物流れは導電率が低く、従って、マトリックスの導電率を高めるため、セルには、通常、樹脂が充填される。セルは交互対をなすように配列され、各対は、一般的に、1つの超純水流れと1つの塩水廃棄流れとを生じさせる。CEDIモジュールの能力は、モジュールの両端の電極間に含まれるセル対の数によって規定される。典型的には、工業規模の用途の場合、モジュール当たり、約30〜120のセル対が用いられる。CEDIモジュールのハウジングは、一方の流れにおいて生産水を集水し、もう一方の流れにおいて廃棄イオン流れを集水するダクト系統を有するように構成される。工業用途は、典型的には、10アンペア以下の範囲内である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
各側面は、一般的にプロセス流れの処理システム及び方法に関する。
1つ以上の側面によれば、水性供給物を処理するためのシステムは、水性供給物の源に流体接続された酸化ユニットと、酸化ユニットの下流に流体接続され酸化ユニットの生成物を目標化合物に転換するように構成され配列された脱塩ユニットとを、含有してなる。
【0005】
1つ以上の側面によれば、使用済苛性アルカリを含む水性供給物を処理するためのシステムは、水性供給物の源に流体接続された酸化ユニットと、酸化ユニットの下流に流体的に接続され新鮮な苛性アルカリを生成するように構成され配列された電気化学的脱イオン化ユニットとを、含有してなる。
【0006】
1つ以上の側面によれば、水性流れの処理方法は、水性流れを酸化して酸化生成物を生成し、酸化生成物を転換して苛性アルカリを生成させることからなる。
【0007】
その他の側面、実施態様並びにこれらの例示的側面及び実施態様の利点については、詳細に後述する。更に、当然明らかなように、以上の情報及び下記の詳細説明は、様々な側面及び実施態様の説明のための単なる例でしかなく、請求の範囲に記載の側面及び実施態様の性質及び特性を理解するための概要又は構成を提示することを目的とするものである。添付の図面は、様々な側面及び実施態様を図解して、更によく理解できるようにするために掲載されており、本明細書に組み込まれて、その一部を構成している。図面は、明細書の残りの部分と共に、解説され請求の範囲に記載された側面及び実施態様の原理及び働きの説明に役立つ。
【0008】
以下では、添付の図面を参照して、少なくとも1つの実施態様の様々な側面について論考する。これらの図は、一定の比率で描くことを意図したものではないが、種々の図に例示された同じか又はほぼ同じ構成要素は、同様の番号によって表示されている。明瞭化のため、全ての図面において全ての構成要素が表示されているわけではない。これらの図は、図解及び説明のために提示されており、本発明の範囲の限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】1つ以上の実施態様による処理システムを例示した図である。
【図2】1つ以上の実施態様による苛性アルカリ流れ処理システムを例示した図である。
【図3】1つ以上の実施態様による連続的電気式脱イオン化ユニットの働きを例示した図である。
【図4A】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図4B】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図4C】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図4D】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図4E】添付例で論考される様々なシステムの配管配置を例示した図である。
【図5A】添付例において論考される試験条件及び結果を要約した表である。
【図5B】添付例において論考される試験条件及び結果を要約した表である。
【図6A】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図6B】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図6C】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図6D】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図6E】添付例において論考されるCEDIモジュールの電力チャートである。
【図7A】添付例において論考される電流の効果に関するデータを例示したグラフである。
【図7B】添付例において論考される電流の効果に関するデータを例示したグラフである。
【図8A】1つ以上の実施態様におけるいくつかの異なるシステム配置についての質量収支を表わした図である。
【図8B】1つ以上の実施態様におけるいくつかの異なるシステム配置についての質量収支を表わした図である。
【図8C】1つ以上の実施態様におけるいくつかの異なるシステム配置についての質量収支を表わした図である。
【図8D】1つ以上の実施態様におけるいくつかの異なるシステム配置についての質量収支を表わした図である。
【図9】1つ以上の実施態様に従って質量収支の要求を満たすのに必要なCEDI生成物流れ中のNaOHの測定力価を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つ以上の実施態様が一般的にプロセス流れの処理に関連している。これらのシステム及び方法は、1つ以上の容易に酸化可能な化合物で汚染されたプロセス流れの処理において一般的に有効であり得る。本明細書に記載のシステム及び方法は、プロセス流れを脱塩して下流処理を促進し及び/又は鉱物流れのような生成物を生成することが望ましいと考えられる多種多様な用途で、実施可能である。有利なことには、いくつかの実施態様は、上流での工業用途に対して供給する必要のある新しい、新鮮な又は補充の反応物の量を減らすのにとりわけ役立つ可能性がある。例えば、いくつかの実施態様では、使用済苛性アルカリ供給流を処理して、反応物として用いるために上流のエチレン生産施設又は石油精製所に戻すのに十分な力価と品質とを有する、水酸化ナトリウム流れのような、新しい苛性アルカリ流れを生じさせることが可能である。いくつかのシステム及び方法は、排出前の中和のために、例えば化学物質の添加による、pH補正の必要が軽減されるように、初期プロセス流れのpHレベルに対して調整されたpHレベルで流出するシステムを生じさせるのにも役立ち得る。実施態様によっては、例えば酸化処理ユニット及び脱塩処理ユニットの両方の、装置を効率よく利用し、それらの間の相乗作用を認識して、装置供給者及びエンドユーザの両方に対してかなりの利点をもたらすことが可能なものもある。
【0011】
当然明らかなように、本明細書において論考されるシステム及び方法の実施態様は、その応用において、下記記述又は添付図面において例示される構造又は構成の細部に制限されるものではない。これらのシステム及び方法は、他の実施態様で実施することが可能であり、様々な方法で実践又は実施することが可能である。本明細書では例証だけを目的として特定の実施例が提示されるが、これらは制限を意図したものではない。即ち、1つ以上のどの実施態様に関連して論考される作用、要素及び特徴も、他の任意の実施態様における同様の役割から排除するように意図されたものではない。また、本明細書において用いられる表現及び用語は説明のためのものであって、制限とみなすべきではない。「包含する」、「含有してなる」、「有する」、「含む」、「伴う」、及び、その変形の本明細書における利用は、その後に列挙される項目及びその同等物並びに追加項目を包含することを表わしている。
【0012】
1つ以上の実施態様によれば、システムは、処理すべきプロセス流れの源に流体接続することが可能である。プロセス流れは、処理のためそのシステムに一般的に供給可能な任意のプロセス流れであってよい。実施態様によっては、プロセス流れは、水性供給物であってよい。少なくとも1つの実施態様では、プロセス流れは廃水流れであってよい。プロセス流れは、システムの上流又は下流での操作によってシステム内を移動させることが可能である。スラリー又は他の供給流のような、システムによって処理すべき水性混合物の供給源は、プラント又は中間貯蔵容器からの直接配管の形態をとることが可能である。処理後、プロセス流れは、上流プロセスに戻すこともできるし、廃液としてシステムから排出することも可能である。
【0013】
典型的な操作において、開示のシステムは、地域社会供給源、産業供給源又は居住地供給源からプロセス流れを得ることが可能である。実施態様によっては、プロセス流れが、例えば、食品加工プラント、化学処理施設、ガス化事業、又は、パルプ及び製紙工場から生じる。少なくとも1つの実施態様では、プロセス流れは、エチレンプラント操業所又は石油精製所等の、一般的にポリオレフィンに関連したプロセスからの水性供給物とすることが可能である。例えば、実施態様によっては、水性供給物は、使用済苛性アルカリ供給流であってもよい。
【0014】
