説明

ヘッドレスト位置調整装置及びヘッドレスト位置調整方法

【課題】簡単な構成で不要な動作及び誤検出を防止しつつ高精度且つ自動的にヘッドレストの位置を正確な位置に調整する。
【解決手段】ヘッドレスト位置調整装置100は、静電容量センサ部10、検出回路20及び制御部30を備え、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離L1以下である場合は各検知電極11〜15により検知された全ての静電容量値に基づきヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出してヘッドレスト43の上下方向の位置を調整する。距離Lが第1の所定距離より長く第2の所定距離以下である場合は少なくとも最上及び最下に位置する検知電極15,11により検知された静電容量値に基づき頭部49aの高さ位置を検出してヘッドレスト43の上下方向の位置を調整する。距離Lが第2の所定距離より長い場合は、ヘッドレスト43を停止又は所定位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両の座席に対応して設けられたヘッドレストの位置を調整するヘッドレスト位置調整装置及びヘッドレスト位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車等の車両の座席に対応して設けられたヘッドレストの位置を調整するものとして、次のようなものが知られている。すなわち、下記特許文献1に開示されたヘッドレスト駆動制御装置は、車両の天井部とヘッドレストに組み込まれた一対の検知電極間の静電容量を監視し、ヘッドレストを下端から上方向へ駆動しながら走査を行った時の静電容量の変化量から、人体(乗員)の頭部の有無を判断してヘッドレストの位置を調整する。
【0003】
また、下記特許文献2に開示されたヘッドレストを調節するための装置は、ヘッドレスト内に配置された2つ若しくは3つのコンデンサプレートを用いて頭部と各コンデンサプレートとの間の静電容量値を測定し、ヘッドレストを適切な高さに調節する。
【0004】
さらに、下記特許文献3に開示されたヘッドレスト調整装置は、ヘッドレスト内に1つの検知電極を配置し、頭部との間の静電容量を監視してヘッドレストを上下方向へ駆動しながら走査を行った時の静電容量の変化量から、頭部の有無を判断してヘッドレストの位置を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−11511号公報
【特許文献2】特開2000−309242号公報
【特許文献3】特開平11−180200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1〜3に開示されたものでは、ヘッドレストを移動させながら走査を行っているが、乗員が着座した状態で前後方向に揺らいだ場合などに、高さ方向の調整位置がずれてしまったり、ヘッドレスト制御側(例えば、ECU(電子制御ユニット)など)でのデータ処理の負荷が大きくなってしまうなどの問題がある。
【0007】
また、上記のものでは、配置された静電容量センサの出力変化から頭部の位置を推定しようとしているが、頭部が静電容量センサから遠い位置にあると出力変化が小さくなり、頭部の凹凸を明確に検知できずに調整精度が劣ってしまうという問題もある。
【0008】
更に、上記のものでヘッドレストの高さを頭部に常時追従させて位置調整しようとすると、頭部とヘッドレストとの間の距離が離れている時であっても位置調整動作が実行されてしまうことが予想され、このような場合は静電容量の出力値が微弱になることが想定されるので、誤検出が頻繁に起こり精度の高い位置調整を行うことが困難となると共に、不要な動作に伴う無駄な消費電力が発生するという問題もある。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、簡単な構成で不要な動作及び誤検出を防止しつつ高精度且つ自動的にヘッドレストの位置を正確な位置に調整することができるヘッドレスト位置調整装置及びヘッドレスト位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るヘッドレスト位置調整装置は、座席に着座した人体の頭部の後方に配置されるヘッドレストに高さ方向に沿って少なくとも3つ並設され、前記頭部と前記ヘッドレストと前記頭部との間の静電容量を検知する複数の検知電極と、前記複数の検知電極により検知された静電容量値に基づいて、前記ヘッドレストに対する前記頭部の高さ位置を検出する検出回路と、前記検出回路の検出結果に基づいて、前記ヘッドレストの上下方向の位置を調整する位置調整手段とを備え、前記検出回路は、(1)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が第1の所定距離以下である場合は、前記複数の検知電極により検知された全ての静電容量値に基づき前記高さ位置を検出し、(2)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離より長く且つ前記第1の所定距離よりも長い第2の所定距離以下である場合は、前記複数の検知電極のうちの少なくとも最上位置の検知電極と最下位置の検知電極とにより検知された静電容量値に基づき前記高さ位置を検出し、(3)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第2の所定距離より長い場合は、前記位置調整手段によって前記ヘッドレストを停止又は所定位置に移動させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るヘッドレスト位置調整装置は、検出回路によって、ヘッドレストと頭部との間の距離が第1の所定距離以下であるかそれよりも長いかにより、ヘッドレストに対する頭部の高さ位置を検出するために用いる静電容量値を異ならせているので、簡単な構成で誤検出を防止しつつ高精度且つ自動的にヘッドレストの位置を正確な位置に調整することができる。
また、本発明に係るヘッドレスト位置調整装置は、検出回路によって、ヘッドレストと頭部との間の距離が第2の所定距離以下であるかそれよりも長いかにより、ヘッドレストの位置調整動作の種類が決定されるので、簡単な構成で不要な動作を防止しつつ高精度にヘッドレストの位置を正確な位置に調整することができる。
【0012】
本発明に係るヘッドレスト位置調整装置において、前記検出回路は、前記複数の検知電極により検知された静電容量値のうちの最小値が第1のしきい値以上である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離以下であると判断し、前記最小値が前記第1のしきい値未満で且つ前記第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値以上である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離よりも長く且つ前記第2の所定距離以下であると判断し、前記最小値が前記第2のしきい値未満である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第2の所定距離よりも長いと判断する構成とすることが好ましい。
【0013】
また、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離を測定する距離測定手段を更に備え、前記検出回路は、前記距離測定手段の測定値に基づいて、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離を判断する構成とすることができる。
【0014】
前記検出回路は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離より長く且つ前記第2の所定距離以下である場合に、前記最上位置の検知電極及びそこから所定個数の検知電極により検知された静電容量値と、前記最下位置の検知電極及びそこから所定個数の検知電極により検知された静電容量値とに基づいて、前記高さ位置を検出する構成とすることができる。
【0015】
前記複数の検知電極は、それぞれが矩形短冊状に形成され、その長手方向が前記高さ方向と交差するように前記ヘッドレストの前面側に配置されるようにしても良い。
【0016】
本発明に係るヘッドレスト位置調整方法は、座席に着座した人体の頭部と前記頭部の後方に配置されるヘッドレストとの間の静電容量を、前記ヘッドレストに高さ方向に沿って少なくとも3つ並設された複数の検知電極によって検知し、(1)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が第1の所定距離以下である場合は、前記複数の検知電極により検知された全ての静電容量値に基づき前記ヘッドレストに対する前記頭部の高さ位置を検出して前記ヘッドレストの上下方向の位置を調整し、(2)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離より長く且つ前記第1の所定距離よりも長い第2の所定距離以下である場合は、前記複数の検知電極のうちの少なくとも最上位置の検知電極と最下位置の検知電極とにより検知された静電容量値に基づき前記高さ位置を検出して前記ヘッドレストの上下方向の位置を調整し、(3)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第2の所定距離より長い場合は、前記ヘッドレストを停止又は所定位置に移動させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るヘッドレスト位置調整方法は、ヘッドレストと頭部との間の距離が第1の所定距離以下であるかそれよりも長いかにより、ヘッドレストに対する頭部の高さ位置を検出するために用いる静電容量値を異ならせているので、簡単な構成で誤検出を防止しつつ高精度且つ自動的にヘッドレストの位置を正確な位置に調整することができる。
