プロセス設備の設計支援システム及び設計支援方法
【課題】プロセス設備の設計を効率的且つ最適に行うことを可能とするプロセス設備の設計支援システム及び設計支援方法を提供することを目的とする。
【解決手段】システム検討フロー作成部40において、機器仕様データ及び用役仕様データを設定してシステム検討フローを作成した後、エネルギフロー作成部42において、プロセス設備のシステムを構成する機器による交換熱量を算出し、システム検討フローに対して交換熱量、機器仕様データ及び用役仕様データを設定したエネルギフローを作成する。作成されたエネルギフローは、表示部54に表示される。
【解決手段】システム検討フロー作成部40において、機器仕様データ及び用役仕様データを設定してシステム検討フローを作成した後、エネルギフロー作成部42において、プロセス設備のシステムを構成する機器による交換熱量を算出し、システム検討フローに対して交換熱量、機器仕様データ及び用役仕様データを設定したエネルギフローを作成する。作成されたエネルギフローは、表示部54に表示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プロセスシステムや工場設備に組み込まれる温調装置であるプロセス設備の設計を支援する設計支援システム及び設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原材料に対し、加熱処理、冷却処理、乾燥処理等を施して所定の製品を生産するプロセスシステムにおいて、生産に利用されるエネルギを有効に活用できるようにシステムを設計することは極めて重要である。このような設計を行うための有効な手段として、ピンチ解析法(ピンチテクノロジー)が注目されている。
【0003】
ピンチ解析法は、プロセス設備で使用される流体を、熱を放出する与熱流体と加熱される受熱流体とに分類し、与熱流体に対する温度及び熱量の関係を示す与熱複合線を作成するとともに、受熱流体に対する受熱複合線を作成し、これらの熱複合線を熱量軸の方向に相対的に移動させ、与熱流体及び受熱流体間の熱交換量が最大となるときの加熱媒体、冷却媒体等の用役の温度や供給量を算出する手段であり、算出した情報に従い、エネルギ効率や物質の授受を最適化したプロセス設備を設計することが可能となる。
【0004】
このピンチ解析法を利用し、コストの最小化、CO2排出量の最小化、エクセルギ損失の最小化を目的として、プロセスのエネルギ系及び物質系のそれぞれについて最適な用役バランスを算出し、その算出結果を初期条件としてピンチ解析により最適なコプロプロセス(同時生成プロセス)の運転条件を算出する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−334451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、与熱流体及び受熱流体の熱量と温度との関係に従って、プロセス設備や流体の最適化の検討を行うことができるだけであり、設計するシステムとの関係で最適な検討を行うことができるものではない。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであって、プロセス設備の設計を効率的且つ最適に行うことを可能とするプロセス設備の設計支援システム及び設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプロセス設備の設計支援システムは、複数の熱交換要素からなるプロセス設備の接続回路を設定する接続回路設定部と、
前記熱交換要素の要素仕様データを設定する要素仕様データ設定部と、
前記熱交換要素に必要な用役の用役仕様データを設定する用役仕様データ設定部と、
設定した前記接続回路、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データに基づき、前記各熱交換要素による交換熱量を算出する交換熱量算出部と、
前記接続回路を構成する前記各熱交換要素に対して、前記交換熱量、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データを設定したエネルギフローを作成するエネルギフロー作成部と、
前記エネルギフローを表示する表示部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のプロセス設備の設計支援方法は、複数の熱交換要素からなるプロセス設備の接続回路を設定するステップと、
前記熱交換要素の要素仕様データを設定するステップと、
前記熱交換要素に必要な用役の用役仕様データを設定するステップと、
設定した前記接続回路、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データに基づき、前記各熱交換要素による交換熱量を算出するステップと、
前記接続回路を構成する前記各熱交換要素に対して、前記交換熱量、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データを設定したエネルギフローを作成するステップと、
作成された前記エネルギフローを表示するステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプロセス設備の設計支援システム及び設計支援方法では、プロセス設備の接続回路に従ったエネルギフローを作成して表示することにより、オペレータは、エネルギフローに従ってプロセス設備や用役の最適化を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明のプロセス設備の設計支援システム及び設計支援方法が適用されるフイルムベース生産ラインの主要部の概略構成図である。
【0012】
このフイルムベース生産ラインでは、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)をメチクロ等の溶剤に溶かしたフイルムベースの原料が、原料供給部10からホッパ12を介してドラム14上に供給される。ドラム14上でシート状に流延された原料は、ローラ16を介して乾燥部18に供給され、加熱乾燥されることで、フイルムベースが生産される。乾燥部18には、本実施形態のプロセス設備である温調装置20が接続され、温調装置20には、溶剤回収部22が接続される。溶剤回収部22は、温調装置20から回収した溶剤を再利用すべく原料供給部10に供給する。
【0013】
図2は、図1に示すフイルムベース生産ラインを構成する温調装置20を最適化するための本実施形態の設計支援システム30の構成ブロック図である。
【0014】
