説明

ベルト式無段変速機の組立構造

【課題】駆動軸及び従動軸の軸方向のガタを解消し、両プーリの軸方向位置を正確に合致させることができる、組み付け性に優れた無段変速機の組立構造を提供する。
【解決手段】駆動軸10の他方側を軸支する軸受16とトランスミッションケース5cとの間に軸方向ガタ詰め用の第1のシム35を配置し、従動軸20の一方側を軸支する軸受25とリヤカバー5aとの間に駆動プーリと従動プーリのベルト中心を揃えるための第2のシム36を配置し、従動軸20の他方側を軸支する軸受26とトランスミッションケース5cとの間に軸方向ガタ詰め用の第3のシム37を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベルト式無段変速機の組立構造、特に駆動軸及び従動軸をハウジングに軸受を介して支持する場合に、その軸方向ガタを無くすための組立構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ベルト式無段変速機では、エンジンから入力された動力がトルクコンバータを介して入力軸に伝達され、入力軸から駆動プーリ、Vベルト、従動プーリを介してデファレンシャル装置に伝達され、出力軸が駆動される。駆動プーリを支持する駆動軸、及び従動プーリを支持する従動軸はハウジングに軸受を介して回転自在に支持されている。
【0003】
特許文献1には、トランスミッションケースとリヤカバーとの間に駆動プーリと従動プーリとを有する無段変速装置を収容したベルト式無段変速機が開示されている。駆動プーリの駆動軸の一方側と他方側とは軸受を介してリヤカバーとトランスミッションケースとにより軸支され、従動プーリの従動軸の一方側と他方側とは軸受を介してリヤカバーとトランスミッションケースとにより軸支されている。従動軸の他方側はトランスミッションを貫通するように延長され、当該延長部に出力ギヤが設けられている。駆動軸と従動軸の軸方向ガタを解消するために、駆動軸の一端部及び従動軸の一端部を支持する軸受がリヤカバーに対してベアリングリテーナを用いて固定されている。ベアリングリテーナは、リヤカバーの外側から挿入したボルトによって締付固定される。
【0004】
特許文献1では、駆動軸と従動軸の軸方向ガタを無くすことはできるが、トランスミッションケースやリヤカバーの寸法ばらつき、駆動プーリ及び従動プーリの寸法ばらつきによって、駆動プーリに巻き掛けられるVベルトの中心位置と従動プーリに巻きかけられるVベルトの中心位置との軸方向位置にずれが生じ、Vベルトに傾きが生じ、Vベルトの信頼性を低下させるという問題がある。また、前進時と後進時とで駆動軸及び従動軸に作用するスラスト荷重は逆転するが、そのスラスト荷重をリヤカバーのみによって受けるため、リヤカバーに相応の強度が必要になり、肉厚を大きくするなど重量増加を招く欠点がある。さらに、上述のように駆動軸及び従動軸をリヤカバーに固定するため、リヤカバーの外側からボルトを挿入し、このボルトをベアリングリテーナのねじ孔に螺合させなければならず、作業性が悪い。また、ベアリングリテーナ、ボルトの他に、ボルト挿入孔のオイル漏れ防止用のOリングなど部品点数が多くなるため、作業工数が増大するとともにコスト高になるという問題がある。
【0005】
特許文献2にも、特許文献1と同様に、駆動軸と従動軸の一端部を支持する軸受をリヤカバーに対してベアリングリテーナを用いて固定した構造の無段変速機が開示されている。この場合は、駆動軸の一端部を支持する軸受とリヤカバーとの間にシムを配置し、このシムの厚みを可変できるようにして、駆動プーリと従動プーリの軸方向位置を調整している。しかし、この場合も駆動軸と従動軸とをベアリングリテーナを用いてリヤカバーに一体的に組み付ける構造であるため、ベアリングリテーナの取り付け作業性が悪く、部品点数が多くなるとともに、リヤカバーの肉厚を大きくするなど重量増加を招く欠点がある。
【特許文献1】特開2005−299804号公報
【特許文献2】特開2005−249162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、駆動軸及び従動軸の軸方向のガタを解消し、両プーリの軸方向位置を正確に合致させることができる、組み付け性に優れた無段変速機の組立構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、トランスミッションケースとリヤカバーの間に駆動プーリと従動プーリとを有する無段変速装置を収容し、駆動プーリの駆動軸の一方側と他方側とを軸受を介してリヤカバーとトランスミッションケースとにより軸支し、従動プーリの従動軸の一方側と他方側とを軸受を介してリヤカバーとトランスミッションケースとにより軸支し、従動軸の他方側をトランスミッションケースを貫通するように延長して、当該延長部に出力ギヤを設けた構造のベルト式無段変速機において、上記駆動軸の一方側を軸支する軸受とリヤカバーとの間、又は駆動軸の他方側を軸支する軸受とトランスミッションケースとの間に、駆動軸の軸方向ガタ詰め用の第1のシムを配置し、上記従動軸の一方側を軸支する軸受とリヤカバーとの間に、駆動プーリと従動プーリのベルト中心を揃えるための第2のシムを配置し、上記従動軸の他方側を軸支する軸受とトランスミッションケースとの間に、従動軸の軸方向ガタ詰め用の第3のシムを配置したことを特徴とするベルト式無段変速機の組立構造を提供する。
