説明

プロテオグリカンに関連する病態生理学的症状の治療におけるSOX9機能の阻害

成長抑制性のプロテオグリカンの産生に起因する病態生理学的症状を治療する方法が提供される。それはSOX9の下方制御の結果、成長抑制因子、例えばプロテオグリカン類の産生の低下、ならびに成長促進因子、例えばラミニンおよびフィブロネクチンの産生の増加がもたらされるという知見に基づく。本発明の方法は、阻害剤、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを用いるSOX9発現および機能の抑制を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテオグリカン(PG)の産生に関連する症状を治療する方法に関する。特に、本発明は、PG産生がSOX9の阻害により調節される治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテオグリカン代謝の変化は、心筋線維症、腎疾患、弾力線維性仮性黄色腫(PXE)ならびに損傷もしくは病変した神経系における再生不全および回復不良を含む多数の症状に関与している。PXEは、進行性の鉱化(mineralisation)および弾性線維の分裂およびプロテオグリカンの堆積の増大を特徴とする、全身性の結合組織の変性疾患である。細胞外マトリックスにおけるこれらの変化は、皮膚、眼、および心血管系の弾性の低下をもたらす。PXEの重症度はXT−IIの特定の変種に関連し、全体的なキシロシルトランスフェラーゼ活性は、XT−Iの特定の変種を持つ患者において高いことが示されている。
【0003】
心筋線維症は、心筋の細胞外マトリックス(ECM)の広範囲のリモデリングおよびその後の弾力のない線維性組織による機能性組織の置換により特徴付けられるプロセスである。これらの変化は、臓器機能障害、さらに最終的に慢性心不全を引き起こす。プロテオグリカン発現の増加は、この心筋の不全の進行の主な特徴である。心室組織の線維性リモデリングの間、増大したレベルのプロテオグリカン類のデコリンおよびバイグリカンが見出され、このプロセスにおけるこれらのマトリックス成分の重要性が確認された。
【0004】
脊髄損傷(SCI)後に軸索再生がみられないことは、グリア性瘢痕の非許容性の環境に一部起因する(Fawcett and Asher 1999)。マクロファージ、ミクログリア、オリゴデンドロサイト、侵入性(invading)シュワン細胞および髄膜の線維芽細胞は、グリア性瘢痕の一因であるが、星状細胞が優勢である(Fawcett and Asher 1999)。損傷したCNSにおける反応性星状細胞は、瘢痕タンパク質の産生に関して異質である(Fitch and Sliver 1997)。多くの事例で、星状細胞により産生される細胞外マトリックス分子(ECM)が軸索再生を阻害することが示されているが(Bahr et al.1995;Davies et al.1999;McKeon et al.1991;Reier and Houle 1988)、星状細胞は軸索成長を促進するECM分子を分泌することも示されている(McKeon et al.1991)。したがって、星状細胞は、それらの産生するECM分子の成長抑制と成長促進のバランスによって、SCI後の再生を促進または阻害し得る。
【0005】
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)は、反応性星状細胞により産生される抑制分子の中で恐らく最も重要である(Eddleston and Mucke 1993;Fawcett and Asher 1999)。インビボおよびインビトロ研究により、再生する軸索はそれらの軸索をCSPGの多い区域に伸ばすことを中止することが示された(Davies et al.1997;Davies et al.1999;McKeon et al.1991;Zuo et al.1998)。CSPGは中心のコアタンパク質と多数のコンドロイチン硫酸側鎖を含む共通する構造を共有する(Morgenstern et al.2002)。コンドロイチン硫酸側鎖合成は、キシロースのコアタンパク質のセリン部分への添加により開始される。この機能は、2つの異なる遺伝子XT−IおよびXT−IIによりコードされる2つのイソ型を有する酵素キシロシルトランスフェラーゼ(XT)により行われる(Gotting et al.2000)。これらの側鎖は、その後にコンドロイチン4−スルホトランスフェラーゼ(C4ST)(Yamauchi et al.2000)またはコンドロイチン6−スルホトランスフェラーゼ(Fukuta et al.1995)のいずれかにより硫酸化されるが、星状細胞C4STでの方が優勢である(Gallo and Bertolotto 1990)。
【0006】
星状細胞はまた、ラミニン(Liesi and Silver 1988)、N−カドヘリン(Tomaselli et al.1988)、神経細胞接着分子(NCAM)(Neugebauer et al.1988)およびフィブロネクチン(Matthiessen et al.1989)を含む、一連の成長促進分子を産生することもできる。軸索成長のインビトロモデルを用いて、ラミニンおよびフィブロネクチンが神経突起伸展のための良好な基質であることが示された(Costa et al.2002;Fok−Seang et al.1995;Hammarback et al.1988;McKeon et al.1991;Rogers et al.1983;Rogers et al.1987)。インビボモデルにより、感覚性の軸索再生が星状細胞関連フィブロネクチンに依存すること(Davies et al.1997;Davies et al.1999;Tom et al.2004)および、SCIのラットモデルにおいてラミニン−γ1のくも膜下腔内投与により再生が促進されること(Wiksten et al.2004)が実証される。
【0007】
成長抑制分子の上方制御および/または成長促進分子の下方制御に関連する疾患およびその他の症状の治療法を開発するために、プロテオグリカンなどの成長抑制分子およびラミニンおよびフィブロネクチンなどの成長促進分子の発現を差次的に調節する経路および因子を特定することが望まれている。
【発明の概要】
【0008】
現在、SOX9を下方制御すると、プロテオグリカンなどの成長抑制因子の産生の低下およびラミニンおよびフィブロネクチンなどの成長促進因子の産生の増加がもたらされることが示されている。また、プロテオグリカンが、病状を含む多数の症状に関連していることも示されていおり、SOX9を抑制することにより調節され得るかもしれない。
【0009】
したがって、本発明の一態様では、哺乳類において少なくとも1種類のプロテオグリカンの産生に関連する症状を治療する方法が提供される。該方法は、哺乳類においてSOX9活性を抑制する工程を含む。
【0010】
本発明のもう一つの態様では、哺乳類においてSOX9活性を抑制する工程を含む、哺乳類においてニューロン成長または再生を促進する方法が提供される。
【0011】
もう一つの態様では、SOX9発現を抑制する治療上有効な量の化合物を哺乳類に投与することを含む、哺乳類におけるプロテオグリカンの産生に関連する症状を哺乳類において治療する方法が提供される。
【0012】
本発明のさらなる態様では、哺乳類において少なくとも1種類のプロテオグリカンの産生に関連する症状を治療するための組成物が提供される。該組成物は、SOX9の抑制物質を含む。
【0013】
本発明のもう一つの態様では、哺乳類において少なくとも1種類のプロテオグリカンの産生に関連する症状を治療するための薬物の製造のためのSOX9抑制物質の使用。
【0014】
さらなる態様では、SOX9の抑制のための候補化合物をスクリーニングする方法が提供される。該方法は、
a)候補化合物を、SOX9レポーター構築物を含むSOX9発現細胞株とともにインキュベートする工程であって、前記構築物は、レポーター遺伝子の発現を調節する制御領域に結合されたSOX9結合領域を含む工程と、
b)該レポーター遺伝子についての出力結果を測定する工程と、
を含み、ここで、該レポーター遺伝子の出力の低下は、候補物でのインキュベーションを行わずに得られた対照の出力結果と比較して、候補化合物がSOX9抑制物質であることを示す。
【0015】
本発明のこれらおよびその他の態様は、詳細な説明において以下の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】脊髄(spinal chord)損傷(SCI)後のXT−I、XT−II、C4ST、ラミニンおよびフィブロネクチンの遺伝子発現プロフィールを棒グラフで示す図である。
【図2】脊髄病変における(A)TGFβ2および(B)IL−6の発現プロフィールの定量的PCR(Q−PCR)による測定結果を棒グラフで示す図である。
【図3】Q−PCRを用いて測定される損傷後の脊髄におけるSOX9 mRNAレベルを示す棒グラフを示す図である。
【図4】一次星状細胞培養中のXT−I(A)、XT−II(B)およびGFAP(C)の発現レベルを示す図である。
【図5】TNFαまたはbFGF(H)の効果と比較した、一次星状細胞における、XT−I(B)、XT−II(A)、C4ST(C)、CS56タンパク質(D)、フィブロネクチン(E)およびラミニン(F)遺伝子発現へのTGFβ2、IL−6およびPDGFの効果を示す図である。
【図6】SOX9発現がXT−I、XT−IIおよびC4ST遺伝子発現を増加させるが、ラミニンまたはフィブロネクチン遺伝子発現(A)を増加させないこと、およびTGFβ2、IL−6およびPDGFがSOX9の発現を増加させることを示すQ−PCRを示す図である。
【図7】SOX9発現が、XT−I(B)、XT−II(C)およびC4ST(D)の基底およびTGFβ2に駆動される発現に必要であること、ならびにラミニンおよびフィブロネクチン遺伝子発現がSOX9の不在下で増加することを示す、Q−PCR結果を示す図である。
【図8】SCI後、急性の時点での抗CD11d mAb処理は、TGFβ2(A)、SOX9(B)、XT−I(C)、XT−II(D)およびC4ST(E)発現を低下させるが、ラミニン(F)およびフィブロネクチン(G)遺伝子発現を増加させることを示す、Q−PCR結果をグラフにより示す図である。