設計支援システム30は、プロセス設備である温調装置20を設計するための仕様データを入力するデータ入力部32(要素仕様データ設定部、用役仕様データ設定部)と、温調装置20を構成する機器(熱交換要素)による入出力の仕様データ(要素仕様データ)を記憶する機器仕様データ記憶部34と、温調装置20を構成する各機器に供給される用役の温度、流量等の仕様データ(用役仕様データ)を記憶する用役仕様データ記憶部36と、温調装置20を構成する機器の接続回路を作成するシステム検討フロー作成部40(接続回路設定部)と、作成された温調装置20の接続回路におけるエネルギフローを作成するエネルギフロー作成部42(交換熱量算出部)と、温調装置20を構成する機器による流体の温度遷移を示す温度線図を作成する温度線図作成部44と、温調装置20を構成する複数の機器による熱量の熱収支図を作成する熱収支図作成部46と、温調装置20における与熱流体の与熱複合線図及び受熱流体の受熱複合線図を作成する熱複合線図作成部48と、与熱複合線図及び受熱複合線図を用いてピンチ解析を行うピンチ解析部50と、ピンチ解析結果に基づき、温調装置20に要するコストを算出するとともにCO2排出量を算出し、CO2排出量を考慮した温調装置20のコストを評価するためのコスト評価図を作成するコスト評価図作成部52と、温調装置20の接続回路、温度線図、熱収支図、熱複合線図、コスト評価図等を表示するための表示部54とを備える。
【0015】
本実施形態のフイルムベース生産ライン、及び、この生産ラインに接続される温調装置20を最適化するための設計支援システム30は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、設計支援システム30を用いて温調装置20を最適化して設計するための支援方法につき、図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0016】
先ず、オペレータは、温調装置20を構成する複数の熱交換要素を選択し、それらを接続してシステム検討フローを作成する(ステップS1)。システム検討フロー作成部40は、予め登録されている複数の熱交換要素を表示部54に表示させ、オペレータによって選択された熱交換要素をオペレータの指示に従って接続することにより、例えば、図4に示すシステム検討フローを作成して表示部54に表示する。
【0017】
図4に示すシステム検討フローでは、図1に示す乾燥部18から排出された溶剤を含むプロセスガスをヒートパイプ(HP−001)の冷却部で冷却した後、冷水が供給されるクーラ(C−001)及びブラインが供給されるクーラ(C−002)でさらに冷却することで、プロセスガス中の溶剤を凝縮させて抽出する。抽出された溶剤は、溶剤回収部22によって回収され、原料供給部10に戻される。一方、溶剤が除去されたプロセスガスは、ヒートパイプ(HP−001)の加熱部で加熱された後、蒸気が供給されるヒータ(H−001)によりフイルムベースの乾燥に必要な所望の温度まで加熱され、ファン(F−001)を介して乾燥部18に供給される。
【0018】
システム検討フローを作成した後、データ入力部32を用いて、熱交換要素の機器仕様データを入力するとともに(ステップS2)、熱交換要素に必要な用役仕様データを入力する(ステップS3)。
【0019】
例えば、ヒートパイプ(HP−001)に対しては、冷却部及び加熱部に入力されるプロセスガスの流量、温度、冷却部及び加熱部から出力されるプロセスガスの温度等の機器仕様データが設定される。クーラ(C−001、C−002)に対しては、入口及び出口におけるプロセスガスの温度である機器仕様データ、クーラ(C−001、C−002)の入口及び出口における冷却用の水(用役)及びブライン(用役)の温度、供給量である用役仕様データが設定される。ヒータ(H−001)に対しては、入口及び出口におけるプロセスガスの温度である機器仕様データ、ヒータ(H−001)の入口及び出口における加熱用の蒸気(用役)の温度、供給量である用役仕様データが設定される。ファン(F−001)に対しては、入口及び出口におけるプロセスガスの温度である機器仕様データが設定される。
【0020】
図5は、以上のようにして入力された機器仕様データ及び用役仕様データの総括表である。この総括表のデータは、後述するようにして編集変更することができる。入力された機器仕様データは、機器仕様データ記憶部34に記憶され、用役仕様データは、用役仕様データ記憶部36に記憶される。
【0021】
なお、用役仕様データ記憶部36には、図6に示す各用役のコストを算出するための用役仕様データがデータ入力部32を用いて予め記憶されている。例えば、用役(UTT)である流体の名称、用役の熱交換効率を表す成績係数(COP)、電力単価、熱源単価、原油換算値、CO2換算排出量が用役仕様データとして記憶されている(「ナイブライン」、「コールドブライン」は、登録商標)。
【0022】
次に、図4に示すシステム検討フローと、入力された機器仕様データ及び用役仕様データとを用いて、エネルギフローを作成する(ステップS4)。エネルギフロー作成部42は、機器仕様データ及び用役仕様データに基づいて各機器による交換熱量を算出し、システム検討フロー上に機器仕様データ及び用役仕様データとともに表示したエネルギフローを作成する(図7)。算出された交換熱量は、図5に示す総括表に一括表示される。
【0023】
なお、以下の説明並びに図面において、英文字T+数字(例えば、T1)は温度、英文字F+数字(例えば、F1)は流量、英文字Q+数字(例えば、Q1)は熱量、英文字COP+数字(例えば、COP1)は用役の成績係数(COP)、英文字E+数字(例えば、E1)は電力単価、英文字N+数字(例えば、N1)は熱源単価、英文字G+数字(例えば、G1)は原油換算値、英文字C+数字(例えば、C1)はCO2換算排出量、英文字M+数字(例えば、M1)はコストを表すものとする。
【0024】
交換熱量Qは、例えば、
Q=風量(m3/h)×空気比熱(kcal/kg℃)×空気比重(kg/m3)×(温調装置出口温度(℃)−温調装置入口温度(℃))
として算出することができる。
【0025】
ここで、図7に示すエネルギフローでは、乾燥部18から温度T1、流量F1の溶媒を含むプロセスガスが供給される(1)。このプロセスガスは、ヒートパイプ(HP−001)の冷却部によって熱量Q8が奪われて温度T2に冷却され(2)、次いで、クーラ(C−001)に供給される流量F3の冷水により温度T5に冷却されることで熱量Q3が奪われた後(3)、クーラ(C−002)に供給される流量F4のブラインにより温度T3まで冷却されることでさらに熱量Q4が奪われる(4)。このとき、クーラ(C−002)によってプロセスガスが冷却されることで、溶媒が凝縮して分離される。なお、クーラ(C−001)に供給される冷水は、温度T8から温度T9に加熱され、クーラ(C−002)に供給されるブラインは、温度T10から温度T11に加熱されて外部に排出される。
