説明

ベルト研磨装置

【課題】研磨面において研磨ムラを生じさせることなく、一様で意匠性の高い研磨面を形成することのできるベルト研磨装置を提供する。
【解決手段】このベルト研磨装置PSは、研磨ベルト9に加えられる加圧力の大きさを測定する加圧力測定手段17と、加圧力の大きさを調整する加圧シリンダ4とを有しており、加圧力測定手段17により測定された加圧力が一定となるように制御しながら研磨を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環する研磨ベルトを押し当てることによって被研磨物を研磨する、ベルト研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等の外板において、外側面に対して塗装を施さず、金属の表面を露出させた構造とすることが行われている。例えば外板をステンレス鋼製とした場合、ステンレスの光沢面を露出させることにより、意匠性の高い鉄道車両とすることができる。
【0003】
ところで、鉄道車両等の外板は全体の面積が大きいため、複数枚の外板を溶接により繋ぎ合せて作成される。溶接を行うと外板の表面には溶接痕が残ってしまうが、金属の表面を露出させた構造においては、塗装によって溶接痕を隠すことができない。このため、溶接痕が外板の外観を損ねないように、外板の表面のうち少なくとも溶接痕が存在する部分に対して研磨を行うことで、溶接痕を除去、もしくは目立たなくする必要がある。
【0004】
下記特許文献1には、外板の表面のうち、レーザー溶接を行った際に溶接線が形成される面に対して研磨加工を施すことで、溶接線を目立たなくする方法が記載されている。尚、研磨加工が施された研磨面においては光沢が損なわれるが、光沢面と研磨面とのコントラストをうまく利用した意匠とすることにより、溶接痕を除去、もしくは目立たなくしながら、外板の意匠性を高めることができる。
【0005】
このように、鉄道車両等の外板においては、金属の光沢面だけでなく、研磨面も外板の意匠の一部を構成することとなる。このため、研磨面における研磨傷の分布(研磨傷の向き、太さ、深さ、及び密度等)を一様とし、研磨ムラが生じて外観を損ねないように研磨を行う必要がある。
【0006】
一様な研磨面とするためには、手作業による研磨ではなく、ベルト研磨装置を用いて自動研磨を行うことが望ましい。ベルト研磨装置とは、複数のローラーによって支持された研磨ベルトを、被研磨物に対して押し当てながら循環させることにより、被研磨物を研磨する装置である。ベルト研磨装置では、研磨ベルトを循環させながら研磨が行われるため、研磨傷の向きを揃えることができる。また、研磨ベルトと被研磨物との相対位置を変化させながら研磨することにより、広範囲を自動的に研磨することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−274914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなベルト研磨装置では、手作業による場合と比較して、研磨ムラが著しく低減されるため、意匠性の高い研磨面を形成することができる。しかし、従来のベルト研磨装置によっても、研磨面に生じる研磨ムラを視認できない程度まで無くすことはできなかった。これは、外板の厚さのばらつきや外板の反り等により、研磨が行われる外板の表面が厳密には平坦となっていないことに起因する。
【0009】
例えば、外板の厚い部分を研磨する際は、ベルト研磨装置の研磨ベルトは高い圧力で外板に押しつけられる。一方、薄い部分を研磨する際は、研磨ベルトは弱い圧力で外板に押しつけられる。このように、研磨ベルトが外板に押しつけられる圧力が変動してしまう結果、研磨面には視認できる程度の研磨ムラが生じていた。
【0010】
本発明はかかる事情及び知見に鑑みてなされたものであり、その目的は、研磨面において研磨ムラを生じさせることなく、一様で意匠性の高い研磨面を形成することのできるベルト研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るベルト研磨装置は、複数のローラーによって支持された研磨ベルトを、被研磨物に対して押し当てながら循環させることにより被研磨物を研磨するベルト研磨装置において、前記研磨ベルトに駆動力を与えて、所定の循環速度で循環させる駆動ローラーと、前記研磨ベルトに加圧力を加えて、被研磨物に押し当てる加圧ローラーと、前記加圧ローラーと被研磨物との相対位置を、所定の送り速度で連続的に変化させる送り手段と、前記加圧力の大きさを調整する加圧力調整手段と、前記加圧力の大きさを測定する加圧力測定手段と、前記ベルト研磨装置の動作を制御する制御手段と、を有しており、前記制御手段は、前記加圧力測定手段により測定された前記加圧力が一定となるように、前記加圧力調整手段を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るベルト研磨装置では、研磨ベルトを被研磨物に押し当てるために加えられる加圧力の大きさを、加圧力測定手段によって測定しながら研磨を行う。