また、本発明に係るヘッドレスト位置調整方法は、ヘッドレストと頭部との間の距離が第2の所定距離以下であるかそれよりも長いかにより、ヘッドレストの位置調整動作の種類が決定されるので、簡単な構成で不要な動作を防止しつつ高精度にヘッドレストの位置を正確な位置に調整することができる。
【0018】
本発明に係るヘッドレスト位置調整方法において、前記複数の検知電極により検知された静電容量値のうちの最小値が第1のしきい値以上である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離以下であると判断し、前記最小値が前記第1のしきい値未満で且つ前記第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値以上である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離よりも長く且つ前記第2の所定距離以下であると判断し、前記最小値が前記第2のしきい値未満である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第2の所定距離よりも長いと判断する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成で不要な動作及び誤検出を防止しつつ高精度且つ自動的にヘッドレストの位置を正確な位置に調整することができるヘッドレスト位置調整装置及びヘッドレスト位置調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置を配置した車両の座席を示す図である。
【図2】同ヘッドレスト位置調整装置の検知電極のヘッドレストにおける配置態様を示す図である。
【図3】同ヘッドレスト位置調整装置の全体構成を示すブロック図である。
【図4】同ヘッドレスト位置調整装置の第1の動作態様を示すフローチャートである。
【図5】同ヘッドレスト位置調整装置の静電容量センサ部による第1の出力例を示す図である。
【図6】同ヘッドレスト位置調整装置の静電容量センサ部による第2の出力例を示す図である。
【図7】同ヘッドレスト位置調整装置による調整方式を説明するための図である。
【図8】同ヘッドレスト位置調整装置の第2の動作態様を示すフローチャートである。
【図9】同ヘッドレスト位置調整装置の第3の動作態様を示すフローチャートである。
【図10】同ヘッドレスト位置調整装置の静電容量センサ部による第3の出力例を示す図である。
【図11】距離算出角度とヘッドレストと頭部との間の距離との関係を説明するための図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置によるヘッドレストと頭部との間の距離の第1の方式での検出処理を示すフローチャートである。
【図13】同ヘッドレスト位置調整装置の静電容量センサ部による第4の出力例を示す図である。
【図14】同ヘッドレスト位置調整装置の静電容量センサ部による第5の出力例を示す図である。
【図15】同ヘッドレスト位置調整装置の静電容量センサ部による第6の出力例を示す図である。
【図16】各検知電極の出力値とヘッドレストと頭部との間の距離との関係を説明するための図である。
【図17】本発明の一実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置によるヘッドレストと頭部との間の距離の第2の方式での検出処理を示すフローチャートである。
【図18】各検知電極と頭部との間の静電容量値を高次関数近似した結果を示す図である。
【図19】各検知電極と頭部との間の距離と最高次の係数との相関を表す図である。
【図20】本発明の一実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置によるヘッドレストと頭部との間の距離の第3の方式での検出処理を示すフローチャートである。
【図21】本発明の一実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置の全体構成の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付の図面を参照して、本発明に係るヘッドレスト位置調整装置及びヘッドレスト位置調整方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、ヘッドレスト位置調整装置100は、車両などの座席40に設けられ、例えば座席(シート)40のヘッドレスト43に配置された静電容量センサ部10と、座席40の背もたれ部(バックシート)41に配置された駆動モータ44と、静電容量センサ部10の検出結果に基づき駆動モータ44の駆動を制御する制御部30とを備えて構成されている。
【0023】
本実施形態のヘッドレスト位置調整装置100では、制御部30は、静電容量センサ部10と一体的に構成されてヘッドレスト43側に配置され、この制御部30と駆動モータ44とは、例えばハーネス32により電気的に接続されている。
【0024】
静電容量センサ部10は、例えば基板19の一方の面側に形成された複数の検知電極11〜15と、この基板19の他方の面側に形成された検出回路20とを備えて構成される。この静電容量センサ部10は、座席40の着座部42に着座した人体(乗員)49の頭部49aとヘッドレスト43(具体的には、ヘッドレスト43に配置された各検知電極11〜15)との間の静電容量を検知し、ヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する。
【0025】
すなわち、静電容量センサ部10は、例えば頭部49aの後頭部の凹凸形状に応じて可変する静電容量の値(静電容量値)を各検知電極11〜15によってそれぞれ検知し、ヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する。
【0026】
基板19は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)、リジッド基板或いはリジッドフレキシブル基板により構成されている。複数の検知電極11〜15は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)或いはエポキシ樹脂(例えば、ガラスエポキシ樹脂)などの絶縁体からなる基板19上にパターン形成された銅、銅合金又はアルミニウムなどの導電材からなる。
【0027】
これら複数の検知電極11〜15は、その他、メンブレン回路に形成されたり、導電性粘着材や導電性フィルム、或いは一般的な電線等のその他の部材からなるものでも良く、設置される箇所によっては、透明電極により構成することもできる。この場合は、基板19を透明性を有するパネルやフィルム材にて形成し、各検知電極11〜15を透明電極で構成すれば良い。
【0028】
透明電極は、例えばITO(錫ドープ酸化インジウム)やPEDOT/PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォニック酸)、或いはPEDOT/TsO(ポリエチレンジオキシチオフェン/トルエンスルフォネート)などを用いることができる。
【0029】
複数の検知電極11〜15は、例えば矩形短冊状に形成され、その長手方向がヘッドレスト43の高さ方向に交差すると共に、ヘッドレスト43に高さ方向に沿って並設された状態でヘッドレスト43の前面側に配置されている。そして、これらの検知電極11〜15には、例えばそれぞれ電極番号1〜5が割り当てられている。
【0030】
これら複数の検知電極11〜15は、本実施形態では5つ設けられているが、これに限定されず、例えばヘッドレスト43が静止した状態で座席40に着座した乗員49の頭部49aの高さ位置を検出するのに必要な数(少なくとも3つ)だけ設けられていれば良く、5つよりも更に多く設けられていても良い。
【0031】
図3に示すように、検出回路20は、複数の検知電極11〜15とそれぞれ一対一で接続され、各検知電極11〜15により検知された静電容量を示す情報を出力する複数の静電容量検知回路21〜25と、これら複数の静電容量検知回路21〜25と接続され、各静電容量検知回路21〜25から出力された情報に基づいてヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出(演算)する演算処理回路28とを備えて構成されている。
【0032】
また、制御部30は、回路部20の演算処理回路28と接続され、演算処理回路28の検出結果(演算結果)に基づいて駆動モータ44の駆動を制御するモータ駆動回路31を備えて構成されている。そして、駆動モータ44は、モータ駆動回路31から出力された制御信号に基づいて、ヘッドレスト43を上下移動させる。
【0033】
複数の検知電極11〜15により検知された静電容量を示す情報を出力する複数の静電容量検知回路21〜25は、各検知電極11〜15と頭部49aとの間の静電容量に応じてデューティー比が変化するパルス信号を生成すると共に平滑化して検知信号を出力する。
【0034】