【0026】
クーラ(C−002)を通過したプロセスガスは、ヒートパイプ(HP−001)の加熱部によって、冷却部から供給される熱量Q8により温度T4まで加熱され(5)、次いで、ヒータ(H−001)に供給される流量F5、温度T12の蒸気により温度T6まで加熱されることで熱量Q6が付加された後(6)、ファン(F−001)を介して温度T7のプロセスガスとして乾燥部18に供給される(7)。なお、ヒータ(H−001)に供給される蒸気は、外部に排出される。
【0027】
次に、温度線図作成部44は、図7に示すエネルギフローから、各機器によるプロセスガスの温度データを抽出し、図8に示す温度線図を作成して表示部54に表示する(ステップS5)。この場合、温度線図は、横軸を各機器の配列とし、縦軸を温度として表したものである。なお、温度線図には、クーラ(C−001)に供給される冷水、クーラ(C−002)に供給されるブライン、ヒータ(H−001)に供給される蒸気の各温度が併せて表示される。
【0028】
そこで、オペレータは、図8に示す温度線図に基づき、システム検討フローによる温調装置20におけるプロセスガスの温度変化の状況から機器仕様データ及び用役仕様データを検討し、温調装置20のシステムを再検討するか否かを判断する(ステップS6)。例えば、温調装置20の設置スペースを縮小する必要がある場合、ヒートパイプ(HP−001)の交換熱量を増大させることで、ヒートパイプ(HP−001)に要するコストの増加を容認する一方、クーラ(C−001、C−002)やヒータ(H−001)の一部の削減を検討することができる。また、用役の設定温度を調整することで、クーラ(C−001、C−002)やヒータ(H−001)の容量を選択可能なものに適宜設定することもできる。
【0029】
システムの再検討を行う場合、図4に示すシステム検討フローを必要に応じて再作成するとともに、機器仕様データ及び用役仕様データを再設定し(ステップS1〜S3)、同様にしてエネルギフロー及び温度線図を作成する処理を繰り返す。
【0030】
一方、熱収支図を作成してシステムの再検討を行う場合、熱収支図作成部46は、設定された機器仕様データ及び用役仕様データ(図5参照)を用いて、図9に示す熱収支図を作成して表示部54に表示させる(ステップS7)。
【0031】
熱収支図は、ヒートパイプ(HP−001)、ヒータ(H−001)、ファン(F−001)による加熱側の熱量と、ヒートパイプ(HP−001)、クーラ(C−001、C−002)による冷却側の熱量とを分離し、各用役の熱量の流れを熱量に応じた面積で表したものである。
【0032】
具体的には、加熱側では、ヒートパイプ(HP−001)から熱量Q8、ヒータ(H−001)に供給される蒸気から換算された熱量Q6、及び、ヒータ(H−001)及びファン(F−001)に供給される電力から換算された熱量Q9が温熱として供給される。また、乾燥部18から温度T1のプロセスガスが排出され、温度T7のプロセスガスを乾燥部18に供給するため、換算した熱量Q13のプロセスガスが乾燥部18に供給される。これら以外の熱量は、温調装置20内の加熱負荷(Q8+Q9+Q11)及び蒸気の廃熱(熱量Q10)として消費される。
【0033】
一方、冷却側では、ヒートパイプ(HP−001)による熱量Q8、クーラ(C−001、C−002)による熱量Q3、Q4が冷熱として供給される。また、クーラ(C−002)では、溶剤を凝縮するのに熱量Q12が冷熱として消費される。これら以外の熱量は、温調装置20内の冷却負荷(Q3+Q4+Q8)として消費される。
【0034】
そこで、オペレータは、熱収支図に基づき、プロセスガスの加熱に要する熱量と、溶剤の凝縮に要する熱量とを除く熱量を減少させるべく、機器仕様データ及び用役仕様データを検討し、温調装置20のシステムを再検討するか否かを判断し(ステップS8)、必要に応じてステップS1からの処理を繰り返すことにより、省エネに鑑みた有効なシステムの構築を検討することが可能となる。
【0035】
さらに、温調装置20全体に要するコストを考慮したシステムの再検討を行う場合、熱複合線図作成部48は、図5に示す機器仕様データ及び用役仕様データに基づいて図10に示す機器毎の交換熱量と対数平均温度との関係を含む表を作成し、この表に基づき、図11に示すように、プロセスガスが熱を放出する与熱複合線Hと、プロセスガスが熱を吸収する受熱複合線Cとを作成し、これらを熱複合線図として表示部54に表示させる(ステップS9)。なお、熱複合線図は、熱量軸方向に与熱複合線H及び受熱複合線Cが重畳している範囲がヒートパイプ(HP−001)によって熱交換される範囲を示し、重畳していない範囲がクーラ(C−001、C−002)によって外部から冷却され、あるいは、ヒータ(H−001)、ファン(F−001)によって外部から加熱される範囲を示す。
【0036】
図11は、現在設定されている機器仕様データ及び用役仕様データに基づく熱複合線図であり、ヒートパイプ(HP−001)の加熱部及び冷却部間の温度差は、ΔT1(ピンチポイント)となっている。そこで、ピンチ解析部50は、受熱複合線Cを熱量軸方向に移動させることで温度差ΔT1を変化させてピンチ解析を行う(ステップS10)。
【0037】
図12〜図16は、温度差をΔT2〜ΔT6に設定した場合における機器毎の交換熱量と対数平均温度との関係を含む表であり、図17〜図21は、各温度差ΔT2〜ΔT6に設定したときの熱複合線図を示す。この場合、温度差をΔT2としたとき、ヒートパイプ(HP−001)による交換熱量Q14が最も大きくなる。また、クーラ(C−001)を不要とすることができるとともに、クーラ(C−002)及びヒータ(H−001)による必要な交換熱量も最小とすることができる。しかしながら、ヒートパイプ(HP−001)の伝熱面積を大きく設定しなければならないため、その分の設備コストが増大することになる。
【0038】
そこで、次に、コスト評価図作成部52は、図12〜図16の表に示されるクーラ(C−001、C−002)、ヒータ(H−001)に供給される冷水、ブライン、蒸気の各用役のコスト、及び、ヒートパイプ(HP−001)の交換熱量に応じた設備コストを用いて、コスト評価図を作成し、表示部54に表示させる(ステップS11)。
【0039】