更に、加圧力の大きさを調整する加圧力調整手段を有しており、測定される加圧力が一定となるように、加圧力の大きさが制御されている。このため、被研磨物の表面形状に起因して加圧力が変動するような場合であっても、加圧力調整手段によって加圧力の変動は抑制され、ほぼ一定の加圧力で研磨を行うことができる。従って、研磨面に研磨ムラが生じることが抑制され、一様な研磨面を形成することができる。
【0013】
また本発明に係るベルト研磨装置では、前記研磨ベルトの振動を検知する振動検知手段をさらに有することも好ましい。
【0014】
ベルト研磨装置においては、研磨ベルトの張力が所定の大きさとなるよう設定されている。しかし、研磨ベルトやローラーの変形によって、張力は経時的に変化してしまう。張力が適切な大きさを外れてしまうと、高速で循環する研磨ベルトの振動が大きくなり、研磨面に研磨ムラを生じさせることとなる。
【0015】
この好ましい態様では、研磨ベルトの振動を検知する振動検知手段を有している。このため、張力が変化したことにより生じる研磨ベルトの振動を、振動が微小な段階において検知することができる。これにより、研磨面に研磨ムラを生じさせるほどの振動が発生することを事前に予測し、使用者に報知してメンテナンスを促す等の対応が可能となる。
【0016】
また本発明に係るベルト研磨装置では、前記振動検知手段が検知した前記振動に基づいて、共振周波数を継続的に算出する周波数取得手段をさらに有し、前記制御手段は、前記共振周波数が所定以上変化した場合には、使用者に対する報知やベルト研磨装置の非常停止等の異常対応制御を行うことも好ましい。
【0017】
この好ましい態様では、研磨ベルトの振動の変化を、共振周波数という数値の変化として検知することができる。このため、研磨面に研磨ムラを生じさせるほどの振動が発生することを確実に予測し、使用者に対する報知やベルト研磨装置の非常停止等、異常対応制御を行うことが可能となる。
【0018】
また本発明に係るベルト研磨装置では、前記循環速度を検知する循環速度検知手段と、前記送り速度を検知する送り速度検知手段と、をさらに有することも好ましい。
【0019】
ベルト研磨装置においては、研磨ムラを生じさせないために、循環している研磨ベルトと被研磨物との相対速度を一定にすることが望ましい。この相対速度は、研磨ベルトの循環速度と、加圧ローラーと被研磨物との相対速度(送り速度)と、によって定まるものである。
【0020】
この好ましい態様では、循環速度検知手段によって研磨ベルトの循環速度が検知され、送り速度検知手段によって送り速度が検知される。従って、これらを検知しながら研磨を行うことにより、研磨ベルトと被研磨物との相対速度が変化した場合には、相対速度を元の一定値に戻す等という対応が可能となる。
【0021】
また本発明に係るベルト研磨装置では、前記制御手段は、前記循環速度及び前記送り速度のうち一方の速度が低下した場合には、他方の速度を増加させることも好ましい。
【0022】
例えば、研磨ベルトの循環速度が低下したことが検知された場合は、低下した研磨ベルトの循環速度を増加させる(元に戻す)ように制御することで、研磨ベルトと被研磨物との相対速度を一定に保つことができる。しかし、駆動ローラーに異常が生じている場合など、低下した循環速度を増加させて元に戻すことができない場合もある。
【0023】
この好ましい態様では、循環速度及び送り速度のうち一方の速度が低下した場合には、他方の速度を増加させるように制御が行われる。このため、循環速度及び送り速度の一方が低下し、元の速度に戻せない場合であっても、他方の速度を増加させることにより、研磨ベルトと被研磨物との相対速度を元の一定値に戻すことが可能となる。
【0024】
また本発明に係るベルト研磨装置では、前記加圧ローラーが被研磨物に向かう方向に所定量以上進行しないように、研磨位置制限手段を有することも好ましい。
【0025】