1つ以上の実施態様によれば、プロセス流れは、鉱物のような、溶存固形物を含んでいてもよい。実施態様によっては、鉱物は、更に詳細に後述するように、分離又は転換が可能であれば、生成物流れとしての価値を備える場合もある。他の実施態様では、鉱物は、プロセス流れを使用、処理又は廃棄に不十分なものにする汚染物とみなされる場合もある。従って、プロセス流れを脱塩して、生成物を抽出し、及び/又は、下流処理を容易化することが望ましいこともある。プロセス流れ中には、例として挙げるだけだが、塩化物、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、全有機性炭素(TOC)及び鉄を始めとする他の様々な成分が存在してもよい。
【0015】
1つ以上の実施態様によれば、プロセス流れは、1つ以上の目標イオンを含んでいてもよい。本明細書で論考するように、目標イオンの単離及び転換が望ましい場合もある。例えば、プロセス流れ中の目標イオンをシステムによって操作し、価値のある又は望ましい生成物流れを生成することも可能である。実施態様によっては、上流における消耗品又は反応物の消費による反応副生物として、プロセス流れに目標イオンが存在する。実施態様によっては、システムによって目標イオンが単離され、それを、目標化合物の形成又は生成に利用する。従って、プロセス流れ中に存在する目標イオンが、目標化合物の前駆体である場合もある。例えば、生成される目標化合物は、システムの上流のプロセス流れ中に目標イオンを生じさせた元の消耗品又は反応物である可能性もある。次に、目標化合物をシステムの上流に供給して、再利用することも可能である。実施態様によっては、目標化合物は、水酸化ナトリウム又は硫酸アンモニウムのような、苛性アルカリ化合物であってもよい。いくつかのシステム及び方法は、一般的に、目標化合物を含む生成物流れを生じさせてよい。少なくとも1つの実施態様の場合、プロセス流れは、石油精製所又はエチレン生産施設で用いられるような、工業用苛性塔又はMEROX(登録商標)型処理プロセスからの使用済苛性アルカリ流れであってよい。典型的には、使用済苛性アルカリ流れは、苛性塔における新鮮な苛性アルカリの消費による1つ以上の反応副生物を含んでいてもよい。1つ以上の実施態様によれば、一般的に、反応副生物は、対象の目標ナトリウムイオンを含んでいてもよい。例えば、反応副生物としての硫化ナトリウムには問題となる目標ナトリウムイオンが含まれる可能性がある。次に、システムによって目標イオンを転換し、目標化合物を生成することが可能である。例えば、目標ナトリウムイオンを転換して、目標化合物である水酸化ナトリウムを形成することが可能である。このシステムは、溶液中に水酸化ナトリウムを含む生成物流れを送り出すことが可能である。処理すべき使用済苛性アルカリ流れは、任意の新鮮な残留苛性アルカリ等を始めとする、他の化合物を含んでいてもよい。使用済苛性アルカリ流れから新鮮な苛性アルカリ流れを生成して、苛性塔に送り返すのが望ましい場合もある。
【0016】
1つ以上の実施態様によれば、処理すべきプロセス流れは、典型的には、少なくとも1つの望ましくない成分を含んでいる。望ましくない成分は、例えば公衆健康上の配慮、処理設計上の配慮、及び/又は、美観的配慮のために、水性混合物から除去する対象となる如何なる物質又は化合物であってもよい。例えば、望ましくない成分は、毒性であってもよい。実施態様によっては、望ましくない成分が、下流の分離又はイオン回収ユニットの膜による、下流操作を妨げる傾向を有する。例えば、望ましくない成分は、一般的に、好ましくない結果をもたらす可能性のあるプロセス流れの化学的酸素要求量(COD)レベルを高くする原因となるものと特徴付けられる。少なくとも1つの実施態様において、プロセス流れ中の望ましくない成分は、一般的に、酸化することが可能である。実施態様によっては、酸化することが可能な望ましくない成分は、有機化合物である。いくつかの無機成分、例えば硫化物、メルカプチド及びシアン化物、も酸化することができる。少なくとも1つの実施態様では、プロセス流れ中に硫化ナトリウムが存在する可能性がある。非制限的実施態様の1つでは、硫化ナトリウムがSとして少なくとも約25,000ppmまでの濃度で存在する可能性がある。
【0017】
本発明の1つ以上の実施態様によれば、処理システムは、第1の処理ユニットを含むことが可能である。実施態様によっては、第1の処理ユニットが一般的にプロセス流れに作用して、その更なる処理を促進する。例えば、第1の処理ユニットは、望ましくない成分又はその分解生成物における1つ以上の特定の化学的結合を妨げるのに、有効であり得る。1つ以上の実施態様によれば、第1の処理ユニットは、下流処理、例えば脱塩ステップ、の有効性、耐用寿命及び/又は適切性を阻害する可能性のあるCODの一因となるような被酸化性汚染物を一般的に処理することができる。従って、第1の処理ユニットは、例えばCODを除去し又は安定化することによって、1つ以上の望ましくない成分の濃度を低下させ又はその性質を変化させることができる。例えば、第1の処理ユニットは、有機還元硫黄汚染物質を分解又は除去することができる。実施態様によっては、第1の処理ユニットは、本明細書において論考するように、下流での抽出のため、少なくとも1つの目標イオンを異なる又は望ましい形態にする。少なくとも1つの実施態様では、通常、更に詳細に後述するように、脱塩ステップに先立つ前処理ステップとして第1の処理ユニットを組み込むことができる。
【0018】
1つ以上の実施態様によれば、第1の処理ユニット又はステージは、酸化ユニットであってよい。酸化反応は、被酸化性有機汚染物を、二酸化炭素、水及び生分解性短鎖有機酸、例えば酢酸、に転換することが可能な1つの分解技法である。本発明の一側面は、1つ以上の望ましくない成分を含む水性混合物の酸化処理のためのシステム及び方法に関する。酸化ユニットは、硫化物を酸化して無毒性の硫酸イオンを生成し、かつプロセス流れ、例えば使用済苛性アルカリ流れ、の中に存在する他の化学種を酸化することができる。メルカプタンは実質的に無害にすることが可能であり、COD汚染物は、下流での操作にとって、より害の少ない安定な化合物に転換することが可能である。100%の酸化を実現することはできないので、酸化ユニットの酸化生成物には、依然として多少の望ましくない成分が存在する可能性がある。酸化生成物には、残留目標化合物、例えば水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウム、も存在する可能性がある。いくつかの非制限的実施態様の場合、典型的な酸化生成物は、炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムを含み得る。硫酸イオン及び炭酸イオンのような鉱物化生成物も形成され得る。少なくともいくつかの実施態様では、酸化プロセスによって、目標イオン、例えばナトリウム、の少なくとも1つの塩が形成され得る。例えば、ナトリウムは、酸化されたイオンとの塩錯体を、形成し得る。従って、酸化生成物は、元のプロセス流れの場合とは異なる形態で存在する目標イオン、例えばナトリウム、を含む可能性がある。例えば、いくつかの実施態様では、ナトリウムは、通常、酸化ユニットの上流において硫酸ナトリウムとして存在する可能性があるが、硫酸ナトリウム及び/又は炭酸ナトリウムとして酸化ユニットから排出することが可能である。
【0019】
1つ以上の実施態様によれば、酸化ユニットにおいて任意の酸化剤を用いることができる。例えば、酸素ガス、オゾン、過酸化物及び過マンガン酸塩並びにそれらの組合せといった任意の酸素源を用いることができる。同様に、任意の酸化技法若しくは技術又はそれらの組合せを利用することも可能である。例えば、いくつかの実施態様では、光酸化技法を利用することができるが、そこでは、酸素の存在下における、還元分子の酸化形態への転換が、光分解によって開始される一連の化学反応によって、通常、実施される。少なくとも1つの実施態様では、例えば紫外光又は可視光を用い得る。1つ以上の実施態様によれば、酸化ユニットは一般的に液相酸化ユニットであり得る。少なくとも1つの実施態様では、液相酸化ユニットは、湿式空気酸化、湿式過酸化物酸化又は超臨界水酸化ユニットのような、湿式酸化ユニットであり得る。
【0020】
実施態様の1つでは、例えば、少なくとも1つの望ましくない成分を含む水性混合物又はプロセス流れの湿式酸化が行われる。水性混合物は、少なくとも1つの望ましくない成分を処理するのに十分な継続期間に亘って、高温及び超大気圧において、酸化剤で酸化される。いくつかの非制限的実施態様では、約150℃を超えるプロセス温度が係わる。より具体的に云うと、プロセス温度は約200℃を超えてもよい。実施態様によっては、プロセス温度が約250℃を超える。同様に、継続期間又は滞留時間は変わりうる。実施態様によっては、滞留時間が約半時間から10時間まで変動する。非制限的実施態様のいくつかでは、約1時間の滞留時間が必要とされるが、意図する用途の条件に応じて、より短いか又はより長い滞留時間を採用することが可能である。酸化反応によって、望ましくない成分中における1つ以上の化学結合の完全な状態を実質的に破壊することが可能である。本明細書で用いられる限りにおいて、「実質的に破壊する」は少なくとも約95%の破壊と定義される。本発明のプロセスは、通常、酸化することが可能なあらゆる望ましくない成分の処理に適用可能である。
【0021】
開示された湿式酸化プロセスは、酸化すべき化合物に適した任意の既知のバッチ式又は連続式の湿式酸化ユニットで実施することができる。典型的には、連続流湿式酸化システムでは、水相酸化が実施される。任意の酸化剤を用いることが可能である。酸化剤は、通常、空気、酸素富化空気又は実質的に純粋な酸素といった、酸素含有ガスである。本明細書で用いられる限りにおいて、「酸素富化空気」という語は、約21%を超える酸素含有率を有する空気と定義される。
