説明

プーリユニット

【課題】 比較的大きな変速比を有する変速機構(増速機構)を内部にコンパクトに組み込むことができ、耐久性にも優れたプーリユニットを提供する。
【解決手段】 遊星ローラ機構3は、太陽ローラ2とリングローラ1と4個の遊星ローラ33とキャリア34とを含む。太陽ローラは回転軸2の外周面を接触伝動面2aとして中心位置に配置され、リングローラはプーリ1の内周面を接触伝動面1aとして太陽ローラ2を囲むように配置されている。各遊星ローラ33は太陽ローラ2とリングローラ1との環状空間に配置され、太陽ローラ2とリングローラ1とに同時に接触して回転する接触伝動面33aを有する。キャリア34は4個の遊星ローラ33をピン35によりそれぞれ回転自在に軸支する。そして、キャリア34はハウジング5に固定されているので、遊星ローラ33は太陽ローラ2を中心とする公転運動を停止した状態で自転運動を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両において、エンジンのクランクシャフトからベルト、プーリユニット等を介してオルタネータを駆動しているが、近年の車両側での電動化や電子制御化の発展に伴って必要な電力量(すなわちオルタネータでの発電量)が増加する傾向にある。このような場合、ベルト駆動されるオルタネータ軸等を高速回転させて発電量等を増加させるために、可変速プーリが通常用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−4499号公報
【0004】
特許文献1の技術によれば、発電量等に応じて無段階での回転調整(増速)も可能であるが、プーリ径が小さくなると巻掛け角が小さくなってベルトの滑りや鳴き等の現象が発生しやすく、耐久性の観点からも変速比(プーリ比)をあまり大きくできない。また、補機側(オルタネータ側)のみならず原動側(エンジン側)にも同様の可変速プーリを設けなければならないため、コストが嵩み、設計時や組立時の調整にも手間を要する。
【0005】
なお、エンジンのクランクシャフトからベルト、プーリユニット等を介してオルタネータを駆動する場合、エンジンの吸入・圧縮・燃焼膨張・排気等の行程を繰り返すことによって、クランクシャフトには脈動的な回転変動(回転中の加速度変動)を生じることがある。このような回転変動が発生すると、プーリ、回転軸、ベルト等に過大な回転トルク(ねじれ)や張力が生じることがある。その結果、ベルトがトルクの発生方向に引張られて張力が変動し、過負荷を生じたり、寿命の低下を招いたりするおそれもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、比較的大きな変速比を有する変速機構(増速機構)を内部にコンパクトに組み込むことができ、耐久性にも優れたプーリユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るプーリユニットは、
ベルトが巻掛けられる環状のプーリと、そのプーリと同芯状に配置され相対回転可能な回転軸との間に回転調整機構が介装されたプーリユニットであって、
前記回転調整機構は、
前記回転軸の外周面を接触伝動面として中央に配置された太陽ローラと、
前記プーリの内周面を接触伝動面として前記太陽ローラを囲むように配置されたリングローラと、
前記太陽ローラとリングローラとの間に配置され、それら太陽ローラとリングローラとに同時に接触して回転する接触伝動面を有する複数の遊星ローラと、
それら複数の遊星ローラをそれぞれ回転自在に軸支するキャリアとを含む遊星ローラ機構を構成し、
前記プーリの回転を前記遊星ローラ機構を介して増速して前記回転軸に伝達することを特徴とする。
【0008】
このように、プーリと回転軸との間に遊星ローラ機構を介装することによって、比較的大きな変速比(増速比)を容易に得ることができる。また、ベルトに負担を掛けることなく変速(増速)ができるため、耐久性においても高い信頼度が得られる。しかも、回転軸の外周面を太陽ローラの接触伝動面とし、プーリの内周面をリングローラの接触伝動面としているので、遊星ローラを配置する環状スペースを増やすだけでこのような遊星ローラ機構をコストを抑えて内部にコンパクトに組み込むことができ、設計時や組立時の調整にも手間を要しない。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るプーリユニットの具体的態様は、
