説明

ヘッド保守装置、吐出装置、及びヘッド保守方法

【課題】吐出ヘッドから液状体を吸引するキャップ装置において、固化した液状体の溶質が吸引経路や排出経路に付着することで、吸引特性や液状体の排出が損なわれることを抑制するヘッド保守装置、吐出装置、及びヘッド保守方法を提供する。
【解決手段】ヘッド保守装置は、吐出ノズルを封止する封止室を有するノズル封止手段と、吐出ノズルを封止した封止室の内部の気体又は液体を、封止室に連通する吸引管を介して吸引することで、吐出ノズルを介して吐出ヘッドから液状体を吸引する吸引手段と、封止室内の液状体が外部に流動可能な排液管を有する排出手段と、を備え、封止室は、封止室開口と、底面と、封止室開口の周囲に形成されて吐出ヘッドに当接する封止突起部と、有し、吐出ヘッドから吸引された液状体は、吐出ノズルから落下して底面上に滞留し、吸引管及び排液管は、重力加速度方向において、底面より封止突起部に近い位置で、封止室に開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドの保守を行うためのヘッド保守装置、吐出ヘッド及びヘッド保守装置を備える吐出装置、及びヘッド保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カラー液晶装置のカラーフィルタ膜などの機能膜を形成する技術として、液状体を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を用いて、機能膜の材料を含む液状体の液滴を吐出して基板上の任意の位置に着弾させることで、当該位置に液状体を配置し、配置した液状体を乾燥させて機能膜を形成する技術が知られている。このような膜形成に用いられる液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドは、その吐出ノズルから微小な液滴を選択的に吐出して位置精度良く着弾させることができるため、精密な平面形状及び膜厚を有する膜を形成することができる。
近年では、例えば銀(Ag)などの金属微粒子を溶媒に分散させた分散系金属インク(金属配線用インク)を使用することで、基板上の配線パターンの形成にも利用され、配線パターンの微細化や狭ピッチ化を可能にしている。
【0003】
液滴吐出ヘッドは、別設のタンクなどから液状体が供給されると共に、供給された液状体を内部に設けたインク室(キャビティ)に一時的に貯留する。そして、ノズルプレートに多数形成された吐出ノズル孔からインク室に貯留した液状体を液滴として吐出する。
ここで、液滴吐出ヘッドが待機しているとき、インク室に貯留した液状体が乾燥してしまうことがある。液状体が乾燥すると、増粘して吐出量が変化するだけでなく、固化してしまいノズル孔の目詰まりや吐出時の飛行曲がりなどを起こしてしまうことがある。
【0004】
これらの対策として、特許文献1には、吐出ノズルが形成されたノズル面にヘッドキャップを密着させて吐出ノズルから流体(液状体)を吸引するキャッピングユニットを備えた液滴吐出装置が開示されている。
特許文献2には、ノズル面に良好に密着するヘッドキャップが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−202325号公報
【特許文献2】特開2005−28599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液状体を吸引するキャッピングユニットにおいては、吸引した液状体がキャッピングユニットの内部で乾燥してしまう可能性があった。液状体が乾燥して固化した溶質がキャッピングユニットの内部に付着することによって、キャッピングユニットの機能が損なわれるという課題があった。固化した溶質が、吸引された液状体が流動する吸引経路に付着することで吸引特性が損なわれる可能性があるという課題があり、吸引された液状体の排出経路に付着することで、液状体の排出が困難になる可能性があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかるヘッド保守装置は、膜状体を形成する膜材料を含む液状体を吐出する吐出ノズルを備える吐出ヘッドを保守するためのヘッド保守装置であって、前記吐出ノズルを封止する空間を構成する封止室を有するノズル封止手段と、前記封止室に連通する吸引管を備え、前記吐出ノズルを封止した前記封止室の内部の気体又は液体を、当該吸引管を介して吸引することで、前記吐出ノズルを介して前記吐出ヘッドに充填された前記液状体を吸引する吸引手段と、前記封止室の内部と外部とに開口して、前記封止室内の液状体を外部に流動させることが可能な排液管を有する排出手段と、を備え、前記封止室は、封止室開口と、底面と、前記封止室開口の周囲に形成されて前記吐出ヘッドに当接する封止突起部と、を有し、前記吐出ヘッドから吸引された前記液状体は、前記吐出ノズルから落下して前記底面上に滞留し、前記吸引管及び前記排液管は、重力加速度方向において、前記底面より前記封止突起部に近い位置で、前記封止室に開口していることを特徴とする。
【0009】
このヘッド保守装置によれば、吐出ヘッドから吸引された液状体は封止室の底面上に溜まる。吸引管及び排液管は、重力加速度方向において、底面より封止突起部に近い位置にて封止室に開口しているため、底面に溜まった液状体の液面の位置が吸引管又は排液管の開口位置に達するまでは、吸引管に吸引されたり、排液管から排出されたりすることはない。底面に滞留した液状体の液面の位置が吸引管の開口位置に至ると、吸引管に吸引される。液面の位置が排液管の開口位置に至ると、排液管から排出する。いずれの場合も、滞留した液状体のいわゆる上澄み部分が排出されるため、凝固しかけたり凝固したりした溶質が吸引管や排液管に侵入する可能性は非常に小さい。これにより、凝固しかけたり凝固したりした溶質が吸引管や排液管に付着することで吸引特性が損なわれたり、液状体の排出が困難になったりすることを抑制することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかるヘッド保守装置において、前記封止室は、封止主室と、前記吸引管の開口位置及び前記排液管の開口位置より、重力加速度方向において、前記底面に近い位置に開口した連通口を介して前記封止主室と連通する吸引口室と、を備え、前記封止主室は、前記封止室開口と前記封止突起部と前記底面とを有し、前記吸引管及び前記排液管は、前記吸引口室に開口していることが好ましい。
【0011】
このヘッド保守装置によれば、封止主室の底面上に滞留した液状体は、連通口を通って吸引口室に流入する。吸引管又は排液管から液状体が流出する状態では、封止主室の底面上に滞留した液状体の液面は、連通口より底面から離れた位置、すなわち、重力加速度方向において、高い位置にある。これにより、封止主室内の液状体の液面に浮遊する物体が液状体と共に吸引口室に流入するためには、物体は一旦連通口の位置まで沈むことが必要であるため、封止主室内の液状体の液面に浮遊する物体が吸引口室に流入する可能性は非常に小さい。したがって、液状体の液面に浮遊する物体が液状体と共に吸引口室に流入する可能性を小さくすることができることから、液状体又は液状体の溶質が凝固した物の比重が液状体より軽い場合であっても、凝固しかけたり凝固したりした液状体又は液状体の溶質が吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
また、液状体より比重の軽い異物が封止室に侵入した場合でも、当該異物が液状体と共に吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかるヘッド保守装置において、前記排液管は、重力加速度方向において、前記吸引管と前記底面との間の位置で前記封止室の内部に開口していることが好ましい。
【0013】
このヘッド保守装置によれば、底面上に滞留した液状体の液面の位置が上昇した際に、液面の位置が吸引管の開口に達する前に排液管の開口に達するため、液状体は吸引管より先に排液管に流入する。このため、液状体が吸引管に侵入する可能性は非常に小さい。これにより、液状体の溶質が凝固しかけたり凝固したりして吸引管や吸引管に連なる吸引手段に付着することで吸引特性が損なわれることを抑制することができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかるヘッド保守装置において、前記排液管は、前記吸引管と共通の管であることが好ましい。
【0015】
このヘッド保守装置によれば、吸引管と排液管とが単一の管となる。これにより、吸引管と排液管とをそれぞれ設ける構成に比べて、吸引及び排液に関わる装置を小型にすることができる。
【0016】
[適用例5]上記適用例にかかるヘッド保守装置において、前記封止室に、液状体を吸収可能な吸収材が配設されていることが好ましい。
【0017】
このヘッド保守装置によれば、吐出ヘッドから吸引されて封止室内に落下した液状体は、吸収材に吸収される。液状体又は液状体の溶質の凝固が発生する場合は、液状体が吸収材に吸収された状態で発生するため、凝固物は吸収材から外れる可能性はほとんどないことから、凝固しかけたり凝固したりした液状体又は液状体の溶質が吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
また、凝固物が付着した吸収材を封止室から取り出すだけで、封止室内の凝固物を容易に排出することができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例にかかるヘッド保守装置は、前記封止室に前記膜材料を溶解可能な溶解液を供給する溶解液供給手段をさらに備えることが好ましい。
【0019】
このヘッド保守装置によれば、溶解液供給手段を用いて封止室に、溶解液を供給することができる。これにより、封止室内の液状体を溶解液によって希釈することができるため、液状体又は液状体の溶質が凝固することを抑制することができる。
【0020】
[適用例7]本適用例にかかる吐出装置は、膜状体を形成する膜材料を含む液状体を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドを備える吐出装置であって、前記吐出ノズルを封止する空間を構成する封止室を有するノズル封止手段と、前記封止室に連通する吸引管を備え、前記吐出ノズルを封止した前記封止室の内部の気体又は液体を、当該吸引管を介して吸引することで、前記吐出ノズルを介して前記吐出ヘッドに充填された前記液状体を吸引する吸引手段と、前記封止室の内部と外部とに開口して、前記封止室内の液状体を外部に流動させることが可能な排液管を有する排出手段と、を備え、前記封止室は、封止室開口と、底面と、前記封止室開口の周囲に形成されて前記吐出ヘッドに当接する封止突起部と、を有し、前記吐出ヘッドから吸引された前記液状体は、前記吐出ノズルから落下して前記底面上に滞留し、前記吸引管及び前記排液管は、重力加速度方向において、前記底面より前記封止突起部に近い位置で、前記封止室に開口していることを特徴とする。
【0021】
この吐出装置によれば、吐出ヘッドから吸引された液状体は封止室の底面上に溜まる。吸引管及び排液管は、重力加速度方向において、底面より封止突起部に近い位置にて封止室に開口しているため、底面に溜まった液状体の液面の位置が吸引管又は排液管の開口位置に達するまでは、吸引管に吸引されたり、排液管から排出されたりすることはない。底面に滞留した液状体の液面の位置が吸引管の開口位置に至ると、吸引管に吸引される。液面の位置が排液管の開口位置に至ると、排液管から排出する。いずれの場合も、滞留した液状体のいわゆる上澄み部分が排出されるため、凝固しかけたり凝固したりした溶質が吸引管や排液管に侵入する可能性は非常に小さい。これにより、凝固しかけたり凝固したりした溶質が吸引管や排液管に付着することで吸引特性が損なわれたり、液状体の排出が困難になったりすることを抑制することができる。