すなわち、各静電容量検知回路21〜25は、静電容量(Capacitance)を電圧(Voltage)に変換するC−V変換機能を有し、例えば公知のCR充放電時間を計測する回路、充電した電荷を既知のコンデンサに転送する回路、インピーダンスを測定する回路、発振回路を構成して発振周波数を計測する回路等を用いて構成することができる。
【0035】
演算処理回路28は、例えばCPU、RAM、ROMなどを備えてなり、各静電容量検知回路21〜25からの検知信号を比較する。すなわち、演算処理回路28は、各検知電極11〜15により検知された各静電容量Cの値(以下、電極番号1〜5に対応する静電容量値C1〜C5とする。)を比較する。
【0036】
そして、各静電容量値C1〜C5のうちの最小値が第1のしきい値(例えば、Th1)以上である場合は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離L1以下であると判断し、複数の検知電極11〜15により検知された全ての静電容量値C1〜C5に基づき頭部49の高さ位置を検出すると共に、この検出結果をモータ駆動回路31に出力する。
【0037】
また、各静電容量値C1〜C5のうちの最小値が第1のしきい値Th1未満で且つ第1のしきい値Th1よりも小さい第2のしきい値(例えば、Th2)以上である場合は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離L1より長く且つ第1の所定距離L1よりも長い第2の所定距離L2以下であると判断する。
【0038】
そして、複数の検知電極11〜15のうちの少なくともヘッドレスト43の最上位置の検知電極15と最下位置の検知電極11とにより検知された静電容量値C5,C1に基づき頭部49の高さ位置を検出すると共に、この検出結果をモータ駆動回路31に出力する。
【0039】
更に、各静電容量値C1〜C5のうちの最小値が第2のしきい値Th2未満である場合は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第2の所定距離L2よりも長いと判断し、ヘッドレスト43を停止又は予め設定された所定位置(例えば、ヘッドレスト43が背もたれ部41に最も近い位置)に移動させる演算結果をモータ駆動回路31に出力する。
【0040】
モータ駆動回路31は、演算処理回路28の検出結果(演算結果)に基づいて、駆動モータ44の駆動を制御し、座席40の背もたれ部41に対するヘッドレスト43の上下方向の位置を調整する。なお、駆動モータ44は、ヘッドレスト43の支持軸43aを上下方向、左右方向及び前後方向に移動自在に駆動するように構成することができる。
【0041】
次に、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100の動作について、図4に示すフローチャートに基づき説明する。図4に示すように、まず、駆動モータ44を駆動してヘッドレスト43を初期位置(例えば、背もたれ部41に対してヘッドレスト43が最も高い位置)に移動させた後、この初期位置において、静電容量センサ部10の各検知電極11〜15にて頭部49aとの間の静電容量Cを検知する(ステップS100)。
【0042】
そして、演算処理回路28は、各静電容量検知回路21〜25からの検知信号に基づき、例えば各検知電極11〜15で検知された各静電容量Cの値(静電容量値C1〜C5)のうちの最小値が、しきい値Th1以上であるか否か(すなわち、最小値がしきい値Th1以上か、或いはしきい値Th1未満か)の判断を行う(ステップS102)。
【0043】
ステップS102において、最小値がしきい値Th1以上であると判断した場合(ステップS102のY)は、演算処理回路28は、例えばヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離L1以下であると判断して、各静電容量値C1〜C5を全て用いてこれらを比較し、ヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する(ステップS104)。
【0044】
そして、この演算処理回路28からの検出結果に基づいて、モータ駆動回路31が駆動モータ44を制御し、これによりヘッドレスト43の上下方向の位置を調整して(ステップS106)、本フローチャートによる一連のヘッドレスト位置調整処理を終了する。
【0045】
ステップS102において、最小値がしきい値Th1未満であると判断した場合(ステップS102のN)は、演算処理回路28は、最小値がしきい値Th1よりも小さいしきい値Th2以上であるか否か(すなわち、最小値がしきい値Th1未満で且つしきい値Th2以上か)の判断を行う(ステップS108)。
【0046】
ステップS108において、最小値がしきい値Th2以上であると判断した場合(ステップS108のY)は、演算処理回路28は、例えばヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離L1より長く且つ第2の所定距離L2以下であると判断する。
【0047】
そして、ヘッドレスト43に高さ方向に沿って並設された各検知電極11〜15のうち、少なくとも最上に位置する検知電極15で検知された静電容量の値(静電容量値C5)と、最下に位置する検知電極11で検知された静電容量の値(静電容量値C1)とを比較し、この比に基づいてヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する(ステップS110)。
【0048】
モータ駆動回路31は、上記と同様にこの検出結果に基づいて駆動モータ44を制御し、ヘッドレスト43の上下方向の位置を調整して(ステップS106)、本フローチャートによる一連のヘッドレスト位置調整処理を終了する。一方、ステップS108において、最小値がしきい値Th2未満であると判断した場合(ステップS108のN)は、演算処理回路28は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第2の所定距離L2よりも長いと判断して、モータ駆動回路31による駆動モータ44の制御によって、ヘッドレスト43を停止又は予め設定された所定位置に移動させ(ステップS112)、本フローチャートによる一連のヘッドレスト位置調整処理を終了する。
【0049】
ここで、静電容量センサ部10によるによる出力例を、図5に示す静電容量値のグラフに基づいて説明する。図5(a)は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離L1以下である場合(例えば、L=50mm程度である場合)に、各検知電極11〜15で検知された静電容量値Cを示している。
【0050】
また、図5(b)は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離L1より長く且つ第2の所定距離L2以下である場合(例えば、L=70mm程度である場合)に、各検知電極11〜15で検知された静電容量値Cを示している。更に、図5(c)は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第2の所定距離L2よりも長い場合(例えば、L=90mm程度である場合)に、各検知電極11〜15で検知された静電容量値Cを示している。
【0051】
図5(a)に示すように、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが50mm程度の時(すなわち、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離L1以下である場合)は、検知電極11〜15で検知された各静電容量値Cの差が明確であり、頭部49aの後頭部の凹凸に応じて変化する静電容量値のグラフを得ることができる。
【0052】
このため、図5(a)に示すような場合は、各検知電極11〜15で検知された全ての静電容量値に基づき、演算処理回路28によって頭部49aの後頭部形状を推測することができるので、後頭部中心Pの高さ位置を推定することができる。つまり、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが50mm程度の時は、各検知電極11〜15で検知された静電容量の値に基づき頭部49aの高さ方向の推定中心位置を算出し、この算出結果に基づきヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出して、ヘッドレスト43の位置調整を行うことが可能である。
【0053】
しかし、図5(b)に示すように、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが70mm程度の時(すなわち、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離より長く且つ第2の所定距離以下である場合)は、検知電極11〜15で検知された各静電容量値Cの差が曖昧であるため、正確な頭部49aの高さ方向の推定中心位置を得ることが困難となってしまう。
【0054】
特に、頭部49aの後頭部中心Pの高さ位置に近い領域では、外乱の影響を受けて、頭部49aの凹凸に応じた静電容量値Cの大小関係が得られない可能性がある。このように、頭部49aとヘッドレスト43の前面との距離が単に20mm程度変化しただけで、ヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出することが困難となり、ヘッドレストの位置調整を行うことが難しくなってしまう。
【0055】