ベルトが巻掛けられる環状のプーリと、そのプーリと同芯状に配置され相対回転可能な回転軸との間に回転調整機構が介装されたプーリユニットであって、
前記回転調整機構は、
前記回転軸の外周面を接触伝動面として中央に配置された太陽ローラと、
前記プーリの内周面を接触伝動面として前記太陽ローラを囲むように配置されたリングローラと、
前記太陽ローラとリングローラとの間に配置され、それら太陽ローラとリングローラとに同時に接触して回転する接触伝動面を有する複数の遊星ローラと、
それら複数の遊星ローラを回転自在に軸支するキャリアとを含む遊星ローラ機構を構成し、
前記キャリアをハウジング等の固定部に固定し、前記太陽ローラを中心とする前記遊星ローラの公転を停止させた状態でその遊星ローラを自転させることにより、前記プーリの回転を前記遊星ローラ機構を介して増速して前記回転軸に伝達することを特徴とする。
【0010】
これによって、キャリアを固定部に固定することによって、さらに大きな変速比(増速比)を容易に得ることができる。また、作動に要するエネルギー消費を減少させて効率的な伝動・変速ができるので、さらにコストを低減することができる。
【0011】
なお、これらの遊星ローラ機構を構成する太陽ローラ、リングローラ及び遊星ローラは、粘性流体の存在下で相互に転がり接触することにより粘弾性流体膜でのせん断滑りを発生させて、プーリ側に発生する回転変動を吸収又は緩和して回転軸側に伝達することができる。したがって、プーリ側に回転変動が発生しても、これらのローラ間で発生する粘弾性流体膜でのせん断滑りによって変動が吸収できるので、ベルト張力の変動が緩和され、過負荷の発生や寿命の低下を防止することができる。
【0012】
また、遊星ローラ機構は、複数の遊星ローラを軸支するキャリアがハウジング等の固定部に固定されて回転停止する第一状態と、キャリアが前記プーリに固定されて一体回転する第二状態とに切り換えるための切換部を備え、
その切換部がキャリアを第一状態に切り換えたとき、太陽ローラを中心とする遊星ローラの公転を停止させた状態でその遊星ローラを自転させることにより、プーリの回転を遊星ローラ機構を介して増速して回転軸に伝達する一方、
切換部がキャリアを第二状態に切り換えたとき、プーリとキャリアとが固定状態となり、遊星ローラ機構全体が固定された状態で一体回転することにより、プーリの回転を等速で回転軸に伝達することができる。
【0013】
このような切換部を設けることによって出力側(回転軸)で必要とする速度に容易に切り換えることができるから、エンジン等の駆動源が高速回転する場合には、ブラシ摩耗、軸受寿命等により耐久性に問題を生じないように調整することができる。また、エンジン等の駆動源の機種変更等に対しても迅速に対応することができる。
【0014】
このとき切換部は、第一状態と第二状態とにキャリアの伝動形態を切り換えるために、電磁クラッチ等のクラッチ機構を含むことが望ましい。電磁クラッチ等のクラッチ機構を含むことによって、切換操作を外部から行うことができる。具体的には、例えばオルタネータプーリの場合、エンジンが低速回転(アイドリング等)のとき第一状態に切り換えて回転軸を増速回転させることによって、発電量の不足を防止し、エンジンが高速回転のとき第二状態に切り換えて回転軸を等速回転させることによって、上記した耐久性を低下させないように調整することができる。
【0015】
一方、遊星ローラ機構のキャリアは、プーリ側の回転数が回転軸側の回転数を所定値以上下回ったときにプーリ側から回転軸側への動力伝達を遮断する一方向クラッチを介してハウジング等の固定部に固定可能とされ、
プーリ側の回転数が回転軸側の回転数を上回っているときには、キャリアは固定部に固定され、太陽ローラを中心とする遊星ローラの公転を停止させた状態でその遊星ローラを自転させることにより、プーリの回転を遊星ローラ機構を介して増速して回転軸に伝達する一方、
プーリ側の回転数が回転軸側の回転数を所定値以上下回ったときには、一方向クラッチがプーリ側から回転軸側への動力伝達を遮断して回転軸を空転させることができる。
【0016】
