説明

ベルト部材からなる成形品の製造装置及び製造方法

【課題】ベルト部材を成形ドラムに貼り付ける際に、ベルト部材の貼付開始位置及び幅の調整を自動的にかつ最適に行う。
【解決手段】ベルト部材を成形ドラムに貼り付けて成形品を製造する装置であって、ベルト部材を回転する成形ドラム12に貼り付けるベルト部材の貼付サーバ20と、貼付サーバ20によるベルト部材の貼付開始位置を測定するベルト形状測定センサと、測定されたベルト部材の貼付開始位置と予め定めた貼付開始基準位置とのズレ量に基づき補正量を求め、その補正量に基づき前記ズレ量を無くすように貼付サーバを移動して調整を行う。前記補正量は、緩やかな調整行うため、前記ズレ量に比重を付けて得た値と直前の調整時における補正量とを加算した値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト部材からなる成形品の製造装置及び製造方法に関し、とくに、例えばタイヤなどのゴム製品の製造装置において、タイヤ一本分のベルト部材を成形ドラムに貼り付ける際に、ベルト部材の貼り付け開始位置及びベルト部材の幅(貼付幅)の補正を自動的に行うベルト部材からなる成形品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ構成部材などのベルト部材を成形ドラムに貼り付けて成形品を製造する場合、ベルトの貼り付け開始位置及び成形ドラムヘの貼り付け幅を設定する。しかし、一旦設定しても、時間経過と共に変化するさまざまな要因により、ベルト部材の貼付開始位置が目標値からズレたり、或いはベルト部材を成形ドラムに貼り付けたときの幅が基準寸法からズレることが起こり得る。
そのような事態が発生すると、ベルト部材の貼り付け異常となり、装置が頻繁に停止したり或いは不良品が発生してスクラップが出たりするなどの問題が生じる。また、ベルト部材の成形ドラムヘの貼付開始位置がばらつくと、製品タイヤのユニフォーミティのばらつきが発生する原因になる。
【0003】
そのため、ベルト部材の貼付開始位置を、設定された位置からのズレ(オフセンター)量に合わせて成形ドラムの軸線に沿って移動させたり、或いはベルト部材を切断する際に、ベルト部材の送り量を調整し、ベルト部材のタイヤ幅方向の長さを調整することにより、成形ドラム上に貼り付けるベルト幅を調整することが行われる。
【0004】
この調整を行う場合、従来は、例えば、ベルト幅測定結果或いは貼付開始位置でのベルトセンター位置測定結果と、ベルト幅基準値或いは貼付開始基準位置を基に、その装置固有のパラメータ(ベルト部材補正量)を算出し、その後、人手で補正量を入力して、ベルト貼付サーバもしくはベルト搬送装置を自動で移動して、前記ズレに対する調整を行っている。
しかし、補正量の入力などは煩雑であり、そのように人手による作業が加わると、生産性が低下すると共に入力ミスなどの問題が起こり得る。
【0005】
なお、成形ドラムに巻き取って形成した環状部材の端位置又は中央位置をセンサで測定し、その検査結果を次工程で動作制御に反映させるものとして、センサの測定結果からベルト部材の偏り量及び偏り向きを算出し、その算出結果により前記環状部材を把持する搬送装置と成形ドラムとの係合位置を修正するラジアルタイヤの成形装置が知られている(特許文献1参照)。
しかし、この発明は、制御対象が本発明とは異なるだけではなく、その補正量の演算ロジックも後述する本発明のロジックとは相違している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−131805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ベルト部材を成形ドラムに貼り付けて成形品を製造する場合の前記問題に鑑みてなされたものであって、ベルト部材の貼付開始位置におけるベルト部材のセンターのズレや貼り付け終了後のベルト幅の基準値からのズレに対応する補正を行う場合に、人手を要することがなく、しかも、最適な補正を行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ベルト部材を成形ドラムに貼り付けてベルト部材からなる成形品を製造する装置であって、所定長に切断されたベルト部材を回転する成形ドラムに貼り付けるベルト部材の貼付手段と、貼付手段を成形ドラムの回転軸方向に移動させる駆動機構と、貼付手段によるベルト部材の成形ドラムへの貼付開始位置を測定する手段と、測定された前記貼付開始位置と予め定めた貼付開始基準位置とのズレ量を演算し、前記ズレ量を解消するに必要な前記駆動機構の駆動制御のための調整量を演算する演算手段と、前記調整量に基づき前記駆動機構を制御する第1の駆動制御手段と、を有し、前記演算手段は、演算したズレ量と当該ズレ量に応じた所定の比重を付与した値と直前の調整時に求めた調整量とを加算して前記調整量を演算する、ことを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造装置である。
