説明

ベルト定着装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】短時間でウオームアップを行うことが可能な安全で省エネ効率の良いベルト定着装置及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置15は、定着ローラ15aと、加圧ローラ15bと、定着ベルト64と、加熱部材60とを含んで構成される。定着装置15においては、定着ベルト64が定着ローラ15aと加熱部材60との間に張架され、加圧ローラ15bが定着ベルト64を介して定着ローラ15aに対向するように配置されている。加熱部材60の外側表面に定着ベルト64の移動方向に対して直行または傾斜角度を有して溝を形成し、その溝に高伝熱性のグリスを充填することで、導電膜の膜厚バラツキによる温度バラツキを容易に均一化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱および加圧によってトナー像を記録媒体に定着させるベルト定着装置およびこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、熱ローラ定着方式の定着装置が多用されている。熱ローラ定着方式の定着装置は、互いに圧接されたローラ対(定着ローラおよび加圧ローラ)を備え、このローラ対の両方あるいはいずれか一方の内部に配置されたハロゲンヒーター等からなる加熱手段によってローラ対を所定の温度(定着温度)に加熱した後、定着トナー像が形成された記録紙などの記録媒体をローラ対の圧接部(定着ニップ部)に給紙し、圧接部を通過させることで、熱と圧力によって記録紙にトナー像の定着を行うようになっている。
【0003】
ところで、カラー画像形成装置に備えられる定着装置においては、定着ローラ表層にシリコンゴム等からなる弾性層を設けた弾性ローラを用いることが一般的である。定着ローラを弾性ローラとすることで、定着ローラ表面が、未定着トナー像の凸凹に対応して弾性変形し、トナー像面を覆い包むように接触するため、モノクロに比べてトナー量の多いカラーの未定着トナー像に対して良好に加熱定着を行うことが可能となる。また、定着ニップ部での弾性層の歪開放効果によって、モノクロに比べてオフセットしやすいカラートナーに対して離型性を向上することができる。さらに、定着ニップのニップ形状が上(定着ローラ側)に凸(所謂、逆ニップ形状)となることから、記録紙の剥離性能を向上させることができ、剥離爪等の剥離手段を用いずとも記録紙の剥離が可能となり(セルフストリッピング)、剥離手段に起因する画像欠陥を解消することができる。
【0004】
このようなカラー画像形成装置に備えられる定着装置において、高速化に対応するには、定着ニップ部のニップ幅を広くする必要がある。ニップ幅を広くする方法としては、定着ローラの弾性層の層厚を厚くすることや、定着ローラ径を大きくするなどの方法がある。しかしながら、弾性層を具備した定着ローラでは、弾性層の熱伝導性が非常に低いので、定着ローラ内部に加熱手段がある場合、プロセス速度を高速化した場合に定着ローラ温度が追従しなくなる問題がある。一方、定着ローラ径を大きくした場合には、ウオームアップ時間が長くなったり、消費電力が増大するといった問題がある。
【0005】
このような問題を解決するカラー画像形成装置に備えられる定着装置として、特許文献1には、定着ローラと加熱ローラとの間に定着ベルトを掛け渡し、定着ベルトを介して定着ローラと加圧ローラとを圧接させた構成のベルト定着方式の定着装置が開示されている。このベルト定着方式の定着装置では、熱容量が小さい定着ベルトを加熱するため、ウオームアップ時間が短く、また定着ローラにハロゲンランプ等の熱源を内蔵する必要がないので、スポンジゴム等からなる低硬度の弾性層を厚く設けることができ、広いニップ幅を確保することができる。
【0006】
さらに、特許文献2には、ベルト定着方式の定着装置において、加熱手段を面状発熱体として加熱部材と定着ベルトとの接触面積を確保し、加熱部材を定着ローラに近接配置した面状発熱ベルト定着方式の定着装置が開示されている。この面状発熱ベルト定着方式の定着装置では、加熱部材の曲率が定着ローラの曲率よりも大きいために定着ベルトとの接触面積が確保されると同時に低熱容量化が両立しており、加熱手段としての面状発熱体が定着ベルトを直接加熱することから、ハロゲンランプ等を用いて間接的に加熱ローラを加熱する方式に比べて熱応答速度も向上し、ウオームアップ時間の更なる短縮や更なる省エネ化が達成できる。
【0007】
特許文献3には、断面円弧状の曲面を備えたアルミニウム等の高熱伝導材料で構成された加熱パネルの裏面に、ポリイミド樹脂等からなる絶縁層の上にステンレスなどの高抵抗金属材料、或いはポリイミド樹脂等に銀を分散させた材料等で構成した発熱線で、定着ベルトの運動方向と直角方向で複数回折り返してパターン化した構成の面状の抵抗発熱体が配置された、直接加熱方式の定着装置が開示されている。なお、加熱パネル内側には加熱パネルの温度を検出する温度センサが配置されている。
【0008】
被加熱部材である定着ベルトは固定配置された加熱パネルと加圧パッドとの間に架設され、押圧部材である加圧ローラが定着ベルトを挟んで加圧パッドに向けて押圧されている。定着ベルトは、加圧ローラの回転により加熱パネルの表面を摺接しながら移動する間に熱が伝達され、定着ベルトは定着処理に適した温度に加熱される。
【0009】
トナー像が転写された記録媒体を、定着ベルトと加圧ローラとの間を通過させることで、加熱定着処理が行われる。なお、加圧パッドを加圧ローラに置き換えることもできる(特許文献3参照)。
【0010】
また、定着ベルトの内面に潤滑材を用いて、定着ベルトの走行安定性を得る方法は、特許文献4に記載されており、潤滑性効果だけでなく、熱伝導性効果もあることは類推できる。しかし、ベルトの長手方向の蛇行防止については効果が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−307496号公報