このように、プーリ側の回転数が低下したときには、一方向クラッチがプーリ側から回転軸側への動力伝達を遮断して回転軸を空転させるので、オルタネータ等の被駆動軸側の慣性によるベルト等の過負荷や寿命低下を防止できる。一方、プーリ側の回転数が回転軸側の回転数を上回っているときには、プーリの回転は遊星ローラ機構を介して増速して回転軸に伝達されるので、オルタネータ等の被駆動軸側で効率よく作動できる。なお、ここでの一方向クラッチには、ばね式一方向クラッチ、ころ式一方向クラッチ、スプラグ式一方向クラッチ等を用いることができる。
【0017】
そして、上記課題を解決するために、本発明に係るプーリユニットは、
以上のような遊星ローラ機構を備えたプーリユニットにおいて、
回転調整機構は、太陽ローラに代わる太陽ギアと、リングローラに代わるリングギアと、遊星ローラに代わる遊星ギアとを含む遊星ギア機構を構成し、
前記プーリの回転を前記遊星ギア機構を介して増速して前記回転軸に伝達することを特徴とする。
【0018】
このように、遊星ローラ機構に代えて遊星ギア機構によって回転調整機構を構成しても、比較的大きな変速比を有する変速機構(増速機構)として内部にコンパクトに組み込むことができ、耐久性にも優れたプーリユニットとなる。
【0019】
なお、このような遊星ギア機構にも、遊星ローラ機構で述べたような切換部、クラッチ機構、一方向クラッチ等を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施例1)
次に、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例を参照して説明する。図1は本発明に係るプーリユニットの一例を示す正面断面図、図2はそのプーリユニットに用いられる遊星ローラ機構のA−A断面図である。図1はオルタネータのハウジング5(固定部)に付設されるプーリユニット100を示し、ベルトBが巻掛けられてエンジンのクランクシャフトプーリ(図示せず)から動力伝動されるオルタネータプーリ(以下単にプーリともいう)1(原動体)と、プーリ1と同芯状に配置されて相対回転可能な筒状の回転軸2(従動体)とを備えている。
【0021】
プーリ1から回転軸2に至る伝動径路であって両者1,2間に形成される環状空間には、環状空間のアキシャル方向中央部に配設される遊星ローラ機構3(回転調整機構)と、遊星ローラ機構3に対してハウジング5とは反対側(先端側)に配設される深溝玉軸受(以下、単に軸受ともいう)4(転がり軸受)とを備えている。遊星ローラ機構3は、プーリ1の回転を増速して回転軸2に伝達する機能を有している。また、軸受4は、遊星ローラ機構3に作用する主としてラジアル荷重を支持する機能を有している。なお、軸受4は、内輪41、外輪42及び複数の玉43(転動体)を含み、複列玉軸受でもよい。
【0022】
さらに図1及び図2に示すように、遊星ローラ機構3は、太陽ローラ2とリングローラ1と複数(例えば4個)の遊星ローラ33とキャリア34とを含む。太陽ローラは回転軸2の外周面を接触伝動面2aとして中心位置に配置され、リングローラはプーリ1の内周面を接触伝動面1aとして太陽ローラ2を囲むように配置されている。各遊星ローラ33は太陽ローラ2とリングローラ1との環状空間に配置され、太陽ローラ2とリングローラ1とに同時に接触して回転する接触伝動面33aを有する。キャリア34は4個の遊星ローラ33をピン35によりそれぞれ回転自在に軸支する。そして、キャリア34はハウジング5に固定されているので、遊星ローラ33は太陽ローラ2を中心とする公転運動を停止した状態で自転運動を行う。
【0023】
このように、プーリ1(リングローラ)の回転は遊星ローラ機構3により増速されて回転軸2(太陽ローラ)すなわちオルタネータに伝達される。すなわち、回転軸2の外周面を太陽ローラの接触伝動面2aとし、プーリ1の内周面をリングローラの接触伝動面1aとしている。したがって、遊星ローラ33を配置する環状空間を増やすだけでこのような遊星ローラ機構3をコストを抑えて内部にコンパクトに組み込むことができ、設計時や組立時の調整にも手間を要しない。また、キャリア34をハウジング5に固定することによって、大きな変速比(増速比)を容易に得ることができる。さらに、作動に要するエネルギー消費を減少させて効率的な伝動・変速ができるので、さらにコストを低減することができる。
【0024】
