説明

プロトン伝導性膜、その製造方法およびこれを用いた燃料電池

本発明の課題は、従来の固体高分子形燃料電池における問題点を解決し、耐熱性および高温下においてもプロトン伝導性に優れ、寸法安定性の高いプロトン伝導性膜、その製造方法およびこれを用いた燃料電池を提供することである。本発明のプロトン伝導性膜は、金属−酸素架橋構造からなる粒子1を有するプロトン伝導性膜であって、前記粒子1の表面にはスルホン酸基などの酸基が導入され、かつ、前記粒子1が連続体を構成する。そして粒子の間隙2は、前記プロトン伝導性膜の主表面から相対向する面に連通して、プロトン伝導路を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、プロトン伝導性膜、その製造方法及びそれを用いた燃料電池に関し、更に詳しくは、耐熱性、耐久性、寸法安定性、及び燃料バリア性等に優れ、しかも高温でも優れたプロトン伝導性を示すプロトン伝導性膜、その製造方法及びこれを用いることで高温動作、あるいはメタノールなどの燃料の直接供給に対応しうる燃料電池に関する。
【背景技術】
燃料電池は、発電効率が高くかつ環境特性に優れているため、近年、社会的に大きな課題となっている環境問題やエネルギー問題の解決に貢献できる次世代の発電装置として注目されている。
燃料電池は、一般に電解質の種類によりいくつかのタイプに分類されるが、この中でも固体高分子形燃料電池(以下、PEFCと略称する場合がある)は、他のいずれのタイプに比べても小型かつ高出力であり、小規模オンサイト型、例えば、車輌のパワーソースなどの移動体用、携帯用等の電源として次世代の主力とされている。
このように、PEFCは、原理的に優れた長所を有しており、実用化に向けた開発が盛んに行われている。このPEFCでは、燃料として通常、水素を用いる。水素は、PEFCのアノード側に設置された触媒によりプロトン(水素イオン)と電子に分解される。このうち、電子は、外部に供給され、電気として使用され、PEFCのカソード側へと循環される。一方、プロトンはプロトン伝導性膜(電解質膜)に供給され、プロトン伝導性膜を通じてカソード側へと移動する。カソード側では、プロトン、循環されてきた電子、および外部から導入される酸素が触媒により結合され、水が生じる。すなわち、PEFC単体で見れば、PEFCは、水素と酸素から水を作る際に電気を取り出す非常にクリーンなエネルギー源である。
燃料電池の燃料としては水素を使うのが通常であるが、アルコール、エーテル、炭化水素類など水素以外の燃料を直接燃料電池に導入し、触媒によりこれらの燃料からプロトンと電子を取り出す燃料電池も盛んに検討されつつある。この代表例として、メタノール(通常、水溶液として用いる)を燃料とする直接メタノール型燃料電池(以下、DMFCと略称する場合がある)が挙げられる。
ここで、プロトン伝導性膜は、アノードで生じたプロトンをカソード側に伝える役目を持つ。上記の通り、このプロトンの移動は、電子の流れと協奏的に起こるものである。すなわち、PEFCにおいて、高い出力すなわち高い電流密度を得るためには、プロトン伝導を十分な量、高速に行う必要がある。従って、プロトン伝導性膜の性能がPEFCの性能を決めてしまうキーマテリアルといっても過言ではない。また、プロトン伝導性膜は、プロトンを伝導するだけではなく、アノードとカソードの電気絶縁をする絶縁膜としての役割と、アノード側に供給される燃料がカソード側に漏れないようにする燃料バリア膜としての役割も併せ持つ。
現在、PEFCにおいて使用されている主なプロトン伝導性膜は、パーフルオロアルキレンを主骨格とし、一部にパーフルオロビニルエーテル側鎖の末端にスルホン酸基を有するフッ素系樹脂膜である。このようなスルホン化フッ素系樹脂膜としては、例えば、ナフィオン(Nafion(登録商標)膜(デュポン:Du Pont社、特許文献1参照。))、ダウ(Dow膜(ダウケミカル:Dow Chemical社、特許文献2参照。))、アシプレックス(Aciplex(登録商標)膜(旭化成工業(株)社、特許文献3参照。))、フレミオン(Flemion(登録商標)膜(旭硝子(株)社))等が知られている。
これらフッ素系樹脂膜は、燃料電池が使用される湿潤状態下において、130℃近辺にガラス転移温度(Tg)を有しているといわれ、この温度近辺より、いわゆるクリープ現象が起こり、その結果、膜中のプロトン伝導構造が変化し、安定的なプロトン伝導性能が発揮できず、さらには膜が膨潤形態に変成し、ゼリー状となって非常に破損しやすくなり、燃料電池の故障につながる。
以上のような理由により、現在使用されている安定的に長期使用可能な最高温度は通常80℃とされている。
燃料電池は、その原理において化学反応を用いているため、高温で作動させる方が、エネルギー効率が高くなる。すなわち、同じ出力を考えれば、高温で作動可能な装置の方が、より小型で軽量にすることができる。また、高温で作動させると、その排熱をも利用することができるため、いわゆるコジェネレーション(熱電併給)が可能となり、トータルエネルギー効率は飛躍的に向上する。従って、燃料電池の作動温度は、ある程度高い方がよいとされ、通常、100℃以上、特に120℃以上が好ましいとされている。
また、供給される水素が十分に精製されていない場合、アノード側に使用されている触媒が、燃料の不純物(例えば一酸化炭素)により活性を失う、いわゆる触媒被毒といわれる現象を引き起こす場合があり、PEFCの寿命を左右する大きな課題となっている。この触媒被毒に関しても、高温で燃料電池を作動させることができれば回避できることが知られており、この点からも燃料電池は、より高温で作動させることが好ましいといえる。さらに、より高温での作動が可能となると、触媒自体も従来使用されている白金などの貴金属の純品を使用する必要がなく、種々金属との合金等を使用することが可能となり、コストの面、あるいは資源の面からも非常に有利である。
一方、DMFC等の水素以外の燃料を直接用いる直接燃料型燃料電池では、現在、燃料から効率よくプロトンと電子を抽出する種々の検討が行われているが、十分な出力を得るためには、プロトン伝導性膜の燃料バリア性向上と、触媒が有効に働く高温での作動が技術的な課題であるとされている。
このように、PEFCは、種々の面からより高温で作動させることが好ましいとされているにもかかわらず、プロトン伝導性膜の耐熱性が前述の通り80℃までであるため、作動温度も80℃までに規制されているのが現状である。
ところで、燃料電池作動中に起こる反応は、発熱反応であり、作動させると、PEFC内の温度は自発的に上昇する。しかしながら、現在用いられている代表的なプロトン伝導性膜であるナフィオンは、80℃程度までの耐熱性しか有しないため、80℃以上にならないようにPEFCを冷却する必要がある。冷却は、通常水冷方式がとられ、PEFCのセパレータ部分にこのような冷却の工夫が入れられる。このような冷却手段をとると、PEFCが装置全体として大きく、重くなり、PEFCの本来の特徴である小型、軽量という特徴を十分に生かすことができない。特に、作動限界温度が80℃とすると、冷却手段として最も簡易な水冷方式では、効果的な冷却が困難である。100℃以上の作動が可能であれば、水の蒸発熱として効果的に冷却することができ、更に水を還流させることにより、冷却時に用いる水の量を劇的に低減できるため、装置の小型化、軽量化が達成できる。特に、車輌のエネルギー源として用いる場合には、80℃で温度制御する場合と、100℃以上で温度制御する場合とを比較すれば、ラジエータ、冷却水の容量が大きく低減できることから、100℃以上で作動可能なPEFC、すなわち100℃以上の耐熱性があるプロトン伝導性膜が強く望まれている。
以上のように、発電効率、コジェネレーション効率、コスト・資源の面、冷却効率など、種々の面でPEFCの高温作動、すなわちプロトン伝導性膜の高温耐熱性が望まれているにもかかわらず、十分なプロトン伝導性と耐熱性を併せ持つプロトン伝導性膜は存在していない。
このような背景のもと、PEFCの運転温度を上昇させるために、従来、種々の耐熱性のあるプロトン伝導性材料が検討され、提案されている。
代表的なものとしては、従来のフッ素系膜の代わりとなる耐熱性の芳香族系高分子材料があり、例えば、ポリベンズイミダゾール(特許文献4参照。)、ポリエーテルスルホン(特許文献5、6参照。)、ポリエーテルエーテルケトン(特許文献7参照。)等が挙げられる。
これらの芳香族系高分子材料は、高温時における構造変化が少ないという利点があるが、一方、芳香族に直接スルホン酸基、カルボン酸基などを導入したものが多く、この場合には、高温において顕著な脱スルホン、脱炭酸が起こる可能性が高く、高温作動膜としては好ましくない。
さらに、水が存在し、かつ高温である状態では、膜全体がフッ素系樹脂膜と同様に強く膨潤する傾向があり、この乾燥状態と湿潤状態での膜サイズの変化のため、膜−電極接合体の接合部に応力がかかり、膜と電極の接合部がはがれたり、膜が破れたりする可能性が高く、更に、膨潤による膜の強度低下で膜破損が起こる可能性があるという問題がある。さらに、芳香族系高分子材料は、乾燥状態ではいずれも剛直な高分子化合物であるため、膜−電極接合体形成の際、破損等の可能性が高いという問題がある。
これらの課題を解決するために、多孔性樹脂中にこれら電解質を導入する方法も検討されている(特許文献8参照。)。この場合には、膜強度、寸法安定性については大きく改善されるが、用いているプロトン伝導性材料については従来と同様のものであり、本質的な熱安定性の改善は十分ではない。
一方、プロトン伝導性材料としては、次のような無機材料も提案されている。例えば、南らは、加水分解性シリル化合物中に種々の酸を添加することにより、プロトン伝導性の無機材料を得ている(非特許文献1参照。)。しかしながら、これらの無機材料は、高温でも安定であるが、酸は架橋基と結合していないものが多く存在するために、長期に使用すると酸が散逸して伝導度が低下するという問題がある。
そして、このような問題を克服するために、例えばプロトン伝導性の無機材料を粉砕してエラストマーと混合する方法(特許文献9参照。)、スルホン酸基含有高分子と混合する方法(特許文献10参照。)等が試みられているが、これらの方法は、いずれもバインダーの高分子物質が無機架橋体とが混合されただけであるため、基本的な熱物性は高分子物質単独と大きな差がなく、高温領域では高分子物質の構造変化が起こり、安定的なプロトン伝導性を示さず、しかも多くの場合、プロトン伝導性も高くない。
以上のように、従来の固体高分子形燃料電池における問題点を改善するために、種々の電解質膜材料についての研究開発が行われてきたにもかかわらず、これまでのところ、高温(例えば100℃以上)で充分な耐久性を有し、機械的性能等の諸物性を満足したプロトン伝導性膜は、未だ存在しないのが現状であった。
他方、水素に代えてメタノールを燃料として用いるDMFCでは、メタノールが直接膜に接することになる。現在用いられているスルホン化フッ素系樹脂膜では、膜とメタノールの親和性が高く、膜がメタノールを吸収することにより極度に膨潤、場合によっては溶解し、燃料電池の故障の原因となる。
例えば、フッ素系樹脂膜の代表例であるナフィオン膜は、乾燥時には強く柔軟な膜であるが、湿潤時には大きく膨潤する。このように、乾燥時と湿潤時の膜の寸法が大きく異なることは、MEAの製造が困難であるばかりではなく、燃料電池作動時にも作動状態変化による燃料電池内部の温湿度変化に応じて常に膜が伸び縮みするため、膜の破断やMEAの破壊が生じる可能性がある。さらに、膨潤時には膜が弱くなるため、前述の寸法変化だけではなく、燃料電池内で差圧が発生した場合などに膜の破れなどが生じる危険性がある。
またこのフッ素系樹脂膜を湿潤状態で、例えば150℃程度の高温を長時間与え続けると、ゼリー状になって膜自体が崩壊するため、燃料電池用のプロトン伝導性膜として用いることはできなくなる。また、120℃程度の温度であっても、クリープ現象により膨潤状態へと変成が起こる。一旦変成すると、燃料電池の作動条件変化により膜が乾燥した場合、硬く脆い膜となり、膜の破断や割れ、さらにはMEAの破壊が起こる可能性がある。これは、芳香族分子構造を主鎖に有する膜においても同様に起こる。
また、メタノールは酸素極側に漏れ出し、燃料電池の出力が大きく低下する。これは芳香環含有の電解質膜でも共通した課題である。このように、DMFCにおいても、効率的かつ耐久性を有した膜が現在のところ存在していない。
現在、プロトン伝導性膜として標準的に用いられている前述したナフィオン膜は、主鎖骨格にポリテトラ(又はトリ)フルオロエチレンを有し、側鎖にスルホン酸基を有している。ポリテトラ(又はトリ)フルオロエチレンは非極性・撥水性であり、側鎖のスルホン酸基は極性・親水性であるため、自発的に相分離構造を形成し、結果としてスルホン酸基が高濃度に集積した構造を形成し、プロトン伝導経路として機能する(非特許文献2参照)。
一方、耐熱性膜として現在種々検討されている芳香族炭化水素系膜ではこのような相構造をとらない場合が多い(非特許文献3参照)。その結果、多量の酸を均一に膜中に存在させない限り高い伝導度は得られないが、多量の酸を導入すると膜の耐水性が低下し、高温では膜が水溶化したり、あるいは強く膨潤することがあった。
【特許文献1】英国特許第4,330,654号公報
【特許文献2】特開平4−366137号公報
【特許文献3】特開平6−342665号公報
【特許文献4】特開平9−110982号公報
【特許文献5】特開平10−21943号
【特許文献6】特開平10−45913号公報
【特許文献7】特開平9−87510号公報
【特許文献8】米国特許6,242,135号公報
【特許文献9】特開平8−249923号公報
【特許文献10】特開平10−69817号公報
【非特許文献1】ソリッドステートイオニクス(Solid State Ionics、第74巻、第105頁、1994
【非特許文献2】ジャーナルオブポリマーサイエンス ポリマーフィジクス(J.Polymer Science、Polymer Physics、第19巻、第1687頁、1981
【非特許文献3】膜(MEMBRANE)、第28巻、第14頁、2003
本発明は、前記実惰に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、従来の固体高分子形燃料電池における問題点を解決し、高温下においてもプロトン伝導性に優れ、耐熱性および寸法安定性の高いプロトン伝導性膜、その製造方法およびこれを用いた燃料電池を提供することにある。
