説明

ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】省スペースでありながら、互いに輝度の異なる複数の表示像を知覚し易く表示することができるヘッドアップディスプレイ装置の提供。
【解決手段】ウィンドシールド90に光を投影することにより、情報表示像11及び情報表示像11よりも高輝度なインジケータ表示像13を空間中に結像させるヘッドアップディスプレイ装置である。ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示画像31を形成し、発光ダイオード21からの光を表示画像31に透過させることにより、情報表示像11として結像される光を生成する画像生成部30と、表示画像31を透過する光の透過方向TD1と交差する方向において画像生成部30と並列に配置され、インジケータ表示像13として結像される光を、透過方向TD1に沿って出射させるインジケータフィルム50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源部から放出された光をウィンドシールド等の投影部材に投影することにより、情報を表示する表示像を空間中に結像させるヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のウィンドシールドの前方に表示像を結像させることにより、視認者に情報を表示するヘッドアップディスプレイ装置が知られている。このような装置の一種として、例えば特許文献1には、液晶パネル等の表示器と、光源部としての蛍光表示管とを備えるヘッドアップディスプレイ装置が開示されている。このヘッドアップディスプレイ装置において、表示器は、空間中に結像される情報表示の形状及び発光色等の表示態様に対応した画像を形成する。表示器は、蛍光表示管から放出された光を画像に透過させることにより、情報表示の表示像として結像される光を生成する。
【0003】
また、特許文献2には、発光ダイオード等の複数の点光源を備え、ウィンドシールドの前方にドット情報を表示する車両用表示装置が開示されている。この車両用表示装置において、複数の点光源の形状及び光源色は、ドット情報の形状及び発光色等の表示態様に対応している。各点光源は、ドット情報の表示像として結像される光を生成し、ウィンドシールドに向けて出射させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−68956号公報
【特許文献2】特開2009−217682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献1に開示のヘッドアップディスプレイ装置において、情報表示の表示像として結像される光は、表示器を透過する。すると、表示器の低い光の透過率に起因して、視認者の注意を惹くための十分な表示像の輝度が、確保されなくなるおそれがあった。一方で、特許文献2に開示の車両用表示装置において、ドット情報の表示像として結像される光は、表示器を透過していない。故に、ドット情報の表示像は、視認者の注意を惹くための十分な輝度が確保され易い。
【0006】
そこで、本願発明者らは、特許文献1の情報表示のような表示像に加えて、特許文献2のドット情報のような高輝度の表示像を表示するヘッドアップディスプレイ装置を想到した。しかし、特許文献1のヘッドアップディスプレイ装置に相当する構成と、特許文献2の車両用表示装置に相当する構成とを別々に設けてしまうと、互いに輝度の異なる二つの表示像を空間中に結像させることができたとしても、装置は大型化してしまう。
【0007】
さらに、別々に設けられた各構成からの光によって二つの表示像を並列で表示させる場合、特許文献1の表示器を透過する光の透過方向と、特許文献2の構成から出射される光の出射方向とは、ウィンドシールドの湾曲等に応じて、個々に調整される必要がある。故に、情報表示の表示像として結像される光及びドット情報の表示像として結像される光は、互いに異なる位置から、異なる方向に出射される。以上により、各構成から出射された光は、全く異なる光路を経て、情報表示の表示像及びドット情報の表示像として空間中に結像されてしまう。そのため、ウィンドシールドから情報表示の表示像までの光路の距離と、ウィンドシールドからドット情報の表示像までの光路の距離との差は、拡大する。故に、これら二つの表示像を視認する視認者は、大きな視点移動を伴わなければ、これら二つの表示像を知覚することができなかった。
【0008】
本願発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、省スペースでありながら、互いに輝度の異なる第一表示像及び第二表示像を知覚し易く表示することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、光源部から放出された光を透光性の投影部材に投影することにより、情報を表示する第一表示像及び第一表示像よりも高輝度で情報を表示する第二表示像を空間中に結像させるヘッドアップディスプレイ装置であって、第一表示像の表示態様に対応する透過部分を形成し、光源部から放出された光を透過部分に透過させることにより、第一表示像として結像される光を生成する第一表示像生成部と、第一透過部を透過する光の透過方向と交差する方向において第一表示像生成部と並列に配置され、第二表示像の表示態様に対応するように生成した第二表示像として結像される光を、透過方向に沿って出射させる第二表示像生成部と、を備えることヘッドアップディスプレイ装置とする。
【0010】
この発明によれば、第一表示像の表示態様に対応する透過部分を透過する光の透過方向に沿って、第二表示像生成部は、第二表示像の表示態様に対応するように生成した第二表示像として結像される光を出射させる。故に、第一表示像として結像される光及び第二表示像として結像される光は、互いに並列で配置された第一表示像生成部及び第二表示像生成部から、共に透過方向に出射される。以上により、透過部分を透過する光及び第二表示像生成部から出射される光は、実質的に同一の光路を経て、互いに並列して表示される第一表示像及び第二表示像として空間中に結像される。そのため、投影部材から第一表示像までの光路の距離と、投影部材から第二表示像までの光路の距離との差は、低減される。故に、第一表示像及び第二表示像を視認する視認者は、少ない視点移動によって、これら第一表示像及び第二表示像を知覚することができる。
【0011】