図22は、表示部54に表示されたコスト評価図を示す。○は、ヒートパイプ(HP−001)の交換熱量を横軸とし、各温度差ΔT2〜ΔT6を設定したときの用役のコスト(UTTコスト)をプロットしたものである。また、×は、各温度差ΔTでのヒートパイプ(HP−001)の設備コストをプロットしたものである。この場合、用役に要するコストと、ヒートパイプ(HP−001)の設備に要するコストとのバランスがとれた温度差ΔT3のときの機器仕様データ及び用役仕様データに従い、温調装置20のシステムを設計することができる。
【0040】
また、コスト評価図作成部52は、図12〜図16の表に示される各機器のCO2排出量をコスト評価図に合わせて表示(△で示す)することにより、用役のコスト、設備コスト、CO2の排出量のバランスを考慮して、温調装置20のシステムを設計することができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】フイルムベース生産ラインの主要部の概略構成図である。
【図2】本実施形態の設計支援システムの構成ブロック図である。
【図3】温調装置を設計するためのフローチャートである。
【図4】温調装置のシステム検討フローの説明図である。
【図5】温調装置の機器仕様データ及び用役仕様データの説明図である。
【図6】用役のコストを算出するための用役仕様データの説明図である。
【図7】システム検討フローに交換熱量、機器仕様データ及び用役仕様データを付記したエネルギフローの説明図である。
【図8】各機器による与熱流体及び受熱流体の温度線図の説明図である。
【図9】設定された機器仕様データ及び用役仕様データに基づいて作成された熱収支図の説明図である。
【図10】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図11】図10に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図12】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図13】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図14】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図15】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図16】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図17】図12に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図18】図13に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図19】図14に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図20】図15に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図21】図16に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図22】ヒートパイプの交換熱量に対するコスト評価図である。
【符号の説明】
【0043】
10…原料供給部
18…乾燥部
20…温調装置
22…溶剤回収部
30…設計支援システム
32…データ入力部
34…機器仕様データ記憶部
36…用役仕様データ記憶部
40…システム検討フロー作成部
42…エネルギフロー作成部
44…温度線図作成部
46…熱収支図作成部
48…熱複合線図作成部
50…ピンチ解析部
52…コスト評価図作成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プロセスシステムや工場設備に組み込まれる温調装置であるプロセス設備の設計を支援する設計支援システム及び設計支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原材料に対し、加熱処理、冷却処理、乾燥処理等を施して所定の製品を生産するプロセスシステムにおいて、生産に利用されるエネルギを有効に活用できるようにシステムを設計することは極めて重要である。このような設計を行うための有効な手段として、ピンチ解析法(ピンチテクノロジー)が注目されている。
【0003】
ピンチ解析法は、プロセス設備で使用される流体を、熱を放出する与熱流体と加熱される受熱流体とに分類し、与熱流体に対する温度及び熱量の関係を示す与熱複合線を作成するとともに、受熱流体に対する受熱複合線を作成し、これらの熱複合線を熱量軸の方向に相対的に移動させ、与熱流体及び受熱流体間の熱交換量が最大となるときの加熱媒体、冷却媒体等の用役の温度や供給量を算出する手段であり、算出した情報に従い、エネルギ効率や物質の授受を最適化したプロセス設備を設計することが可能となる。
【0004】
このピンチ解析法を利用し、コストの最小化、CO2排出量の最小化、エクセルギ損失の最小化を目的として、プロセスのエネルギ系及び物質系のそれぞれについて最適な用役バランスを算出し、その算出結果を初期条件としてピンチ解析により最適なコプロプロセス(同時生成プロセス)の運転条件を算出する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−334451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、与熱流体及び受熱流体の熱量と温度との関係に従って、プロセス設備や流体の最適化の検討を行うことができるだけであり、設計するシステムとの関係で最適な検討を行うことができるものではない。
【0007】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであって、プロセス設備の設計を効率的且つ最適に行うことを可能とするプロセス設備の設計支援システム及び設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプロセス設備の設計支援システムは、複数の熱交換要素からなるプロセス設備の接続回路を設定する接続回路設定部と、
前記熱交換要素の要素仕様データを設定する要素仕様データ設定部と、
前記熱交換要素に必要な用役の用役仕様データを設定する用役仕様データ設定部と、
設定した前記接続回路、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データに基づき、前記各熱交換要素による交換熱量を算出する交換熱量算出部と、