【0022】
典型的な工程において、貯蔵タンクのような供給源からの水性混合物は導管を通って高圧ポンプまで流れ、このポンプで加圧される。水性混合物は、圧縮機によって供給される酸素含有加圧ガスと、導管内において、混合される。水性混合物は熱交換器を通って流れ、そこで、酸化が開始する温度まで加熱される。次に、加熱された供給混合物は入口から反応器に流入する。湿式酸化反応は一般的に発熱性であり、反応器内で発生した反応熱が混合物の温度を所望の値まで更に上昇させることが可能である。酸化反応の大部分は反応器内で生じるので、所望の程度の酸化を達成するのに十分な滞留時間が得られる。次に、酸化水性混合物及び酸素減少混合ガスは、反応器から熱交換器に移動する。高温酸化流出物が熱交換器を横断し、流入してくる原料水性混合物及び混合ガスによって冷却される。冷却された流出混合物は、圧力調節弁によって調節された導管を通って分離容器に流入し、そこで液体とガスとが分離される。液体流出物は下方の導管を通って分離容器から出てゆき、一方、排ガスは上方導管から放出される。下流の排ガス処理ユニットにおける排ガスの処理が、その組成及び大気への放出に関する要件によっては、必要になる可能性がある。湿式酸化流出物は、典型的には、放出前の精製のため、生物学的又は化学的処理プラントのような処理プラントに送り込まれてもよい。流出物は再循環して、湿式酸化システムによる更なる処理を施してもよい。本発明の1つ以上の実施態様によれば、流出物は、本明細書において更に詳述される脱塩又はイオン回収ユニットのような第2の単位操作に送ることも可能である。
【0023】
典型的には、湿式酸化システム排ガス中における残留酸素を維持するため、十分な酸素含有ガスがシステムに供給されるし、典型的には、ガスの超大気圧は、選択された酸化温度において水を液相に保つのに十分である。例えば、約240℃における最低システム圧は約33気圧であり、約280℃における最低システム圧は約64気圧であり、約373℃における最低システム圧は約215気圧である。実施態様の1つでは、水性混合物は、約30気圧〜約275気圧の圧力下で酸化される。湿式酸化プロセスは、水の臨界温度である約374℃未満の高温で行なってもよい。実施態様によっては、湿式酸化プロセスは超臨界高温で行われる。反応室内における水性混合物の保持時間は、通常、所望の酸化の程度を達成するのに十分でなければならない。実施態様によっては、保持時間は、約1時間を超え、約8時間以下である。少なくとも1つの実施態様では、保持時間は少なくとも約15分以上、約6時間以下である。実施態様の1つでは、水性混合物は、約15分〜約4時間に亘って酸化される。もう1つの実施態様の場合、水性混合物は、約30分〜約3時間に亘って酸化される。
【0024】
1つ以上の実施態様によれば、湿式酸化プロセスは接触的湿式酸化プロセスであってもよい。酸化ユニットにおける酸化反応は、一般的に、触媒によって実現できる。少なくとも1つの処理すべき望ましくない成分を含む水性混合物が、一般的に、高温及び超大気圧下で触媒及び酸化剤と接触させられる。通常、有効量の触媒が、反応速度を高め、並びに/又は、COD及び/若しくはTOCの減少促進を始めとする、システムの全般的分解除去効率を改善するのに、十分である。触媒は、湿式酸化システムの全エネルギ必要量の減少にも役立ち得る。接触的湿式酸化は、伝統的な非接触的湿式酸化の有効な強化法として出現した。一般的に、接触的湿式酸化プロセスによれば、より低い温度及び圧力で、従って、より少ない資本経費で、より一層の分解を実現することが可能になる。処理すべき水性流れは、酸化剤と混合され、高温及び高圧下で触媒に接触させられる。典型的には、不均一触媒は、水性混合物が通過する吸着床上に存在するか又は酸化に先立って水性混合物と配合される固体粒子の形態で存在している。触媒は、湿式酸化ユニットの下流で酸化流出物から濾過して再利用することが可能である。
【0025】
少なくとも1つの実施態様では、触媒は、周期表のV族、VI族、VII族及びVIII族の任意の遷移金属であってよい。例えば、実施態様の1つでは、触媒はV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag又はそれらの合金若しくは混合物であってよい。遷移金属は、元素でもよく、金属塩のように化合物中に存在していてもよい。1つの実施態様では、遷移金属触媒はバナジウムである。もう1つの実施態様では、遷移金属触媒は鉄である。更にもう1つの実施態様では、遷移金属触媒は銅である。
【0026】
触媒は、湿式酸化システムの任意の箇所で水性混合物に添加することができる。触媒は水性混合物と混合することができる。実施態様の1つでは、触媒は、湿式酸化ユニットへ供給する水性混合物の源に添加することができ、その触媒源は貯蔵タンクに流体接続されている。実施態様によっては、触媒は、湿式酸化ユニットに直接添加される。他の実施態様では、触媒は、加熱及び/又は加圧に先立って水性混合物に供給される。
【0027】
酸化ユニットのような第1の処理ユニットは、一般的に、酸化生成物流れのような生成物流れを生じさせる。従って、酸化ユニットは、プロセス流れを酸化生成物流れに転換することができる。酸化生成物流れは、一般的に、本明細書において論考されるイオン回収又は脱塩ユニットにおけるような後続処理に適合し得る。酸化生成物は、一般的に、望ましくない成分を実質的に含んでいない。酸化生成物は、元のプロセス流れからの1つ以上の目標イオンを含んでいてもよく、所望の生成物を生成させるために、本明細書において論考される更なる処理に付してもよい。
【0028】
1つ以上の実施態様によれば、第2の処理ユニットは、第1の処理ユニットの下流に流体接続されていてもよい。第2の処理ユニットは、酸化生成物又は酸化生成物流れを受け入れて、更に処理を施すように構成することができる。いくつかの実施態様では、第2の処理ユニットは、一般的に、第1の処理ユニットの酸化生成物を転換して、目標化合物又は目標流れを形成することもできる。目標化合物は、一般的に、システムによって抽出のために単離することが可能であり、生成物流れとして有用である場合もあれば、その除去によって下流での操作が促進される場合もある。いくつかの実施態様では、第2の処理ユニットは、一般的に、酸化生成物流れを脱塩して、下流処理を促進し及び/又は貴重な鉱物が豊富な生成物流れを生成することもできる。第2の処理ユニットは、一般的に、イオンを抽出して、イオンの豊富な生成物流れ並びに鉱物含有率の低下した流れを生じさせることが可能な任意の技術を必要とするものであってもよい。例えば、第2の処理ユニットは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、炭酸塩及び硫酸塩を始めとする化合物のイオン回収の実施に有効であり得る。
【0029】
1つ以上の実施態様によれば、脱塩ユニットは、例えば、少なくとも1つのイオン交換樹脂床を含んでいてもよい。イオン交換には、通常、溶液と、通常、樹脂である固体との間における脱塩のためのイオン交換が係わり得る。即ち、イオン交換には、鉱物又は合成ポリマの表面に吸着されたイオンと、その表面に接触している溶液中のイオンとの、可逆交換が関与しうる。目標イオンを除去して、他のイオン、例えば水素イオン、と置換することが可能である。次に、水又は他の再生流体を定期的にイオン交換樹脂床に通して、樹脂に新しい水素イオンを補給し、水酸化ナトリウム流れのような目標化合物を含むすすぎ水を生じさせることによって、イオン交換床から目標イオンが回収される。
【0030】
例えば、カチオン性単量体を陰イオン交換樹脂の構造内で重合させるか、又はその逆を行なうことによって、高分子電解質構造を生じさせることができる。再生されると、この構造は水素の形態の陽イオン基とヒドロキシルの形態の陰イオン基を備え得る。電解質の導入によって、水素イオン及びヒドロキシルイオンが置換されて、それらの中和が生じ、イオン種によって樹脂が飽和することになる。水による再生によって、樹脂基の加水分解が生じ、この間に目標イオンが遊離して回収されることになる。石灰溶液を利用して、イオン交換樹脂床を再生し、水酸化ナトリウムのような目標化合物を生成することも可能である。
【0031】
1つ以上の実施態様によれば、濃縮又は分離操作を用いて、イオン回収又は脱塩を実施することも可能である。例えば、蒸留には、一般的に、蒸発及び蒸気を集めるための後続の凝縮が必要になる。結晶化プロセス及びナノ濾過のような濾過プロセスを実施することも可能である。濃縮側に加えられる圧力によって半透膜を強制的に通過させられる水から溶解塩及び金属イオンを除去する濾過プロセスを伴う、逆浸透プロセスを利用することも、同様に、可能である。
【0032】
1つ以上の実施態様によれば、脱塩又はイオン除去技術の例には、電気透析、電気式脱イオン化、容量性脱イオン化及び連続的電気式脱イオン化(CEDI)といった電気化学的操作を挙げることができる。1つ以上の実施態様によれば、脱塩ユニットには、一般的に低電圧及び低圧下で操作される静電プロセスに基づく容量性脱イオン化が関与し得る。生成された水は、ポンプで電極アセンブリに通される。水中のイオンは、逆極性に帯電した電極に引き付けられる。これによってイオンは電極で濃縮され、他方、水中のイオン濃度は低下する。次に、清浄化された水がユニットに通される。電極の容量に達すると、水流が停止され、電極の極性が反転される。これによって、イオンは、前に蓄積されていた電極から離れることになる。次に、濃厚な塩水溶液がユニットから排出される。