さらに、第一表示像として結像される光を生成する第一表示像生成部と、第二表示像として結像される光を生成する第二表示像生成部とは、第一表示像生成部の透過部分を透過する光の透過方向と交差する方向において、並列に配置されている。故に、第一表示像に加えて、第一表示像よりも高輝度な第二表示像を空間中に結像させるヘッドアップディスプレイ装置であっても、装置の大型化は、抑制される。
【0012】
したがって、ヘッドアップディスプレイ装置は、省スペースでありながら、互いに輝度の異なる第一表示像及び第二表示像を知覚し易く表示することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、第一表示像生成部に供給される光を放出する第一光源、及び第二表示像生成部に供給される光を放出する第二光源、を有し、第一表示像生成部は、透過部分である第一透過部分を形成し、第一光源から放出された光を第一透過部分に透過させることにより、第一表示像として結像される光を生成し、第二表示像生成部は、第二表示像の表示態様に対応する第二透過部分を形成し、第二光源から放出された光を透過方向に沿って第二透過部分に透過させることにより、第二表示像として結像される光を生成することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、光源部は、第一表示像生成部に供給される光を放出する第一光源と、第二表示像生成部に供給される光を放出する第二光源とを有している。故に、第一光源に対する第二光源の輝度の高さを確保することによって、第二透過部分を透過させた光の結像による第二表示像は、第一透過部分を透過させた光の結像による第一表示像よりも、確実に高輝度にて表示され得る。以上により、ヘッドアップディスプレイ装置は、第一表示像及び第一表示像よりも確実に高輝度である第二表示像を、知覚し易く表示することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、ヘッドアップディスプレイ装置は、第一光源による光の放出と第二光源による光の放出とを共に制御する制御手段、をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、第一光源による光の放出と、第二光源による光の放出とが、制御手段によって共に制御される。故に、第一光源及び第二光源を、別々の構成によって制御する場合よりも、ヘッドアップディスプレイ装置は、小型化され得る。加えて、第一表示像の表示されるタイミングと、第二表示像の表示されるタイミングとは、共通の制御手段によって的確に制御され得る。したがって、ヘッドアップディスプレイ装置は、確実に省スペースでありながら、知覚し易い第一表示像及び第二表示像を的確なタイミングで表示することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、ヘッドアップディスプレイ装置は、第二光源から放出された光を、第二透過部分に導光し、透過方向に沿って第二透過部分に透過させる導光部、をさらに備える。
【0018】
この発明によれば、導光部が、第二光源から放出された光を第二透過部分に導光する。第二光源から放出された光が導光部の導光作用によって第二透過部分に確実に導かれるので、第二光源の位置にかかわらず、第二表示像生成部は、並列する第一表示像生成部に近接して位置し得る。故に、第二表示像生成部を備えるヘッドアップディスプレイ装置であっても、装置の大型化は、確実に抑制される。
【0019】
さらに、導光部は、第二光源から放出された光を透過方向に沿って第二透過部分に透過させる。故に、第二透過部分を透過する光は、第一透過部分を透過する光と実質的に同一の光路を確実に辿り得る。以上により、視認者は、少ない視点移動によって、これら第一表示像及び第二表示像を確実に知覚することができる。したがって、ヘッドアップディスプレイ装置は、確実に省スペースでありながら、第一表示像及び第二表示像をさらに知覚し易く表示することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明では、第一表示像生成部は、第一表示像の表示態様に対応した表示画像を透過部分として形成し、光源から放出された光を表示画像に透過させることにより、第一表示像として結像される光を生成する液晶パネル、を有することを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、液晶パネルは、一般に複数の表示画像を表示することができる。故に、透過部分を形成する構成として液晶パネルを用いることで、ヘッドアップディスプレイ装置は、表示態様の異なる複数の第一表示像によって、種々の情報を表示することができる。
【0022】
一方で、液晶パネルの光の透過率は、一般に低い。故に、視認者の注意を惹くための十分な第一表示像の輝度が、確保され難くなる。しかし、第二表示像生成部によって出射される光は、第一表示像と並列し且つ第一表示部よりも高輝度な第二表示像として結像される。故に、ヘッドアップディスプレイ装置は、第二表示像によって視認者の注意を惹き、第一表示像によって種々の情報を視認者に示すことができる。以上のように、第二表示像生成部と液晶パネルを有する第一表示像生成部とを備えることにより、ヘッドアップディスプレイ装置は、第一表示像及び第二表示像の協働によって、種々の情報を視認者に知覚し易く表示できる。
【0023】
請求項6に記載の発明では、第二表示像生成部は、液晶パネルの外縁に沿って帯状に延伸することを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、液晶パネルの外縁に沿って帯状に延伸する第二表示像生成部は、第一表示像生成部と並列に配置されても、第一表示像生成部及び第二表示像生成部の全体の体積を増加させ難い。故に、ヘッドアップディスプレイ装置の大型化は、確実に抑制される。加えて、第二表示像形成部が液晶パネルの外縁に沿って帯状に延伸する形態であることにより、第二表示像生成部の光を出射させる面積、ひいては第二表示像の大きさは、拡大される。故に、第二表示像は、視認者の注意を惹く作用を確実に発揮できる。これらにより、ヘッドアップディスプレイ装置は、確実に省スペースでありながら、第一表示像及び第二表示像の協働によって、種々の情報を視認者にさらに知覚し易く表示できる。
【0025】
