説明

ベルト駆動機構および画像形成装置

【課題】 無端ベルトの安定走行と長寿命化とを実現するベルト駆動機構、および、このベルト駆動機構を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 環状かつ帯状の無端ベルトと、無端ベルトが相互間を渡って張り架けられ該無端ベルトが相互間を循環移動する、該無端ベルトの内周面に接して回転する、複数の、該複数のうち少なくとも1つは該無端ベルトの幅方向へ移動自在な張架ロールと、無端ベルトを駆動して前記張架ロールの相互間で循環移動させる駆動部と、張架ロールが前記無端ベルトから外れる方向に移動した場合に、その移動した張架ロールを他の張架ロールに対して、その移動した張架ロールが該無端ベルトとの相互作用で該無端ベルト側に戻る向きに傾ける傾き調整部とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルトを循環移動させるベルト駆動機構、および、このベルト駆動機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表面に像を保持する像保持体表面にトナー像を形成し、そのトナー像を環状かつ帯状の無端ベルト上に転写し、この無端ベルト上に転写したトナー像を記録媒体上に転写および定着させることで記録媒体上に画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
この様な無端ベルトを用いた画像形成装置には、この無端ベルトを、駆動源に連結されたドライブロールと、この無端ベルトにテンションを与えるテンションロールとに張り架けて、ドライブロールを回転駆動することでこの無端ベルトを循環移動させるベルト駆動機構を備えたものがある。
【0004】
無端ベルトを循環移動させるベルト駆動機構については、無端ベルトを安定して走行させるための提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0005】
上記の特許文献には、無端ベルトの縁を光学センサや接触センサで検出することで無端ベルトの走行位置のズレを検出し、そのズレを修正するベルト駆動機構が提案されている。
【特許文献1】特開2003−31285号公報
【特許文献2】特開2002−99178号公報
【特許文献3】特開2002−182483号公報
【特許文献4】特開2002−351229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光学センサは、無端ベルトに付着したトナーによる汚れによって誤検知が発生し、無端ベルトの走行位置のズレを検出できなかったり、また、接触センサは、無端ベルトとの摩擦によって無端ベルトの寿命を短くしてしまうおそれがある。
【0007】
尚、上記問題は、トナー像が転写される無端ベルトにのみ発生する問題ではなく、用紙上面に吸着した用紙上にトナー像の転写を受ける無端ベルト、例えば搬送ベルトについても同様に発生し得る。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、無端ベルトの安定走行と長寿命化とを実現するベルト駆動機構、および、このベルト駆動機構を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のベルト駆動機構は、
環状かつ帯状の無端ベルトと、
上記無端ベルトが相互間を渡って張り架けられこの無端ベルトが相互間を循環移動する、この無端ベルトの内周面に接して回転する、複数の、この複数のうち少なくとも1つはこの無端ベルトの幅方向へ移動自在な張架ロールと、
上記無端ベルトを駆動して上記張架ロールの相互間で循環移動させる駆動部と、
上記張架ロールが上記無端ベルトから外れる方向に移動した場合に、その移動した張架ロールを他の張架ロールに対して、その移動した張架ロールがこの無端ベルトとの相互作用でこの無端ベルト側に戻る向きに傾ける傾き調整部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のベルト駆動機構では、無端ベルトの幅方向への偏倚を張架ロールの移動で吸収し、無端ベルトの幅方向についての安定走行が実現されると共に、大きく移動した張架ロールは傾けられることで、無端ベルトの安定走行を妨げることなく戻される。したがって、本発明のベルト駆動機構によれば、無端ベルトの縁を検出するための光学センサや接触センサが必要無いことから、無端ベルトの安定走行と無端ベルトの長寿命化とを実現できる。
【0011】
ここで、上記駆動部が、上記張架ロールの少なくとも1つを兼ねたものであることが好ましい。