なお、図5(c)に示すように、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが90mm程度の時(すなわち、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第2の所定距離L2よりも長い場合)は、検知電極11〜15で検知された各静電容量値Cの値自体が曖昧となってしまうため(ヘッドレスト43の位置調整に用いることができる程度の値とはならないため)、ヘッドレスト43の位置調整を行わずに、ヘッドレスト43を停止又は所定位置(上記初期位置等)に移動させる。
【0056】
一方、ヘッドレスト43に高さ方向に沿って並設された各検知電極11〜15のうち、最上に位置する検知電極15で検知された静電容量値C5と、最下に位置する検知電極11で検知された静電容量値C1との比(各静電容量値C5,C1の差)は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lによる影響が小さく、この距離Lが50mm程度の時も70mm程度の時も同様の結果が得られる。
【0057】
すなわち、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが離れていても(例えば、L=70mm程度であっても)、図6(a)に示すように、検知電極11,15で検知された静電容量の値(静電容量値C1及びC5)を比較すると、頭部49aの後頭部中心Pの高さ位置がヘッドレスト43の高さ方向の中心と水平方向にほぼ同程度である場合には、両者共に同等の静電容量値である。
【0058】
また、図6(b)に示すように、頭部49aの後頭部中心Pの高さ位置がヘッドレスト43の高さ方向の中心から外れ、後頭部中心Pの高さ位置が検知電極11の中心と水平方向にほぼ同程度である場合には、検知電極11で検知された静電容量と検知電極15で検知された静電容量との比が大きくなる。
【0059】
このようにして得られた2つの検知電極11,15で検知された各静電容量の値の比に基づいて、ヘッドレスト43に対する頭部49aの位置を検出し、この検出結果に基づいてヘッドレスト43の上下方向の位置を調整する調整方式は、例えば図7に示すように表すことができる。
【0060】
図7は、上述したステップS110及びステップS106における本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100による調整方式を説明するための図である。図7に示すように、ヘッドレスト43の下部に配置された検知電極11で検知された静電容量値C1と、上部に配置された検知電極15で検知された静電容量値C5との比αは、α=C1/C1+C5によって得ることができる。こうして得られた比αに基づいて、ヘッドレスト43の移動量(mm)を決定することが可能となる。
【0061】
すなわち、頭部49aの後頭部中心Pの高さ位置がヘッドレスト43の中心の高さ位置と水平方向に同じである時の移動量を0mmとした場合、この比αが0に近い時はヘッドレスト43を上方向(+方向)へ移動させ、1に近い時は下方向(−方向)へ移動させるように駆動モータ44に対して制御信号を出力する。
【0062】
本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100において、上述したステップS102において判定基準とされるしきい値Th1を、例えばヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが60mm程度となる際に各検知電極11〜15で検知される各静電容量の値(静電容量値C1〜C5)のうちの最小値と設定することによって、各検知電極11〜15で検知された静電容量の値に基づき、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが第1の所定距離(例えば、60mm)以下であるか否かを判断することができる。
【0063】
例えば、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが60mm以下の場合(すなわち、第1の所定距離以下の場合)は、静電容量値C1〜C5の最小値がしきい値Th1以上となるため、上述したステップS104及びステップS106によって全ての静電容量値C1〜C5を用いて頭部49aの高さ位置の検出を行う。
【0064】
また、上述したステップS108において判定基準とされるしきい値Th2を、例えばヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが80mm程度となる際に各検知電極11〜15で検知される各静電容量の値(静電容量値C1〜C5)のうちの最小値と設定することによって、各検知電極11〜15で検知された静電容量の値に基づき、ヘッドレストと頭部49aとの間の距離Lが第2の所定距離(例えば、80mm)以下であるか否かを判断することができる。
【0065】
例えば、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが60mmよりも長い場合(すなわち、第1の所定距離よりも長い場合)であって、この距離Lが80mm以下の場合(すなわち、第2の所定距離以下の場合)は、静電容量値C1〜C5の最小値がしきい値Th1未満で且つしきい値Th2以上となるため、上述したステップS110及びステップS106によって静電容量値C1,C5を用いて頭部49aの高さ位置の検出を行う。
【0066】
更に、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが80mmよりも長い場合(すなわち、第2の所定距離よりも長い場合)は、静電容量値C1〜C5の最小値がしきい値Th2未満となるため、上述したステップS112によってヘッドレスト43を停止又は所定位置に移動させる。
【0067】
このように、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100では、簡単な構成で不要な動作及び誤検出を防止しつつ高精度且つ自動的にヘッドレスト43の位置を正確な位置に調整することが可能となり、ヘッドレスト43の位置未調整に伴う車両の衝突時などにおける乗員49の頸椎損傷などの事故防止を図ることができる。
【0068】
次に、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100は、図8のフローチャートに示すように、ヘッドレスト43の上下方向の位置の調整を行っても良い。すなわち、まず、例えばヘッドレスト43を初期位置(背もたれ部41に対してヘッドレスト43が最も高い位置)に移動させた後、この初期位置において、静電容量センサ部10の各検知電極11〜15にて頭部49aとの間の静電容量Cを検知する(ステップS200)。
【0069】
そして、演算処理回路28は、各検知電極11〜15で検知された各静電容量の値(静電容量値C1〜C5)を比較して、ヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する(ステップS202)と共に、最上に位置する検知電極15で検知された静電容量値C5と、最下に位置する検知電極11で検知された静電容量値C1とを比較し、この比に基づいてヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する(ステップS204)。
【0070】
次に、上記ステップS202の検出値とステップS204の検出値とを比較して、両者が同一又はその誤差が予め設定された第1の所定範囲内か否かを判定する(ステップS206)。このステップS206において、両者が同一又はその誤差が第1の所定範囲内であると判定された場合(ステップS206のY)は、上記ステップS202の検出値に基づいて、モータ駆動回路31が駆動モータ44を制御して、ヘッドレスト43の上下方向の位置を調整し(ステップS208)、本フローチャートによる一連のヘッドレスト位置調整処理を終了する。
【0071】
ステップS206において、両者の誤差が第1の所定範囲内ではないと判定された場合(ステップS206のN)は、上記ステップS202の検出値とステップS204の検出値とを比較して、両者の誤差が予め設定された第2の所定範囲内か否かを判定する(ステップS210)。
【0072】
このステップS210において、両者の誤差が第2の所定範囲内である(すなわち、第1の所定範囲内ではないが第2の所定範囲内である)と判定された場合(ステップS210のY)は、上記ステップS204の検出値に基づいて、モータ駆動回路31が駆動モータ44を制御して、ヘッドレスト43の上下方向の位置を調整し(ステップS212)、本フローチャートによる一連のヘッドレスト位置調整処理を終了する。
【0073】
ステップS210において、両者の誤差が第2の所定範囲内ではないと判定された場合(ステップS210のN)は、モータ駆動回路31が駆動モータ44を制御して、ヘッドレスト43を停止又は所定位置に移動させ(ステップS214)、本フローチャートによる一連のヘッドレスト位置調整処理を終了する。
【0074】
また、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを測定して検出する距離センサ(図示せず)を別途設けて構成されていても良い。距離センサとしては、公知の赤外線センサ、集電型紫外線センサ、光センサ及び超音波センサなど、種々のセンサを用いることができる。
【0075】