【0008】
トランスミッションケースとリヤカバーとの間に駆動プーリと従動プーリとを有する無段変速装置を支持する場合、トランスミッションケース及びリヤカバーの寸法ばらつき、駆動プーリ及び従動プーリ(軸受を含む)の寸法ばらつきに対して、駆動プーリ及び従動プーリの軸方向ガタを解消するとともに、駆動プーリのベルト中心と従動プーリのベルト中心とを揃える必要がある。本発明ではまず、駆動軸の一方側を軸支する軸受とリヤカバーとの間、又は駆動軸の他方側を軸支する軸受とトランスミッションケースとの間に、駆動軸の軸方向ガタ詰め用の第1のシムを配置する。これによって、駆動軸の軸方向ガタが解消される。次に、従動軸の一方側を軸支する軸受とリヤカバーとの間に、駆動プーリと従動プーリのベルト中心を揃えるための第2のシムを配置する。これによって両プーリ間に巻きかけられたVベルトの傾きを解消でき、Vベルトの信頼性を向上させることができる。最後に、従動軸の他方側を軸支する軸受とトランスミッションケースとの間に、従動軸の軸方向ガタ詰め用の第3のシムを配置することで、従動軸の軸方向ガタが解消される。
【0009】
本発明では、駆動軸及び従動軸の両端部を軸受を介してトランスミッションケースとリヤカバーとに嵌合することで、組み立てることができる。つまり、従来のようにリヤカバーに対して駆動軸と従動軸とを軸方向に拘束して組み付ける必要がないので、ベアリングリテーナ及び締結用ボルトが不要になり、部品点数が少なく、構造を簡素化できるとともに、組み付け作業が容易になる。また、駆動軸及び従動軸に作用する一方向のスラスト荷重はトランスミッションケースで受け、逆方向のスラスト荷重はリヤカバーで受けるので、リヤカバーに必要な強度を低減でき、リヤカバーを薄肉・軽量化できる。
【0010】
第1〜第3のシムの選定方法として、次のように行うのがよい。まず、駆動軸の両端部に一対の軸受を装着し、トランスミッションケースとリヤカバーとの駆動軸の軸受支持部間寸法を測定するとともに、一対の軸受間の寸法を測定し、両寸法の差から第1のシムを選定する。次に、従動軸の両端部に一対の軸受を装着し、当該従動軸を軸受を介してリヤカバーに装着した時の従動プーリと駆動プーリとの軸方向ずれを測定し、このずれから第2のシムを選定する。最後に、従動軸の一対の軸受間の寸法と第2のシムの厚みとの和を測定すると共に、トランスミッションケースとリヤカバーとの従動軸の軸受支持部間寸法を測定し、両寸法の差から第3のシムを選定する。このようにして3個のシムを選定すれば、個々の製品の部品ばらつきに応じて駆動プーリ及び従動プーリの軸方向位置を精度よく調整することができるので、軸方向のガタやVベルトの傾きのない信頼性の高い無段変速機を組み立てることができる。シムの選定は、各部の寸法を測定することにより自動化できるので、作業上の負担増加にならない。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、3種類のシムを使用することによって、駆動軸及び従動軸の軸方向のガタを解消するとともに、駆動プーリと従動プーリのベルト中心を揃えることができ、Vベルトの耐久性を向上させ、信頼性の高い無段変速機を構成できる。また、従来のようにリヤカバーに駆動プーリと従動プーリとを一体に組み付ける必要がないので、組付作業性に優れ、部品点数も少なく低コストな無段変速機の組立構造を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1,図2は本発明にかかるベルト式無段変速機の一例を示す。この無段変速機はFF横置き式の自動車用変速機であり、大略、エンジン出力軸1によりトルクコンバータ2を介して駆動される入力軸3、入力軸3の回転を正逆切り替えて駆動軸10に伝達する前後進切替装置4、駆動プーリ11と従動プーリ21と両プーリ間に巻き掛けられたVベルト15とからなる無段変速装置9、従動軸20の動力を出力軸32に伝達するデファレンシャル装置30などで構成されている。入力軸3と駆動軸10とは同一軸線上に配置され、従動軸20とデファレンシャル装置30の出力軸32とが入力軸3に対して平行でかつ非同軸に配置されている。したがって、この無段変速機は全体として3軸構成とされている。ここで用いられるVベルト15は、一対の無端状張力帯と、これら張力帯に支持された多数のブロックとで構成された公知の金属ベルトである。