【0012】
この様に、複数の張架ロールのうちのいずれかの張架ロールが駆動部を兼ねると、装置のコンパクト化が可能となる。
【0013】
また、上記傾き調整部が、上記張架ロールの移動を案内する、この張架ロールが上記無端ベルトから外れるほどこの張架ロールを大きく傾ける移動ガイドであることも好ましい態様である。この様にすると、無端ベルトから外れる方向に移動した張架ロールを簡易な機構で無端ベルト側に戻すことができる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の画像形成装置は、
表面に像を保持する像保持体と、
上記像保持体の表面に像を形成する像形成部と、
上記像保持体に所定箇所で近接あるいは接触する循環経路上を循環移動する環状かつ帯状の無端ベルトと、
上記無端ベルトが相互間を渡って張り架けられて上記循環経路が形成されこの無端ベルトが相互間を循環移動する、この無端ベルトの内周面に接して回転する、複数の、この複数のうち少なくとも1つはこの無端ベルトの幅方向へ移動自在な張架ロールと、
上記無端ベルトを駆動して上記張架ロールの相互間で循環移動させる駆動部と、
上記張架ロールが上記無端ベルトから外れる方向に移動した場合に、その移動した張架ロールを他の張架ロールに対して、その移動した張架ロールがこの無端ベルトとの相互作用でこの無端ベルト側に戻る向きに傾ける傾き調整部と、
上記像保持体上の像を、上記無端ベルトの表面、及び又はこの無端ベルトによって搬送される記録媒体の表面に転写する転写部とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の画像形成装置によれば、無端ベルトの安定走行と長寿命化とを実現するベルト駆動機構を備えていることで、画像の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無端ベルトの安定走行と長寿命化とを実現するベルト駆動機構、および、このベルト駆動機構を備えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、フルカラー印刷が可能なプリンタの概略構成図である。
【0019】
図1に示すプリンタ1は、図1における右側から、Y(イエロ)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(ブラック)の組み合わせによるフルカラー印刷が可能なプリンタであり、このプリンタ1には、4つの色用の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、ポリイミド系樹脂からなる中間転写ベルト20を有するベルト駆動装置2と、二次転写ロール16と、定着部17と、このプリンタ1における画像形成を制御する制御部18とが備えられている。
【0020】
尚、中間転写ベルト20の材質としては、ポリイミド系樹脂の他に、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、ベルト本体はつなぎ目があってもなくてもよい。ベルト本体の厚さは、0.02〜0.2mm程度が好ましく、本実施例の中間転写ベルト20は80±5μmを満たしている。
【0021】
各画像形成部10Y、10M、10C、10Kには、それぞれ、感光体ロール11Y、11M、11C、11K、帯電装置12Y、12M、12C、12K、露光装置13Y、13M、13C、13K、現像装置14Y、14M、14C、14K、および、一次転写ロール15Y、15M、15C、15Kが備えられている。
【0022】
ベルト駆動装置2は、詳細は後述するが、上述した中間転写ベルト20と、この中間転写ベルト20を矢印B方向に駆動する駆動ロール21と、駆動ロール21とともに中間転写ベルト20が張り架けられ、中間転写ベルト20にテンションを与えるテンションロール22とを備えている。尚、このベルト駆動装置2は、本発明のベルト駆動機構の第1実施形態である。
【0023】
ここで、このプリンタ1における、フルカラー画像の形成動作について説明する。
【0024】
このプリンタ1では、イエロ用の画像形成部10Yによるトナー像形成がまず開始され、矢印A方向に回転する感光体ロール11Yの表面に、接触式の帯電装置12Yにより所定の電荷が付与され、その後、露光装置13Yにより感光体ロール11Yの表面にイエロ画像に対応する露光光が照射されて静電潜像が形成される。その静電潜像は現像装置14Yによりイエロのトナーで現像されて感光体ロール11Yの表面にはイエロのトナー像が形成される。感光体ロール11Yの表面に形成されたイエロのトナー像は、既に循環移動を開始している中間転写ベルト20の所定位置に一次転写ロール15Yによって転写される。