このように、別途距離センサを設けた場合、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100は、図9のフローチャートに示すようにヘッドレスト43の上下方向の位置の調整を行っても良い。すなわち、まず、例えばヘッドレスト43を初期位置(背もたれ部41に対してヘッドレスト43が最も高い位置)に移動させた後、この初期位置において、静電容量センサ部10の各検知電極11〜15にて頭部49aとの間の静電容量Cを検知する(ステップS300)と共に、距離センサによってヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを測定して検出する(ステップS302)。
【0076】
その後、演算処理回路28は、距離センサによって検出された距離Lが予め設定された第1の所定距離L1以下か否かを判定する(ステップS304)。このステップS304において、距離Lが第1の所定距離L1以下であると判定された場合(ステップS304のY)は、各静電容量値C1〜C5を全て用いてこれらを比較し、ヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する(ステップS306)。
【0077】
そして、この演算処理回路28からの検出結果に基づいて、モータ駆動回路31が駆動モータ44を制御し、これによりヘッドレスト43の上下方向の位置を調整して(ステップS308)、本フローチャートによる一連のヘッドレスト位置調整処理を終了する。
【0078】
ステップS304において、距離Lが第1の所定距離L1よりも長いと判定された場合(ステップS304のN)は、演算処理回路28は、距離Lが第1の所定距離L1よりも長い第2の所定距離L2以下か(すなわち、第1の所定距離L1より長く且つ第2の所定距離L2以下か)否かを判定する(ステップS310)。
【0079】
このステップS310において、距離Lが第2の所定距離L2以下であると判定された場合(ステップS310のY)は、演算処理回路28は、各検知電極11〜15のうち、少なくとも最上に位置する検知電極15で検知された静電容量の値(静電容量値C5)と、最下に位置する検知電極11で検知された静電容量の値(静電容量値C1)とを比較し、この比に基づいてヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する(ステップS312)。
【0080】
モータ駆動回路31は、同様にこの検出結果に基づいて駆動モータ44を制御し、ヘッドレスト43の上下方向の位置を調整して(ステップS308)、本フローチャートによる一連のヘッドレスト位置調整処理を終了する。一方、ステップS310において、距離Lが第2の所定距離L2よりも長いと判定された場合(ステップS310のN)は、モータ駆動回路31による駆動モータ44の制御によって、ヘッドレスト43を停止又は所定位置に移動させ(ステップS314)、本フローチャートによる一連のヘッドレスト位置調整処理を終了する。
【0081】
なお、上述したように別途距離センサを設けなくても、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100は、上記ステップS300において各検知電極11〜15によって検知された静電容量の値を用いて、具体的には次の3つの方式によりヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離LをステップS302にて検出することもできる。
【0082】
すなわち、まず、第1の方式として、例えば距離算出角度を算出して、予め設定された距離及び角度の関係プロファイルデータとこれを比較することでヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを得るようにすることもできる。この場合は、演算処理回路28は、例えば各検知電極11〜15の位置を一方の軸とすると共に、検出された静電容量の値(静電容量値C1〜C5)を他方の軸とする二次元座標をRAM等の仮想領域上に作成する。
【0083】
そして、作成した二次元座標上にて、各検知電極11〜15のうち、ヘッドレスト43の最上に位置する検知電極15又は最下に位置する検知電極11が最大の静電容量を示さない場合に、ヘッドレスト43の最上に位置する検知電極15の位置及び静電容量値C5を示す点と最大の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点とを結ぶ直線と、ヘッドレスト43の最下に位置する検知電極11の位置及び静電容量値C1を示す点と最大の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点とを結ぶ直線とでなす距離算出角度を算出して距離Lを検出する。
【0084】
また、ヘッドレスト43の最上に位置する検知電極15又は最下に位置する検知電極11が最大の静電容量を示す場合には、ヘッドレスト43の最上に位置する検知電極15の位置及び静電容量値C5を示す点と最下に位置する検知電極11の位置及び静電容量値C1を示す点とを結ぶ直線の傾きの角度を算出して距離Lを検出する。
【0085】
更に、作成した二次元座標上にて、各検知電極11〜15のうち、最小の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点と最大の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点とを結ぶ直線の傾きの角度を算出して距離Lを検出するようにしても良い。
【0086】
その他、例えば上記二次元座標上にて、各検知電極11〜15のうち、ヘッドレスト43の最上に位置する検知電極15又は最下に位置する検知電極11が最大の静電容量を示さない場合、最大の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点とこの最大の静電容量値が検出された検知電極よりも上方に位置する検知電極のうちの最小の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点とを結ぶ直線と、最大の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点とこの最大の静電容量値が検出された検知電極よりも下方に位置する検知電極のうちの最小の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点とを結ぶ直線とでなす距離算出角度を算出して距離Lを検出する。
【0087】
また、ヘッドレスト43の最上に位置する検知電極15又は最下に位置する検知電極11が最大の静電容量値を示す場合には、最小の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点と最大の静電容量値が検出された検知電極の位置及び静電容量値を示す点とを結ぶ直線の傾きの角度を算出して距離Lを検出する。
【0088】
なお、第1の方式における距離算出角度は、例えばヘッドレスト43の最上に位置する検知電極15の上記点と最大の静電容量値が検出された検知電極の上記点とを結ぶ直線及び最大の静電容量値が検出された検知電極の上記点から一方の軸に向かって直交するように延びる基準直線でなす第1距離算出角度と、最下に位置する検知電極11の上記点と最大の静電容量値が検出された検知電極の上記点とを結ぶ直線及び上記基準直線でなす第2距離算出角度とを求め、これら第1及び第2距離算出角度に基づき算出されても良い。
【0089】
次に、第2の方式として、例えば静電容量値の差分値を算出して、予め設定された距離及び差分値の関係プロファイルデータとこれを比較することでヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを得るようにすることもできる。この場合は、演算処理回路28は、例えば各検知電極11〜15のうち、検知された静電容量が最大値を示す検知電極の静電容量値と、検知された静電容量が最小値を示す検知電極の静電容量値との差分値を算出して距離Lを検出する。
【0090】
また、第3の方式として、例えば3次以上の関数を用いてヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを得るようにすることもできる。この場合は、演算処理回路28は、静電容量値をy軸、検知電極の位置をx軸とする二次元座標を上述したように作成する。そして、この二次元座標上に、検出された静電容量値及び各検知電極11〜15のヘッドレスト43における配置位置を示す位置情報と、予め設定された3次以上の高次関数とを用いて、上記静電容量値を実測定点としてそれらを連続的に結ぶ高次曲線を算出すると共に、この高次曲線の最高次の係数を算出して距離Lを検出する。
【0091】
このように、上述した第1〜第3の方式によっても、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出することができるので、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100は、別途距離センサを設ける構成としなくても十分に機能する構成とすることができる。次に、上記第1の方式について詳細に説明する。
【0092】
図10に示すように、この第1の方式においては、演算処理回路28は、各検知電極11〜15からの静電容量を示す静電容量値に基づいて、各検知電極11〜15の位置を一方の軸とすると共に、検出された静電容量値を他方の軸とする二次元座標Dを演算用の仮想領域上に作成する。
【0093】
