説明

プロピレン系重合体組成物

【課題】優れた耐衝撃性を有すると共に発色性が良好で、優れたメタリック調外観が得ら
れるポリプロピレン系樹脂材料を提供すること。
【解決手段】プロピレン系重合体(a1)50〜98重量%と繊維状無機充填材(a2)
1〜30重量%と熱可塑性エラストマー(a3)1〜35重量%とを含有し[(a1)+
(a2)+(a3)は100重量%である。]、板厚2mmの成形品としたときの、受光
角度0°における光線透過率が0.3〜10%であるプロピレン系重合体組成物(A)に
、光輝剤(B)及び着色剤(C)を配合してなる高輝性プロピレン系重合体組成物。プロ
ピレン系重合体(a1)としてはメタロセン触媒を用いて製造されたものが好ましく、特
に融解熱量(ΔHm)が70〜90mJ/mg、融点(Tm)が115〜150℃のものが
適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系重合体組成物に関する。詳しくは光輝剤と着色剤を含有し、発
色性が良好で、優れたメタリック調外観が得られるプロピレン系重合体組成物に関するも
のであり、とりわけ剛性と衝撃強度のバランスに優れた高輝性プロピレン系重合体組成物
に関するものである。
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、比較的安価で優れた特性を有することから、自動車部品、家電
部品、事務用品、衛生用品、スポーツ用品、建築用品、装飾用品など多岐の分野にわたっ
て使用されているが、メタリック調外観が求められる自動車部品などでは、メタリック調
の塗料を用いて塗装処理を施されている。しかし、塗装処理には多くの工程や労力と高価
な設備、塗料などの費用がかかり、部品単価が増大しコストアップの要因となっている。
現在では、製造工程の簡略化や環境負荷の低減を考慮して、無塗装で良好なメタリック調
外観を示すポリプロピレン樹脂成形品およびポリプロピレン樹脂材料が求められている。
【0003】
無塗装化に対応する材料として、ポリプロピレン樹脂に顔料と光輝剤を練りこんだ重合
体組成物が提案されている。しかしながら、顔料と光輝剤を単に練り込むだけでは、剛性
や衝撃強度などの機械的性能を満足しつつ、良好なメタリック調外観を付与することはで
きない。
【0004】
優れたメタリック外観を得る方法として、光輝剤を含有するポリプロピレン系樹脂組成
物をキャビティ内表面に断熱層を設けた金型を用いて射出成形する方法が提案されている
(特許文献1参照)。しかしながら、特殊な断熱層を設けた射出成形金型を用いる関係上
、金型を冷却するために時間を要し、成形サイクルが長くなるという欠点があった。
【0005】
機械的強度物性に優れたメタリック調外観を得る方法として、結晶性プロピレン−エチ
レンブロック共重合体又はこれに等重量以下の結晶性プロピレン単独重合体を加えた樹脂
組成物をベースとし、特定のアルミニウムフレークを光輝剤として配合した自動車部品用
組成物が提案されている(特許文献2参照)。この組成物は、結晶性プロピレン−エチレ
ンブロック共重合体を主体とし、更に必須成分としてタルク等の無機充填材及びエラスト
マー性重合体を含んでおり、高輝性に改善すべき問題があった。特に深みのある高輝感が
得られ難い。
【0006】
また、キシレン可溶分20重量%以下のポリプロピレン樹脂に平均長径5μm以上の光
輝剤を配合した樹脂組成物が知られている(特許文献3参照)。これによれば、該樹脂組
成物を原料とした成形体は、その表面に厚さ25μm以上の透明なクリアー層を有してお
り、該クリアー層よりも内部に光輝剤が分散されるので高いメタリック感、光沢感がある
とされるが、キシレン可溶分と光輝剤の平均長径の制御のみでは未だ満足できるレベルに
至っていない。また、耐衝撃性を得るための記述がない。
【0007】
また、エチレン含量2〜15重量%でロックウエル硬度85以上の結晶性エチレン・プ
ロピレンブロック共重合体75〜50重量%と、エチレン含量80〜95重量%のエチレ
ン−α−オレフィン共重合体25〜50重量%を基本成分とし、これに光輝剤、無機系顔
料、有機系顔料から選択される着色剤を配合してなる高光沢、高耐衝撃性樹脂組成物が知
られている(特許文献4参照)。しかしながら、結晶性エチレン・プロピレンブロック共
重合体を主体としており透明性において更に改善すべき課題があった。
【0008】
また、ポリプロピレン樹脂に光輝剤、金属不活性剤、無機充填材を配合した光輝剤含有
樹脂組成物が知られており、金属不活性剤による耐熱性向上が特徴の一つとされる(特許
文献5参照)。ポリプロピレンについては特定のスウェル比を有することの重要性が述べ
られているが、具体例としては、エチレン・プロピレンブロック共重合体のみで高輝性、
メタリック調についての技術開示は詳しくない。
【特許文献1】特開2000−313747号公報
【特許文献2】特開2004−83608号公報
【特許文献3】特開平8−239527号公報
【特許文献4】特開平8−239549号公報
【特許文献5】特開2006−137888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、発色性が良好で優れたメタリック調外観が得られる高輝性プロピレン
系樹脂材料を提供することを目的とし、とりわけ剛性や衝撃強度が要求される自動車部品
への適用を可能とする高強度な高輝性プロピレン系樹脂材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明の要旨は、プロピレン系重合体(a1)50〜98重量%と繊維状無機充
填材(a2)1〜30重量%と熱可塑性エラストマー(a3)1〜35重量%とを含有し
[(a1)+(a2)+(a3)は100重量%である。]、板厚2mmの成形品とした
ときの、受光角度0°における光線透過率が0.3〜10%であるプロピレン系重合体組
成物(A)に、光輝剤(B)及び着色剤(C)を配合してなる高輝性プロピレン系重合体
組成物に存する。
【0011】
また、本発明の他の要旨は、繊維状無機充填材(a2)が、ウイスカーである前記の高
輝性プロピレン系重合体組成物に存する。
【0012】
また、本発明の他の要旨は、プロピレン系重合体(a1)の融解熱量(ΔHm)が70