【0025】
マゼンタ用の画像形成部10Mでは、中間転写ベルト20上に転写されたイエロのトナー像がマゼンタ用の一次転写ロール15Mに到達するタイミングに合わせて、感光体ロール11Yの表面に形成されたマゼンタのトナー像が一次転写ロール15Mに到達するように、マゼンタのトナー像の形成が行われ、マゼンタのトナー像は、一次転写ロール15Mによって、中間転写ベルト20上のイエロのトナー像の上に重ねて転写される。
【0026】
続いて、シアン用およびブラック用の画像形成部10C、10Kそれぞれによる、シアンおよびブラックのトナー像の形成が上述したのと同様のタイミングで行われ、形成されたシアンおよびブラックのトナー像は、一次転写ロール15C、15Kそれぞれによって中間転写ベルト20のイエロおよびマゼンタのトナー像の上に順次重ねて転写される。このようにして、中間転写ベルト20上に転写された4色のトナー像は、二次転写ロール16により用紙P上に二次転写され、用紙Pとともに矢印C方向に搬送され、定着装置17により用紙P上に加熱および加圧されることで定着される。
【0027】
ところで、このプリンタ1と同様に、中間転写ベルト上にトナー像を重ねて転写してカラー画像を形成するタイプの従来のプリンタでは、循環移動中の中間転写ベルトの幅方向へのブレにより、この中間転写ベルト上の多色トナー像にはその幅方向についてのみならず、その循環方向についても色ずれが発生する。そこで、この図1に示すプリンタ1では、循環移動する中間転写ベルト20の幅方向へのブレを抑えるため、テンションロール22が、循環ベルト20から外れる向きに移動によりその発生した力を吸収するようにされている。以下、この点について説明する。
【0028】
図2は、ベルト駆動装置の概略構成図である。
【0029】
図2には、ベルト駆動装置2をプリンタ1の下部側から見上げた場合が示されており、ここには、テンションロール22が図2における右側に示されており、駆動ロール21とこの駆動ロール21を駆動する駆動部23とが図2における左側に示されている。
【0030】
テンションロール22の中心軸221は、不図示のシャーシに支持されており、駆動ロール21の中心軸211は、ベアリング部210により回転自在に支持されている。また、この中心軸211の一方の端部には、ピニオンギア212が取り付けられている。
【0031】
駆動部23は、回転軸230を有する駆動モータ231と、回転軸230に取り付けられたギア232とで構成されており、図2には、駆動ロール21の中心軸の211の端部に取り付けられたピニオンギア212と駆動モータ231に取りつけられたギア232とが噛み合っている様子が示されている。駆動モータ231が回転駆動すると、その回転駆動力はギア232およびピニオンギア211を介して駆動ロール21に伝達され、駆動ロール21が回転する。これにより、この駆動ロール21とテンションロール22とに張り架けられている中間転写ベルト20は、矢印B方向に循環移動する。尚、テンションロール22は、駆動ロール21から離れる向きにバネ付勢されることで中間転写ベルト20にテンションを与えている。尚、ここでのバネの図示は省略している。
【0032】
図3は、図2に示すベルト駆動装置を、反時計回りに約90°回転させた場合を示す図である。尚、ここでは、駆動ロール21を駆動する駆動部23の図示は省略している。
【0033】
図3の下段に示す駆動ロール21は、図3の最上段に示される3次元軸(X、Y、Z)のうちのY軸と平行な中心軸211を中心に回転自在であるものの、軸方向への移動や、Y軸に対して傾くことは規制されている。
【0034】
一方、テンションロール22については、図3の最上段に示される3次元軸(X、Y、Z)のうちのY軸とZ軸によるY−Z平面と平行な平面上の所定の移動ルートを移動できるようになっている。これは、テンションロール22と駆動ロール21との非平行関係や、経年劣化による循環ベルトの不均衡な周長変化等に起因して、循環ベルト20の幅方向についての安定的な循環移動が妨げられないようにするためである。これにより、循環移動中の循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力が発生した場合には、テンションロール22には循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力と反対の方向に動かそうとする反作用が作用するが、テンションロール22の方が移動が容易に移動できる構成のためにテンションロール22がこの所定の移動ルートを移動することで循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力を吸収し、循環ベルト20の安定的な循環移動は維持される。