【0022】
[適用例8]上記適用例にかかる吐出装置において、前記封止室は、封止主室と、前記吸引管の開口位置及び前記排液管の開口位置より、重力加速度方向において、前記底面に近い位置に開口した連通口を介して前記封止主室と連通する吸引口室と、を備え、前記封止主室は、前記封止室開口と前記封止突起部と前記底面とを有し、前記吸引管及び前記排液管は、前記吸引口室に開口していることが好ましい。
【0023】
この吐出装置によれば、封止主室の底面上に滞留した液状体は、連通口を通って吸引口室に流入する。吸引管又は排液管から液状体が流出する状態では、封止主室の底面上に滞留した液状体の液面は、連通口より底面から離れた位置、すなわち、重力加速度方向において、高い位置にある。これにより、封止主室内の液状体の液面に浮遊する物体が液状体と共に吸引口室に流入するためには、物体は一旦連通口の位置まで沈むことが必要であるため、封止主室内の液状体の液面に浮遊する物体が吸引口室に流入する可能性は非常に小さい。したがって、液状体の液面に浮遊する物体が液状体と共に吸引口室に流入する可能性を小さくすることができることから、液状体又は液状体の溶質が凝固した物の比重が液状体より軽い場合であっても、凝固しかけたり凝固したりした液状体又は液状体の溶質が吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
また、液状体より比重の軽い異物が封止室に侵入した場合でも、当該異物が液状体と共に吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
【0024】
[適用例9]上記適用例にかかる吐出装置において、前記封止室に液状体を吸収可能な吸収材が配設されていることが好ましい。
【0025】
この吐出装置によれば、吐出ヘッドから吸引されて封止室内に落下した液状体は、吸収材に吸収される。液状体又は液状体の溶質の凝固が発生する場合は、液状体が吸収材に吸収された状態で発生するため、凝固物は吸収材から外れる可能性はほとんどないことから、凝固しかけたり凝固したりした液状体又は液状体の溶質が吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
また、凝固物が付着した吸収材を封止室から取り出すだけで、封止室内の凝固物を容易に排出することができる。
【0026】
[適用例10]本適用例にかかるヘッド保守方法は、膜状体を形成する膜材料を含む液状体を吐出する吐出ノズルを備える吐出ヘッドを、前記吐出ノズルを封止する空間を構成する封止室を有するノズル封止手段を用いて保守するヘッド保守方法であって、前記吐出ノズルが前記封止室に臨む位置に、前記吐出ヘッド及び前記ノズル封止手段を配置し、当該ノズル封止手段の前記封止室によって、前記吐出ノズルを封止するノズル封止工程と、前記吐出ノズルを封止した前記封止室の内部の気体又は液体を吸引管を介して吸引することによって前記封止室を負圧にすることで、前記吐出ヘッドに充填された前記液状体を前記吐出ノズルを介して吸引する吸引工程と、前記吸引工程において吸引された前記液状体を、前記封止室の内部と外部とに開口して前記封止室内の液状体を外部に流動させることが可能な排液管を介して排出する排液工程と、を有し、前記封止室は、封止室開口と、底面と、前記封止室開口の周囲に形成されて前記吐出ヘッドに当接する封止突起部と、を有し、前記吐出ヘッドから吸引された前記液状体は、前記吐出ノズルから落下して前記底面上に滞留し、前記吸引管及び前記排液管は、重力加速度方向において、前記底面より前記封止突起部に近い位置で、前記封止室に開口していることを特徴とする。
【0027】
このヘッド保守方法によれば、吸引工程において吐出ヘッドから吸引された液状体は封止室の底面上に溜まる。吸引管及び排液管は、重力加速度方向において、底面より封止突起部に近い位置にて封止室に開口しているため、底面に溜まった液状体の液面の位置が吸引管又は排液管の開口位置に達するまでは、吸引管に吸引されたり、排液管から排出されたりすることはない。底面に滞留した液状体の液面の位置が吸引管の開口位置に至ると、吸引管に吸引される。液面の位置が排液管の開口位置に至ると、排液工程が実施可能となり、排液管から液状体を排出する。いずれの場合も、滞留した液状体のいわゆる上澄み部分が排出されるため、凝固しかけたり凝固したりした溶質が吸引管や排液管に侵入する可能性は非常に小さい。これにより、凝固しかけたり凝固したりした溶質が吸引管や排液管に付着することで吸引特性が損なわれたり、液状体の排出が困難になったりすることを抑制することができる。
【0028】
[適用例11]上記適用例にかかるヘッド保守方法において、前記封止室は、封止主室と、前記吸引管の開口位置及び前記排液管の開口位置より、重力加速度方向において、前記底面に近い位置に開口した連通口を介して前記封止主室と連通する吸引口室と、を備え、前記封止主室は、前記封止室開口と前記封止突起部と前記底面とを有し、前記吸引管及び前記排液管は、前記吸引口室に開口していることが好ましい。
【0029】
このヘッド保守方法によれば、吸引工程において吐出ヘッドから吸引されて封止主室の底面上に滞留した液状体は、連通口を通って吸引口室に流入する。吸引管又は排液管から液状体が流出する状態では、封止主室の底面上に滞留した液状体の液面は、連通口より底面から離れた位置、すなわち、重力加速度方向において、高い位置にある。これにより、封止主室内の液状体の液面に浮遊する物体が液状体と共に吸引口室に流入するためには、物体は一旦連通口の位置まで沈むことが必要であるため、封止主室内の液状体の液面に浮遊する物体が吸引口室に流入する可能性は非常に小さい。したがって、液状体の液面に浮遊する物体が液状体と共に吸引口室に流入する可能性を小さくすることができることから、液状体又は液状体の溶質が凝固した物の比重が液状体より軽い場合であっても、凝固しかけたり凝固したりした液状体又は液状体の溶質が吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
また、液状体より比重の軽い異物が封止室に侵入した場合でも、当該異物が液状体と共に吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
【0030】
[適用例12]上記適用例にかかるヘッド保守方法において、前記排液管は、重力加速度方向において、前記吸引管と前記底面との間の位置で前記封止室の内部に開口していることが好ましい。
【0031】
このヘッド保守方法によれば、底面上に滞留した液状体の液面の位置が上昇した際に、液面の位置が吸引管の開口に達する前に排液管の開口に達するため、液状体は吸引管より先に排液管に流入する。このため、液状体が吸引管に侵入する可能性は非常に小さい。これにより、液状体の溶質が凝固しかけたり凝固したりして吸引管や吸引管に連なる吸引手段に付着することで吸引特性が損なわれことを抑制することができる。
【0032】
[適用例13]上記適用例にかかるヘッド保守方法において、前記排液管は、前記吸引管と共通の管であることが好ましい。
【0033】
このヘッド保守方法によれば、吸引管と排液管とが単一の管となる。これにより、吸引管と排液管とをそれぞれ設ける構成に比べて、吸引及び排液に関わる装置を小型にすることができる。
【0034】
[適用例14]上記適用例にかかるヘッド保守方法において、前記封止室に液状体を吸収可能な吸収材が配設されていることが好ましい。
【0035】
このヘッド保守方法によれば、吸引工程において吐出ヘッドから吸引されて封止室内に落下した液状体は、吸収材に吸収される。液状体又は液状体の溶質の凝固が発生する場合は、液状体が吸収材に吸収された状態で発生するため、凝固物は吸収材から外れる可能性はほとんどないことから、排液工程において、凝固しかけたり凝固したりした液状体又は液状体の溶質が吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
また、凝固物が付着した吸収材を封止室から取り出す工程を実施するだけで、封止室内の凝固物を容易に排出することができる。
【0036】
[適用例15]上記適用例にかかるヘッド保守方法において、前記封止室に、前記膜材料を溶解可能な溶解液を供給する溶解液供給工程をさらに有することが好ましい。
【0037】
このヘッド保守方法によれば、溶解液供給工程において、封止室に、膜材料を溶解可能な溶解液が供給される。これにより、吸引工程において吐出ヘッドから吸引されて封止室内に滞留する液状体を溶解液によって希釈することができるため、液状体又は液状体の溶質が凝固することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、ヘッド保守装置、吐出装置、及びヘッド保守方法の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。実施形態は、吐出装置の一例であるインクジェット方式の液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置のメンテナンスユニットを例に説明する。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0039】
<液滴吐出法>
最初に、金属配線膜などの機能膜の形成に用いられる液滴吐出法について説明する。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。
このうち、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。ピエゾ方式は、液状材料に熱を直接加えることがないため材料の組成などに影響を与えない、駆動電圧を調整することによって液滴の大きさを容易に調整することができるなどの利点を有する。本実施形態では、材料の組成などに影響を与えないため液状材料選択の自由度が高いこと、及び液滴の大きさを容易に調整することができるため液滴の制御性がよいことから、上記ピエゾ方式を用いる。
【0040】
<液滴吐出装置>
次に、液滴吐出装置1の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置の概略構成を示す平面図である。図2は、液滴吐出装置の概略構成を示す側面図である。
【0041】
図1、又は図2に示したように、液滴吐出装置1は、液滴吐出ヘッド17(図3参照)を有する吐出ユニット2と、ワークユニット3と、給液ユニット60(図7参照)と、検査ユニット4と、メンテナンスユニット5と、吐出装置制御部6(図7参照)とを備えている。
【0042】
吐出ユニット2は、液状体に相当する機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド17を6個備えており、当該液滴吐出ヘッド17をY軸方向に移動させると共に移動した位置に保持するためのY軸テーブル12を備えている。ワークユニット3は、液滴吐出ヘッド17から吐出された液滴の吐出対象であるワークWを載置するワーク載置台21を有している。給液ユニット60は、機能液を貯留する貯留タンク(図示省略)を有し、液滴吐出ヘッド17への機能液の供給を行う。検査ユニット4は、液滴吐出ヘッド17からの吐出状態を検査するための、吐出検査ユニット18及び重量測定ユニット19を有しており、重量測定ユニット19にはフラッシングユニット14が併設されている。メンテナンスユニット5は、液滴吐出ヘッド17の保守を行う吸引ユニット15及びワイピングユニット16を有している。