【0014】
無段変速機を構成する各部品はハウジング5の中に収容されている。ここで、ハウジング5は、後側(反エンジン側)のリヤカバー5aと、前側(エンジン側)のコンバータハウジング5bと、中間のトランスミッションケース5cとの3部品で構成されている。トルクコンバータ2はコンバータハウジング5b内に収容され、無段変速装置9はリヤカバー5aとトランスミッションケース5cとの間に収容され、前後進切替装置4、出力ギヤ27及びデファレンシャル装置30はコンバータハウジング5bとトランスミッションケース5cとの間に収容されている。トルクコンバータ2と前後進切替装置4との間には、オイルポンプ6が配置されている。このオイルポンプ6はトルクコンバータ2のポンプインペラ2aにより駆動される。トルクコンバータ2のタービンランナ2bは入力軸3に連結されている。
【0015】
前後進切替装置4は、遊星歯車機構40と前進用ブレーキ50と後進用クラッチ60とで構成され、遊星歯車機構40のサンギヤ41が入力部材である入力軸3に連結され、リングギヤ42が出力部材である駆動軸10に連結されている。遊星歯車機構40はシングルピニオン方式であり、前進用ブレーキ50はピニオンギヤ43を支えるキャリア44とトランスミッションケース5cとの間に設けられ、後進用クラッチ60はキャリア44とサンギヤ41との間に設けられている。後進用クラッチ60を解放して前進用ブレーキ50を締結すると、入力軸3の回転が逆転され、かつ減速されて駆動軸10へ伝えられる。そして、無段変速装置9を経て出力軸32がエンジン回転方向と同方向に回転するため、前進走行状態となる。逆に、前進用ブレーキ50を解放して後進用クラッチ60を締結すると、遊星歯車機構40のキャリア44とサンギヤ41とが一体に回転するので、入力軸3と駆動軸10とが直結される。そして、無段変速装置9を経て出力軸32がエンジン回転方向と逆方向に回転するため、後進走行状態となる。
【0016】
無段変速装置9の駆動プーリ11は、駆動軸10上に一体に形成された固定シーブ11aと、駆動軸10上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ11bとを備えている。可動シーブ11bの外周部には、背面側へ延びるピストン部が一体に形成され、このピストン部の外周部が駆動軸10に固定されたシリンダ12の内周部に摺接している。可動シーブ11bとシリンダ12との間に油圧室13が形成され、この油圧室13への油圧を制御することにより、変速制御が実施される。
【0017】
従動プーリ21は、従動軸20上に一体に形成された固定シーブ21aと、従動軸20上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ21bとを備えている。可動シーブ21bの外周部には背面側へ延びるシリンダ部が一体に形成され、このシリンダ部の内周部に従動軸20に固定されたピストン22が摺接している。可動シーブ21bとピストン22との間に油圧室23が形成され、この油圧室23の油圧を制御することにより、トルク伝達に必要なベルト推力が与えられる。なお、油圧室23には初期推力を与えるバイアススプリング24が配置されている。
【0018】
従動軸20の他端部はエンジン側に向かって延び、この端部に出力ギヤ27が固定されている。出力ギヤ27はデファレンシャル装置30のリングギヤ31に噛み合っており、デファレンシャル装置30から左右に延びる出力軸32に動力が伝達され、車輪が駆動される。
【0019】
ここで、駆動軸10及び従動軸20の支持構造について、図3を参照しながら詳しく説明する。図3に示すように、駆動軸10の後側(反エンジン側)端部にはシリンダ12が圧入嵌合され、続いてボールベアリング14の内側レース14aが圧入嵌合され、駆動軸10の軸端にロックナット17を締結することにより、シリンダ12と内側レース14aとを駆動軸10の段差部10aに押しつけて固定している。これにより、駆動軸10に可動シーブ11b、シリンダ12、ボールベアリング14が一体的に組み付けられる。ボールベアリング14の外側レース14bはリヤカバー5aのベアリング支持部5a1 に嵌合されている。ボールベアリング14は、従来のようにリヤカバー5aに対してベアリングリテーナ等を用いて固定する必要はなく、外側レース14bをベアリング支持部5a1 の底面に当接するまで嵌合させるだけでよい。
【0020】