【図9A】SOX9タンパク質配列(A、B)を示す図である。
【図9B】SOX9タンパク質配列(A、B)を示す図である。
【図10】TGF−β2での処理の後で増加したSOX9ルシフェラーゼレポーター構築物中のルシフェラーゼ活性をグラフにより示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
哺乳類におけるプロテオグリカンの産生に関連する症状を治療する方法が提供される。該方法は、哺乳類においてSOX9活性を抑制する工程を含む。
【0018】
SOX9は、軟骨細胞分化および軟骨形成に必要とされる転写因子である。ヒトにおいて、SOX9は、509アミノ酸を有する56Kdaタンパク質である。SOX9タンパク質および核酸配列を、ヒトおよびその他の哺乳類のSOX9配列(配列番号1〜3)を含めて、図9に例証する。本発明の目的において、用語「SOX9」は、その機能性変異体を含む、任意の機能性哺乳類SOX9タンパク質を包含する。用語「機能性」とは、ネイティブの、天然に存在するSOX9タンパク質の活性、例えば、XT−1などのキシロシルトランスフェラーゼまたはC4STなどのスルホトランスフェラーゼの調節を保持するSOX9タンパク質をさす。
【0019】
用語「プロテオグリカン」とは、コアタンパク質と、少なくとも一部分、キシロシルトランスフェラーゼおよびスルホトランスフェラーゼの作用により形成される1以上の共有結合されたグリコサミノグリカン鎖を含む糖タンパク質のファミリーをさす。かかるプロテオグリカンの例としては、ホスファン、NG2およびブレビカンなどのコアタンパク質を含むコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG);デコリンなどのコアタンパク質を含むデルマタン硫酸プロテオグリカン(DSPG);シンデカン、グリピカン、パールカン、アグリンおよびコラーゲンXVIIなどのコアタンパク質を含むヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG);ならびにルミカン、ケラトカン、ミメカン(Mimecan)、フィブロモジュリン、PRELP、オステオアドヘリン(Osteoadherin)およびアグリカンなどのコアタンパク質を含むケラチン硫酸プロテオグリカン(KSPG)が挙げられる。キシロシルトランスフェラーゼ、例えばXT−IまたはXT−IIは、キシロースの該添加によりグリコサミノグリカン鎖のプロテオグリカンコアタンパク質への添加における最初の律速工程を触媒する。
【0020】
プロテオグリカン、およびそれに関連する症状に関して、用語「産生」とは、プロテオグリカン活性を修飾または調節する分子の転写調節をさし、該分子には、限定されるものではないが、コアプロテオグリカンタンパク質、グリコサミノグリカン鎖およびプロテオグリカン合成酵素、例えばXT−I、XT−IIおよびC4STなどが含まれる。
【0021】
本明細書において用語「哺乳類」とは、ヒトおよび非ヒト哺乳類の両方をさす。
【0022】
用語「プロテオグリカン産生に関連する症状」は、本明細書において、プロテオグリカン産生がそれに寄与し、かつ、少なくとも1種類のプロテオグリカンの減少が該症状または病態を寛解させる、望ましくない症状および病態を包含するために用いられる。例えば、プロテオグリカン産生、例えばCSPGなどは、ニューロンの再生を含む、正常なニューロンの成長またはニューロンの可塑性が阻害されるか、さもなければ妨げられる症状に寄与することが知られている。かかる症状の例としては、限定されるものではないが、神経系の主な症状が挙げられ、それには、限定されるものではないが、脊髄損傷、外傷性脳損傷、神経変性疾患、例えばフリードライヒ運動失調、脊髄小脳失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ルー・ゲーリック病(ALS)、脱髄性疾患、例えば多発性硬化症、横断性脊髄炎、脊髄損傷に起因する疾患、炎症、および網膜神経の変性に関連する疾患、例えば加齢による弱視、黄斑症および網膜症、例えばウイルス、毒素、糖尿病および虚血性の遺伝性網膜変性症、例えばケリン(Kjellin)症候群およびバーナード−ショルツ(Barnard−Scholz)症候群、変性近視、急性網膜壊死ならびに加齢による病態、例えば認知機能の喪失が挙げられる。例には、脳血管損傷を引き起こす症状も含まれ、それには、限定されるものではないが、卒中、血管奇形、例えば動静脈奇形(AVM)、二重の(dural)動静脈瘻(AVF)、脊髄血管腫、海綿状血管腫および動脈瘤、脊髄血管の閉塞(解離性大動脈瘤、塞栓、動脈硬化症を含む)に起因する虚血および発達障害、例えば二分脊椎症、髄膜脊髄瘤(meningomyolcoele)、またはその他の原因が含まれる。プロテオグリカンはまた、線維症に関連する病態または望ましくない症状に寄与することが知られ、したがって、かかる病態/症状は、用語「プロテオグリカン産生に関連する症状」に包含される。線維症に関連する病態および/または症状の例としては、膵臓および肺の嚢胞性線維症、心疾患、例えば心筋症、心内膜心筋線維症および特発性心筋症を含む心筋線維症、アテローム性動脈硬化症、肝臓の硬変、肺の特発性肺線維症、びまん性実質性肺疾患、縦隔線維症、骨髄線維症、精巣切除後疼痛症候群、後腹膜線維症、進行性の塊状線維症、増殖性線維形成、腫瘍性線維形成、結核(TB)、鎌形赤血球貧血症に由来する脾臓の線維症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、腎症、例えば糖尿病性腎症、角膜瘢痕を含む強膜および角膜の症状ならびに弾力線維性仮性黄色腫(PXE)などの線維症の主な障害が挙げられる。
【0023】
本発明の一態様では、プロテオグリカン産生に関連する症状を治療する方法は、SOX9を抑制することを含む。当業者は、SOX9の発現を核酸レベルで抑制することができ、一方、SOX9タンパク質活性をタンパク質レベルで抑制することができることを理解する。いずれの場合でも、SOX9活性を抑制する、または少なくとも低下させるという結果が達成される。本明細書においてSOX9活性に関して用いられる用語「抑制する」は、SOX9活性の完全な抑制そして部分的抑制の両方を含む、SOX9活性のどのような低下もさすことを意味する。
【0024】
SOX9活性は、十分確立された方法、例えばアンチセンス、snpまたはsiRNA技術を用いるSOX9遺伝子発現を抑制することにより抑制される。SOX9コード核酸分子を用いて、SOX9の核に結合し、その発現を抑制するのに効果的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製することができる。用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、本明細書において、標的SOX9核酸配列の少なくとも一部分と相補的であるヌクレオチド配列を意味する。用語「オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在する塩基、糖、および糖間(intersugar)(骨格)結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーのオリゴマーまたはポリマーをさす。この用語はまた、天然に存在しないモノマーまたは同じように機能するその一部を含む、修飾もしくは置換されたオリゴマーも含む。かかる修飾もしくは置換オリゴヌクレオチドは、細胞取込みの増大、またはヌクレアーゼの存在下での安定性の増加などの特性のために、天然に存在する形態よりも好ましい可能性がある。この用語はまた、2またはそれ以上の化学的に別個の領域を含むキメラオリゴヌクレオチドも含む。例えば、キメラオリゴヌクレオチドは、有益な特性(例えば増大したヌクレアーゼ耐性、増大した細胞への取込み)を付与する修飾ヌクレオチドの少なくとも1つの領域ならびにアンチセンス結合領域を含んでよい。その上、2またはそれ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドは結合してキメラオリゴヌクレオチドを形成することができる。
【0025】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リボ核酸であってもデオキシリボ核酸であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシルを含む、天然に存在する塩基を含み得る。オリゴヌクレオチドはまた、修飾された塩基、例えば、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル、2−プロピルおよびその他のアルキルアデニン、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、6−アザチミン、シュードウラシル、4−チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン、8−ヒドロキシルアデニンおよびその他の8−置換アデニン、8−ハログアニン、8−アミノグアニン、8−チオールグアニン、8−チオールアルキルグアニン、8−ヒドロジルグアニンおよびその他の8−置換グアニン、その他のアザおよびデアザウラシル、チミジン、シトシン、アデニン、またはグアニン、5−トリ−フルオロメチルウラシルおよび5−トリフルオロシトシンなども含んでよい。
【0026】
本発明のその他のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、リン酸骨格、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間結合または短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖間結合中に修飾されたリン、酸素ヘテロ原子を含み得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、ホスホン酸メチルおよびホスホロジチオエートを含んでよい。その上、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、結合の組合せを含んでよく、例えば、ホスホロチオエート結合は、3’末端の4〜6塩基にしか結合しなくてもよいし、全てのヌクレオチドに結合してもよいし、1組の塩基にしか結合しなくてもよい。