【0043】
吐出装置制御部6は、これら各ユニットなどを総括的に制御する。重量測定ユニット19、吐出ユニット2、吐出検査ユニット18、又はメンテナンスユニット5などを用いて実施される重量測定処理、描画処理、吐出検査処理、及びメンテナンス処理などは、吐出装置制御部6が各ユニットなどを制御して実施される。
【0044】
液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース1Aを備え、各ユニットなどが、X軸支持ベース1Aの上に配設されている。X軸テーブル11は、主走査方向となるX軸方向に延在して、X軸支持ベース1Aの上に配設されており、ワーク載置台21をX軸方向(主走査方向)に移動させる。
【0045】
吐出ユニット2のY軸テーブル12は、複数本の支柱7Aを介してX軸テーブル11を跨ぐように架け渡された一対のY軸支持ベース7,7の上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在している。吐出ユニット2は、6個の液滴吐出ヘッド17を有するキャリッジユニット51を備えている。キャリッジユニット51は、ブリッジプレート52に吊設されている。ブリッジプレート52は、Y軸スライダ(図示省略)を介して、Y軸テーブル12に、Y軸方向に摺動自在に支持されている。Y軸テーブル12は、ブリッジプレート52(キャリッジユニット51)を、Y軸方向(副走査方向)に移動させる。
X軸テーブル11及びY軸テーブル12の駆動と同期して、吐出ユニット2の液滴吐出ヘッド17を吐出駆動させることにより、機能液の液滴を吐出させることで、ワーク載置台21の上に載置されたワークWに対して、任意の描画パターンを描画する。
【0046】
吐出検査ユニット18は、検査描画ユニット161と、撮像ユニット162とを有している。検査描画ユニット161は、X軸第2スライダ23に固定されており、同じくX軸第2スライダ23に固定された重量測定ユニット19及びフラッシングユニット14と一体に移動するように構成されている。撮像ユニット162は、2個の検査カメラ163と、検査カメラ163をY軸方向にスライド自在に支持するカメラ移動機構164と、を有している。
【0047】
メンテナンスユニット5が備える吸引ユニット15及びワイピングユニット16は、X軸テーブル11から外れ、かつY軸テーブル12によりキャリッジユニット51が移動可能である位置に配設された架台8の上に配設されている。吸引ユニット15は、キャップユニット110を備え、液滴吐出ヘッド17のノズル形成面76a(図3参照)を封止して吐出ノズル78(図3参照)を吸引することによって、液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル78から機能液を強制的に排出させる。ワイピングユニット16は、洗浄液を噴霧したワイピングシート16aを有し、吸引後の液滴吐出ヘッド17のノズル形成面76aを拭き取る(ワイピングを行う)ものである。このようにして、吸引ユニット15及びワイピングユニット16は、吐出ユニット2の液滴吐出ヘッド17の機能維持又は機能回復を図るための保守作業を実施する。
【0048】
X軸テーブル11は、X軸第1スライダ22と、X軸第2スライダ23と、左右一対のX軸リニアモータ26,26と、一対のX軸共通支持ベース24,24と、を備えている。
【0049】
X軸第1スライダ22には、ワーク載置台21が取り付けられている。X軸第1スライダ22は、X軸方向に延在するX軸共通支持ベース24に、X軸方向にスライド自在に支持されている。X軸第2スライダ23には、検査描画ユニット161と、重量測定ユニット19と、フラッシングユニット14とが取り付けられている。X軸第2スライダ23は、X軸方向に延在するX軸共通支持ベース24に、X軸方向にスライド自在に支持されている。X軸リニアモータ26は、X軸共通支持ベース24に並設されており、X軸第1スライダ22又はX軸第2スライダ23をX軸共通支持ベース24に沿って移動させることによって、ワーク載置台21(ワーク載置台21に載置されたワークW)又は重量測定ユニット19などをX軸方向に移動させる。X軸第1スライダ22とX軸第2スライダ23とは、X軸リニアモータ26により個別に駆動可能である。
【0050】
ワーク載置台21は、ワークWを吸着セットする吸着テーブル31と、吸着テーブル31を支持し、吸着テーブル31にセットしたワークWの位置をθ軸方向にθ補正するためのθテーブル32などを有している。θテーブル32は、θ駆動モータ532を有し、当該θ駆動モータ532によって駆動される。
【0051】
画像認識ユニット80は、2台のアライメントカメラ81と、カメラ移動機構82と、を有している。カメラ移動機構82は、X軸支持ベース1Aの上に、Y軸方向に延在して、X軸テーブル11を跨ぐように配設されている。アライメントカメラ81は、カメラホルダ(図示省略)を介して、カメラ移動機構82に、Y軸方向にスライド自在に支持されている。カメラ移動機構82に支持されたアライメントカメラ81は、X軸テーブル11に上側から臨み、X軸テーブル11の上のワーク載置台21に載置されたワークWの各基準マーク(アライメントマーク)を画像認識することができる。2台のアライメントカメラ81は、カメラ移動モータ(図示省略)によって、それぞれ独立してY軸方向に移動させられる。
【0052】
各アライメントカメラ81は、ワーク載置台21のX軸方向への移動と協働して、カメラ移動機構82によりY軸方向に移動しながら、ロボットアームなどによって給材された各種ワークWのアライメントマークを撮像して、各種ワークWの位置認識を実施する。そして、このアライメントカメラ81の撮像結果に基づいて、θテーブル32によるワークWのθ補正(アライメント)が実施される。
【0053】
Y軸テーブル12は、一対のY軸スライダ(図示省略)と、一対のY軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。一対のY軸リニアモータは、上記した一対のY軸支持ベース7,7の上にそれぞれ設置されて、Y軸方向に延在している。一対のY軸スライダは、一対のY軸支持ベース7,7のそれぞれに各1個ずつ摺動自在に支持されている。一対のY軸支持ベース7,7のそれぞれに支持された各1個のY軸スライダからなる一対のY軸スライダは、吐出ユニット2を構成するキャリッジユニット51が固定されたブリッジプレート52を両持ちで支持している。吐出ユニット2を構成するキャリッジユニット51を固定したブリッジプレート52は、ブリッジプレート52を両持ちで支持するY軸スライダを介して、一対のY軸支持ベース7,7の上に設置されている。
【0054】
一対のY軸リニアモータを(同期して)駆動すると、各Y軸スライダが一対のY軸支持ベース7,7を案内にして同時にY軸方向に平行移動する。これにより、ブリッジプレート52がY軸方向に移動し、ブリッジプレート52に吊設されたキャリッジユニット51がY軸方向に移動する。
【0055】
キャリッジユニット51は、6個の液滴吐出ヘッド17と、6個の液滴吐出ヘッド17を3個ずつ2群に分けて支持するキャリッジプレート53(図4参照)と、を有するヘッドユニット54(図4参照)を備えている。ヘッドユニット54は、ヘッド昇降機構(図示省略)を介して、Z軸方向に昇降自在に支持されている。
【0056】
<液滴吐出ヘッド>
次に、図3を参照して、液滴吐出ヘッド17について説明する。図3は、液滴吐出ヘッドの構成を示す図である。図3(a)は、液滴吐出ヘッドをノズルプレート側から見た外観斜視図であり、図3(b)は、液滴吐出ヘッドの圧力室周りの構造を示す斜視断面図であり、図3(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズル部の構造を示す断面図である。液滴吐出ヘッド17が、吐出ヘッドに相当する。
【0057】
図3(a)に示したように、液滴吐出ヘッド17は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針72,72を有する液体導入部71と、液体導入部71の側方に連なるヘッド基板73と、液体導入部71に連なるポンプ部75と、ポンプ部75に連なるノズルプレート76とを備えている。液体導入部71の接続針72には、配管接続部材が接続されて、当該配管接続部材を介して給液チューブが接続され、給液チューブに接続された給液ユニット60(図7参照)から機能液が供給される。ヘッド基板73には、一対のヘッドコネクタ77,77が実装されており、当該ヘッドコネクタ77を介してフレキシブルフラットケーブル(FFCケーブル)が接続される。このポンプ部75とノズルプレート76とにより、方形のヘッド本体74が構成されている。
【0058】
ポンプ部75の基部側、すなわちヘッド本体74の基部側は、液体導入部71及びヘッド基板73を受けるべく方形フランジ状にフランジ部79が形成されている。このフランジ部79には、液滴吐出ヘッド17を固定する小ねじ用のねじ孔(雌ねじ)79aが一対形成されている。
【0059】
ノズルプレート76のノズル形成面76aには、ノズルプレート76に形成されており液滴を吐出する吐出ノズル78から成るノズル列78Aが、2本形成されている。2本のノズル列78Aは相互に平行に列設されており、各ノズル列78Aは、等ピッチで並べた180個(図示では模式的に表している)の吐出ノズル78で構成されている。すなわち、ヘッド本体74のノズル形成面76aには、その中心線を挟んで2本のノズル列78Aが配設されている。
【0060】
液滴吐出ヘッド17が液滴吐出装置1に取り付けられた状態では、ノズル列78AはY軸方向に延在する。2列のノズル列78Aをそれぞれ構成する吐出ノズル78同士は、Y軸方向において、相互に半ノズルピッチずつ位置がずれている。1ノズルピッチは、例えば140μmである。X軸方向の同じ位置において、それぞれのノズル列78Aを構成する吐出ノズル78から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。吐出ノズル78のノズルピッチが140μmの場合、着弾位置の中心間距離は、設計上では、70μmである。
【0061】
図3(b)及び(c)に示すように、液滴吐出ヘッド17は、ノズルプレート76にポンプ部75を構成する圧力室プレート151が積層されており、圧力室プレート151に振動板152が積層されている。
圧力室プレート151には、液体導入部71から振動板152の液供給孔153を経由して供給される機能液が常に充填される液たまり155が形成されている。液たまり155は、振動板152と、ノズルプレート76と、圧力室プレート151の壁とに囲まれた空間である。また、圧力室プレート151には、複数のヘッド隔壁157によって区切られた圧力室158が形成されている。振動板152と、ノズルプレート76と、2個のヘッド隔壁157とによって囲まれた空間が圧力室158である。
【0062】