なお、遊星ローラ機構3を構成する太陽ローラ2、リングローラ1及び遊星ローラ33は、粘性流体(具体的には上記環状空間に充填されたグリース)の存在下で相互に転がり接触している。これにより、各接触伝動面2a,1a,33aでは粘弾性流体膜でのせん断滑りが発生し、プーリ1側に発生する回転変動を吸収(又は緩和)して回転軸2側に伝達する。したがって、プーリ1側に回転変動が発生しても、これらの接触伝動面2a,1a,33a間で発生する粘弾性流体膜でのせん断滑りによって変動が吸収できるので、ベルトB張力の変動が緩和され、過負荷の発生や寿命の低下を防止することができる。
【0025】
(変形例)
図3に図1のプーリユニット100に用いられる遊星ギア機構を示す。プーリユニット100の回転調整機構として、遊星ローラ機構3に代えて遊星ギア機構8を備えることができる。すなわち、太陽ローラ2に代わる太陽ギア81と、リングローラ1に代わるリングギア82と、遊星ローラ33に代わる遊星ギア83とを含む遊星ギア機構8を構成し、プーリ1の回転を遊星ギア機構8を介して増速して回転軸2に伝達する。
【0026】
このように、遊星ギア機構8によって回転調整機構を構成した場合でも、比較的大きな変速比を有する変速機構(増速機構)として内部にコンパクトに組み込むことができ、耐久性にも優れたプーリユニット100となる。
【0027】
(実施例2)
図4に本発明に係るプーリユニットの他の例を示す。図4に示すプーリユニット200には、遊星ローラ33を軸支するキャリア34がハウジング5(固定部)に固定されて回転停止する第一状態(増速回転状態)と、キャリア34がプーリ1(の接触伝動面1a)に固定されて一体回転する第二状態(等速回転状態)とに切り換えるための切換部6が備えられている。
【0028】
第一状態では、実施例1と同様に、太陽ローラ2を中心とする遊星ローラ33の公転を停止させた状態で遊星ローラ33を自転させ、プーリ1の回転を遊星ローラ機構3により増速して回転軸2に伝達する。一方、第二状態では、プーリ1とキャリア34とが固定状態となり、遊星ローラ機構3全体が固定された状態で一体回転することにより、プーリ1の回転を等速で回転軸2に伝達する。
【0029】
切換部6は、電磁クラッチ61,62(クラッチ機構)によって第一状態と第二状態とにキャリア34の伝動形態を切り換える。具体的には図5に示すように、エンジンが低速回転(アイドリング等)のときにはスイッチ61aがONとなり、リレー61bを励磁させて第一電磁クラッチ61を作動させ、キャリア34をハウジング5に固定する。このように第一状態への切り換えによって回転軸2を増速回転させ、発電量の不足を防止する。
【0030】
一方、エンジンが高速回転のときにはスイッチ62aがONとなり、リレー62bを励磁させて第二電磁クラッチ62を作動させ、キャリア34をプーリ1に固定する。このように第二状態への切り換えによって回転軸2を等速回転させ、耐久性の低下を防止する。
【0031】
このように、切換部6を設けることによって出力側(回転軸2)で必要とする速度に容易に切り換えることができるから、エンジン等の駆動源が高速回転する場合には、ブラシ摩耗、軸受寿命等により耐久性に問題を生じないように調整することができる。また、エンジン等の駆動源の機種変更等に対しても迅速に対応することができる。なお、スイッチ61a,62aは、例えばアクセルペダルの踏み込み量に連動して切り換えが可能なように設定すればよく、可変抵抗器、パルススイッチ等を用いることができる。
【0032】
(実施例3)
図6に本発明に係るプーリユニットのさらに他の例を示す。図6に示すプーリユニット300では、遊星ローラ機構3のキャリア34が、プーリ1側の回転数が回転軸2側の回転数を所定値以上下回ったときにプーリ1側から回転軸2側への動力伝達を遮断するころ式の一方向クラッチ7を介して、ハウジング5(固定部)に固定可能とされている。
【0033】
具体的には、図7において、内輪を構成するキャリア34はハウジング5に固定される外輪71と同芯状に配置されるとともに、その外側には、回転半径が周方向に沿って変化するカム面34aが形成されている。ここではカム面34aは二面幅を有する断面正多角形状(例えば正八角形状)の各辺を短辺とする矩形状平面に形成されている。一方、外輪71の内側には円周面71a(軌道面)が形成され、円周面71aとカム面34aとの間にラジアル隙間が周方向に沿って変化するくさび状空間Kが形成されている。ころ73は、このくさび状空間Kにおいて、圧縮コイルばね75によりくさび状空間Kが狭まる方向(例えば反時計回り)に付勢されるとともに、その付勢力に抗してキャリア34のカム面34a上を移動可能である。
