説明

ベランダ側溝型枠用着脱具及びそれを用いた型枠

【課題】 ベランダ側溝用型枠をベランダ手摺壁型枠に取り付けるための立ち上り部分を最低限必要な部分的な立ち上りとし、もって立ち上り部分と壁型枠のせき板との間に落ち入った余剰コンクリートが取り除きにくいという問題を解決し、コンクリート打設作業性の向上と型枠取外し後の残材を減少させるベランダ側溝型枠用着脱具及びそれを用いたベランダ側溝用型枠を提供する。
【解決手段】 一側が垂直面で他側が傾斜面をなす縦断面が逆台形の型枠本体2と、該型枠本体2の長手方向に部分的に前記一側垂直面及び底面に当接して固定される着脱具3とからなり、これに用いる着脱具3は垂直部が前記型枠本体の上面より上方に延びた延長部を有する略L字形であって、この延長部にはベランダ側溝用型枠の取外し時にバールを差し込むためのバール穴35が設けられた構成とする技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート造ベランダの側溝を形成するために用いる型枠を取付ける着脱具及びそれを用いたベランダ側溝用型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベランダをコンクリートにより築造する場合、一般的に床コンクリートと手摺壁コンクリートを同時に打設する工法が行われている。またその時、ベランダの側溝を形成するためにベランダ側溝用型枠(以下、側溝用型枠という)を床コンクリートに埋設して側溝の形を形成するのであるが、側溝用型枠の保持方法としてベランダ手摺壁型枠(以下、壁型枠という)に釘打ち固定する方法が取られている。
【0003】
そして釘打ちする部位としては、断面が逆台形の側溝の形をした本体の壁型枠取り付け側に、本体から上部に突出させた立ち上り部分を設けることが有効であり、この立ち上り部分を本体と一体に形成した発明がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、立ち上り部分を壁型枠への取付板とし、取付板に本体を固定している発明がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、これらの発明においては、図8に示すように、前記立ち上り部分が連続しているため、手摺壁コンクリート打設時に壁型枠から溢れた余剰コンクリートが、この立ち上り部分と壁型枠のせき板との間に落ち入った場合に、連続した立ち上り部分5と壁型枠4のせき板42との間に落ち入った余剰コンクリート6は取り除きが非常に困難である。壁型枠4の横桟木43を重ねれば、問題解決にもなるが、壁型枠4が重くなって作業性が悪化し、また経済性も悪化する原因となっていた。
【特許文献1】特公平6−17629号公報
【特許文献2】特開2000−291257公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来発明に設けられている連続した立ち上り部分を最低限必要な部分的な立ち上りとし、もって立ち上り部分と壁型枠のせき板との間の閉塞スペースに落ち入った余剰コンクリートが取り除きにくいという問題を解決し、コンクリート打設作業性の向上と型枠取外し後の残材を減少させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において上記課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0008】
すなわち、本発明はコンクリート造ベランダの側溝を形成するための側溝用型枠1において、一側が垂直面で他側が傾斜面をなす縦断面が逆台形の型枠本体2と、該型枠本体の長手方向に部分的に固定される着脱具3とからなり、この着脱具3は前記型枠本体の一側垂直面および底面に当接して固定されるL字部と、垂直部が型枠本体の上面より上方に延びた延長部とからなる略L字形であって、この延長部には側溝用型枠の取外し時にバールを差し込むためのバール穴35が設けられた構成とする技術的手段を採用することにより側溝用型枠に用いる着脱具を完成させた。
【0009】
また、本発明は、上記手段に加えて、着脱具のL字部の少なくとも垂直部にビス穴を設けて型枠本体に容易にビス固定できる技術的手段を採用する。
【0010】
そしてまた、着脱具の垂直部が型枠本体の上面より上方に延びた延長部に釘穴を設けることにより、壁型枠に容易に釘止めできる技術的手段も採用する。
【0011】
さらにまた、型枠本体の側面及び/又は底面に寸法調整用補助部材を介して着脱具を固定することにより、ベランダ側溝の幅、深さ寸法の変化にも対応して使用できる技術的手段も採用して側溝用型枠を完成させた。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来の発明品に設けられている連続した立ち上り部分は無く、型枠本体2を壁型枠に固定するための着脱具3が型枠本体2の長手方向に部分的に取り付けられているのみであり、この着脱具3を壁型枠4の縦桟木41に固定すれば、壁型枠4のせき板42と側溝用型枠1との間には閉塞スペースが発生しないため、壁型枠コンクリート打設時にせき板42の外側に落下した余剰コンクリートを容易に取り除くことができる。