そして、この二次元座標D上にて、各検知電極11〜15のうち、例えばヘッドレスト43の最上に位置する検知電極15の位置及び静電容量値C5を示す点A(図10参照、以下同じ。)と最大の静電容量値が検出された検知電極(例えば、検知電極13)の位置及び静電容量値C3を示す点B(図10参照、以下同じ。)とを結ぶ直線ABを作成する。
【0094】
また、ヘッドレスト43の最下に位置する検知電極11の位置及び静電容量値C1を示す点C(図10参照、以下同じ。)と最大の静電容量値が検出された検知電極(同じく、検知電極13)の位置及び静電容量値C3を示す点Bとを結ぶ直線CBを作成する。こうして二次元座標D上に作成した直線AB及び直線CBでなす角度を距離算出角度θ(図10参照、以下同じ。)とし、この距離算出角度θに基づいて距離Lを検出する。
【0095】
具体的には、図10(a)に示すように、例えば頭部49aの後頭部の高さ方向の中心位置を後頭部中心Pとし、最上に位置する検知電極15と最下に位置する検知電極11との間の電極間距離H内にある後頭部中心Pから各検知電極11〜15までの距離を距離Lとすると、二次元座標D上の出力値(静電容量値)は次のようになる。
【0096】
すなわち、例えば距離Lが第1の所定距離L1以下であり、各検知電極11〜15の並設方向中心付近(ヘッドレスト43の高さ方向の中心付近)と頭部49aの後頭部中心Pとがほぼ水平方向に正対していれば、各検知電極11〜15の出力値は検知電極13の出力値が最大となり、ヘッドレスト43の最上又は最下に位置する検知電極15,11の出力値が最小となる。
【0097】
この場合、上述したように二次元座標D上にて点A,Bを結ぶ直線ABと点C,Bを結ぶ直線CBを作成する。これにより、2つの直線AB,CBにて決まる距離算出角度θを得ることができ、この得られた距離算出角度θを、例えば予め設定された図11に示すような距離及び角度の関係プロファイルデータと比較することにより、この距離算出角度θにて決まるヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを導き出すことができる。
【0098】
また、この距離算出角度θは、上記直線AB及び点Bから検知電極の位置を示す軸に向かって直交するように延びる基準直線BLでなる第1距離算出角度θ1と、この基準直線BL及び上記直線CBでなる第2距離算出角度θ2とを算出し、これらを合わせることで求めることもできる。
【0099】
すなわち、例えば各検知電極11〜15からの出力値のうちの最大出力値をVmaxとし、このVmaxに対する検知電極の電極番号をNmaxとして抽出し、更に最上に位置する検知電極15(N)の出力値をVとすると共に、最下に位置する検知電極11(N)の出力値をVとすると、次式(1)及び(2)によりθ1及びθ2を求めることができる。
【0100】
【数1】

【0101】
【数2】

【0102】
そして、θ=θ1+θ2を計算することにより、距離算出角度θを得ることができる。なお、図10(b)に示すように、例えば距離Lが第1の所定距離L1以下であり、最下に位置する検知電極11付近と頭部49aの後頭部中心Pとがほぼ水平方向に正対していれば、最大出力値が検知電極11の出力値となることがある。
【0103】
この場合は、検知電極11の出力値の零点C0及び点(最大出力値の点)BCを結ぶ直線BCC0と、この点BC及び最上に位置する検知電極15の位置と出力値とを示す点Aを結ぶ直線ABCとが距離算出角度θ(第1距離算出角度θ1、直線ABCの傾き(鋭角の角度)θ1)をなす。
【0104】
一方、図10(c)に示すように、例えば距離Lが第1の所定距離L1以下であり、最上に位置する検知電極15付近と頭部49aの後頭部中心Pとが水平方向にほぼ正対していれば、最大出力値が検知電極15の出力値となることがある。この場合は、検知電極15の出力値の零点A0及び点(最大出力値の点)ABを結ぶ直線ABA0と、この点AB及び最下に位置する検知電極11の位置と出力値とを示す点Cを結ぶ直線ABCとが距離算出角度θ(第2距離算出角度θ2、直線ABCの傾き(鋭角の角度)θ2)をなす。
【0105】
このようにして求めることができる距離算出角度θは、図11(a)に示すように、第1距離算出角度θ1又は第2距離算出角度θ2については相関曲線T1で表すように、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが長くなる程大きくなるという関係を示す。同様に、図11(b)に示すように、距離算出角度θについても相関曲線T2で示すように、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが長くなる程大きくなるという関係を示す。
【0106】
従って、この第1の方式によれば、ヘッドレスト位置調整装置100は、演算処理回路28にてこの距離算出角度θ(第1及び第2距離算出角度θ1,θ2を含む)を用いてヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出することができる。そして、この検出結果に基づいて、ヘッドレスト43の上下方向の位置を調整することができる。
【0107】
この場合、ヘッドレスト位置調整装置100は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出するに際して、上記ステップS300及びステップS302に代わり、次のように動作する。図12に示すように、まず、演算処理回路28は、各検知電極11〜15にて検知された頭部49aとの間の静電容量に基づく静電容量値C1〜C5を検出する(ステップS400)。
【0108】
次に、検出された静電容量値C1〜C5の中から、最大出力値(ピーク出力値)を抽出し(ステップS402)、上述したような各検知電極11〜15の位置を一方の軸とし、静電容量値を他方の軸とする二次元座標D上に出力値をマッピングして出力マップを作成する(ステップS404)。
【0109】
こうして出力マップを作成したら、上述したように距離算出角度θを算出し(ステップS406)、例えば距離及び角度の関係プロファイルデータと算出した距離算出角度θとを比較することにより、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出し(ステップS408)、上記ステップS304に移行して、以降の処理を実行する。
【0110】
なお、上述したものの他に、例えば次のように距離算出角度θを得るようにしても良い。すなわち、図13に示すように、複数の検知電極11〜15のうち、例えば最小出力値が検出された検知電極12の位置及び出力値を示す点Eと最大出力値が検出された検知電極14の位置及び出力値を示す点Fとを結ぶ直線EFを作成する。
【0111】
更に、検知電極14の出力値の零点F0と上記点Fとを結ぶ直線FF0を作成し、直線EFと直線FF0とで距離算出角度θをなし、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出するようにしても良い。この場合、距離算出角度θは、直線EFの鋭角の傾きと同じであるため、この傾きの角度を算出すれば距離算出角度θを得ることができ、上述したように距離Lを検出することができる。
【0112】
また、図14(a)に示すように、最上に位置する検知電極15又は最下に位置する検知電極11のいずれも最大出力値を示さない場合に、最大出力値が検出された検知電極14の位置及び出力値を示す点Jと、この検知電極14よりも上方に位置する検知電極のうちの最小出力値が検出された検知電極(図示の場合、検知電極15)の位置及び出力値を示す点Kとを結ぶ直線JKを作成する。
【0113】
そして、検知電極14の点Jとこの検知電極14よりも下方に位置する検知電極のうちの最小出力値が検出された検知電極(図示の場合、検知電極12)の位置及び出力値を示す点Mとを結ぶ直線JMを作成し、直線JKと直線JMとで距離算出角度θをなし、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出するようにしても良い。
【0114】
更に、図14(b)に示すように、最上に位置する検知電極15又は最下に位置する検知電極11のいずれかが最大出力値を示す場合(ここでは、検知電極11)は、最小出力値が検出された検知電極(図示の場合、検知電極14)の位置及び出力値を示す点Uと最大出力値が検出された検知電極11の位置及び出力値を示す点Vとを結ぶ直線UVを作成する。
【0115】
そして、検知電極11の出力値の零点V0と上記点Vとを結ぶ直線VV0を作成し、直線UVと直線VV0とで距離算出角度θをなし、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出するようにしても良い。この場合も、距離算出角度θは、直線UVの鋭角の傾きと同じであるため、この傾きの角度を算出すれば距離算出角度θを得ることができる。
【0116】
また、図14(c)に示すように、最上に位置する検知電極15又は最下に位置する検知電極11のいずれかが最大出力値を示す場合(ここでは、検知電極15)は、最小出力値が検出された検知電極(図示の場合、検知電極12)の位置及び出力値を示す点Rと最大出力値が検出された検知電極15の位置及び出力値を示す点Sとを結ぶ直線RSを作成する。
【0117】
そして、検知電極15の出力値の零点S0と上記点Sとを結ぶ直線SS0を作成し、直線RSと直線SS0とで距離算出角度θをなし、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出するようにしても良い。この場合も、距離算出角度θは、直線RSの鋭角の傾きと同じであるため、この傾きを算出すれば距離算出角度θを得ることができる。