【0034】
保持器74は、内周部(基端部)がキャリア34側に固定されている。また、保持器74の外周部(先端部)には、カム面34aに対応する位置にラジアル方向の内外に貫通するポケット状空間Pが周方向に沿って等間隔で複数(例えば8ヶ所)設けられている。各ポケット状空間P内にはころ73及び圧縮コイルばね75がそれぞれ収納され、圧縮コイルばね75は保持器74に一体形成された着座部74aところ73との間に架け渡されている。
【0035】
次に、図7を用いて一方向クラッチ7の作動を説明する。一方向クラッチ7は、キャリア34が外輪71(ハウジング5)へロックされる状態(ロック状態)と、キャリア34が外輪71(ハウジング5)から開放される状態(フリー状態)とに切り換えられる。ロック状態においては、ころ73が圧縮コイルばね75の付勢力によってくさび状空間Kが狭まる方向(図中左側)に押圧されて外輪71の円周面71aとキャリア34のカム面34aとでロックされる。一方、フリー状態においては、ころ73が圧縮コイルばね75の付勢力に抗してくさび状空間K内を逆方向(図中右側)に移動する。
【0036】
したがって、図6において、プーリ1側の回転数が回転軸2側の回転数を上回っているときには、一方向クラッチ7はロック状態となり、実施例1,2と同様に、キャリア34はハウジング5(外輪71)に固定され、太陽ローラ2(回転軸)を中心とする遊星ローラ33の公転を停止させた状態で遊星ローラ33を自転させることにより、プーリ1の回転を遊星ローラ機構3を介して増速して回転軸2に伝達する。一方、プーリ1側の回転数が回転軸2側の回転数を所定値以上下回ったときには、一方向クラッチ7はフリー状態となり、プーリ1側から回転軸2側への動力伝達を遮断して回転軸2を空転させる。
【0037】
(変形例)
実施例3のころ式一方向クラッチ7において、図7に示す断面多角形状のキャリア34に代わり、図8のように円弧状等の湾曲状の凹曲面を有するカム面34a’が形成された断面凹面形状のキャリア34’を用いてもよい。また、これらの一方向クラッチ7には、ころ式の他にばね式やスプラグ式を用いることができる。
【0038】
なお、他の実施例や変形例において、実施例1(図1,図2)と共通する機能を有する部分には同一符号を付して説明を省略した。また、以上で説明した各実施例等はそれぞれ単独で実施可能である他、適宜組み合わせて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るプーリユニットの一例を示す正面断面図。
【図2】図1に用いられる遊星ローラ機構のA−A断面図。
【図3】図1に用いられる遊星ギア機構の図2相当断面図。
【図4】本発明に係るプーリユニットの他の例を示す正面断面図。
【図5】切換部の作動説明図。
【図6】本発明に係るプーリユニットのさらに他の例を示す正面断面図。
【図7】図6に用いられるころ式一方向クラッチのC−C断面図。
【図8】図7の変形例を示す要部断面説明図。
【符号の説明】
【0040】
1 オルタネータプーリ(プーリ;原動体;リングローラ)
1a 接触伝動面
2 回転軸(従動体;太陽ローラ)
2a 接触伝動面
3 遊星ローラ機構(回転調整機構)
33 遊星ローラ
33a 接触伝動面
34 キャリア(内輪)
34a カム面
35 ピン
5 ハウジング(固定部)
6 切換部
61 第一電磁クラッチ(クラッチ機構)
62 第二電磁クラッチ(クラッチ機構)
7 一方向クラッチ
71 外輪
71a 円周面(軌道面)
73 ころ
74 保持器
75 圧縮コイルばね(付勢部材)
8 遊星ギア機構(回転調整機構)
81 太陽ギア
82 リングギア
83 遊星ギア
84 キャリア
85 ピン
100 プーリユニット
B ベルト
K くさび状空間
P ポケット状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトが巻掛けられる環状のプーリと、そのプーリと同芯状に配置され相対回転可能な回転軸との間に回転調整機構が介装されたプーリユニットであって、
前記回転調整機構は、
前記回転軸の外周面を接触伝動面として中央に配置された太陽ローラと、
前記プーリの内周面を接触伝動面として前記太陽ローラを囲むように配置されたリングローラと、
前記太陽ローラとリングローラとの間に配置され、それら太陽ローラとリングローラとに同時に接触して回転する接触伝動面を有する複数の遊星ローラと、