〜90mJ/mg、融点(Tm)が115〜150℃、且つ、融点(Tm)と融解熱量(ΔHm)とが式(1)を満たすことを特徴とする前記の高輝性プロピレン系重合体組成物に存する。
【0013】
ΔHm>1.16Tm−78 ・・・ 式(1)
また、本発明の他の要旨は、プロピレン系重合体(a1)が、(A)下記一般式(I)
で表される遷移金属化合物
【0014】
【化2】

(式中、A1 及びA2 は共役五員環配位子(同一化合物内においてA1 及びA2は同一で
も異なっていてもよい)を示し、Qは2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結
合性基を示し、Mは周期表第4〜6族から選ばれる金属原子を示し、X及びYは水素原子
、ハロゲン原子、炭化水素基、アミノ基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基、
窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示す。)
(B)アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換す
ることが可能なイオン性化合物、ルイス酸、珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物、無機
珪酸塩、からなる群より選ばれる一種以上の物質、及び(C)有機アルミニウム化合物
の接触物であるメタロセン触媒の作用により得られたものである前記の高輝性プロピレン
系重合体組成物に存する。
【0015】
また、本発明の他の要旨は、プロピレン系重合体組成物(A)100重量部に対して、
光輝剤(B)0.01〜10重量部、及び着色剤(C)0.01〜10重量部を配合して
なることを特徴とする前記の高輝性プロピレン系重合体組成物に存する。
【0016】
また、本発明の他の要旨は、高輝性プロピレン系重合体組成物の三点曲げ弾性率(JI
S−K7203)が900MPa以上、アイゾッド衝撃強度(JIS−K7110)が2
0kJ/m2以上であることを特徴とする前記の高輝性プロピレン系重合体組成物に存す
る。
【0017】
また、本発明の他の要旨は、前記の高輝性プロピレン系重合体組成物を成形してなる自
動車内外装部品に存する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプロピレン系重合体組成物を構成するベースは、メタロセン触媒の作用により
得られるものが主体である。基本的に透明性に優れており、繊維状無機充填材と熱可塑性
エラストマーを特定の割合で配合し、更に光輝剤と着色剤を配合して重合体組成物とし射
出成形等により成形品としたものは、耐衝撃性に格段に優れ、透明性も低下は少ない。ま
た、発色性が良好で優れたメタリック調外観が得られるので各種の自動車部品用途、例え
ば、バンパー、サイドロッカーカバー、サイドモール、オーバーフェンダー、バックドア
、ガーニッシュ、内装トリム類などに有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
プロピレン系重合体組成物(A)
該組成物(A)は(a1)(a2)(a3)を特定の割合で含有するものである。以下
、各成分について詳述する。
【0020】
プロピレン系重合体(a1)
本発明のプロピレン系重合体組成物(A)を構成するプロピレン系重合体としては、プ
ロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体などが挙げられる。なかでも
、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム
共重合体等のプロピレン・α−オレフィン共重合体が好ましく、とりわけプロピレン・α
−オレフィンランダム共重合体が好ましい。プロピレン・α−オレフィン共重合体は、プ
ロピレンから得られる構造単位が100〜90モル%(ただし100モル%を除く)、好
ましくは99〜92モル%、α−オレフィンから得られる構造単位が1〜10モル%(た
だし0モル%を除く)、好ましくは2〜8モル%の割合で含有されていることが好ましい
。上記プロピレンと共重合されるコモノマーのα−オレフィンとしては、エチレン及び/
又は炭素数4〜20のα−オレフィンなどが挙げられ、具体的には、エチレン、ブテン−
1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げるこ
とができる。α−オレフィンは2種以上を併用することもできる。コモノマーの構造単位
が上記範囲を超過する場合には、剛性が大きく低下してしまい、実用性が損なわれてしま
う。
【0021】
プロピレン系重合体中のプロピレンから得られる構造単位、及び、エチレン及び/又は
炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位は、13C−NMR(核磁気共鳴法
)を用いて測定される値である。具体的には、日本電子社製FT−NMRの270MHz
の装置により測定される値である。
【0022】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合を用いることが、本発明の効果をより発現
することができるが、以下の熱的性質を持つプロピレン・α−オレフィンランダム共重合
を用いることが更に好ましい。
【0023】
また、本発明のプロピレン系重合体は耐熱性や剛性を考慮すると、融点(Tm)は12
0〜140℃が好ましく、125〜135℃がより好ましい。この融点は、共重合モノマ
ーの含有量の増減などにより調節可能である。なお、融点は示差走査熱量計(セイコーイ
ンスツルメンツ社製DSC6200)を使用し、シート状にしたサンプル片を5mgアル
ミパンに詰め、50℃から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持
した後に、10℃/分で40℃まで降温して結晶化させ1分間保持した後、10℃/分で
200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度(℃)として求めた。また、融解熱量(
ΔHm)、融点(Tm)とも光輝剤を含まない状態のプロピレン系重合体を対象として測
定されたものである。
【0024】