【0027】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、治療用または実験用試薬としてより適し得るヌクレオチド類似体を含んでよい。オリゴヌクレオチド類似体の例は、DNA(またはRNA)中のデオキシリボース(deoxribose)(またはリボース)リン酸骨格が、ペプチドにおいて見られるものと同様のポリミド(polymide)骨格で置換された、ペプチド核酸(PNA)である(P.E.Nielson et al.,Science 1991,254,1497)。PNA類似体は、酵素による分解に耐性であること、ならびにインビボおよびインビトロで生存が延長されることが示されている。また、PNA鎖とDNA鎖との間に電荷の反発がないため、PNAは相補的なDNA配列とより強い結合を形成する。その他のオリゴヌクレオチド類似体は、ポリマー骨格、環状骨格、または非環式骨格を有するヌクレオチドを含んでよい。例えば、ヌクレオチドは、モルホリノ骨格構造を有してよい(米国特許第5,034,506号)。また、オリゴヌクレオチド類似体は、レポーター基、保護基およびオリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基などの基を含んでもよい。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当業者に理解される糖ミメティクスを組み込んでいてもよい。
【0028】
アンチセンス核酸分子は、本明細書に提供されるものなどの所与SOX9核酸配列に基づいて、当分野で公知の手順を用いる化学合成および酵素連結反応を用いて構築することができる。本発明のアンチセンス核酸分子、またはその断片は、天然に存在するヌクレオチド、あるいは分子の生物学的安定性を高めるかまたはmRNAもしくはネイティブ遺伝子で形成された二重鎖の物理的安定性を高めるように設計された、様々に修飾されたヌクレオチド、例えばホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを用いて化学的に合成されてよい。アンチセンス配列はまた、生物学的に産生されてもよい。この場合、アンチセンスをコードする核酸は発現ベクターの中に組み込まれ、それは次に高効率の調節領域の制御下でアンチセンス配列を産生する組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒ウイルスの形態の細胞に導入され、その活性はベクターが導入される細胞種により決定され得る。
【0029】
もう1つの実施形態では、siRNA技術をSOX9の発現を抑制するために適用することができる。SOX9遺伝子の領域に合致し、選択的にSOX9遺伝子を標的化するsiRNA核酸断片の適用を用いてSOX9発現を抑制することができる。かかる抑制は、siRNA断片がSOX9遺伝子に結合し、その結果機能性SOX9を生じる遺伝子の翻訳を妨げる場合に起こる。
【0030】
SOX9に合致するSiRNA、低分子干渉RNA分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチドに関して上に概説される核酸合成の十分確立された方法を用いて作成される。標的SOX9遺伝子の構造は既知であるため、それと一致するRNAの断片は容易に作成することができる。選択されたsiRNAがSOX9活性を抑制する有効性は、SOX9発現細胞株を用いて確認することができる。要するに、選択されたsiRNAを、適切な成長条件下でSOX9発現細胞株とともにインキュベートすればよい。十分な反応時間の後、すなわちsiRNAがSOX9 mRNAに結合してSOX9 mRNAのレベルが低下する時間の後、反応混合物を試験してそのような低下が起こったかどうか判定する。適したsiRNAは、機能性SOX9タンパク質を生じるSOX9遺伝子のプロセシングを妨げる。これは、例えば、本明細書においてさらに詳細に説明されるように、SOX9結合により調節されるレポーター遺伝子の発現を同定する、細胞に基づくアッセイ法でSOX9活性についてアッセイすることにより検出することができる。
【0031】
当業者には、本方法において有用なsiRNA断片が、遺伝子発現のより効果的な抑制をもたらすことのできるSOX9をコードする核酸の特定の領域、例えば、遺伝子の5’末端に由来し得ることが理解される。その上、当業者に理解されるように、有用なsiRNA断片は、SOX9標的遺伝子に正確に合致しない可能性があるが、配列修飾、例えば、その中の1以上のヌクレオチド塩基の付加、欠失または置換を、その修飾されたsiRNAが標的SOX9遺伝子に結合する能力を有するのであれば、組み込むことができる。選択されたsiRNA断片は、より使用に望ましい断片を生じるためにさらに修飾することができる。例えば、siRNA断片を修飾して、アンチセンスオリゴヌクレオチドについて記載されるものと同様の方法で増大した安定性を達成することができる。
【0032】
調製されるとすぐに、SOX9遺伝子発現を抑制するために有用であると決定されたオリゴヌクレオチド、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNAなどは、神経損傷もしくは変性に関連する症状の哺乳類を処置する治療的方法に用いることができる。適したオリゴヌクレオチドは、ベクター(レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびDNAウイルスベクター)を含む当分野の技法を用いて、またはマイクロインジェクションなどの物理的技法を用いることにより、該哺乳類の組織または細胞に導入されてよい。
【0033】
SOX9活性は、例えば、直接的にまたは間接的にSOX9を抑制するよう設計された抑制物質を用いて、タンパク質レベルで抑制することもできる。SOX9抑制物質としては、生物学的化合物、および合成小分子またはペプチドミメティクス、例えば、かかる生物学的化合物に基づくものを挙げることができる。
【0034】
生物学的SOX9抑制物質にはまた、免疫学的抑制物質、例えばKohlerおよびMilsteinにより開発された十分確立されたハイブリドーマ技術(Nature 256,495−497(1975))を用いて調製されたモノクローナル抗体が含まれる。ハイブリドーマ細胞は、選択されたSOX9領域に特異的に反応性の抗体の産生について免疫化学的にスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体を単離することができる。本明細書において用語「抗体」は、それも本発明に従うSOX9タンパク質に特異的に反応性のその断片、ならびにキメラ抗体誘導体、すなわち可変非ヒト動物ペプチド領域と定常ヒトペプチド領域の組合せの結果生じる抗体分子を含むことが意図される。
【0035】
合成小分子またはペプチドミメティクスなどの候補SOX9抑制物質はまた、例えば、既知の生物学的抑制物質に基づいて、ただしプロテアーゼ耐性などの望ましい特徴を組み込んで調製することができる。一般に、かかるペプチドミメティクスは、コンピューターモデリングを含む、当分野で十分確立された技法に基づいて設計される。
【0036】
候補抑制物質は、細胞に基づく系におけるSOX9活性をアッセイすることにより、抑制活性についてスクリーニングすることができる。適したアッセイ法は一次または株化SOX9発現細胞株、例えば、星状細胞、心臓線維芽細胞、腎メサンギウム細胞、または角膜細胞株を利用する。SOX9活性は、限定されるものではないが、SOX9のmRNAまたはタンパク質レベル、プロテオグリカン(例えばCSPG、HSPGまたはKSPGなど)、キシロトランスフェラーゼ(例えばXT−I、XT−IIなど)、スルホトランスフェラーゼ(例えばC4STなど)、ラミニンまたはフィブロネクチンのタンパク質レベル、およびその他の出力(例えばタンパク質活性、タンパク質修飾、細胞機能、細胞活性、および同種類のものなど)を含む、SOX9抑制の1以上のマーカーのレベルを測定することにより、かかる細胞株においてモニターすることができる。SOX9を抑制する化合物の存在下で、プロテオグリカン、酵素およびSOX9レベルは、候補化合物の不在下でインキュベートされるSOX9発現細胞株で決定された対照レベルと比較して各々低下するが、ラミニンおよびフィブロネクチンのレベルは対照と比較して増加する。プロテオグリカンレベルは、選択されるプロテオグリカンに対して作られる標識された抗体、例えばCSPGに対して作られたCS56(Sigma)を用いて、あるいは、例えば、サフラニン−Oを用いる染色により、免疫学的に容易に検出することができる。当業者に理解されるように、SOX9抑制のマーカーのレベルは、1以上の多数の標準技法、例えばスロットブロットまたはウェスタンブロット(タンパク質の定量化用)またはQ−PCR(mRNAの定量化用)を用いて、一次星状細胞培養において、または別の適した細胞培養において、候補抑制物質とともに適した期間、例えば24〜48時間インキュベーションの後に、決定することもできる。
【0037】
もう一つのSOX9スクリーニングアッセイでは、SOX9レポーター構築物を含むSOX9発現細胞株を用いてよい。構築物は、レポーター遺伝子の発現を調節する制御領域、例えばプロモーターに結合されたSOX9結合領域を組み込む。Sox9結合領域は、本明細書において以下の具体的な例で例証されるように、例えば、SOX9結合部位、あるいは、XT−1遺伝子のプロモーター領域に由来する、またはC4ST遺伝子に由来する、SOX9結合領域の反復であってよい。レポーター遺伝子は、その出力、例えば発現、タンパク質レベル、タンパク質活性、タンパク質修飾、細胞機能、細胞活性、および同種類のものが、容易に検出可能である任意の遺伝子、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子およびβ−ガラクトシダーゼ遺伝子であってよい。SOX9の存在下、制御領域が活性化され、レポーター遺伝子が発現される。SOX9抑制物質の存在下、制御領域は活性化されず、レポーター遺伝子の発現は減少するかまたは妨げられる。