さらにまた本発明の他の目的は、耐久性、及び燃料バリア性等に優れたプロトン伝導性膜、その製造方法及びこれを用いることで高温動作、あるいは例えばメタノールなどの直接燃料供給に対応しうる燃料電池を提供することにある。
【発明の開示】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ケイ素−酸素架橋構造を有する粒子を有し、かつ当該粒子の表面に酸基が導入され、更に当該粒子が連続体を形成したプロトン伝導性膜が、高いプロトン伝導性と耐熱性を両立することを発見し、これに着目してなされたものである。
すなわち、本発明のプロトン伝導性膜は、金属−酸素結合からなる架橋構造体からなる粒子を有するプロトン伝導性膜であって、前記架橋構造体が粒子の連続体を形成するとともに、前記粒子の表面には酸基が付与されて、前記粒子の間隙にプロトン伝導路が形成されていることを特徴とする。
このように、本発明のプロトン伝導性膜は、連続粒子状体を構成する骨格をもち、ひとつひとつが粒子状であることから極めて強固である。また、粒子が金属−酸素結合を含む架橋構造をもち、連続体を形成しているため、強い酸性条件下で高温にさらされる場合にも長時間の安定性を得ることができ、耐熱性、耐久性および寸法安定性を得ることができる。また本発明のプロトン伝導性膜は、架橋基の数を選択することにより、適切な架橋密度となるようにすることにより、湿潤状態であっても、非膨潤状態であっても膜の寸法に大きな寸法変化がないようにすることができる。従って、燃料電池作動時にも作動状態変化による燃料電池内部の温湿度変化に応じて膜が伸びたり縮んだりすることがないため、膜の破断や膜−電極接合体(以下、MEAと略称する場合がある)の破壊が生じたりすることがない。
また、本発明のプロトン伝導性膜の製造方法は、メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製する第1の工程と、それを成膜する第2の工程と、該成膜された混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、前記ケイ素−酸素架橋構造を含む粒子の連続体を構成する膜を形成する第3の工程と、更に前記膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入する第4の工程とを含む。
この方法では、特に第1の工程における架橋剤、この極性制御剤およびこれらの添加量を調整することにより、得られる膜の架橋度、粒子径、粒子の間隙などを制御することができ、これにより膜強度、可撓性の度合いなど含めて膜特性を良好に制御することが可能となる。
また、本発明の燃料電池は、上記のプロトン伝導性膜を正極(空気極)と負極(燃料極)との間に挟むことによって構成される。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のプロトン伝導性膜の拡大模式図である。
図2は、本発明のプロトン伝導性膜の断面構造を示す電子顕微鏡写真である。
図3は、本発明実施例のプロトン伝導性膜を用いて形成した燃料電池の電圧−電流曲線を示す図である。
なお、図中の符号1は粒子、2は間隙である
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明のプロトン伝導膜、その製造方法及びそれを用いた燃料電池について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施の形態の燃料電池は、正極(空気極)と負極(燃料極)と、これら2つの電極の間に介在せしめられたプロトン伝導性膜とを備え、このプロトン伝導性膜の構造に特徴を有するものである。このプロトン伝導性膜は、金属−酸素架橋構造体からなる粒子を有し、前記粒子の表面には酸基が付与され、かつ、前記粒子が連続体を構成したことを特徴とするもので、プロトンだけがこの膜を通過できるように構成されている。
このプロトン伝導性膜の構造について各項目毎に順次説明する。
1. 金属−酸素架橋構造
本発明のプロトン伝導性膜において、架橋構造は、重要な構成要素であり、膜の機械的強度、耐熱性、耐久性、寸法安定性等を担う役割を果たす。
本実施の形態のプロトン伝導性膜は、このように架橋構造をもつことにより、膜の機械的強度、耐熱性、耐久性、寸法安定性を得ることができる。即ち、十分な密度の架橋構造となるようにすると、湿潤状態であっても、乾燥状態であっても、大きな寸法変化が見られなくなり、強度変化も生じなくなる。
このように、本発明のプロトン伝導性膜は、乾燥時と湿潤時の膜の寸法に大きな変化がないため、MEAの製造が容易であるばかりではなく、燃料電池作動時にも作動状態変化による燃料電池内部の温湿度変化に応じて常に膜が伸び縮みすることがない。従って、膜の破断やMEAの破壊が生じることはない。さらに、膨潤により膜が弱くなることはないため、前述の寸法変化だけではなく、燃料電池内で差圧が発生した場合などに膜の破れなどが生じる危険性を回避することができる。
一方、従来のナフィオン膜などのフッ素系樹脂膜や、芳香族分子構造を主鎖に有する高分子材料からなるプロトン伝導性膜は、いずれも架橋構造を有していない。このため、高温ではクリープ現象などにより、膜の構造が大きく変化し、その結果、高温における燃料電池の動作が不安定となる。
また、金属−酸素結合、例えばケイ素−酸素結合、アルミニウム−酸素結合、チタン−酸素結合、ジルコニウム−酸素結合などからなる架橋構造は、燃料電池膜の様に強い酸性(プロトン存在)条件下で、高温高湿にさらされる場合でも比較的安定であり、燃料電池膜内部の架橋構造としては好適に用いることができる。特に、ケイ素−酸素結合は、容易に形成することができ、更に安価であるため、特に好適に用いることができる。
これに対し、このような架橋構造を形成するためには、例えばエポキシ樹脂、架橋性アクリル樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの有機高分子系材料を用いることもできるが、燃料電池膜の様に強い酸性条件下で、高温高湿にさらされる場合には長時間の安定性を得ることは困難である。
なお、本発明の架橋構造としては、主にケイ素−酸素結合が用いられるのが望ましいが、コストや製造方法の容易さを犠牲にしない範囲で、前述したケイ素以外の金属−酸素結合、或いは、リン−酸素結合、硼素−酸素結合などを併用していてもよい。ケイ素以外の金属−酸素結合等を併用する場合には、架橋構造中におけるケイ素−酸素結合の割合は特に限定されないが、ケイ素と他金属等の原子比率は、全金属原子100mol%とした場合、通常50mol%以上、好ましくは70mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上である。
2.粒子、粒子の連続体、及び粒子の間隙
本発明のプロトン伝導性膜は、次の要件を具備することにより、高プロトン伝導性を達成することができる。
1)酸基が高濃度に存在。
2)連続的に酸が存在するプロトン伝導経路の形成。
燃料電池動作時にはアノードで生じたプロトンが膜に供給され、一方、カソードでは膜中のプロトンが消費される。プロトン伝導性膜中にはあらかじめある程度のプロトンが存在し、アノードではプロトン供給によりプロトン濃度が高まり、カソードではプロトン消費によりプロトン濃度が低くなる。このようにして膜中に生じるプロトン濃度勾配が、アノードからカソードへのプロトン拡散の駆動力である。膜中にプロトンが十分に存在しない場合、カソード側のプロトンが不足し、安定した燃料電池作動が望めない。従って、膜中には十分なプロトン濃度が必要となる。
そこで、酸基が高濃度に存在するようにし、膜中のプロトン濃度を上昇せしめることにより、安定した燃料電池作動を達成する。
更に、プロトン濃度勾配による拡散移動は、十分に速い速度で起こらなければ、カソードのプロトン不足が起こるため、効率的な拡散が可能なように、プロトンの移動経路が確保されている必要がある。プロトンは、通常、水和物として移動するので、水との親和性が良く、また、プロトンが安定して存在出来る高濃度に酸が集積した、アノードからカソードに至る連続相すなわちプロトン伝導性膜の主表面から相対向する面に連通したプロトン伝導路を有することが好ましい。
即ち、高温でも安定に動作するプロトン伝導性膜は、酸基が高濃度に存在し、かつ酸基が連続的に配置したプロトン伝導経路を形成している必要がある。さらに、このプロトン伝導経路を形成する構造は、高温でも変形しない化学的構造を形成する必要がある。
本発明のプロトン伝導性膜は、金属−酸素架橋構造体からなる粒子を有し、当該粒子は表面に酸基を有し、かつ当該粒子が連続体を構成している。
ここで、粒子の連続体とは、当該粒子が互いに接触部分をもつように連続して存在する構造を指す。粒子の連続体を図1を参照して説明する。
図1は、本発明のプロトン伝導性膜の拡大模式図である。本発明のプロトン伝導性膜においては、図1に示すように、金属−酸素架橋構造体からなる粒子1が膜中に多数存在し、これが密集して連続的に存在している。このような構造をとると、幾何学的に完全に密な構造をとることは困難であり、粒子間に空隙(粒子の間隙)2が生じる。密集した粒子は、粒子間で結合を形成することが好ましく、この粒子間の結合は、粒子表面に存在する未反応金属−酸素架橋基が相互に反応した金属−酸素結合(代表的にはケイ素−酸素結合)、あるいは別途添加した架橋剤(後述)が粒子間の接着剤の役割をしても良い。このように金属−酸素架橋基が相互に反応した粒子間結合をもつことにより、膜の強度がさらに向上する。
さらに、粒子の表面には酸基が導入されているため、この粒子の間隙の壁面(即ち粒子と粒子の間隙の境界部)には酸基が多数存在する。即ち、この粒子の間隙は酸基が集積したプロトン伝導経路としての役割を果たす。
この粒子の間隙は、本発明のプロトン伝導性膜の主表面から相対向する面に連通していることが好ましい。即ち、プロトン伝導路が主表面から相対向する面に連通することによりプロトンがアノードからカソードに効率的に拡散・移動することが可能である。逆に、粒子の間隙がプロトン伝導性膜の主表面から相対向する面に連通していない場合には、プロトン伝導性能は顕著に低下する。
このような粒子の連続体構造は、電子顕微鏡写真等により直接観察することが可能である。一例として本発明のプロトン伝導性膜の電子顕微鏡写真を図2に示す。図2では粒子1が連続的な構造を形成し、その間隙2(黒い部分)が観察され、図1の模式図と同様であることが確認できる。
3.粒子の詳細
本発明のプロトン伝導性膜は、金属−酸素架橋構造体からなる粒子を有し、当該粒子は表面に酸基を有している。
なお、粒子の形態に関しては、球形である場合、若干強度が大きいという利点があるが、必ずしも真球に近い球形である必要はなく、扁平な粒状、柱状など非球形であっても良い。粒子は、明確な構造境界を有するものであれば特に制限はない。
金属(代表例:ケイ素−酸素結合からなる架橋構造体は、いわゆるガラス構造体であり、前述したように高温でも安定であるために、耐熱性を必要とするプロトン伝導性膜の基本構造として適している。
本発明のプロトン伝導性膜において、粒子の表面の酸基は、スルホン酸基であることが好ましい。スルホン酸は極めて強い酸であり、酸基としてスルホン酸を用いることにより、プロトンの解離性は極めて良好となる。すなわち、スルホン酸はプロトンの拡散抑制が極めて少なく、本発明に好ましく用いることが出来る。スルホン酸は酸化耐久性も良好であって、また、耐熱性においても180℃まで安定であって、本発明に好ましく用いることが出来る。図2に示した粒子の表面をXPSにより測定したところ、表面にスルホン酸の存在が確認された。
本発明のプロトン伝導性膜において、粒子状骨格構造となる粒子の連続体を構成する各粒子の平均粒径は、3〜200nmであることが好ましい。平均粒子径が200nmを超えるとプロトン伝導の主役を担う粒子の表面積が減少し、高い伝導度が得られなくなり、また、粒子の間隙が大きくなりすぎて脆くなり、更に燃料ガスの漏洩(いわゆるケミカルショート)の発生も危惧される。一方、3nm以下では均一層に近くなり、十分なプロトン伝導経路が確保できず、効率的なプロトン伝導が困難となる。従って粒子の好ましい平均粒径範囲は3〜200nmであり、より好ましくは5〜100nm、更に好ましくは10〜50nmである。平均粒径範囲を前述の範囲とすることにより、十分な強度を確保しつつも、プロトン伝導経路を十分に確保することができる。粒径は、図2に示した電子顕微鏡写真から直接求めることも出来るが、小角X線散乱などの手段によっても求めることが出来る。例えば、図2のプロトン伝導性膜においては、電子顕微鏡写真からの直接測定、及び小角X線散乱の結果から、平均粒径は約20nmであった。
また、粒径の分布については、均一な粒径の粒子の連続体であっても、不均一な粒径の粒子の連続体であってもよい。ここで、粒子の粒径分布が均一であると、粒径にもよるが幾何学的に間隙が出来やすく、高いイオン伝導度を発揮できる可能性がある。一方、粒径分布に幅があると、密なパッキングが可能であり、燃料ガスバリア性の向上や膜の強度向上に寄与する。従って使用状況に応じて粒径分布を選ぶようにするのが望ましい。粒子の粒径分布はイオン伝導度、燃料ガスバリア性、膜強度を勘案して適宜決定される。粒径制御は、用いる原料の構造・分子量、溶媒種類・濃度、触媒種類・量、反応温度などの条件調整により可能である。粒径制御の詳細な方法については、後述の本発明のプロトン伝導性膜の製造方法にて示す。粒径分布は前述の小角X線散乱等から求めることが可能である。
前述のように、本発明のプロトン伝導性膜に含まれる粒子の表面には酸基、好ましくはスルホン酸基が存在する。スルホン酸基は、スルホン酸含有化合物を粒子の間隙に注入(ドープ)された状態であっても良いが、この場合には、長期にわたって燃料電池用電解質膜として使用した場合、プロトン伝導性膜から散逸(いわゆるドープアウト)する可能性がある。
これに対し、スルホン酸基を粒子表面に共有結合にて固定化すると、安定した性能を発揮させることが可能となる。
スルホン酸基が粒子表面に固定化された構造には特に制限はないが、好ましい構造として、次式(1)で示される酸基含有構造(A)があげられる。