【0035】
また、このテンションロール22は、この所定の移動ルートを移動することで、循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力を吸収した後は、駆動ロール21に対して傾いていることと、循環する循環ベルト20との相互作用により、移動してきた向きとは逆向きに移動する力が与えられる。以下、テンションロール22に与えられる、移動してきた向きとは逆向きに移動する力について説明する。以下では、説明の便宜のために、循環ベルト22が循環移動を開始する前の段階では、テンションロール22が、図3の最上段に示すY軸上に位置しているとして説明する。
【0036】
図4は、Y−Z平面上の所定の移動ルートを移動したテンションロールの姿勢を示す図である。尚、図4には、この所定の移動ルートを移動したテンションロールの姿勢が、テンションロール22の中心軸221の姿勢によって代表的に示されている。
【0037】
また、図4には、テンションロール22の中心軸221の左端および右端がそれぞれダイヤマークおよび三角マークで示されており、ここには、循環ベルト22が循環移動を開始する前にY軸上に位置するテンションロール22の中心軸221が実線(L〜Rの範囲)で示されている。
【0038】
さらに、図4には、循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力を吸収するべくテンションロール22が、Y軸上をプラス側に移動しながらY軸上から時計回りに最大角度θまで旋回させられた様子が点線(L2〜R2の範囲)で示され、Y軸上をマイナス側に移動しながらY軸上から反時計回りに最大角度θまで旋回させられた様子が2点鎖線(L1〜R1の範囲)で示されている。
【0039】
図5は、テンションロールの中心軸の両端の移動軌跡を示す図である。
【0040】
図5には、中心軸221が所定の移動ルートに沿って移動した場合の中心軸221の左端および右端の移動軌跡が太線でそれぞれ示されており、この太線で示されているルートが上述の所定の移動ルートを表している。つまり、この所定の移動ルートは、Y軸上をプラス側に移動するテンションロール22については、プラス側に移動するほどY軸上から時計回りに大きく旋回させることで、循環移動する循環ベルト20との協働により、このテンションロール22を、移動してきた向きとは反対向きに向かわせる。また、Y軸上をマイナス側に移動するテンションロール22については、マイナス側に移動するほどY軸上から反時計回りに大きく旋回させることで、循環移動する循環ベルト20との協働により、このテンションロール22を、移動してきた向きとは反対向きに向かわせる。
【0041】
図6は、所定の移動ルートに沿ったテンションロールの移動を実現する機構を示す図である。
【0042】
図6には、ベルト駆動装置2の構成要素である、テンションロール22の中心軸221を回転自在に支持するベアリング部220、このベアリング部220と不図示のシャーシとの間に配備されたテンションバネ2202、および、ベアリング部220の上方に示される、ベアリング部220をガイドするガイド部材223が示されている。
【0043】
テンションバネ2202は、一方の端部が不図示のシャーシに取り付けられ、もう一方の端部がベアリング部220に取り付けられている。これにより、ベアリング部220によって中心軸221が回転自在に支持されているテンションロール22は駆動ロール21から離れる向きに付勢され、これに伴って、循環ベルト20にはテンションが与えられている。
【0044】
ベアリング部220は、テンションロール22の中心軸221を回転自在に支持してはいるものの中心軸221上の位置は固定されている。ベアリング部220の上面には、ガイド部材223に設けられたガイド孔223aに挿通されるボス2201が備えられている。
【0045】