【0038】
もう1つの実施形態では、Sox9抑制物質についてスクリーニングする方法は、上に述べたような決定、例えば、上記のSOX9抑制の1以上のマーカーのレベルの決定、ならびにレポーター構築物の出力の測定、の組合せを含み得る。SOX9抑制のマーカーの測定は、例えば、免疫学的技法、染色、および定量的PCRを含む、当分野で確立された技法を用いて達成することができる。この組合せ法は、プロテオグリカン産生を調節する、あらゆる注目されるSOX9の抑制を確認するのに役立つ。
【0039】
SOX9の治療抑制物質は、既に記載したようにプロテオグリカンの産生に関連する症状の治療を必要とする哺乳類に投与してよい。核酸に基づく抑制物質およびその他の抑制物質の両方を含む、SOX9発現の抑制物質およびSOX9活性の抑制物質は、適した製薬上許容される担体と組み合わせて投与されてよい。「製薬上許容される」との表現は、製薬および獣医学分野での使用に許容される、すなわち許容されないほど毒性であるかまたはその他の点で不適当でないことを意味する。製薬上許容される担体の例としては、希釈剤、賦形剤および同種類のものが挙げられる。製剤についてのガイダンスには、一般に、「Remington’s:The Science and Practice of Pharmacy」21st Ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005を参照することができる。アジュバントの選択は、抑制物質の種類および意図される組成物の投与様式によって決まる。本発明の一実施形態では、化合物は、注入による投与、または皮下、静脈内、くも膜下腔内、脊髄内注射による投与あるいは人工マトリックスの一部としての投与のために処方され、したがって滅菌およびパイロジェンフリーの形態の、所望により、緩衝されているかまたは等張性にされた水溶液として利用される。したがって、該化合物は、蒸留水中、または、より望ましくは、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水または5%デキストロース溶液中で投与されてよい。錠剤、カプセル剤または懸濁液による経口投与用の組成物は、アジュバントを用いて調製され、それには、糖類、例えばラクトース、グルコースおよびスクロースなど;デンプン類、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなど;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースを含む、セルロースおよびその誘導体;トラガント末;モルト;ゼラチン;タルク;ステアリン酸;ステアリン酸マグネシウム;硫酸カルシウム;植物油、例えばピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油およびコーン油など;ポリオール類、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビタル(sorbital)、マンニトールおよびポリエチレングリコール;寒天;アルギン酸;水;等張生理食塩水およびリン酸緩衝溶液が含まれる。湿潤剤、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、安定剤、錠剤成形剤(tableting agents)、抗酸化剤、防腐剤、着色剤および香味剤も含めてよい。例えば、鼻腔送達用のエアゾール製剤も、適した噴霧剤アジュバントを用いて調製され得る。その他のアジュバントも、組成物がどのように投与されるかにかかわらず、組成物に加えてよい。例えば、抗菌剤は、長期にわたる保存期間の間、微生物の増殖を布施部ために組成物に加えることができる。
【0040】
抑制物質は、治療プロトコールを促進するためにその他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0041】
本発明は、その活性が、望ましくない症状、例えば、瘢痕組織の形成(例えば神経細胞に関連してグリア性瘢痕形成)、および細胞の正常な成長、再生または活性を抑制する(例えば線維症に関連する症状における)過剰な結合組織または患部領域内の結合組織に関連する場合に、プロテオグリカン、例えばCSPG、KSPGおよびHSPGなどの活性を抑制する手段を有利に提供する。本発明に従って、SOX9の抑制は、かかる症状に関連するプロテオグリカンの活性または産生を、その合成に関与する酵素、例えばXT−1、XT−11およびC4STを下方制御することにより、有利に下方制御する。その上、SOX9の抑制は、フィブロネクチンおよびラミニンなどの成長促進分子の産生を増加させる。したがって、本発明は、プロテオグリカンの産生に関連する望ましくない症状に苦しむ哺乳類を処置して、一般に成長抑制に関与する因子を抑制すると同時に成長を促進することのできる手段を提供する。
【0042】
本発明の実施形態は、限定と解釈されるべきものでない以下の具体的な実施例で説明される。
【実施例1】
【0043】
(軸索成長調節因子へのSOX9の効果)
(材料および方法)
(動物および外科手術)
これらの実験のすべてのプロトコールは、カナダ動物管理協会(Canadian Council on Animal Care)により作成された「実験動物の管理および使用の指針(Guide to Care and Use of Experimental Animals)」において確立されたポリシーに従って、西オンタリオ大学(University of Western Ontario)動物管理委員会(Animal Care Committee)に認可された。32匹の秤量250〜300gの雌ウィスターラット(Charles River)にジアゼパム(3.5mg/kg、腹腔内)およびアトロピン(0.05mg/kg、皮下)を前投与した。麻酔を4%ハロタンで誘導し、1〜1.5%ハロタンで維持した。椎弓切除術を行ってT4脊髄セグメントを露出させ、秤量50gの改造した動脈瘤クリップを、脊髄を囲むように硬膜外に通した。クリップを開放し、それを1分間閉じたままにすることにより重篤な脊髄圧迫を実現した(Fehlings and Tator 1995)。手術創を閉じ、ラットに5mg/kgのBaytril(Bayer Inc.)、5mLの0.9%生理食塩水を1日2回、3日間、およびブプレノルフィン(0.01mg/kg、皮下)を必要に応じて投与した。膀胱を1日2回、手作業で空にした。12時間後または3、7、21もしくは42日後、ラットを1:2比のケタミン:キシラジン(0.13ml/100g)で麻酔し、脊髄の損傷したセグメントを取り出し、直ちに氷冷トリゾール溶液(Invitrogen)中でホモジナイズし、記載されるとおりにRNAを抽出した(Carmel et al.2001)。
【0044】
(一次細胞培養)
一次星状細胞培養を新生仔ラットから出生後1日(P1)に調製した(Wilson and Dixon 1989)。頭蓋骨の上部を取り外し、線維芽細胞を含む培養物の混入を回避するため、髄膜を注意深く切離した。新皮質を取り外し、無血清アドバンストD−MEM(ダルベッコの改変イーグル培地、Invitrogen)に入れ、ピペッティングによりホモジナイズし、70μm細胞濾過器(Falcon)を通じて重力濾過した。細胞を6ウェル皿(Falcon)に載せた。これらの培養中のGFAP発現細胞の割合は95%を上回ることが分かった。PDGF、IL−6、TNFαおよびTGFβ2(R and D systems)およびbFGF2(Invitrogen)を用いる一次星状細胞のサイトカイン処理を12時間行った。Qiagen(Germany)RNAイージーキットを製造業者の仕様書に従って用いてRNAを抽出した。一次星状細胞のSiRNAおよびCMV−SOX9発現構築物でのトランスフェクションを、6ウェル皿(Falcon)中で、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を製造業者の仕様書に従って用いて行った。siRNA(AAAGUUGUCGCUCCCACUGAAGUUU)(配列番号4)を150pMの濃度で用いた。普遍的な陰性対照スクランブルSiRNAを製造業者(Invitrogen)の仕様書に従って用いた。蛍光標識された対照SiRNAでのトランスフェクション効率は35%〜40%であった。CMV−SOX9構築物は既に記載され(Foster et al.1994;Lefebvre et al.1997)、CMV−GFP構築物での同時トランスフェクションにより推定されるプラスミドトランスフェクション効率はおよそ10%であった。
【0045】
(RNAインサイチューハイブリダイゼーション)
SCI後21または42日にラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流し、その脊髄を取り外し、クリオスタットによって水平に16μmの切片を作成した。XT−I発現のためのRNAインサイチューハイブリダイゼーションを標準的な手順を用いて行った(Schaeren−Wiemers and Gerfin−Moser 1993)。ラッタス属(rattus)XT−I遺伝子のヌクレオチド226〜717(NCBI受託番号XM341912.1、参照により本明細書に援用)由来の491bp断片を逆転写PCRにより増幅させ、pGEM−T Easy(Promega)にサブクローニングした。アンチセンスリボプローブを、T7 RNAポリメラーゼおよびジゴキシゲニン標識UTPを用いて作成した。抗ジゴキシゲニンアルカリ性ホスファターゼ標識抗体(1:500;Roche)および4−ニトロブルーテトラゾリウムクロライドを5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェート(NBT−BCIP;Roche)とともに用いてリボプローブシグナルを検出した。センスリボプローブを陰性対照として用いた。
【0046】
(免疫組織化学)
