説明

プローブ方法及びプローブ装置

【課題】対向する2つの撮像光学系に対して、ウエハをウエハステージから取り外したり、ターゲットパターンを光学系の光軸位置に移動したりすることなく、2つの光学系の光軸位置の相対関係を高精度にキャリブレーションすることが可能となると同時に、2つの光学系の画像データ1画素の大きさ、カメラの取り付け角度も一括してキャリブレーションできる。
【解決手段】キャリブレーション用2次元パターンを投影する投影光学系42を具える第1光学系32と、第1光学系32に対向するように配置される第2光学系22とを具えて構成される。第1光学系は、被検査半導体結晶基板26の電極を認識するための光学系である。第2光学系は、接触電極38を認識するための光学系である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体素子等の製造工程において電気特性検査を行うプローブ方法及びプローブ装置に関し、特に測定対象素子の電極パッドと接触電極とを高精度で接触させる方法及びこの方法を実現するプローブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程においては、1枚の半導体結晶基板に同一構造の半導体素子が規則的に配置されて形成され、ダイシング工程でこれら半導体素子が個片化されて単独の半導体素子として切り出される。一般に、ダイシング工程によって個片化される前の製造工程で1枚の半導体結晶基板に形成されている半導体素子の電気的特性を評価するためのプローブ検査が行われる。
【0003】
プローブ検査では、半導体結晶基板に規則的に配置されて形成されている半導体素子ごとに、半導体素子の電極パッドに接触電極を接触させて個々の半導体素子それぞれにつき、順次入力電気信号を入力しこれに対して出力される電気信号を観測することによって電気特性の性能評価が行われる。
【0004】
プローブ装置には、プローブ検査の対象となる半導体素子が形成された被検査半導体結晶基板を保持し水平方向及び垂直方向及び回転移動が可能であるウエハステージと、この被検査半導体結晶基板に形成されている半導体素子の電極パッドを検出し接触電極を正確に電極パッドに接触させるためのアライメント機能手段が具えられている。
【0005】
アライメント機能手段を具えたプローブ装置として、例えば、以下に示す第1〜第4のプローブ装置が開示されている。
【0006】
第1のプローブ装置は、接触電極と電極パッドとの位置合わせを相対的に行うためXYZステ−ジに載置台を周回転可能に設け、被検査半導体結晶基板を載置台上に載せこの載置台を移動させて、載置台の上方に設けられたプローブカードのプローブに基板の電極を接触させて電気的測定を行うプローブ装置(特許文献1参照)及びこのプローブ装置を利用するプローブ方法(特許文献2参照)が開示されている。
【0007】
このプローブ装置では、視野が上向きでかつ合焦面が載置台上の被検査半導体結晶基板よりも上方に位置するようにXYZステ−ジのZステージ上に設けられ、接触電極を撮像するための第1撮像手段と、視野が下向きとなるように載置台上の基板よりも上方に設けられ、被検査半導体結晶基板を撮像するための第2撮像手段と、この第2撮像手段よりも下方に設けられ、第1撮像手段及び第2撮像手段の合焦面の高さ位置を合わせるためのタ−ゲットとが具えられたアライメント機能手段が実現されている。
【0008】
そして、第1撮像手段及び第2撮像手段の合焦面の位置合わせを行うと共に、第1撮像手段及び第2撮像手段によりそれぞれ接触電極及び電極パッドを撮像してそれぞれのZ座標を求め、これらのZ座標に基づいて、接触電極に対する電極パッドの高さ位置を求める手法がとられている。タ−ゲットは、XYZステ−ジのZステ−ジ上に設けられており、第1撮像手段の合焦面に相当する位置と第1撮像手段の視野の外でかつ合焦面より下方の位置との間で進退自在に構成されている。
【0009】
第2のプローブ装置は、プローブカードが取り付けられるプローブカード部と、被検査半導体結晶基板を載置する載置台と、この載置台をX、Y方向に駆動するXYステージと、このXYステージ上に設けられた載置台を垂直方向及び回転方向に駆動する駆動機構とを具え、載置台を駆動して被検査半導体結晶基板とプローブカードの測定針とを位置合わせして接触させることにより被検査半導体結晶基板の電気的特性を測定するプローブ装置である(特許文献3参照)。このプローブ装置では、載置台がプローブカードの測定針の先端の位置を検出するカメラが着脱自在に取り付けられており、装置本体の所定位置にカメラの位置を認識するためのアライメントマークが設けられている。
【0010】
第3のプローブ装置は、被検査半導体結晶基板を表面に保持しかつこの表面に垂直な方向に昇降可能なチャックに、保持中の被検査半導体結晶基板の表面に配列された任意の半導体素子の平面内の位置を光学的に検出する第1の光学的位置検出手段と、半導体素子の電極パッドに接触させる接触電極の平面内の位置を光学的に検出する第2の光学的位置検出手段と、チャックに設けられ第1および第2の光学的位置検出手段相互の位置合わせに使用されるターゲットとを具えて構成されている(特許文献4参照)。
【0011】
第4のプローブ装置は、上述の第1〜第3のプローブ装置で用いられる物理的な目標体を用いず、支持台及びステージに設けられた各カメラの基準位置を定めることが可能なプローバ装置である(特許文献5参照)。このプローブ装置は、接触電極を保持する支持台と、支持台に対向して配置された被検査半導体結晶基板が載置されるステージと、被検査半導体結晶基板上に予め定められた試験点を認識するために支持台に設けられた試験点用カメラと、接触電極を認識するためにステージに設けられたプローブ用カメラとを具えて構成されている。そして、試験点用カメラ及びプローブ用カメラの一方の光軸に沿ってスポット光を進ませて、このスポット光を他方のカメラに入射させることによってこれら2台のカメラの基準位置を定める構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2986141号公報
【特許文献2】特許第2986142号公報
【特許文献3】特許第2661872号公報
【特許文献4】特許第2906094号公報
【特許文献5】特開2003−303865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
測定対象素子の電気特性を計測するプローブ装置は、反復繰り返し動作において常に十分に高い精度での動作が要求されるため、光学系を支持する機械系の熱膨張や収縮、機械系または光学系移動時の位置ずれ、光学系に取り付けるカメラの画素解像度などを常に正確に補正しておくことが要求される。
【0014】
ここで、プローブ装置を半導体素子の電気特性検査装置として機能させることを前提とした場合は、測定対象素子とは半導体素子等を指すが、この発明の技術的範囲は、測定対象素子として半導体素子のみに限定されるものではない。以下の説明において、便宜上電極パッドを具える半導体素子を取り上げるが、この発明の適用対象である測定対象素子が半導体素子に限定されるものではない。
【0015】
上述の第1〜第3のプローブ装置は、接触電極及び測定対象素子上の電極の認識に使用される2つの光学系が相対移動可能な別々の支持台とステージに設けられているので、位置決めを正確に行うためには2つの光学系の基準位置を決定する必要がある。そこで、接触電極と測定対象素子との位置合わせ方法は、一方の光学系の光軸を含む焦点面に設置された目標体を他方のカメラで認識し、認識された目標体の相互の位置から予め定められた距離だけ離れた位置に光学系の光軸が存在するものとして、2つの光学系の基準位置を決定するという方法が取られている。
【0016】
しかしながら、上述の第1〜第3のプローブ装置において、測定対象素子を測定するための光学系(画像処理するためカメラを含めた撮像光学系)と測定対象素子の位置関係、及び、接触電極を測定するための光学系(画像処理するためカメラを含めた撮像光学系)と接触電極の位置関係を測定する方法は、高温環境下でのテスト、低温環境下でのテスト、及び機械系そのものの経時変化を考慮すると確立されているとはいえない。光学系の基準位置は不変とはいえず位置決めに誤差を生じさせる可能性もある。
【0017】
ここで、測定対象素子である電極パッドを認識するための光学系であって、画像処理するためカメラを含めた撮像光学系を、以後、測定対象素子認識光学系と呼ぶこともある。また、接触電極を認識するための光学系であって画像処理するためカメラを含めた撮像光学系を、以後、接触電極認識光学系と呼ぶこともある。
【0018】
測定対象素子を撮像するための光学系と接触電極を撮像するための光学系との位置関係は常に精度を維持するため補正をする必要があるが、上述の第1〜第4のプローブ装置におけるプローブ方法では、補正の対象となるターゲットパターンを物理的に2つの光学系の焦点位置に設置する必要がある。ステージ自身は測定対象素子の温度環境と合わせるために低温や高温にする場合があり、ターゲットパターン自身が温度による影響を受けてしまう。また、ターゲットパターンが置かれる位置は接触電極認識光学系で接触電極を撮像する位置と競合するので、ターゲットパターンを移動させるか、接触電極認識光学系を移動させなければ、対象物測定の稼動中(テスティング中)には補正値を求める測定が出来ないという問題がある。