【特許文献2】特開2002−333788号公報
【特許文献3】特開2003−287970号公報
【特許文献4】特開2004−286929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、加熱部材が、面状発熱体として抵抗発熱体を用い、基材の上に電気絶縁層と抵抗発熱層を積層してなる面状発熱体であり、上記抵抗発熱層を上記基材に対して上記定着ベルト側に形成したベルト定着方式では、基材と電気絶縁層と抵抗発熱層の線膨張係数が異なるために剥離が生じ、発熱層が剥離し、安全上問題である。また、定着ローラの曲率よりも加熱部材の曲率が大きいため、定着ベルトが滑らかに接触に入らない、或いは滑らかに接触から離れないため、定着ベルトの回転ムラが生じ、さらには定着ベルトの寿命が短くなる。
【0013】
また前記した直接加熱方式の定着装置のように、加熱パネルの内側に抵抗発熱体を配置し、該抵抗発熱体を、定着ベルトの運動方向と直角方向で複数回折り返した帯状の抵抗発熱体とした構成では、定着ベルト全体にわたって発熱のムラが発生しない可能性があるが、抵抗発熱体は、SUSのような金属の薄板とポリイミド樹脂製の板を貼り付け、金属薄板側に折り返しパターンと端子を残し、これをエッチングしてパターンのある部分の金属だけを残すことによって得られる発熱体であり、これを加熱パネルの裏側に、例えば接着、または機械的に押圧することで配置すると、どうしても接触熱抵抗の不均一な部分が生じ、また熱膨張係数の違いにより、SUS薄板の剥離が生じるため、その部分が過熱して有機絶縁層から発煙することになり安全上の問題がある。
【0014】
一方、無機材料から構成されるセラミックヒーターを上記加熱パネル部に配置することも考えられるが、平板のセラミックヒーターからの熱を定着ベルトに効率よく伝えることは、伝熱部材の熱容量及び伝熱面積の点で難しい。
【0015】
この発明は、上記した課題を解決し、短時間でウオームアップを行うことが可能な安全で省エネ効率の良いベルト定着装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、記録媒体上に担持されているトナー像を記録媒体上に加熱加圧して定着する定着装置であって、
定着部材と、加熱部材と、前記定着部材及び前記加熱部材との間に張架された無端状定着ベルトと、前記定着ベルトを介して前記定着部材に対向する加圧部材と、を備え、
前記加熱部材は、略半円筒形状を有して、前記定着ベルトと接触して前記定着ベルトを加熱する加熱部には、絶縁層の厚み方向一表面に通電によって発熱する導電膜が製膜され、前記定着ベルトと摺動接する表面に、前記定着ベルトが移動する方向に対して直交又は傾斜角度を有して溝が形成されていることを特徴とする。
【0017】
このベルト定着装置によれば、加熱部材の外側表面に定着ベルトの移動方向に対して直行または傾斜角度を有して溝を形成することで、導電膜の膜厚バラツキによる温度バラツキを容易に均一化することが可能となる。
【0018】
本発明のベルト定着装置において、前記溝には高熱伝導性のグリスが充填されていることを特徴とする。
【0019】
また、このベルト定着装置によれば、溝に高伝熱性のグリスを充填することで、溝に沿って熱伝導拡散するため溝の温度は均一になり、定着ベルトの回転に伴い定着ベルとは長手方向に対してより均一の温度分布となる。
【0020】
本発明のベルト定着装置において、前記定着ベルトが移動する方向に対して直交又は傾斜角度を有して形成された前記溝は、前記定着ベルトの移動方向と直行する方向を長手とする前記加熱部の長手中央部で対照に形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、このベルト定着装置によれば、加熱部の長手中央部で対照になるよう溝を配置することで、定着ベルトは寄り速度が小さくなり、柔軟性が高く剥離性の良好な定着ベルトを使用することが可能となる。したがって高品質な画像が安定して得られ、しかも定着ベルトの寿命が長くなる。
【0022】
本発明のベルト定着装置において、前記加熱部材は、前記定着ベルトの移動方向と直行する方向を長手とする前記加熱部の長手両端部においてそれぞれ前記定着ベルトの移動方向に前記溝が形成されていることを特徴とする。
【0023】
また、このベルト定着装置によれば、高熱伝導グリスが加熱部の必要な領域よりも外側に漏れ出し定着ベルト表面(画像に接する面)を汚染しないようにできる。
【0024】
本発明のベルト定着装置において、前記加熱部材は、前記加熱部材の長手方向内側の前記定着ベルトの移動方向に対して直交または傾斜角度を持って形成された前記溝よりも前記定着ベルトの移動方向の前記溝は深く形成されていることを特徴とする。
【0025】
また、このベルト定着装置によれば、定着ベルトの回転移動に伴い長手方向内側から外側にグリスが移動するときに、外側の溝からグリスがオーバーフローしないようにできる。
【0026】
本発明のベルト定着装置において、通電により発熱する前記導電膜は、ITO、アルミニウム添加酸化亜鉛、ガリウム添加酸化亜鉛、フッ素添加酸化スズ、ニオブ添加二酸化チタンのいずれかから選ばれる材料を用いることを特徴とする。
【0027】
また、このベルト定着装置によれば、接触熱抵抗を抑制するためには発熱体が基材に密着して製膜されることが必要であり、そのために蒸着などにより製膜が可能な材料を用いている。さらに、透明な導電膜を形成することが可能である為、製造工程で製膜不良を短時間に検査除外することが可能となり、品質管理が容易となる。
【0028】
本発明のベルト定着装置において、前記加熱部材は、基材がガラスであることを特徴とする。
【0029】
また、このベルト定着装置によれば、加熱部材は、ITO膜との熱膨張係数が近く、加熱/冷却による導電膜の剥離を抑制し、寿命を長くすることが出来る。