請求項7に記載の発明では、ヘッドアップディスプレイ装置は、第一表示像生成部を収容する筐体、をさらに備え、筐体は、第二表示像として結像される光を透過方向に沿って出射させる姿勢にて、第二表示像生成部を保持する保持部を有することを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、第一表示像生成部を収容する筐体が、第二表示像生成部を保持部によって保持している。故に、第二表示像生成部から出射される光の方向は、第一表示像生成部の透過部分における光の透過方向に、精度良く沿い得る。以上により、第一表示像及び第二表示像は、空間中に正しく並んで結像され得る。故に、視認者は、少ない視点移動によって、これら第一表示像及び第二表示像を確実に知覚することができる。
【0027】
加えて、第一表示像生成部を収容する筐体が第二表示像生成部を保持する保持部を有することにより、ヘッドアップディスプレイ装置は、第二表示像生成部を保持させるための構成を、筐体とは別に備えなくてもよくなる。故に、ヘッドアップディスプレイ装置の大型化は、確実に抑制される。これらにより、ヘッドアップディスプレイ装置は、確実に省スペースでありながら、第一表示像及び第二表示像をさらに知覚し易く表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置の車両における配置を説明するための図である。
【図2】ヘッドアップディスプレイ装置によって投影される表示像を詳しく説明するための図であって、(a)は、燃料残量についての情報を報知する情報表示像を示す図であり、(b)は、ナビゲーション装置の指示する進行方向についての情報を報知する情報表示像を示す図であり、(c)は、ACC装置の作動状態についての情報を報知する情報表示像を示す図である。
【図3】ヘッドアップディスプレイ装置によって投影された光が、空間中に結像される仕組みを詳しく説明するための図である。
【図4】インナーケースに収容された構成を説明するための断面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置の電気的構成を説明するための図である。
【図6】ヘッドアップディスプレイ装置の特徴部分であるインジケータフィルムの近傍を拡大した拡大図であって、図4の領域VIを拡大した拡大図である。
【図7】情報表示像及びインジケータ表示像を表示させるために、制御部によって実施される制御フローを示すフローチャートである。
【図8】図6の変形例を示す図である。
【図9】図6の別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
本発明の一実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置100は、図1に示されるように、車両のインスツルメントパネル91内に収容されている。ヘッドアップディスプレイ装置100は、ウィンドシールド90等の透光性の投影部材に光を投影することにより、ウィンドシールド90よりも車両前方の空間中に、図2に示されるような情報表示像11及びインジケータ表示像13を結像させる。
【0031】
具体的に、ヘッドアップディスプレイ装置100は、ウィンドシールド90において予め規定されている情報投影領域15及びインジケータ投影領域17に、情報表示像11及びインジケータ表示像13として結像される光を投影する。情報表示像11及びインジケータ表示像13として結像される光は、図3に示されるように、ウィンドシールド90によって、車両室内の運転席に向けて反射される。ウィンドシールド90によって反射された光は、運転席に着座する視認者に受け取られる。すると、視認者は、図2に示すように、情報投影領域15の車両前方に結像された情報表示像11と、インジケータ投影領域17の車両前方に結像されたインジケータ表示像13とを視認する。
【0032】
情報投影領域15に投影される情報表示像11は、図2(a)に示されるような車両の燃料タンク内の燃料残量が少なくなったことの警告を、情報として表示する。加えて、情報表示像11は、ナビゲーションシステムによる車両の進行方向の指示(図2(b)参照)、及び自車両を前走車両に追従走行させるアダプティブクルーズコントロール(ACC)装置の作動状態(図2(c)参照)等を、情報として表示する。
【0033】
インジケータ投影領域17は、情報投影領域15の鉛直方向下側に位置している。インジケータ投影領域17に投影されるインジケータ表示像13は、車両の水平方向に沿って帯状に延伸する形状である。インジケータ表示像13は、視認者の視線を情報表示像11に誘導するために、情報表示像11よりも高輝度で、情報表示像11と並んで表示される。インジケータ表示像13は、例えば誘目性の高いオレンジ色の発光色にて表示される。インジケータ表示像13は、継続的に表示されていても、点滅するように断続的に表示されていてもよい。インジケータ表示像13は、視認者の視線を惹き付けて情報表示像11に誘導することにより、情報表示像11に表示された情報を視認者に早急に知覚させる。
【0034】
(基本構成)
まず、ヘッドアップディスプレイ装置100の基本構成について、図3及び図4に基づいて説明する。
【0035】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、液晶パネル照明部20、画像生成部30、インナーケース60、反射鏡群75、及びアウターケース70を備えている。
【0036】
液晶パネル照明部20は、主基板26、発光ダイオード21、第一レンズ23、拡散板25、及び第二レンズ24を有している。主基板26は、板状の回路基板である。主基板26は、インナーケース60によって保持されている。主基板26において、第一レンズ23と対向する実装面には、複数の発光ダイオード21が実装されている。発光ダイオード21は、画像生成部30に供給される光を放出する光源部である。発光ダイオード21は、電流の印加によって、例えば白色光を第一レンズ23に向けて放出する。
【0037】
第一レンズ23、拡散板25、及び第二レンズ24は、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂等の透光性の樹脂材料によって形成されている。第一レンズ23の光軸OA1と第二レンズ24の光軸OA2とが重なるように、第一レンズ23及び第二レンズ24は、インナーケース60に取り付けられている。第一レンズ23は、平面状の入射面23a及び凸レンズ状の出射面23bを有している。入射面23aは、主基板26において発光ダイオード21の実装されている実装面に沿う平面である。第一レンズ23は、発光ダイオード21から放出された光を、入射面23aから第一レンズ23内に入射させる。第一レンズ23は、出射面23bの屈折作用によって、出射面23bから出射される光を、第二レンズ24に向けて屈折させる。