【0013】
その結果、ベランダコンクリート打設の作業性が向上し、型枠取外し後のコンクリート残材も減少して清掃の手間も省け、現場を綺麗に保つことができる。
【0014】
また、壁型枠へのコンクリート固着が減少するので壁型枠のケレン清掃作業も減少し、型枠大工の労力低減効果が得られる。
【0015】
型枠本体2を合成樹脂で製作すればコンクリートとの離型性が良く、型枠取外しの作業効率が向上し、繰り返し転用できるので経済性も向上する。
【0016】
着脱具3にバールを差し込むバール穴35を設けてあるので、コンクリート打設後の側溝用型枠1の取外し作業が容易である。また、このバール穴35が形成されている部分は必要に応じて他の部分よりも厚肉にしたことから、バールの先端を差し込んで係止することが確実に行われ、しかも反復使用にも損傷が少ない。
【0017】
着脱具3はL字部において型枠本体2の側面および底面を抱き込んで固定されているから、上記バール穴35にバール先端を差し込んで上に引き上げて側溝用型枠1を取外す際にも型枠本体2が着脱具3に追従してコンクリートから容易に脱型できる。
【0018】
さらに、着脱具3は、側溝用型枠1の繰り返し使用により型枠本体2が傷んだ場合には取り外して新しい型枠本体に取付れば再使用が可能であり、半永久的に使用できるので経済的である。
【0019】
なお、側溝用型枠1の長さを変える場合は型枠本体2を切断し、必要に応じて着脱具3の取付位置を移動すればよく、容易に所要の長さのものが得られる。
【0020】
特許文献1に記載された発明の問題点については、特許文献2に記載されているが、その内で、側溝用型枠を壁型枠にハンマーで釘打ち固定する場合に、側溝用型枠の上端の引上げ用引掛け部分を壊すことがあるという問題点は、本発明においては該当部分が耐力のある繊維強化樹脂製あるいは金属製なので解決される。
【0021】
同様に引上げ用引掛け部分に力を入れ過ぎると、部分的にその引上げ用引掛け部分を壊すという問題点も、本発明の着脱具3によれば、繊維強化樹脂製あるいは金属製なので充分な強度が得られ解決される。
【0022】
さらにコンクリートが側溝用型枠の中空部内に侵入し、そのノロ取り作業に手間が掛かるという問題も、本発明によれば中空部がないため、問題とならない。
【0023】
特許文献2に記載された発明においては、芯材が木製であるため両端小口部分に小口金具をそれぞれ取付けているが、この場合長さを短くしたい場合には小口金具の取外し再取付けという煩雑な作業が必要である。しかし本発明においては長さを短くする場合は本体を切断するのみでよく、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の構成を具体的に図示した実施例に基づいて更に詳細に説明する。
【0025】
本発明の実施例は、図1から図7に示される。図1は型枠本体2と着脱具3とからなる本発明の側溝用型枠1を示す。着脱具3は図示しないビスにより型枠本体2に固定されている。
【0026】
図2は型枠本体2の断面を示す。型枠本体2は一側が垂直面で他側が傾斜面をなす縦断面が逆台形からなる長尺体であり、塩化ビニル、ポリスチレン、ABS等の合成樹脂で製作される。それらの樹脂を低倍率で発泡させて押出成形したものが丈夫で軽く、また釘やビス止めおよび切削加工が容易であることから好適である。
なお、型枠本体は従来の木製であっても良く、本発明の着脱具3を従来品に取付けて用いることが可能であることは言うまでもない。
【0027】
図3は着脱具3を示す。着脱具3は繊維強化樹脂の射出成形による一体成形あるいは金属板から略L字形に加工して製作する。この着脱具3は型枠本体2の一側垂直面及び底面に当接されるL字部と垂直部が型枠本体2の上面より上方に延びた延長部を有するものであって、L字部の垂直辺には型枠本体2に固定するためのビス穴33が、延長部には側溝用型枠1を壁型枠4に釘留めするための釘穴34と、側溝用型枠の取外し時にバール先端を差し込むためのバール穴35が設けられている。
図3の(イ)は金属で製作された着脱具3の実施例であり、(ロ)は繊維強化樹脂一体成形による着脱具3の実施例である。
【0028】
バール穴35は、樹脂の一体成形であれば部分的に厚肉とした成形が可能であるが、金属製の場合は打抜き加工でも良いが、切り起し加工によれば切り起し片が形成され、バール先端の係止がより確実に行える。
【0029】
着脱具3のビス穴33を介し、略L字形の長辺部31を型枠本体2の一側の垂直面に、短辺部32を本体2の底面にそれぞれ当接させ、少なくとも垂直面側及び必要に応じて底面側にビスによって固定し側溝用型枠1を製作する。着脱具3の取付け間隔は図4に示すように壁型枠4の縦桟木41の位置にあわせておく。