SCI後21または42日にラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流し、その脊髄を取り外し、クリオスタットによって水平に16μmの切片を作成した。反応性星状細胞を同定する抗GFAP抗体(BD Pharmigen)を1:200希釈で用いて、マクロファージを同定する抗CD11b抗体(Sigma)を1:200希釈で用いて、またはコンドロイチン硫酸−4または−6側鎖の末端部分を認識し、したがって多様なCSPGを検出する(Avnur and Geiger 1984;Fawcett and Asher 1999)抗体、CS56(Sigma)を1:50希釈で用いて、スライドを免疫組織化学用に加工した。
【0047】
(スロットブロット分析)
組織および細胞サンプルを、RIPAバッファー[20mM、Tris−HCl(pH7.6)、150mM NaCl、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、1% Triton X−100、0.1% SDS]に溶解した。次に、タンパク質(3μg/ウェル)を、Bio−Dotスロットブロット装置(BioRad,Mississauga,ON)を用いてポリ二フッ化ビニリデン膜(Millipore,Mississauga,ON)に移した。膜を最初に10%脱脂粉乳中でブロッキングし、次にCS−56(Sigma,Missouri,USA)の1:200希釈一次抗体とともに一晩インキュベートした。HRP標識ロバ抗マウス抗体(1:10,000)でインキュベーションした後、ECL plus ウェスタンブロッティング検出試薬(Amersham,Buckinghamshire,UK)中で製造業者の仕様書に従って膜をインキュベートした。免疫反応性バンドを、イメージングデンシトメーター(BioRad GF−700 イメージングデンシトメーター,Mississauga,ON)によりスキャンし、Multi−Analistソフトウェア(BioRad,Mississauga,ON)を用いて結果を定量化した。全ての値は、発現に関するデンシトメトリー値を、β−アクチン(1:10,000希釈のSigma製抗β−アクチン抗体)の発現に関する値で除算することにより正規化した。
【0048】
(推定プロモーター領域のコンピュータでの解析)
CBGの推定プロモーター領域は、ELDORADOソフトウェアを用いて同定した。転写開始部位は、プロモーター同定プログラムELDORADOに組み込まれたデータベースを用いて遺伝子に自動的に割り当てられた(Cohen et al.2006)。DIALIGNソフトウェアツール(Genomatix Software,GmbH)を用いてプロモーターヌクレオチド配列を解析した。
【0049】
(マイクロアレイハイブリダイゼーションおよびデータ解析)
全てのジーンチップは、London Regional Genomics Centre(Robarts Research Institute,London,Ontario,Canada)で加工された。Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies Inc.,Palo Alto,CA)およびRNA 6000 ナノキット(Caliper Life Sciences,Mountain View,CA)を用いてRNAの質を評価した。RNAを、(脊髄損傷ラットの病変の中心の)T4を中心とする脊髄の2mm部分から抽出した。ビオチン化した相補RNA(cRNA)を、Affymetrix GeneChip Technical Analysis Manual(Affymetrix,Santa Clara,CA)のように10μgの全RNAから調製した。SuperScriptII(Invitrogen,Carlsbad,CA)およびオリゴ(dT)24プライマーを用いて二本鎖cDNAを合成した。ビオチン標識cRNAを、ビオチン化UTPおよびCTPを組み込んだBioArray High−Yield RNA Transcript Labeling kit(Enzo Biochem,New York)を用いてインビトロ転写により調製した。10μgの標識cRNAを、45℃にて16時間、RAE230A GeneChipsにハイブリダイズさせた。GeneChipsは、 Affymetrix GeneChip Scanner 3000(Affymetrix,Santa Clara,CA)でスキャンした。プローブシグナル強度を、GCOS1.3(Affymetrix Inc.,Santa Clara,CA)でStatistical Expressionアルゴリズムパラメータの初期値を用いて生成し、全てのプローブセットの150のTarget Signalおよび1.Gene発現レベルデータのNormalization Valueを、GeneSpring GX 7.0のRMAプレプロセッサ(Agilent Technologies Inc.,Palo Alto,CA)を用いて生成した。次に、データを変換し(0.01未満の測定値を0.01に設定)、チップごとに第50百分位数に、さらに遺伝子ごとに中央値に正規化した。
【0050】
(定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR))
最初に、鎖cDNAを、条件(細胞培養または動物組織)ごとに、High Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems Foster City CA)を製造業者のプロトコールに従って用いて、1μg RNAから合成した。プライマープローブセット、光学接着剤カバー、およびPCRプレートは、Applied Biosystems(Foster City,CA)より購入した。5’をVICで標識したリボソームプローブを除いて、プローブを、5’をFAMで、さらにクエンチャーとして3’をTAMRAで標識した。Taq Manアッセイのためのサーマルサイクラー条件は、95℃で10分、それに続いて95℃で30秒を40サイクル、それに続いて60℃で30秒であった。cDNA連続希釈を用いるサイクル閾値の標準曲線を確立し、各標的mRNAの存在量を算出するために用いた。技術的三重反復試験および少なくとも生物学的三重反復試験を、試験した全ての条件で行った。Q−PCRにより測定された18S mRNAの量に値を正規化した。二元配置分散分析、それに続いて多重比較のためのDunnの補正、または比較を単一変数(対照)で行う場合にDunnetの手順を加えた、Bonferroni検定によりデータを解析した。2群のみを比較する場合にはスチューデントt検定を用いた。
【0051】
【表1】

【0052】
(結果)
(SCI後のXT−I、XT−IIおよびC4STの発現プロフィール)
XT−I、XT−IIおよびC4STはすべて、Q−PCRにより検出されるSCI後の遺伝子発現の同様のパターンを示した(図1A〜C)。これらの遺伝子ピークのmRNAレベルはSCI後12時間から3日間までピークに達し、その後、損傷後7日までにベースラインレベルに戻る。XT−I、XT−IIおよびC4STはそれらの発現レベルを後の時点で増加させるので、損傷後42日までにXT−I、XT−IIおよびC4STのmRNAレベルの増加は、対照と比較してそれぞれ2、5および7倍である。記述を簡単にするために、XT−I、XT−IIおよびC4STは、本明細書においてそれらがコンドロイチン硫酸側鎖の生成に必要な酵素のサブセットのみを表すという了解の下でCBGと称される。SCI後のXT−I、XT−IIおよびC4STの発現の増加は、脊髄病変由来のタンパク質抽出物および抗体CS−56を用いるスロットブロット解析により測定されるCSPGレベルの増加を伴う。Q−PCRにより明らかとなる発現プロフィールは、CBGように、ラミニンおよびフィブロネクチンのmRNAレベルはSCI後すぐに上昇するが、CBGとは違って、それらは損傷後の後の時点(21日および42日)で上昇しないことを実証する(図1D、E)。
【0053】
(インサイチューハイブリダイゼーションによるCBG mRNAの細胞供給源の同定)
SCI後のCBG mRNAの細胞供給源を決定するため、ラット損傷脊髄の切片でのRNAインサイチューハイブリダイゼーション分析を、XT−Iアンチセンスリボプローブを用いて行った。マクロファージを検出する抗CD11b mAbおよび星状細胞を検出する抗GFAP抗体を用いる、これらの同じ切片での免疫組織化学は、損傷後6週にこれらの細胞種の両方が病変においてXT−Iを発現することを示した。
【0054】
(IL−6、PDGF、およびTGFβ2は、XT−I、XT−IIおよびC4STの推定制御因子である)
XT−I、XT−IIおよびC4ST遺伝子転写の可能性な陽性制御因子を同定するために用いた最初の戦略は、発現を増加させることのできる分子のサブセットは、上記のようにQ−PCRに描かれたXT−I、XT−IIおよびC4STの発現パターンに類似の発現パターンを示すという前提に基づいていた。例えば、XT−I、XT−IIおよびC4ST発現の誘導因子は、それ自体がXT−I、XT−IIおよびC4STの発現レベルが高い場合に上昇したレベルの発現を示し、XT−I、XT−IIおよびC4STの発現レベルが低い場合に低いレベルの発現を示す。したがって、遺伝子発現プロフィールは、ラットにおけるクリップ圧迫SCIの後にAffymetrixプラットフォーム(Affymetrix Rat 230A遺伝子チップ)を用いてラット損傷脊髄で分析した。炎症は線維症および瘢痕の主要な制御因子であることが知られているため、その分析は炎症の既知のサイトカインメディエーターに限定した。この群から、発現プロフィールがXT−I、XT−IIおよびC4STの発現プロフィールに最も類似する3つのサイトカイン、IL−6、TGFβ2およびPDGFを特定した。マイクロアレイにより描かれた、これらのサイトカインの中の2つ、TGFβ2およびIL−6についての発現プロフィールを、SCI後12時間、3、7、21および42日に病変部位から単離されたmRNAでのQ−PCRにより検証した(図2A、B)。マイクロアレイデータに一致して、これらのサイトカインは、mRNAレベルのSCI後12時間の急速な増加を実証し、それに続いてTGFβ2においてはSCI後7日でベースラインレベルまで低下し、その後増加するが、IL−6 mRNAはSCI後21および42日に増加しなかった。したがってこれらのサイトカインおよびXT−I、XT−IIおよびC4STは、SCI後の発現のパターンが類似する。