前記接続回路を構成する前記各熱交換要素に対して、前記交換熱量、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データを設定したエネルギフローを作成するエネルギフロー作成部と、
前記エネルギフローを表示する表示部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のプロセス設備の設計支援方法は、複数の熱交換要素からなるプロセス設備の接続回路を設定するステップと、
前記熱交換要素の要素仕様データを設定するステップと、
前記熱交換要素に必要な用役の用役仕様データを設定するステップと、
設定した前記接続回路、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データに基づき、前記各熱交換要素による交換熱量を算出するステップと、
前記接続回路を構成する前記各熱交換要素に対して、前記交換熱量、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データを設定したエネルギフローを作成するステップと、
作成された前記エネルギフローを表示するステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプロセス設備の設計支援システム及び設計支援方法では、プロセス設備の接続回路に従ったエネルギフローを作成して表示することにより、オペレータは、エネルギフローに従ってプロセス設備や用役の最適化を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明のプロセス設備の設計支援システム及び設計支援方法が適用されるフイルムベース生産ラインの主要部の概略構成図である。
【0012】
このフイルムベース生産ラインでは、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)をメチクロ等の溶剤に溶かしたフイルムベースの原料が、原料供給部10からホッパ12を介してドラム14上に供給される。ドラム14上でシート状に流延された原料は、ローラ16を介して乾燥部18に供給され、加熱乾燥されることで、フイルムベースが生産される。乾燥部18には、本実施形態のプロセス設備である温調装置20が接続され、温調装置20には、溶剤回収部22が接続される。溶剤回収部22は、温調装置20から回収した溶剤を再利用すべく原料供給部10に供給する。
【0013】
図2は、図1に示すフイルムベース生産ラインを構成する温調装置20を最適化するための本実施形態の設計支援システム30の構成ブロック図である。
【0014】
設計支援システム30は、プロセス設備である温調装置20を設計するための仕様データを入力するデータ入力部32(要素仕様データ設定部、用役仕様データ設定部)と、温調装置20を構成する機器(熱交換要素)による入出力の仕様データ(要素仕様データ)を記憶する機器仕様データ記憶部34と、温調装置20を構成する各機器に供給される用役の温度、流量等の仕様データ(用役仕様データ)を記憶する用役仕様データ記憶部36と、温調装置20を構成する機器の接続回路を作成するシステム検討フロー作成部40(接続回路設定部)と、作成された温調装置20の接続回路におけるエネルギフローを作成するエネルギフロー作成部42(交換熱量算出部)と、温調装置20を構成する機器による流体の温度遷移を示す温度線図を作成する温度線図作成部44と、温調装置20を構成する複数の機器による熱量の熱収支図を作成する熱収支図作成部46と、温調装置20における与熱流体の与熱複合線図及び受熱流体の受熱複合線図を作成する熱複合線図作成部48と、与熱複合線図及び受熱複合線図を用いてピンチ解析を行うピンチ解析部50と、ピンチ解析結果に基づき、温調装置20に要するコストを算出するとともにCO2排出量を算出し、CO2排出量を考慮した温調装置20のコストを評価するためのコスト評価図を作成するコスト評価図作成部52と、温調装置20の接続回路、温度線図、熱収支図、熱複合線図、コスト評価図等を表示するための表示部54とを備える。
【0015】
本実施形態のフイルムベース生産ライン、及び、この生産ラインに接続される温調装置20を最適化するための設計支援システム30は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、設計支援システム30を用いて温調装置20を最適化して設計するための支援方法につき、図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0016】
先ず、オペレータは、温調装置20を構成する複数の熱交換要素を選択し、それらを接続してシステム検討フローを作成する(ステップS1)。システム検討フロー作成部40は、予め登録されている複数の熱交換要素を表示部54に表示させ、オペレータによって選択された熱交換要素をオペレータの指示に従って接続することにより、例えば、図4に示すシステム検討フローを作成して表示部54に表示する。
【0017】
図4に示すシステム検討フローでは、図1に示す乾燥部18から排出された溶剤を含むプロセスガスをヒートパイプ(HP−001)の冷却部で冷却した後、冷水が供給されるクーラ(C−001)及びブラインが供給されるクーラ(C−002)でさらに冷却することで、プロセスガス中の溶剤を凝縮させて抽出する。抽出された溶剤は、溶剤回収部22によって回収され、原料供給部10に戻される。一方、溶剤が除去されたプロセスガスは、ヒートパイプ(HP−001)の加熱部で加熱された後、蒸気が供給されるヒータ(H−001)によりフイルムベースの乾燥に必要な所望の温度まで加熱され、ファン(F−001)を介して乾燥部18に供給される。
【0018】
システム検討フローを作成した後、データ入力部32を用いて、熱交換要素の機器仕様データを入力するとともに(ステップS2)、熱交換要素に必要な用役仕様データを入力する(ステップS3)。
【0019】
例えば、ヒートパイプ(HP−001)に対しては、冷却部及び加熱部に入力されるプロセスガスの流量、温度、冷却部及び加熱部から出力されるプロセスガスの温度等の機器仕様データが設定される。クーラ(C−001、C−002)に対しては、入口及び出口におけるプロセスガスの温度である機器仕様データ、クーラ(C−001、C−002)の入口及び出口における冷却用の水(用役)及びブライン(用役)の温度、供給量である用役仕様データが設定される。ヒータ(H−001)に対しては、入口及び出口におけるプロセスガスの温度である機器仕様データ、ヒータ(H−001)の入口及び出口における加熱用の蒸気(用役)の温度、供給量である用役仕様データが設定される。ファン(F−001)に対しては、入口及び出口におけるプロセスガスの温度である機器仕様データが設定される。