【0030】
このようにして製作された側溝用型枠1を、壁型枠4の建込後、着脱具3の釘穴34を介して図4に示すように壁型枠4の縦桟木41に釘留め固定して所定の位置に組み立てる。なお、釘穴34の周囲を全体あるいは部分的に突出した形状にすれば、釘の頭の周囲が突出した状態で係止され、取外し時において釘の頭に釘抜き等が差し込み易く作業性が向上する。
【0031】
図5は側溝用型枠1が壁型枠4の所定の位置に組み立てられた状態のベランダ型枠の断面図である。
【0032】
図6は、型枠取外し後のベランダの仕上がり断面図である。
【0033】
図7は型枠本体2の寸法変更の実施例を示す。ベランダ側溝の幅あるいは深さを変更するために型枠本体2の寸法を変更する場合は(イ)(ロ)(ハ)に示すように、型枠本体の垂直面または底面もしくはその両面に寸法調整用補助部材71、72、73を介して着脱具3を取付ければ、容易に寸法の異なる側溝用型枠が得られる。
【0034】
図8は従来の発明を示す。従来の発明に設けられている連続した立ち上り部分5と壁型枠4のせき板42との間の閉塞スペースに落ち入った余剰コンクリート6は取り除きが非常に困難である。壁型枠4の横桟木43を重ねれば、問題解決にもなるが、壁型枠4が重くなって作業性が悪化し、また経済性も悪化するという問題が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の側溝用型枠の斜視図
【図2】型枠本体の断面図
【図3】着脱具の斜視図であって、(イ)は金属で製作された実施例を示し、(ロ)は繊維強化樹脂一体成形による実施例を示す。
【図4】側溝用型枠と壁型枠の取り合い斜視図
【図5】ベランダ型枠の組み立て断面図
【図6】構築されたベランダの断面図
【図7】寸法変更例の説明図
【図8】従来の発明の説明図
【符号の説明】
【0036】
1 側溝用型枠
2 本体
3 着脱具
31 着脱具の長辺部
32 着脱具の短辺部
33 ビス穴
34 釘穴
35 バール穴
4 壁型枠
41 壁型枠の縦桟木
42 壁型枠のせき板
43 壁型枠の横桟木
5 従来の発明の立ち上り部分
6 壁型枠から溢れた余剰コンクリート
71、72、73 寸法調整用補助部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側が垂直面で他側が傾斜面をなす縦断面が逆台形の型枠本体の長手方向に部分的に固定される着脱具において、この着脱具は前記型枠本体の一側垂直面および底面に当接して固定されるL字部と、垂直部が型枠本体の上面より上方に延びた延長部とからなる略L字形であって、この延長部には取外し時にバールを差し込むためのバール穴が設けられていることを特徴とするベランダ側溝型枠用着脱具。
【請求項2】
バール穴が設けられた部分を厚肉に形成したことを特徴とする請求項1記載のベランダ側溝型枠用着脱具。
【請求項3】
L字部の少なくとも垂直部に、型枠本体に固定するためのビス穴が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のベランダ側溝型枠用着脱具。
【請求項4】
垂直部が型枠本体の上面より上方に延びた延長部に、壁型枠に固定するための釘穴が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のベランダ側溝型枠用着脱具。
【請求項5】
壁型枠に固定するための釘穴の周囲が突出していることを特徴とする請求項4記載のベランダ側溝型枠用着脱具。
【請求項6】
繊維強化樹脂製であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のベランダ側溝型枠用着脱具。
【請求項7】
コンクリート造ベランダの側溝を形成するためのベランダ側溝用型枠において、
一側が垂直面で他側が傾斜面をなす縦断面が逆台形の型枠本体と、該型枠本体の長手方向に部分的に固定される着脱具とからなり、この着脱具は前記型枠本体の一側垂直面および底面に当接して固定されるL字部と、垂直部が型枠本体の上面より上方に延びた延長部とからなる略L字形であって、この延長部にはベランダ側溝用型枠の取外し時にバールを差し込むためのバール穴が設けられていることを特徴とするベランダ側溝用型枠。
【請求項8】
型枠本体の側面及び/又は底面に寸法調整用補助部材を介して着脱具を固定することを特徴とする請求項7記載のベランダ側溝用型枠。



【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−63788(P2006−63788A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117953(P2005−117953)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】