【0118】
次に、上記第2の方式について詳細に説明する。この第2の方式においては、演算処理回路28は、各検知電極11〜15からの静電容量を示す静電容量値に基づいて、出力値の差分値を演算し、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出する。図15に示すように、例えば頭部49aの後頭部の高さ方向の中心位置を後頭部中心Pとし、電極間距離H内にある後頭部中心Pから各検知電極11〜15までの距離を距離Lとすると、出力値は次のようになる。
【0119】
すなわち、例えば距離Lが第1の所定距離L1以下であり、各検知電極11〜15の並設方向中心付近(ヘッドレスト43の高さ方向の中心付近)と頭部49aの後頭部中心Pとが水平方向にほぼ正対していれば、各検知電極11〜15の出力値は検知電極13の出力値(静電容量値C3)が最大出力値となる。また、最上或いは最下に位置する検知電極15,11の出力値(静電容量値C5,C1)が最小出力値となる。
【0120】
このような出力特性を有する各検知電極11〜15の出力値とヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lとの関係を表すと、図16(a)に示すようになる。そして、同図(a)に示すように、例えば上記検知電極13の出力値が、頭部49aと検知電極13とが近くなった場合の増加率が最も大きくなる(すなわち、距離Lの変化によって増加率が最も変化する)ことが分かる。
【0121】
そこで、本出願人は、各検知電極11〜15の出力値の増加率をそれぞれ測定した結果、増加率が最も大きくなった出力値Vmaxから増加率が最も小さくなった出力値Vminを引いた差分値(Vmax−Vmin)が、図16(b)に示すように、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離L(すなわち、バックセット値)と相関があることを突き止めた。つまり、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが長くなればなる程差分値は小さくなると言える。
【0122】
従って、この第2の方式によれば、ヘッドレスト位置調整装置100は、演算処理回路28にてこの差分値を算出する。そして、この差分値を用い、例えば図16(b)に示すような距離及び差分値の関係プロファイルデータと比較することによって、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出することができ、この検出結果に基づいて、ヘッドレスト43の上下方向の位置を調整することが可能となる。
【0123】
この場合、ヘッドレスト位置調整装置100は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出するに際して、上記ステップS300及びステップS302に代わり、次のように動作する。図17に示すように、まず、演算処理回路28は、各検知電極11〜15にて検知された頭部49aとの間の静電容量に基づく静電容量値C1〜C5を検出する(ステップS500)。
【0124】
次に、検出された静電容量値C1〜C5に基づいて、各検知電極11〜15のうちの静電容量が最大及び最小を示す検知電極の静電容量値を抽出し(ステップS502)、抽出した静電容量値から差分値を算出して(ステップS504)、例えば距離及び差分値の関係プロファイルデータと算出した差分値とを比較することにより、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出し(ステップS506)、上記ステップS304に移行して、以降の処理を実行する。
【0125】
次に、上記第3の方式について詳細に説明する。この第3の方式においては、演算処理回路28は、各検知電極11〜15からの静電容量を示す静電容量値と、各検知電極11〜15の位置情報と、予め設定された3次以上の高次関数とを用いて、高次曲線とこれの最高次の係数を算出し、算出結果に基づきヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出する。
【0126】
上述したように、電極間距離H内にある頭部49aの後頭部中心Pから各検知電極11〜15までの距離Lにおける各検知電極11〜15の出力値及び出力特性は、図15を用いて説明したものと同様であり、このような出力特性を有する各検知電極11〜15と頭部49aとの間の静電容量値C1〜C5を、3次以上の高次関数を用いて高次関数近似した場合の結果は、図18に示すようになる。
【0127】
例えば、静電容量値をy軸、各検知電極11〜15の位置をx軸とする二次元座標上に表される少なくとも3以上(ここでは、5以上)の実測定点を通る高次曲線を算出する。すると、図18中の高次曲線αのように、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが短くなればなる程曲線の形状が急峻な頂点を有するもの(すなわち、頭部49aの後頭部の凹凸が強調されるもの)になる。
【0128】
これに対し、図18中の高次曲線βのように、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lが長くなればなる程なだらかな形状の曲線となる。なお、演算処理回路28は、例えば電極番号1〜5の検知電極11〜15をそれぞれ実測定点とし、各検知電極11〜15間(例えば、検知電極11と検知電極12との間など)を仮想測定点とするために、上述した高次関数近似により二次元座標上に出力の高次曲線を算出する。
【0129】
そして、本出願人は、これらの高次曲線の形状からヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを判定して検出するために、この距離Lと高次関数の係数との相関を調べたところ、図19に示すように、最高次の係数が頭部49aの後頭部の凹凸の形を表しており、距離Lによって変化していることが判明した。
【0130】
上記高次関数近似を、例えば、y=ax+bx+cx+dx+eの4次関数を用いて行った場合、第1項axの係数(すなわち、最高次の係数)aがヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lと相関していると言える。この係数aは、温度や湿度などの環境変化による外来ノイズの影響を受けることなく、距離Lが長い(すなわち、距離が遠い)と小さくなり、短い(すなわち、近い)と大きくなるという固有の相関性が見られるものである。
【0131】
従って、この第3の方式によれば、ヘッドレスト位置調整装置100は、演算処理回路28にてこの最高次の係数を用いて、例えば図19に示すような相関データと比較することによりヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出することができ、この検出結果に基づいて、ヘッドレスト43の上下方向の位置を調整することが可能となる。
【0132】
この場合、ヘッドレスト位置調整装置100は、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出するに際して、上記ステップS300及びステップS302に代わり、次のように動作する。図20に示すように、まず、演算処理回路28は、各検知電極11〜15にて検知された頭部49aとの間の静電容量に基づく静電容量値C1〜C5を検出する(ステップS600)。
【0133】
次に、検出された静電容量値C1〜C5及び各検知電極11〜15の位置情報に基づいて、例えば静電容量値をy軸、各検知電極11〜15の位置をx軸とした二次元座標上に、上記高次曲線を算出して高次関数による近似を行い(ステップS602)、この高次関数の最高次の係数を算出する(ステップS604)。
【0134】
そして、この算出結果に基づき、例えば最高次の係数を上記相関データと照らし合わせることにより、ヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出し(ステップS606)、上記ステップS304に移行して、以降の処理を実行する。本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100は、このような第1〜第3の方式によりヘッドレスト43と頭部49aとの間の距離Lを検出して、ヘッドレスト43の上下方向の位置の調整を行うこともできる。
【0135】
なお、ヘッドレスト位置調整装置100の静電容量センサ部10と駆動モータ44は、本例ではハーネス29により接続されていたが、例えば無線などによって制御可能に構成されていても良い。更に、駆動モータ44が静電容量センサ部10と一体的に構成され、ヘッドレスト43側に配置されていても良い。
【0136】
また、検出回路20は、後頭部中心Pに基づいて頭部49aの高さ位置を検出する場合、ヘッドレスト43の中心位置を後頭部中心Pに合わせて移動させる他に、演算処理回路28によって、頭部49aの後頭部形状をプロファイルし、このプロファイル結果から後頭部中心Pを算出し、この算出結果に基づいてヘッドレスト43を上下動させるようにしても良い。
【0137】
その他、検出回路20は、予めプリセットされた乗員49のプロファイル情報(頭部49aの後頭部形状に関する情報を含む)やヘッドレスト43の形状に関する情報などに基づいて、ヘッドレスト43の任意の位置を上述した後頭部中心Pに合わせるように移動させるようにしても良い。
【0138】