(式中、Xは架橋に関与する−O−結合、又はOH基を表し、Rは炭素数20以下の炭化水素基を表し、RはCH、C、C、またはCのいずれかの基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1のとき、Rは異なる置換基の混合体でもよい。)
この酸基含有構造(A)は粒子が有するケイ素−酸素架橋と、更にケイ素−酸素結合を通じて直接共有結合したものである。このように、粒子状構造体中の架橋構造と酸基が直接結合していることから、安定性、耐熱性をえることができ、好ましく用いることが出来る構造である。
粒子は、酸含有構造(A)以外のケイ素−酸素架橋体(例えば後述する架橋剤)を有していても良いが、この場合、酸含有構造(A)中のケイ素原子は、粒子中のケイ素原子全体の3%以上であることが好ましい。3%以下であると表面に存在する酸基の量が少なくなり、十分な伝導度を発現することが出来ない。一方、上限は特になく、出来るだけ多量の酸基を導入することが好ましいが、一方、酸含有構造(A)を多くするとプロトン伝導性膜が脆くなる傾向があるため、適度な含量とすることが望ましく、一例としては80%以下である。
酸含有構造(A)は化学式(1)で表される構造であるが、式(1)中、Rの構造としては、式(2)で表される飽和アルキレン基であることが好ましい。

(式中、nは1〜20の整数である)
ここで、Rはアルキレン基のかわりに、芳香環や種々ヘテロ原子を有する分子鎖であっても良いが、この場合には耐熱性、耐酸性、耐酸化性などを有する構造である必要がある。一方、アルキレン基の場合には、耐熱性、耐酸性、耐酸化性が良好であり、特に分岐を有さない式(2)の構造体は特に好ましく用いることが出来る。ここで、アルキレン鎖の長さnは、特に制限はないが、長すぎると耐久性が低下するおそれがあり、nは1〜20の範囲が好ましく、特にnが3のものは入手も容易であり好ましく用いることが出来る。
また、本発明の粒子としては、酸含有構造(A)だけではなく、種々の架橋剤を用いることが出来る。架橋剤を添加することにより、より強固な架橋が形成され、高温においても更に安定な粒子となり、ひいてはプロトン伝導性膜としての安定性も向上する。
粒子を形成する架橋剤としては、例えば、次式(3)で表される架橋構造(B)が好ましく用いることが出来る。

(式中、Rは炭素原子20以下のアルキル基を表し、Xは架橋に関与する−O−結合、又はOH基を表し、nは2〜4の整数である。)
ここで、架橋構造(B)は、基本的なシリカ架橋構造であり、耐熱性、耐酸化性に対して非常に安定である。また、原料入手も容易であり、安価なプロトン伝導性膜を実現することが出来る。
ここで、架橋基の数nが4である架橋構造(B)は、強固な架橋構造を形成して高度の耐久性をもつと同時に、酸含有構造(A)を安定に固定化することができるため、好ましく用いることが出来る。また、nが2又は3のものは粒子状構造体に可撓性を付与し、その結果、プロトン伝導性膜の可撓性をも向上することが出来る。架橋基の数nの異なった(B)を、それぞれ必要に応じて混在した状態で用いても良い。
さらに、粒子状構造体を形成する架橋剤として、次式(4)で表される橋かけ架橋構造(C)を用いても良い。