【0055】
(XT−I、XT−IIおよびC4STのプロモーター領域のコンピュータでの解析)
XT−I、XT−IIおよびC4STの制御因子を同定するために用いた第2の戦略は、3つ全ての遺伝子のプロモーターに共通する転写因子結合部位を同定することであった。この戦略は、XT−I、XT−IIおよびC4STが遺伝子集団(gene battery)の一部を構成する場合、それらは重複する転写因子のセットにより制御されるとの前提に基づいていた。XT−I、XT−IIおよびC4STの推定プロモーター領域は、Genomatix suiteソフトウェア(Genomatix Software GmbH)を用いて定義された。推定転写因子結合部位を誤って同定する可能性を減らすため、ヒト、ラットおよびマウスXT−I、XT−IIおよびC4ST遺伝子のプロモーター配列を比較し、3つ全ての種の3つ全ての遺伝子において、予測される結合部位を含む転写因子だけをXT−I、XT−IIおよびC4STの候補制御因子として認めた。Genomatix ソフトウェアを用いて、SOX9をXT−I、XT−IIおよびC4ST発現を調節する転写因子として同定した。
【0056】
Genomatixの予測した、XT−1遺伝子のプロモーター中のSOX9結合部位は、以下のXT−1遺伝子転写開始部位の上流のヌクレオチド配列、つまり
【化1】

を含む、XT−I遺伝子の上流領域由来の配列において強調表示される。
【0057】
生物情報科学解析は、C4ST遺伝子の転写開始部位上流の2つの別々の領域にSOX9結合配列を予測した。これらの2つの領域由来の配列を下に示す。Genomatixの予測したSOX9結合部位が強調表示される。
【化2】

【0058】
SOX9がCBG発現を調節する可能性を調べるため、ラットにおいてSCI後のSOX9発現をQ−PCRにより分析した。SOX9は損傷後12時間で急速な12倍の発現レベルの増加を示した。SCI後の3日まで、SOX9のmRNAレベルは対照と変わらなかったが、それらはSCI後1週間で再び対照と比較して11倍増加し、損傷後42日まで上昇したままであった(図3)。リン酸化された活性形態のSOX9を認識する抗体および抗GFAP抗体を用いる免疫組織化学は、明らかに、損傷後42日に脊髄病変部におけるSOX9とGFAPの同時発現を示す。
【0059】
(一次星状細胞培養におけるCBG発現の特性決定)
XT−I、XT−IIおよびC4STの推定制御因子を試験するため、細胞培養系を損傷した脊髄の細胞による埋め合わせ(make−up)を反映するように開発した。星状細胞は、グリア性瘢痕のCSPGの主要な供給源であり(Alonso and Privat 1993;Fawcett and Asher 1999;Reier and Houle 1988)、CBGおよびSOX9を発現するため、一次星状細胞培養を用いてXT−I、XT−IIおよびC4STの転写調節を調べ、培養中の3週および6週後の一次βにおけるこれらの遺伝子の発現に関するベースライン値を得るた。一次星状細胞におけるXT−IおよびXT−II mRNAのレベルは、3週の培養物において6週の培養物よりもおよそ2倍大きかった(図4A、B)。3週齢の一次星状細胞におけるXT−IおよびXT−II mRNAのレベルがより高いことは、これらの培養物が単離手順により誘導されて活性化症状であったことが反映されている。これは、CNS損傷の後に反応性星状細胞により発現される遺伝子である、GFAPの発現(Janeczko 1988;Vijayan et al.1990)も、6週齢の星状細胞培養と比較して3週齢において上昇したという知見により支持される(図4C)。
【0060】
(TGF2、IL−6およびPDGFはXT−I、XT−IIおよびC4STの発現レベルを増大させる)
TGFβ2、PDGFおよびIL−6を候補XT−I、XT−IIおよびC4ST転写制御因子として評価するため、ラット一次星状細胞培養を1、10または100ng/mlの各々のサイトカインに曝露させた。サイトカイン曝露の12時間後、XT−I、XT−IIおよびC4ST mRNAレベルをQ−PCRにより未処理の培養と比較して測定した。6週齢の培養物を、この時点までに星状細胞は静止症状であり(低下したGFAP発現により証明される)、XT−I、XT−IIおよびC4ST遺伝子のベースラインレベルが低いために、用いた。6週齢の一次星状細胞培養をTGFβ2、IL−6およびPDGFで処理すると、対照値を上回る、XT−II mRNAの強い濃度依存性の増加がもたらされた(図6A)。同様の発現の増加がXT−IおよびC4STについて観察された(図6B、6C)。これらの培養物におけるこのCBGの発現増加は、スロットブロット分析により評価されるCSPGタンパク質の発現の増加に一致する(図6D)。フィブロネクチンおよびラミニン発現は同様にこれらのサイトカイン処理の後に増加した(図6F、6G)。この実験アプローチを支持して、XT−I、XT−IIおよびC4STの発現プロフィールとは異なる発現プロフィールを有するTNFβ2およびbFGFなどのサイトカインは、一次星状細胞においてXT−II mRNAレベルに影響を及ぼさないことが見出された(図6H)。
【0061】
(SOX9はCBGを調節するが、ラミニンmRNAレベルは調節しない)
SOX9がインビトロでXT−I、XT−IIおよびC4STの発現を調節するかどうかを試験するため、一次星状細胞にSOX9発現構築物をトランスフェクトし、48時間後、Q−PCRによりCBG mRNAレベルを評価した。CMVに駆動されるSOX9発現は、XT−I、XT−IIおよびC4ST mRNAの有意な増加をもたらした(図6A)。これらの同じ培養中のフィブロネクチンおよびラミニンmRNAのレベルはSOX9過剰発現によって影響を受けなかった。IL−6、PDGFおよびTGFβ2がSOX9発現を増加させることによりXT−I、XT−IIおよびC4ST遺伝子発現を増加させるかどうか決定するため、一次星状細胞培養においてこれらのサイトカイン処理の後にSOX9 mRNAの発現レベルをアッセイした。XT−I、XT−IIおよびC4STの発現を増加したサイトカイン処理(TGFβ2、IL−6およびPDGF)は、SOX9 mRNAレベルの有意な増加を引き起こした(図6B)。
【0062】
XT−I、XT−IIおよびC4STの発現へのSOX9ノックダウンの効果を試験するため、対照(スクランブルされた)低分子干渉RNA(SiRNA)または抗SOX9 SiRNAを一次星状細胞にトランスフェクトし、SOX9、XT−I、XT−IIおよびC4STのmRNAレベルを12時間後にQ−PCRによりアッセイした。一次星状細胞に抗SOX9 siRNAをトランスフェクトした結果、SOX9 mRNAレベルが75±12%低下し、XT−I mRNAが71±5.5%低下した(図7A、7B)。TGFβ2処理した一次星状細胞に抗SOX9 SiRNAをトランスフェクトした結果、SOX9 mRNAレベルが87±13%低下し、XT−I mRNAが68±6.4%低下したが、TGFβ2処理のみの場合はSOX9およびXT−1 mRNAレベルが増加した。XT−IIおよびC4ST発現においても、TGFβ2処理培養物および未処理培養物の両方において、抗SOX9 SiRNAの存在下で同様の低下が観察された(図7C、7D)。SOX9ノックダウンは、ラミニンまたはフィブロネクチン遺伝子発現を減少させなかった(図7E、7F)。
【0063】
これらの結果は、明らかに、SOX9発現が一次星状細胞におけるCBG発現に必要かつ十分であること、およびCBG発現のサイトカイン上方制御がSOX9に依存することを示す。抗SOX9 SiRNAのトランスフェクションは、ラミニンおよびフィブロネクチン発現がSOX9により負に調節されることを示す。
【実施例2】
【0064】
(抗CD11d mAb処理のSCIへの効果)
(実験方法)
(動物および外科手術)
実施例1に記載されるとおりである。
【0065】
(マイクロアレイ分析)
全てのGeneChipsを、London Regional Genomics Centre(Robarts Research Institute,London,ON)で加工した。Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies Inc.,California,USA)およびRNA 6000 Nano kit(Caliper Life Sciences,California,USA)を用いて各々のRNAサンプルの質を評価した。ビオチン化した相補RNA(cRNA)を、Affymetrix GeneChip Technical Analysis Manual(Affymetrix,California,CA)のように10μgの全RNAから調製した。SuperScriptII(Invitrogen,California,USA)およびオリゴ(dT)24プライマーを用いて二本鎖cDNAを合成した。ビオチン標識cRNAを、ビオチン化UTPおよびCTPを組み込んだBioArray High−Yield RNA Transcript Labeling kit(Enzo Biochem,New York,USA)を用いてcDNAインビトロ転写により調製した。ビオチン標識されたcRNA(10μg)を、Affymetrix Technical Analysis Manual(Affymetrix,California,USA)に記載されるように、45℃にて16時間RAE230A GeneChipsにハイブリダイズさせた。各動物(各時点での3匹の抗CD11d処理動物および3匹の未処理動物)由来のRNAサンプルを、別個のGeneChipsにハイブリダイズさせた。3匹の異なる未損傷動物由来の3つのRNAサンプルを同様に3つの別個のGeneChipsにハイブリダイズさせて遺伝子発現の対照レベルを得た。GeneChipsをストレプトアビジン−フィコエリトリンで、それに続いて抗体溶液で、さらに第2のストレプトアビジン−フィコエリトリン溶液で染色した。GeneChip Fluidics Station 400が全ての液体の操作を行った。GeneChipsをAffymetrix GeneChip Scanner 3000(Affymetrix,California,USA)でスキャンした。GCOS1.3(Affymetrix Inc.,California,USA)を用いて、統計発現アルゴリズムパラメータを初期値で、全てのプローブセットの標的シグナルを150で、そして正規化値を1で、プローブシグナル強度を生成した。RMAプレプロセッサをGeneSpring GX 7.3(Agilent Technologies Inc.,California,USA)で用いて遺伝子レベルデータを生成した。データを変換し(0.01未満の測定値を0.01に設定)、チップごとに第50百分位数に、さらに遺伝子ごとに中央値に正規化した。処理および/または損傷後の時間に相関する、mRNAレベルの統計上有意な変化を、二元配置分散分析(p<0.05)を用いて編集した。多重試験を訂正するBenjaminiおよびHochbergの偽発見試験を用いて平均値間の差を決定した。全てのデータ解析および検索はGeneSpring GX 7.3(Agilent Technologies Inc.,California,USA)を用いて行った。