【0030】
本発明のベルト定着装置において、前記導電膜は、幅狭の記録用紙に対応する第1の加熱領域、幅広の記録用紙に対応する第2の加熱領域を有し、前記導電膜に給電するための給電膜を有し、前記給電膜への給電により加熱領域を制御することを特徴とする。
【0031】
また、このベルト定着装置によれば、蒸着膜の製膜過程でのマスク、製膜後のエッチングをしなくても、電極の配置をパターン化することにより容易に蒸着膜の加熱領域を分割することができる。これにより記録用紙の大きさが変わっても用紙がない領域の過熱を防止でき、安全であると共に省エネを図れる。
【0032】
本発明は、前記定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0033】
以上詳細に説明したとおり、この発明では、略半円筒形状の加熱部材は高温耐熱性を確保した無機材料から構成され、発熱層は基材に製膜され、基材の表面には定着ベルトの移動方向に対して直交又は傾斜角度を持って配置された溝と、加熱部材の長手方向において該溝の外側に定着ベルトの移動方向と同じ方向の溝を形成しており、それらの溝に高伝熱性のグリスが充填されているものであるから、定着ベルトは回転ムラが無く、定着ベルト全体にわたり温度ムラが無く均一な温度分布となる為、省エネで高品質な画像を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の一形態である画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態である定着装置の構成を示す断面図である。
【図3】定着装置が有する加熱部材の構成を示す図である。
【図4】加熱部材の外側表面に形成した溝を示す図である。
【図5】加熱部材の第1例である面状発熱体の構成を示す断面図である。
【図6】通電によって発熱する導電膜と電極により形成される発熱領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明の複数の実施の形態について説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、読み取った原稿の画像データやネットワーク等を介して送信された画像データに基づいて記録紙に対して多色および単色の画像を形成する装置である。画像形成装置100は、露光ユニット10、感光体ドラム101(101a〜101d)、現像装置102(102a〜102d)、帯電ローラ103(103a〜103d)、クリーニングユニット104(104a〜104d)、中間転写ベルト11、一次転写ローラ13(13a〜13d)、二次転写ローラ14、定着装置15、用紙搬送路P1,P2,P3、給紙カセット16、手差し給紙トレイ17および排紙トレイ18を備えている。
【0037】
画像形成装置100は、ブラック(K)およびカラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色の各色相に対応した画像データを用いて、各色相に対応した画像形成部Pa〜Pdにおいて画像形成を行う。各画像形成部Pa〜Pdは、同様の構成であり、たとえば、ブラック(K)の画像形成部Paは、感光体ドラム101a、現像装置102a、帯電ローラ103a、転写ローラ13aおよびクリーニングユニット104a等から構成される。この画像形成部Pa〜Pdは、中間転写ベルト11の移動方向(副走査方向)に一列に配列されている。
【0038】
帯電ローラ103は、感光体ドラム101の表面を所定の電位に均一に帯電させる接触方式の帯電器である。帯電ローラ103に代えて、帯電ブラシを用いた接触方式の帯電器、または、帯電ワイヤを用いた非接触方式の帯電器を用いることもできる。
【0039】
露光ユニット10は、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー4、第1反射ミラー7、第2反射ミラー8等を備えており、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによって変調されたレーザビーム等の光ビームのそれぞれを感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに照射する。各感光体ドラム101a〜101dは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによる静電潜像を形成する。
【0040】
現像装置102は、静電潜像が形成された感光体ドラム101の表面に現像剤であるトナーを供給し、静電潜像をトナー像に現像する。現像装置102a〜102dのそれぞれは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相のトナーを収納しており、感光体ドラム101a〜101dのそれぞれに形成された各色相の静電潜像を、各色相のトナー像に顕像化する。クリーニングユニット104は、現像・画像転写後における感光体ドラム101上の表面に残留したトナーを除去・回収する。
【0041】
中間転写ベルト11は、感光体ドラム101の上方に配置されており、駆動ローラ11aと従動ローラ11bとの間に張架されてループ状の移動経路を形成している。中間転写ベルト11の外周面は、感光体ドラム101d、感光体ドラム101c、感光体ドラム101bおよび感光体ドラム101aにこの順に対向する。この中間転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム101a〜101dに対向する位置に、一次転写ローラ13a〜13dが配置されている。中間転写ベルト11が感光体ドラム101a〜101dに対向する位置のそれぞれが一次転写位置である。また、中間転写ベルト11は、厚さ100〜150μm程度のフィルムで形成されている。
【0042】