【0019】
上述の第4のプローブ装置によるプローブ方法は、ターゲットパターンをステージ上に置く必要が無いという点で改善されているが、光学系の補正を行うための画像処理において撮像されたスポット光を点像として識別しているという点で、その識別においてあいまいさが発生する。点像を使用した場合、点像のぼけ具合に基づいて焦点高さを判定することしかできないため精度が甘くなり、高さ方向の位置合わせの誤差を小さくすることが難しい。そして、点像を用いる方法によれば、光軸の中心位置ずれが観測されるだけで、画像処理するためカメラを含めた撮像光学系に対して、カメラの1画素の大きさ、カメラ取り付け角度に関しては、別途計測することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明の発明者は、測定対象素子認識光学系あるいは接触電極認識光学系の一方にキャリブレーション用2次元パターンを投影する投影光学系を具え、このキャリブレーション用2次元パターンを測定対象素子認識光学系及び接触電極認識光学系の双方で撮像する構成とすることによって、上述した諸課題が解決されるとの認識に至った。
【0021】
そこで、この発明の目的は、被検査半導体結晶基板の温度に影響されないで上述の2つの認識光学系に対して、カメラの1画素の大きさ、カメラ取り付け角度を、一括して計測が可能であり、ウエハをウエハステージから退避させることなく高精度で2つの光学系においてそれぞれ取得される位置座標間の相対関係をキャリブレーションすることが可能であるプローブ方法及びこのプローブ方法を実現させるプローブ装置を提供することにある。
【0022】
上述の理念に基づくこの発明の要旨によれば、以下のプローブ方法及びこのプローブ方法を実現するためのプローブ装置が提供される。
【0023】
この発明の基本構成のプローブ方法は、電極を有する測定対象素子の電極に接触電極を接触させてこの測定対象素子の電気的特性を評価するプローブ方法であって、2次元パターン実像形成ステップと、第1光学系画像データ取得ステップと、第2光学系画像データ取得ステップと、キャリブレーションステップとを含んでいる。
【0024】
2次元パターン実像形成ステップは、投影光学系によって相対座標キャリブレーション用2次元パターンの実像を形成するステップである。第1光学系画像データ取得ステップは、第1光学系によって2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップである。第2光学系画像データ取得ステップは、第2光学系によって2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップである。キャリブレーションステップは、第1及び第2光学系によってそれぞれ取得された2次元パターンの実像の画像データに基づき、第1光学系で取得される画像データの第1光学系位置座標と第2光学系で取得される画像データの第2光学系位置座標との相対関係をキャリブレーションするステップである。
【0025】
上述のこの発明の基本構成のプローブ方法は、この発明の基本構成のプローブ装置によって実施される。この発明の基本構成のプローブ装置は、電極を有する測定対象素子の電極に接触電極を接触させてこの測定対象素子の電気的特性を評価するプローブ装置であって、キャリブレーション用2次元パターンを投影する投影光学系を具える第1光学系と、第1光学系に対向するように配置される第2光学系とを具えて構成される。
【0026】
投影光学系によって上述の2次元パターン実像形成ステップが実現され、第1及び第2光学系によって上述の第1及び第2光学系画像データ取得ステップが実現される。そして、第1及び第2光学系によって、投影されて形成された2次元パターンの実像の画像データをそれぞれ取り込み、これらの2次元パターンの実像の画像データに基づき、第1光学系で取得される画像データの第1光学系位置座標と第2光学系で取得される画像データの第2光学系位置座標との相対関係をキャリブレーションするキャリブレーションステップが実現される。
【0027】
上述のこの発明の基本構成のプローブ方法及びプローブ装置に基づき、第1及び第2のプローブ方法、及びこれらの方法をそれぞれ実現するための第1及び第2のプローブ装置が提供される。
【0028】
この発明の第1のプローブ方法は、上述の第1光学系画像データ取得ステップが、電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系である第1光学系によって、投影光学系の結像位置に置かれた不透明な平面物体の平面に形成される2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップとして構成され、第2光学系画像データ取得ステップが、接触電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系である第2光学系によって、2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップとして構成される。
【0029】
そして、第1及び第2光学系調整ステップと、電気的特性計測ステップとを更に含んで構成される。第1及び第2光学系調整ステップは、第1及び第2光学系がそれぞれ取得した2次元パターンの実像の画像データにより、第1及び第2光学系のそれぞれの画像データの解像度、及び第1及び第2光学系のそれぞれのカメラの取り付け角度をキャリブレーションするステップである。また、電気的特性計測ステップは、測定対象素子と接触電極とを、互いに順次相対移動を行いながら接触させて測定対象素子の電気的特性を計測するステップである。
【0030】
上述のこの発明の第1のプローブ方法は、この発明の第1のプローブ装置によって実施される。この発明の第1のプローブ装置の第1及び第2光学系はそれぞれ、測定対象素子認識光学系及び接触電極認識光学系として構成される。
【0031】
第1光学系は、電極を認識するための撮像光学系であって画像処理するためカメラを含めた撮像光学系であり、この投影光学系の結像位置に置かれた不透明な平面物体の平面に形成される2次元パターンの実像の画像データを取り込む光学系として構成される。第2光学系は、接触電極を認識するための撮像光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系であって、投影光学系によって形成される2次元パターンの実像の画像データを取り込む光学系として構成される。
【0032】
そして、第1及び第2光学系は、それぞれ取得した2次元パターンの実像の画像データにより、第1及び第2光学系のそれぞれの画像データの解像度、及び第1及び第2光学系のそれぞれのカメラの取り付け角度の測定が行われる。そして、この発明の第1のプローブ装置は、測定対象素子と接触電極とを、互いに順次相対移動を行いながら接触させて測定対象素子の電気的特性を計測する構成とされている。
【0033】
この発明の第2のプローブ方法は、上述の第1光学系画像データ取得ステップが、第1光学系を、接触電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系とすることによって、2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップとして構成され、第2光学系画像データ取得ステップが、第2光学系を、電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系とすることによって、投影光学系の結像位置に置かれた不透明な平面物体の平面に形成される2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップとして構成される。
【0034】
この発明の第2のプローブ方法において、第1及び第2光学系調整ステップと電気的特性計測ステップとは、上述の第1のプローブ方法と同一である。
【0035】
上述のこの発明の第2のプローブ方法は、この発明の第2のプローブ装置によって実施される。この発明の第2のプローブ装置の第1及び第2光学系はそれぞれ、接触電極認識光学系及び測定対象素子認識光学系として構成される。
【0036】
第1光学系は、接触電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系であって、投影光学系によって形成される2次元パターンの実像の画像データを取り込む光学系として形成される。
【0037】
第2光学系は、電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系であり、投影光学系の結像位置に置かれた不透明な平面物体の平面に形成される2次元パターンの実像の画像データを取り込む光学系として形成される。
【0038】