ガイド部材223は、図6においては図示の便宜上、ベアリング部220のボス2201とは離れた位置に示されているが、実際には、ガイド孔223aにはボス2201が挿通されている。ガイド部材223に設けられているガイド孔223aは、上方から見ると、図5に太線で示されるのと同様の形状を有している。このため、循環ベルト20の循環移動に伴って、テンションロール22が循環ベルト20に対して移動を開始すると、中心軸221上の位置が固定されているベアリング部221もこれに伴って移動する。ボス2201がガイド孔223aに挿通されていることから、テンションロール22はガイド孔223aの形状に従ってこの所定の移動ルートを移動する。この際、テンションロール22がY軸方向に移動するほどY軸に対して大きく傾けられる。これにより、本実施形態のベルト駆動装置2では、循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力をテンションロール22が循環ベルト20から外れる方向に移動しながら傾くことで吸収し、傾いたテンションロール22と、循環移動する循環ベルト20との相互作用でテンションロール22が循環ベルト側に戻るようになっている。したがって、本実施形態のベルト駆動装置2によれば、光学センサや接触センサを用いなくても、循環ベルト20の安定走行と長寿命化とを実現することができる。
【0046】
次に、本発明のベルト駆動機構の第2実施形態について説明する。
【0047】
第1実施形態と第2実施形態との間の相違点は、第1実施形態では、テンションロール22が循環ベルト20から外れるほどこのテンションロール222を大きく傾けるのに対し、第2実施形態では、テンションロール22が循環ベルト20から外れる方向に或る程度移動した後、徐々にテンションロール22を傾ける点である。尚、以下でも、説明の便宜のために、循環ベルト22が循環移動を開始する前の段階では、テンションロール22が、図3の最上段に示すY軸上に位置しているとして説明する。
【0048】
図7は、Y軸上を所定量移動した後、最大角度(θ)傾けられたテンションロールの姿勢を示す図である。尚、図7には、テンションロール22の姿勢が、テンションロール22の中心軸221の姿勢によって代表的に示されている。
【0049】
図7には、テンションロール22の中心軸221の左端および右端がそれぞれダイヤマークおよび三角マークで示されており、ここには、循環ベルト22が循環移動を開始する前にY軸上に位置するテンションロール22の中心軸221が実線(L−R)で示されている。
【0050】
また、図7には、循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力を吸収するべくテンションロール22が、Y軸上をプラス側に所定量移動した後、Y軸上から時計回りに最大角度θまで旋回させられた様子が点線(L2−R2)で示され、Y軸上をマイナス側に所定量移動した後、Y軸上から反時計回りに最大角度θまで旋回させられた様子が2点鎖線(L1−R1)で示されている。
【0051】
図8は、テンションロールの中心軸の両端の移動軌跡を示す図である。
【0052】
図8には、テンションロール22の中心軸221の左端および右端の移動軌跡が太線でそれぞれ示されている。
【0053】
図9は、所定の移動ルートに沿ったテンションロールの移動を実現する機構の概略を示す図である。
【0054】
図9には、テンションロール22と、テンションロール22の中心軸221の両端にそれぞれ一端が取り付けられた圧縮バネ322と、圧縮バネ322の他端が取り付けられた突出部3211を有する移動部材321と、移動部材321を誘導する斜面321aを有する誘導部材323とが示されている。
【0055】
図9(a)には、循環ベルト20が未だ循環移動を開始する前のテンションロール22の様子が示されており、図9(b)には、循環移動中の循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力を吸収するためにテンションロール22が図9における左側に移動した様子が示されている。図9(c)には、テンションロール22が図9(b)に示す位置までの移動では、循環移動中の循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力が吸収しきれず、さらに、図9における左側に移動したことで、テンションロール22が旋回し始めた様子が示されている。
【0056】
上述の旋回は、テンションロール22の移動により圧縮バネ322が最大限度まで圧縮された結果、突出部3211を介して移動部材321が誘導部材323の斜面323aに押し付けられ、移動部材321がその斜面を323aを滑ったことによるものである。本実施形態のベルト駆動装置では、テンションロール22が圧縮バネ322の最大限度まで圧縮する圧力を超えた圧力で移動し旋回することで、循環移動中の循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力を吸収した後は、旋回し傾いたテンションロール22と、循環移動する循環ベルト20と、圧縮バネの復元力との相互作用によりテンションロール22は循環ベルト側に戻るようになっている。