この好ましい態様では、加圧ローラーが被研磨物に向かう方向に所定量以上進行しないよう、研磨位置制限手段を有している。このため、送り手段によって加圧ローラーと被研磨物との相対位置が変化し、加圧ローラーが被研磨物の末端を過ぎた場合であっても、研磨ベルトが、被研磨物の下方にある定盤を削ってしまうようなことが防止される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、研磨面において研磨ムラを生じさせることなく、一様で意匠性の高い研磨面を形成することのできるベルト研磨装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るベルト研磨装置を模式的に示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るベルト研磨装置の振動を、FFTスペクトルにより示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0029】
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係るベルト研磨装置の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るベルト研磨装置PSを模式的に示す側面図である。図1に示すように、ベルト研磨装置PSは、研磨部1と、送り移動部2と、送り固定部3と、加圧シリンダ4と、制御手段5とを備えている。
【0030】
研磨部1の構造について説明する。研磨部1は、被研磨物である外板100に直接触れて研磨を行う部分であって、ベース20と、加圧ローラー6と、駆動ローラー7と、張力調整ローラー8と、研磨ベルト9とを備える。研磨ベルト9は、外側の面に研磨材が塗布された帯状の無端のベルトであって、3つのローラー(加圧ローラー6、駆動ローラー7、張力調整ローラー8)によって、所定の張力を保った状態で支持されている。
【0031】
研磨ベルト9は、駆動ローラー7により駆動力を与えられ、加圧ローラー6、駆動ローラー7、張力調整ローラー8に沿って高速で循環する。駆動ローラー7は、ベース20の上に設置されたベルト駆動用モーター10によって、駆動ベルト11を介して駆動されている。
【0032】
加圧ローラー6は、高速で循環している研磨ベルト9に加圧力を加え、外板100に押し当てるためのローラーであって、ベース20に対して回動自在に支持されている。尚、かかる加圧力は加圧シリンダ4を発生源とするものであるが、具体的な加圧方法については後に説明する。
【0033】
ベース20のほぼ中央には、上方に突出する支柱21が設けられている。支柱21の上部には、ハンドル13の回転に伴って上下に移動可能な調整板12が設けられている。張力調整ローラー8は、調整板12に対し、回動自在に支持されているローラーである。ハンドル13を回転させると、それに伴って調整板12は張力調整ローラー8と共に上下に移動する。このため、張力調整ローラー8を介して、駆動ベルト11に加える張力の大きさを調整することができる。
【0034】
研磨部1は、送り移動部2に対し固定されている支持軸14により、回動自在に支持されている。支持軸14を中心に、研磨部1の全体が送り移動部2に対し回転することによって、加圧ローラー6と外板100との上下方向の相対距離が変動することとなる。ベース20には、支持軸14の近傍において回転角度検知手段18が設けられている。回転角度検知手段18はロータリーエンコーダであって、支持軸14に対する研磨部1の回転角度を検知する。
【0035】
次に、送り移動部2の構造について説明する。送り移動部2は、送り固定部3に対して水平方向に移動することにより、外板100における研磨位置(研磨ベルト9が押し当てられる部分)を一定速度で変化させるためのものである。送り移動部2は、図示しない送り駆動装置を有しているため、送り固定部3に対して所定の速度で移動することができる。
【0036】
送り移動部2は、前述のように支持軸14を介して研磨部1を支持している。このため、送り移動部2が送り固定部3に対して水平方向に移動すると、研磨部1もそれに伴い移動する。研磨部1は回動自在に支持されているため、外板100の被研磨面100aが平坦でない場合や水平でない場合であっても、加圧ローラー6は、常に研磨ベルト9を被研磨面100aに対し押し当てた状態を維持することができる。
【0037】
送り移動部2には、棒状のシリンダ保持部材16が固定されており、その先端には、加圧シリンダ4の一端が回動自在に固定されている。
【0038】
次に、加圧シリンダ4について説明する。加圧シリンダ4は電動式のシリンダであって、一端がシリンダ保持部材16に対し回動自在に固定されており、他端が、ロードセルである加圧力測定手段17を介してベース20に対し固定されている。このため、送り移動部2が水平方向に移動すると、研磨部1と共に、加圧シリンダ4も水平方向に移動する。