(式中、Xは架橋に関与する−O−結合、又はOH基を表し、Rは炭素数1〜30の炭素原子含有分子鎖基を表し、RはCH、C、C、C、又はCから選ばれたいずれかの基であり、nは0、1又は2のいずれかの整数である。)
この橋かけ状架橋構造(C)は2つの架橋性シリル基を分子鎖Rで橋かけした構造を有する。このような橋かけ状架橋構造(C)は、極めて架橋反応性が高く、強固な架橋構造を形成することが出来、粒子の安定性向上に寄与する。また、橋かけ構造部の分子鎖種類、分子鎖長、あるいは架橋基Xの数(3−n)などにより可撓性などの物性調整も可能であり、好ましく用いることが出来る。
たとえば、式(4)で表される橋かけ状架橋構造(C)の架橋基の数(3−n)が、1又は2であって、Rがメチル基である場合、膜全体が可撓性を有し、取り扱いの容易な膜とすることが出来る。
さらに、橋かけ状架橋構造(C)を用いる場合、式(4)中のRが次式(2)で表される構造を有することが好ましい。

(式中、nは1〜30の整数を表す)
がアルキレン基の場合には、耐熱性、耐酸性、耐酸化性が良好であり、更に、特に分岐を有さない式(2)の構造体が特に好ましく用いることが出来る。
ここで、Rはアルキレン鎖の長さnについては、特に制限はないが、長すぎると耐久性が低下するおそれがあるため、nは1〜30の範囲が好ましく、特にnが8のものは入手も容易であり好ましく用いることが出来る。
ここで、アルキレン基のかわりに、芳香環や種々ヘテロ原子を有する分子鎖であっても良いが、この場合には耐熱性、耐酸性、耐酸化性などを有する構造である必要がある。
またさらに、上述した組成物以外にも、例えばチタン酸化物、ジルコニウム酸化物、アルミニウム酸化物などの金属酸化物を含んでいても良い。
4.粒子の間隙について
前述したように、本発明のプロトン伝導性膜は、ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子を有し、当該粒子は表面に酸基を有し、かつ当該粒子が連続体を構成している。粒子の連続体は、前述のように幾何学的に粒子の間隙を生じる。特に、この粒子の間隙が、プロトン伝導性膜の主表面から相対向する面に連通している場合、粒子の間隙はプロトンがアノードからカソードに効率的に拡散・移動するプロトン伝導経路となる。
粒子の間隙の間隙幅は特に限定されないが、極端に狭いとプロトン伝導が阻害され、また、広すぎると膜が脆くなるだけでなく、燃料ガスがリークして(いわゆるケミカルショート)発電効率が低下する。具体的な平均間隙幅としては、例えば、0.5nm〜500nmが好ましく、1nm〜200nmがより好ましく、更に好ましくは1〜10nmである。
この粒子の間隙の幅を直接観察することは困難であるが、代替評価として水銀圧入法やBET法による比表面積測定より求められる細孔径分布により見積もることが出来る。例えば、図2に示したプロトン伝導性膜を水銀圧入法(島津製作所製、オートポアIV9500)にて細孔径分布(容量分布)を見積もったところ、約10nmであった。
ところで、前述のように、粒子の間隙の壁面(即ち粒子表面)には酸基が導入されているため、粒子の間隙は親水性となっており、水は間隙に効率的に導入することが出来、間隙を水によりほぼ置換することが出来る。プロトン伝導の媒体である水が粒子の間隙に導入可能であることは、プロトン伝導性膜にとっては必須である。通常、燃料電池動作時には、燃料ガスの加湿水、又はカソードの反応で生じた水等により、粒子の間隙の一部あるいは全部が充填された状態となる。プロトン(水素イオン)は、これらの複数の水分子で水和された状態(ヒドロニウムイオン)の形で存在し、このヒドロニウムイオンの拡散移動によりプロトンが伝達される。すなわち、粒子の間隙は、乾燥時には周辺の大気が充満しているが、燃料電池動作時には燃料ガスの加湿水、あるいはカソードの反応で生じた水が満たされていることが好ましい。
粒子の間隙の容積は、同様にして水銀圧入法やBET法により見積もることも出来るが、前記の粒子の間隙を水で置換することが可能であることを利用したより簡便な方法として、含水量測定がある。即ち、プロトン伝導性膜を水に浸せきし、表面の水分を取り除いた後の湿潤質量と、プロトン伝導性膜を乾燥(例えば減圧で100℃加熱)した乾燥質量を測定し、(湿潤質量−乾燥質量)/(乾燥質量)の式で算出できる含水率は間隙の体積分率と相関のある数値となる。いわば、空孔率に相当するものである。
本発明のプロトン伝導性膜においては、上記含水率が3質量%以上であることが好ましい。これ未満の含水率では粒子の間隙、即ちプロトン伝導経路の容積が不十分であり、高い伝導度を得ることが出来ない。一方、含水率が50質量%を超える場合には、燃料ガスが通りやすくなり、ケミカルショートを起こすと同時に膜が脆く弱くなる傾向があるため、50質量%以下であることが好ましい。このように、含水率は3〜50質量%であることが好ましいが、更に5〜30質量%がより好ましい。
また更に、この粒子の間隙の容量(体積)は、粒子の間隙が水で満たされている状態と、乾燥して空気が存在する状態との間での体積差が、3体積%以下であることが好ましい。乾燥時と含水時で体積差(含水による膨潤)があると、膜−電極接合時に含水率調整等が必要となって、接合プロセスが煩雑となるばかりではなく、燃料電池動作時の膜の含水率変動により膜−電極接合体に大きなストレスを生じ、電極からの膜剥離や触媒脱落の原因となる。
この体積差は、乾燥状態で測定した乾燥容量と、水を満たした場合の含水率の差で求めることも出来るが、簡易には、乾燥状態と湿潤状態の膜の膨潤率で求めることが可能である。この場合、粒子は高密度架橋構造を有し、含水しても膨潤しないため、膨潤はすべて粒子の間隙の体積変動に起因するものとして良い。本発明のプロトン伝導性膜では、通常、含水による膨潤率は3%以下であり、燃料電池動作時にも大きな体積変化が無く、極めて良好に用いることが出来る。
更に、粒子の間隙に、親水性の材料や電解質材料を充填しても良い。ただし、一般的に粒子の間隙にこれらの材料を充填するとプロトン伝導性が低下する。しかしながら、例えば燃料ガス透過によるケミカルショートを防止する場合や、メタノールなどの直接液体燃料を燃料電池に導入する場合の燃料浸透防止には効果があるため、必要に応じてあらかじめこれら材料の充填を行うようにしても良い。
5.粒子状構造体を有するプロトン伝導性膜の製造方法
次に本実施の形態のプロトン伝導性膜の製造方法について説明する。
ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子であって、当該粒子の表面に酸基が導入され、かつ当該粒子が連続体を構成しているプロトン伝導性膜の製造方法は、特に限定されることはないが、例えば以下のような方法で製造することが出来る。
即ち、本発明のプロトン伝導性膜は、メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製する第1の工程と、それを成膜する第2の工程と、該成膜された混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、前記ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子の連続体を構成する膜を形成する第3の工程と、更に前記膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入する第4の工程とより製造することが出来る。
以下、各工程について詳細に説明する。
5.1 第1の工程
第1の工程では、メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製する。
5.1.1 メルカプト基含有化合物(D)
メルカプト基含有化合物(D)はメルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基、及び/又はシラノール基を有していれば特に制限はない。
このメルカプト基含有化合物(D)として、以下に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
メルカプト基含有化合物(D)として、例えば、次式(6)で示されるメルカプト基含有化合物(G)があげられる。

(式中、RはH、CH、C、C、又はCのいずれかの基を表し、Rは炭素数20以下の炭化水素基を表し、RはCH、C、C、又はCのいずれかの基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1のとき、Rは異なる置換基の混合体でもよい。)
ここで、Rは、炭素数20以下の炭化水素基であれば特に制限はないが、芳香族環や分岐を含まないメチレン鎖(−CH−の連鎖)が酸や酸化に対して安定であり好ましく用いることが出来る。特に、炭素数が3(即ち、Rが−CHCHCH−)のものは安価かつ入手が容易で好ましく用いることが出来る。Rに分岐構造や芳香族環が含まれていても、燃料電池作動条件下で安定であれば特に問題はない。
また、RがHの場合には、ポットライフが短くなるため、注意して扱う必要がある。Rがアルキル基の場合には、ポットライフも長く、反応制御も容易であり、好適に用いることが出来る。とくに、RはCH、Cのものが安価かつ入手も容易であり、好適に用いることが出来る。
アルキル基(R)は式(6)中にあげられた各置換基を用いることが出来るが、RがCHのものが安価かつ入手容易であり、好ましく用いることが出来る。
架橋基(OR)とアルキル基(R)の比率は、架橋基が多い程粒子に安定して固定化可能であるが、一方、アルキル基を導入することにより、プロトン伝導性膜の可撓性が付与できる。他の架橋剤との組み合わせも含め、物性と安定性のバランスの上で、架橋基とアルキル基の比率は適宜選択可能であるが、好ましくは架橋基の数は2、又は3であり、架橋基が3あるものがより安定して固定化できるため、より好ましい。
この式(6)で示される原料としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリブトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルトリブトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジブトキシシラン、3−メルカプトプロピルエチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルブチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルフェニルジメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン等が例示されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
この中でも3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)社製)が大量且つ安価に入手することが出来、好ましく用いることが出来る。
また、メルカプト基含有化合物(D)の例として、次式(7)で表されるメルカプト基含有縮合体(H)があげられる。

(式中、RはH、CH、C、C、又はCのいずれかの基を表し、Rは炭素数20以下の炭化水素基を表し、RはOH、OCH、OC、OC、OC、CH、C、C、C、Cのいずれかの基を表し、mは1〜100の整数を表す。また、Rが−Si、またはRがO−Si結合となった環状構造、分岐構造となっても良い)
これは、メルカプト基含有化合物(G)の縮合体であり、例えばメルカプト基含有化合物(G)を縮合することにより得ることが出来る。このような縮合体を用いると、酸の連続性が高まり、より高い伝導度が得られると同時に、1分子内の架橋基が増加することにより粒子との結合安定性も向上し、より高い耐久性能を実現することが出来る。
、R、及びRはメルカプト基含有化合物(G)に準ずるが、このうち、Rが−Si、またはRがO−Si結合となった環状構造、分岐構造を含んでいても良い。
また、重合度(m+1)は2以下であると縮合による酸の連続化、架橋基増加等の効果が見られず、100を超えるとゲル化等が起こり、原料として用いることが困難となる。
さらに、メルカプト基含有化合物(D)の例として、次式(8)で表されるメルカプト基含有縮合体(I)があげられる。