【0033】
1つ以上の実施態様によれば、連続的電気式脱イオン化(CEDI)プロセスを実施することが可能である。CEDIでは、一般的に、イオン交換樹脂及び膜と直流電流との組合せを利用して、化学物質を必要とせずに、水を連続的に脱イオン化する。CEDIは、電荷がモジュールに加えられる電気化学的プロセスである。電気化学的装置の電極は、通常、ステンレス鋼、酸化イリジウム、酸化ルテニウム及びプラチナといった様々な材料で製造することが可能である。電極は、また、様々な材料で、例えばチタンで、コーティングすることができる。電極によってH+及びOH-イオンが生成される。これらのイオンは、装置に掛けられた電位によって、供給流中のイオンと共に、移動する。モジュールは、膜によって隔てられたセルで構成される。セルの奥行きは、約0.1インチである。膜は、陰イオン及び陽イオンのいずれか一方だけを通過させる。こうして、イオン種がいくつかのセルに集中する一方、他のセルではイオンが減少することになる。イオン流は、モジュールに加えられる電流に、直接関連している。電子は、セルを横切って流れることはない。電子によってイオンが生じるが、CEDIモジュールを横切って流れるのはそれらのイオンである。
【0034】
このプロセスは、典型的には、イオン性膜によって隔てられたセルの利用に依存している。純水の導電率は極めて低いので、純水中を通ってイオンを輸送するのに必要な電圧は極めて高い。樹脂は、水セル中における導電率を高めるために用いられ、これによって所要電圧が低減する。樹脂は、約0.3〜約0.5mmの球体である。樹脂表面は、イオン電荷を有しており、陽イオン性(c)又は陰イオン性(a)である。陽イオン樹脂は、陰イオン性官能基を有しており、これらが陽イオン種を引き付ける(即ち、陽イオン樹脂は、陽イオンを引き付けるのでそう呼ばれる。)。こうして、陽イオンは、陽イオン樹脂上を移動することによってセルを横切って流れることができる。同様に、陰イオン樹脂は、陰イオンの輸送を可能にする。適用時、多くのイオン交換樹脂床が陰イオン樹脂と陽イオン樹脂の両方と混合され、その結果、セルを横切って両タイプのイオンを輸送することが可能になる。
【0035】
膜も陽イオン材料又は陰イオン材料で造られる。IonPure(商標)(シーメンス社)膜は、樹脂とポリエチレンとを混合し、シート状に押出すことによって製作される。これは、不均一構造と呼ばれる。ポリエチレンによって機械的強度が得られ、樹脂によって輸送特性が与えられる。陽イオン膜は陽イオンのみを通過させ、一方、陰イオン膜は陰イオンのみを通過させる。
【0036】
湿潤させると、樹脂及び膜は膨潤し得る。膨潤すると、樹脂は、最大で約100psiまでの力を壁及び膜に及ぼす。膜中の樹脂材料も膨張し、そのため不均質膜の構造が永久的に変わることになる。浄水用途の場合、IonPure(商標)膜の公称漏れ速度は、約20mL/hr/ft2/5psiである。ナトリウムイオンによって生じる膨潤の度合いはヒドロニウムイオンによるよりも低い。従って、高力価の塩水中において、不均質膜の樹脂が収縮すると、樹脂の多孔性が増すことになる。均質膜は樹脂だけで造られており、従って、電流束が増すことになる。均質膜は、不均質膜より高価であるが、その他の点では置き換え可能である。
【0037】
双極膜は、一方の側が陰イオン膜であり、もう一方の側が陽イオン膜である。双極膜は、最も高価なタイプの膜であり、水分解に用いられる。これらの膜は、水分解セルの代わりに用いることが可能である。双極膜は膜内への水拡散に依存しており、高速生産には適さない可能性がある。
【0038】
電源によって、装置の電極に直流電流が通される。電極は、モジュールの反対側の最も外側のセルである。電極セルは樹脂を含んでおらず、代わりに高力価の塩水を用いてセルに導電性をもたらしている。膜が電極に接触するのを防ぐため、セル内にプラスチックスクリーンが配置されている。
【0039】
陰極(−)は、典型的には、ステンレス鋼から作られるが、他の陽極材料を用いることも可能である。電子は、電源からこの電極を通して流れる。陰極セルでは、これによって水酸化イオンと水素ガスが生じることになる。
4H2O+4e- → 2H2(g)+4OH-
【0040】
金属ナトリウムへのナトリウムの還元(メッキ)は、電子を消費するための代替ルートである。しかしながら、ナトリウムメッキの電位要件がH2(g)の生成に必要な電位より高いので、これが生じることはない。水素生産速度はファラデーの法則から計算され、下記のように書くことが可能である。
【0041】
【数1】
【0042】
ここで、
【0043】
【数2】
【0044】
は、水素ガスのモル生産速度(モルH2/秒)であり、Aは電流(アンペア)であり、Fはファラデー定数(96,485クーロン/モル)である。
【0045】
陽極(+)は、耐食導体でコーティングされたチタンである。導体は、典型的には、白金、酸化イリジウム又は酸化ルテニウムである。酸化イリジウムは、シーメンス社製Cシリーズモジュールにおいてコーティングとして、通常、用いられている。高アンペア数の用途では、白金がより優れた材料であろう。電子がセル内の水から引き出され、電源に戻される。これによって酸素ガスが生成される。
2H2O−4e- → O2(g)+4H+
【0046】
酸素の生産速度は、下記の式から計算される。
【0047】
【数3】
【0048】
ここで、
【0049】
【数4】
【0050】
は、水素ガスのモル生産速度(モルO2/秒)であり、Aは電流(アンペア)であり、Fはファラデー定数(96,485クーロン/モル)である。
【0051】
図1を参照すると、処理システム100の操作は、工業用応用装置130から酸化ユニット110にプロセス流れを送ることを伴う。酸化ユニット110から出る酸化生成物流れは、脱塩ユニット120に向けられる。脱塩ユニット120によって、水酸化ナトリウム流れのような、目標化合物流れが生成される。この化合物流れを工業用応用装置130に送り返して、更に利用することが可能である。目標化合物流れは、工業用応用装置130に直接送り込むこともできるし、又は、その上流で反応物源140からの新しい反応物と混合することもできる。放出流れを再循環させて、脱塩ユニット120に戻し、更に処理し及び/又は目標化合物を抽出することもできる。従って、反応物がシステムによってプロセス流れから生成されるので、工業用応用装置130に対して添加する新鮮な反応物の量を少なくすることができる。
【0052】
一側面では、使用済苛性アルカリを処理して、水酸化ナトリウム生成物流れを回収することが可能である。エチレンプラント又は石油精製プラントでは、水酸化ナトリウムのような新鮮な苛性アルカリを用いて、プロセスガスから二酸化炭素及び硫化水素のような酸性ガスを除去し又は洗浄することが可能である。新鮮な苛性アルカリは、水中において約50%のNaOHであり、典型的には、苛性塔で利用するため約10%にまで希釈される。毎時約8トンもの新鮮な苛性アルカリを消費し得る。苛性塔は、メルカプタン、軽質炭化水素、アセトアルデヒド、ナフテン酸及びクレゾール酸のような有機化学種を凝縮させることも可能である。より多くの酸が洗浄されるので、もう役に立たなくなるまで、遊離苛性アルカリの量が減少させられる。この時点において、プラントでは、典型的に、システムから苛性アルカリを除去することになり、それは使用済苛性アルカリとして知られるようになる。
【0053】
典型的な使用済苛性アルカリ流れには、溶液中に溶解した炭酸ナトリウム、硫化物及び高分子量有機化合物が含まれている。液相の硫化物、炭酸塩及び有機酸を保持しているこの流れは、典型的には、高いpHを有する。この流れは、溶解固形物の含有量が多い可能性があるが、一般的には多くの脱塩プロセスに適さない。というのは、反応性硫化物及び有機化合物は、CEDIシステムの膜材料のような脱塩プロセスに適合しない可能性があるからである。ナトリウムのような陽イオンを除去すると硫化物が液体から遊離することになるが、このことは、硫化水素が臭気及び毒性の強い腐食性ガスであるため、多くの場合、望ましくない。
【0054】
使用済苛性アルカリ液はWAOを利用して酸化され、次に、CEDIを利用して脱塩される。酸化によって、硫化物は、無害な硫酸塩に転換され、有機化合物は、比較的安定で脱塩プロセスに対してそれほど破壊的でない、炭酸塩及び短鎖有機酸に転換される。酸化された液は、次にCEDIプロセスに送られ、そこで、ナトリウムの一部が除去されて、水酸化ナトリウム生成物流れが生じる。残留流れは、ナトリウムイオンの除去によって多少脱塩され、この結果、流出流のpHの低下も起きる。
【0055】
1つ以上の追加単位操作を脱塩ユニットの下流に流体接続することが可能である。例えば、濃縮器は、目標生成物流れを、上流の工業操業所に送って利用する前に、その供給を受けて濃縮するように構成することが可能である。化学処理又は生物学的処理を伴うような精製ユニットが、放出前にシステムの流出流を処理するために、存在する場合もある。
【0056】
1つ以上の実施態様によれば、開示されたシステムは連続的に又は間欠的に運転することができる。実施態様によっては、湿式酸化システムは、制限するわけではないが、作動弁及びポンプといったシステム又はシステムの構成部品の少なくとも1つの作動パラメータを調整し又は調節するための制御装置を、含んでいてもよい。制御装置は、システムの少なくとも1つの作動パラメータを検出するように構成された少なくとも1つのセンサと、電子的に通信するようにしてもよい。制御装置は、一般的に、センサが発生する信号に応答して1つ以上の作動パラメータを調整するための制御信号を発生するように、構成することができる。