【0020】
図5は、以上のようにして入力された機器仕様データ及び用役仕様データの総括表である。この総括表のデータは、後述するようにして編集変更することができる。入力された機器仕様データは、機器仕様データ記憶部34に記憶され、用役仕様データは、用役仕様データ記憶部36に記憶される。
【0021】
なお、用役仕様データ記憶部36には、図6に示す各用役のコストを算出するための用役仕様データがデータ入力部32を用いて予め記憶されている。例えば、用役(UTT)である流体の名称、用役の熱交換効率を表す成績係数(COP)、電力単価、熱源単価、原油換算値、CO2換算排出量が用役仕様データとして記憶されている(「ナイブライン」、「コールドブライン」は、登録商標)。
【0022】
次に、図4に示すシステム検討フローと、入力された機器仕様データ及び用役仕様データとを用いて、エネルギフローを作成する(ステップS4)。エネルギフロー作成部42は、機器仕様データ及び用役仕様データに基づいて各機器による交換熱量を算出し、システム検討フロー上に機器仕様データ及び用役仕様データとともに表示したエネルギフローを作成する(図7)。算出された交換熱量は、図5に示す総括表に一括表示される。
【0023】
なお、以下の説明並びに図面において、英文字T+数字(例えば、T1)は温度、英文字F+数字(例えば、F1)は流量、英文字Q+数字(例えば、Q1)は熱量、英文字COP+数字(例えば、COP1)は用役の成績係数(COP)、英文字E+数字(例えば、E1)は電力単価、英文字N+数字(例えば、N1)は熱源単価、英文字G+数字(例えば、G1)は原油換算値、英文字C+数字(例えば、C1)はCO2換算排出量、英文字M+数字(例えば、M1)はコストを表すものとする。
【0024】
交換熱量Qは、例えば、
Q=風量(m3/h)×空気比熱(kcal/kg℃)×空気比重(kg/m3)×(温調装置出口温度(℃)−温調装置入口温度(℃))
として算出することができる。
【0025】
ここで、図7に示すエネルギフローでは、乾燥部18から温度T1、流量F1の溶媒を含むプロセスガスが供給される(1)。このプロセスガスは、ヒートパイプ(HP−001)の冷却部によって熱量Q8が奪われて温度T2に冷却され(2)、次いで、クーラ(C−001)に供給される流量F3の冷水により温度T5に冷却されることで熱量Q3が奪われた後(3)、クーラ(C−002)に供給される流量F4のブラインにより温度T3まで冷却されることでさらに熱量Q4が奪われる(4)。このとき、クーラ(C−002)によってプロセスガスが冷却されることで、溶媒が凝縮して分離される。なお、クーラ(C−001)に供給される冷水は、温度T8から温度T9に加熱され、クーラ(C−002)に供給されるブラインは、温度T10から温度T11に加熱されて外部に排出される。
【0026】
クーラ(C−002)を通過したプロセスガスは、ヒートパイプ(HP−001)の加熱部によって、冷却部から供給される熱量Q8により温度T4まで加熱され(5)、次いで、ヒータ(H−001)に供給される流量F5、温度T12の蒸気により温度T6まで加熱されることで熱量Q6が付加された後(6)、ファン(F−001)を介して温度T7のプロセスガスとして乾燥部18に供給される(7)。なお、ヒータ(H−001)に供給される蒸気は、外部に排出される。
【0027】
次に、温度線図作成部44は、図7に示すエネルギフローから、各機器によるプロセスガスの温度データを抽出し、図8に示す温度線図を作成して表示部54に表示する(ステップS5)。この場合、温度線図は、横軸を各機器の配列とし、縦軸を温度として表したものである。なお、温度線図には、クーラ(C−001)に供給される冷水、クーラ(C−002)に供給されるブライン、ヒータ(H−001)に供給される蒸気の各温度が併せて表示される。
【0028】
そこで、オペレータは、図8に示す温度線図に基づき、システム検討フローによる温調装置20におけるプロセスガスの温度変化の状況から機器仕様データ及び用役仕様データを検討し、温調装置20のシステムを再検討するか否かを判断する(ステップS6)。例えば、温調装置20の設置スペースを縮小する必要がある場合、ヒートパイプ(HP−001)の交換熱量を増大させることで、ヒートパイプ(HP−001)に要するコストの増加を容認する一方、クーラ(C−001、C−002)やヒータ(H−001)の一部の削減を検討することができる。また、用役の設定温度を調整することで、クーラ(C−001、C−002)やヒータ(H−001)の容量を選択可能なものに適宜設定することもできる。
【0029】
システムの再検討を行う場合、図4に示すシステム検討フローを必要に応じて再作成するとともに、機器仕様データ及び用役仕様データを再設定し(ステップS1〜S3)、同様にしてエネルギフロー及び温度線図を作成する処理を繰り返す。
【0030】
一方、熱収支図を作成してシステムの再検討を行う場合、熱収支図作成部46は、設定された機器仕様データ及び用役仕様データ(図5参照)を用いて、図9に示す熱収支図を作成して表示部54に表示させる(ステップS7)。
【0031】
熱収支図は、ヒートパイプ(HP−001)、ヒータ(H−001)、ファン(F−001)による加熱側の熱量と、ヒートパイプ(HP−001)、クーラ(C−001、C−002)による冷却側の熱量とを分離し、各用役の熱量の流れを熱量に応じた面積で表したものである。
【0032】
具体的には、加熱側では、ヒートパイプ(HP−001)から熱量Q8、ヒータ(H−001)に供給される蒸気から換算された熱量Q6、及び、ヒータ(H−001)及びファン(F−001)に供給される電力から換算された熱量Q9が温熱として供給される。また、乾燥部18から温度T1のプロセスガスが排出され、温度T7のプロセスガスを乾燥部18に供給するため、換算した熱量Q13のプロセスガスが乾燥部18に供給される。これら以外の熱量は、温調装置20内の加熱負荷(Q8+Q9+Q11)及び蒸気の廃熱(熱量Q10)として消費される。
【0033】
一方、冷却側では、ヒートパイプ(HP−001)による熱量Q8、クーラ(C−001、C−002)による熱量Q3、Q4が冷熱として供給される。また、クーラ(C−002)では、溶剤を凝縮するのに熱量Q12が冷熱として消費される。これら以外の熱量は、温調装置20内の冷却負荷(Q3+Q4+Q8)として消費される。
【0034】
そこで、オペレータは、熱収支図に基づき、プロセスガスの加熱に要する熱量と、溶剤の凝縮に要する熱量とを除く熱量を減少させるべく、機器仕様データ及び用役仕様データを検討し、温調装置20のシステムを再検討するか否かを判断し(ステップS8)、必要に応じてステップS1からの処理を繰り返すことにより、省エネに鑑みた有効なシステムの構築を検討することが可能となる。