請求項2の発明は、ベルト部材を成形ドラムに貼り付けてベルト部材からなる成形品を製造する装置であって、所定長に切断されたベルト部材を回転する成形ドラムに貼り付けるベルト部材の貼付手段と、貼付手段を成形ドラムの回転軸方向に移動させる駆動機構と、ベルト部材を成形ドラムに搬送すると共に、ベルト部材の切断位置を調整してベルト部材の成形ドラムへの貼付幅を調整するベルト搬送機構と、成形ドラムに貼り付けたベルト部材のベルト幅を測定する手段と、測定された前記ベルト幅と予め設定された基準ベルト幅とのズレ量を演算し、前記ズレ量を解消するに必要な前記ベルト搬送機構の駆動制御のための調整量を演算する演算手段と、前記調整量に基づき前記ベルト搬送機構を制御する第2の駆動制御手段と、を有し、前記演算手段は、取得された前記ズレ量に当該ズレ量に応じた所定の比重を付与した値に直前の調整時に求めた調整量を加算して前記調整量を演算する、ことを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造装置である。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載されたベルト部材からなる成形品の製造装置において、前記比重は成形ドラムのサイズ毎に予め設定され、前記ズレ量の大きさに対応させた1未満の数値であることを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造装置である。
請求項4の発明は、ベルト部材を成形ドラムに貼り付けてベルト部材からなる成形品を製造する製造方法であって、前記ベルト部材の貼付手段を駆動機構により成形ドラムの回転軸方向に移動させ、所定長に切断されたベルト部材を回転する成形ドラムに貼り付けるベルト部材の貼付工程と、貼付手段によるベルト部材の成形ドラムへの貼付開始位置を測定する測定工程と、測定された前記貼付開始位置と予め定めた貼付開始基準位置とのズレ量を演算し、前記ズレ量を解消するに必要な前記駆動機構の制御のための調整量を演算する演算工程と、前記調整量に基づき前記駆動機構を制御する第1の駆動制御工程と、を有し、前記演算工程では、取得されたズレ量と当該ズレ量に応じた所定の比重を付与した値と直前の調整時に求めた調整量とを加算して、前記調整量を得ることを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造方法である。
請求項5の発明は、ベルト部材を成形ドラムに貼り付けてベルト部材からなる成形品を製造する製造方法であって、前記ベルト部材の貼付手段を駆動機構により成形ドラムの回転軸方向に移動させ、所定長に切断されたベルト部材を回転する成形ドラムに貼り付けるベルト部材の貼付工程と、ベルト部材をベルト搬送機構により成形ドラムに搬送すると共に、ベルト部材の切断位置を調整してベルト部材の成形ドラムへの貼付幅を調整するベルト搬送工程と、成形ドラムに貼り付けたベルト部材のベルト幅を測定する測定工程と、測定された前記ベルト幅と予め設定された基準ベルト幅とのズレ量を演算し、前記ズレ量を解消するに必要な前記ベルト搬送機構の制御のための調整量を演算する演算工程と、前記調整量に基づき前記ベルト搬送機構を制御する第2の駆動制御工程と、を有し、前記演算工程では、取得された前記ズレ量に当該ズレ量に応じた所定の比重を付与した値に直前の調整時に求めた調整量を加算して前記調整量を演算する、ことを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造方法である。
請求項6の発明は、請求項4または5に記載されたベルト部材からなる成形品の製造方法において、前記比重は前記ズレ量の大きさに対応させた1未満の数値であることを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形ドラムにベルト部材を貼り付ける際の調整を自動的に行うことができるため、従来の人手を要する調整処理に比して生産性を向上することができる。また、調整量は取得したズレ量に比重を付与して直前の調整量の積算値に加算した値とすることで、緩やかな調整を可能にして、装置全体として追従性を良くして、従来のものより正確な調整(フィードバック制御)を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ベルト幅やベルト部材のオフセンターを調整しながら、成形ドラムにベルト部材を貼り付ける装置全体を概略的に示す平面図である。