【0057】
制御装置は、典型的には、湿式酸化システムの構成部品との間で入力信号を受信し又は出力信号を送信するプログラマブルロジックコントローラ(PLC)又は分散型制御システムのような、マイクロプロセッサベースの装置である。通信ネットワークによって、任意のセンサ又は信号発生装置を、コントローラ又は付随するコンピュータシステムからかなりの距離をあけて、なお、それらの間でデータの提供をしながら、配置することが可能になる。こうした通信機構は、無線プロトコルを利用する技法(これに限定するわけではないが)を始めとする、任意の適切な技法を利用して実現することが可能である。
【0058】
操業上の経済的配慮事項には、オペレータ時間、清浄水、機械及び計装のための電力並びにCEDI電極にアンペア数を提供するための電力が含まれる。CEDIを実施するための電気的コストは、抵抗と、ナトリウムが塩水セルに戻ることになる膜漏れの程度とによって決まる。CEDIを実施することによる経済的利点には、貴重なNaOHの生成が考えられる。更に、従来のWAOの使用済苛性アルカリ用途の場合、中和酸を購入して、酸化された使用済苛性アルカリのアルカリ性を中和しなければならない。アルカリ性のいくらかはCEDIによって除去されているので、中和酸の消費が更に節減される可能性がある。
【0059】
これら及びその他の実施態様の機能及び利点については、下記の例からより十分な理解が得られるであろう。これらの例は、事実上例証を意図したものであって、本明細書で論考される実施態様の範囲を制限するものとみなすべきではない。
【0060】
例
シーメンス社製CシリーズCEDIモジュールの標準バージョン及び改良バージョンを利用して、実験室試験が実施された。評価作業の目的は、無機塩の合成混合物からNaOH生成物流れを生成するためのCEDIプロセスの有効性を確認し、最大で18g/L NaOHに達するように意図して、生成し得るNaOH生成物の最大力価を求め、市販のNaOHの購入コストに対するこの応用例の経済的意義を評価することであった。3回の試験期間中に試験の報告がなされた。
【0061】
I.実験計画
A.試験1〜13
試験1〜13はシーメンス社製CシリーズCEDIモジュールで実施された。構成部品は下記に記載する。
● アルミニウム端板 − 陰極端板
● 陰極 − イリジウム製
● S型セルを造るために用いられたスクリーン
● 陽イオン膜
● 陽イオン樹脂と陰イオン樹脂との60/40v/v混合物を充填したプラスチックフレームであった1型セル。(電流の流れに対して垂直な)セルの横断面形状は平行な3つのセルから構成される。2つの外側チャンバは14″×1.3125″であり、中央チャンバは14″×1.25″である。セルの全横断面積は54.25″2(350cm2)である。
● 陰イオン膜
● やはり陽イオン樹脂の60/40v/v混合物を充填した2型セル(同じフレームが用いられるが、異なるダクト系に直接流れるように反転される)
● 陽イオン膜
● S型セル
● 陽イオン膜
● 1型セル
● 陰イオン膜
● 2型セル
● 陽イオン膜
● S型セル
● 陽極 − やはりイリジウム製
● アルミニウム端板 − 陽極端板
【0062】
各セルは、3つの供給ダクトオプションの1つと3つの放出ダクトオプションの1つとを備えている。
● S型セルは、塩水を供給し、処理済み塩水を放出するためにダクトが設けられた。これらのセルでH2、O2及びCO2ガスが発生し、従って、これらのガスもこの流れと共に排出された。
● 1型セルは、DI水を供給し、DI水を放出するためにダクトが設けられた。
● 2型セルは、DI水を供給し、NaOH生成物を放出するためにダクトが設けられた。場合によっては、2型セルへの供給流は、純粋なDI水ではなく再循環NaOH生成物ということもあった。
【0063】
セル構成を表わす表記は、−S12S12S+である。膜構成を表わす表記は、−caccac+である。いくつかの試験では極性が反転されたが、その場合、モジュールは+S21S21S−になる。モジュールの働きを表わした概略図が図3に示されている。図4A〜4Cに示された3つの異なる配管構成をそれぞれ評価した。
【0064】
モジュールへの電力は、直流電源及び電力制御装置によって供給した。電力制御装置によってモジュールに対するアンペア数を調節した。制御装置は、電圧及びアンペア数を表示した。負(黒)の電線を陰極タブに接続し、正(赤)の電線を陽極タブに接続することによって、配線を実施した。電気系統は、僅か8又は9アンペアの電力しか供給することができず、それを超えると、回路ブレーカが落ちることになる。電線は18ゲージであり、ほんの少しの間だけ作動した後で触ると暖かくなっていた。
【0065】
ロタメータによって供給流量を監視し、シリンダ及びストップウォッチを用いて流出流量を監視した。pH、ガス生成率及びガス組成は監視しなかった。生成されたガスは、再循環塩水と共に供給タンクに戻し、供給タンクの近くにガス抜き管を配置してガス抜きを施した。
【0066】
B.試験14〜17
図4Dには、これらの試験のための配管構成が示されている。この設備は、下記の例外はあるが、先行試験に記載のものと同様であった。
● より強力な電源及び電気ケーブルを利用した。この電源は、220VAC 30Aのコンセントに接続した。8ゲージの配線を利用し、これらの電線は、全ての試験について、触ると冷たい状態のままであった。従来の電源とは異なり、この電源は定電圧を供給し、その結果生じるアンペア数が表示された。
● 大電流の供給が可能な新電極。電極板は、重いチタン端子タブと白金で被覆した電極とを備えていた。
● セルの1つでは、従来のIonPure(商標)不均質膜ではなく、均質膜を用いた。
【0067】
C.試験50〜57
試験50〜57は、図4Eに示す配管構成で実施した。この設備は、下記の例外はあるが、先行試験に記載のものと同様であった。
● チタンのメッシュ電極板による新電極板を用い、塩水流ポート内に製作した。
● 先行試験の場合、陽極、陰極及び中央スクリーンセルへの塩水流は、個別には制御できなかった。バイパスされるセルがないことを保証するため、試験50〜57の場合、これらの塩水流のそれぞれを個別に制御することによってモジュールを改良した。
● 塩水セル内のスクリーンの織り方が、流体流に対して平行及び垂直ではなく斜めになるように構成した。これは、スクリーンにおいて懸念されるベーパロックを最小限に抑えようとして実施した。
【0068】
II.試験手順の説明
各実験の実施毎に、供給タンクに先ず塩水を充填した。DI水流を出し、ロタメータニードル弁を用いて水流の調整を行なった。次に主電源を入れ、それによってポンプを作動した。流量及びシステム背圧を各種調節弁を用いて調整した。直流電力制御装置を作動させ、試験アンペア数又は電圧に調整された。供給流及び各流出物の導電率及び温度を、Myron L Co.から市販されているULTRAMETER 6P II導電率メータを利用して、測定し、記録した。数分間に亘ってシステムを安定化させることができた。安定化は導電率計を用いて監視された。アンペア数及び電圧を記録し、供給流、生成物であるNaOH、及び、生成物である塩水の試料を採取した。いくつかの研究のため、一定期間にわたって複数試料を採取した。電源を切り、新鮮なDI水流を停止することによって、モジュールをシャットダウンした。
【0069】
H2及びO2ガスは塩水中の泡として発生する。H2の爆発下限(LEL)は4%である。火災及び爆発の危険は、塩水戻り管に換気フードへのガス抜きを設けることによって軽減された。仮想の40A フルスケールユニットの場合、H2をLELの10%未満まで希釈するには、3標準立方フィート/分の空気で十分であると、推定される。この試験作業ではLEL測定結果を収集しなかった。
【0070】
試験3〜13の場合、供給試料及び生成物試料を、HACH滴定法#8230によって分析した。この滴定を利用して、NaOH、Na2CO3及びNAHCO3の含有量を測定した。Na2SO4濃度を、HACH法#8051を用いて測光法によって測定した。
【0071】
試験14〜57の場合、pHは、Myron L Co ULTRAMETERを用いて、監視した。NaOH、Na2CO3及びNAHCO3の含有量を、Metohm 785 DMP Titrino自動滴定装置を用いた滴定によって監視した。
【0072】
試験57の終わりに当たって、CEDI膜を、ISI ABT WB−6走査型電子顕微鏡を用いて、分析した。
【0073】
III.供給流の説明
供給流の組成は、酸化された使用済苛性アルカリの予想される含有量に基づいている。
● 55g/LのNa2SO4
● 3.1g/LのNa2CO3
● 35g/LのNaHCO3
【0074】
全ての化学物質は、ミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrichから購入した試薬級化合物であった。DI水を溶剤として用いた。試験11及び12では、塩の用量を倍にして、飽和した上澄みを混合タンクからデカントすることによって調製した、上記よりも力価の高い供給流を用いた。試験13では、1/4の力価の供給流を用いた。試験50〜57は80g/LのNa2CO3溶液を用いて実施した。