この発明の第2のプローブ装置は、第1及び第2の光学系の構成を除いて、上述の第1のプローブ装置と同一である。
【0039】
上述のプローブ装置(第1及び第2のプローブ装置を含む。)において、投影光学系によって形成される2次元パターンの実像が、第1及び第2光学系のカメラによって第1及び第2光学系のカメラの撮像面上に結像され、かつ2次元パターンの中心位置が第1及び第2光学系のカメラのそれぞれの撮像面にそれぞれの撮像面の中心位置と合致して結像されるように、投影光学系の姿勢及び位置を調整するための投影光学系姿勢位置調整手段を更に具えるのが好適である。
【発明の効果】
【0040】
この発明の基本構成のプローブ装置を用いるこの発明の基本構成のプローブ方法によれば、点像パターンではなく2次元パターンを利用して、第1及び第2光学系でそれぞれこの2次元パターンの実像の画像データが取り込まれる。そして、第1光学系で取得される画像データの第1光学系位置座標と第2光学系で取得される画像データの第2光学系位置座標との相対関係のキャリブレーションが行われる。そのため、このキャリブレーションに必要なカメラの1画素の大きさ、カメラ取り付け角度を、一括して計測することが可能である。
【0041】
また2次元パターンとして、投影光学系によって形成される実像が使われるので、ウエハステージに設置された被検査半導体結晶基板の温度に影響されないで、高精度でキャリブレーションすることが可能である。また、ウエハステージの位置を避けて、第1光学系と第2光学系とを対向する位置に移動させれば、ウエハをウエハステージから退避させることなく高精度でキャリブレーションすることが可能である。
【0042】
この発明の第1のプローブ装置は、第1及び第2光学系がそれぞれ測定対象素子認識光学系及び接触電極認識光学系として構成されており、この発明の第2のプローブ装置は、第1及び第2光学系がそれぞれ接触電極認識光学系及び測定対象素子認識光学系として構成される。どちらの構成のプローブ装置も、得られる効果は同一であるので、どちらの構成のプローブ装置を採用するかは、実際に使用する際の便宜を考慮して決定される設計的事項に属する。
【0043】
ここでは、この発明の第1のプローブ装置によって得られる効果について説明するが、第1及び第2光学系をそれぞれ接触電極認識光学系及び測定対象素子認識光学系と読み替えれば、第2のプローブ装置に対する効果の説明として成立する。
【0044】
投影光学系によって形成される上述の2次元パターンの実像は、第1及び第2光学系によって観測された場合、第1及び第2光学系の結像面に合焦点されて結像されるように調整し、かつ第1光学系側から2次元パターンを投影すると、測定対象素子の撮像距離と一致した位置にこの2次元パターンの実像が形成されるように調整しておくことが可能である。
【0045】
この状態で、投影光学系によって形成される2次元パターンの実像の位置に不透明な平面物体を置けば、この2次元パターンの実像は第1光学系によって観測が可能な状態となり、第1光学系によって2次元パターンの画像情報を取り込むことができる。このようにして第1光学系によって2次元パターンの画像情報を取り込んだらこの画像情報を記憶装置に記憶させる。
【0046】
また、この不透明な平面物体を取り去れば、第2光学系によってこの2次元パターンの実像を観測することが可能な状態となり、第2光学系によってこの2次元パターンの画像情報を取り込むことができる。そして、この場合もこの画像情報を記憶装置に記憶させる。このようにして記憶された第1及び第2光学系によって取り込まれた画像情報をそれぞれ記憶装置から読み出して、両者の画像情報に基づき第1光学系位置座標と第2光学系位置座標との相対関係のキャリブレーションが行われる。
【0047】
以上説明したように、投影光学系によって形成される2次元パターンの実像は、上述した従来の第1〜第3のプローブ装置において利用された物理的な目標体に相当する役割を果たしている。
【0048】
2次元パターンとして2次元格子パターンのような空間的に同一のパターンが周期的に連続するパターンを利用すれば、第1及び第2光学系位置座標のキャリブレーションに必要な、それぞれの光学系が具えるカメラの1画素の大きさ、カメラ取り付け角度の計測が容易となり、第1及び第2光学系位置座標のキャリブレーションが容易に行える。
【0049】
また、第1及び第2光学系を互いに対向する位置に配置することが可能である場所であれば、ターゲットパターンを挟んで両者を対向させる必要はなく、必要に応じて光学系を2次元パターンの実像位置に移動するだけで、上述のキャリブレーションを行うことが可能である。
【0050】
第1及び第2光学系の光軸と投影光学系の光軸とは、光軸を共有している必要がある。この発明の基本構成のプローブ装置、及び第1及び第2のプローブ装置は、投影光学系姿勢位置調整手段を具えることによって、この条件を満たすように投影光学系の光軸を、第1及び第2光学系の光軸に対して調整することが可能である。
【0051】
すなわち、投影光学系姿勢位置調整手段によって、投影光学系によって形成される2次元パターンの実像が、第1及び第2光学系のカメラによって第1及び第2光学系のカメラの撮像面上に結像され、かつ2次元パターンの中心位置が第1及び第2光学系のカメラのそれぞれの撮像面にそれぞれの撮像面の中心位置と合致するように結像させ投影光学系の姿勢及び位置を調整すれば、第1及び第2光学系の光軸と投影光学系の光軸とが共通する光軸を共有するよう設定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施形態のプローブ装置の概略的構成図である。
【図2】投影光学系、測定対象素子認識光学系及び接触電極認識光学系の概略的構成を示す図であり、(A)はこれら光学系の概略的立体構造図であり、(B)はこれら光学系の光軸を含む平面で切断した概略的断面図である。
【図3】投影光学系姿勢位置調整手段の構成を示す概略的構造図であり、(A)は投影光学系姿勢位置調整手段が具える結像光学系の光軸とほぼ直交する平面で切断した断面を示す図であり、(B)は結像光学系の光軸を含む平面で切断した断面を示す図である。
【図4】測定対象素子認識光学系によって2次元パターンの実像の画像データを取得するステップの説明に供する図である。
【図5】接触電極認識光学系によって2次元パターンの実像の画像データを取得するステップの説明に供する図である。
【図6】接触電極を接触電極認識光学系によってアライメントする様子を示す図である。
【図7】ウエハの表面の電極パッドを測定対象素子認識光学系によってアライメントする様子を示す図である。
【図8】ウエハの表面の電極パッドと接触電極とを、互いに順次相対移動を行いながら接触させてウエハに形成されているチップの電気的特性を計測する電気的特性計測ステップの説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明が理解できる程度に各構成部分を概略的に示してあるに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、各図において同じ構成要素については同一の番号を付して示し、これらの機能等に関して、その重複する説明を省略することもある。
【0054】
<この発明の実施形態のプローブ装置>
図1、図2(A)及び(B)を参照して、この発明の実施形態のプローブ装置として、第1及び第2光学系がそれぞれ測定対象素子認識光学系及び接触電極認識光学系として構成される第1のプローブ装置の実施形態を取り上げて説明する。第2のプローブ装置とは、第1及び第2光学系のどちらに投影光学系を設置させるかが相違するのみであり、この発明の特徴は第1のプローブ装置の実施形態を取り上げることで十分説明することができる。
【0055】
まず、図1を参照してこの発明の実施形態のプローブ装置の概略的構成を説明する。図1は、この発明の実施形態のプローブ装置の概略的構成図である。
【0056】
この発明の実施形態のプローブ装置は、キャリブレーション用2次元パターンを投影する投影光学系42を具える第1光学系32と、第1光学系32に対向するように配置される第2光学系22とを具えて構成される。
【0057】
ここで、第1光学系32は、被検査半導体結晶基板(以後、ウエハ26ということもある。)の電極を認識するための光学系であって画像処理するため測定対象素子撮像カメラ28を含めた撮像光学系であり、投影光学系42の結像位置に置かれた不透明な平面物体の平面に形成される2次元パターンの実像の画像データを取り込む機能を有している。
【0058】
第2光学系22は、接触電極38を認識するための光学系であって画像処理するための接触電極撮像カメラ18を含めた撮像光学系であって、投影光学系42によって形成される2次元パターンの実像の画像データを取り込む機能を有している。接触電極38は複数の電極のセットとして構成されている場合もあるので、図1において、複数の接触電極を接触電極38として示してあるが、単数の電極で接触電極38が構成される場合もある。また、接触電極38としてポゴピン又は垂直針形状の接触電極が使われることが多い。そこで、ポゴピン又は垂直針形状の接触電極を含めて単に接触電極38というものとする。