【図2】制御部の構成を概略的に示す図である。
【図3】制御部で行われるベルト幅の補正量の演算ロジックを説明するための図である。
【図4】調整量を演算して自動的にフィードバック制御を行う場合のイメージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、ベルト部材を成形ドラムに貼り付けて成形品を製造する装置として、ゴム材料から成るベルト部材を成形ドラムに貼り付けてグリーンタイヤを製造する装置全体を概略的に示す平面図である。
グリーンタイヤの製造装置は、成形ドラム12と成形ドラム12を回転駆動する駆動機構を備えた基台14とからなる成形ドラムユニット10と、成形ドラム12に対して所定幅のベルト部材を貼り付けるベルト部材の貼付サーバ20とから成っている。
【0012】
ベルト部材の貼付サーバ20は、長尺のベルト部材をカッター30および搬送機構22で所定寸法(成形ドラム12に貼り付けたとき所定のタイヤ幅が得られる長さ、つまりタイヤ幅分の長さ)に切断したベルト部材を、成形ドラム12まで搬送して回転する成形ドラム12上に押し付けて貼り付ける。
【0013】
ベルト部材の貼付サーバ20の駆動機構は、例えばステッピングモータで駆動されるリードネジ伝動機構により移動自在に構成されており、後述する制御部40(図2)からの補正量に基づき、その駆動機構の制御部(駆動制御部1という)の制御によりステッピングモータを所定角度駆動して成形ドラム12の回転軸方向(矢印Y方向)に移動可能である。
【0014】
カッター30は、ベルト部材の貼付サーバ20から供給されるベルト部材を切断するものである。搬送機構22は例えばエア吸着機能を備えたコンベヤなどの適宜の機構で構成され、その切断するベルト部材をタイヤ幅分の長さに調整するため、後述する制御部40(図2)からの補正量に基づきその駆動機構の制御部(駆動制御部2という)の制御によりステッピングモータを所定角度駆動して、ベルト部材の貼付サーバ20上でベルト部材を供給方向(矢印X方向)において前後に移動可能である。
【0015】
ここで、カッター30は、例えばシリンダ32とそのピストン34及びピストン34に取り付けた切断刃(図示せず)から成っており、先端検知センサ(図示せず)がベルト部材の先端を検知したとき、ピストン34を駆動して搬送されてきたベルト部材をその補強コードの方向に沿って斜めに切断する。
【0016】
ベルト部材の貼付作業において、ベルト部材は、搬送機構(ベルト搬送機構)22により位置調整されて、カッター30で所定の寸法に切断され、その後搬送機構22で成形ドラム12の近傍に搬送され、そこで、回転する成形ドラム12に対して貼り付けが開始されると共に、貼り付けたベルト部材を貼付ローラなどの適宜の押付手段で押し付け、その状態で成形ドラムユニット10をレール16に沿って移動させることで、成形ドラム12上で螺旋状に貼り付けていく。
【0017】
図2は、以下で説明するベルト部材の位置制御を行うための制御部の構成を概略的に示す図である。
この制御部40は、ベルト形状測定センサによる測定値から、前記成形ドラム12への貼付開始位置におけるベルト部材のセンター(幅方向中心位置)の貼付開始基準位置からのオフセット値(ズレ量)、及びベルト部材の貼付幅の基準ベルト幅からのズレ量を演算(取得)し、さらに、それぞれのズレ量に対応した補正量を演算する機能を有している。なお、成形ドラム12における前記貼付開始基準位置及びベルト部材の基準ベルト幅はいずれも成形するタイヤに応じて予め定められている。
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)41、CPUの動作用メモリであるRAM(Random Access Memory)42と、プログラムなどを格納したROM(Read
only Memory)43、データの入出力を行うI/F(インターフェース)部44、CPU41での演算処理結果を蓄積しておくため、必要に応じて配備される外部メモリ45や、入力などの操作を行うための操作部46、例えばベルト形状測定センサの測定結果や演算結果等を表示する、例えばLCD(液晶表示部)等の表示部47等を備えている。