【0075】
ほとんどの場合、供給流は、CEDIモジュールを通って再循環され、供給タンクに戻された。従って、供給流のナトリウム濃度は一定ではなかった。
【0076】
IV.試験結果
試験条件及び結果の要約表が、それぞれ、図5A及び5Bに示されている表1及び2に示されている。試験持続期間は、パラメータを記録し、試料を採取するのにかかる時間範囲であり、通常は1〜5分であった。報告された試験時刻はそれらのステップの終了時に記録された。
【0077】
電流効率は、ナトリウムイオンをNaOH生成物流れに輸送するために利用されたアンペア数の割合である。電流効率は、下記の式を用いてファラデーの法則から計算される。
【0078】
【数5】
【0079】
ここで、
【0080】
【数6】
【0081】
は、NaOH生成物流れにおけるナトリウムのモル流量であり(モルNa/秒)、Aは電流(アンペア)であり、Fはファラデー定数であり(96.485クーロン/モル)、n2はCEDIにおける2型セルの数であり(この場合は2)、ZNaはナトリウムイオンの電荷であり、ここでは+1である。
【0082】
一部の工程の期間中、電圧の関数としてアンペア数を監視するため、電力チャートを記録した。これらのチャートを、図6A〜6Eに示している。電力チャートは、表3に報告されている下記の公称条件における持続的操作中に記録した。
【0083】
表3
【表1】
【0084】
試験作業の終了時に、モジュールを分解した。膜の1つをSEMによって分析した。この膜によって、樹脂床セル内のDI水から陰極セル内の塩水が分離された。
【0085】
V.試験結果の論考
NaOHの生成に対するCEDIプロセスの有効性
全ての試験で、CEDIプロセスによって塩水からナトリウムイオンを抽出し、NaOH流を生成することが可能であることが、明らかになった。生成物流れにおけるNaOHの力価は0.14〜8g/L NaOHの範囲であった。炭酸塩及び硫酸塩のいずれか一方又は両方によって、生成物NaOHが多少汚染された。生成物流れにおけるNaOHの純度は、30%〜100%の純度であった。汚染源は、損傷又は多孔性による膜漏れに起因する可能性がある(下記参照)。
【0086】
アンペア数増大の効果
試験3、4及び5は、試験毎に電流を増大させて、同一条件で実施された同一試験である。Na回収率及び生成物流れにおけるNa濃度は、電流の増大につれて高くなった。流出物の温度も上昇した。電流効率は、電流の増大につれて低下した。電流効率が低下すると、電力の利用効率が悪くなり、その結果、温度が上昇する。
【0087】
図7A及び7Bには、結果をグラフで示している。
【0088】
より大きな電流で操作された試験14〜57の間に、アンペア数が大きくなると、時間が経つにつれて性能の低下が生じることが観測された。これが、高電圧における電流の動的挙動を示す図6A〜6Eに示されている。図6Cは、ユニットを起動すると、当初は時間の経過につれてアンペア数が増大することを示している。これは、生成物セル内にNaOHが生じ、それによって導電率が高くなり、従って定電圧におけるアンペア数が増大するためである。13:50頃に、電流が最大値11アンペアに達した。この後、電流は徐々に減少した。
【0089】
次に、システムは、生じたH2、O2及びCO2ガスが集まって定常気泡になり、これが時間とともに大きくなる潜在的ベーパロックを低減し又は排除するため、懸念されるセルに対する流れ及び圧力を個別に制御するように設計した。また、Na+の除去によるCO2ガスの生成を低減し又は排除するため、炭酸ナトリウムが供給流として置換された。電流の経時損失が観測された。大電流は、膜表面のDI側に影響した可能性がある。
【0090】
苛性アルカリ流量の効果
試験11及び12を同様の供給流及びアンペア数で実施した。これらの試験では、2型セルを通してNaOH生成物流れを再循環させた。生成物NaOHは、小さいパージ流によってシステムから出ていき、DI水によって補充された(即ち、供給及び放出)。こうして、セルを横切る流れの流量が維持されたが、より力価の高い生成物を有する、より小さい流れを生じさせるため、全滞留時間が延長された。
【0091】
試験12では、生成物放出速度を増し、従って、苛性アルカリ流れの滞留時間を短縮した。他の点では、これらの試験は同一であった。滞留時間が短くなると、NaOH生成物流れの力価が減るが、Na回収率は、試験11の場合の4倍高くなり、電流効率も高くなった。これらの結果は、苛性アルカリ流れの滞留時間が長くなると、生成物の力価が増す可能性があるが、全Na回収率及び電気効率は低下する可能性があることを、示唆している。これは、苛性アルカリ流れの高い浸透圧がより多くのNa+イオンの輸送に抵抗するためであると思われるが、大電流を用いることによって克服可能であろう。
【0092】
塩水濃度の効果
試験13は、12と同様の条件で実施したが、供給塩水の力価は低かった。試験13は、セル間の漏れを最小限に抑えるため、セル間の差圧を注意深く調整して実施した。試験13は、2型セルからの生成物放出速度を低くして実施されたが、この場合、この試験の実施前には、電流効率及びナトリウム回収率の低下が予想された。意外にも、この試験によって、試験12の場合よりも電流効率が向上し、Na回収率が高くなることが分かった。力価の低い供給塩水を用いると、ナトリウム回収率が高まるように思われる。
【0093】
樹脂効果
試験7は、試験4と同様の条件で実施した。試験4では、CEDIの中央に樹脂充填供給セルを設けたが、試験7では、この中央セルにスクリーンを充填した。試験7の供給流は力価のより高い供給流であり、これがやはり結果に影響を及ぼし、検討を困難にすることになったであろう。というのも2つのパラメータが異なるためである。しかしながら、試験13の分析に基づいて、供給塩水の力価が高くなると電流効率の低下が生じることが予想されたが、試験7と試験と4を比較すると、電流効率は、意外にも、ほぼ同じである。これは、樹脂をスクリーンに置き換えてもプロセスの効率が低下しないことを示唆している。以降の試験は、みな、塩水セルにスクリーンを用いたもので行なった。
【0094】
膜の論考
試験14〜16中は、均質膜が用いられた。これらの試験では、生成物の汚染度が最も高かった。これが多孔性/拡散性に起因するものであったかどうか、あるいは、膜に裂傷があったか否かは明らかではない。
【0095】
塩水流量増加の効果
試験8及び12は同様の試験であった。試験8は、試験12よりも、塩水流量及び苛性アルカリ流量を、より高くして実施した。試験8の電流効率は、試験12より高く、苛性アルカリ生成物の力価は同様であった。これらの結果は、塩水の流量が増すと効率が向上することを表わしている可能性がある。
【0096】
排ガスの論考
このプロセスによれば、塩水再循環管に排ガスが発生した。排ガス生成速度及び組成は、測定しなかった。目視検査によれば、かなりのガス流が、戻り管に存在し、これがアンペア数を増大させた。このガスには、電極で生じた水素と酸素が、主として、含まれていた。CO2ガスは、供給流にNaHCO3が含まれるが、Na2CO3は含まれない試験でも発生した。
【0097】
走査型電子顕微鏡(SEM)の結果
この評価では多数の異なるセルパックを試験した。最後の試験の完了後、最後のセルパックを切り開き、膜の試料を保管した。DI水セルから陽イオンセルを単離する陽イオン膜を乾燥させ、金のスパッタリングを施し、SEMに配置して分析を行なった。膜の各側を分析し、結果を図7A及び7Bに示している。塩水側の像は、ポリエチレンシートマトリックス内に懸濁した樹脂粒子がどのように見えるかを示している。キャビティが樹脂より大きいが、SEMのための試料調製において必要な乾燥プロセス中に粒子が収縮したためであり、これは予想されたことである。DI水側の像は同様のものを示しているが、シートマトリックスが異なり、損傷を示している可能性があるように見える。
【0098】
DI水の論考
試験17〜57に亘って、DI水の調整が効果をもたらすことが観測された。一定条件でDI水の流量を増すと、電流が減少した(図6B)。同様に、DI水の相対圧力を高くすると、電流の減少が生じた。これに関連して、場合によっては、塩水の圧力又は流量を増すと電流が増大することが観測された(図6E)。電流の減少は、溶液中及び樹脂床中においてH+イオン及びOH-イオンを生じさせる水分解反応の結果であるかもしれない。これによって、導電率が高くなる可能性があるが、DI水流量を増すと、これらのイオンが洗い流されて、導電率が低下する。或いは水分解に関連して、塩水及び苛性アルカリセルからのイオンが膜を通ってDI水セル内に漏れ出し、これによって導電率が高くなる可能性がある。同様に、DI水の流量を増すと、これらのイオンをより速く洗い流す可能性がある。DI水の相対的圧力を高めると、一般的に、漏れ率が低下する。しかし、DI水が放出される時までにCEDIプロセスによって汚染イオンが除去されるので、漏れは容易に検出することができない。
【0099】
VI.結果
酸化された使用済苛性アルカリからNa+をNaOHとして回収することに関するCEDIの有効性が立証された。再循環を利用することによって、10%のNaといったより高い回収率を達成することが可能になる。望ましい流量で力価の高い苛性アルカリを生成させるためには、大きいアンペア数が必要になる可能性がある。
【0100】
予言的な例