圧力室158は吐出ノズル78のそれぞれに対応して設けられており、圧力室158の数と吐出ノズル78の数とは同じである。圧力室158には、2個のヘッド隔壁157の間に位置する供給口156を介して、液たまり155から機能液が供給される。ヘッド隔壁157と圧力室158と吐出ノズル78と供給口156との組は、液たまり155に沿って1列に並んでおり、1列に並んだ吐出ノズル78がノズル列78Aを形成している。図3(b)では図示省略したが、図示した吐出ノズル78を含むノズル列78Aに対して液たまり155に関して略対称位置に、1列に並んだ吐出ノズル78がもう1列のノズル列78Aを形成しており、対応するヘッド隔壁157と圧力室158と供給口156との組が、1列に並んでいる。
【0063】
振動板152の圧力室158を構成する部分には、それぞれ圧電素子159の一端が固定されている。圧電素子159の他端は、固定板(図示省略)を介して液滴吐出ヘッド17全体を支持する基台(図示省略)に固定されている。
圧電素子159は電極層と圧電材料とを積層した活性部を有し、電極層に駆動電圧を印加することで、活性部が長手方向(図3(b)又は(c)における振動板152の厚さ方向)に縮む。活性部が縮むことで、圧電素子159の一端が固定された振動板152が圧力室158と反対側に引張られる力を受ける。振動板152が圧力室158と反対側に引張られることで、振動板152が圧力室158の反対側に撓む。これにより、圧力室158の容積が増加することから、機能液が液たまり155から供給口156を経て圧力室158に供給される。次に、電極層に印加されていた駆動電圧が解除されると、活性部が元の長さに戻ることで、圧電素子159が振動板152を押圧する。振動板152が押圧されることで、圧力室158側に戻る。これにより、圧力室158の容積が急激に元に戻る、すなわち増加していた容積が減少することから、圧力室158内に充填されていた機能液に圧力が加わり、当該圧力室158に連通して形成された吐出ノズル78から機能液が液滴となって吐出される。
【0064】
吐出装置制御部6は、圧電素子159への印加電圧の制御、すなわち駆動信号を制御することにより、複数の吐出ノズル78のそれぞれに対して、機能液の吐出制御を行う。より詳細には、吐出ノズル78から吐出される液滴の体積や、単位時間あたりに吐出する液滴の数などを変化させることができる。これにより、基板上に着弾した液滴同士の距離や、基板上の一定の面積に着弾させる機能液の量などを変化させることができる。例えば、ノズル列78Aに並ぶ複数の吐出ノズル78の中から、液滴を吐出させる吐出ノズル78を選択的に使用することにより、ノズル列78Aの延在方向では、ノズル列78Aの長さの範囲であって吐出ノズル78のピッチ間隔で、複数の液滴を同時に吐出することができる。ノズル列78Aの延在方向と略直交する方向では、基板と吐出ノズル78とを相対移動させて、当該相対移動方向において、当該吐出ノズル78が対向可能な、基板の任意の位置に吐出ノズル78から吐出される液滴を配置することができる。なお、吐出ノズル78のそれぞれから吐出される液滴の体積は、例えば1pl〜300pl(ピコリットル)の間で可変である。
【0065】
<ヘッドユニット>
次に、吐出ユニット2が備えるヘッドユニット54の概略構成について、図4を参照して説明する。図4は、ヘッドユニットの概略構成を示す平面図である。図4に示したX軸及びY軸は、ヘッドユニット54が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸及びY軸と一致している。
【0066】
図4に示したように、ヘッドユニット54は、キャリッジプレート53と、キャリッジプレート53に搭載された6個の液滴吐出ヘッド17と、を有している。液滴吐出ヘッド17は、キャリッジプレート53に固定されており、ヘッド本体74がキャリッジプレート53に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズルプレート76(ヘッド本体74)が、キャリッジプレート53の面より突出している。図4は、ノズルプレート76(ノズル形成面76a)側から見た図である。6個の液滴吐出ヘッド17は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの液滴吐出ヘッド17を有するヘッド組55を2群形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド17のノズル列78AはY軸方向に延在している。
【0067】
一つのヘッド組55が有する3個の液滴吐出ヘッド17は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド17の、一方の液滴吐出ヘッド17の端の吐出ノズル78に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド17の端の吐出ノズル78が半ノズルピッチずれて位置するように、位置決めされている。仮に、ヘッド組55が有する3個の液滴吐出ヘッド17において、全ての吐出ノズル78のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル78は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド17が有するそれぞれのノズル列78Aを構成する吐出ノズル78から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。液滴吐出ヘッド17は、Y軸方向において互いに重なるため、X軸方向に階段状に並んでヘッド組55を構成している。
【0068】
ヘッド組55がそれぞれの吐出ノズル78から1滴ずつ吐出して形成できる直線を、ノズル組線と表記する。ヘッド組55とヘッド組55とのY軸方向の相互位置は、それぞれのヘッド組55において端に位置する吐出ノズル78が、互いにノズル組線の長さに1ノズルピッチを加えた距離だけ中心間距離が離れている。例えば、2組のヘッド組55がそれぞれの吐出ノズル78から1滴ずつ吐出して2本のノズル組線を形成し、Y軸方向にノズル組線の長さに半ノズルピッチを加えた距離だけ移動した位置に、2組のヘッド組55がそれぞれノズル組線を形成する。このようにすることにより、6個の液滴吐出ヘッド17が有する2160個の吐出ノズル78から吐出された4320個の液滴が等間隔で配置された直線が形成される。
【0069】
<封止キャップ>
次に、図5を参照して、封止キャップ102について説明する。図5は、封止キャップの構成を示す図である。図5(a)は、封止キャップを封止部材側から見た外観斜視図であり、図5(b)は、封止キャップを有するキャップ装置の構造を示す断面図である。封止キャップ102が、ノズル封止手段に相当する。
【0070】
図5(a)及び(b)に示すように、封止キャップ102は、キャップベース104と封止部材106とを備えている。キャップベース104は、例えばステンレス鋼などのような腐食され難い材料で略直方体形状に構成されており、一面にキャップ凹部105が形成されている。キャップ凹部105は、キャップベース104の一面に開口する略直方体形状の凹部である。キャップベース104は、封止キャップ102が液滴吐出装置1に取り付けられた状態では、キャップ凹部105の開口が重力加速度方向の上側を向く状態になる。
【0071】
キャップベース104のキャップ凹部105が形成されている面を上面、反対側の面を下面、上面と下面以外の4面を側面と表記する。略直方体形状の凹部であるキャップ凹部105の底面をキャップ底面105Aと表記する。
キャップベース104には、キャップ凹部105から下面に貫通する吸引排液孔124aが形成されている。吸引排液孔124aは、キャップ底面105Aに突設された底面突起124c及びキャップベース104の下面に突設された吸引排液突起124bを貫通して、キャップベース104の外部に開口している。
【0072】
吸引排液突起124bには吸引排液管124の一端が嵌合しており、吸引排液管124の他端は、吸引ポンプ111に接続されている。吸引排液管124の途中には、吸引排液管124の流路を開閉可能な吸引排液バルブ122が設けられている。吸引排液バルブ122及び吸引ポンプ111は、吐出装置制御部6によって制御される。吸引ポンプ111によって、吸引排液管124及び吸引排液孔124aを介してキャップ凹部105内の気体や液体を吸引することができる。吸引排液管124及び吸引ポンプ111が、吸引手段又は排出手段に相当する。吸引排液管124が、吸引管又は排液管に相当する。
【0073】
封止部材106は、耐食性を有するゴム状弾性体材料を用いて形成されている。封止部材106は、キャップ凹部105の開口の縁に沿って、図示省略した封止部材ホルダによってキャップベース104に固定されている。封止部材106の封止凸部106aが、キャップベース104の上面から突出している。封止部材106とキャップ凹部105とで、キャップ室107を構成している。
封止凸部106aの平面形状は、2列のノズル列78Aの周囲でノズル形成面76aに当接する形状になっている。封止キャップ102が液滴吐出ヘッド17に当接する場合、キャップベース104から突出している封止凸部106aがノズル形成面76aに当接する。このとき、ゴム状弾性体材料から成る封止凸部106aは、弾性変形してノズル形成面76aに密着する。キャップ室107は、図5(b)に二点鎖線で示したように、液滴吐出ヘッド17によって封止されて、吸引排液孔124a、又は液滴吐出ヘッド17に形成された液状体の流路を介してのみ外部と連通可能な封止空間となる。吐出ノズル78に対しては、キャップ室107が、吐出ノズル78を封止する封止空間になっている。キャップ室107が、封止室に相当する。封止凸部106aが、封止突起部に相当する。
【0074】
キャップ装置103は封止キャップ102とベースホルダ108とを有しており、ベースホルダ108がキャッププレート101に形成されたプレート孔101aに嵌合して固定されることによって、キャッププレート101に固定されている。封止キャップ102は、キャップ押圧機構109を介してベースホルダ108に対して離接方向に移動可能に取り付けられている。キャップ押圧機構109は、封止キャップ102がキャッププレート101の面に略垂直な方向に移動する方向に弾性変形可能である。キャップ押圧機構109は、封止キャップ102が液滴吐出ヘッド17などに当接した状態で、封止キャップ102に加えられた当接力によって変形し、変形抗力によって、封止キャップ102を液滴吐出ヘッド17などに押付ける力を封止キャップ102に加える。
【0075】
吐出ノズル78をキャップ室107によって封止した状態で、吸引ポンプ111によって、吸引排液管124及び吸引排液孔124aを介してキャップ凹部105内の気体を吸引することにより、吐出ノズル78から液滴吐出ヘッド17内の機能液を吸引することができる。液滴吐出ヘッド17からキャップ室107に吸引された機能液は、キャップ凹部105の底、すなわちキャップ底面105Aの上に溜まる。キャップ底面105Aの上に溜まった機能液は、液面61aの高さが底面突起124cを越えると、底面突起124cの上面に開口した吸引排液孔124aから吸引されて排出される。液面61aの高さが底面突起124cの高さに至らない量の機能液は、キャップ凹部105の底に溜まった状態が維持される。
【0076】
<キャップユニット>
次に、封止キャップ102を有するキャップ装置103を備えるキャップユニット110の概略構成について、図6を参照して説明する。図6は、キャップユニットの概略構成を示す平面図である。図6に示したX軸及びY軸は、キャップユニット110が液滴吐出装置1に取り付けられた状態において、図1又は図4に示したX軸及びY軸と一致している。