【0018】
制御部40は、ベルト形状センサから入力されるベルト部材の測定情報に基づき、ベルト部材の成形ドラム12への貼付開始位置、つまりベルト部材の例えば幅方向センターの前記貼付開始基準位置からのオフセット量、及び成形ドラム12上に貼り付けた状態での貼付ベルト幅の基準ベルト幅からのズレ量を演算し、その結果に基づき前記ステッピングモータなどによる貼付サーバ20及び搬送機構22の位置補正のための補正量を演算する。そして、その演算結果を、インターフェース部44を介して前記駆動制御部1及び駆動制御部2に送信して各駆動機構を作動制御し、貼付サーバ20及び搬送機構22の位置補正を行う。
【0019】
次に、貼付サーバ20及び搬送機構22の位置補正について説明する。
(1)ベルト部材の貼付開始位置の調整
ベルト部材の貼付開始位置の調整は、貼付開始位置におけるベルト部材のセンターを形状測定センサで測定し、その測定値に基づき、制御部40のCPU41が予め設定された基準位置からどの位ズレているか、つまりそのズレ量(オフセット値)を演算し、そのズレ量に対して後述する比重を付与して直前の(フィードバック制御時の)補正量、つまりズレ量と比重との直前の積算値に加算して補正量を求める。求めた補正量をベルト部材の貼付サーバ20の駆動機構の駆動制御部1に送付することでステッピングモータを回動制御して、貼付サーバ20を、成形ドラム12の回転軸線に沿って前記ズレを無くす方向に前記モータの回転量分だけ移動させる。
【0020】
(2)ベルト幅の調整
ベルト幅の調整は、ベルト部材を成形ドラム12上に貼り付けた後にその貼付幅をベルト形状測定センサで測定し、その測定された幅に基づき制御部40のCPU41が予め定めた所定の幅(基準ベルト幅)からのズレを演算し、そのズレ量から、ベルト部材のオフセット量の補正と同様にベルト幅の補正量を演算し、求めた補正量をベルト部材の貼付サーバ20の駆動機構の駆動制御部2に送信することで、ステッピングモータを回動制御してベルト部材を前記ズレを無くす方向に前記ステッピングモータの回転分だけ移動させる。例えば、測定したベルト幅が基準の幅に満たないときは、ベルト部材を搬送方向に移動し、カッター30で切断することで、タイヤ幅方向のベルト長を長くしてベルト幅の補正を行う。
なお、補正を行ったときに、成形ドラム12に貼り付けたベルト部材の中心位置が変わらないように、同時に前記ベルト部材の貼付開始位置(したがって、貼付サーバ20の位置)を成形ドラム12の回転軸に沿って、その補正量の1/2だけ移動させることが必要である。
【0021】
次に、制御部40で実行されるベルト幅の補正量の演算ロジックを説明する。
ベルト幅の補正量を求める場合、CPU41で演算された前記ズレ量にしたがってそのまま補正を行うと、補正量が大きく変動することがあり得るため、装置全体でみるとうまく追従できない虞がある。そこで、本実施形態では、補正を徐々に行い、装置全体として目標値に良好に追従できるように、前記ズレ量に比重を付与して、同様に比重を付与したズレ量に基づき求めた直前のフィードバッグ制御時における補正量とを加算する手法を採っている。
【0022】
図3は、成形ドラムの種類毎に設定されたベルト幅の基準値(プロセス値)に対して、今回の補正量と直前のタイヤのベルト幅補正量を加算して補正量を求める手順を示している。
即ち、ここでは、ベルト形状測定センサで測定したベルト幅に基づき演算した基準値からのズレ量αに対して、1未満の比重(ウエイト)rを付けている。つまり、制御部40のCPU41は、求めたズレ量αに対してその補正量をズレ量α×比重rで演算し、その補正量を直前に求めたベルト幅補正量βを加算する手法で補正量を求める。
ここで、ベルト幅補正量βは、現在の補正量の直前までの補正量、つまり過去に演算したベルト幅補正量(=ズレ量α×比重r)の累積した積算値であって、
β=α1r1+α2r2+・・・αn−1rn−1で表される。
したがって、今回行う補正に使用するベルト幅補正量Rは
R=αr+βとなる。
【0023】
ここで、比重rは、ベルト幅のズレ量ごとに過去のデータに基づき演算したベルト幅補正量が最適値となるように各成形ドラムユニットの種類毎に設定された1未満の数値であって、例えばミリ単位のズレ量に対応して、ズレ量が大きくなるにしたがってその比重を増大するように設定する。