【0059】
この発明の実施形態のプローブ装置の詳細な構成を以下に説明する。図1に示すこの発明の実施形態のプローブ装置は、ウエハ26を搭載するウエハステージ16と、ステージを回転移動させるθ移動ステージ15と、これを保持する支持台14、接触電極38、接触電極38を保持する接触電極固定台36、接触電極固定台36を保持する接触電極支持台30を具えており、ウエハステージ16には測定するウエハ26が搭載される。
【0060】
支持台14はXYZ移動ステージ12に固定されており、XYZ移動ステージ12は、XYZ移動ステージ支持台10に固定されている。図1では図示を省略してあるが、XYZ移動ステージ支持台10には、XYZ移動ステージ12が固定されている他、接触電極支持台30も付属アーム(図示を省略してある。)を介して固定されている。すなわち、この発明の実施形態のプローブ装置は、XYZ移動ステージ支持台10を土台として、接触電極支持台30及びXYZ移動ステージ12とが一体化されて構成されている。
【0061】
ウエハ26には半導体素子として個片化される前の状態の半導体素子(以後、チップということもある。)が格子上に並んでおり、チップ上には電気的接触を取るための電極パッド又はBGA(Ball Grid Array)などのボール状の電極が形成されている。以後、電極パッド又はBGAなどのボール状の電極をまとめて電極パッドということもある。
【0062】
支持台14には接触電極38を撮像する接触電極撮像カメラ18を具える第2光学系としての接触電極認識光学系22が設置され、接触電極認識光学系22は撮像距離の調整が可能な方法で支持台14に取り付けてある。一方、接触電極支持台30には、ウエハステージ16上のウエハ26を撮像する測定対象素子撮像カメラ28を具える第1光学系としての測定対象素子認識光学系32が取り付けられる。
【0063】
図2(A)及び(B)を参照して、測定対象素子認識光学系及び接触電極認識光学系の概略的構成について説明する。図2(A)及び(B)は、投影光学系、測定対象素子認識光学系及び接触電極認識光学系の概略的構成を示す図であり、図2(A)はこれら光学系の概略的立体構造図であり、図2(B)はこれら光学系の光軸を含む平面で切断した概略的断面図である。
【0064】
図2(A)及び(B)に示すように、測定対象素子認識光学系32及び接触電極認識光学系22は互いに対向するように配置されており、測定対象素子認識光学系32に設置された投影光学系42によって2次元パターンの実像60が形成されるように構成されている。図2(A)及び(B)において、光束62及び光束64はそれぞれ測定対象素子認識光学系32及び接触電極認識光学系22から出力される光束を模式的に示したものである。
【0065】
測定対象素子認識光学系32は、ウエハ26の表面を照明するための光源41を具える同軸照明光学系40を具えている。光源41からの照射光は同軸照明光学系40で光束にされて、ビームスプリッター70で反射されてウエハ26の表面を照明する。図2(A)及び(B)では、ウエハ26の位置に2次元パターンの実像60が投影されている様子を示している。
【0066】
しかしながら、測定対象素子認識光学系32及び接触電極認識光学系22の光学的なアライメントに関する説明においては、適宜2次元パターンの実像60が形成される位置をウエハ26がおかれる位置と読み替えて理解されたい。測定対象素子認識光学系32及び接触電極認識光学系22は互いの相対的な位置関係を維持しつつ移動させて、2次元パターンの実像60が形成される位置に接触電極38及び測定対象素子の電極パッドを配置して計測が行われる。
【0067】
また、測定対象素子認識光学系32は、投影光学系42を具えている。投影光学系42は、2次元パターンが形成された2次元パターン印刷ガラスマスク52を具え、この2次元パターン印刷ガラスマスク52を光源55が照明する構成となっている。2次元パターン印刷ガラスマスク52を透過した光束は、投影光学系42が具える結像光学系58を通過して、ビームスプリッター72で反射されて2次元パターンの実像60を形成する。
【0068】
実像60が形成される位置に不透明平面物体66を置くことによって、測定対象素子認識光学系32によって実像60の画像データが取得される。測定対象素子撮像カメラ28は、実像60の画像を撮像面39に結像させる。測定対象素子撮像カメラ28には、当然に実像60の画像を撮像面39に結像させるための撮像レンズ(図示を省略してある。)を具えている。
【0069】
接触電極認識光学系22は、接触電極38を照明するための光源21を具える同軸照明光学系20を具えている。光源21からの照射光は同軸照明光学系20で光束にされ、ビームスプリッター68で反射されて接触電極38を照明する。
【0070】
上述の不透明平面物体66を取り去れば、接触電極認識光学系22によって実像60の画像データが取得される。接触電極撮像カメラ18は、実像60の画像を撮像面19に結像させる。接触電極撮像カメラ18には、当然に実像60の画像を撮像面19に結像させるための撮像レンズ(図示を省略してある。)を具えている。
【0071】
接触電極固定台36及び測定対象素子認識光学系32は、接触電極支持台30に固定される。接触電極認識光学系22はX,Y,及びZ方向に滑らかに調整することが可能な支持台14に保持され、ウエハステージ16は更にθ方向に調整可能なθ移動ステージ15の上に固定される。ここでは、測定対象素子認識光学系32及び接触電極認識光学系22は、予め最良の撮像距離で撮像できるように調整された位置に設置されているものとする。尚、Z軸は、ウエハステージ16とは別に動作可能な単独の機構をもつこともある。
【0072】
ウエハ26が、ローディング装置(図示を省略してある。)によってウエハステージ16上に運ばれた後、チップ上の電極パッドを接触電極38に正確に接触させるため、チップの縦横配列と接触電極の位置が合致するように、接触電極認識光学系22で画像処理によるパターンマッチングにより接触電極38の位置を求め、測定対象素子認識光学系32で画像処理によるパターンマッチングによりウエハ26の位置(ウエハ上のチップの位置)を求める。
【0073】
接触電極38及びウエハ26が位置決めされた後に、ウエハ26上のチップの電極と接触電極38とが正確に重なるようにウエハステージ16をコントロールして、ウエハ26上のチップの電極と接触電極とを接触させて、ウエハ26に形成されているチップの電気的特性を測定する。また、ここでは、位置決めすることをアライメントするということもある。このようにこの発明の実施形態のプローブ装置においては、一度ウエハがアライメントされると、ウエハ26と接触電極38とを、互いに順次相対移動を行いながら接触電極38とウエハ26の電極とを接触させてウエハ26に形成されているチップの一つ一つに対する電気的特性が計測される(電気的特性計測ステップ)。
【0074】
接触電極38は接触電極固定台36を通して、接触電極支持台30に固定されているので、ウエハ毎に毎回アライメントする必要が無い場合もある。また接触電極36は、複数のチップを同時に計測可能となるように複数チップ分の電極で構成されることもあり、その場合にはウエハ26と接触電極38とを、互いにその対応するチップ数分ずつ順次相対移動を行いながら接触電極38とウエハ26の電極とを接触させる。
【0075】
接触電極のアライメントとは、接触電極支持台30に取り付けてある接触電極38を接触電極認識光学系22の接触電極撮像カメラ18で撮像して画像データを取得し、パターンマッチングによる画像処理を行って、接触電極38の個々の座標(位置座標)を測定することをいう。
【0076】
また、ウエハのアライメントとは、ウエハ26に形成されたチップの特定パターン又はチップの複数の電極(電極が1つの場合もある)を測定対象素子認識光学系32の測定対象素子撮像カメラ28で撮像して画像データを取得し、パターンマッチングによる画像処理で、ウエハ26上で個々のチップが決められた方向に一致するように、ウエハステージ16の回転角度を調整し、かつチップ上の特定電極の位置オフセットを調整することをいう。接触電極38のアライメントとウエハ26のアライメントとが精度良く実行されると、接触電極38とウエハ26上のチップの電極とを平行に移動させることができるようになる。
【0077】
画像データによる座標測定では、画像データ1画素の解像度、画像データを取得するカメラの取り付け角度、及び画像データ中央の座標(光学系の光軸位置)が装置座標系に対してキャリブレーションされる必要がある。接触電極認識光学系22と測定対象素子認識光学系32とが対向するように配置される場合には、接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標と測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の座標との相対関係をどのようにして装置座標系でキャリブレーションするかが問題となる。
【0078】