(式中、RはH、CH、C、C、又はCのいずれかの基を表し、Rは炭素数20以下の炭化水素基を表し、R、R、Rはそれぞれ独立にOH、OCH、OC、OC、OC、CH、C、C、C、Cのいずれかの基を表し、n、mはそれぞれ独立に1〜100の整数を表す。また、Rが−Si結合、またはR、R、Rが−O−Si結合となった環状構造、分岐構造となっても良い)
これは、メルカプト基含有化合物(G)と、後に詳述する架橋剤(J)の共縮合物である。架橋剤(J)の実例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。このうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランは汎用品であり、安価であり、大量かつ容易に入手可能であるため、特に好ましく用いることができる。又更に、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ウンデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等のメトキシ体、及びこれらのエトキシ体、イソプロポキシ体、ブトキシ体等との共重合体であっても良い。本発明はこれに限定されるものではなく、式(8)で示される化合物であれば限定はない。
、R、及びRはメルカプト基含有化合物(G)に準じ、R、Rは架橋剤(J)の基本構造に準ずるが、このうち、Rが分子内のSiと結合して環状構造、またはR、R、Rが−O−Si結合となった環状構造、分岐構造を含んでいても良い。
また、重合度(m+n)は2未満であると縮合による酸の連続化、架橋基増加等の効果が見られず、200を超えるとゲル化等が起こり、原料として用いることが困難となる。メルカプト基含有縮合体(I)は、メルカプト基含有縮合体(H)にくらべて置換基の調整範囲が大であるため、より高重合度までゲル化せずに原料化できる。
このメルカプト基含有縮合体(I)は、構造設計上自由度が高く、架橋性の高い構造を導入して、粒子との固定化をより強固とし、安定したプロトン伝導性を発揮させたり、架橋度をむしろ低下させて膜に可撓性を付与したり、種々の物性調整が可能となる。
これらのメルカプト基含有縮合体(H)、(I)は公知の方法で合成することが出来、これらの方法は、例えば、特開平9−40911号公報、特開平8−134219号公報、特開2002−30149号公報、ジャーナルオブポリマーサイエンス パートA:ポリマーケミストリ(Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry、第33巻、第751−754頁、1995)、ジャーナルオブポリマーサイエンス パートA:ポリマーケミストリ(Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry、第37巻、第1017−1026頁、1999)などに開示されている。
これらメルカプト基含有化合物(D)は、あらかじめ後述の第4の工程で用いる酸化剤によりあらかじめ酸化してから用いても良い。この場合には、第4の工程を省略することが可能となる。
さらに、第一の工程において、更に、次式(10)で表される架橋剤(J)を加えても良い。

(式中、R3は炭素原子20以下のアルキル基を表し、R10はOH、OCH、OC、OC、OC、OCOCH、またはClを表し、nは2〜4の整数である。)
ここで、架橋剤(J)は、Si−O結合を形成する構造体であれば特に制限はなく、(10)式に表される構造であれば用いることが出来る。架橋剤(J)の実例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。このうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランは汎用品であり、安価であり、大量かつ容易に入手可能であるため、特に好ましく用いることができる。又更に、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ウンデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等のメトキシ体、及びこれらのエトキシ体、イソプロポキシ体、ブトキシ体等であっても良い。
また、これと類似した役割を担う材料として、チタン、ジルコニウムを含む加水分解性化合物を用いてもよい。具体例としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンn−プロポキシド、チタンi−プロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンi−ブトキシド、チタンt−ブトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムi−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムi−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、及びそれらのアセチルアセトン、アセト酢酸エステル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン錯体等が挙げられる
この架橋剤(J)を用いると、粒子の架橋密度や粒子間結合強度を調整することが可能であり、強度、可撓性を適宜制御することが出来る。
又更に、第一の工程において、更に、次式(11)で表される橋かけ架橋剤(K)を加えても良い。

(式中、R10はOH、OCH、OC、OC、OC、OCOCH、またはClを表し、Rは炭素数1〜30の炭素原子含有分子鎖基を表し、RはCH、C、C、C、又はCから選ばれたいずれかの基であり、nは0、1又は2のいずれかの整数である。)
ここで、式(11)中のRは、炭素数1〜30の炭素原子含有分子鎖基を表すが、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
式(11)の構造を有する架橋剤(K)の具体例としては、例えば、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリエトキシシリル)ノナンが該当するが、これらはゲレスト(Gelest)社より市販されている。これ以外の鎖長のもの、あるいはこれ以外の加水分解性基を有する有機無機複合架橋剤(F)も、両末端が不飽和結合となっている直鎖状炭化水素、例えば、1,3−ブタジエンや1,9−デカジエン、1,12−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,21−ドコサジエンなどに白金錯体触媒を用いて各種アルコキシシランとヒドロシリル化反応を行うことにより、対応する架橋性化合物である化合物を得ることができる。
この架橋剤(K)を用いると、粒子状構造体の架橋密度を調整することが可能であり、強度、可撓性を適宜制御することが出来る。
5.1.2 極性制御剤(E)
極性制御剤(E)は、粒子を形成するための構造制御剤であって、本発明において好適に用いることが出来る。
本発明のプロトン伝導性膜においては、物質(水素イオンあるいはその水和体)が拡散、移動できることが必須であるため、膜の内部にイオンを輸送するプロトン伝導経路を形成することが好ましく、粒子の間隙がその役割を担うことは、前述した。
本発明のプロトン伝導性膜においては、この粒子及び粒子の間隙の効率的な形成のため、極性制御剤(E)を用いる。
通常、テトラエトキシシランのような無機材料などを同様にして加水分解・縮合し、十分な加熱(例えば800℃)を行えば、ガラス状の緻密な架橋体が得られ、イオンチャネルに相当する微細孔は形成されない。このようなアルコキシシランの加水分解、縮合、ゲル化過程(sol−gel反応)は詳細に検討されており、例えばブリンカー(Brinker)らのゾルゲルサイエンス(SOL−GEL SCIENCE)(Academic press,Inc.1990)、作花の「ゾル−ゲル法の科学」(アグネ承風社、1988)等にまとめられている。sol−gel反応では粒子成長、粒子結合、緻密化が順に起こる。典型的なアルコキシシラン材料についてはそれらの詳細な解析がなされ、反応条件等も明らかになっている。
本発明のプロトン伝導性膜においては、置換基を有するアルコキシシラン材料を原料とし、更に、粒子の粒径制御、粒子間の結合制御、それに伴う粒子の間隙の制御が必要であり、これを達成するために種々の検討を行った結果、極性制御剤(E)を加えることにより、粒子の連続体形成とそれに伴う粒子の間隙制御が可能であることを見いだした。
極性制御剤(E)は有機液体であって、水溶性であることが望ましい。水溶性であると、第1の工程で溶媒を用いる場合(後述)、メルカプト基含有化合物(D)の溶媒への溶解性を調整することが可能であり、適度な粒子の粒径、及び粒子の間隙制御が可能となる。又更に、作製後の膜から水洗にて容易に抽出できるという利点もある。
また、極性制御剤(E)は、沸点100℃以上であり、融点が25℃以上であることが好ましい。
極性制御剤(E)の沸点が低すぎると、膜を形成する際に行う縮合反応時(主として加熱条件にて行う)に揮発してしまい、粒子の粒径制御、及び粒子の間隙制御が不十分になって十分な伝導度が確保できない。従って、極性制御剤(E)の沸点としては、最低でも第1の工程において溶媒が用いられる場合には溶媒の沸点以上であることが好ましく、特に沸点100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上である。
また、極性制御剤(E)の分子間相互作用が大きすぎる場合には極性制御剤(E)が固化して粒子の間隙以外に大きなドメインを形成する可能性があり、この場合、膜の強度が低下したり、膜の燃料ガスバリア性が低下する可能性がある。極性制御剤(E)の分子間相互作用の大きさは、融点とほぼ相関があり、融点を指標とすることが出来る。本発明で用いる極性制御剤(E)の融点は、25℃以下であることが好ましい。融点25℃以下であると適度な分子間相互作用が期待でき、好ましく用いることが出来、より好ましくは15℃以下である。
このような有機物としては、水酸基、エーテル基、アミド基、エステル基などの極性置換基を有しているもの、カルボン酸基、スルホン酸基等の酸基又はその塩を有しているもの、アミン等の塩基基又はその塩を有しているものなどが挙げられる。このうち、酸、塩基及びその塩類は、加水分解・縮合の際に触媒を用いる場合には、これら触媒との相互作用に気を付ける必要があるため、より好ましくは非イオン性のものが好ましく用いることが出来る。
具体的には、グリセリン及びその誘導体、エチレングリコール及びその誘導体、エチレングリコール重合体(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、各種分子量のポリエチレングリコールなど)、グルコース、フルクトース、マンニット、ソルビット、スクロースなどの糖類、ペンタエリスリトールなどの多価水酸基化合物、ポリオキシアルキレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸などの水溶性樹脂、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の炭酸エステル類、ジメチルスルホキシド等のアルキル硫黄酸化物、ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類、等があげられるが本発明はこれに限定されるものではない。
また、これらのエチレングリコール類の末端OHの一部又は全部が、アルキルエーテルとなったエチレングリコール(モノ/ジ)アルキルエーテル類も好ましく用いることができる。この例としては、前記エチレングリコール類のモノメチルエーテル、ジメチルエーテル、モノエチルエーテル、ジエチルエーテル、モノプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジブチルエーテル、モノペンチルエーテル、ジペンチルエーテル、モノジシクロペンテニルエーテル、モノグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、モノフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、モノビニルエーテルジビニルエーテルがあげられる。また、エチレングリコール類の末端OHの一部又は全部がエステルとなっていても良い。この例としては、前記エチレングリコール類のモノアセテート、ジアセテートがあげられる。
また、酸及びその塩を用いても良い場合には、酢酸、プロピオン酸、ドデシル硫酸、ドデシルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の酸及びその塩類があげられ、塩基及びその塩を用いても良い場合には塩化トリメチルベンジルアンモニウムなどのアンモニウム塩類、N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン類及びその塩類があげられる。更に、グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸類などの両性イオン化合物も使用することが出来る。
また、極性制御剤(E)として無機塩等も用いることは可能ではあるが、一般的に無機塩は凝集力が強く(融点が高く)、メルカプト基含有化合物(D)を含む混合物に添加しても分子レベルの微細分散は困難で、大きな結晶やアモルファス固体となり、膜物理物性やガスバリア性に不利な大きな凝集体を形成する可能性が高い。
また、本発明においては、その他のイオン界面活性剤も好適に用いることが出来、更に触媒との相互作用を勘案してアニオン、カチオン、両性の各界面活性剤なども用いることが出来る。
この中でも、液状の水溶性有機物であり、メルカプト基含有化合物(D)に対して適度な相溶性(あるいは適当な非相溶性)を有するポリオキシアルキレンが好ましく、その中でも特にエチレングリコールの重合体が好ましく用いることができる。このポリオキシアルキレン類は以下のような一般式で示すことが出来る。