【0035】
さらに、温調装置20全体に要するコストを考慮したシステムの再検討を行う場合、熱複合線図作成部48は、図5に示す機器仕様データ及び用役仕様データに基づいて図10に示す機器毎の交換熱量と対数平均温度との関係を含む表を作成し、この表に基づき、図11に示すように、プロセスガスが熱を放出する与熱複合線Hと、プロセスガスが熱を吸収する受熱複合線Cとを作成し、これらを熱複合線図として表示部54に表示させる(ステップS9)。なお、熱複合線図は、熱量軸方向に与熱複合線H及び受熱複合線Cが重畳している範囲がヒートパイプ(HP−001)によって熱交換される範囲を示し、重畳していない範囲がクーラ(C−001、C−002)によって外部から冷却され、あるいは、ヒータ(H−001)、ファン(F−001)によって外部から加熱される範囲を示す。
【0036】
図11は、現在設定されている機器仕様データ及び用役仕様データに基づく熱複合線図であり、ヒートパイプ(HP−001)の加熱部及び冷却部間の温度差は、ΔT1(ピンチポイント)となっている。そこで、ピンチ解析部50は、受熱複合線Cを熱量軸方向に移動させることで温度差ΔT1を変化させてピンチ解析を行う(ステップS10)。
【0037】
図12〜図16は、温度差をΔT2〜ΔT6に設定した場合における機器毎の交換熱量と対数平均温度との関係を含む表であり、図17〜図21は、各温度差ΔT2〜ΔT6に設定したときの熱複合線図を示す。この場合、温度差をΔT2としたとき、ヒートパイプ(HP−001)による交換熱量Q14が最も大きくなる。また、クーラ(C−001)を不要とすることができるとともに、クーラ(C−002)及びヒータ(H−001)による必要な交換熱量も最小とすることができる。しかしながら、ヒートパイプ(HP−001)の伝熱面積を大きく設定しなければならないため、その分の設備コストが増大することになる。
【0038】
そこで、次に、コスト評価図作成部52は、図12〜図16の表に示されるクーラ(C−001、C−002)、ヒータ(H−001)に供給される冷水、ブライン、蒸気の各用役のコスト、及び、ヒートパイプ(HP−001)の交換熱量に応じた設備コストを用いて、コスト評価図を作成し、表示部54に表示させる(ステップS11)。
【0039】
図22は、表示部54に表示されたコスト評価図を示す。○は、ヒートパイプ(HP−001)の交換熱量を横軸とし、各温度差ΔT2〜ΔT6を設定したときの用役のコスト(UTTコスト)をプロットしたものである。また、×は、各温度差ΔTでのヒートパイプ(HP−001)の設備コストをプロットしたものである。この場合、用役に要するコストと、ヒートパイプ(HP−001)の設備に要するコストとのバランスがとれた温度差ΔT3のときの機器仕様データ及び用役仕様データに従い、温調装置20のシステムを設計することができる。
【0040】
また、コスト評価図作成部52は、図12〜図16の表に示される各機器のCO2排出量をコスト評価図に合わせて表示(△で示す)することにより、用役のコスト、設備コスト、CO2の排出量のバランスを考慮して、温調装置20のシステムを設計することができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】フイルムベース生産ラインの主要部の概略構成図である。
【図2】本実施形態の設計支援システムの構成ブロック図である。
【図3】温調装置を設計するためのフローチャートである。
【図4】温調装置のシステム検討フローの説明図である。
【図5】温調装置の機器仕様データ及び用役仕様データの説明図である。
【図6】用役のコストを算出するための用役仕様データの説明図である。
【図7】システム検討フローに交換熱量、機器仕様データ及び用役仕様データを付記したエネルギフローの説明図である。
【図8】各機器による与熱流体及び受熱流体の温度線図の説明図である。
【図9】設定された機器仕様データ及び用役仕様データに基づいて作成された熱収支図の説明図である。
【図10】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図11】図10に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図12】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図13】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図14】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図15】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図16】機器毎の交換熱量、対数平均温度、コストの関係を含む図表である。
【図17】図12に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図18】図13に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図19】図14に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図20】図15に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図21】図16に示す図表に基づいて作成される熱複合線図である。
【図22】ヒートパイプの交換熱量に対するコスト評価図である。
【符号の説明】
【0043】
10…原料供給部
18…乾燥部
20…温調装置
22…溶剤回収部
30…設計支援システム
32…データ入力部
34…機器仕様データ記憶部
36…用役仕様データ記憶部
40…システム検討フロー作成部
42…エネルギフロー作成部
44…温度線図作成部
46…熱収支図作成部
48…熱複合線図作成部
50…ピンチ解析部
52…コスト評価図作成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱交換要素からなるプロセス設備の接続回路を設定する接続回路設定部と、
前記熱交換要素の要素仕様データを設定する要素仕様データ設定部と、
前記熱交換要素に必要な用役の用役仕様データを設定する用役仕様データ設定部と、
設定した前記接続回路、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データに基づき、前記各熱交換要素による交換熱量を算出する交換熱量算出部と、