【0077】
図6に示したように、キャップユニット110は、キャッププレート101と、キャッププレート101に搭載された6個のキャップ装置103と、を有している。キャッププレート101は、図示省略したキャップ昇降機構を介して架台8に昇降可能に固定されている。
上述したように、キャップ装置103は封止キャップ102とベースホルダ108とを有しており、ベースホルダ108がキャッププレート101に形成されたプレート孔101aに嵌合して固定されることによって、キャッププレート101に固定されている。封止キャップ102は、キャップ押圧機構109を介してベースホルダ108に対して離接方向に移動可能に取り付けられている。キャップ押圧機構109は、封止キャップ102がキャッププレート101の面に略垂直な方向に移動する方向に弾性変形可能である。キャップ押圧機構109は、封止キャップ102が液滴吐出ヘッド17などに当接した状態で、封止キャップ102に加えられた当接力によってキャップ押圧機構109が変形し、変形抗力によって、封止キャップ102を液滴吐出ヘッド17などに押付ける力を封止キャップ102に加える。
【0078】
図6は、キャップユニット110を封止部材106側から見た図である。6個のキャップ装置103は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつのキャップ装置103を有するキャップ組115を2組形成している。キャップユニット110における6個のキャップ装置103は、ヘッドユニット54における6個の液滴吐出ヘッド17の位置に対応した位置にそれぞれ配設されている。キャップユニット110が有する6個のキャップ装置103によって、ヘッドユニット54における6個の液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル78を同時に封止することができる。
【0079】
図1を参照して説明したように、ヘッドユニット54は、Y軸テーブル12によってキャリッジユニット51を移動させることによって、キャップユニット110に臨む位置に移動可能である。キャップユニット110に臨む位置にあるヘッドユニット54に対して、キャップ昇降機構によってキャップユニット110を上昇させることで、6個の液滴吐出ヘッド17のそれぞれのノズル形成面76aに、封止凸部106aを当接させる。キャップ押圧機構109の押圧力によって、封止凸部106aがノズル形成面76aに押付けられ、封止凸部106aが弾性変形することによって、封止凸部106aとノズル形成面76aとが密着する。上述したように、吐出ノズル78に対しては、キャップ室107が、吐出ノズル78を封止する封止空間になる。この状態が、封止キャップ102によって液滴吐出ヘッド17(吐出ノズル78)をキャッピング(封止)した状態である。
【0080】
稼働していない液滴吐出ヘッド17についてキャッピング状態を維持することによって、吐出ノズル78の部分で機能液が乾燥することを抑制することができる。液滴吐出ヘッド17(吐出ノズル78)をキャッピングした状態で、吸引ポンプ111によって、吸引排液管124及び吸引排液孔124aを介してキャップ凹部105内の気体を吸引することにより、吐出ノズル78を介して、液滴吐出ヘッド17内の圧力室158などに充填されている機能液を吸引することができる。
【0081】
<液滴吐出装置の電気的構成>
次に、上述したような構成を有する液滴吐出装置1を駆動するための電気的構成について、図7を参照して説明する。図7は、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気構成ブロック図である。液滴吐出装置1は、制御装置65を介してデータの入力や、稼働開始や停止などの制御指令の入力を行うことで、制御される。制御装置65は、演算処理を行うホストコンピュータ66と、液滴吐出装置1に入出力する情報を入出力するための入出力装置68とを有し、インタフェイス(I/F)67を介して吐出装置制御部6と接続されている。入出力装置68は、情報を入力可能なキーボード、記録媒体を介して情報を入出力する外部入出力装置、外部入出力装置を介して入力された情報を保存しておく記録部、モニタ装置などである。
【0082】
液滴吐出装置1の吐出装置制御部6は、インタフェイス(I/F)47と、CPU(Central Processing Unit)44と、ROM(Read Only Memory)45と、RAM(Random Access Memory)46と、ハードディスク48と、を有している。また、ヘッドドライバ2dと、駆動機構ドライバ40dと、給液ドライバ60dと、メンテナンスドライバ5dと、検査ドライバ4dと、検出部インタフェイス(I/F)43と、を有している。これらは、データバス49を介して互いに電気的に接続されている。
【0083】
インタフェイス47は、制御装置65とデータの授受を行い、CPU44は、制御装置65からの指令に基づいて各種演算処理を行い、液滴吐出装置1の各部の動作を制御する制御信号を出力する。RAM46は、CPU44からの指令に従って、制御装置65から受け取った制御コマンドや印刷データを一時的に保存する。ROM45は、CPU44が各種演算処理を行うためのルーチンなどを記憶している。ハードディスク48は、制御装置65から受け取った制御コマンドや印刷データを保存したり、CPU44が各種演算処理を行うためのルーチンなどを記憶したりしている。
【0084】
ヘッドドライバ2dには、吐出ユニット2を構成する液滴吐出ヘッド17が接続されている。ヘッドドライバ2dは、CPU44からの制御信号に従って液滴吐出ヘッド17を駆動して、機能液の液滴を吐出させる。駆動機構ドライバ40dには、Y軸テーブル12のヘッド移動モータと、X軸テーブル11のX軸リニアモータ26と、各種駆動源を有する各種駆動機構を含む駆動機構41とが接続されている。各種駆動機構は、上記した、キャップ昇降機構の駆動モータや、アライメントカメラ81を移動するためのカメラ移動モータや、θテーブル32のθ駆動モータ532などである。駆動機構ドライバ40dは、CPU44からの制御信号に従って上記モータなどを駆動して、液滴吐出ヘッド17とワークWとを相対移動させてワークWの任意の位置と液滴吐出ヘッド17とを対向させ、ヘッドドライバ2dと協働して、ワークW上の任意の位置に機能液の液滴を着弾させる。
【0085】
メンテナンスドライバ5dには、メンテナンスユニット5の吸引ユニット15と、ワイピングユニット16と、フラッシングユニット14とが接続されている。吸引ユニット15が有する、吸引ポンプ111と、吸引排液バルブ122とが、メンテナンスドライバ5dに接続されている。
メンテナンスドライバ5dは、CPU44からの制御信号に従って、吸引ユニット15、ワイピングユニット16、又はフラッシングユニット14を駆動して、液滴吐出ヘッド17の保守作業を実施させる。吸引ポンプ111と、吸引排液バルブ122とを駆動して、キャップ室107内の気体を吸引することで、吐出ノズル78を介して、圧力室158などに充填されている機能液を吸引する。
【0086】
検査ドライバ4dには、検査ユニット4の吐出検査ユニット18と、重量測定ユニット19とが接続されている。検査ドライバ4dは、CPU44からの制御信号に従って、吐出検査ユニット18、又は重量測定ユニット19を駆動して、吐出重量や吐出の可否や着弾位置精度などの、液滴吐出ヘッド17の吐出状態の検査を実施させる。
【0087】
給液ドライバ60dには、給液ユニット60が接続されている。給液ドライバ60dは、CPU44からの制御信号に従って給液ユニット60を駆動して、液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する。検出部インタフェイス43には、各種センサを含む検出部42が接続されている。検出部42の各センサによって検出された検出情報が検出部インタフェイス43を介してCPU44に伝達される。
【0088】
<配線基板の構成>
次に、液滴吐出装置1を用いて機能液を配置する対象物の一例として、金属配線を形成する配線基板について、図8を参照して説明する。図8は配線基板のマザー基板を示す概略平面図である。図8に示すように、配線基板200は、半導体装置(IC)を平面実装する回路基板であり、ICの入出力電極(バンプ)に対応して配置された導電性材料からなる配線としての入力配線201及び出力配線203と、絶縁膜207とにより構成されている。絶縁膜207は、二点鎖線で示した外形206の内側であって、二点鎖線で示した実装領域205以外の部分に形成されており、入力端子部202及び出力端子部204を避けると共に、実装領域205の内側に入力配線201と出力配線203のそれぞれの一部が露出するように複数の入力配線201及び出力配線203を覆っている。配線基板200は、マザー基板200A上に、複数の配線基板200がマトリクス状に形成される。当該マザー基板200Aを分割することによって、個別の配線基板200がり取り出される。マザー基板200Aは、絶縁基板としてリジットなガラス基板、セラミック基板、ガラスエポキシ樹脂基板の他、フレキシブルな樹脂基板を用いることができる。分割方法としては、スクライブ、ダイシング、レーザーカット、プレスなどがマザー基板200Aの材料に応じて選択できる。
【0089】
本実施形態では、上述した液滴吐出装置1を用いた液滴吐出法により、導電性材料からなる入力配線201及び出力配線203や絶縁性材料からなる絶縁膜207を形成する。液滴吐出法を用いることで、各材料の無駄を省いて配線や絶縁膜を形成することができる。また、フォトリソグラフィ法に比べてパターン形成するための露光用マスクや現像、エッチングなどの工程を必要としないので、マザー基板200Aのサイズによらず工程を簡略化することができる。
【0090】
液滴吐出装置1から吐出する機能液に含まれる導電性材料としては、例えば金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、及びニッケルのうちの少なくともいずれか1つを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上1.0μm以下であることが好ましい。1.0μmより大きいと液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル78に目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
【0091】
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0092】
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法により機能液を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、機能液のノズル形成面76aに対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えると吐出ノズル78の先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、マザー基板200Aとの接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、機能液のマザー基板200Aへの濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトンなどの有機化合物を含んでもよい。