また、本発明のプロピレン系重合体は剛性や耐熱性を考慮すると、結晶化度の指標であ
る融解熱量(ΔHm:結晶を融解するエネルギー)は70〜90mJ/mgが好ましく、72〜80mJ/mgがより好ましい。ΔHmがこの範囲にあるものは、剛性や耐熱性が優れるが、上記未満では剛性や耐熱性が低下する、一方、それを超える場合は製造が困難である。なお、融解熱量の測定は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製DSC6200)を使用し、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、50℃から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で40℃まで降温して結晶化させ1分間保持した後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解熱として求めたものである。
【0025】
また、本発明のプロピレン系重合体において、上記の融解熱量(ΔHm)と融点(Tm
)との関係が、下記式(1)を満たすことが好ましい。更に好ましくは、下記式(2)を満
足するものであり、これが満足されることにより高輝感(メタリッ感がより強調され良く
なる感覚)に深みを与える効果がある。
【0026】
ΔHm>1.16×Tm−78 ・・・式(1)
ΔHm>1.05×Tm−61 ・・・式(2)
本発明のプロピレン系重合体は、そのメルトフローレート(MFR)が、1〜80g/
10分、特に7〜40g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲を上回ると衝
撃強度が不足する傾向があり、MFRが上記範囲を下回ると成形不良となる傾向がある。
なお、MFRは、JIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定し
たものである。
【0027】
プロピレン系重合体(a1)の製造法は特に限定されず、メタロセン触媒、チーグラー
触媒等を用いることができる。中でも、メタロセン触媒の作用により得られたものが透明
性に優れるので好ましい。
【0028】
メタロセン触媒としては、具体的には、(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化
合物
【0029】
【化3】

(式中、A1 及びA2 は共役五員環配位子(同一化合物内においてA1 及びA2は同一で
も異なっていてもよい)を示し、Qは2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結
合性基を示し、Mは周期表第4〜6族から選ばれる金属原子を示し、X及びYは水素原子
、ハロゲン原子、炭化水素基、アミノ基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基、
窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示す。)に、(B
)アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換するこ
とが可能なイオン性化合物、ルイス酸、珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物、無機珪酸
塩、からなる群より選ばれる一種以上の物質、及び(C)有機アルミニウム化合物を接触
させて得られる触媒物が使用される。
【0030】
一般式(I)中、A1 及びA2 は、共役五員環配位子(同一化合物内においてA1及び
2 は同一でも異なっていてもよい)を示し、好ましくはそのうち少なくとも一方は、共
役五員環配位子上の隣接した置換基が結合し五員環の2原子を含めて7〜10員の縮合環
を有する。そして、A1 及びA2 の共役五員環配位子は、結合性基Qに結合していない炭
素に置換基を有していてもよい。上記の共役五員環配位子の典型例としては、例えば、シ
クロペンタジエニル基を挙げることが出来る。このシクロペンタジエニル基は、水素原子
を4個有するもの[C54−]であってもよく、また、上記した通り、その水素原子の
幾つかが置換基で置換されているものであってもよい。
【0031】
上記の置換基の1つの具体例は、炭素数が通常1〜20、好ましくは1〜15の炭化水
素基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシ
ル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基、トリフェニ
ルカルビル基などが挙げられる。上記の炭化水素基は、一価の基としてシクロペンタジエ
ニル基と結合していてもよく、その置換基の末端で2種が結合して縮合環を形成してもよ
い。縮合環を形成したシクロペンタジエニル基の典型例としては、インデン、フルオレン
、アズレン等の化合物やその誘導体である。
【0032】
具体的には、シクロペンタジエニル、n−ブチル−シクロペンタジエニル、インデニル
、2−メチル−インデニル、2−メチル−4−フェニルインデニル、テトラヒドロインデ
ニル、2−メチル−テトラヒドロインデニル、2−メチルベンゾインデニル、2,4−ジ
メチルアズレニル、2−メチル−4−フェニルアズレニル、2−メチル−4−ナフチルア
ズレニル、2−エチル−4−ナフチルアズレニル、2−エチル−4−フェニルアズレニル
、2−メチル−4−(4ークロロフェニル)アズレニル等が挙げられる。
【0033】
炭化水素基以外の置換基としては、珪素、酸素、窒素、燐、硼素、硫黄などの原子を含
有する炭化水素残が挙げられる。その典型例としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノ
キシ基、フリル基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラ
ゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォス
フィノ基、ジフェニル硼素基、ジメトキシ硼素基、チエニル基などが挙げられる。その他
の置換基としては、ハロゲン原子又はハロゲン含有炭化水素基などが挙げられる。その典