前記接続回路を構成する前記各熱交換要素に対して、前記交換熱量、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データを設定したエネルギフローを作成するエネルギフロー作成部と、
前記エネルギフローを表示する表示部と、
を備えることを特徴とするプロセス設備の設計支援システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記エネルギフローからプロセスガスの温度データを抽出し、前記接続回路に沿った前記プロセスガスの温度遷移を表す温度線図を作成する温度線図作成部を備え、
前記表示部は、前記温度線図を表示することを特徴とするプロセス設備の設計支援システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシステムにおいて、
前記交換熱量を、前記熱交換要素による加熱側熱量と冷却側熱量とに分離し、前記熱交換要素による前記用役の熱量の流れを、前記加熱側熱量及び前記冷却側熱量に応じた熱収支図として作成する熱収支図作成部を備え、
前記表示部は、前記熱収支図を表示することを特徴とするプロセス設備の設計支援システム。
【請求項4】
複数の熱交換要素からなるプロセス設備の接続回路を設定するステップと、
前記熱交換要素の要素仕様データを設定するステップと、
前記熱交換要素に必要な用役の用役仕様データを設定するステップと、
設定した前記接続回路、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データに基づき、前記各熱交換要素による交換熱量を算出するステップと、
前記接続回路を構成する前記各熱交換要素に対して、前記交換熱量、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データを設定したエネルギフローを作成するステップと、
作成された前記エネルギフローを表示するステップと、
を有することを特徴とするプロセス設備の設計支援方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、
前記エネルギフローからプロセスガスの温度データを抽出し、前記接続回路に沿った前記プロセスガスの温度遷移を表す温度線図を作成するステップを有することを特徴とするプロセス設備の設計支援方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の方法において、
前記交換熱量を、前記熱交換要素による加熱側熱量と冷却側熱量とに分離し、前記熱交換要素による前記用役の熱量の流れを、前記加熱側熱量及び前記冷却側熱量に応じた熱収支図として作成するステップを有することを特徴とするプロセス設備の設計支援方法。
【請求項1】
複数の熱交換要素からなるプロセス設備の接続回路を設定する接続回路設定部と、
前記熱交換要素の要素仕様データを設定する要素仕様データ設定部と、
前記熱交換要素に必要な用役の用役仕様データを設定する用役仕様データ設定部と、
設定した前記接続回路、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データに基づき、前記各熱交換要素による交換熱量を算出する交換熱量算出部と、
前記接続回路を構成する前記各熱交換要素に対して、前記交換熱量、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データを設定したエネルギフローを作成するエネルギフロー作成部と、
前記エネルギフローを表示する表示部と、
を備えることを特徴とするプロセス設備の設計支援システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記エネルギフローからプロセスガスの温度データを抽出し、前記接続回路に沿った前記プロセスガスの温度遷移を表す温度線図を作成する温度線図作成部を備え、
前記表示部は、前記温度線図を表示することを特徴とするプロセス設備の設計支援システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシステムにおいて、
前記交換熱量を、前記熱交換要素による加熱側熱量と冷却側熱量とに分離し、前記熱交換要素による前記用役の熱量の流れを、前記加熱側熱量及び前記冷却側熱量に応じた熱収支図として作成する熱収支図作成部を備え、
前記表示部は、前記熱収支図を表示することを特徴とするプロセス設備の設計支援システム。
【請求項4】
複数の熱交換要素からなるプロセス設備の接続回路を設定するステップと、
前記熱交換要素の要素仕様データを設定するステップと、
前記熱交換要素に必要な用役の用役仕様データを設定するステップと、
設定した前記接続回路、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データに基づき、前記各熱交換要素による交換熱量を算出するステップと、
前記接続回路を構成する前記各熱交換要素に対して、前記交換熱量、前記要素仕様データ及び前記用役仕様データを設定したエネルギフローを作成するステップと、
作成された前記エネルギフローを表示するステップと、
を有することを特徴とするプロセス設備の設計支援方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、
前記エネルギフローからプロセスガスの温度データを抽出し、前記接続回路に沿った前記プロセスガスの温度遷移を表す温度線図を作成するステップを有することを特徴とするプロセス設備の設計支援方法。
【請求項6】
請求項4又は5記載の方法において、
前記交換熱量を、前記熱交換要素による加熱側熱量と冷却側熱量とに分離し、前記熱交換要素による前記用役の熱量の流れを、前記加熱側熱量及び前記冷却側熱量に応じた熱収支図として作成するステップを有することを特徴とするプロセス設備の設計支援方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図17】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−49468(P2010−49468A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212855(P2008−212855)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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