【0066】
(定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR))
この調査では、条件(細胞培養または動物組織)ごとに1μgのRNAを用いて、High Capacity cDNA Archive Kitを製造業者の仕様書に従って用いて(Applied Biosystems,California,USA)第1のcDNAを合成した。プライマープローブセット、光学接着剤カバー、およびPCRプレートはApplied Biosystems California,USAより購入した。これらのプローブは、5’をVIC(Applied Biosystems)で標識したリボソームプローブを除いて、5’末端をFAM(Applied Biosystems)で、3’末端をクエンチャーとしてTAMRA(Applied Biosystems)で標識した。Taq Manアッセイのためのサーマルサイクラー条件は、95℃で10分、それに続いてDNAを変性させるために95℃で30秒を40サイクル、さらに鋳型をアニールおよび伸長させるために60℃で30秒であった。cDNA連続希釈を用いるサイクル閾値の標準曲線を確立し、標的遺伝子の存在量を算出するために用いた。これらの値は18S mRNAの量に正規化された。一元分散分析に続いて多重比較のためのBonferroni検定を用いてデータを解析した。
【0067】
【表2】

【0068】
SCI後3、7または21日に、対照および抗CD11d処理ラット(各時点各群につきN=5)の腹膜内に26%ケタミン(100mg/ml、Vetalar,Bioniche,Belleville,ON)および0.06%キシラジン(20mg/ml、Rompun,Bayer,Toronto,ON)を2:1混合物で過剰投与した。各ラットの心臓内に、250mlの酸素添加した組織培養基(pH7.4、ダルベッコの改変イーグル培地、Gibco Invitrogen Corp,Burlington,ON)、それに続いて0.1M リン酸緩衝溶液(PBS、pH7.4)中500mlの4%ホルムアルデヒド固定液(両方ともに室温)を灌流させた。脊髄を中心とする病変周囲の切片を、それが病変部位(T3−T4)に対して0.5cm吻側および尾側であるように取り出した。全ての脊髄を、既に記載されるように処理した(Saville et al.,2004)。各動物由来の連続的な16μm厚さの切片を含有する8組のスライドを収集し、免疫組織化学解析に用いた。
【0069】
(結果)
(創傷治癒および瘢痕遺伝子)
免疫応答遺伝子の発現の変化は、創傷治癒に関連する遺伝子の発現に計り知れない影響を有し得る。CSPG、ラミニンおよびフィブロネクチンは、脊髄損傷動物において可能な神経学的回復の程度を決定することのできるグリア性瘢痕の主要な成分である(Bradbury et al.,2002;Grimpe and Silver,2004)。したがって、抗CD11d mAb処理ラットにおける回復改善が、瘢痕形成に関与するこれらの遺伝子の発現の変化に部分的に起因する可能性を調査した。Q−PCRにより、IL−6およびTGFβ2 mRNAが処理ラットにおいて急性的に下方制御されることが確認された(図8A)。サイトカイン発現の低下は、抗CD11d mAb処理ラットにおけるSOX9、XT−I、XT−IIおよびC4ST mRNAレベルの急性の低下に一致する(図8C〜8E)。SOX9が一次星状細胞培養においてラミニンおよびフィブロネクチンの発現を抑制するという知見に一致して、抗CD11d mAb処理ラットにおけるSOX9発現の低下は、ラミニンおよびフィブロネクチンmRNAレベルの増加を伴った(図8F、8G)。抗ラミニン抗体および様々なCSPGを認識するCS56抗体(Avnur and Geiger,1984)を用いるスロットブロット分析は、これらのmRNAレベルの差が、抗CD11d mAb処理ラットの病変におけるCSPG:ラミニンタンパク質の比の有意な低下に関連することを示す(図8H)。病変中心由来の切片についての免疫組織化学はグリア性瘢痕の性質の変化を実証する。CD8α分析に用いた同じSCIラット病変区域から採取した交代性の組織切片を用いて、抗ラミニンおよびCS56抗体、抗ニューロフィラメントおよび抗CS56抗体ならびに抗ラミニンおよび抗ニューロフィラメント抗体での二重標識は、抗CD11d処理した脊髄損傷ラットにおいてCSPGに対してラミニンの量の増加、およびラミニンの豊富な区域で最も顕著な、病変中心のニューロフィラメント染色軸索の増加を示す。したがって、増加した軸索出芽または不足は、抗CD11d mAbで処理したラットにおいて増加したラミニンおよび低下したCSPG産生に関連する。
【実施例3】
【0070】
(様々な神経病理学的サンプルにおけるCSPGの発現)
ヒトSCI、外傷性脳損傷(TBI)、出血性卒中、虚血性脳卒中、およびアルツハイマー病(AD)におけるCSPGの役割を解明するため、これらの症状の被験体由来の切片で免疫組織化学を行った。組織学的切片は、ロンドンの大学病院の病理学部(Pathology department at London’s University Hospital)(デイビッド・ラムゼイ博士(Dr. David Ramsay))より入手した。CS56(多くのCSPGを認識する抗体)を、GFAP(反応性星状細胞を染色するため)、SMI32(ニューロンを染色するため)、またはCD68(ミクログリア/マクロファージを染色するため)のいずれかに対する抗体と組み合わせて切片を染色した。
【0071】
(方法)
(組織処理)
全ての神経病理学的症状のヒト切片を、デイビッド・ラムゼイ博士(西オンタリオ大学(University of Western Ontario)病理学部)より入手した。マウスの心臓を4%パラホルムアルデヒドで灌流して組織を固定した。脳を切開して取り出し、パラフィンに包埋した。ミクロトームを用いて10umの切片を切断し、スライドにマウントした。
【0072】
(免疫組織化学)
一連のキシレンおよびエタノール洗浄、それに続いてメタノール中10%過酸化水素でのインキュベーションを用いて、全ての切片を脱パラフィン(depraffinization)のために処理した。脱パラフィン後、切片をクエン酸(pH6.0)中で15分間沸騰させて抗原の回復を行った。次に、切片をPBS中で10分間洗浄し、PBS中10%ヤギ血清および0.5%Triton−Xで1時間ブロッキングした。
【0073】
ヒト切片を、CS56(1/100,Sigma,St.Louis,MO)、SOX9(1/100,Chemicon,Temecula,CA)、GFAP(1/100、Molecular Probes,Carlsbad,CA)、SMI32(1/100,Covance,Princeton,NJ)、およびCD68(1/100,Dako,Carpintera,CA)に対する一次抗体の組合せを用いて二重染色した。マウスMCAO切片を、SOX9、GFAP、およびTUJ1(1/100 Chemicon,Temecula,CA)に対する一次抗体の組合せを用いて二重染色した。表2および3に示されるように、異なる組合せの二次抗体を用いた。
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
全てのAlexafluor標識二次抗体は、Molecular Probes(Carlsbad,CA)より入手した。全てのその他の二次抗体は、Jackson ImmunoResearchより入手した。各患者由来の3つの異なる切片中のSox9陽性細胞を手作業で計数した。
【0077】
(リアルタイム定量的PCR)
マウスにケタミン:キシラジン(2:1)で麻酔をかけ、生理食塩水で灌流した。脳を切開し、皮質を取り出した。次にその皮質をトリゾールの中に入れ、組織ホモジナイザーでホモジナイズした。RNAを抽出し(using,,)、−80℃で保存した。次に、cDNAを合成した。SOX9および18S(既に同定)のプライマープローブセットを、定量的PCRを用いる遺伝子発現を定量するために用いた。
【0078】
(結果)
免疫組織化学により、調査した5つ全ての神経病理学的症状においてCSPGの発現が実証された。対照切片では、CSPGは未損傷の健康な脳のペリニューロナルネット(PNN)の外側に発現しないことが免疫組織化学により実証された。抗GFAPおよびCS56抗体での二重標識により、CS56免疫反応性の領域に反応性星状細胞が存在することが示された。ヒトTBI、出血性卒中、および虚血性脳卒中では、反応性星状細胞は、CSPGの豊富な区域の外縁の周囲に見ることができる。SCIおよびADでは、反応性星状細胞はCSPGの豊富な領域全体に存在する。CSPGの豊富な区域に関連するニューロンは、虚血性脳卒中由来の切片においてのみ観察された。CD68陽性ミクログリアおよびマクロファージもCSPGに対して免疫反応性の区域で観察された。
【0079】
(ヒト神経病理学的切片におけるSOX9発現)