図2には、エチレンプラントに関して予測されるプラントフローダイアグラム(PFD)を示している。表4には、Naの約10%が再循環されるプラントに関する質量収支を示している。この例の場合、CEDIユニットからの生成物NaOHは、全使用済苛性アルカリ流れの約55%の流量で、約1.8重量パーセントのNaOHになる。図8A〜8Dには、いくつかの異なる構成の収支を示している。図9には、例えば同様の収支に基づくことが可能な、質量収支の要求を満たすCEDI生成物流れ中のNaOHの力価を例示している。
【0101】
表4.10重量%NaOH塔供給流でNa回収率が10%であるエチレンプラントのナトリウム収支
【表2】
【0102】
このように少なくとも1つの実施態様のいくつかの側面について説明してきたが、当該技術者には様々な変更、修正及び改良が思い浮かぶことは、理解できるであろう。こうした変更、修正及び改良は、本開示の一部をなすように意図されており、本発明の範囲内に含まれるように意図されている。従って、以上の説明及び図面は、ただ例証だけを目的としたものであり、本発明の範囲は、付属の請求項及びその等価物の正しい解釈によって判断すべきである。
【符号の説明】
【0103】
100 処理システム
110 酸化ユニット
120 脱塩ユニット
130 工業用応用装置
140 反応物質源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性供給物の源に流体的に接続された酸化ユニットと、
前記酸化ユニットの下流に流体接続され、前記酸化ユニットの生成物を目標化合物に転換するように構成され配列された脱塩ユニットとを、含有してなる、
水性供給物を処理するためのシステム。
【請求項2】
前記水性供給物が少なくとも1つのナトリウムベースの化合物を含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記水性供給物が少なくとも1つの有機化合物を含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記水性供給物が少なくとも1つの硫化物を含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記酸化ユニットの生成物が炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムの少なくとも一方を含有してなる、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記酸化ユニットが液相酸化ユニットを含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記酸化ユニットが湿式空気酸化ユニットを含有してなる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記液相酸化ユニットが超臨界水酸化ユニットを含有してなる、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記酸化ユニットが触媒酸化ユニットを含有してなる、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記酸化ユニットが、過酸化物、過マンガン酸塩、紫外線又は可視光酸化ユニットを含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記脱塩ユニットが少なくとも1つのイオン交換樹脂床を含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記脱塩ユニットが電気化学的脱イオンユニットを含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気化学的脱イオンユニットが、電気透析、逆電気透析、容量性脱イオン化、電気式脱イオン化、連続的電気式脱イオン化又は逆連続的電気式脱イオン化ユニットである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記電気化学的脱イオンユニットが連続的電気式脱イオン化ユニットである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記目標化合物が苛性アルカリである、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記苛性アルカリが水酸化ナトリウムを含有してなる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記苛性アルカリが硫酸アンモニウムを含有してなる、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記苛性アルカリが前記酸化ユニット生成物中に存在しない、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記脱塩ユニットの下流に流体接続された濃縮機を更に含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記水性供給物の源が工業操業所である、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記水性供給物の源がエチレン生産施設である、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記脱イオン化ユニットの出口が前記工業操業所に流体接続されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記酸化ユニット及び脱塩ユニットの少なくとも一方と連絡している制御装置を更に含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
脱塩流出流れの特性を検出するように構成されていて前記制御装置と連絡しているセンサを、更に含有してなる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記制御装置が、前記脱塩流出流れの検出特性に応答して前記ユニットのうちの1つ又はそれ以上のプロセス条件を調整するように、構成され配列されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記脱塩ユニットの下流に流体接続された精製ユニットを更に含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記精製ユニットが生物学的処理ユニットを含有してなる、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記連続的電気式脱イオン化装置が少なくとも1つの均質膜を含有してなる、請求項14に記載のシステム。
【請求項29】
前記脱塩ユニットが連続的電気式脱イオン化ユニットを含有してなる、請求項7に記載のシステム。
【請求項30】
前記目標化合物が水酸化ナトリウムを含有してなる、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
水性供給物の源に流体接続された酸化ユニットと、
前記酸化ユニットの下流に流体接続され、新鮮な苛性アルカリを生成するように構成され配置されている電気化学的脱イオン化ユニットとを、含有してなる、
使用済苛性アルカリを含有する水性供給物を処理するためのシステム。
【請求項32】
前記酸化ユニットが湿式空気酸化ユニットを含有してなる、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記電気化学的脱イオン化ユニットが連続的電気式脱イオン化装置を含有してなる、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記システムが前記電気化学的脱イオン化ユニットに流出流を再循環させるように構成されている、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記新鮮な苛性アルカリが水酸化ナトリウム含有してなる、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
前記水性供給物の源がエチレン生産施設である、請求項31に記載のシステム。
【請求項37】
水性流れを酸化して、酸化生成物を生成し、
前記酸化生成物を転換して苛性アルカリ流れを生成することからなる、
水性流れの処理方法。
【請求項38】
前記苛性アルカリ流れが水酸化ナトリウムを含有してなる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
工業操業所に前記苛性アルカリ流れを供給するステップを更に含有してなる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記水性流れの酸化が約150℃以上の温度で前記水性流れを酸化することからなる、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記酸化生成物の転換が前記酸化生成物から目標イオンを単離することからなる、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記酸化生成物の転換が、更に、前記単離した目標イオンを再生流体に会合させて、前記苛性アルカリ流れを生成することからなる、請求項41に記載の方法。
【請求項1】