駆動軸10の前側(エンジン側)端部には、ボールベアリング16の内側レース16aが圧入嵌合され、外側レース16bがトランスミッションケース5cのベアリング支持部5c1 に嵌合されて支持されている。このとき、ベアリング支持部5c1 の底面と外側レース16bの側面との隙間に第1シム35が挿入され、駆動軸10の軸方向ガタが解消される。このように、駆動軸10の両端部は、それぞれボールベアリング14,16を介してリヤカバー5aとトランスミッションケース5cとによって回転自在に支持されている。なお、駆動軸10の軸方向ガタを解消するための第1シム35は、駆動軸10の前側のボールベアリング16の端面に配置する場合に限らず、後側のボールベアリング14の端面に配置してもよい。
【0021】
従動軸20の後側(反エンジン側)端部には、ボールベアリング25の内側レース25aが圧入嵌合され、外側レース25bがリヤカバー5aのベアリング支持部5a2 に嵌合されている。このとき、ベアリング支持部5a2 の底面と外側レース25bの側面との隙間に、駆動プーリ11と従動プーリ21のベルト中心を揃えるための第2シム36が挿入されている。なお、ボールベアリング25もリヤカバー5aに対して固定する必要がなく、単に外側レース25bをベアリング支持部5a2 に嵌合させるだけでよい。
【0022】
従動軸20の前側(エンジン側)にはバイアススプリング24を介してピストン22が挿入され、ピストン22は従動軸20に圧入嵌合される。そして、ピストン22の背後の従動軸20上にボールベアリング26の内側レース26aが圧入嵌合され、続いて出力ギヤ27が従動軸20にスプライン嵌合され、従動軸20の軸端にロックナット28を締結することにより、出力ギヤ27、ボールベアリング26の内側レース26aを介してピストン22を軸方向に押圧し、ピストン22を従動軸20の段差部20aに押し当てて固定している。これによって、従動軸20に可動シーブ21b、バイアススプリング24、ピストン22、ボールベアリング26及び出力ギヤ27を一体的に組み付けることができる。トランスミッションケース5cのベアリング支持部5c2 にボールベアリング26の外側レース26bを嵌合することにより、従動軸20の前側端部を回転自在に支持できる。このとき、ベアリング支持部5c2 の底面と外側レース26bとの隙間に第3シム37が挿入され、従動軸20の軸方向ガタが解消される。ベアリング支持部5c2 の底面には開口孔5c3 が形成されており、この開口孔5c3 の内径は出力ギヤ27の外径より大きいので、出力ギヤ27は開口孔5c3 を貫通してトランスミッションケース5cとコンバータハウジング5bとの間の空間に挿入される。
【0023】
上記のように、従動軸20の両端部は、それぞれボールベアリング25,26を介してリヤカバー5aとトランスミッションケース5cとによって回転自在に支持されている。出力ギヤ27とデファレンシャル装置30のリングギヤ31はヘリカルギヤであるため、従動軸20にはスラスト荷重が作用し、そのスラスト荷重は前進時と後進時とで逆転する。従動軸20の両側に設けられるボールベアリング25,26がリヤカバー5a,トランスミッションケース5cに対してそれぞれ軸方向に固定されていないので、スラスト荷重が逆転すると、その荷重をリヤカバー5aとトランスミッションケース5cとで交互に分担できる。そのため、リヤカバー5aに過大な負荷がかからず、リヤカバー5aを薄肉・軽量化できる。また、いずれか一方のボールベアリングのみにスラスト荷重が集中することもない。
【0024】
次に、第1〜第3のシム35,36,37の具体的な選定方法を図4,図5を参照して説明する。
(1)第1シム35の選定
まず、トランスミッションケース5cの開口面からベアリング支持部5c1 までの深さGを測定し、リヤカバー5aの開口面からベアリング支持部5a1 までの深さFを測定し、GとFとの和(F+G)を計算する。次に、駆動プーリ11の両側のボールベアリング14,16間の寸法Hを測定し、(F+G)−Hを計算する。この値(F+G)−Hが第1シム35の厚みKに相当するので、第1シム35を選定できる。
(2)第2シム36の選定
次に、駆動プーリ11の寸法Bを測定する。この寸法Bは、固定シーブ11aの基準径位置とボールベアリング14の端面との間の距離である。次に、従動プーリ21の固定シーブ21aの基準径位置とボールベアリング25の端面との距離C+Dを測定する。次に、リヤカバー5aのベアリング支持部5a1 と5a2 との深さの差Eを測定し、B−E−(C+D)を計算する。この値B−E−(C+D)は、駆動プーリ11と従動プーリ21の固定シーブの基準径位置における間隔Aに相当するものであり、この間隔AがVベルト15の幅寸法に対応するように第2シム36を選定する。ここで、第2シム36の厚みをIとする。
(3)第3シム37の選定