一次転写ローラ13a〜13dには、感光体ドラム101a〜101dの表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト11上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム101a〜101dに形成された各色相のトナー像は、中間転写ベルト11の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト11の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0043】
ただし、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の色相の一部のみの画像データが入力された場合には、4つの感光体ドラム101a〜101dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部の感光体101のみにおいて静電潜像およびトナー像の形成が行われる。たとえば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応した感光体ドラム101aのみにおいて静電潜像の形成およびトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト11の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。
【0044】
各一次転写ローラ13a〜13dは、直径8〜10mmのステンレスなどの金属を基材とする軸の表面を導電性の弾性材(たとえばEPDM、発泡ウレタン等)によって被覆して構成されており、導電性の弾性材によって中間転写ベルト11に均一に高電圧を印加する。
【0045】
各一次転写位置において中間転写ベルト11の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト11の回転によって、二次転写ローラ14との対向位置である二次転写位置に搬送される。二次転写ローラ14は、画像形成時において、内周面が駆動ローラ11aの周面に接触する中間転写ベルト11の外周面に所定のニップ圧で圧接されている。給紙カセット16または手差し給紙トレイ17から給紙された記録紙が、二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間を通過する際に、二次転写ローラ14にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト11の外周面から記録紙の表面にトナー像が転写される。
【0046】
なお、感光体ドラム101から中間転写ベルト11に付着したトナーのうち、記録紙上に転写されずに中間転写ベルト11上に残存したトナーは、次工程での混色を防止するために、転写クリーニングユニット12によって回収される。
【0047】
トナー像が転写された記録紙は、後述する本発明の定着装置15に導かれ、定着ローラ15aおよび加熱部材60の間に張架された定着ベルト64と、加圧ローラ15bとの間に形成される定着ニップ部を通過して加熱および加圧を受ける。これによって、トナー像が、記録紙の表面に堅牢に定着する。トナー像が定着した記録紙は、排紙ローラ18aによって排紙トレイ18上に排出される。
【0048】
また、画像形成装置100には、用紙カセット16に収納されている記録紙を、二次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間および定着装置15を経由して、排紙トレイ18に送るための略垂直方向に延びる用紙搬送路P1が設けられている。用紙搬送路P1には、用紙カセット16内の記録紙を一枚ずつ用紙搬送路P1内に繰り出すピックアップローラ16a、繰り出された記録紙を上方に向けて搬送する搬送ローラ16b、搬送されてきた記録紙を所定のタイミングで2次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間に導くレジストローラ19、記録紙を排紙トレイ18に排出する排紙ローラ18aが配置されている。
【0049】
また、画像形成装置100の内部には、手差し給紙トレイ17からレジストローラ19に至る間に、ピックアップローラ17aおよび搬送ローラ16bを配置した用紙搬送路P2が形成されている。さらに、排紙ローラ18aから用紙搬送路P1におけるレジストローラ19の上流側に至る間には、用紙搬送路P3が形成されている。
【0050】
排紙ローラ18aは、正逆両方向に回転自在にされており、記録紙の片面に画像を形成する片面画像形成時、および、記録紙の両面に画像を形成する両面画像形成における第2面画像形成時に正転方向に駆動されて記録紙を排紙トレイ18に排出する。一方、両面画像形成における第1面画像形成時には、排出ローラ18aは、用紙の後端が定着装置15を通過するまで正転方向に駆動された後、記録紙の後端部を挟持した状態で逆転方向に駆動されて記録紙を用紙搬送路P3内に導く。これによって、両面画像形成時に片面のみに画像が形成された記録紙は、表裏面および前後端を反転した状態で用紙搬送路P1に導かれる。
【0051】
レジストローラ19は、用紙カセット16または手差し給紙トレイ17から給紙され、または、用紙搬送路P3を経由して搬送された記録紙を、中間転写ベルト11の回転に同期したタイミングで2次転写ローラ14と中間転写ベルト11との間に導く。このため、レジストローラ19は、感光体ドラム101や中間転写ベルト11の動作開始時には回転を停止しており、中間転写ベルト11の回転に先立って給紙または搬送された記録紙は、前端をレジストローラ19に当接させた状態で用紙搬送路P1内における移動を停止する。この後、レジストローラ19は、2次転写ローラ14と中間転写ベルト11とが圧接する位置で、記録紙の前端部と中間転写ベルト11上に形成されたトナー像の前端部とが対向するタイミングで回転を開始する。