型的例としては、塩素、臭素、沃素、フッ素、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル
基、フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。成分(A)とし
て使用する遷移金属化合物は、A1 及びA2 のうち少なくとも一方が、共役五員環配位子
上の隣接した置換基が結合し五員環の2原子を含めて7〜10員の縮合環を有するものが
好ましい。すなわち、A1及びA2のどちらか一方は、少なくとも共役五員環の隣接する炭
素2原子を含めた7〜10の縮合環を形成しているものが好ましい。
【0034】
Qは2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示す。すなわち、Qは
、2価の結合性基であり、A1とA2とを架橋する。Qの種類は特に制限されないが、その
具体例としては、(イ)炭素数が通常1〜20、好ましくは1〜12の2価の炭化水素基
またはハロゲン化炭化水素基、具体的には、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリー
レン等の不飽和炭化水素基、ハロアルキレン基、ハロシクロアルキレン基、(ロ)無置換
または炭素数が通常1〜20、好ましくは1〜12の炭化水素基またはハロゲン化炭化水
素基を置換基として有するシリレン基またはオリゴシリレン基、(ハ)無置換または炭素
数が通常1〜20の炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を置換基として有するゲルミ
レン基や、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基などが挙げられる
。これらの中では、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、炭化水素基を置
換基として有するシリレン基またはゲルミレン基が好ましい。
【0035】
Mは、周期表第4〜6族から選ばれる遷移金属原子を示し、好ましくは、チタン、ジル
コニウム又はハフニウムの4族遷移金属、更に好ましくは、ジルコニウム又はハフニウム
である。X及びYは、それぞれ独立して、Mと結合した水素原子、ハロゲン原子、炭化水
素基、アミノ基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、リ
ン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示す。上記の各炭化水素基における炭素
数は、通常1〜20、好ましくは1〜12である。これらの中では、水素原子、塩素原子
、メチル基、イソブチル基、フェニル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及びトリ
メチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等のケイ素含有炭化水素基が好まし
い。
【0036】
(B)成分としては、アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)を
カチオンに変換することが可能なイオン性化合物、ルイス酸、珪酸塩を除くイオン交換性
層状化合物、無機珪酸塩、からなる群より選ばれる一種以上の物質を用いる。
【0037】
(C)成分としては、下記一般式で表される有機アルミニウム化合物が好適に使用され
る。
【0038】
AlRa3-a
(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Pは、水素、ハロゲン、アルコキシ基または
シロキシ基を示し、aは0より大きく3以下の数を示す。)有機アルミニウム化合物の具
体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミ
ニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニ
ウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシド等のハロゲン又はアルコキシ
含有アルキルアルミニウムが挙げられる。これらの中では、トリアルキルアルミニウムが
好ましい。また、成分(C)として、メチルアルミノキサン等のアルミノキサン類なども
使用できる。(尚、成分(B)がアルミノキサンの場合は成分(C)の例示としてアルミ
ノキサンは除く。)
【0039】
プロピレン系重合体(a1)の製造は、チーグラー触媒等を用いて行うこともできる。
チーグラー触媒としては、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の
電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化
合物及び芳香族カルボン酸エステルからなる触媒(特開昭56―100806号、特開昭
56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及び、ハロゲン化
マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体からなる担持型触媒(特開昭57−63
310号、同63−43915号、同63−83116号の各公報参照)等を例示するこ
とができる。
【0040】
本発明のプロピレン系重合体の製造は、上記触媒の存在下、プロピレン及び必要に応じ
てα−オレフィンを(共)重合して得ることができる。重合反応は、溶媒を使用する溶液
重合の他、バルク重合、気相重合、溶融重合であってもよい。重合方式は、連続重合、回
分式重合のいずれであってもよい。
【0041】
繊維状無機充填材(a2)
本発明の必須成分である繊維状無機充填材(a2)は剛性向上等の目的で添加するが、
プロピレン系重合体組成物の透明性を大きく損なうことなく剛性を向上出来る効果がある
ので、光輝剤と着色剤を添加した高輝性プロピレン系重合体組成物のメタリック調外観が
優れる利点がある。繊維状無機充填材(繊維状無機フィラー)としては、ガラス繊維、炭
素繊維、ウイスカー類、ワラストナイトなどが挙げられるが、重合体組成物の透明性と剛