水性供給物の源に流体的に接続された酸化ユニットと、
前記酸化ユニットの下流に流体接続され、前記酸化ユニットの生成物を目標化合物に転換するように構成され配列された脱塩ユニットとを、含有してなる、
水性供給物を処理するためのシステム。
【請求項2】
前記水性供給物が少なくとも1つのナトリウムベースの化合物を含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記水性供給物が少なくとも1つの有機化合物を含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記水性供給物が少なくとも1つの硫化物を含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記酸化ユニットの生成物が炭酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムの少なくとも一方を含有してなる、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記酸化ユニットが液相酸化ユニットを含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記酸化ユニットが湿式空気酸化ユニットを含有してなる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記液相酸化ユニットが超臨界水酸化ユニットを含有してなる、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記酸化ユニットが触媒酸化ユニットを含有してなる、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記酸化ユニットが、過酸化物、過マンガン酸塩、紫外線又は可視光酸化ユニットを含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記脱塩ユニットが少なくとも1つのイオン交換樹脂床を含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記脱塩ユニットが電気化学的脱イオンユニットを含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気化学的脱イオンユニットが、電気透析、逆電気透析、容量性脱イオン化、電気式脱イオン化、連続的電気式脱イオン化又は逆連続的電気式脱イオン化ユニットである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記電気化学的脱イオンユニットが連続的電気式脱イオン化ユニットである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記目標化合物が苛性アルカリである、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記苛性アルカリが水酸化ナトリウムを含有してなる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記苛性アルカリが硫酸アンモニウムを含有してなる、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記苛性アルカリが前記酸化ユニット生成物中に存在しない、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記脱塩ユニットの下流に流体接続された濃縮機を更に含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記水性供給物の源が工業操業所である、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記水性供給物の源がエチレン生産施設である、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記脱イオン化ユニットの出口が前記工業操業所に流体接続されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記酸化ユニット及び脱塩ユニットの少なくとも一方と連絡している制御装置を更に含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
脱塩流出流れの特性を検出するように構成されていて前記制御装置と連絡しているセンサを、更に含有してなる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記制御装置が、前記脱塩流出流れの検出特性に応答して前記ユニットのうちの1つ又はそれ以上のプロセス条件を調整するように、構成され配列されている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記脱塩ユニットの下流に流体接続された精製ユニットを更に含有してなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記精製ユニットが生物学的処理ユニットを含有してなる、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記連続的電気式脱イオン化装置が少なくとも1つの均質膜を含有してなる、請求項14に記載のシステム。
【請求項29】
前記脱塩ユニットが連続的電気式脱イオン化ユニットを含有してなる、請求項7に記載のシステム。
【請求項30】
前記目標化合物が水酸化ナトリウムを含有してなる、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
水性供給物の源に流体接続された酸化ユニットと、
前記酸化ユニットの下流に流体接続され、新鮮な苛性アルカリを生成するように構成され配置されている電気化学的脱イオン化ユニットとを、含有してなる、
使用済苛性アルカリを含有する水性供給物を処理するためのシステム。
【請求項32】
前記酸化ユニットが湿式空気酸化ユニットを含有してなる、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記電気化学的脱イオン化ユニットが連続的電気式脱イオン化装置を含有してなる、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記システムが前記電気化学的脱イオン化ユニットに流出流を再循環させるように構成されている、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記新鮮な苛性アルカリが水酸化ナトリウム含有してなる、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
前記水性供給物の源がエチレン生産施設である、請求項31に記載のシステム。
【請求項37】
水性流れを酸化して、酸化生成物を生成し、
前記酸化生成物を転換して苛性アルカリ流れを生成することからなる、
水性流れの処理方法。
【請求項38】
前記苛性アルカリ流れが水酸化ナトリウムを含有してなる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
工業操業所に前記苛性アルカリ流れを供給するステップを更に含有してなる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記水性流れの酸化が約150℃以上の温度で前記水性流れを酸化することからなる、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記酸化生成物の転換が前記酸化生成物から目標イオンを単離することからなる、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記酸化生成物の転換が、更に、前記単離した目標イオンを再生流体に会合させて、前記苛性アルカリ流れを生成することからなる、請求項41に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【公表番号】特表2010−530793(P2010−530793A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542950(P2009−542950)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/026219
【国際公開番号】WO2008/079362
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(506355361)シーメンス ウォーター テクノロジース コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/026219
【国際公開番号】WO2008/079362
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(506355361)シーメンス ウォーター テクノロジース コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
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