【0057】
本実施形態のベルト駆動装置でも、循環ベルト20を幅方向に動かそうとする力を、テンションロール22が循環ベルト20から外れる方向に移動し、さらには旋回することで吸収し、旋回して傾いたテンションロール22と、循環移動する循環ベルト20との相互作用でテンションロール22が循環ベルト側に戻るようになっている。したがって、本実施形態のベルト駆動装置によっても、光学センサや接触センサを用いなくても、循環ベルト20の安定走行と長寿命化とを実現することができる。
【0058】
尚、本発明のベルト駆動機構の一例として、テンションロールが、循環ベルトから外れる方向に移動したことを検知する検知器と、この検知器によって移動が検知された場合にその移動したテンションロールを傾ける傾け機とを備えたベルト駆動装置を挙げてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】フルカラー印刷が可能なプリンタの概略構成図である。
【図2】ベルト駆動装置の概略構成図である。
【図3】テンションロールの動作概念を示す図である。
【図4】Y−Z平面と平行な平面上の所定の移動ルートを移動したテンションロールの姿勢を示す図である。
【図5】テンションロールの中心軸の両端の移動軌跡を示す図である。
【図6】所定の移動ルートに沿ったテンションロールの移動を実現する機構を示す図である。
【図7】Y軸上を所定量移動した後、最大角度傾けられたテンションロールの姿勢を示す図である。
【図8】テンションロールの中心軸の両端の移動軌跡を示す図である。
【図9】所定の移動ルートに沿ったテンションロールの移動を実現する機構の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 プリンタ
10Y、10M、10C、10K 画像形成部
2 ベルト駆動装置
20 中間転写ベルト
21 駆動ロール
210 ベアリング部
211 中心軸
212 ピニオンギア
22 テンションロール
23 駆動部
230 回転軸
231 駆動モータ
232 ギア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状かつ帯状の無端ベルトと、
前記無端ベルトが相互間を渡って張り架けられ該無端ベルトが相互間を循環移動する、該無端ベルトの内周面に接して回転する、複数の、該複数のうち少なくとも1つは該無端ベルトの幅方向へ移動自在な張架ロールと、
前記無端ベルトを駆動して前記張架ロールの相互間で循環移動させる駆動部と、
前記張架ロールが前記無端ベルトから外れる方向に移動した場合に、その移動した張架ロールを他の張架ロールに対して、その移動した張架ロールが該無端ベルトとの相互作用で該無端ベルト側に戻る向きに傾ける傾き調整部とを備えたことを特徴とするベルト駆動機構。
【請求項2】
前記駆動部が、前記張架ロールの少なくとも1つを兼ねたものであることを特徴とする請求項1記載のベルト駆動機構。
【請求項3】
前記傾き調整部が、前記張架ロールの移動を案内する、該張架ロールが前記無端ベルトから外れるほど該張架ロールを大きく傾ける移動ガイドであることを特徴とする請求項1または2記載のベルト駆動機構。
【請求項4】
表面に像を保持する像保持体と、
前記像保持体の表面に像を形成する像形成部と、
前記像保持体に所定箇所で近接あるいは接触する循環経路上を循環移動する環状かつ帯状の無端ベルトと、
前記無端ベルトが相互間を渡って張り架けられて前記循環経路が形成され該無端ベルトが相互間を循環移動する、該無端ベルトの内周面に接して回転する、複数の、該複数のうち少なくとも1つは該無端ベルトの幅方向へ移動自在な張架ロールと、
前記無端ベルトを駆動して前記張架ロールの相互間で循環移動させる駆動部と、
前記張架ロールが前記無端ベルトから外れる方向に移動した場合に、その移動した張架ロールを他の張架ロールに対して、その移動した張架ロールが該無端ベルトとの相互作用で該無端ベルト側に戻る向きに傾ける傾き調整部と、
前記像保持体上の像を、前記無端ベルトの表面、及び又は該無端ベルトによって搬送される記録媒体の表面に転写する転写部とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−2560(P2010−2560A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160166(P2008−160166)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】