性及び表面平滑性や反り変形のバランスによりウイスカー類を使用することが好ましく、
特には塩基性硫酸マグネシウムからなる無機繊維を用いるのが好ましい。繊維の形状には
特に限定はないが、重合体組成物の透明性の観点から極細繊維が好ましい。例えば、繊維
径は0.1〜20μmが好ましく、0.2〜10μmがより好ましく、0.2〜5μmが
更に好ましい。繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径の比)は重合体組成物の剛性に寄与
するので10以上が好ましく、20以上がより好ましい。添加量は重合体組成物の剛性に
寄与するので所望とする剛性に見合わせて添加すれば良く、プロピレン系重合体(a1)
に対して1〜30重量%が好ましく、5〜20重量%より好ましい。添加量が1重量%未
満では剛性が劣り、添加量が30重量%を上回ると高輝感が損なわれる。
【0042】
熱可塑性エラストマー(a3)
本発明の必須成分である熱可塑性エラストマー(a3)は衝撃強度向上等の目的で添加
する。熱可塑性エラストマーとしては、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エ
チレン・1−ブテン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合ゴム、エチレ
ン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン・1−ブテン・非共役
ジエン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合ゴム、その
他のエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合ゴム等のポリオレフィン系ゴ
ム、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合ゴ
ムの水添物(SEBS:スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合ゴム)、
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合ゴムの水添物(SEPS:スチレン・エ
チレン・プロピレン・スチレンブロック共重合ゴム)等のスチレン系ゴムを挙げることが
できるが、重合体組成物の透明性を損なわない為に、透明度の高いエラストマーやプロピ
レン系重合体(a1)との屈折率に近いエラストマーを選定するのが好ましい。添加量は
重合体組成物の衝撃強度に寄与するので、所望とする衝撃強度に見合わせて添加すればよ
く、プロピレン系重合体(a1)に対して1〜35重量%が好ましく、5〜25重量%が
より好ましい。添加量が1重量%未満では衝撃強度が劣り、添加量が35重量%を上回る
と高輝感が損なわれる。
【0043】
プロピレン系重合体組成物(A)の組成
本発明のプロピレン系重合体組成物(A)は、プロピレン系重合体(a1)50〜98
重量%、好ましくは60〜90重量%、繊維状無機充填材1〜30重量%、好ましくは5
〜20重量%、熱可塑性エラストマー1〜35重量%、好ましくは5〜25重量%を含む
。ただしプロピレン系重合体(a1)と繊維状無機充填材(a2)と熱可塑性エラストマ
ー(a3)との合計量は100重量%である。プロピレン系重合体組成物(A)が50重
量%を下回ると高輝感が損なわれ、98重量%を超えると衝撃強度と剛性のバランスが悪
化する。
【0044】
本発明の高輝性プロピレン系重合体組成物に用いるプロピレン系重合体組成物(A)は
透明性に優れていることが重要であり、その指標として透過分布(光線透過率)が用いら
れる。この光線透過率の測定には、プロピレン系重合体の試料を射出成形にて成形温度2
20℃、金型温度は40℃で、成形してなる板厚2mmの平板を用いる。金型表面は鏡面
(ペーパー#1000研磨の後、約10μmの硬質クロームメッキを施し、更にバフ研磨
#3000による鏡面仕上げ)となっており、金型材質は、大同特殊鋼社製、プリハード
ン鋼「NAK80」であり、硬度はHRC40である。
【0045】
光源としてC光源(国際照明委員会で定めた標準の光C)(ハロゲンランプ)を使用し
、測定平板の真上より投光(投光角度0°)し、受光角度が0°における光線透過率とし
て測定されるものであり、全光線透過率(いわゆるヘイズ)とは異なるものである。まっ
すぐ(サンプル平板の成形品表面に対して直角)の透過光のみを用いた透過率であり、散
乱透過光を測定対象としていないので高輝感との対応関係に優れている。具体的には、変
角光度計(例えば、日本電色工業社製 GC 5000L)を用いて測定することができ
る。
【0046】
測定対象となる平板の真上より投光し、受光角度が0°における光線透過率が0.3〜
10%であることが、本発明において必要であり、0.4〜8%であることがより好まし
い。この光線透過率が0.3%未満であると光輝剤と着色剤を添加した高輝性プロピレン
系重合体組成物の高輝感が損なわれる。また、光線透過率が10%を超えると剛性と衝撃
のバランスが損なわれる。本発明の透過分布の測定法は変角光度計で測定した。具体的に
は、日本電色工業社製GC 5000Lにより測定される値である。
【0047】
光輝剤(B)
本発明における光輝剤としては、プロピレン系重合体に混合した際、着色剤と共存、ま
たは単独で金属感(メタリック調)を発現する性質を有する物質が該当する。具体的には
、アルミニウム等の金属フレーク;アルミニウム箔、蒸着アルミニウム箔等の金属箔;天
然または合成雲母に酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物をコートしたパールマイカ、金
属酸化物の皮膜層の厚みを変化させ基材と皮膜の屈折率差を利用し、反射光の干渉を発色
に利用する干渉マイカ、酸化鉄などの有色酸化物で被覆した着色マイカ等;銅粉、亜鉛粉
、フロンズ粉、ステンレス粉、アルミニウム粉等の金属粉;金属、合金又はその酸化物(
具体的には金、銀、銀合金、真鍮、ブロンズ、チタン、二酸化チタンなど)を被覆したガ
ラスフレーク等が挙げられる。好ましくは、金属フレーク、パールマイカ、干渉マイカ、
及び金属被覆したガラスフレークであり、より好ましくはアルミニウムフレークである。
【0048】