【0039】
加圧シリンダ4が伸長すると、図1においては研磨部1が反時計回りに回転し、加圧ローラー6は研磨ベルト9を介して外板100に押し当てられる。すなわち、外板100に対する加圧力は増加する。逆に、加圧シリンダ4が収縮すると、図1においては研磨部1が時計回りに回転し、外板100に対する加圧力は減少する。すなわち、加圧シリンダ4は、加圧力調整手段として機能するものである。
【0040】
その他の構成について説明する。送り固定部3は、研磨部1及び送り移動部2を、下方から支える構造物である。送り固定部3の上面には水平なガイドレール15が設けられており、かかるガイドレール15に沿って送り移動部2が移動する。
【0041】
制御手段5は、ベルト研磨装置PSの種々の動作を制御するコンピュータであって、例えば、送り駆動装置の動作、ベルト駆動用モーター10の回転、加圧シリンダ4による加圧動作等が制御される。また、加圧力測定手段17が検知した加圧力、回転角度検知手段18が検知した研磨部1の回転角度等、ベルト研磨装置PSの各部に配置されたセンサからの情報が、制御手段5に入力されている。このため、制御手段5は、これらの情報に基づいてベルト研磨装置PSの動作を制御する。
【0042】
ベルト研磨装置PSによる研磨の詳細について説明する。図1に示したように、被研磨物である外板100が、その被研磨面100aを上方に向けて、定盤110の上に設置される。被研磨面100aのうち、研磨を開始する位置が、加圧ローラー6の直下で研磨ベルト9に触れた状態となるように設置される。
【0043】
続いて、制御手段5によって、ベルト駆動用モーター10の駆動が開始され、同時に、加圧シリンダ4に対する加圧力の制御、及び、送り駆動装置による送り移動部2の移動が開始される。被研磨面100aに対して、研磨ベルト9が押し当てられた状態で循環するため、被研磨面100aのうち研磨ベルト9に触れた部分が研磨される。その後、送り移動部2を一定の速度で移動させながら研磨を行い、予め設定された研磨の末端位置まで加圧ローラー6が到達すると、その時点で制御手段5は研磨を終了する。
【0044】
研磨を行っている間、加圧シリンダ4によって加えられる加圧力の大きさは、加圧力測定手段17によって継続的に測定されている。これにより、制御手段5は、外板100に対して実際に加えられている加圧力の大きさを常に把握している。制御手段5は、この加圧力の大きさが一定となるように、加圧シリンダ4を制御する。このため、外板100の表面形状に起因して加圧力が変動するような場合であっても、加圧シリンダ4に対する制御によって加圧力の変動は抑制され、ほぼ一定の加圧力で研磨が行われる。
【0045】
ベルト研磨装置PSは、駆動ローラー7の回転速度を検知する回転速度計(図示しない)を有している。このため、制御手段5は、研磨を行っている間における駆動ローラー7の回転速度、すなわち、研磨ベルト9の循環速度を把握し、所定の循環速度となるようにベルト駆動用モーター10の回転を制御している。
【0046】
また、ベルト研磨装置PSは、送り移動部2の送り速度を検知する送り速度計(図示しない)も有している。このため、制御手段5は、研磨を行っている間における送り移動部2の送り速度(移動速度)を把握し、所定の送り速度となるように送り駆動装置を制御している。従って、研磨ベルト9と被研磨面100aとの相対速度は、一定に保たれている。
【0047】
研磨ベルト9の循環速度、及び、送り移動部2の送り速度のうち一方が低下し、偏差が所定量を超えた場合、制御手段5は、他方の速度を増加させ、研磨ベルト9と被研磨面100aとの相対速度が元の一定値に戻るように制御する。このように制御することで、ベルト駆動用モーター10、もしくは送り駆動装置の一方に異常が生じた場合であっても、研磨ベルト9と被研磨面100aとの相対速度が一定に保たれる。
【0048】
ベース20のうち加圧ローラー6の近傍には、振動検知手段として加速度センサ19が設けられている。加速度センサ19は、研磨を行っている間における加圧ローラー6近傍の振動を、加速度として継続的に取得し、制御手段5に伝達する。制御手段5は、加速度センサ19が検知した加速度の時間変化に対してFFT処理を行い、共振周波数を算出する。
【0049】
図2には、かかるFFT処理によって得られるFFTスペクトルの例を、グラフにより示した。図2(a)は、正常時におけるFFTスペクトルの様子を示している。FFTスペクトルにおいては、最もスペクトル強度が強い周波数を求めることにより、共振周波数Faが算出される。一方、図2(b)は、研磨ベルト9の張力が低下してしまった場合(異常時)におけるFFTスペクトルの様子を示している。研磨ベルト9の張力が低下したことにより、共振周波数はFaからFbに変化したことがわかる。