【0038】
拡散板25は、板状に形成されている。拡散板25の両表面には、微細な凹凸であるシボが形成されている。拡散板25は、第一レンズ23と第二レンズ24との間に配置されている。拡散板25は、シボによる拡散作用によって、第一レンズ23から出射された光を拡散させる。拡散板25は、第一レンズ23の出射面23bから出射された光の輝度斑を低減し、第二レンズ24の入射面24aに向けて出射させる。
【0039】
第二レンズ24は、凸レンズ状の入射面24a及び出射面24bを有している。第二レンズ24は、拡散板25を通過した光を、入射面24aの屈折作用によって収束させつつ、第二レンズ24内に入射させる。第二レンズ24は、出射面24bの屈折作用によって、出射面24bから出射される光を、第二レンズ24の光軸OA2に沿う方向に屈折させる。
【0040】
画像生成部30は、ドットマトリクス方式の液晶パネル30aを有している。液晶パネル30aは、長手方向を有する板状である。液晶パネル30aは、表示画面の板面方向に沿って配列された複数の画素を制御することにより、情報表示像11の表示態様に対応する表示画像31を透過部分として形成する。液晶パネル30aは、液晶パネル照明部20から放出された光を表示画像31に透過させることにより、情報表示像11として結像される光を生成する。液晶パネル30aの板厚方向は、第一レンズ23及び第二レンズ24の光軸OA1,OA2に対して、僅かに傾斜している。尚、第一レンズ23及び第二レンズ24の光軸OA1,OA2に沿う方向であって、表示画像31を透過する光の進行方向を、以下、透過方向TD1という。
【0041】
インナーケース60は、液晶パネル照明部20及び画像生成部30等を収容している。インナーケース60は、アウターケース70に収容され、当該アウターケース70に固定されている。インナーケース60は、リヤカバー61、リヤケース部62、フロントケース部63、及びフロントプレート65を有している。リヤカバー61、リヤケース部62、フロントケース部63、及びフロントプレート65は、遮光性の樹脂材料によって形成されている。
【0042】
リヤカバー61は、主基板26を保持している。リヤケース部62は、リヤカバー61の透過方向TD1に位置し、第一レンズ23及び拡散板25等を支持している。フロントケース部63は、リヤケース部62の透過方向TD1に位置し、リヤケース部62と協働で第二レンズ24を支持している。フロントケース部63の透過方向TD1には、フロントプレート65が取り付けられている。フロントケース部63及びフロントプレート65は、協働で液晶パネル30a等を支持している。フロントプレート65には、第一通過窓65aが形成されている。画像生成部30から出射された光は、透過方向TD1に沿って第一通過窓65aを通過する。
【0043】
反射鏡群75は、アウターケース70に収容され、当該アウターケース70に固定されている。反射鏡群75は、平面鏡78及び凹面鏡76を有している。平面鏡78及び凹面鏡76は、透光性の樹脂材料又はガラス等の板材に、アルミニウム等の金属を蒸着させることにより形成されている。平面鏡78は、平面状の反射面を有している。平面鏡78は、画像生成部30から出射された光を、凹面鏡76に向けて反射する。
【0044】
凹面鏡76は、平面鏡78と対向し、平面鏡78に対して凹状に湾曲する反射面を有している。凹面鏡76の反射面の湾曲形状は、ウィンドシールド90の湾曲によって生じる情報表示像11及びインジケータ表示像13の歪みを補正するように規定されている。凹面鏡76は、平面鏡78によって反射された光を、ウィンドシールド90に向けて反射する。
【0045】
アウターケース70は、樹脂材料によって形成されている。アウターケース70は、インナーケース60及び反射鏡群75等を収容している。アウターケース70は、情報表示像11及びインジケータ表示像13が正しい位置に結像されるように、アウターケース70及び反射鏡群75の相対位置を正確に規定している。
【0046】
次に、ヘッドアップディスプレイ装置100の電気的構成について、図5に基づいて説明する。
【0047】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、制御部80を備えている。制御部80は、各種の演算処理を行うプロセッサ、当該演算処理に用いられるプログラム及び表示画像31(図4参照)の画像データ等が格納されたフラッシュメモリ、及び演算の作業領域として機能するRAM等によって構成されている。
【0048】
制御部80は、車内Local Area Network(LAN)81と接続されている。車内LAN81は、車両に搭載された種々の制御装置と接続されている。制御部80は、燃料残量についての情報、ナビゲーション装置の指示する進行方向についての情報、及びACC装置の作動状態についての情報等を、車内LAN81を通じて取得する。
【0049】
制御部80は、発光ダイオード21及び液晶パネル30aと接続されている。制御部80は、車内LAN81を通じて取得した車両の情報に基づいて、発光ダイオード21への電流の印加することにより、発光ダイオード21による光の放出を制御する。また、制御部80は、車内LAN81を通じて取得した情報に基づいて、液晶パネル30aの各画素を制御することにより、液晶パネル30aに表示画像31(図4参照)を形成させる。
【0050】
(特徴部分)
以下、本発明の一実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置100の特徴部分について、図3及び図6に基づいてさらに詳細に説明する。
【0051】
ヘッドアップディスプレイ装置100は、インジケータ照明部40及びインジケータフィルム50をさらに備えている。
【0052】
インジケータ照明部40は、補助基板46、発光ダイオード41、及び導光プリズム42を有している。補助基板46は、液晶パネル30aの長手方向に沿って延伸する帯板状に形成された回路基板である。補助基板46は、インナーケース60に取り付けられている。補助基板46において、導光プリズム42と対向する実装面には、複数の発光ダイオード41が実装されている。
【0053】
発光ダイオード41は、インジケータフィルム50に供給される光を放出する光源部である。発光ダイオード41は、電流の印加によって、例えば白色光を放出する。発光ダイオード41は、補助基板46の実装面に、液晶パネル30aの長手方向に沿って複数並べられている。複数の発光ダイオード41は、導光プリズム42に向けて光を放出する。発光ダイオード41は、発光ダイオード21(図4参照)と同様に、制御部80(図5参照)と接続されている。制御部80によって電流が印加されることにより、発光ダイオード41は、光の放出を制御される。