光輝剤の形状としては、フレーク状、粉状などがあるが、特にフレーク状であるものが
好ましい。さらにその平均粒径が5〜200μm、特に40〜90μmであることが好ま
しい。光輝剤の平均粒径が5μm未満では、高輝感が不充分であり、平均粒径が200μ
mを超えると、逆に高輝感がなくなり、高級な質感が損なわれる場合がある。又衝撃性能
も低下するので好ましくない。なお、光輝剤の平均粒径の測定はレーザー回折式粒度分布
測定装置を用いて行われる。
【0049】
本発明において、光輝剤(B)の配合量は、プロピレン系重合体組成物(A)100重
量部あたり、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜3重量部、特に0.2〜2.0
重量部含んでいる。そうでないと金属感が損なわれる恐れがある。光輝剤はプロピレン系
重合体に直接配合することもできるが、光輝剤の取り扱いや配合の操作性からマスターバ
ッチの形態で使用することが好ましい。例えば、ポリエチレンワックス、ポリエチレン等
をマトリックス成分としたアルミニウムフレーク含有量20〜80重量%のマスターバッ
チを利用できる。光輝剤の配合量が上記範囲未満ではメタリック調外観の発現が不十分で
ある。また、光輝剤の配合量が上記範囲を超えると光輝剤の添加効果が飽和するうえに機
械的物性が低下する。
【0050】
本発明において、光輝剤を含有するプロピレン系重合体組成物は、光輝剤に由来するそ
れ固有の色相を示すが、それだけでは濃さが不足するので、また適切な色合いに調節する
ために、必須成分として着色剤(C)が配合使用される。
【0051】
着色剤(C)としては、黒色系のカーボンブラック、鉄黒;白色系の酸化チタン、亜鉛
華、リトボン、鉛白;青色系の紺青、群青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、イ
ンダンスレンブルーRS、ファーストスカイブルーレーキ、アルカリブルーレーキ、ビク
トリアブルーレーキ;赤色系の弁柄、鉛炭、モリブデンレッド、カドミウムレッド、レー
キレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、リソールレッド、パーマネン
トレッド4R、ウォッチングレッド、チオインジゴレッド、アリザリンレッド、キナクリ
ドンレッド、ローダミンレーキ、オレンジレーキ、ベンズイミダゾロンレッド、ピラゾロ
ンレッド、縮合アゾレッド、ペリレンレッド、パーマネントカーミンFB、キナクリドン
マゼンダ;黄色系の黄鉛、カドミウムイエロー、チタンイエロー、鉄黄、イソインドリノ
ンイエロー、ベンジジンイエロー、ファーストイエロー、フラボンスロンイエロー、ナフ
トールイエロー、キノリンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、HRイエロー、縮合
アゾイエロー;緑色系のクロムグリーン、酸化クロム、ギネグリーン、スピネルグリーン
、フタロシアニングリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーン、アシッドグリ
ーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ;橙色系のクロムオレンジ、カドミウムオレンジ
、ベンズイミダゾロンオレンジ、ペリノンオレンジ;茶系の亜鉛フェライト;紫色系のマ
ンガン紫、コバルト紫、紫弁柄、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ
、ジオキサジンバイオレット等を挙げることができる。
【0052】
プロピレン系重合体組成物における上記着色剤(C)の配合量は、プロピレン系重合体
100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜3.0重量部、より
好ましくは0.1〜2.0重量部である。着色剤の配合量が上記範囲未満では隠蔽性不足
と調色が難しい。また、着色剤の配合量が上記範囲を超えると物性が低下する。
【0053】
その他の配合成分(任意成分)
本発明の高輝性プロピレン系重合体組成物には、本発明の効果を著しく阻害しない範囲
で繊維状以外の無機充填材や、本発明で使用される以外の別種のプロピレン系重合体、変
性ポリオレフィン等を添加することが出来る。具体的には、酸化カルシウム、酸化マグネ
シウム、シリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシ
ウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイ
カ、ゼオライトなどの無機充填材が挙げられる。
【0054】
変性ポリオレフィンとは、官能性をもつオレフィン系樹脂である。官能性を付与するこ
とで、光輝剤、無機充填材、特にガラス繊維とプロピレン系樹脂との親和性が改善され機
械的物性が向上する。オレフィン系樹脂としては、本発明の主体となるプロピレン系重合
体以外のもので、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフィンランダム共
重合体等が挙げられ、好ましくはポリプロピレンが挙げられる。かかるオレフィン系樹脂
に官能基を有する化合物を反応させて変性することにより、官能性を付与することができ
る。
【0055】
官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基等が挙げられる。かかる官能基を有
する化合物としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体が挙げられる。不飽和カルボン酸
としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シト
ラコン酸、これらの酸無水物が挙げられる。特に無水マレイン酸等が用いられる。これら
の不飽和カルボン酸又はその誘導体による酸変性率としては、好ましくは0.1〜10重
量%である。
【0056】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、或いは、更に性能の向上をはかるために、上
記成分以外に、以下に示す任意成分を、適宜配合することができる。具体的には、酸化防