【0052】
なお、画像形成部Pa〜Pdの全てにおいて画像形成が行われるフルカラー画像形成時には、一次転写ローラ13a〜13dが中間転写ベルト11を感光体ドラム101a〜101dの全てに圧接させる。一方、画像形成部Paのみにおいて画像形成が行われるモノクロ画像形成時には、一次転写ローラ13aのみを中間転写ベルト11を感光体ドラム101aに圧接させる。
【0053】
図2は、本発明の第1実施形態である定着装置15の構成を示す断面図である。定着装置15は、定着ローラ15aと、加圧ローラ15bと、定着ベルト64と、加熱部材60とを含んで構成される。定着装置15においては、定着ベルト64が定着ローラ15aと加熱部材60との間に張架され、加圧ローラ15bが定着ベルト64を介して定着ローラ15aに対向するように配置されている。そして、定着ローラ15aと加熱部材60とは、定着ローラ15aの軸線方向において、略平行となるように配置されている。そのため、定着ローラ15aと加熱部材60との間に張架される定着ベルト64が摺動するとき、蛇行するのを防止して、定着ベルト64の耐久性を高く維持することができる。
【0054】
定着装置15は、加熱部材60が定着ベルト64と接触して定着ベルト64を加熱し、定着ベルト64と加圧ローラ15bとで形成する定着ニップ部15cを、所定の定着速度(本実施の形態では220mm/sec)および複写速度で記録媒体である記録紙82が通過したとき、記録紙82上に担持されている未定着のトナー像81を記録紙82上に加熱加圧して定着する装置である。
【0055】
なお、未定着のトナー像81は、たとえば、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナーおよびキャリア)、磁性現像剤(磁性トナー)などの現像剤(トナー)によって形成される。また、定着速度とは所謂プロセス速度であり、複写速度とは1分あたりのコピー枚数のことである。また、記録紙82が定着ニップ部15cを通過するときには、定着ベルト64は、記録紙82のトナー像担持面とは反対側の面に当接するようになっている。
【0056】
定着ローラ15aは、定着ベルト64を介して加圧ローラ15bに圧接することで定着ニップ部15cを形成すると同時に、定着ベルト64を介して加圧ローラ15bに対向しかつ圧接し、回転軸線まわりに回転自在に設けられている。加圧ローラ15bは、定着ローラ15aの回転(回転方向Y1)に従動して回転方向Y2に回転する。定着ローラ15aは、直径が30mmで、その内側から順に芯金、弾性層が形成された2層構造からなり、芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適している。なお、本実施の形態では、定着ローラ15aが定着ベルト64を介して加圧ローラ15bに圧接するときの力は、216N程度である。
【0057】
加圧ローラ15bは、図示しない駆動モーター(駆動手段)により回転軸線まわりに回転方向Y2に回転駆動することによって、定着ベルト64を搬送する。加圧ローラ15bは、その内側から順に芯金、弾性層、離型層が形成された3層構造からなっている。
【0058】
芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適しており、離型層にはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が適している。また、加圧ローラ15bの内部には、加圧ローラ15bを加熱するヒータランプ66が配置されている。後述する制御部が電源回路からヒータランプ66に電力を供給(通電)させることによって、ヒータランプ66が発光し、ヒータランプ66から赤外線が放射される。これによって、加圧ローラ15bの内周面が赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ15b全体が加熱される。
【0059】
定着ベルト64は、加熱部材60によって所定の温度に加熱され、定着ニップ部15cを通過する未定着トナー像81および記録紙82を加熱する。定着ベルト64は、直径50mmの無端状のベルトで、加熱部材60と定着ローラ15aによって懸架され、定着ローラ15aに所定の角度で巻きかかっている。定着ベルト64は、定着ローラ15aの回転時には、定着ローラ15aに従動して回転方向Y1に回転するようになっている。
【0060】
定着ベルト64は、ポリイミド等の耐熱性樹脂あるいはステンレスやニッケル等の金属材料からなる中空円筒状の基材の表面に、弾性層として耐熱性および弾性に優れたエラストマー材料(たとえばシリコンゴム)が形成され、さらにその表面に離型層として耐熱性および離型性に優れた合成樹脂材料(たとえばPFAやPTFE等のフッ素樹脂)が形成された3層構造となっている。また、基材のポリイミドにフッ素樹脂を内添してもよい。これによって、加熱部材60との摺動負荷を低減することができる。
【0061】
また、定着装置15においては、温度検出手段として、定着ベルト64の周面には発熱体側サーミスタ63、加圧ローラ15bの周面には加圧ローラ側サーミスタ65が配設されており、それぞれの表面温度を検出するようになっている。発熱体側サーミスタ63によって検出された定着ベルト64の表面温度に基づいて、後述する導電膜に対する通電が制御される。本実施の形態における発熱体側サーミスタ63は、非接触式の温度検出手段であり、赤外線検知型の温度センサである。接触式の温度検出手段を定着ベルト64に接触して配置する構成では、定着ベルト64と接触する界面において、接触式温度検出手段が定着ベルト64の表面離型層を摩耗させる場合がある。このようにして定着ベルト64の表面離型層が損傷、劣化した場合には、画像にその影響を及ぼし、劣悪な画像となる。また、加圧ローラ側サーミスタ65によって検出された加圧ローラ15bの表面温度に基づいて、ヒータランプ66に対する通電が制御される。
【0062】