この発明の実施形態のプローブ装置では、測定対象素子認識光学系32に具備された特定パターンの投影光学系の実像を使用して、特定パターンの特定の特徴点の位置を、測定対象素子認識光学系32と接触電極認識光学系22とで画像測定することで、測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の座標と接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標との相対関係をキャリブレーションする。
【0079】
すなわち投影光学系42によって相対座標キャリブレーション用2次元パターンの実像60を形成する2次元パターン実像形成ステップが実行され、測定対象素子認識光学系32によって2次元パターンの実像60の画像データを取り込む第1光学系画像データ取得ステップが実行され、接触電極認識光学系22によって2次元パターンの実像60の画像データを取り込む第2光学系画像データ取得ステップが実行される。続いて第1光学系画像データ取得ステップで取得された画像データと、第2光学系画像データ取得ステップで取得された画像データとから測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の座標(光軸位置)と接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標(光軸位置)との相対座標をキャリブレーションするキャリブレーションステップが実行される。
【0080】
このように2次元パターン実像形成ステップからキャリブレーションステップまでの4つステップが実行されると、ウエハのアライメント及び接触電極のアライメントで、画像データ上で測定した位置は、1つの共通の装置座標系での座標値に変換することが可能となる。1つの共通の装置座標系でウエハのアライメントの結果と接触電極のアライメントの結果が得られると、ウエハの電極と接触電極とが精度良く重ねられるようにウエハステージ16のコントロールが可能となる。なお2次元パターン実像形成ステップからキャリブレーションステップまでを実行するのに先立って、接触電極認識光学系22で画像データ1画素の解像度、及び画像データを取得するカメラの取り付け角度をキャリブレーションする第2光学系調整ステップ、及び測定対象素子認識光学系32で画像データ1画素の解像度、画像データを取得するカメラの取り付け角度、及び画像データ中央の座標(光学系の光軸位置)をキャリブレーションする第1光学系調整ステップを実施しておく必要がある。これらのステップの処理内容については、後述する<電気的特性計測ステップの前段アライメント>において詳しく説明する。
【0081】
測定ステージ(ウエハステージ16)の温度をコントロールすることで、高温環境下でのテスト(電気的特性の測定)及び低温環境下でのテスト(電気的特性の測定)が実施される。温度変化があると、ウエハ26は伸縮し、プローブ装置の一部も伸縮する。プローブ装置の一部が伸縮すると、プローブ装置の各部の位置も変位(移動)する。
【0082】
測定対象素子認識光学系32の光軸の位置、及び接触電極認識光学系22の光軸の位置は、温度変化があると変位する可能性は高い。そのためウエハ一枚毎に、測定対象素子のアライメントを実施するだけでなく、接触電極38をアライメントすることも必要である。この発明のプローブ方法によれば、任意のタイミングで、接触電極38をアライメントすることができる。
【0083】
温度変化に伴ってプローブ装置の一部が伸縮すると、その伸縮の程度は平衡に達するまで時間の経過に伴って少しずつ変化する。プロービング中に連続して不良特性を持つチップを発見した場合は、上述の熱平衡に達する前の時間的な変化が続いている状態で測定対象素子のアライメントを実施した等の理由が考えられる。
【0084】
プローブ装置によるプローブ方法の実施においては、1)測定ステージの上昇、2)チップの電気的特性試験、3)測定ステージの下降、4)指定されたチップ数分XY移動のプロセスが繰り返される。プローブ装置によるプローブ方法の実施中において、連続して不良特性を持つチップを発見した場合は、その原因を早急に突き止める必要がある。この発明の実施形態のプローブ方法では、試験動作中であっても必要に応じて、測定対象素子認識光学系32の光軸と接触電極認識光学系22の光軸との相対座標キャリブレーション(精度確認)を実施することが可能である。
【0085】
<投影光学系姿勢位置調整>
測定対象素子認識光学系32の光軸、接触電極認識光学系22の光軸、特定パターンを投影する投影光学系42の光軸、測定対象素子を照明する同軸照明光学系40の光軸、接触電極を照明する同軸照明光学系20の光軸を、同じ光軸線上に構築するためビームスプリッター68、70及び72を挿入して、結像光線の光軸に対して直角方向からそれぞれの光軸を重ねることで、これらの光軸を合致させる。
【0086】
このような構成では、ビームスプリッター68、70及び72の組み込み精度に多少の傾きが生じても、ビームスプリッターを真っ直ぐに進む結像光線の入射光と出射光は平行移動するだけで、測定対象素子認識光学系32又は接触電極認識光学系22の結像では大きな問題とはならない。
【0087】
同軸照明光学系は光軸が90度に曲げられるが、視野全体を照明するのに十分なスポットサイズで設計されるとともに、照明の当たる位置に厳密性を求められないので一般的な光学機械加工精度があれば問題とはならない。
【0088】
一方、投影光学系42は、ビームスプリッター72で光軸が90度に曲げられると、わずかな傾きでも光軸に影響を与え、パターン投影像が位置ずれしてしまう。また、測定対象素子認識光学系32においては投影用と撮像用で同じ対物レンズ(図示を省略してある。)を通るため作動距離(WD: Working Distance)の範囲内の位置に測定対象素子を置いたとしても、機械的機構部品の加工精度では光路長にわずかな差が発生することがあり、カメラと投影レンズの焦点位置が等しくならないということが生じる。
【0089】
更に一般に市販されているカメラは、撮像中心が必ずしも光軸中心と一致していないため、投影光を光軸の中心になるように設計してあっても、パターンが撮像中心に一致しないという問題がある。
【0090】
そこで、投影光学系42を組み込む場合は、投影光学系姿勢位置調整手段を具え、投影光学系42が具える結像光学系58の光軸の回転、位置、焦点距離を調整可能とする構成とするのがよい。
【0091】
図3(A)及び(B)を参照して、投影光学系姿勢位置調整手段の構成及びこの投影光学系姿勢位置調整手段を用いる投影光学系姿勢位置調整ステップについて説明する。図3(A)及び(B)は投影光学系姿勢位置調整手段の構成を示す概略的構造図であり、図3(A)は投影光学系姿勢位置調整手段が具える結像光学系58の光軸とほぼ直交する平面で切断した断面を示す図であり、図3(B)は結像光学系58の光軸を含む平面で切断した断面を示す図である。
【0092】
投影光学系姿勢位置調整手段は、投影光学系外部鏡筒50、投影光学系内部鏡筒51、投影光学系内部鏡筒51の芯合わせを行って固定する内部鏡筒芯合わせねじ53-1、53-2、53-3、2次元パターン印刷ガラスマスクスライド固定ねじ54を具えて構成される。
【0093】
投影光学系外部鏡筒50の内部に投影光学系内部鏡筒51が納められ、内部鏡筒芯合わせねじ53-1、53-2、53-3によって、投影光学系内部鏡筒51の芯合わせが行われる。投影光学系外部鏡筒50は、投影光学系42として光源55と一体化されて構成されている(図2(B)参照)。2次元パターン印刷ガラスマスクスライド固定ねじ54は、投影光学系42が具える結像光学系58に一体化された2次元パターン印刷ガラスマスク52を、最適位置に固定するためのねじである。
【0094】
投影光学系姿勢位置調整ステップは、例えば、以下のとおりに行う。
(1)測定対象素子撮像カメラ28を測定対象素子認識光学系32に取り付け、焦点の合う高さに固定する。
(2)測定対象素子撮像カメラ28の撮像画像を観察しながら2次元パターン印刷ガラスマスク52を取り付けた投影光学系内部鏡筒51を抜き差しして焦点が一番合う位置で、2次元パターン印刷ガラスマスクスライド固定ねじ54によって固定する。
(3)投影光学系外部鏡筒50に取り付けられた内部鏡筒芯合わせねじ53-1、53-2、53-3を用いて投影光学系内部鏡筒51を移動して、2次元パターンの実像60が測定対象素子撮像カメラ28の撮像面39の所定位置に写り込むように調整し固定する。
(2)〜(3)を繰り返して光軸補正を行うことで、2次元パターンの実像60が測定対象素子撮像カメラ28の撮像面39の所定位置に写り込むようにさせることが可能である。
【0095】
すなわち、上述の投影光学系姿勢位置調整ステップを実行することで、投影光学系42によって形成される2次元パターンの実像60が、測定対象素子撮像カメラ28の撮像面39に結像され、また同様に接触電極撮像カメラ18の撮像面19に結像される。そして2次元パターンの中心位置が撮像面39及び撮像面19のそれぞれの撮像面の中心位置と合致して結像されるように、投影光学系42の姿勢及び位置が調整される。
【0096】