【0050】
制御手段5は、研磨を行っている間、加速度センサ19が検知した加速度に基づいて、常に共振周波数の算出を行っている。そして、共振周波数が正常な値(Fa)から所定量以上変化した場合には、ベルト研磨装置PSの非常停止を行う。尚、「所定量」とは、研磨ムラを生じさせる程ではない小さな振動が生じた場合を想定し、その場合における共振周波数の変化量として設定されるものである。
【0051】
また、制御手段5は、研磨を行っている間、回転角度検知手段18によって検知された研磨部1の回転角度を常に把握している。研磨部1の回転角度が所定値を超えた場合(図1において、反時計回りに所定以上回転した場合)、制御手段5は、加圧シリンダ4による加圧力を低下させる。このような制御を行うことで、加圧ローラー6が外板100に向かう方向に所定以上進行することが防止される。
【0052】
尚、送り移動部2に対する研磨部1の回転可能な範囲を、ガイドローラー等を設けることによって物理的に制限してもよい。このような方法によっても、加圧ローラー6が外板100に向かう方向に所定以上進行することが防止される。
【0053】
上述したように本実施形態に係るベルト研磨装置PSは、研磨ベルト9に駆動力を与えて、所定の循環速度で循環させる駆動ローラー7と、研磨ベルト9に加圧力を加えて、外板100に押し当てる加圧ローラー6と、加圧ローラー6と外板100との相対位置を、所定の送り速度で連続的に変化させる送り手段(送り移動部2、ガイドレール15、送り駆動装置)と、加圧力の大きさを調整する加圧シリンダ4と、加圧力の大きさを測定する加圧力測定手段17と、ベルト研磨装置PSの動作を制御する制御手段5と、を有しており、制御手段5は、加圧力測定手段17により測定された加圧力が一定となるように、加圧シリンダ4を制御する。
【0054】
このため、被研磨面100aの形状に起因して加圧力が変動するような場合であっても、加圧シリンダ4によって加圧力の変動は抑制され、ほぼ一定の加圧力で研磨を行うことができる。従って、被研磨面100aに研磨ムラが生じることが抑制され、一様な研磨面を形成することができる。
【0055】
さらに本実施形態では、研磨ベルト9の振動を検知する加速度センサ19を有している。
【0056】
ベルト研磨装置PSにおいては、研磨ベルト9の張力が所定の大きさとなるよう、ハンドル13によって調整される。しかし、研磨ベルト9やローラー(加圧ローラー6、駆動ローラー7、張力調整ローラー8)の変形によって、張力は経時的に変化してしまう。張力が適切な大きさを外れてしまうと、高速で循環する研磨ベルト9の振動が大きくなり、被研磨面100aに研磨ムラを生じさせることとなる。
【0057】
本実施形態では、加速度センサ19によって、張力が変化したことにより生じる研磨ベルト9の振動を、振動が微小な段階において検知することができる。これにより、被研磨面100aに研磨ムラを生じさせるほどの振動が発生することを事前に予測し、使用者に対し報知してメンテナンスを促す等の対応が可能となる。
【0058】
さらに本実施形態では、加速度センサ19が検知した振動(加速度)に基づいて、制御手段5は共振周波数を継続的に算出する。制御手段5は、共振周波数が所定以上変化した場合には、異常対応制御としてベルト研磨装置PSの非常停止を行う。
【0059】
本実施形態では、研磨ベルト9の振動の変化を、共振周波数という数値の変化として検知することができる。このため、被研磨面100aに研磨ムラを生じさせるほどの振動が発生することを確実に予測し、ベルト研磨装置PSの非常停止を行うことができる。
【0060】
さらに本実施形態では、駆動ローラー7の回転速度を検知する回転速度計を有しており、これにより研磨ベルト9の循環速度を検知する。また、送り速度を検知する送り速度計を有する。
【0061】
ベルト研磨装置PSにおいては、研磨ムラを生じさせないために、循環している研磨ベルト9と外板100との相対速度を一定にすることが望ましい。この相対速度は、研磨ベルト9の循環速度と、加圧ローラー6と外板100との相対速度(送り速度)と、によって定まるものである。
【0062】
本実施形態では、回転速度計によって研磨ベルト9の循環速度が検知され、送り速度計によって送り速度が検知される。従って、これらを検知しながら研磨を行うことにより、研磨ベルト9と外板100との相対速度が変化した場合には、相対速度を元の一定値に戻す等という対応を行っている。
【0063】