トランスミッションケース5cの開口面からベアリング支持部5c2 までの深さPを測定し、既に測定した値F,Eを用いてP+(F−E)を計算する。次に、従動プーリ21の両側のボールベアリング25,26間の寸法Nを測定し、このNと第2シムの厚みIとの和(N+I)を計算する。最後に、Q=P+(F−E)−N−Iを計算することで、厚みQの第3シム37を選定できる。
【0025】
上記のように、各部の寸法を計測することによって最適なシムを選定したので、リヤカバー5aやトランスミッションケース5cの寸法ばらつき、駆動プーリ11及び従動プーリ21の寸法ばらつきがあっても、駆動軸10及び従動軸20のガタを解消できるとともに、両プーリのベルト中心位置を揃えることができ、Vベルト15の信頼性を高めることができる。各部の寸法は、リヤカバー5a、トランスミッションケース5c、アッセンブリ化された駆動プーリ11及び従動プーリ21から自動的に計測できるので、シムの選定も自動化することができる。そのため、作業上の負担にならない。
【0026】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、出力ギヤ27がデファレンシャル装置30のリングギヤ31に噛み合う例を示したが、これは3軸構成の場合であり、4軸構成の場合には、出力ギヤ27とデファレンシャル装置30のリングギヤ31との間にリダクションギヤを介在させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明にかかる無段変速機の一例の展開断面図である。
【図2】図1に示す無段変速機のスケルトン図である。
【図3】無段変速装置の構造を示す拡大断面図である。
【図4】第1〜第3シムの選定方法を説明するための無段変速装置の寸法図である。
【図5】第1〜第3シムの選定方法を説明するためのリヤカバー、駆動プーリ及び従動プーリの寸法図である。
【符号の説明】
【0028】
5 ハウジング
5a リヤカバー
5a1 ,5a2 ベアリング支持部
5c トランスミッションケース
5c1 ,5c2 ベアリング支持部
9 無段変速装置
10 駆動軸
11 駆動プーリ
14,16 ボールベアリング(軸受)
15 Vベルト
17 ロックナット
20 従動軸
21 従動プーリ
25,26 ボールベアリング(軸受)
27 出力ギヤ
28 ロックナット
35 第1シム
36 第2シム
37 第3シム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションケースとリヤカバーの間に駆動プーリと従動プーリとを有する無段変速装置を収容し、駆動プーリの駆動軸の一方側と他方側とを軸受を介してリヤカバーとトランスミッションケースとにより軸支し、従動プーリの従動軸の一方側と他方側とを軸受を介してリヤカバーとトランスミッションケースとにより軸支し、従動軸の他方側をトランスミッションケースを貫通するように延長して、当該延長部に出力ギヤを設けた構造のベルト式無段変速機において、
上記駆動軸の一方側を軸支する軸受とリヤカバーとの間、又は駆動軸の他方側を軸支する軸受とトランスミッションケースとの間に、駆動軸の軸方向ガタ詰め用の第1のシムを配置し、
上記従動軸の一方側を軸支する軸受とリヤカバーとの間に、駆動プーリと従動プーリのベルト中心を揃えるための第2のシムを配置し、
上記従動軸の他方側を軸支する軸受とトランスミッションケースとの間に、従動軸の軸方向ガタ詰め用の第3のシムを配置したことを特徴とするベルト式無段変速機の組立構造。
【請求項2】
上記駆動軸の両端部に一対の軸受を装着し、上記トランスミッションケースとリヤカバーとの上記駆動軸の軸受支持部間寸法を測定するとともに、上記一対の軸受間の寸法を測定し、両寸法の差から上記第1のシムを選定し、
上記従動軸の両端部に一対の軸受を装着し、当該従動軸を軸受を介してリヤカバーに装着した時の従動プーリと駆動プーリとの軸方向ずれを測定し、このずれから上記第2のシムを選定し、
上記従動軸の一対の軸受間の寸法と第2のシムの厚みとの和を測定すると共に、上記トランスミッションケースとリヤカバーとの上記従動軸の軸受支持部間寸法を測定し、両寸法の差から上記第3のシムを選定してなることを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機の組立構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−222177(P2009−222177A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69179(P2008−69179)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】