図3は、定着装置15が有する加熱部材60の構成を示す図である。図4は、加熱部材の表面の溝の形成状態を示す展開図である。加熱部材60は、定着ベルト64に接触して、定着ベルト64を所定の温度に加熱するための部材である。加熱部材60は、基材62と、後述する導電膜、電極75を含んで構成される。
【0063】
基材62は、中空のロール形状であり、略下半分が切断された略半円筒状の断面形状となっている。略半円筒の内側表面には後述する導電膜が製膜されて、導電膜で発生する熱を定着ベルト64に伝達するための部分(加熱部20)である。そのため、基材62は、高耐熱性の剛性を有する材料から形成する必要がある。基材62を構成する材料としては、アルミニウムなどの金属、ガラスを挙げることができる。
【0064】
ベルト定着装置15においては、ベルト64を加熱するために基材62の絶縁層表面に通電により発熱する導電膜が形成された加熱部材60において、加熱部材60から定着ベルト64へ高効率に伝熱させるためには伝熱面積を広く取ることが望ましい。従って熱容量を考慮すると肉厚の薄い略半円筒形状の加熱部材が好ましい。
【0065】
また、定着ベルト64と接触する部分となる基材62の加熱部20には、略半円筒の内側表面には通電により発熱する導電膜が製膜されており、定着ベルト64と摺動する面には、定着ベルト64が移動する方向に対して直交又は傾斜角度を有して溝71が形成されていることが好ましい。
【0066】
加熱部材60の加熱効率を上げるための構成としては、加熱部材表面に通電により発熱する導電膜が直接製膜形成されていることが伝熱ロスおよび耐久性から好ましい。
【0067】
略半円筒加熱部材60の外表面又は内表面の曲面に導電膜を製膜させる方法は、導電膜材料により選択することが望ましく、公知の方法である蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、CVD法などを使用できる。しかし、曲面に製膜形成した面状発熱体は、曲面への製膜であることから膜厚にバラツキが生じやすく、導電膜の抵抗値が変わるため発熱量にバラツキが生じ、その結果、ベルト表面の温度バラツキが生じて、画像にムラが発生することが新たに判明した。そこで、導電膜の膜厚を一定にする為、マスク又はエッチングによりパターン化することが考えられるが、略半円筒形状の曲面への製膜におけるパターン化は非常に複雑であり実現性は困難である。そこで、図4(a)(b)に示すように、加熱部材60の外側表面に定着ベルト64の移動方向に対して直行または傾斜角度を有して溝71を形成し、その溝71に高伝熱性のグリスを充填することで、導電膜の膜厚バラツキによる温度バラツキを容易に均一化することが可能となることがわかった。
【0068】
溝71に高伝熱性のグリスを充填することで、溝71に沿って熱伝導拡散するため溝の温度は均一になり、定着ベルト64の回転に伴い定着ベルトとは長手方向に対してより均一の温度分布となる。溝71の深さは、グリスの保持性から50μmよりも深いことが好ましい。これよりも浅いとグリスが枯渇しやすく温度分布が生じ。またベルト摺動性が問題となる。
【0069】
図4に示すように、定着ベルト64が移動する方向に対して直交又は傾斜角度を有して形成された溝71は、定着ベルトの移動方向と直行する方向を長手とする該加熱部の長手中央部で対照に形成されていることが好ましい。
【0070】
定着ベルト64の移動方向に対して傾斜を有した一方向の螺旋状の溝71であると、該溝71より一方向にベルトが寄り続け、定着ベルト端部が破壊される。そこで該加熱部20の長手中央部で対照になるよう溝を配置することで、定着ベルト64は寄り速度が小さくなり、柔軟性が高く剥離性の良好な定着ベルト64を使用することが可能となる。したがって高品質な画像が安定して得られ、しかも定着ベルト64の寿命が長くなる。
【0071】
加熱部材60は、定着ベルト64の移動方向と直行する方向を長手とする該加熱部20の長手両端部においてそれぞれ定着ベルト64の移動方向に溝72が形成されていることが好ましい。こうして、高熱伝導グリスが加熱部20の必要な領域よりも外側に漏れ出し定着ベルト表面(画像に接する面)を汚染しないようにすることができる。
【0072】
さらに、加熱部材60は、加熱部材60の長手方向内側の定着ベルト64の移動方向に対して直交または傾斜角度を持って形成された溝71よりも定着ベルト64の移動方向の溝は深く形成されていることが好ましい。こうして定着ベルト64の回転移動に伴い長手方向内側から外側にグリスが移動するときに、外側の溝からグリスがオーバーフローしないようにすることができる。
【0073】
なお、加熱部材表面の溝71,72の形成は、機械的形成、写真製版、レーザ彫刻により形成できる。また溝の断面形状は、V字、U字、凹字のどれであっても良いが、均一な形状であることが好ましい。溝のピッチは、温度バラツキ抑制、ベルト摺動性、形成性から、適宜選択するのが好ましい。
【0074】
加熱部20には定着ベルト64との間の摩擦力が低減可能なトップコート層73を形成してもよい。トップコート層73を構成する材料としては、PTFE樹脂とPFA樹脂の少なくともいずれか1つの材料、または摺動性を有するガラス層を挙げることができる。これによって、加熱部材60と定着ベルト64との間の摩擦力を低減することができ、定着ベルト64が摩耗するのを防止して定着ベルト64の高い耐久性を確保することができるとともに、定着ベルト64を駆動する定着ローラ15aおよび加圧ローラ15bへの負荷も低減することができ各ローラ15a,15bの耐久性も確保し、低電力で駆動することが可能となる。
【0075】
ジャーナル部60bは、加熱部20の両端部に形成される部分であり、加熱部材60自身が定着ベルト64との摩擦力で回転しないように、定着装置15のサイドフレーム68に固定されている。このように、加熱部材60自身は回転しないように構成されているので、導電膜が発熱するときに導電膜に高電流が供給されても、安全性を充分確保することができる。