このようなエチレングリコールの重合体は、2量体(ジエチレングリコール)から各種分子量のポリエチレングリコールまで幅広く市販されており、相溶性、粘度、分子サイズなど、適宜選択可能であり、好ましく用いることができる。特に本発明においては、分子量が約100のジエチレングリコールから平均分子量600のポリエチレングリコールがより好ましく用いることが出来、更に、分子量が200前後のテトラエチレングリコールあるいはポリエチレングリコールが特に好ましく用いることができる。
粒子、及び粒子の間隙のサイズは、メルカプト基含有化合物(D)との相溶性と、溶媒や添加剤を含めた膜形成原料系全体との相溶性バランス、及び、極性制御剤(E)の分子量、及び配合量により決定される。本発明の場合、極性制御剤(E)の平均分子量と粒子の間隙の径に相関が見られ、分子量600を超えるポリエチレングリコールを用いた場合には大きな径となってガスバリア性や物性が低下したり、膜が脆くなったりし、一方、分子量100未満であると、小さな径となって、緻密な膜となりすぎて、十分な粒子の間隙が形成されない傾向がある。
なお、極性制御剤(E)の添加量は用いる極性制御剤(E)の種類や分子量、あるいは膜の構造に依存するために一概に言うことは難しいが、一般的にはメルカプト基含有化合物(D)100重量部に対して3〜150重量部添加する。3重量部未満では、粒子径、及び粒子の間隙制御の効果がほとんど認められず、150重量部を超えると粒子の間隙が大きくなりすぎ、膜が脆くなったり、ガス透過が顕著になる可能性が高い。
以上のように、本発明のプロトン伝導性膜は、極性制御剤(E)を用いることにより、粒子の間隙、即ちプロトン伝導経路の構造をオーダーメイドで設計、形成することができるため、燃料ガス透過性や膜強度などの各種膜物性とバランスの良い膜を形成することが出来る。これが従来のスルホン酸化フッ素樹脂膜のように、分子構造により一義的にプロトン伝導経路が決定されるものとは大きく異なる点である。
また、このように制御されたプロトン伝導経路は、高温・高湿環境下においても変形しないため、燃料電池を高温で作動させても安定した運転が可能となる。
5.1.3 混合方法
今まで述べてきたように、メルカプト基含有化合物(D)、極性制御剤(E)、さらに任意成分である架橋剤(J)、(K)を適宜調整して用いることにより、プロトン伝導性、耐熱性、耐久性、膜強度など、種々の物性を調整することが可能である。
ここで、任意成分である架橋剤(J)、(K)を加える場合、その添加量は各材料の配合、プロセスにより変動するため一概に言えないが、代表的な値としては、メルカプト基含有化合物(D)100重量部に対して(J)、(K)の合計添加量は900重量部以下である。
これを超える配合量の架橋財を添加すると、粒子の表面酸基濃度が低下し、プロトン伝導性が低下するおそれがある。
これらの混合物を調製する場合には、溶媒を用いてもよい。用いる溶媒は、それぞれの材料が均一に混合可能であれば良く、特に制限はない。一般的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒などが好適に用いることができる。
溶媒の比率については特に制限はないが、通常、固形分濃度が90〜10重量%程度の濃度が好ましく用いることができる。
更に、後述するが、触媒(F)をこの工程で同時に混合してもよい。
また、加水分解に必要な水を投入してもよい。水は、通常、加水分解性シリル基に対して等mol量加えるが、反応を加速するために多く加えても良く、また、反応を抑制するために少量加えてもよい。
混合には、撹拌、振動など公知の方法を用いて良く、十分な混合が可能であれば特に限定されない。また、必要に応じて加熱や加圧、脱泡、脱気等を行ってもよい。
さらに、第1の工程において、本発明の目的を損なわない範囲内で、補強材、柔軟化剤、分散剤、反応促進剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、無機又は有機充填剤などの他の任意成分を添加することができる。
5.2 第2の工程
本発明のプロトン伝導性膜の製造方法において、第2の工程は、第1の工程で得た混合物を膜状に成形(成膜)する工程である。
第1の工程で得られた混合物を膜状に成形するためには、キャスト、コート、注型など、公知の方法を用いることができる。膜状に成形する方法としては、均一な膜を得ることができる方法であれば特に制限はない。膜の厚みは特に制限されないが、10μmから1mmの間の任意の厚みとなるように形成することができる。燃料電池用のプロトン伝導性膜は、プロトン伝導性、燃料バリア性、膜の機械的強度から膜厚は適宜決定され、通常、膜厚が20〜300μmのものが好ましく用いることができるため、本発明のプロトン伝導性膜の膜厚もこれに準じて製造する。
また、この成膜工程を行う際に、繊維、マット、フィブリルなどの支持体、補強材を添加してもよいし、また、これら支持体に含浸させてもよい。これら支持体、補強材は耐熱性と耐酸性を勘案してガラス材料、シリコーン樹脂材料、フッ素樹脂材料、環状ポリオレフィン材料、超高分子量ポリオレフィン材料等から適宜選択し、用いることができる。含浸する方法としては、ディップ法、ポッティング法、ロールプレス法、真空プレス法など、限定されることなく、公知の方法を用いることが出来、また、加熱、加圧等を行ってもよい。
5.3 第3の工程
本発明のプロトン伝導性膜の製造方法において、第3の工程は、第2の工程で成膜した膜状物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子の連続体を有する膜を形成する工程である。
本発明におけるプロトン伝導性膜は、アルコキシシリル基等の加水分解、縮合により、架橋構造を形成し、高温においても安定的にプロトン伝導性を発揮し、形状変化等も少ないことを特徴とする。このようなアルコキシシリル基等の加水分解、縮合によるSi−O−Si結合の生成はゾルゲル(sol−gel)反応としてよく知られている。
sol−gel反応においては、反応加速及び制御のために、触媒が用いられるのが普通である。触媒は、通常、酸又は塩基が用いられる。
5.3.1 触媒(F)
本発明のプロトン伝導性膜の製造方法において用いる触媒(F)は、酸であっても塩基であってもよい。
酸触媒を用いる場合には、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸などのブレンステッド酸を用いる。酸の種類、濃度等は特に限定されず、入手可能な範囲のものであればよい。この中でも塩酸は反応後、酸の残留等が比較的少なく、好適に用いることができる。塩酸を用いた場合、特に濃度等には制限はないが、通常0.01〜12Nのものが用いられる。
一般的に、酸を用いた場合には加水分解と縮合が競争することにより、分岐の少ない直鎖状の架橋構造となることが知られている。
一方、塩基を触媒とした場合には、加水分解が一気に起こるために分岐の多い樹状構造となることが知られている。本発明においては、膜物性を勘案していずれの方法もとることが可能であるが、粒子、及びその連続体の形成という本発明の特徴を際だたせるためには、塩基触媒が好ましく用いることができる。
塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の水溶液を用いることができる。この中でも、残留塩が生じないアンモニアは好適に用いることが出来る。更に、メルカプト基含有化合物(D)との相溶性等を勘案して、有機アミン類も好ましく用いることができる。
有機アミン類は、特に制限無く用いることができるが、通常、沸点が50℃以上のものが好ましく用いられ、この範囲の入手容易な有機アミン類の具体例としては、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、イソブチルアミン、ジエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、ピペラジン又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられ、いずれも好適に用いることができる。
また、縮合触媒としてフッ化カリウム、フッ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムフロリド、テトラエチルアンモニウムフロリドなどのフッ化物を用いても良い。
触媒の添加量は、任意に設定することが可能で、反応速度、膜原料との相溶性などを勘案して適宜決定する。
触媒を導入する工程は、第1の工程から第3の工程のいずれのタイミングでもよい。最も簡便なのは第1の工程で混合物を調製する際に導入する方法であるが、この場合には第2の工程である成膜におけるポットライフやセット時間を勘案する必要がある。
5.3.1 縮合反応
縮合反応は室温でも可能であるが、反応時間を短縮し、より効率的な硬化を行うためには加熱を行う方がよい。加熱は公知の方法で良く、オーブンによる加熱やオートクレーブによる加圧加熱、遠赤外線加熱、電磁誘導加熱、マイクロ波加熱などが使用できる。加熱は室温から300℃までの任意の温度で行うことが出来、100〜250℃で行うことが好ましい。この際、減圧下、窒素下、あるいはアルゴン下等、不活性ガス等の元で加熱しても良い。
また、加熱は室温である程度時間をかけて硬化させてから、高温に徐々に昇温するなど、急激な環境変化を避ける方法を採用してもよい。
また、加水分解で必要な水を補給するために水蒸気下で行っても良く、また、急激な膜の乾燥を防ぐため、溶媒蒸気下で行ってもよい。
第3の工程を経た膜は、必要に応じて水洗により未反応物や効果触媒を取り除き、更に硫酸などでイオン交換を行ってもよい。
5.4 第4の工程
本発明のプロトン伝導性膜の製造方法において、第4の工程は、膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入する工程である。
前述したように、酸化に先立ち、膜を水洗してもよく、又更に、触媒として有機アミン類を用いた場合には、酸化に先立って、塩酸、硫酸等の酸に膜を接触させ、触媒を取り除いてもよい。
洗浄する際に用いる水は、蒸留水、イオン交換水など、金属イオンを含まないものが好ましい。水洗においては、加熱しても良く、加圧や振動を与えてより水洗を効率化してもよい。更に、膜中への浸透を促進するために、水にメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン等を加えた混合溶剤を用いてもよい。
本発明で用いるメルカプト基酸化方法としては、特に制限されないが、一般的な酸化剤を用いることができる。具体的には、例えば、新実験化学講座(丸善、第3版、第15巻、1976)において述べられているように、硝酸、過酸化水素、酸素、有機過酸(過カルボン酸)、臭素水、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸などの酸化剤を用いることができる。
この中でも過酸化水素及び有機過酸(過酢酸、過安息香酸類)が比較的取り扱いが容易で酸化収率も良好であることから好適に用いる事ができる。
さらに、酸化により得られた膜中スルホン酸基のプロトン化のため、塩酸、硫酸等の強酸と接触させてもよい。この場合の酸濃度、浸せき時間、浸せき温度等のプロトン化条件は、膜中のスルホン酸基含有濃度、膜の多孔質度、酸との親和性などにより適宜決定される。代表例としては、1N硫酸中50℃1時間、膜を浸せきする方法などが挙げられる。
また、酸化後の膜は水洗して、膜中の酸化剤を取り除くことが好ましい。
さらに、酸化後の膜を塩酸、硫酸等による酸処理を行ってもよい。酸処理により、膜中の不純物や不要な金属イオンが洗い流されることが期待できる。酸処理の後、更に水洗を行うことが好ましい。
以上、述べてきた製造方法は一例であって、例えば、あらかじめ好ましい平均粒径を有するシリカ、あるいは金属酸化物粒子を用意し、これらの表面にメルカプト基含有化合物(D)をシランカップリング剤として表面処理した後酸化する方法なども可能である。ただし、このような表面処理法では安定した性能を得にくく、また、高濃度に表面処理することが困難であり、本発明で述べた方法を用いる方がプロトン伝導性膜の製造方法としては好ましい。
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。なお、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用する化合物、溶媒等は、全て市販品をそのまま用い、特に記述しないものはいずれも和光純薬(株)社より入手した。また、作製されたプロトン伝導性膜の評価物性値は、それぞれ以下にまとめた評価法によるものである。
[評価法]
(1)プロトン伝導性評価
本発明の製造方法により得られたプロトン伝導性膜を通例の電気化学セル(例えば特開2002−184427号公報中、図3に記載されたものと同一のもの)にセットし、プロトン伝導性膜と白金板とを密着させた。この白金板に、電気化学インピーダンス測定装置(ソーラトロン社製、1260型)を接続し、周波数0.1Hz〜100kHzの領域でインピーダンス測定し、イオン伝導性膜のプロトン伝導度を評価した。
なお、上記測定では、サンプルは、電気的に絶縁された密閉容器中に支持され、水蒸気雰囲気(95〜100%RH)で、温度コントローラーによりセル温度を室温から160℃まで変化させ、それぞれの温度でプロトン伝導度の測定を行った。本発明の実施例、比較例においては、代表値として、80℃、及び120℃での測定値を示した。100℃以上の測定においては、測定槽内を加圧して測定を行った。
(2)含水率、膨潤率評価
本発明の製造方法にて得られたプロトン伝導性膜を、120℃で運転されているオーブンに2時間放置して乾燥した後、膜の重量を測定し、乾燥重量とした。また、その際に得られた膜の大きさを測定して乾燥長とした(主として円形で得られるため、直径を測定)。その後、80℃水に浸せきし、表面の水を拭き取った後、重量を再度測定し、重量増加分を乾燥重量で割ったものを含水率とした。また、この際にも膜の大きさを測定し、変化した長さを乾燥長で割ったものを膨潤率とした。
(3)粒子構造評価
得られた膜の電子顕微鏡観察を行い(電子顕微鏡:(株)日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡S−4100)、粒子の連続体の有無、粒子径を見積もった。
粒子の連続体を有していたものを○、粒子の連続体を有さないものを×とし、粒子径は概略平均値を記載した。
【実施例1】
第1の工程: 3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名「サイラエースS−810」)0.2g、テトラエトキシシラン0.8g、ジエチレングリコール0.2g、トリエチルアミン0.6g、水0.25gを1.8mLのテトラヒドロフランに溶解し、10分間室温で激しく撹拌した。第2の工程: 第1の工程で得られた混合物を、内径9.0cmのテフロン(登録商標)製ペトリ皿(フロンケミカル社製)に注ぎ込み、ガラス板でペトリ皿にふたをした。第3の工程: 第2の工程で作製した膜状物をそのまま室温にて3日間静置し、ゲル化させた。ゲル化した膜を80℃オーブン中、水を入れたデシケータ中にて12時間、更に120℃オーブンにて24時間加熱した。得られた膜状物を取り出し、水、1N硫酸、水でそれぞれ1時間ずつ浸せきし、未反応物、触媒、極性制御剤を膜から抽出した。
第4の工程: 第3の工程で得られた膜を、酢酸125mL、30%過酸化水素水100mlを混合して作製した過酢酸に浸せきし、80℃で1時間加熱した。得られた膜を過酢酸溶液から取り出し、80℃水で各1時間、3回浸せきして過酢酸溶液を十分に抽出した。若干濁りのある膜が得られた。膜は約4cmの円形であり、厚みは200μmであった。
【実施例2】
第1の工程において、更に併用触媒として3%フッ化カリウムメタノール溶液を0.05g加え、ジエチレングリコールの代わりにポリエチレングリコール#200(平均分子量200)を用いたこと以外は実施例1と同様にして膜を得た。
【実施例3】
第1の工程において、テトラエトキシシランの代わりにテトラメトキシシランを用い、更に架橋剤として1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン(Gelest社製)を用い、更に併用触媒として3%フッ化カリウムメタノール溶液を0.05g加え、ジエチレングリコールの代わりにトリエチレングリコールを用い、第3の工程における加熱温度を150℃としたこと以外は、実施例1と同様にして膜を得た。
【実施例4】
第1の工程において、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとテトラエトキシシランの共重合物(信越化学社製、商品名番号「X41−1805」)を1.0g用い、テトラエトキシシランを用いず、ジエチレングリコールの代わりにポリエチレングリコール#300(ナカライテスク社製)を用い、更に、トリエチルアミンの代わりにピリジンを用い、第3の工程における加熱温度を150℃としたこと以外は、実施例1と同様にして膜を得た。
【実施例5】
第1の工程において、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとテトラエトキシシランの共重合物(信越化学社製、商品名番号「X41−1805」)を0.8g用い、テトラエトキシシランを0.2g用い、ジエチレングリコールの代わりにグリセリンとポリエチレングリコール#400(ナカライテスク社製)の1:4混合物を用い、更に、トリエチルアミンの代わりにアンモニア水(25%)を0.3g用いたこと以外は、実施例1と同様にして膜を得た。
【実施例6】
第1の工程において、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとテトラエトキシシランの共重合物(信越化学社製、商品名番号「X41−1805」)を0.8g用い、架橋剤として、テトラエトキシシラン0.1g用い、更に架橋剤として1,8−ビス(ジエトキシメチルシリル)オクタンを0.1g用い、ジエチレングリコールの代わりにポリエチレングリコール#200を用い、更に、トリエチルアミンの代わりにトリエタノールアミンを用い、併用触媒として3%フッ化カリウムメタノール溶液を0.05g加えたこと以外は、実施例1と同様にして膜を得た。
【実施例7】
第1の工程において、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとテトラエトキシシランの共重合物(信越化学社製、商品名番号「X41−1805」)を0.8g用い、架橋剤として、テトラエトキシシランを0.2g用い、ジエチレングリコールの代わりにポリエチレングリコール#200を用い、更に、トリエチルアミンの代わりにテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用い、併用触媒として3%フッ化アンモニウムメタノール溶液を0.05g加え、第3の工程における加熱を200℃とし、窒素雰囲気下で行ったこと以外は、実施例1と同様にして膜を得た。
【実施例8】
第1の工程において、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとテトラエトキシシランの共重合物(信越化学社製、商品名番号「X41−1805」)を0.8g用い、架橋剤として、テトラエトキシシランの代わりにメチルトリエトキシシランを0.2g用い、ジエチレングリコールの代わりにポリエチレングリコール#200を用い、更に、併用触媒として3%フッ化カリウムメタノール溶液を0.05g加え、第3の工程における加熱を200℃とし、窒素雰囲気下で行ったこと以外は、実施例1と同様にして膜を得た。
【実施例9】
(メルカプト基含有縮合体(I)の合成)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン2.8gと、テトラメトキシシラン9.2gとをメタノール3.5gに溶解し、0.1N塩酸0.9gを添加し、室温にて3時間攪拌した。更に、フッ化カリウム1%メタノール溶液0.7gを添加し、70℃ホットプレート上にて3時間撹拌した。得られた液体をそのまま減圧濃縮し、粘調な液体のメルカプト基含有縮合体(I−1)を得た。メルカプト基含有縮合体(I−1)は、重合度19で、Si−核磁気共鳴スペクトルより換算したメルカプト基含有化合物と加水分解性シリル化合物の比率は投入モル比とほぼ同等の1:4であった。
(膜の形成)
第1の工程において、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに前記にて合成したメルカプト基含有縮合体(I−1)を0.8g用い、架橋剤として、テトラエトキシシランを0.2g用い、ジエチレングリコールの代わりにポリエチレングリコール#200を用い、更に、併用触媒として3%フッ化カリウムメタノール溶液を0.05g加え、第3の工程における加熱を200℃とし、窒素雰囲気下で行ったこと以外は、実施例1と同様にして膜を得た。
【実施例10】
(メルカプト基含有縮合体(I)の合成)
テトラメトキシシランの代わりにメチルトリエトキシシラン10.6gを用いたこと以外は、実施例9と同様にしてメルカプト基含有縮合体(I−2)を得た。
(膜の形成)
第1の工程において、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに前記にて合成したメルカプト基含有縮合体(I−2)を0.8g用いたこと以外は、実施例9と同様にして膜を得た。
【実施例11】
(メルカプト基含有縮合体(I)の合成)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのかわりに、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(Gelest社製)2.7gを用いたこと以外は、実施例9と同様にしてメルカプト基含有縮合体(I−3)を得た(膜の形成)
第1の工程において、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに前記にて合成したメルカプト基含有縮合体(I−3)を0.8g用いたこと以外は、実施例9と同様にして膜を得た。
【実施例12】
(メルカプト基含有縮合体(H)の合成)
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン11.1gをメタノール6.0gに溶解し、4N塩酸1.4g(和光純薬(株)社製品より調製)を加え、70℃ホットプレート上にて3時間撹拌した。得られた白濁液体を室温で静置すると、2層に分離した。上層(溶媒、塩酸、未反応物)を取り除き、下層のオリゴマーをメタノールで2回洗浄した。8.0gのメルカプト基含有縮合体(H−1)を得た。
メルカプト基含有縮合体(H−1)の分子量をGPC(東ソー(株)社製、8020型)で測定したところ、重合度7.5であった(スチレン換算分子量Mw=約2,000)。
(膜の形成)
第1の工程において、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの代わりに前記にて合成したメルカプト基含有縮合体(I−3)を0.6g、テトラエトキシシランを0.6g用いたこと以外は、実施例9と同様にして膜を得た。
[比較例1]
実施例9において、極性制御剤(E)であるポリエチレングリコール#200を用いなかったこと以外は、実施例9と同様にして膜を得た。
[比較例2]
市販のプロトン伝導性膜であるデュポン社製「ナフィオン(Nafion112)」(登録商標)を、30%過酸化水素水、1N硫酸、水で洗浄した後、用いた。
【実施例13】
実施例9において、第1の工程で得られた混合物を、第2の工程において、テフロン(登録商標)シート上にキャスティングし、更にその上からフッ素樹脂多孔質膜(日本ミリポア(株)社製、メンブレンフィルタJG)を設置し、更にその上にテフロン(登録商標)シートを設置し、ロールプレス法にて含浸した。含浸量は50g/mに調整した。
以降の処理は実施例9と同様にしてプロトン伝導性膜を得た。
得られた膜を、ガス拡散電極(イーテック(E−TEK)社製、0.5mg白金ロード品)で膜を挟み込み、単セル(膜面積5.25cm、エレクトロケム(Electrochem)社製)に導入した。このようにして作製した単セル燃料電池に対し、アノード側に水素、カソード側に酸素を導入し、出力に電子負荷を接続し、80℃にて得られた電圧−電流曲線を図3に示した。
以上、実施例及び比較例の配合概略を表1および2に、評価結果を表3に示した。