【0054】
導光プリズム42は、発光ダイオード41から放出された光をインジケータフィルム50に導光する。導光プリズム42は、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂等の透光性の樹脂材料によって形成されている。導光プリズム42は、入射面42a、出射面42b、及び導光本体部42cを形成している。入射面42aは、補助基板46の実装面と対向するように、液晶パネル30aの長手方向に沿って延伸する平面である。出射面42bは、液晶パネル30aの表示面に沿う平面であって、透過方向TD1を向いている。出射面42bは、インジケータフィルム50と対向するように、液晶パネル30aの長手方向に沿って延伸している。導光本体部42cは、透過方向と交差する方向に入射面42aから導光プリズム42内に入射する発光ダイオード41の光の進行方向を、透過方向TD1に沿う方向である透過方向TD2に変更させる。以上の構成により、導光プリズム42は、発光ダイオード41から放出された光を、出射面42bから透過方向TD2に出射させる。
【0055】
インジケータフィルム50は、透過方向TD1と直交する方向において画像生成部30と並列に配置されている。インジケータフィルム50は、インナーケース60によって保持されている。インジケータフィルム50は、液晶パネル30aの長手方向の外縁に沿って帯状に延伸している。インジケータフィルム50は、透光性の樹脂材料によって形成された薄板状の部材である。インジケータフィルム50には、印刷等によって、橙色光透過部51が形成されている。
【0056】
橙色光透過部51は、インジケータ表示像13の表示色及び形状等の表示態様に対応している。橙色光透過部51における光の透過率は、液晶パネル30aに形成される表示画像31の光の透過率よりも高い。具体的に、橙色光透過部51は、黒色の遮光性の印刷と、オレンジ色として視認される周波数帯の光を主に透過させる透光性の印刷とをインジケータフィルム50の基材に施すことにより、形成されている。橙色光透過部51を形成している印刷は、延伸方向に沿って中央部から両端部に向かうに従い、オレンジ色から黒色に徐々に変化している。これにより、水平方向の中央部から両端部に向かって次第に輝度の漸減するグラデーションを有するインジケータ表示像13(図2(a)等参照)が結像される。
【0057】
インジケータフィルム50は、発光ダイオード41から放出され、導光プリズム42によって導光された光を、橙色光透過部51に透過させる。橙色光透過部51を透過する光の透過方向TD2は、画像生成部30の透過方向TD1に沿っている。以上のようにして、インジケータフィルム50は、インジケータ表示像13として結像される光を、インジケータ表示像13の表示態様に対応するように生成する。
【0058】
インナーケース60のフロントプレート65には、第二通過窓65b及び補助基板保持部66がさらに形成されている。第二通過窓65bは、液晶パネル30aの長手方向に延伸する帯状の開口である。第二通過窓65bには、インジケータフィルム50が嵌め込まれている。これにより、インジケータフィルム50は、画像生成部30の透過方向TD1に沿う透過方向TD2にインジケータ表示像13として結像される光を出射させる姿勢にて、フロントプレート65に保持される。インジケータフィルム50から出射された光は、透過方向TD2に第二通過窓65bを通過する。補助基板保持部66は、第二通過窓65bの延伸方向に沿い且つ第二通過窓65bに最も近接しているフロントプレート65の外縁に形成されている。補助基板保持部66は、補助基板46を保持している。
【0059】
以上の構成において、ヘッドアップディスプレイ装置100が情報表示像11及びインジケータ表示像13を表示する処理を、図7に基づいて詳細に説明する。図7のフローチャートに示す処理は、ヘッドアップディスプレイ装置100の作動が運転者等によってONにされることにより、制御部80によって実施される。制御部80による処理は、ヘッドアップディスプレイ装置100の作動がOFFにされるまで、繰り返される。
【0060】
S101では、車内LAN81を通じて、車両の情報を取得する。S101において、情報表示像11として表示すべき情報を取得した場合、S102に進む。S102では、S101にて取得した情報に対応する表示画像31の画像データを、フラッシュメモリから読み込み、S103に進む。S103では、各発光ダイオード21,41への電流の印加と、液晶パネル30aの各画素の制御を開始し、処理フローを終了する。
【0061】
図3〜図5に示されるように、S103の制御部80の制御により、液晶パネル30aに表示画像31が形成される。加えて、発光ダイオード21の発光により、画像生成部30は、情報表示像11として結像される光を生成し、透過方向TD1に出射させる。さらに、発光ダイオード41の発光により、インジケータフィルム50は、インジケータ表示像13として結像される光を生成し、透過方向TD2に出射させる。
【0062】
情報表示像11として結像される光及びインジケータ表示像13として結像される光は、互いに並列で配置された画像生成部30及びインジケータフィルム50から、共に透過方向TD1,TD2に出射される。これらの光は、平面鏡78、凹面鏡76、及びウィンドシールド90という実質的に同一の光路を経て、互いに並列して表示される情報表示像11及びインジケータ表示像13として空間中に結像される。これら情報表示像11及びインジケータ表示像13の表示は、S101にて取得した車両の情報が車内LAN81(図5参照)上から無くなるか、又は異なる車両の情報を制御部80(図5参照)が取得するまで、継続される。
【0063】
ここまで説明した本実施形態によれば、ウィンドシールド90から情報表示像11までの光路の距離LP1(図3 実線の矢印を参照)は、ウィンドシールド90から、凹面鏡76及び平面鏡78を経て、画像生成部30までの距離に一致する。また、ウィンドシールド90からインジケータ表示像13までの光路の距離LP2(図3 破線の矢印を参照)は、ウィンドシールド90から、凹面鏡76及び平面鏡78を経て、インジケータフィルム50までの距離に一致する。画像生成部30及びインジケータフィルム50から出射された光が互いに実質的に同一の光路を経ることにより、光路の距離LP1と光路の距離LP2との差は、低減される。以上により、情報表示像11及びインジケータ表示像13を視認する視認者は、少ない視点移動によって、これら情報表示像11及びインジケータ表示像13を知覚することができる。