【0093】
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いて機能液を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合には吐出ノズル78周辺部が機能液の流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、吐出ノズル78のノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
休止状態の液滴吐出ヘッド17においては、分散液が吐出ノズル78から吐出可能な状態に液滴吐出ヘッド17に充填されており、吐出ノズル78から分散媒が蒸発することによって分散液の粘度が高くなる可能性がある。キャップ装置103によって液滴吐出ヘッド17をキャッピングすることによって、吐出ノズル78を封止して、吐出ノズル78から分散媒が蒸発することを抑制することができる。
キャップユニット110によって液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル78から分散液を吸引することによって、粘度が高くなった可能性のある分散液を強制的に取り除くことができる。
【0094】
<封止キャップ例2>
次に、図9を参照して、封止キャップ102とは異なる封止キャップ302について説明する。図9は、封止キャップの構成を示す断面図である。封止キャップ302が、ノズル封止手段に相当する。
【0095】
図9に示すように、封止キャップ302は、キャップベース304と封止部材306とを備えている。キャップベース304は、例えばステンレス鋼などのような腐食され難い材料で略直方体形状に構成されており、一面にキャップ凹部305が形成されている。キャップ凹部305は、キャップベース304の一面に開口する主凹部305aを有している。キャップベース304は、封止キャップ302が液滴吐出装置1に取り付けられた状態では、主凹部305aの開口が重力加速度方向の上側に開口する状態になる。
【0096】
キャップベース304のキャップ凹部305が形成されている面を上面、反対側の面を下面、上面と下面以外の4面を側面と表記する。
キャップ凹部305は、主凹部305aと、副凹部305bと、主凹部305aと副凹部305bとを連通する連通孔305cと、を有している。主凹部305aは略直方体形状の凹部であり、直方体形状の一面がキャップベース304の上面に開口している。
副凹部305bは、キャップベース304の内部に形成された空間であり、吸引排液孔324a及び連通孔305c以外の部分は閉鎖された空間である。主凹部305aと副凹部305bとは、連通孔305cを介してつながっている。主凹部305aの底面(下面側の面)と、副凹部305bの底面(下面側の面)と、連通孔305cの底面(下面側の面)とは連続した略平坦な面であり、この底面を、キャップ底面305Aと表記する。主凹部305aと副凹部305bとを分ける分離壁304aによって、主凹部305aと副凹部305bとの上面側は隔絶されており、上面側から伸びた分離壁304aとキャップ底面305Aとの間の隙間として、連通孔305cが形成されている。
【0097】
キャップベース304には、キャップ凹部305から下面に貫通する吸引排液孔324aが形成されている。吸引排液孔324aは、副凹部305b内のキャップ底面305Aに突設された底面突起324c及びキャップベース304の下面に突設された吸引排液突起324bを貫通して、キャップベース304の外部に開口している。底面突起324cの上面のキャップ底面305Aからの高さは、分離壁304aの下端面のキャップ底面305Aからの高さより高くなっている。
【0098】
吸引排液突起324bには吸引排液管124の一端が嵌合しており、吸引排液管124の他端は、吸引ポンプ111に接続されている。吸引排液管124の途中には、吸引排液管124の流路を開閉可能な吸引排液バルブ122が設けられている。吸引排液バルブ122及び吸引ポンプ111は、吐出装置制御部6によって制御される。吸引ポンプ111によって、吸引排液管124及び吸引排液孔324aを介してキャップ凹部305内の気体や液体を吸引することができる。吸引排液管124及び吸引ポンプ111が、吸引手段又は排出手段に相当する。吸引排液管124が、吸引管又は排液管に相当する。
【0099】
封止部材306は、耐食性を有するゴム状弾性体材料を用いて形成されている。封止部材306は、主凹部305aの開口の縁に沿って、図示省略した封止部材ホルダによってキャップベースに固定されている。封止部材306の封止凸部306aが、キャップベース304の上面から突出している。封止部材306とキャップ凹部305とで、キャップ室307を構成している。
封止凸部306aの平面形状は、2列のノズル列78Aの周囲でノズル形成面76aに当接する形状になっている。封止キャップ302が液滴吐出ヘッド17に当接する場合、キャップベース304から突出している封止凸部306aがノズル形成面76aに当接する。このとき、ゴム状弾性体材料から成る封止凸部306aは、弾性変形してノズル形成面76aに密着する。キャップ室307は、図9に二点鎖線で示したように、液滴吐出ヘッド17によって封止されて、吸引排液孔324a、又は液滴吐出ヘッド17に形成された液状体の流路を介してのみ外部と連通可能な封止空間となる。吐出ノズル78に対しては、キャップ室307が、吐出ノズル78を封止する封止空間になっている。キャップ室307が、封止室に相当する。封止凸部306aが、封止突起部に相当する。主凹部305aと封止部材306とで形成される凹部が、封止主室に相当し、副凹部305bが、吸引口室に相当する。
【0100】
上述したキャップ装置103と同様に、封止キャップ302は、キャップ押圧機構を介してベースホルダに取り付けられ、ベースホルダがキャッププレートに固定されて、キャップユニットが形成される。
【0101】
吐出ノズル78をキャップ室307によって封止した状態で、吸引ポンプ111によって、吸引排液管124及び吸引排液孔324aを介してキャップ凹部305内の気体を吸引することにより、吐出ノズル78から液滴吐出ヘッド17内の機能液を吸引することができる。液滴吐出ヘッド17からキャップ室307に吸引された機能液は、キャップ凹部305の底、すなわちキャップ底面305Aの上に溜まる。キャップ底面305Aの上に溜まった機能液は、液面61aの高さが底面突起324cを越えると、底面突起324cの上面に開口した吸引排液孔324aから吸引されて排出される。底面突起324cの上面のキャップ底面305Aからの高さは、分離壁304aの下端面より高いため、機能液が吸引排液孔324aから吸引されて排出される状態では、液面61aは、分離壁304aによって遮られて、主凹部305a側の液面61aと副凹部305b側の液面61aとに分離されている。機能液より軽い物質がキャップ室307に混入した場合は、主凹部305a側の液面61aに浮かぶため、当該物質が連通孔305cを通って副凹部305bに移動する可能性は小さいことから、当該物質が吸引排液孔324aに吸引される可能性は小さくなる。液面61aの高さが底面突起324cの高さに至らない量の機能液は、キャップ凹部305の底に溜まった状態が維持される。
【0102】
<封止キャップ例3>
次に、封止キャップ102又は封止キャップ302とは異なる封止キャップ402、及び封止キャップ402を有するキャップ装置403について、図10を参照して説明する。図10は、封止キャップ及びキャップ装置の概略構成を示す断面図である。封止キャップ402が、ノズル封止手段に相当する。
【0103】
図10に示すように、封止キャップ402は、キャップベース404と封止部材406とを備えている。キャップベース404は、例えばステンレス鋼などのような腐食され難い材料で略直方体形状に構成されており、一面にキャップ凹部405が形成されている。キャップ凹部405は、キャップベース404の一面に開口する略直方体形状の凹部である。キャップベース404は、封止キャップ402が液滴吐出装置に取り付けられた状態では、キャップ凹部405の開口が重力加速度方向の上側を向く状態になる。キャップベース404のキャップ凹部405が形成されている面を上面、反対側の面を下面、上面と下面以外の4面を側面と表記する。略直方体形状の凹部であるキャップ凹部405の底面をキャップ底面405Aと表記する。
【0104】
キャップベース404には、キャップ凹部405から側面に貫通する吸引孔414aと、キャップ凹部405から下面に貫通する排液孔424aと、が形成されている。排液孔424aは、キャップベース404の下面に突設された排液突起424b、及びキャップ底面405Aに突設された底面突起424cを貫通して、キャップベース404の外部に開口している。吸引孔414aは、キャップベース404の側面に突設された吸引突起414bを貫通して、キャップベース404の外部に開口している。吸引孔414aは、キャップ凹部405の内壁における、キャップ底面405Aから離れた位置に開口している。キャップ底面405Aから吸引孔414aの開口までの高さは、底面突起424cの高さより高くなっている。キャップ底面405Aからの高さに関して、吸引孔414aは、排液孔424aがキャップ凹部405に開口している位置より高い位置で、キャップ凹部405に開口している。
【0105】
吸引突起414bには吸引管114の一端が嵌合しており、吸引管114の他端は、吸引ポンプ111に接続されている。吸引管114の途中には、吸引管114の流路を開閉可能な吸引バルブ112が設けられている。吸引バルブ112及び吸引ポンプ111は、吐出装置制御部6によって制御される。吸引ポンプ111によって、吸引管114及び吸引孔414aを介してキャップ凹部405内の気体や液体を吸引することができる。
排液突起424bには排液管424の一端が嵌合しており、排液管424の他端は、排液ポンプ121に接続されている。排液管424の途中には、排液管424の流路を開閉可能な排液バルブ422が設けられている。排液バルブ422及び排液ポンプ121は、吐出装置制御部6によって制御される。排液ポンプ121によって、排液管424及び排液孔424aを介してキャップ凹部405の底に溜まった機能液や溶解液を排出することができる。吸引管114及び吸引ポンプ111が、吸引手段に相当する。排液管424及び排液ポンプ121が、排出手段に相当する。
【0106】
封止部材406は、耐食性を有するゴム状弾性体材料を用いて形成されている。封止部材406は、キャップ凹部405の開口の縁に沿って、図示省略した封止部材ホルダによってキャップベース404に固定されている。封止部材406の封止凸部406aが、キャップベース404の上面から突出している。封止部材406とキャップ凹部405とで、キャップ室407を構成している。
封止凸部406aの平面形状は、封止凸部106aなどと同様に、2列のノズル列78Aの周囲でノズル形成面76aに当接する形状になっている。封止キャップ402が液滴吐出ヘッド17に当接する場合、キャップベース404から突出している封止凸部406aがノズル形成面76aに当接する。このとき、ゴム状弾性体材料から成る封止凸部406aは、弾性変形してノズル形成面76aに密着する。キャップ室407は、図10に二点鎖線で示したように、液滴吐出ヘッド17によって封止されて、吸引孔414a、排液孔424a、又は液滴吐出ヘッド17に形成された液状体の流路を介してのみ外部と連通可能な封止空間となる。吐出ノズル78に対しては、キャップ室407が、吐出ノズル78を封止する封止空間になっている。キャップ室407が、封止室に相当する。封止凸部406aが、封止突起部に相当する。