表2の実施例1〜12で示したように、極性制御剤(E)の効果により生じた粒子の連続体、及びその間隙を利用したプロトン伝導経路形成を行うことにより、いずれも高い伝導度を発揮するプロトン伝導性膜を得た。
これらのプロトン伝導性膜は従来品(比較例2)と同等以上のプロトン伝導度を示し、特に高温で安定したプロトン伝導性を示し、外見上の変化なども見られない。比較例2の膜は、高温でも良好な伝導度を示すが、120℃では膨潤形態となり、室温・乾燥に戻すと若干硬い膜に変性し、高温耐久性能は本発明のプロトン伝導性膜の方が良好であった。
一方、極性制御剤(E)を用いない場合(比較例1)には、粒子の連続体が明確に形成されず、粒子が融合した凹凸が観察されるに過ぎず、プロトン伝導性も高くない。このことから、極性制御剤(E)を用いた粒子の連続体構造形成は、大きな性能改良であることが明確である。
また、比較例2の市販プロトン伝導性膜に対して、膨潤・収縮もほとんど見られないことから、MEA作製の際にも極めて有利である。
さらにまた、フッ素樹脂製多孔質膜等に複合することも可能であり(実施例13)、伝導度や耐熱性の大きな低下なしに柔軟な膜とすることも可能である。このフッ素樹脂多孔質膜に複合したものは発電性能も良好であった。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2003年6月13日出願の日本特許出願No.2003−169848、に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
以上説明してきたように、本発明のプロトン伝導性膜は、高い伝導性を持ち、寸法安定性に優れており、しかも高温でも安定的に機能し、近年注目を集めている高分子固体電解質形燃料電池の動作温度を100℃以上に上げることができ、この結果、発電効率の向上、冷却効率の向上、排熱利用によるトータル効率の飛躍的向上、触媒のCO被毒の低減を達成することができる。
このプロトン伝導性膜を用いることで高温動作、あるいは直接燃料(例えばメタノールなど)供給に対応しうる固体高分子型燃料電池を提供することができる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属−酸素結合からなる架橋構造体を構成するプロトン伝導性膜であって、
前記架橋構造体が粒子の連続体を構成するとともに、前記粒子の表面には酸基が付与されて、前記粒子の間隙にプロトン伝導路が形成されていることを特徴とするプロトン伝導性膜。
【請求項2】
前記粒子の間隙は、前記プロトン伝導性膜の主表面から相対向する面に連通して、プロトン伝導路を形成していることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のプロトン伝導性膜。
【請求項3】
前記金属−酸素結合は、ケイ素−酸素結合を含むことを特徴とする請求の範囲第1項または2に記載のプロトン伝導性膜。
【請求項4】
前記酸基が、スルホン酸基であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。
【請求項5】
前記粒子の平均粒径が、3〜200nmであることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。
【請求項6】
前記プロトン伝導性膜は、乾燥質量の3質量%〜50質量%の水を含有可能な空隙部分を有することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第5項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。
【請求項7】
前記プロトン伝導性膜は水含有時と乾燥時の膜の一次元膨潤率((水含有時膜長さ−乾燥時膜長さ)/乾燥時膜長さ)が3%以内であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第6項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。
【請求項8】
前記粒子が、次式(1)で示される酸基含有構造(A)を有することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第7項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。