【0064】
さらに、情報表示像11として結像される光を生成する画像生成部30と、インジケータ表示像13として結像される光を生成するインジケータフィルム50とは、透過方向TD1と直交する方向において、並列に配置されている。故に、情報表示像11に加えてインジケータ表示像13を空間中に結像させるヘッドアップディスプレイ装置100であっても、装置の大型化は、抑制される。
【0065】
したがって、ヘッドアップディスプレイ装置100は、省スペースでありながら、互いに輝度の異なる情報表示像11及びインジケータ表示像13を知覚し易く表示することができる。
【0066】
加えて本実施形態によれば、ヘッドアップディスプレイ装置100には、光源部として、画像生成部30に供給される光を放出する発光ダイオード21と、インジケータフィルム50に供給される光を放出する発光ダイオード41とが設けられている。故に、発光ダイオード21に対する発光ダイオード41の輝度の高さを確保することによって、インジケータ表示像13は、情報表示像11よりも、確実に高輝度にて表示され得る。以上により、ヘッドアップディスプレイ装置100は、情報表示像11及び情報表示像11よりも確実に高輝度であるインジケータ表示像13を、知覚し易く表示することができる。
【0067】
また本実施形態によれば、発光ダイオード21による光の放出と、発光ダイオード41による光の放出とは、制御部80によって共に制御される。故に、発光ダイオード21及び発光ダイオード41を、別々の構成によって制御する場合よりも、ヘッドアップディスプレイ装置100は、小型化され得る。
【0068】
さらに、情報表示像11の表示されるタイミングと、インジケータ表示像13の表示されるタイミングとは、共通の制御部80によって、互いにずれを生じることなく的確に制御され得る。したがって、ヘッドアップディスプレイ装置100は、確実に省スペースでありながら、知覚し易い情報表示像11及びインジケータ表示像13を的確なタイミングで表示することができる。
【0069】
さらに本実施形態によれば、発光ダイオード41から放出された光は、導光プリズム42の導光作用によって、橙色光透過部51に確実に導かれる。故に、発光ダイオード41の位置にかかわらず、インジケータフィルム50は、並列する画像生成部30に近接して位置し得る。以上により、インジケータフィルム50を備えるヘッドアップディスプレイ装置100であっても、装置の大型化は、確実に抑制される。
【0070】
さらに、導光プリズム42は、発光ダイオード41から放出された光の進行方向を、画像生成部30の透過方向TD1に沿う透過方向TD2に変更し、橙色光透過部51に透過させる。故に、橙色光透過部51を透過する光は、表示画像31を透過する光と実質的に同一の光路を確実に辿り得る。以上により、視認者は、少ない視点移動によって、これら情報表示像11及びインジケータ表示像13を確実に知覚することができる。したがって、ヘッドアップディスプレイ装置100は、確実に省スペースでありながら、情報表示像11及びインジケータ表示像13をさらに知覚し易く表示することができる。
【0071】
また加えて本実施形態によれば、ドットマトリクス方式の液晶パネル30aは、複数の表示画像31を表示することができる。故に、液晶パネル30aを用いることで、ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示態様の異なる複数の情報表示像11によって、種々の情報を表示することができる。一方で、液晶パネル30aの表示画像31の光の透過率は、インジケータフィルム50の橙色光透過部51の光の透過率と比較して低い。故に、視認者の注意を惹くための十分な情報表示像11の輝度が、確保され難くなる。
【0072】
しかし、インジケータフィルム50から出射される光は、情報表示像11と並列し且つ情報表示像11よりも高輝度なインジケータ表示像13として結像される。故に、ヘッドアップディスプレイ装置100は、インジケータ表示像13によって視認者の注意を惹き、情報表示像11によって種々の情報を視認者に示すことができる。以上のように、インジケータフィルム50と液晶パネル30aを有する画像生成部30とを備えることにより、ヘッドアップディスプレイ装置100は、情報表示像11及びインジケータ表示像13の協働によって、種々の情報を視認者に知覚し易く表示できる。
【0073】
さらに加えて本実施形態によれば、液晶パネル30aの長手方向の外縁に沿って帯状に延伸するインジケータフィルム50は、液晶パネル30aと並列に配置されても、ヘッドアップディスプレイ装置100の体積を増加させ難い。故に、ヘッドアップディスプレイ装置100の大型化は、確実に抑制される。さらに、インジケータフィルム50が帯状に延伸することにより、橙色光透過部51の面積、ひいては結像されるインジケータ表示像13の大きさは、拡大される。故に、インジケータ表示像13は、視認者の注意を惹く作用を確実に発揮できる。これらにより、ヘッドアップディスプレイ装置100は、確実に省スペースでありながら、情報表示像11及びインジケータ表示像13の協働によって、種々の情報を視認者にさらに知覚し易く表示できる。
【0074】
またさらに本実施形態によれば、画像生成部30を収容するインナーケース60が、フロントプレート65によってインジケータフィルム50を保持している。故に、インジケータフィルム50から出射される光の透過方向TD2は、画像生成部30における光の透過方向TD1に、精度良く沿い得る。以上により、情報表示像11及びインジケータ表示像13は、空間中に正しく並んで結像される。故に、視認者は、少ない視点移動によって、これら情報表示像11及びインジケータ表示像13を確実に知覚することができる。
【0075】
さらに、インナーケース60がインジケータフィルム50を保持するフロントプレート65を有することにより、ヘッドアップディスプレイ装置100は、インジケータフィルム50を保持させるための構成を、インナーケース60とは別に備えなくてもよくなる。故に、ヘッドアップディスプレイ装置100の大型化は、確実に抑制される。これらにより、ヘッドアップディスプレイ装置100は、確実に省スペースでありながら、情報表示像11及びインジケータ表示像13をさらに知覚し易く表示することができる。
【0076】