【0107】
キャップ装置403は封止キャップ402とベースホルダ408とを有しており、ベースホルダ408がキャッププレート401に形成されたプレート孔401aに遊嵌して、図示省略した固定部材を用いて固定されることによって、キャッププレート401に固定されている。封止キャップ402は、キャップ押圧機構409を介してベースホルダ408に対して離接方向に移動可能に取り付けられている。キャップ押圧機構409は、封止キャップ402がキャッププレート401の面に略垂直な方向に移動する方向に弾性変形可能である。キャップ押圧機構409は、封止キャップ402が液滴吐出ヘッド17などに当接した状態で、封止キャップ402に加えられた当接力によって変形し、変形抗力によって、封止キャップ402を液滴吐出ヘッド17などに押付ける力を封止キャップ402に加える。
【0108】
吐出ノズル78をキャップ室407によって封止した状態で、排液バルブ422を閉じて排液管424を閉鎖することにより、キャップ室407は、吸引孔414a、又は液滴吐出ヘッド17に形成された液状体の流路を介してのみ外部と連通可能な封止空間となる。この状態で、吸引ポンプ111によって、吸引管114及び吸引孔414aを介してキャップ凹部405内の気体を吸引することにより、吐出ノズル78から液滴吐出ヘッド17内の機能液を吸引することができる。液滴吐出ヘッド17からキャップ室407に吸引された機能液は、キャップ凹部405の底、すなわちキャップ底面405Aの上に溜まる。キャップ底面405Aの上に溜まった機能液は、液面61aの高さが底面突起424cの高さを越えると、底面突起424cの上面に開口した排液孔424aから排出可能となる。排液バルブ422を開いて、排液ポンプ121を駆動することによって、底面突起424cの高さを越えてキャップ凹部405に溜まった機能液が排出される。
【0109】
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)底面突起124cがキャップ底面105Aから突出しており、吸引排液孔124aは、底面突起124cの上面においてキャップ室107に開口している。液滴吐出ヘッド17からキャップ室107に吸引された機能液は、キャップ凹部105の底に溜まる。キャップ凹部105の底に溜まった機能液は、液面61aの高さが底面突起124cを越えると、底面突起124cの上面に開口した吸引排液孔124aから吸引されて排出される。流動しやすい機能液は底面突起124cの上面を乗り越えて吸引排液孔124aに吸引されるが、機能液が乾燥して形成された塊が底面突起124cの上面を乗り越えることは起こり難いため、機能液が乾燥して形成された塊が吸引排液孔124aに吸引されることを抑制することができる。
【0110】
(2)キャップユニット110における6個のキャップ装置103は、ヘッドユニット54における6個の液滴吐出ヘッド17の位置に対応した位置にそれぞれ配設されている。これにより、キャップユニット110が有する6個のキャップ装置103によって、ヘッドユニット54における6個の液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル78を同時に封止して、吸引に要する時間を削減することができる。
【0111】
(3)底面突起324cの上面のキャップ底面305Aからの高さは、分離壁304aの下端面より高いため、機能液が吸引排液孔324aから吸引されて排出される状態では、液面61aは、分離壁304aによって遮られて、主凹部305a側の液面61aと副凹部305b側の液面61aとに分離されている。機能液より軽い物質がキャップ室307に混入した場合は、主凹部305a側の液面61aに浮かぶため、当該物質が連通孔305cを通って副凹部305bに移動する可能性は小さい。これにより、機能液が乾燥して形成される塊の比重が機能液より小さい場合であっても、当該塊が副凹部305bに開口した吸引排液孔324aに吸引されることを抑制することができる。また、キャップ室307に侵入した機能液より軽い異物が吸引排液孔324aに吸引されることを抑制することができる。
【0112】
(4)排液管424の途中には、排液管424の流路を閉鎖又は開放可能な排液バルブ422が設けられている。排液バルブ422を閉じる又は開くことによって、キャップ凹部405に溜まった機能液の排出を制御することができる。
キャップ室407を負圧にする際は、排液バルブ422を閉じることによって、排液管424を介して外部からキャップ室407に空気が逆流することを抑制することができる。
【0113】
(5)キャップベース404には、キャップ凹部405から側面に貫通する吸引孔414aが形成されており、吸引孔414aは、排液孔424aがキャップ凹部405に開口している位置より高い位置で、キャップ凹部405に開口している。この構成によって、キャップ凹部405に溜まった機能液は、液面61aの高さが吸引孔414aの開口の高さに達するより低い位置において、排液孔424aに流入可能となる。したがって、キャップ室407から空気を吸引してキャップ室407を負圧にする際に、吸引孔414aからキャップ凹部405の底に溜まった機能液を吸引することが少なくなるため、効率よくキャップ室407から空気を吸引して負圧にすることができる。
【0114】
(6)キャップベース404には、吸引孔414aとは別に排液孔424aが設けられている。これにより、吸引孔414aや吸引管114や吸引バルブ112や吸引ポンプ111が機能液に触れる可能性を小さくすることができる。
【0115】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0116】
(変形例1)前記実施形態においては、キャップ凹部105、キャップ凹部305、及びキャップ凹部405は、機能液を溜める空間であったが、キャップ凹部を含むキャプ室が、空の空間であることは必須ではない。キャップ凹部を含むキャップ室内に、液状体を吸収可能な吸収材を配設してもよい。
キャップ室内に、液状体を吸収可能な吸収材を配設すると、液滴吐出ヘッドから吸引されて封止室内に落下した液状体は、吸収材に吸収される。液状体又は液状体の溶質の凝固が発生する場合は、液状体が吸収材に吸収された状態で発生するため、液状体又は液状体の溶質が凝固した凝固物は吸収材から外れる可能性はほとんどないことから、凝固しかけたり凝固したりした液状体又は液状体の溶質が吸引管や排液管に侵入することを抑制することができる。
また、吸収材を封止室から取り出すだけで、封止室内の凝固物を容易に取り除くことができる。
【0117】
(変形例2)前記実施形態においては、キャップ凹部305におけるキャップ底面305Aは、主凹部305aの底面と、副凹部305bの底面と、連通孔305cの底面とが連続した略平坦な面であったが、主凹部と、副凹部と、連通孔とが連続した底面を有することは必須ではない。
主凹部と、副凹部と、主凹部と副凹部とを連通させる連通孔を有するキャップ凹部においては、連通孔の底面の位置が、重力加速度方向において、主凹部の底面より高い位置になる構成にしてもよい。連通孔の底面の位置が主凹部の底面より高いことにより、液状体より比重が大きい固形物が主凹部から連通孔の方に移動し難くなるため、固形物が副凹部に移動して副凹部に開口した吸引管や排液管や吸引排液管に入り込むことを抑制することができる。
副凹部の底面の位置が、重力加速度方向において、主凹部の底面より高い位置になる構成にしてもよい。副凹部の底面の位置が主凹部の底面より高いことにより、液状体より比重が大きい固形物が主凹部から副凹部の方に移動し難くなるため、固形物が副凹部に移動して副凹部に開口した吸引管や排液管や吸引排液管に入り込むことを抑制することができる。
【0118】
(変形例3)前記実施形態においては、液滴吐出ヘッド17を封止していない状態におけるキャップ室107、キャップ室307、又はキャップ室407は、封止している状態ではノズル形成面76aによって塞がれている開口が開放されている。キャップ室107、キャップ室307、又はキャップ室407の開口を封止する封止キャップ蓋を設けて、液滴吐出ヘッド17を封止していない場合に、封止キャップ蓋によってキャップ室107、キャップ室307、又はキャップ室407の開口を封止してもよい。キャップ室の開口を封止することによって、キャップ室内の溶媒が蒸発することを抑制して、キャップ室内の機能液の濃度が高くなったり凝固したりすることを抑制することができる。
【0119】
(変形例4)前記実施形態においては、キャップ凹部405に溜まった機能液などを排出するための排液ポンプ121を設けていたが、排出するためのポンプなどを設けることは必須ではない。重力加速度方向の低い位置に開口する出口を有する排出孔を形成して、当該排出孔から重力によって自然に流出させる構成であってもよい。
【0120】
(変形例5)前記実施形態においては、キャップベース404における吸引孔414aは、キャップ凹部405側面から外部に貫通する孔であったが、吸引孔がキャップ凹部の側面から外部に貫通することは必須ではない。吸引孔をキャップ凹部の底面に形成してもよい。この場合には、吸引孔のキャップ凹部側の開口は、排液孔がキャップ凹部の底面に突設された底面突起の上面においてキャップ凹部に開口しているのと同様に、キャップ凹部の底面に形成した吸引孔用突起の上面に形成する。キャップ凹部の底面に対する吸引孔用突起の高さは、排液孔が開口する底面突起の上面より高い位置に形成する。
【0121】
(変形例6)前記実施形態においては、キャップ室107、キャップ室307、又はキャップ室407に滞留する機能液の乾燥を抑制する手段は設けられていなかったが、排液管などに機能液が乾燥することで凝固した固形物が侵入することを抑制するために、キャップ室に滞留する機能液の固化を抑制する手段を設けてもよい。固化を抑制する手段は、例えば、液状体が乾燥することで凝固した固形物を溶解可能な溶解液をキャップ室に供給する溶解液供給装置である。溶解液供給装置によってキャップ室に溶解液を供給することによって、キャップ室に滞留する液状体を希釈して、液状体が乾燥して凝固することを抑制することができる。
【0122】
(変形例7)前記実施形態においては、液滴吐出ヘッド17に対して封止キャップ102、封止キャップ302、又は封止キャップ402を用いてキャッピング又はキャッピングの解除をする際に、キャップユニット110などとヘッドユニット54とを離接方向に相対移動させるために、キャップユニット110などをZ軸方向に移動するキャップ昇降機構を設けていた。しかし、吐出ヘッドに対して封止キャップを用いてキャッピング又はキャッピングの解除をする際に、キャップユニットを吐出ヘッドとの離接方向に移動させることは必須ではない。ヘッドユニットをキャップユニットとの離接方向に移動させる構成であってもよい。
【0123】
(変形例8)前記実施形態においては、ヘッドユニット54は6個の液滴吐出ヘッド17を備えていたが、ヘッドユニットが備える液滴吐出ヘッドの数は、6個に限らない。ヘッドユニットは、何個の液滴吐出ヘッドを備えていてもよい。
【0124】
(変形例9)前記実施形態においては、液滴吐出装置1は1個のヘッドユニット54を備えていたが、液滴吐出装置が備えるヘッドユニットは1個に限らない。液滴吐出装置は、何個のヘッドユニットを備えていてもよい。
【0125】