止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、核剤、難燃剤、分散剤、顔料、発泡剤など
を挙げることができる。
【0057】
本発明のプロピレン系重合体組成物は、上記した各配合成分を上記配合割合で配合・混
合し、溶融混練することにより製造することができる。この際、重合体組成物の製造に係
る公知の方法を用いることができる。例えば、溶融混練は、一軸押出機、二軸押出機、バ
ンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の
混練機を用いて混練・造粒することができる。この場合、各成分の分散を良好にすること
ができる混練・造粒方法を選択することが好ましく、通常は二軸押出機を用いて行われる
。この混練・造粒の際には、上記各成分の配合物を同時に混練してもよく、また性能向上
をはかるべく各成分を分割して混練する、すなわち、例えば、先ずポリプロピレン樹脂の
一部又は全部と熱可塑性エラストマーとを混練し、その後に残りの成分を混練・造粒する
といった方法を採用することもできる。また、マスターバッチを用いる混合法も有効に利
用できる。
【0058】
本発明のプロピレン系重合体組成物を用いて、各種成形法によって目的とする成形体と
することができる。たとえば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法などにより、それ
ぞれ射出成形体、押出成形体、ブロー成形体などにすることができる。射出成形法では金
型の転写性が優れる理由により、より優れたメタリック調が発現されるので、射出成形体
が好ましい。本発明の成形体は外装部品、内装部品、ランプハウジング等の自動車部品な
どの用途に使用することができる。
【0059】
本発明のプロピレン系重合体組成物は各種の機械的物性に優れている。例えば、高輝性
と剛性のバランスが優れており、JIS−K7203で測定した三点曲げ弾性率として、
900MPa以上、特に1000〜1500MPaであるものを容易に製造することがで
きる。900MPa以上であると、手で押したときの変形が少なく剛性感が優れ、自動車
部品などの大型製品への適用が容易となる。
【0060】
同様に、本発明の高輝性プロピレン重合体組成物は、高輝性と耐衝撃性のバランスが優
れているが、JIS−K7110で測定したアイゾッド衝撃強度は20kJ/m2以上、
特に22〜40kJ/m2であるものを容易に製造することができる。20kJ/m2以上
であると、耐衝撃性が高く、自動車の外装部品などの衝撃が要求される製品への適用が一
層容易となる。
【実施例1】
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に
限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の測定方法は下記の通りであ
る。
1.融解熱量(ΔHm):本文記載の方法
2.融点(Tm):本文記載の方法
3.メルトフローレート(MFR):本文記載の方法
【0062】
4.光線透過率:
プロピレン系重合体組成物を射出成形にて板厚2mmの平板を成形温度220℃、金型
温度は40℃で成形した試験片について、変角光度計(日本電色工業社製 GC 500
0L)を用いて投光角度0°(試験片に対して法線方向)、受光角度0°で測定した。な
お、この際の組成物中には酸化防止剤0.05重量%は配合しているものの、光輝剤、着
色剤、無機充填材は含まれておらず、試験片の成形条件は以下の通りである。
成形機:東芝機械社製、射出成形機IS170
型締め力:170トン
金型:100mm×358mm×2.0mm、鏡面仕上げ(ペーパー#1000研磨後、硬質クロームメッキを施し、更にバフ研磨#3000による鏡面仕上げ)
シリンダー温度:185/220/220/210℃(ノズル)
金型温度:40℃
充填時間:4秒
射出圧力:80MPa
保圧圧力:60MPa
背圧:1.2MPa(ゲージ圧)
冷却時間:20秒
【0063】
5.高輝感(メタリック調外観):
光輝剤を含むプロピレン系重合体組成物の試験片(板厚2.5mm)を用いて、目視に
てキラキラ感を評価した。試験片は射出成形により製造した。詳細については後述する。
【0064】
判断基準 ○:深みのあるキラキラ感あり
△:キラキラ感あり
×:キラキラ感なし
6.三点曲げ弾性率:JIS−K7203に従い測定し、単位MPaで表示した。
7.アイゾッド衝撃強度:JIS−K7110(Vノッチ有り)に従い測定し、単位kJ
/m2で表示した。
【0065】
[実施例1〜6]
1.原材料の調達
(1)プロピレン系重合体(a1)
市販品の中から、メタロセン触媒又はチーグラー触媒を用いて製造された各種の材料を
選択して使用した。各材料(PP−1,2,3,4,5)の一般名称、物性、販売者名及
び商品名を表1に示す。また、各材料について、その融解熱量(ΔHm)及び融点(Tm
)に基づいて、式(1)及び式(2)
ΔHm>1.16×Tm−78 (1)
ΔHm>1.05×Tm−61 (2)
の右辺値を計算し、ΔHmとの大小関係を比較することにより、式(1)及び式(2)の充足
性を判定した。各材料(PP−1,2,3,4,5)の判定結果を表2に示した。表2中
、○は充足、×は未充足を示す。
【0066】
(2)繊維状無機充填材(a2)
宇部マテリアル社製、ウイスカー(塩基性硫酸マグネシウム無機繊維)
商品名:モスハイジ(繊維径0.5〜1.0μm、繊維長10〜30μm)
(3)熱可塑性エラストマー(a3)
エチレン・オクテン−1エラストマー(ダウ・ケミカル日本社製、ENGAGE820
0、MFR5g/10分(190℃、2.16kg)、密度0.87g/cm3
(4)光輝剤(B)
東洋アルミニウム社製、アルミニウムフレークのメタリックマスターバッチ
商品名:TPK178G−K(アルミ含量20重量%)、平均粒径60μm
(5)着色剤(C)
三菱化学社製、黒色顔料、カーボンブラック#30、粒子径30nm
(6)その他の配合材
日本タルク社製、タルク(非繊維状充填材)、商品名:ミクロンエースC−3
【0067】
2.原材料の配合
上記の各原材料を用いて表3に示す割合で各々配合し、更に原材料100重量部に対し