このようにして得られた補正量は、既に述べたように、搬送機構22の例えば駆動制御部2にI/F部44を介して送信され、ステッピングモータの回転角度を制御することにより、搬送機構22でベルト部材を供給方向において前後に移動させてその切断位置(タイヤ幅分の長さ)を変更し、それによってベルト部材の幅(成形ドラムヘの貼付幅)を調整する。
【0024】
以上の説明は、ベルト部材の幅の調整についてのものであるが、ベルト部材の貼付開始位置におけるセンターのオフセット量補正においても同じロジックを適用して演算を行う。
即ち、ベルト部材を成形ドラム12の貼付開始位置(ここではそのセンター)における基準位置からのズレ、即ちオフセット量に基づきその補正量に比重を付与して調整量とし、かつこれを直前の調整量に加算する演算を行う。
つまり、ベルト部材のセンターのオフセット補正量θは、過去に演算したズレ量γ×比重sの積算値を累計したものであって、
θ=γ+γ+・・・+γn−1n−1で表される。
したがって、今回行う補正に使用するベルト幅補正量Θは
Θ=γs十θとなる。
ここで、比重sは、ベルト部材の基準位置からのズレ(オフセット)量毎に、過去のデータからベルト部材補正量が、ベルト部材の位置補正量の最適値となるように設定された1未満の数値であり、この場合も、例えばミリ単位のズレ量に対応して、ズレ量が大きくなるにしたがってその比重を増大するように設定する。
【0025】
図4は、実際の作業工程において、以上のようにして調整量を演算して自動的にフィードバック制御を行う場合のイメージを示す。
本実施形態では、貼付サーバ20に対して、成形ドラム12と成形ドラム12の基台14から成る成形ドラムユニット10(1)、10(2)・・・が、ダイヤ構成部材、例えばカーカスを貼り付けた状態で順次移動(循環)してくる。
そこで、制御部40では、貼付サーバ20でベルト部材を貼り付ける際に行ったそのセンター位置の基準センター位置からのズレ量、及びベルト部材の貼付幅の標準値からのズレ量に基づき補正量を演算し、その補正量に基づき、次の成形ドラムユニットが移動してくる前に、必要な位置補正を行っておく。
【0026】
したがって、次のベルトの貼付はその補正後の貼付サーバ20及び搬送機構22の補正位置において行う。またそれと同時に、ベルト形状測定センサによる測定を行い、貼付開始位置での位置ズレ及びベルト部材の基準ベルト幅からのズレがあればその補正量を演算し、現在の成形ドラムユニット10(1)の成形ドラム12へのベルト部材の貼り付けの終了後、次の成形ドラムユニット10(2)が移動してくる前に、貼付サーバ20及び搬送機構22のそれぞれの位置補正を行っておく。
このような処理を繰り返すことで、貼付サーバ20の位置及び搬送機構22の位置は常に補正された状態を自動的に維持することができ、その位置で成形ドラム12に対するベルト部材の貼り付けが行われる。したがって、ベルトの貼り付け位置を自動的に調整するだけではなく、ベルト部材の貼り付け位置の精度も向上する。
【0027】
なお、前記補正量は、生産されるタイヤサイズが切り替わるタイミングで自動的にクリアすることが好ましい。これにより、残った補正量データがサイズの異なる成形ドラムユニットにおける補正に悪影響を及ぼすことがない。
本実施形態によれば、補正量を直前の補正量即ちズレ量に比重を付けて積算したものをベースに、これに今回のズレ量に比重を付与した補正量を加算してそれを今回の補正量とするため、補正量の急激な変動がなく、徐々に目標値に近づけて行くように補正するため、装置に急激な負荷が掛かることがなく、ベルト部材の貼付開始位置及び幅の補正を円滑にかつ正確に行うことができる。
したがって、製造される製品に形状のばらつきやユニフォーミティの欠陥などの虞がない。
【符号の説明】
【0028】
10・・・成形ドラムユニット、12・・・成形ドラム、14・・・基台、16・・・レール、20・・・貼付サーバ、22・・・搬送機構、30・・・カッター、32・・・シリンダ、34・・・ピストン、40・・・制御部、41・・・CPU、42・・・RAM、43・・・ROM、44・・・I/F(インターフェース)部、45・・・外部メモリ、46・・・操作部、47・・・表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト部材を成形ドラムに貼り付けてベルト部材からなる成形品を製造する装置であって、
所定長に切断されたベルト部材を回転する成形ドラムに貼り付けるベルト部材の貼付手段と、
貼付手段を成形ドラムの回転軸方向に移動させる駆動機構と、
貼付手段によるベルト部材の成形ドラムへの貼付開始位置を測定する手段と、