【0076】
さらに、ジャーナル部60bには、定着ベルト64が回転摺動するときに、蛇行するのを防止する蛇行防止用カラー67が定着ベルト64の端部に接触するように形成されている。なお、蛇行防止用カラー67としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなるカラーを用いることができるが、これに限定されるものではなく、加熱部材60と独立で回転できる構成のものであってもよい。このように、蛇行防止用カラー67が独自に設置されているので、定着ベルト64が蛇行防止用カラー67に当接しても負荷がかかることなく摺動せず、定着ベルト64がわれてしまうのを防止して、定着ベルト64の耐久性を高く維持することができる。
【0077】
次に、加熱部材60が有する導電膜について説明する。図5は、加熱部材60の第1例である面状発熱体の構成を示す断面図である。また、図6は、通電によって発熱する導電膜と電極により形成される発熱領域を示す図である。
【0078】
面状発熱体は、基材の厚み方向一表面に、発熱領域となる導電膜が面状に形成されている。さらに、面状発熱体20は、複数の発熱領域から構成されており、複数の分割された発熱領域を有する。本実施の形態では、面状発熱体20は、電気絶縁性を有する基材の長手方向に対して両端部の発熱領域と、中央部の発熱領域との2つに分割された発熱領域が形成されるように、電気絶縁性基材の長手方向中央部に発熱領域、両端部にそれぞれ発熱領域が形成されている。
【0079】
各発熱領域は、電圧が印加されて通電することによって発熱する導電膜が、全体として一定の形状の面を構成して形成される。ここで、導電膜は、ITO、アルミニウム添加酸化亜鉛、ガリウム添加酸化亜鉛、フッ素添加酸化スズ、ニオブ添加二酸化チタンのいずれかから選ばれる材料を用いることが好ましい。接触熱抵抗を抑制するためには発熱体が基材に密着して製膜されることが必要であり、そのためには蒸着などにより製膜が可能な材料を用いる必要がある。さらに、これらの材料は透明な導電膜を形成することが可能である為、製造工程で製膜不良を短時間に検査除外することが可能となり、品質管理が容易となる。
【0080】
基材62は、高耐熱性で高剛性を有するものとして、アルミ、鉄、ガラス、アルミナなどのセラミックス材料や、ポリイミド樹脂などの耐熱性ポリマー材料などによって形成される基材が考えられるが、通電によって発熱する導電膜を蒸着などにより製膜するための基材としてはガラスが好ましい。ITOなどの導電膜との熱膨張係数が近く、加熱/冷却による導電膜の剥離を抑制し、寿命を長くすることが出来る。
【0081】
加熱部材60に形成される発熱領域は、幅狭の記録用紙に対応する第1の加熱領域、幅広の記録用紙に対応する第2加熱領域を有し、前記導電膜に給電するための給電膜77を有し、給電膜77への給電により加熱領域を制御することが好ましい。蒸着膜の製膜過程でのマスク、製膜後のエッチングをしなくても、電極の配置をパターン化することにより容易に蒸着膜の加熱領域を分割することができる。これにより記録用紙の大きさが変わっても用紙がない領域の過熱を防止でき、安全であると共に省エネを図れる。
【0082】
幅広の記録用紙の場合、給電端子aと給電端子dに通電することにより記録用紙全体を加熱し、幅狭の記録用紙の場合、給電端子bと給電端子cに通電することにより、記録用紙が通過しない領域を余分に加熱する必要がなく、安全かつ省エネとなるよう、発熱領域が区別された状態で通電可能となるように、制御部91によって通電制御される。
【0083】
電極および給電端子材料としては、体積抵抗率が5.9×10−8Ωcm程度の亜鉛、体積抵抗率が2.05×10−8Ωcm程度の金、体積抵抗率が1.55×10−8Ωcm程度の銅、体積抵抗率が1.47×10−8Ωcm程度の銀などを挙げることができるが、その中でも体積抵抗率が小さく低コストである銀または銅が好ましい。
【0084】
以上のように、加熱部においては、加熱部の長手方向における発熱量を、通電状態を切替えることによって調整することができ、加熱部材表面における温度分布が所望の温度分布となるように調整することができる。
【0085】
ここで、制御部91は、本体の制御手段によって制御されて、発熱体側サーミスタ63により検出された温度から、供給電力を制御するように構成されている。
なお、給電は定着ベルト64の回転もしくは定着ローラ15aの回転と連動しており、回転していないときには給電されないよう安全性を確保されている。
【0086】
[実施例]
【0087】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
実施例1において使用した定着装置は、前述した定着装置である。実施例1における詳細条件は、以下のようにした。
【0089】
<定着ローラ>
直径が30mmで、心金が直径15mmのステンレス鋼、弾性層が厚さ7.5mmのシリコンスポンジであるものを使用した。
【0090】
<加圧ローラ>
直径が30mmでシリコンソリッドゴムからなり、離型層には厚さ30μmのPFAチューブ、内部に定格電力400Wのヒータランプを配置したものを使用した。
【0091】
<定着ベルト>
ベルト基材に厚さ70μmのポリイミド、弾性層に厚さ150μmのシリコンゴム、離型層に厚さ30μmのPFAチューブを使用し、巻きかけ角度θを185°とした。
【0092】
<蛇行防止用カラー>
内径28mm、直径32mm、幅7mmのポリフェニレンサルファイド(PPS)カラーを、定着ベルト端部と接するように配置した。
【0093】
<加熱部材>
基材:加熱部およびジャーナル部の直径が28mmであり、肉厚1mmのガラス製パイプで、周方向において40%カットされた円弧形状を有するものを用いた。なお、外表面には、図4(b)に示したパターンに深さ0.3mmの溝をレーザ加工により形成した。
【0094】