て、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名「IRGANOX1010FP」、チバ
スペシャルティケミカルズ社製)0.10重量部、リン系酸化防止剤(商品名「IRGA
FOS168」、チバスペシャルティケミカルズ社製)0.05重量部、ステアリン酸カ
ルシウム(商品名「カルシウム・ステアレート」、日東化成工業社製)0.05重量部を
それぞれ配合し、ヘンシェルミキサーにて予備混合した。次いで、二軸押出機を用いて樹
脂温度210℃で溶融混練を行い、重合体組成物を得た。
【0068】
3.成形品(試験片)の製造とその評価
上記で得られた重合体組成物を用いて、下記の成形条件で射出成形により各種評価用の
試験片を得た。同試験片を用いて高輝性、三点曲げ弾性率及びアイゾッド衝撃強度を測定
した。また、光輝剤、着色剤、無機充填材を含まない(但し、酸化防止剤は含む)試験片
について光線透過率を測定した。これらの結果を表3に示す。
<高輝感評価用>
成形機:東芝機械社製、射出成形機IS170
型締め力:170トン
金型:100mm×358mm×2.5mmt平板、鏡面仕上げ(硬質クロームメッキ後
、バフ研磨:研磨剤#3000)
シリンダー温度:185/220/220/210℃(ノズル)
金型温度:40℃
充填時間:4秒
射出圧力:80MPa
保圧圧力:60MPa
背圧:1.2MPa(ゲージ圧)
<三点曲げ弾性率及びアイゾッド衝撃評価用>
成形機:東芝機械社製、EC100
型締め力:100トン
金型:JIS試験片
シリンダー温度:185/220/220/210℃(ノズル)
金型温度:40℃
充填時間:4秒
射出圧力:80MPa
保圧圧力:60MPa
背圧:1.2MPa(ゲージ圧)
【0069】
[比較例1〜6]
表4に示す配合とする以外は、実施例1〜6と同様にして評価を行い、その結果を表4
に示した。
【0070】
本評価の結果、繊維状無機充填物を添加したプロピレン重合体組成物として光線透過率
に優れた重合体組成物に対して光輝剤及び着色材を添加することで、機械的性質に優れた
高輝感のある製品を得ることが出来た。特に、表3と表4の結果を比較することにより、
次の事実が認められる。即ち、
1.非繊維状充填材としてタルクを用いるとプロピレン系重合体組成物の光線透過率に
劣り、高輝性が出ない(比較例1)。
2.比較例1において、エラストマーを同量使用し、タルクを使用しない代わりに、プ
ロピレン系重合体の使用量を増加させると、高輝性は出るものの3点曲げ弾性率が劣る(
比較例2)。
3.エラストマーや無機充填材を使用しない場合は、高輝性は出るものの耐衝撃性に劣
る(比較例3)。
4.融解熱量が過大で、かつ高融点を示すチーグラー系ブロック共重合体は高輝性に問
題がある(比較例4,5)。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(a1)50〜98重量%と繊維状無機充填材(a2)1〜30重
量%と熱可塑性エラストマー(a3)1〜35重量%とを含有し[(a1)+(a2)+
(a3)は100重量%である。]、板厚2mmの成形品としたときの、受光角度0°に
おける光線透過率が0.3〜10%であるプロピレン系重合体組成物(A)に、光輝剤(
B)及び着色剤(C)を配合してなる高輝性プロピレン系重合体組成物。
【請求項2】
繊維状無機充填材(a2)が、ウイスカーである請求項1記載の高輝性プロピレン系重
合体組成物。
【請求項3】
プロピレン系重合体(a1)の融解熱量(ΔHm)が70〜90mJ/mg、融点(Tm)が115〜150℃、且つ、融点(Tm)と融解熱量(ΔHm)とが式(1)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の高輝性プロピレン系重合体組成物。
ΔHm>1.16Tm−78 ・・・ 式(1)
【請求項4】
プロピレン系重合体(a1)が、(A)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物
【化1】

(式中、A1 及びA2 は共役五員環配位子(同一化合物内においてA1 及びA2は同一で
も異なっていてもよい)を示し、Qは2つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結
合性基を示し、Mは周期表第4〜6族から選ばれる金属原子を示し、X及びYは水素原子
、ハロゲン原子、炭化水素基、アミノ基、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有炭化水素基、
窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示す。)
(B)アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換す
ることが可能なイオン性化合物、ルイス酸、珪酸塩を除くイオン交換性層状化合物、無機
珪酸塩、からなる群より選ばれる一種以上の物質、及び(C)有機アルミニウム化合物
の接触物であるメタロセン触媒の作用により得られたものである請求項1〜3のいずれか
1項に記載の高輝性プロピレン系重合体組成物。
【請求項5】
プロピレン系重合体組成物(A)100重量部に対して、光輝剤(B)0.01〜10
重量部、及び着色剤(C)0.01〜10重量部を配合してなることを特徴とする請求項
1〜4のいずれか1項に記載の高輝性プロピレン系重合体組成物。
【請求項6】
高輝性プロピレン系重合体組成物は、三点曲げ弾性率(JIS−K7203)が900
MPa以上、アイゾッド衝撃強度(JIS−K7110)が20kJ/m2以上であるこ
とを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高輝性プロピレン系重合体組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の高輝性プロピレン系重合体組成物を成形してなる
自動車内外装部品。

【公開番号】特開2009−35713(P2009−35713A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74177(P2008−74177)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】