更に、検出回路20は、最上に位置する検知電極15で検知された静電容量値C5と、最下に位置する検知電極11で検知された静電容量値C1とを比較してヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する場合、最上に位置する検知電極15及びそこから2つの検知電極14,13からの出力(静電容量値C5,C4,C3)の合計値と、最下に位置する検知電極11及びそこから2つの検知電極12,13からの出力(静電容量値C1,C2,C3)の合計値に基づいて上述したような比(出力比)αを求め、同様に頭部49aの高さ位置を検出するようにしても良い。
【0139】
また、本実施形態に係るヘッドレスト位置調整装置100における検出回路20の他の例としては、図21に示すように、検出回路20は、各検知電極11〜15と接続された時分割回路26と、この時分割回路26により各検知電極11〜15にてそれぞれ異時的に検知された検知信号(静電容量を示す情報)をそれぞれ出力する静電容量検知回路27と、この静電容量検知回路27から出力された検知信号に基づく静電容量の値を比較してヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する演算処理回路28とを備えて構成されている。
【0140】
このように検出回路20を構成すれば、頭部49aの後頭部中心Pに基づいてヘッドレスト43に対する頭部49aの高さ位置を検出する場合、時分割回路26を介して各検知電極11〜15にて静電容量を順番に走査し、その結果に基づき頭部49aの後頭部中心Pを得ることが可能となる。
【0141】
また、検出回路20は、最上と最下に位置する検知電極15,11で検知した静電容量の値から頭部49aの高さ位置を検出する場合、検知電極15,11と接続された時分割回路26と、この時分割回路26により各検知電極15,11にて、例えば異時的に検知された静電容量を示す情報を出力する静電容量検知回路27と、この静電容量検知回路27から出力された情報に基づく静電容量の値を比較して頭部49aの高さ位置を演算する演算処理回路28とを備えて構成されても良い。従って、このような種々の構成の検出回路20を採用しても、短時間で高精度なヘッドレスト43の上下方向の位置の調整を行うことが可能となる。
【0142】
なお、上述した実施形態では、車両の座席40のヘッドレスト43にヘッドレスト位置調整装置100を適用した場合を例に挙げて説明したが、このヘッドレスト位置調整装置100は、その他にも、ヘッドレストの位置を可変可能なアトラクション設備における座席や、劇場観賞用の座席などの種々の座席に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明によれば、自動車等のヘッドレストの位置を調整する装置において、特に簡単な構成で高精度な位置調整を行うのに有用である。
【符号の説明】
【0144】
10…静電容量センサ部、11〜15…検知電極、19…基板、20…検出回路、21〜25,27…静電容量検知回路、26…時分割回路、28…演算処理回路、30…制御部、31…モータ駆動回路、40…座席、41…背もたれ部、42…着座部、43…ヘッドレスト、44…駆動モータ、49…人体(乗員)、49a…頭部、100…ヘッドレスト位置調整装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に着座した人体の頭部の後方に配置されるヘッドレストに高さ方向に沿って少なくとも3つ並設され、前記頭部と前記ヘッドレストとの間の静電容量を検知する複数の検知電極と、
前記複数の検知電極により検知された静電容量値に基づいて、前記ヘッドレストに対する前記頭部の高さ位置を検出する検出回路と、
前記検出回路の検出結果に基づいて、前記ヘッドレストの上下方向の位置を調整する位置調整手段とを備え、
前記検出回路は、
(1)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が第1の所定距離以下である場合は、前記複数の検知電極により検知された全ての静電容量値に基づき前記高さ位置を検出し、
(2)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離より長く且つ前記第1の所定距離よりも長い第2の所定距離以下である場合は、前記複数の検知電極のうちの少なくとも最上位置の検知電極と最下位置の検知電極とにより検知された静電容量値に基づき前記高さ位置を検出し、
(3)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第2の所定距離より長い場合は、前記位置調整手段によって前記ヘッドレストを停止又は所定位置に移動させる
ことを特徴とするヘッドレスト位置調整装置。
【請求項2】
前記検出回路は、
前記複数の検知電極により検知された静電容量値のうちの最小値が第1のしきい値以上である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離以下であると判断し、
前記最小値が前記第1のしきい値未満で且つ前記第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値以上である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離よりも長く且つ前記第2の所定距離以下であると判断し、
前記最小値が前記第2のしきい値未満である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第2の所定距離よりも長いと判断する
ことを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項3】
前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離を測定する距離測定手段を更に備え、
前記検出回路は、
前記距離測定手段の測定値に基づいて、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離を判断する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項4】
前記検出回路は、
前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離より長く且つ前記第2の所定距離以下である場合に、前記最上位置の検知電極及びそこから所定個数の検知電極により検知された静電容量値と、前記最下位置の検知電極及びそこから所定個数の検知電極により検知された静電容量値とに基づいて、前記高さ位置を検出する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項5】
前記複数の検知電極は、それぞれが矩形短冊状に形成され、その長手方向が前記高さ方向と交差するように前記ヘッドレストの前面側に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のヘッドレスト位置調整装置。
【請求項6】
座席に着座した人体の頭部と前記頭部の後方に配置されるヘッドレストとの間の静電容量を、前記ヘッドレストに高さ方向に沿って少なくとも3つ並設された複数の検知電極によって検知し、
(1)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が第1の所定距離以下である場合は、前記複数の検知電極により検知された全ての静電容量値に基づき前記ヘッドレストに対する前記頭部の高さ位置を検出して前記ヘッドレストの上下方向の位置を調整し、
(2)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離より長く且つ前記第1の所定距離よりも長い第2の所定距離以下である場合は、前記複数の検知電極のうちの少なくとも最上位置の検知電極と最下位置の検知電極とにより検知された静電容量値に基づき前記高さ位置を検出して前記ヘッドレストの上下方向の位置を調整し、
(3)前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第2の所定距離より長い場合は、前記ヘッドレストを停止又は所定位置に移動させる
ことを特徴とするヘッドレスト位置調整方法。
【請求項7】
前記複数の検知電極により検知された静電容量値のうちの最小値が第1のしきい値以上である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離以下であると判断し、
前記最小値が前記第1のしきい値未満で且つ前記第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値以上である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第1の所定距離よりも長く且つ前記第2の所定距離以下であると判断し、
前記最小値が前記第2のしきい値未満である場合は、前記ヘッドレストと前記頭部との間の距離が前記第2の所定距離よりも長いと判断する
ことを特徴とする請求項6記載のヘッドレスト位置調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−51469(P2012−51469A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195604(P2010−195604)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】