<電気的特性計測ステップの前段アライメント>
図4〜図8を参照して、この発明の実施形態のプローブ装置によって、測定対象素子の電気的特性を計測する電気的特性計測ステップが実行されるまでの、具体的なステップについて説明する。
【0097】
図1及び図2に示すように、測定対象素子認識光学系32を上から下を見る位置に配置し、接触電極認識光学系22を下から上を見る位置に配置するものとする。測定対象素子認識光学系32は、接触電極支持台30に固定されている。また接触電極認識光学系22は、支持台14に固定される。支持台14はX,Y及びZに精度良く可動出来る構造とする。支持台14の上には、θ方向に回転するθ移動ステージ15が載り、その上にウエハステージ16が搭載される。なお2次元パターンの実像60を形成する投影光学系42は、測定対象素子認識光学系32に装着されるとする。
【0098】
図4を参照して、測定対象素子認識光学系32によって2次元パターンの実像60の画像データを取得する第1光学系画像データ取得ステップ及び第1光学系調整ステップで使用する画像データの取得について説明する。
【0099】
装置座標系で座標既知の点として、ウエハステージ16上に、精度良く画像測定できるように、+(格子)マークを設置する(例えばウエハステージ16の中心位置を基準点とする)。ウエハステージ16が装置の駆動軸X,Y及びZの原点にある時、該マークの座標を装置座標系で(0,0,0)とすると、ウエハステージ16が移動して駆動軸が(X,Y,Z)の位置にある時は、ウエハステージ16上の該マークの座標は(X,Y,Z)である。ウエハステージ16上の該マークが測定対象素子認識光学系32の真下の位置に来るようにして(図4において該マークが光学系の真下にある位置)、撮像用光源41を点灯し、画像データを取得する。なおウエハステージ16までが撮像距離となるようにZ方向は調整する。この時該マークの座標は、装置座標系で座標既知の点である。取得された画像データは第1光学系調整ステップにおいて、光学系のキャリブレーションに使用される。画像データ取得後は、撮像用光源41を消灯する。
【0100】
続いてウエハステージ16を該マークが視野に入らない位置に移動させる(図4において前記マークが光学系の視野から外れる位置)。2次元パターンの実像60を形成する2次元パターン実像形成ステップを実行すると、撮像距離と一致したウエハステージ16上に該2次元パターンの実像60が形成される。測定対象素子認識光学系32の測定対象素子撮像カメラ28で該2次元パターンの実像60の画像データを取得する。すなわち第1光学系画像データ取得ステップを実行する。
【0101】
図5を参照して、接触電極認識光学系22によって2次元パターンの実像60の画像データを取得する第2光学系画像データ取得ステップ及び第2光学系調整ステップで使用する画像データの取得について説明する。
【0102】
ウエハステージ16を移動させ、接触電極認識光学系22と測定対象素子認識光学系32とが対応する図5に示す位置に移動させ、接触電極認識光学系22の接触電極撮像カメラ18で該2次元パターンの実像60の画像データを取得する。すなわち第2光学系画像データ取得ステップを実行する。接触電極撮像カメラ18で該2次元パターンの実像60を撮像する場合には、上下方向(Z方向)を移動させ、接触電極認識光学系22撮像距離に調整する。なお接触電極認識光学系22で該2次元パターンの実像60の画像データを取得した時、その時のウエハステージ16の装置座標系で座標は記憶しておく。
【0103】
第2光学系画像データ取得ステップに続いて、第2光学系調整ステップで接触電極認識光学系22のカメラ取り付け角度をキャリブレーションするため、接触電極認識光学系22をX軸方向に視野の2/3程度の距離を移動させて(接触電極認識光学系22が固定される支持台14をX軸方向に移動させて)、第2光学系調整ステップに使われる画像データを取得しておく。
【0104】
第2光学系画像データ取得ステップ、及び第2光学系調整ステップで使用する画像データ取得が終了したら、次に第2光学系調整ステップ、その後に第1光学系調整ステップを実行する。第2光学系調整ステップでは、接触電極認識光学系22の画像データ1画素の解像度をキャリブレーションし、その後接触電極認識光学系22のカメラ取り付け角度をキャリブレーションする。
【0105】
第2光学系調整ステップの、画像データ1画素の解像度をキャリブレーションするのに使用する画像データは、図2(A)に示す2次元格子パターンであるので、1つの格子を囲む領域を画像モデルとして登録し、撮像された2次元格子パターン全体をパターンマッチングすると、1つ1つの格子点の画像データ上での座標がサーチされる。サーチされた画像データ上の格子間隔(多数の格子が撮像される場合には平均の格子間隔)を既知である2次元格子パターンの格子間隔と比較することで、画像データ1画素の解像度がキャリブレーションされる。またこの時同時に、格子点2次元配列の画像座標系に対する傾き角度も求めておく。
【0106】
第2光学系調整ステップの、カメラ取り付け角度をキャリブレーションするのに使用する画像データは、第2光学系画像データ取得ステップで取得した画像データも使用する。第2光学系調整ステップの画像データと、第2光学系画像データ取得ステップで取得した画像データとは、視野が2/3程度X方向に移動したものである。両方の画像に撮像されている2次元格子パターンの1つを選び出し(同一点を2つの画像データの中から選び出す)、それら2点を結ぶベクトルを作成する。このベクトルの方向は装置X軸の方向を示す。画像のX軸に対する該ベクトルの方向角度が接触電極認識光学系22のカメラ取り付け角度である。第2光学系調整ステップが終了すると、接触電極認識光学系22は、画像データ1画素の解像度と接触電極認識光学系22のカメラ取り付け角度とがキャリブレーションされたこととなる。
【0107】
第2光学系調整ステップの画像データ1画素の解像度とカメラ取り付け角度のキャリブレーションが終了したら、第1光学系調整ステップを実施する。第1光学系調整ステップでは、第1光学系画像データ取得ステップで取得した図2(A)に示す2次元格子パターンから、測定対象素子認識光学系32の画像データ1画素の解像度をキャリブレーションする。また同時に、格子点2次元配列の画像座標系に対する傾き角度も求めておく。測定対象素子認識光学系32は接触電極支持台30に固定され、接触電極認識光学系22は、X,Y及びZ方向に移動できる支持台14に固定されるので、それぞれの光学系のカメラ取り付け角度は独立ではなく、一方が他方に対して固定角度回転したとみなせる。
【0108】
測定対象素子認識光学系32と接触電極認識光学系22とで、同一の格子パターンを撮像しているので、測定対象素子認識光学系32の格子点2次元配列の傾き角度と接触電極認識光学系22の格子点2次元配列の傾き角度との差異が求められれば、接触電極認識光学系22のカメラ取り付け角度から測定対象素子認識光学系32のカメラ取り付け角度がキャリブレーションされる。この発明のプローブ方法では、測定対象素子認識光学系32又は接触電極認識光学系22の一方が、カメラ取り付け角度のキャリブレーションがされれば、他方は格子点2次元配列の傾き角度を用いて算出される。
【0109】
測定対象素子認識光学系32の画像データ1画素の解像度と、測定対象素子認識光学系32のカメラ取り付け角度とがキャリブレーションされたら、次に測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の座標(光学系の光軸位置)をキャリブレーションする。測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の、座標のキャリブレーションには、第1光学系調整ステップに使用される画像データとして取得されたものを使う。この画像には、ウエハステージ16上に+(格子)マークが設置され、そのマークの座標は装置座標系で既知である。マークを精度良く画像データ上でその位置を測定する。画像データ上の1点で、その点の画像座標と装置座標系での座標が得られ、画像データ1画素の解像度とカメラの取り付け角度がキャリブレーションされていると、画像データ中央の点について、その点の装置座標系での座標は容易に算出される。この座標が測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の座標となる。
【0110】
第1光学系調整ステップによって、測定対象素子認識光学系32の画像データ1画素の解像度と、測定対象素子認識光学系32のカメラ取り付け角度と、及び測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の座標とがキャリブレーションされる。また第2光学系調整ステップによって、接触電極認識光学系22の画像データ1画素の解像度と、接触電極認識光学系22のカメラ取り付け角度とがキャリブレーションされる。この段階では、接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標はキャリブレーションされていない。接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標は、キャリブレーションステップが実行されなければ求めることは出来ない。