測定された前記貼付開始位置と予め定めた貼付開始基準位置とのズレ量を演算し、前記ズレ量を解消するに必要な前記駆動機構の駆動制御のための調整量を演算する演算手段と、
前記調整量に基づき前記駆動機構を制御する第1の駆動制御手段と、を有し、
前記演算手段は、演算したズレ量と当該ズレ量に応じた所定の比重を付与した値と直前の調整時に求めた調整量とを加算して前記調整量を演算する、ことを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造装置。
【請求項2】
ベルト部材を成形ドラムに貼り付けてベルト部材からなる成形品を製造する装置であって、
所定長に切断されたベルト部材を回転する成形ドラムに貼り付けるベルト部材の貼付手段と、
貼付手段を成形ドラムの回転軸方向に移動させる駆動機構と、
ベルト部材を成形ドラムに搬送すると共に、ベルト部材の切断位置を調整してベルト部材の成形ドラムへの貼付幅を調整するベルト搬送機構と、
成形ドラムに貼り付けたベルト部材のベルト幅を測定する手段と、
測定された前記ベルト幅と予め設定された基準ベルト幅とのズレ量を演算し、前記ズレ量を解消するに必要な前記ベルト搬送機構の駆動制御のための調整量を演算する演算手段と、
前記調整量に基づき前記ベルト搬送機構を制御する第2の駆動制御手段と、を有し、
前記演算手段は、取得された前記ズレ量に当該ズレ量に応じた所定の比重を付与した値に直前の調整時に求めた調整量を加算して前記調整量を演算する、ことを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたベルト部材からなる成形品の製造装置において、
前記比重は成形ドラムのサイズ毎に予め設定され、前記ズレ量の大きさに対応させた1未満の数値であることを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造装置。
【請求項4】
ベルト部材を成形ドラムに貼り付けてベルト部材からなる成形品を製造する製造方法であって、
前記ベルト部材の貼付手段を駆動機構により成形ドラムの回転軸方向に移動させ、所定長に切断されたベルト部材を回転する成形ドラムに貼り付けるベルト部材の貼付工程と、
貼付手段によるベルト部材の成形ドラムへの貼付開始位置を測定する測定工程と、
測定された前記貼付開始位置と予め定めた貼付開始基準位置とのズレ量を演算し、前記ズレ量を解消するに必要な前記駆動機構の制御のための調整量を演算する演算工程と、
前記調整量に基づき前記駆動機構を制御する第1の駆動制御工程と、を有し、
前記演算工程では、取得されたズレ量と当該ズレ量に応じた所定の比重を付与した値と直前の調整時に求めた調整量とを加算して、前記調整量を得ることを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造方法。
【請求項5】
ベルト部材を成形ドラムに貼り付けてベルト部材からなる成形品を製造する製造方法であって、
前記ベルト部材の貼付手段を駆動機構により成形ドラムの回転軸方向に移動させ、所定長に切断されたベルト部材を回転する成形ドラムに貼り付けるベルト部材の貼付工程と、
ベルト部材をベルト搬送機構により成形ドラムに搬送すると共に、ベルト部材の切断位置を調整してベルト部材の成形ドラムへの貼付幅を調整するベルト搬送工程と、
成形ドラムに貼り付けたベルト部材のベルト幅を測定する測定工程と、
測定された前記ベルト幅と予め設定された基準ベルト幅とのズレ量を演算し、前記ズレ量を解消するに必要な前記ベルト搬送機構の制御のための調整量を演算する演算工程と、
前記調整量に基づき前記ベルト搬送機構を制御する第2の駆動制御工程と、を有し、
前記演算工程では、取得された前記ズレ量に当該ズレ量に応じた所定の比重を付与した値に直前の調整時に求めた調整量を加算して前記調整量を演算する、ことを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載されたベルト部材からなる成形品の製造方法において、
前記比重は前記ズレ量の大きさに対応させた1未満の数値であることを特徴とするベルト部材からなる成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−161997(P2012−161997A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24220(P2011−24220)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】