本発明者らの研究室での以前の研究では、転写因子SOX9が硫酸コンドロイチン側鎖合成に関与する酵素の発現に必要かつ十分であることが示されたので、SOX9の発現がCSPGの豊富な領域において調査された。SOX9陽性核はCS56免疫反応性の全ての区域で観察された。SOX9の細胞局在性を解明するため、反応性星状細胞、ニューロン、およびマクロファージをそれぞれ検出するために、抗GFAP、抗SMI32、または抗CD68抗体の中の1つと組み合わせて、抗SOX9抗体で二重染色を行った。SOX9は、調べた全ての神経病理学的症状の反応性星状細胞の核に見出されたが、未損傷の脳には見出されなかった。その上、SOX9は、健康な脳および損傷または罹患した脳のニューロンの核および細胞質に、さらにCD68陽性細胞の核に見出された。健康な未損傷のニューロンにおける発現は、恐らく、PNNの一部をなすCSPGの発現へのSOX9の関与を反映する。
【0080】
ヒトの研究と同時に、卒中(MCAO)のマウスモデルを研究して脳血管(cerebroasular)損傷におけるSOX9の発現および細胞局在性を確認した。SOX9はMCAO損傷脳の反応性星状細胞の核に見出されるが、未損傷の脳には見出されない。また、SOX9は健康な脳と損傷した脳の両方のニューロンの核にも見出される。定量的PCRによって、未損傷の対照と比較して、MCAOマウスの損傷した皮質においてSOX9 mRNA発現が上昇することが示された。
【実施例4】
【0081】
(SOX9抑制物質のスクリーニングアッセイ)
損傷または罹患した中枢神経系(CNS)の反応性星状細胞により産生されたプロテオグリカン、および特にCSPGは、再生に対して抑制的である。機能獲得実験および機能喪失実験の両方を用いて、転写因子SOX9が一次星状細胞培養においてXT−I、XT−IIおよびC4STの発現を増加するために必要かつ十分であることが見出された。また、SOX9がCSPGの産生を増加する一方で、それがラミニンおよびフィブロネクチンの発現を減少させることも実証されている。
【0082】
SOX9抑制物質をスクリーニングするためのアッセイが開発された。
【0083】
星状細胞、例えば、萎縮した(wither)一次星状細胞(げっ歯類またはヒト)またはNeu7(Fok−Seang,Smith−Thomas et al.1995)と命名された樹立された星状細胞株に、標準条件下でSOX9レポーター構築物をトランスフェクトした。SOX9レポーター構築物(ブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia)、マイケル・アンダーヒル博士により寄贈された)は、プラスミドpGL4(Promega)のルシフェラーゼ遺伝子の上流にクローニングされたマウスCol2a1最小プロモーター(−89〜+6)に結合する、4反復のSOX9結合部位を有する(Weston,Chandraratna et al.2002)。トランスフェクトした培養物のルシフェラーゼレベルの変化をSOX9活性の読み取りとして用いる。以前用いた抗SOX9 SiRNA(またはSOX9コンディショナルノックアウト由来の星状細胞)をこのスクリーニングの陽性対照として用い、スクランブルsiRNAを陰性対照として用いる。スクリーニングを用いて、対照ウェルと比較してルシフェラーゼ活性のレベルを低下させる化合物を同定する。かかる化合物はSOX9抑制性となり、陽性の「ヒット」とみなされる。二次スクリーニングでは、細胞生存度への影響に起因するルシフェラーゼ活性の低下を引き起こす偽陽性は、ヨウ化プロピジウム取込みにより処理培養物中の細胞死をアッセイすることにより取り除かれる。一次星状細胞培養を用いる場合、トランスフェクションは、SOX9レポーター構築物をコトランスフェクトされた対照プラスミドに正規化される。
【0084】
このスクリーニングの検証は実験から得られ、これらの実験により、SOX9ルシフェラーゼレポーター構築物をトランスフェクトした一次星状細胞は、TGFβ−2が一次星状細胞においてSOX9発現および活性を増加させる時に、TGF−β2で処置後に、ルシフェラーゼ活性のおよそ2倍の増加を実証することが示された(図10)。具体的には、新生仔ラットから得た一次星状細胞を6ウェル皿中で10%FBSを含むアドバンスト−DMEM中で6週間培養した。培養基を、ウェルあたり10ulのリポフェクタミン2000(Invitrogen)および10ug SOX9−レポータープラスミドDNAを含む2mlの無血清アドバンスト−DMEMに交換した。トランスフェクション効率は、対照プラスミドを用いる同時トランスフェクションにより算出した。24時間後、細胞をTGF−β2で処理した(終濃度10nM)。TGF−β2の適用の24時間後、細胞を溶解し、Lusciferase Assay System(PROMEGA)(製造業者のプロトコールに従って)およびルミノメーターを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。
【0085】
本明細書中で言及されている全ての引用文献
【表5A】

【表5B】

【表5C】

【表5D】

【表5E】

全ての参考文献は参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類においてSOX9活性を抑制する工程を含む、哺乳類におけるプロテオグリカン産生に関連する症状を治療する方法。
【請求項2】
前記プロテオグリカンが、CSPG、HSPGおよびKSPGからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記症状が、ニューロンの成長抑制に関連したものである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記症状が、ニューロンの可塑性を増大させることにより改善させる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記症状が、脊髄損傷、外傷性脳損傷、脳血管疾患、アルツハイマー病および関連する認知症からなる群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記症状が、線維症に関連する症状である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記症状が、XPE、糖尿病性腎症、心筋線維症、アテローム性動脈硬化症および角膜疾患からなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
哺乳類においてSOX9活性を抑制する工程を含む、哺乳類におけるニューロンの変性に関連する症状を治療する方法。
【請求項9】
SOX9活性が、siRNAの投与により抑制される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
SOX9活性が、アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与により抑制される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
SOX9活性が、免疫学的に抑制される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
SOX9抑制物質を含む、哺乳類における少なくとも1種類のプロテオグリカン産生に関連する症状を治療するための組成物。
【請求項13】
前記抑制物質がsiRNAである請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
SOX9を抑制する候補化合物をスクリーニングする方法であって、
a)候補化合物を、SOX9レポーター構築物を含むSOX9発現細胞株とともにインキュベートする工程であって、前記構築物が、レポーター遺伝子の発現を調節する制御領域と関連するSOX9結合領域を含む、工程と、
b)レポーター遺伝子の出力を測定する工程と、
を含み、
候補物でのインキュベーションを行わずに得られた対照出力と比較した際の前記レポーター遺伝子の出力の低下が、前記候補化合物がSOX9抑制物質であることを示す方法。
【請求項15】
SOX9抑制の少なくとも1つのマーカーの発現レベルを測定する工程をさらに含み、対照と比較した際の発現の低下が、前記候補化合物がSOX9抑制物質であることを示す請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記SOX9抑制のマーカーが、SOX9 mRNA、SOX9、プロテオグリカン、キシロシルトランスフェラーゼmRNA、XT−I、XT−II、スルホトランスフェラーゼmRNA、スルホトランスフェラーゼ、ラミニンおよびフィブロネクチンからなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項17】
前記SOX9発現細胞株が、星状細胞株である請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記SOX9結合領域が、SOX9結合部位、XT−1遺伝子由来のプロモーター領域およびC4ST遺伝子由来のプロモーター領域からなる群から選択される請求項14に記載の方法。
【請求項19】
哺乳類において少なくとも1種類のプロテオグリカンの産生に関連する症状を治療するための薬物の製造のためのSOX9抑制物質の使用。
【請求項20】
前記症状が、ニューロンの成長抑制に関連する症状、ニューロンの可塑性を増大することにより改善される症状、および線維症に関連する症状からなる群から選択される請求項19に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−507595(P2010−507595A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533623(P2009−533623)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001902
【国際公開番号】WO2008/049226
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509120252)ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・ウェスタン・オンタリオ (1)
【Fターム(参考)】