【0111】
そこで、第1光学系画像データ取得ステップで取得された画像データと、第2光学系画像データ取得ステップで取得された画像データとから測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の座標(光軸位置)と接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標(光軸位置)との相対座標をキャリブレーションするキャリブレーションステップを実行する。
【0112】
第1光学系画像データ取得ステップで取得された画像データは、図2(A)に示す2次元格子パターンを撮像したものである。2次元格子パターンの特徴点(特定の格子点)の位置は、測定対象素子認識光学系32の画像データ上で画像座標を精度よく測定することが出来る。測定対象素子認識光学系32では、既に必要なパラメータはすべてキャリブレーションされているので、画像座標が測定されると、その点は装置座標系の座標に変換できる。すなわち2次元格子パターンの特徴点(特定の格子点)の位置は、装置座標系の座標として求めることが出来る。
【0113】
第2光学系画像データ取得ステップで取得された画像データも、同じ図2(A)に示す2次元格子パターンを撮像したものである。接触電極認識光学系22の画像データ上でも、同一の点すなわち2次元格子パターンの特徴点の画像座標を測定する。この2次元格子パターンの特徴点の装置座標系での座標は、既に測定対象素子認識光学系32で求められている。画像データ上の1点で、その点の画像座標と装置座標系での座標が得られたので、第2光学系画像データ取得ステップで取得された画像データ(接触電極認識光学系22の画像)の画像データ中央の座標も求められる。
【0114】
接触電極認識光学系22は、X,Y及びZ方向に可動する支持台14に固定されている(θ移動ステージ15を介してウエハステージ16も支持台14に固定されている)。第2光学系画像データ取得ステップで、画像データを取得するとき、そのときのウエハステージ16の装置座標系での座標は記憶されているので、第2光学系画像データ取得ステップで取得された画像データの画像データ中央の座標が求められると、ウエハステージ16(基準点はマーク位置)と接触電極認識光学系22の画像中央点までの相対座標も求められる。ウエハステージ16(基準点はマーク位置)と接触電極認識光学系22の画像中央点までの相対座標がキャリブレーションされていると、ウエハステージ16を任意の位置に移動させても、接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標を既知と出来る。
【0115】
このように、キャリブレーションステップにより、測定対象素子認識光学系32と接触電極認識光学系22とで、画像測定された2次元格子パターンの特徴点の位置を、装置座標系で同一となるように、接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標をキャリブレーションする。キャリブレーションステップが終了すると、測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の座標だけでなく接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標も、1つの基準点と結び付けられる。
【0116】
測定対象素子認識光学系32の画像データ中央の座標と接触電極認識光学系22の画像データ中央の座標とが、装置座標系でキャリブレーションされると、測定対象素子認識光学系32で画像処理によるパターンマッチングで求められたウエハ26の位置(ウエハ上のチップの位置)は装置座標系での座標に変換され、また接触電極認識光学系22で画像処理によるパターンマッチングで求められた接触電極38の位置も装置座標系での座標に変換される。1つの装置座標系に変換されたウエハ26上のチップの電極と接触電極38とは、精度良く重ねることが出来る。
【0117】
キャリブレーションステップが終了すると、2次元格子パターンの特徴点の座標は既知となるので、この座標値を不揮発性のメモリーに格納しておく。2次元パターンの実像60を形成する投影光学系42は測定対象素子認識光学系32に装着され、測定対象素子認識光学系32は接触電極支持台30に固定されているので、簡易的に測定対象素子認識光学系32の光軸と接触電極認識光学系22の光軸とのずれを測定する場合には、第2光学系画像データ取得ステップを実行し、その後、接触電極認識光学系22の画像データで2次元格子パターンの特徴点の座標を測定するだけで実施できる。
【0118】
この発明の実施形態のプローブ装置では、特定パターンの投影光学系42を具備しており、2次元パターン実像形成ステップ、第1光学系画像データ取得ステップ、第2光学系画像データ取得ステップ、キャリブレーションステップ、第1光学系調整ステップ、及び第2光学系調整ステップのすべてのステップを特別な操作を伴わずに実施することが出来るので、装置の座標を決定するキャリブレーションを自動的に、一貫して行うことができる。
【0119】
特に、測定対象素子認識光学系32の光軸と接触電極認識光学系22の光軸とのずれが発生し、そのずれ量が許容できない大きさの場合には、自動的にキャリブレーションを実施することができる。
【0120】
投影された2次元パターンの実像60については、前もって精度良く測定しておく。本発明では、測定対象素子認識光学系32に投影光学系42を具備するとしたので、測定対象素子認識光学系32を装置に組み込む前に、単体の光学系として2次元パターンの空間像(図2(A)に示す2次元格子パターンの格子間隔)を十分な精度で測定しておく。
【0121】
図5に示すように対向した位置においては、測定対象素子認識光学系32では、投影された2次元パターンの実像60を取得できないので、キャリブレーション実施時に、2次元パターンである格子像の格子点の座標を保存しておくという処置をとる。このようにすれば、接触電極認識光学系22でのみ2次元パターンである格子の格子点の座標を測定するだけで、測定対象素子認識光学系32の光軸と接触電極認識光学系22の光軸との相対座標をキャリブレーションできる。
【0122】
図6は、接触電極38を接触電極認識光学系22によってアライメントする様子を示す図であり、図7は、ウエハ26を測定対象素子認識光学系32によってアライメントする様子を示す図である。また、図8は、ウエハ26の表面の電極パッドと接触電極38とを、互いに順次相対移動を行いながら接触させてウエハに形成されているチップの電気的特性を計測する電気的特性計測ステップの説明に供する図である。
【0123】
測定対象素子認識光学系32の光軸位置と接触電極認識光学系22の光軸位置との相対関係をキャリブレーションする図5で示されるZ方向位置(高さ)、図6及び図7のアライメントするZ方向位置(高さ)、図8の電気的特性を計測するZ方向位置(高さ)は異なっている。この発明の実施形態のプローブ装置では、アライメント後に、接触電極38をウエハ26の表面の電極パッドに接触させ、電極パッドに残る接触電極38の跡を測定して、Z方向位置が異なる場合の平面位置を調整するためのパラメータ制御機能を具えることもある。
【0124】
一般に、プローブ装置では、高温環境下でも、低温環境下でもテストは実施される。この発明の実施形態のプローブ装置では、2次元パターンの実像60を用いて、測定対象素子認識光学系32の光軸と、接触電極認識光学系22の光軸との相対座標をキャリブレーションしているので、ウエハステージ16周辺に設置されたターゲットパターンを用いる場合と異なり、テスト温度の変化による影響はない。
【0125】
また2次元格子像のような特定のパターンを用いれば、高温環境下及び低温環境下で、Z方向に変位が発生した場合でもオートフォーカスにより、パターンを精度良く検出できる。また、温度変化が著しく大きい場合には光学系を断熱する構造を採用することも有効である。
【0126】
ウエハステージ16の温度をコントロールすることで、高温環境下でのテスト及び低温環境下でのテストが実施されるが、温度変化によってウエハ26は伸縮し、プローブ装置の一部(支持台等)も伸縮する。プローブ装置各部の変位の大きさ及びその変位方向はメカ機構に依存する。測定対象素子認識光学系32の光軸の位置、及び接触電極認識光学系22の光軸の位置は、温度変化があると変位する可能性は高い。
【0127】
この発明の実施形態のプローブ装置は、測定対象素子認識光学系32の光軸と接触電極認識光学系22の光軸とを、必要な時にはいつでも精度よくキャリブレーションする機能を具えていることが特徴である。また、本発明の方法では、測定対象素子認識光学系32と接触電極認識光学系22とを対向した図5に示す位置に移動させれば、測定対象素子認識光学系32と接触電極認識光学系22との相対座標を簡単に、精度よくキャリブレーションすることができる。
【符号の説明】
【0128】