導電膜上の絶縁層:厚み30μm、ポリイミドからなる絶縁層
導電膜:定着ローラの軸線方向に対応して延びる方向である長手方向の長さは330mmとし、上記基材の内側表面に、導電膜としてITOを、長手方向中央部の領域の厚みが100nmとなるように蒸着法により形成した。なお、発熱層の長手方向の長さが330mmに対して、両端部がそれぞれ30mmに設定されているので、発熱層の長手方向中央部の長さは、270mmとなる。この発熱層の長手方向中央部の長さは、記録紙の最大幅よりも小さく設定されている。
電極:厚み10μmになるよう、図6(b)に示した配置に銀ペーストを塗布後、焼成して形成した。
【0095】
<サーミスタ>
発熱体側サーミスタとして非接触式、加圧ローラ側サーミスタとして接触式のものを使用した。
【0096】
<定着条件>
定着ニップ部長さ:7mm(定着ニップ部の記録紙搬送方向の長さ)
定着ニップ部幅:325mm(定着ローラの軸線方向に対応する長さ)
定着速度:220mm/sec
加熱ニップ部長さ:44mm(定着ベルトと加熱部材との記録紙搬送方向の接触長さ)
加熱ニップ部幅:330mm(定着ローラの軸線方向に対応する長さ)
記録紙の最大幅:300mm(定着ローラの軸線方向に対応する長さ)
【0097】
実施例1の面状発熱体(加熱部20)から発生する熱は、基材を介して定着ベルトに伝わる。基材表面に加熱部材の長手方向中央部で対称になるよう溝が形成され、その溝に高熱伝導性のグリスが充填されているので、定着ベルト表面の温度分布は、長手方向で175℃プラスマイナス5℃以内と均一になり、高品質の画像を得ることができた。
【0098】
また、異なるサイズの記録紙の連続印刷時に、通電領域を制御することにより、これ以上の過上昇は抑制できた。したがって、安全性を確保し定着部材の寿命を維持するだけでなく、省エネ化した状態で記録紙上への画像形成が可能であった。
【0099】
(比較例1)
基材の外側表面に、溝を形成していない加熱部材とした以外は、実施例1と同様にした。導電膜への通電を調整したが、定着ベルトにおける定着温度とのバランスが調整できず、長手方向の温度分布は175℃プラスマイナス10℃となり、記録紙上のトナー像の定着性が不均一なものであった。そのため、高品質の画像形成が確保できなかった。
【0100】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
15 定着装置
15a 定着ローラ
15b 加圧ローラ
15c 定着ニップ部
20 加熱部
60 加熱部材
60b ジャーナル部
62 基材
63 発熱体側サーミスタ
64 定着ベルト
65 加圧ローラ側サーミスタ
67 蛇行防止用カラー
68 サイドフレーム
71,72 溝
73 トップコート層
75 電極
77 給電膜
82 記録紙
91 制御部
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に担持されているトナー像を記録媒体上に加熱加圧して定着する定着装置であって、
定着部材と、
加熱部材と、
前記定着部材及び前記加熱部材との間に張架された無端状定着ベルトと、
前記定着ベルトを介して前記定着部材に対向する加圧部材と、
を備え、
前記加熱部材は、
略半円筒形状を有して、前記定着ベルトと接触して前記定着ベルトを加熱する加熱部には、絶縁層の厚み方向一表面に通電によって発熱する導電膜が製膜され、前記定着ベルトと摺動接する表面に、前記定着ベルトが移動する方向に対して直交又は傾斜角度を有して溝が形成されていることを特徴とするベルト定着装置。
【請求項2】
前記溝には高熱伝導性のグリスが充填されていることを特徴とする請求項1に記載のベルト定着装置。
【請求項3】
前記定着ベルトが移動する方向に対して直交又は傾斜角度を有して形成された前記溝は、前記定着ベルトの移動方向と直行する方向を長手とする前記加熱部の長手中央部で対照に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト定着装置。
【請求項4】
前記加熱部材は、前記定着ベルトの移動方向と直行する方向を長手とする前記加熱部の長手両端部においてそれぞれ前記定着ベルトの移動方向に前記溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のベルト定着装置。
【請求項5】
前記加熱部材は、前記加熱部材の長手方向内側の前記定着ベルトの移動方向に対して直交または傾斜角度を持って形成された前記溝よりも前記定着ベルトの移動方向の前記溝は深く形成されていることを特徴とする請求項4に記載のベルト定着装置。
【請求項6】
通電により発熱する前記導電膜は、ITO、アルミニウム添加酸化亜鉛、ガリウム添加酸化亜鉛、フッ素添加酸化スズ、ニオブ添加二酸化チタンのいずれかから選ばれる材料を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のベルト定着装置。
【請求項7】
前記加熱部材は、基材がガラスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のベルト定着装置。
【請求項8】
前記導電膜は、幅狭の記録用紙に対応する第1の加熱領域、幅広の記録用紙に対応する第2の加熱領域を有し、前記導電膜に給電するための給電膜を有し、前記給電膜への給電により加熱領域を制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のベルト定着装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83683(P2013−83683A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221583(P2011−221583)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】