(式中、Xは架橋に関与する−O−結合、又はOH基を表し、Rは炭素数20以下の炭化水素基を表し、RはCH、C、C、またはCのいずれかの基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1のとき、Rは異なる置換基の混合体でもよい。)
【請求項9】
前記粒子が、ケイ素−酸素結合からなる3次元架橋構造と、前記式(1)で示される構造とを有し、前記式(1)で示される構造を有するケイ素原子が、粒子中の全ケイ素原子中の3%以上であることを特徴とする請求の範囲第8項記載のプロトン伝導性膜。
【請求項10】
前記式(1)中のRが、次式(2)で表される飽和アルキレン基であることを特徴とする請求の範囲第8項記載のプロトン伝導性膜。

(式中、nは1〜30の整数である)
【請求項11】
前記粒子が、次式(3)で表される架橋構造(B)を有することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第10項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。

(式中、Rは炭素原子20以下のアルキル基を表し、Xは架橋に関与する−O−結合、又はOH基を表し、nは2〜4の整数である。)
【請求項12】
前記粒子が、次式(4)で表される橋かけ架橋構造(C)を有することを特徴とする、請求の範囲第1項乃至第11項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。

(式中、Xは架橋に関与する−O−結合、又はOH基を表し、Rは炭素数1〜30の炭素原子含有分子鎖基を表し、RはCH、C、C、C、又はCから選ばれたいずれかの基であり、nは0、1又は2のいずれかの整数である。)
【請求項13】
メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製する第1の工程と、
前記混合物を基体に成膜する第2の工程と、
前記成膜された混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、ケイ素−酸素架橋構造からなる粒子の連続体を有する膜を形成する第3の工程と、
更に前記膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入する第4の工程とにより製造される請求の範囲第1項乃至第12項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。
【請求項14】
メルカプト基を有し、かつ、メルカプト基と共有結合した縮合反応可能な加水分解性シリル基と、及び/又はシラノール基を有するメルカプト基含有化合物(D)と、極性制御剤(E)とを含有する混合物を調製する第1の工程と、
前記混合物を基体に成膜する第2の工程と、
前記成膜された混合物に含まれる加水分解性シリル基を加水分解及び縮合、及び/又はシラノール基を縮合させることにより、ケイ素−酸素結合を含む架橋構造体からなる粒子の連続体を有する膜を形成する第3の工程と、
更に前記膜中の前記メルカプト基を酸化してスルホン酸基とし、前記粒子の表面にスルホン酸基を導入する第4の工程とを含むことを特徴とするプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項15】
前記第3の工程において、触媒(F)を用いることを特徴とする請求の範囲第14項に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項16】
前記触媒(F)が塩基性触媒であり、アミン類又はアンモニウム塩類より少なくとも1種選ばれた化合物であることを特徴とする請求の範囲第15項に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項17】
前記触媒(F)がアンモニア、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、イソブチルアミン、ジエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、ピペラジン又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求の範囲第16項に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項18】
前記極性制御剤(E)が、沸点100℃以上、融点25℃以上の有機化合物であることを特徴とする請求の範囲第14項に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項19】
前記極性制御剤(E)が、以下の式(5)で表される構造を有することを特徴とする請求の範囲第14項に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。

(式中、nは1〜14の整数である。)
【請求項20】
前記メルカプト基含有化合物(D)が、次式(6)で示されるメルカプト基含有化合物(G)であることを特徴とする請求の範囲第14項記載のプロトン伝導性膜の製造方法。

(式中、RはH、CH、C、C、又はCのいずれかの基を表し、Rは炭素数20以下の炭化水素基を表し、RはCH、C、C、又はCのいずれかの基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1のとき、Rは異なる置換基の混合体でもよい。)
【請求項21】
前記メルカプト基含有化合物(D)が、次式(7)で表されるメルカプト基含有縮合体(H)であることを特徴とする請求の範囲第14項記載のプロトン伝導性膜の製造方法。

(式中、RはH、CH、C、C、又はCのいずれかの基を表し、Rは炭素数20以下の炭化水素基を表し、RはOH、OCH、OC、OC、OC、CH、C、C、C、Cのいずれかの基を表し、mは1〜100の整数を表す。また、Rが−Si、またはRがO−Si結合となった環状構造、分岐構造となっても良い)
【請求項22】
前記メルカプト基含有化合物(D)が、次式(8)で表されるメルカプト基含有縮合体(I)であることを特徴とする請求の範囲第14項記載のプロトン伝導性膜の製造方法。

(式中、RはH、CH、C、C、又はCのいずれかの基を表し、Rは炭素数20以下の炭化水素基を表し、R、R、Rはそれぞれ独立にOH、OCH、OC、OC、OC、CH、C、C、C、Cのいずれかの基を表し、n、mはそれぞれ独立に1〜100の整数を表す。また、Rが−Si結合、またはR、R、Rが−O−Si結合となった環状構造、分岐構造となっても良い)
【請求項23】
前記式(6)〜式(8)において、Rが次式(9)で示される構造であることを特徴とする請求の範囲第20項乃至第22項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜の製造方法。

(式中、sは1〜20の整数を表す)
【請求項24】
前記第1の工程で調製される混合物が次式(10)で表される架橋剤(J)を含むことを特徴とする請求の範囲第14項に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。

(式中、Rは炭素原子20以下のアルキル基を表し、R10はOH、OCH、OC、OC、OC、OCOCH、またはClを表し、nは2〜4の整数である。)
【請求項25】
前記第1の工程で調製される混合物に次式(11)で表される橋かけ架橋剤(K)を含むことを特徴とする、請求の範囲第14項に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。

(式中、R10はOH、OCH、OC、OC、OC、OCOCH、またはClを表し、Rは炭素数1〜30の炭素原子含有分子鎖基を表し、RはCH、C、C、C、又はCから選ばれたいずれかの基であり、nは0、1又は2のいずれかの整数である。)
【請求項26】
前記第3の工程において、触媒(F)にフッ化カリウム、フッ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウムフロライド、テトラエチルアンモニウムフロライドから選ばれる少なくとも1種の化合物を併用することを特徴とする請求の範囲第15項乃至第17項のいずれかに記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
【請求項27】
請求の範囲第1項乃至第13項に記載のプロトン伝導性膜、及び14乃至26に記載のプロトン伝導性膜の製造方法のいずれかを用いてなる燃料電池。

【国際公開番号】WO2004/112177
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506993(P2005−506993)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008487
【国際出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】