具体的には、制御手段5は、循環速度及び送り速度のうち一方の速度が低下した場合には、他方の速度を増加させている。このため、循環速度及び送り速度の一方が低下し、元の速度に戻せない場合であっても、他方の速度を増加させることにより、研磨ベルト9と外板100との相対速度を元の一定値に戻すことが可能となっている。
【0064】
さらに本実施形態では、加圧ローラー6が外板100に向かう方向に所定量以上進行しないよう、研磨位置制限手段(回転角度検知手段18、加圧シリンダ4、及び制御手段5)を有している。このため、送り駆動装置によって加圧ローラー6と外板100との相対位置が変化し、加圧ローラー6が外板100の末端を過ぎた場合であっても、研磨ベルト9が、定盤110を削ってしまうようなことが防止される。
【0065】
なお、本発明に係る研磨方法により研磨することが可能な外板100としては、ステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、及び軟鋼等からなるものが挙げられる。
【0066】
また、本実施形態においては、研磨ベルト9の張力をハンドル13によって調整可能な例を示したが、研磨ベルト9の張力をリニアアクチュエータによる自動制御によって調整可能としてもよい。
【0067】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0068】
1:研磨部
2:送り移動部
3:送り固定部
4:加圧シリンダ
5:制御手段
6:加圧ローラー
7:駆動ローラー
8:張力調整ローラー
9:研磨ベルト
10:ベルト駆動用モーター
11:駆動ベルト
12:調整板
13:ハンドル
14:支持軸
15:ガイドレール
16:シリンダ保持部材
17:加圧力測定手段
18:回転角度検知手段
19:加速度センサ
20:ベース
21:支柱
100:外板
100a:被研磨面
110:定磐
PS:ベルト研磨装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラーによって支持された研磨ベルトを、被研磨物に対して押し当てながら循環させることにより被研磨物を研磨するベルト研磨装置において、
前記研磨ベルトに駆動力を与えて、所定の循環速度で循環させる駆動ローラーと、
前記研磨ベルトに加圧力を加えて、被研磨物に押し当てる加圧ローラーと、
前記加圧ローラーと被研磨物との相対位置を、所定の送り速度で連続的に変化させる送り手段と、
前記加圧力の大きさを調整する加圧力調整手段と、
前記加圧力の大きさを測定する加圧力測定手段と、
前記ベルト研磨装置の動作を制御する制御手段と、を有しており、
前記制御手段は、前記加圧力測定手段により測定された前記加圧力が一定となるように、前記加圧力調整手段を制御することを特徴とするベルト研磨装置。
【請求項2】
前記研磨ベルトの振動を検知する振動検知手段をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載のベルト研磨装置。
【請求項3】
前記振動検知手段が検知した前記振動に基づいて、共振周波数を継続的に算出する周波数取得手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記共振周波数が所定以上変化した場合には、異常対応制御を行うことを特徴とする、請求項2に記載のベルト研磨装置。
【請求項4】
前記循環速度を検知する循環速度検知手段と、前記送り速度を検知する送り速度検知手段と、をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載のベルト研磨装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記循環速度及び前記送り速度のうち一方の速度が低下した場合には、他方の速度を増加させることを特徴とする、請求項4に記載のベルト研磨装置。
【請求項6】
前記加圧ローラーが被研磨物に向かう方向に所定量以上進行しないように、研磨位置制限手段を有することを特徴とする、請求項1に記載のベルト研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−59825(P2013−59825A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199706(P2011−199706)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(712004783)株式会社総合車両製作所 (40)
【Fターム(参考)】