10:XYZ移動ステージ支持台
12:XYZ移動ステージ
14:支持台
15:θ移動ステージ
16:ウエハステージ
18:接触電極撮像カメラ
19、39:撮像面
20、40:同軸照明光学系
21、41、55:光源
22:接触電極認識光学系
26:ウエハ
28:測定対象素子撮像カメラ
30:接触電極支持台
32:測定対象素子認識光学系
36:接触電極固定台
38:接触電極
42:投影光学系
50:投影光学系外部鏡筒
51:投影光学系内部鏡筒
52:2次元パターン印刷ガラスマスク
53-1、53-2、53-3:内部鏡筒芯合わせねじ
54:2次元パターン印刷ガラスマスクスライド固定ねじ
58:結像光学系
60:2次元パターンの実像
62、64:光束
66:不透明平面物体
68、70、72:ビームスプリッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有する測定対象素子の該電極に接触電極を接触させて該測定対象素子の電気的特性を評価するプローブ方法であって、
投影光学系によって相対座標キャリブレーション用2次元パターンの実像を形成する2次元パターン実像形成ステップと、
第1光学系によって、前記2次元パターンの実像の画像データを取り込む第1光学系画像データ取得ステップと、
第2光学系によって、前記2次元パターンの実像の画像データを取り込む第2光学系画像データ取得ステップと、
前記第1及び第2光学系によってそれぞれ取得された前記2次元パターンの実像の画像データに基づき、前記第1光学系で取得される画像データの第1光学系位置座標と前記第2光学系で取得される画像データの第2光学系位置座標との相対関係をキャリブレーションするキャリブレーションステップと
を含むことを特徴とするプローブ方法。
【請求項2】
前記第1光学系画像データ取得ステップは、前記第1光学系を、前記電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系とすることによって、前記投影光学系の結像位置に置かれた不透明な平面物体の平面に形成される前記2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップであり、
前記第2光学系画像データ取得ステップは、前記第2光学系を、前記接触電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系とすることによって、前記2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップであり、
前記第1及び第2光学系がそれぞれ取得した前記2次元パターンの実像の画像データにより、前記第1及び第2光学系のそれぞれの画像データの解像度、及び当該第1及び第2光学系のそれぞれのカメラの取り付け角度を調整して前記第1及び第2光学系の焦点合わせをそれぞれ行う第1及び第2光学系調整ステップと、
前記測定対象素子と前記接触電極とを、互いに順次相対移動を行いながら接触させて該測定対象素子の電気的特性を計測する電気的特性計測ステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のプローブ方法。
【請求項3】
前記第1光学系画像データ取得ステップは、前記第1光学系を、前記接触電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系とすることによって、前記2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップであり、
前記第2光学系画像データ取得ステップは、前記第2光学系を、前記電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系とすることによって、前記投影光学系の結像位置に置かれた不透明な平面物体の平面に形成される前記2次元パターンの実像の画像データを取り込むステップであり、
前記第1及び第2光学系がそれぞれ取得した前記2次元パターンの実像の画像データにより、前記第1及び第2光学系のそれぞれの画像データの解像度、及び当該第1及び第2光学系のそれぞれのカメラの取り付け角度を調整して前記第1及び第2光学系の焦点合わせをそれぞれ行う第1及び第2光学系調整ステップと、
前記測定対象素子と前記接触電極とを、互いに順次相対移動を行いながら接触させて該測定対象素子の電気的特性を計測する電気的特性計測ステップと
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のプローブ方法。
【請求項4】
前記投影光学系によって形成される前記2次元パターンの実像が、前記第1及び第2光学系のカメラによって、当該第1及び第2光学系のカメラの撮像面上に結像され、かつ前記2次元パターンの中心位置が前記第1及び第2光学系のカメラのそれぞれの撮像面に当該それぞれの撮像面の中心位置と合致するように結像されるように、当該投影光学系の姿勢及び位置を調整するための投影光学系姿勢位置調整ステップを更に含む
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のプローブ方法。
【請求項5】
電極を有する測定対象素子の該電極に接触電極を接触させて該測定対象素子の電気的特性を評価するプローブ装置であって、
キャリブレーション用2次元パターンを投影する投影光学系を具える第1光学系と、該第1光学系に対向するように配置される第2光学系とを具え、
前記第1及び第2光学系によって、投影されて形成された前記2次元パターンの実像の画像データをそれぞれ取り込み、該2次元パターンの実像の画像データに基づき、前記第1光学系で取得される画像データの第1光学系位置座標と前記第2光学系で取得される画像データの第2光学系位置座標との相対関係をキャリブレーションすることを特徴とするプローブ装置。
【請求項6】
前記第1光学系は、前記電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系であり、前記投影光学系の結像位置に置かれた不透明な平面物体の平面に形成される前記2次元パターンの実像の画像データを取り込み、
前記第2光学系は、前記接触電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系であり、前記投影光学系によって形成される前記2次元パターンの実像の画像データを取り込み、
前記第1及び第2光学系がそれぞれ取得した前記2次元パターンの実像の画像データにより、前記第1及び第2光学系のそれぞれの画像データの解像度、及び当該第1及び第2光学系のそれぞれのカメラの取り付け角度を調整して第1及び第2光学系の焦点合わせをそれぞれ行うことが可能とされており、
前記測定対象素子と前記接触電極とを、互いに順次相対移動を行いながら接触させて該測定対象素子の電気的特性を計測する構成とされている
ことを特徴とする請求項5に記載のプローブ装置。
【請求項7】
前記第1光学系は、前記接触電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系であって、前記投影光学系によって形成される前記2次元パターンの実像の画像データを取り込み、
前記第2光学系は、前記電極を認識するための光学系であって画像処理するためのカメラを含めた撮像光学系であり、前記投影光学系の結像位置に置かれた不透明な平面物体の平面に形成される前記2次元パターンの実像の画像データを取り込み、
前記第1及び第2光学系がそれぞれ取得した前記2次元パターンの実像の画像データにより、前記第1及び第2光学系のそれぞれの画像データの解像度、及び当該第1及び第2光学系のそれぞれのカメラの取り付け角度を調整して第1及び第2光学系の焦点合わせをそれぞれ行うことが可能とされており、
前記測定対象素子と前記接触電極とを、互いに順次相対移動を行いながら接触させて該測定対象素子の電気的特性を計測する構成とされている
ことを特徴とする請求項5に記載のプローブ装置。
【請求項8】
前記投影光学系によって形成される前記2次元パターンの実像が、前記第1及び第2光学系のカメラによって、当該第1及び第2光学系のカメラの撮像面上に結像され、かつ前記2次元パターンの中心位置が前記第1及び第2光学系のカメラのそれぞれの撮像面に当該それぞれの撮像面の中心位置と合致するように結像されるように、当該投影光学系の姿勢及び位置を調整するための投影光学系姿勢位置調整手段を具える
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のプローブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−219110(P2010−219110A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61159(P2009−61159)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(596117887)株式会社テクノホロン (6)
【Fターム(参考)】