それら複数の遊星ローラをそれぞれ回転自在に軸支するキャリアとを含む遊星ローラ機構を構成し、
前記プーリの回転を前記遊星ローラ機構を介して増速して前記回転軸に伝達することを特徴とするプーリユニット。
【請求項2】
ベルトが巻掛けられる環状のプーリと、そのプーリと同芯状に配置され相対回転可能な回転軸との間に回転調整機構が介装されたプーリユニットであって、
前記回転調整機構は、
前記回転軸の外周面を接触伝動面として中央に配置された太陽ローラと、
前記プーリの内周面を接触伝動面として前記太陽ローラを囲むように配置されたリングローラと、
前記太陽ローラとリングローラとの間に配置され、それら太陽ローラとリングローラとに同時に接触して回転する接触伝動面を有する複数の遊星ローラと、
それら複数の遊星ローラを回転自在に軸支するキャリアとを含む遊星ローラ機構を構成し、
前記キャリアをハウジング等の固定部に固定し、前記太陽ローラを中心とする前記遊星ローラの公転を停止させた状態でその遊星ローラを自転させることにより、前記プーリの回転を前記遊星ローラ機構を介して増速して前記回転軸に伝達することを特徴とするプーリユニット。
【請求項3】
前記遊星ローラ機構は、前記複数の遊星ローラを軸支するキャリアがハウジング等の固定部に固定されて回転停止する第一状態と、前記キャリアが前記プーリに固定されて一体回転する第二状態とに切り換えるための切換部を備え、
その切換部が前記キャリアを前記第一状態に切り換えたとき、前記太陽ローラを中心とする前記遊星ローラの公転を停止させた状態でその遊星ローラを自転させることにより、前記プーリの回転を前記遊星ローラ機構を介して増速して前記回転軸に伝達する一方、
前記切換部が前記キャリアを前記第二状態に切り換えたとき、前記プーリとキャリアとが固定状態となり、前記遊星ローラ機構全体が固定された状態で一体回転することにより、前記プーリの回転を等速で前記回転軸に伝達する請求項1又は2に記載のプーリユニット。
【請求項4】
前記切換部は、前記第一状態と第二状態とに前記キャリアの伝動形態を切り換えるために、電磁クラッチ等のクラッチ機構を含む請求項3に記載のプーリユニット。
【請求項5】
前記遊星ローラ機構のキャリアは、前記プーリ側の回転数が前記回転軸側の回転数を所定値以上下回ったときに前記プーリ側から回転軸側への動力伝達を遮断する一方向クラッチを介してハウジング等の固定部に固定可能とされ、
前記プーリ側の回転数が前記回転軸側の回転数を上回っているときには、前記キャリアは前記固定部に固定され、前記太陽ローラを中心とする前記遊星ローラの公転を停止させた状態でその遊星ローラを自転させることにより、前記プーリの回転を前記遊星ローラ機構を介して増速して前記回転軸に伝達する一方、
前記プーリ側の回転数が前記回転軸側の回転数を所定値以上下回ったときには、前記一方向クラッチが前記プーリ側から回転軸側への動力伝達を遮断して回転軸を空転させる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプーリユニット。
【請求項6】
前記遊星ローラ機構を構成する太陽ローラ、リングローラ及び遊星ローラは、粘性流体の存在下で相互に転がり接触することにより粘弾性流体膜でのせん断滑りを発生させて、前記プーリ側に発生する回転変動を吸収又は緩和して前記回転軸側に伝達する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のプーリユニット。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のプーリユニットにおいて、
前記回転調整機構は、前記太陽ローラに代わる太陽ギアと、前記リングローラに代わるリングギアと、前記遊星ローラに代わる遊星ギアとを含む遊星ギア機構を構成し、
前記プーリの回転を前記遊星ギア機構を介して増速して前記回転軸に伝達することを特徴とするプーリユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−8366(P2008−8366A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178277(P2006−178277)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】