尚、本実施形態において、情報表示像11が特許請求の範囲に記載の「第一表示像」に相当し、インジケータ表示像13が特許請求の範囲に記載の「第二表示像」に相当し、発光ダイオード21が特許請求の範囲に記載の「光源部」及び「第一光源」に相当し、画像生成部30が特許請求の範囲に記載の「第一表示像生成部」に相当し、表示画像31が特許請求の範囲に記載の「透過部分」及び「第一透過部分」に相当し、発光ダイオード41が特許請求の範囲に記載の「光源部」及び「第二光源」に相当し、導光プリズム42が特許請求の範囲に記載の「導光部」に相当し、インジケータフィルム50が特許請求の範囲に記載の「第二表示像生成部」に相当し、インナーケース60が特許請求の範囲に記載の「筐体」に相当し、フロントプレート65が特許請求の範囲に記載の「保持部」に相当し、制御部80が特許請求の範囲に記載の「制御手段」に相当し、ウィンドシールド90が特許請求の範囲に記載の「投影部材」に相当する。
【0077】
(他の実施形態)
以上、本発明による一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0078】
上記実施形態において、透過方向TD1に交差する方向に発光ダイオード41から放出された光の進行方向は、透過方向TD1に沿う透過方向TD2に、導光プリズム42によって変更されていた。しかし、発光ダイオード41から放出された光を橙色光透過部51に導光する「導光部」に相当する構成は、導光プリズム42に限定されない。
【0079】
例えば、図8に示されるように、ガラス等の板材にアルミニウム等の金属を蒸着させることにより形成された反射鏡242が、「導光部」として設けられていてもよい。反射鏡242は、帯板状に形成されており、液晶パネル30aの長手方向に延伸している。反射鏡242において金属の蒸着している反射面は、発光ダイオード41及びインジケータフィルム50と対向している。反射鏡242は、発光ダイオード41から透過方向TD1に交差する方向に出射された光を、反射面によって透過方向TD2に反射する。以上のような反射鏡242の反射によって、発光ダイオード41から放出された光は、橙色光透過部51に導光される。又は、上述した導光プリズム42及び反射鏡242等の「導光部」に相当する構成が、ヘッドアップディスプレイ装置から省略されていてもよい。インジケータフィルム50の透過方向TD2とは反対側に「第二光源」に相当する発光ダイオードを配置することにより、「導光部」は省略され得る。
【0080】
上記実施形態において、インジケータフィルム50に形成された橙色光透過部51に、発光ダイオード41から放出された光を透過させることにより、インジケータ表示像13として結像される光は、生成されていた。しかし、インジケータ表示像13として結像される光を、透過方向TD1に沿って出射させる「第二表示像生成部」は、インジケータフィルム50に限定されない。
【0081】
例えば、図9に示されるように、補助基板346及び複数の発光ダイオード341が、「第二光源」と「第二表示像生成部」を兼ねた構成として、ヘッドアップディスプレイ装置に設けられていてもよい。補助基板346は、液晶パネル30aの長手方向に沿って延伸する帯板状であって、透過方向TD1と直交する方向において画像生成部30と並列に配置されている。補助基板346の実装面は、透過方向TD1に向けられている。複数の発光ダイオード341は、補助基板346の実装面に、液晶パネル30aの長手方向に沿って、並んで配置されている。以上の構成により、複数の発光ダイオード341は、インジケータ表示像の表示態様に対応するように生成した光を、透過方向TD1に沿う出射方向OD2に出射させることができる。又は、上述した補助基板346及び複数の発光ダイオード341に換えて、透過方向TD1に沿う出射方向OD2に光を出射させる冷陰極管及びエレクトロルミネセンス等が、ヘッドアップディスプレイ装置に設けられていてもよい。
【0082】
上記実施形態において、インジケータフィルム50が、透過方向TD1と直交する方向において画像生成部30と並列に配置されていた。しかし、インジケータフィルム等の「第二表示像生成部」は、画像生成部等の「第一表示像生成部」の透過方向TD1と交差する方向に、隣り合うようにして、並列で配置されていればよい。例えば、隣接して配置される「第一表示像生成部」及び「第二表示像生成部」のうち、「第一表示像生成部」が「第二表示像生成部」よりも透過方向TD1にずれて位置していてもよい。又は、「第二表示像生成部」が「第一表示像生成部」よりも透過方向TD1にずれて位置していてもよい。
【0083】
上記実施形態において、画像生成部30に供給される光を放出する発光ダイオード21と、インジケータフィルム50に供給される光を放出する発光ダイオード41とは、別々に設けられていた。しかし、情報表示像よりもインジケータ表示像の輝度を高くすることができれば、「第一表示像生成部」及び「第二表示像生成部」には、共通の「光源部」から放出された光が供給されてもよい。
【0084】
上記実施形態において、光を放出する構成として、発光ダイオード21,41が用いられていた。しかし、「第一光源」及び「第二光源」として、冷陰極管、エレクトロルミネセンス、及び半導体レーザー光源等が、適宜用いられてよい。
【0085】
上記実施形態において、発光ダイオード21による光の放出と、発光ダイオード41による光の放出とは、共通の制御部80によって制御されていた。しかし、別々の制御部が、車内LANから車両の情報をそれぞれ取得することにより、発光ダイオード21及び発光ダイオード41による光の放出を、個々に制御していてもよい。
【0086】
上記実施形態において、画像生成部30は、「第一表示像生成部」として、液晶パネル30aに種々の表示画像31を形成させていた。しかし、「第一表示像生成部」は、液晶パネル30aを有する構成に限定されない。例えば、インジケータフィルム50のように、透光性の板材に、透光性の印刷によって透光部分を形成したものが、「第一表示像生成部」に相当する構成として、ヘッドアップディスプレイ装置に設けられていてもよい。
【0087】
上記実施形態において、インジケータフィルム50は、液晶パネル30aの長手方向に帯状に延伸する形状であった。しかし、インジケータフィルムの形状は、上記実施形態の形状に限定されない。例えば、インジケータフィルムは、液晶パネル30aの長手方向と直交する方向に帯状に延伸する形状であってもよい。又は、インジケータフィルムは、液晶パネル30aの外縁に沿うように、複数設けられていてもよい。
【0088】