(変形例10)前記実施形態においては、吐出装置として、インクジェット方式の液滴吐出ヘッド17を備える液滴吐出装置1を例に説明したが、吐出装置が液滴吐出装置であることは必須ではない。吐出装置としては、例えば、ディスペンサを備える吐出装置などであってもよい。
【0126】
(変形例11)前記実施形態においては、液滴吐出装置1を使用して機能液を配置することで描画を実施する描画対象物の一例として、金属配線や絶縁膜を形成する配線基板について説明したが、描画対象物は配線基板に限らない。上述したヘッド保守装置、吐出装置、及びヘッド保守方法は、製造に際して様々な液状体を配置して加工を実施する様々な加工対象物を加工するための製造装置、及び製造方法として利用できる。
例えば、液晶表示パネルのフィルタ膜や、液晶表示装置の画素電極膜や配向膜や対向電極膜や、カラーフィルタなどを保護するためなどに設けるオーバーコート膜などの加工方法又は加工装置などとして、利用することもできる。有機EL表示装置の正極電極膜や陰極電極膜、フォトエッチングなどによってパターンを形成するための膜や、フォトエッチングなどのフォトレジスト膜などの加工方法又は加工装置などとして、利用することもできる。半導体ウェハ、及び液状の導電材料を吐出する半導体装置の配線導電膜の加工方法又は加工装置、半導体ウェハ、及び液状の絶縁材料を吐出する半導体装置の絶縁層の加工方法又は加工装置などとして、利用することもできる。
【0127】
(変形例12)前記実施形態においては、液滴吐出装置1は、加工対象物を載置したワーク載置台21を主走査方向に移動させると共に、液滴吐出ヘッド17から機能液を吐出させることによって機能液を配置していた。また、ヘッドユニット54を副走査方向に移動することによって、加工対象物に対する液滴吐出ヘッド17(吐出ノズル78)の位置を合わせこんでいた。しかし、配置ヘッドとしての液滴吐出ヘッドと加工対象物との、主走査方向の相対移動を加工対象物を移動させることで実施することも、副走査方向の相対移動を吐出ヘッドを移動させることで実施することも、必須ではない。
吐出ヘッドと加工対象物との、主走査方向の相対移動を吐出ヘッドを主走査方向に移動させることで実施してもよい。吐出ヘッドと加工対象物との、副走査方向の相対移動を加工対象物を副走査方向に移動させることで実施してもよい。あるいは、吐出ヘッドと加工対象物との、主走査方向及び副走査方向の相対移動を、吐出ヘッド、又は加工対象物のどちらか一方を、主走査方向及び副走査方向に移動させることで実施してもよいし、吐出ヘッド、及び加工対象物の両方を、主走査方向及び副走査方向に移動させることで実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】液滴吐出装置の概略構成を示す平面図。
【図2】液滴吐出装置の概略構成を示す側面図。
【図3】(a)は、液滴吐出ヘッドをノズルプレート側から見た外観斜視図。(b)は、液滴吐出ヘッドの圧力室周りの構造を示す斜視断面図。(c)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズル部の構造を示す断面図。
【図4】ヘッドユニットの概略構成を示す平面図。
【図5】(a)は、封止キャップを封止部材側から見た外観斜視図。(b)は、封止キャップを有するキャップ装置の構造を示す断面図。
【図6】キャップユニットの概略構成を示す平面図。
【図7】液滴吐出装置の電気的構成を示す電気構成ブロック図。
【図8】配線基板のマザー基板を示す概略平面図。
【図9】封止キャップの構成を示す断面図。
【図10】封止キャップ及びキャップ装置の概略構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0129】
1…液滴吐出装置、5…メンテナンスユニット、15…吸引ユニット、17…液滴吐出ヘッド、54…ヘッドユニット、61a…液面、76…ノズルプレート、76a…ノズル形成面、78…吐出ノズル、78A…ノズル列、102,302,402…封止キャップ、103,403…キャップ装置、104,304,404…キャップベース、105,305,405…キャップ凹部、105A,305A,405A…キャップ底面、106,306,406…封止部材、106a,306a,406a…封止凸部、107,307,407…キャップ室、108,408…ベースホルダ、109,409…キャップ押圧機構、110…キャップユニット、111…吸引ポンプ、112…吸引バルブ、114…吸引管、121…排液ポンプ、122…吸引排液バルブ、124…吸引排液管、124a,324a…吸引排液孔、124c,324c,424c…底面突起、304a…分離壁、305a…主凹部、305b…副凹部、305c…連通孔、414a…吸引孔、422…排液バルブ、424…排液管、424a…排液孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜状体を形成する膜材料を含む液状体を吐出する吐出ノズルを備える吐出ヘッドを保守するためのヘッド保守装置であって、
前記吐出ノズルを封止する空間を構成する封止室を有するノズル封止手段と、
前記封止室に連通する吸引管を備え、前記吐出ノズルを封止した前記封止室の内部の気体又は液体を、当該吸引管を介して吸引することで、前記吐出ノズルを介して前記吐出ヘッドに充填された前記液状体を吸引する吸引手段と、
前記封止室の内部と外部とに開口して、前記封止室内の液状体を外部に流動させることが可能な排液管を有する排出手段と、を備え、
前記封止室は、封止室開口と、底面と、前記封止室開口の周囲に形成されて前記吐出ヘッドに当接する封止突起部と、を有し、前記吐出ヘッドから吸引された前記液状体は、前記吐出ノズルから落下して前記底面上に滞留し、前記吸引管及び前記排液管は、重力加速度方向において、前記底面より前記封止突起部に近い位置で、前記封止室に開口していることを特徴とするヘッド保守装置。
【請求項2】
前記封止室は、封止主室と、
前記吸引管の開口位置及び前記排液管の開口位置より、重力加速度方向において、前記底面に近い位置に開口した連通口を介して前記封止主室と連通する吸引口室と、を備え、
前記封止主室は、前記封止室開口と前記封止突起部と前記底面とを有し、
前記吸引管及び前記排液管は、前記吸引口室に開口していることを特徴とする、請求項1に記載のヘッド保守装置。
【請求項3】
前記排液管は、重力加速度方向において、前記吸引管と前記底面との間の位置で前記封止室の内部に開口していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のヘッド保守装置。
【請求項4】
前記排液管は、前記吸引管と共通の管であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のヘッド保守装置。
【請求項5】
前記封止室に、液状体を吸収可能な吸収材が配設されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のヘッド保守装置。
【請求項6】
前記封止室に前記膜材料を溶解可能な溶解液を供給する溶解液供給手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のヘッド保守装置。
【請求項7】
膜状体を形成する膜材料を含む液状体を吐出する吐出ノズルを有する吐出ヘッドを備える吐出装置であって、
前記吐出ノズルを封止する空間を構成する封止室を有するノズル封止手段と、
前記封止室に連通する吸引管を備え、前記吐出ノズルを封止した前記封止室の内部の気体又は液体を、当該吸引管を介して吸引することで、前記吐出ノズルを介して前記吐出ヘッドに充填された前記液状体を吸引する吸引手段と、
前記封止室の内部と外部とに開口して、前記封止室内の液状体を外部に流動させることが可能な排液管を有する排出手段と、を備え、
前記封止室は、封止室開口と、底面と、前記封止室開口の周囲に形成されて前記吐出ヘッドに当接する封止突起部と、を有し、前記吐出ヘッドから吸引された前記液状体は、前記吐出ノズルから落下して前記底面上に滞留し、前記吸引管及び前記排液管は、重力加速度方向において、前記底面より前記封止突起部に近い位置で、前記封止室に開口していることを特徴とする吐出装置。
【請求項8】
前記封止室は、封止主室と、
前記吸引管の開口位置及び前記排液管の開口位置より、重力加速度方向において、前記底面に近い位置に開口した連通口を介して前記封止主室と連通する吸引口室と、を備え、
前記封止主室は、前記封止室開口と前記封止突起部と前記底面とを有し、
前記吸引管及び前記排液管は、前記吸引口室に開口していることを特徴とする、請求項7に記載の吐出装置。
【請求項9】
前記封止室に液状体を吸収可能な吸収材が配設されていることを特徴とする、請求項7又は8に記載の吐出装置。
【請求項10】
膜状体を形成する膜材料を含む液状体を吐出する吐出ノズルを備える吐出ヘッドを、前記吐出ノズルを封止する空間を構成する封止室を有するノズル封止手段を用いて保守するヘッド保守方法であって、
前記吐出ノズルが前記封止室に臨む位置に、前記吐出ヘッド及び前記ノズル封止手段を配置し、当該ノズル封止手段の前記封止室によって、前記吐出ノズルを封止するノズル封止工程と、
前記吐出ノズルを封止した前記封止室の内部の気体又は液体を吸引管を介して吸引することによって前記封止室を負圧にすることで、前記吐出ヘッドに充填された前記液状体を前記吐出ノズルを介して吸引する吸引工程と、
前記吸引工程において吸引された前記液状体を、前記封止室の内部と外部とに開口して前記封止室内の液状体を外部に流動させることが可能な排液管を介して排出する排液工程と、を有し、
前記封止室は、封止室開口と、底面と、前記封止室開口の周囲に形成されて前記吐出ヘッドに当接する封止突起部と、を有し、前記吐出ヘッドから吸引された前記液状体は、前記吐出ノズルから落下して前記底面上に滞留し、前記吸引管及び前記排液管は、重力加速度方向において、前記底面より前記封止突起部に近い位置で、前記封止室に開口していることを特徴とするヘッド保守方法。
【請求項11】
前記封止室は、封止主室と、
前記吸引管の開口位置及び前記排液管の開口位置より、重力加速度方向において、前記底面に近い位置に開口した連通口を介して前記封止主室と連通する吸引口室と、を備え、
前記封止主室は、前記封止室開口と前記封止突起部と前記底面とを有し、
前記吸引管及び前記排液管は、前記吸引口室に開口していることを特徴とする、請求項10に記載のヘッド保守方法。
【請求項12】
前記排液管は、重力加速度方向において、前記吸引管と前記底面との間の位置で前記封止室の内部に開口していることを特徴とする、請求項10又は11に記載のヘッド保守方法。
【請求項13】
前記排液管は、前記吸引管と共通の管であることを特徴とする、請求項10又は11に記載のヘッド保守方法。
【請求項14】
前記封止室に液状体を吸収可能な吸収材が配設されていることを特徴とする、請求項10乃至13のいずれか一項に記載のヘッド保守方法。
【請求項15】
前記封止室に、前記膜材料を溶解可能な溶解液を供給する溶解液供給工程をさらに有することを特徴とする、請求項10乃至14のいずれか一項に記載のヘッド保守方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−248053(P2009−248053A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102195(P2008−102195)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】