上記実施形態において、インジケータフィルム50に印刷によって形成された橙色光透過部51が、「第二透過部分」に相当していた。しかし、「第二透過部分」の形態は、インジケータ表示像の表示態様に対応するよう適宜変更されてよい。例えば、赤色に視認される周波数帯の光を主に透過させる「第二透過部分」が、「第二表示像生成部」に形成されていてもよい。
【0089】
上記実施形態において、インナーケース60が、液晶パネル照明部20及び画像生成部30と共に、インジケータ照明部40及びインジケータフィルム50を収容していた。しかし、液晶パネル照明部及び画像生成部等を収容する筐体と、インジケータ照明部及びインジケータフィルムを収容する筐体とは、一体でなくてもよい。例えば、液晶パネル照明部及び画像生成部等を収容する筐体と、インジケータ照明部及びインジケータフィルムを収容する筐体とは、別々にアウターケースに固定されていてもよい。
【0090】
上記実施形態において、ヘッドアップディスプレイ装置100は、情報表示像11及びインジケータ表示像13として結像される光をウィンドシールド90に投影していた。しかし、例えばインスツルメントパネル91の上面に設置されたコンバイナ等の透光性の板材に、光を投影するヘッドアップディスプレイ装置であってもよい。
【0091】
上記実施形態では、情報表示像11によって視認者に報知される情報として、燃料残量についての情報、ナビゲーション装置の指示する進行方向についての情報、及びACC装置の作動状態についての情報等が例示されていた(図2(a)〜(c)参照)。しかし、上述したもの以外の情報が、「第一表示像」によって視認者に報知されてもよい。また、「第二表示像」が、視認者の視線を惹きつける機能だけでなく、視認者に情報を報知する機能を有していてもよい。以上のように、「第一表示像」及び「第二表示像」の発光色及び形状といった表示態様は、適宜変更されてよい。
【符号の説明】
【0092】
LP1,LP2 光路の距離、OA1,OA2 光軸、TD1,TD2 透過方向、OD2 出射方向、11 情報表示像(第一表示像)、13 インジケータ表示像(第二表示像)、15 情報投影領域、17 インジケータ投影領域、20 液晶パネル照明部、21 発光ダイオード(光源部,第一光源)、23 第一レンズ、23a 入射面、23b 出射面、24 第二レンズ、24a 入射面、24b 出射面、25 拡散板、26 主基板、30 画像生成部(第一表示像生成部)、30a 液晶パネル、31 表示画像(透過部分,第一透過部分)、40 インジケータ照明部、41 発光ダイオード(光源部,第二光源)、341 発光ダイオード(光源部,第二光源,第二表示像生成部)、42 導光プリズム(導光部)、42a 入射面、42b 出射面、42c 導光本体部(導光部)、242 反射鏡、46,346 補助基板、50 インジケータフィルム(第二表示像生成部)、51 橙色光透過部、60 インナーケース(筐体)、61 リヤカバー、62 リヤケース部、63 フロントケース部、65 フロントプレート(保持部)、65a 第一通過窓、65b 第二通過窓、66 補助基板保持部、70 アウターケース、75 反射鏡群、76 凹面鏡、78 平面鏡、80 制御部(制御手段)、81 車内LAN、90 ウィンドシールド(投影部材)、91 インスツルメントパネル、100 ヘッドアップディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部から放出された光を透光性の投影部材に投影することにより、情報を表示する第一表示像及び前記第一表示像よりも高輝度で情報を表示する第二表示像を空間中に結像させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記第一表示像の表示態様に対応する透過部分を形成し、前記光源部から放出された光を前記透過部分に透過させることにより、前記第一表示像として結像される光を生成する第一表示像生成部と、
前記第一透過部を透過する光の透過方向と交差する方向において前記第一表示像生成部と並列に配置され、前記第二表示像の表示態様に対応するように生成した前記第二表示像として結像される光を、前記透過方向に沿って出射させる第二表示像生成部と、
を備えることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記光源部は、前記第一表示像生成部に供給される光を放出する第一光源、及び前記第二表示像生成部に供給される光を放出する第二光源、を有し、
前記第一表示像生成部は、前記透過部分である第一透過部分を形成し、前記第一光源から放出された光を前記第一透過部分に透過させることにより、前記第一表示像として結像される光を生成し、
前記第二表示像生成部は、前記第二表示像の表示態様に対応する第二透過部分を形成し、前記第二光源から放出された光を前記透過方向に沿って前記第二透過部分に透過させることにより、前記第二表示像として結像される光を生成することを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第一光源による光の放出と前記第二光源による光の放出とを共に制御する制御手段、をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記第二光源から放出された光を、前記第二透過部分に導光し、前記透過方向に沿って前記第二透過部分に透過させる導光部、をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記第一表示像生成部は、前記第一表示像の表示態様に対応した表示画像を前記透過部分として形成し、前記光源から放出された光を前記表示画像に透過させることにより、前記第一表示像として結像される光を生成する液晶パネル、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記第二表示像生成部は、前記液晶パネルの外縁に沿って帯状に延伸することを特徴とする請求項5に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記第一表示像生成部を収容する筐体、をさらに備え、
前記筐体は、前記第二表示像として結像される光を前記透過方向に沿って出射させる姿勢にて、前記第二表示像生成部を保持する保持部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−163705(P2012−163705A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23049(P2011−23049)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】