説明

ベンゾトリアゾールキナーゼモジュレーター

本発明は、式(I)(式中、R、R、R、R、及びmは、明細書および請求項で定義されたとおりである)の新規ベンゾトリアゾール誘導体、ならびにその生理学的に許容しうる塩に関する。これらの化合物はJNKおよびCDKモジュレーターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、c−Jun N−末端キナーゼ(JNK)およびサイクリン依存性キナーゼ(CDK)の調節方法ならびにヘテロ環状化合物、より特定的にはベンゾトリアゾール誘導体でJNKまたはCDKを調節することにより緩和できる疾患または症状で苦しんでいる対象の処置方法に関する。本発明は、さらに、新規なヘテロ環状化合物およびその化合物を含む医薬組成物に関する。
【0002】
c−Jun N−末端キナーゼ(JNK)は、p38と共に、マイトジェン−活性化プロテインキナーゼファミリーの構成員であり、細胞外のシグナル制御キナーゼ(ERK)である。10個のスプライス変異体をコードする3個の異なる遺伝子(jnk1、jnk2およびjnk3)が同定されている(Y.T. Ip and R.J. Davis, Curr. Opin. Cell Biol. (1998) 10:205-19)。JNK1およびJNK2は、広汎な組織で発現され、一方、JNK3は主としてニューロンで、そしてさらに少ない程度で、心臓および精巣で発現される(D.D. Yang et al., Nature (1997) 389:865-70)。JNKファミリーのメンバーは、炎症性サイトカイン、例えば腫瘍壊死因子α(TNF−α)およびインターロイキン−1β(IL−1β)、ならびに環境ストレスにより活性化される。JNKの活性化には、Thr−183およびTyr−185の二重リン酸化を経由して、その上流のキナーゼ、MKK4およびMKK7が介在する(B. Derijard et al., Cell (1994) 76:1025-37)。MKK4およびMMK7は、外部刺激および細胞状況に依存して、MEKK1およびMEKK4を含む様々な上流キナーゼで活性化することができることが示されている(D. Boyle at al., Arthritis Pheum (2003) 48:2450-24)。JNKシグナリングの特異性は、JNK相互作用タンパク質と呼ばれている骨格タンパク質を用いる多成分のキナーゼカスケードを含有するJNK特異的シグナリング錯体を形成することにより達成される(J. Yasuda et al., Mol. Cell. Biol. (1999) 19:7245-54)。JNKは、転写因子、例えばc−Jun、アクチベータータンパク質−1(AP−1)ファミリーの成分、およびATF2、ならびに非転写因子、例えばIRS−1およびBcl−2を含む、特異的な基質をリン酸化することにより、炎症、T細胞機能、アポトーシスおよび細胞生き残りにおいて重要な役割を果たすことが示されている(A.M. Manning and R.J. Davis, Nat. Rev. Drug Discov. (2003) 2:554-65)。JNKの過活性化は、自己免疫、炎症、代謝、神経疾患および癌における重要なメカニズムであると考えられる。
【0003】
関節リウマチ(RA)は、関節の慢性的な炎症を特徴とする全身性の自己免疫疾患である。炎症プロセスにより引き起こされる関節の腫脹および痛みに加えて、大部分のRA患者は、最終的には、衰弱性関節損傷および変形を発症する。細胞および動物モデルにおける説得力のある薬理学的および遺伝子的証拠のいくつかのラインは、RAの病因において、活性化されたJNKの関与および重要性を強く示唆している。第一に、JNKの異常な活性化は、RA患者からのヒト関節炎の関節(G. Schett et al., Arthritis Rheum (2000) 43:2501-12)および関節炎の動物モデルからの齧歯類関節炎の関節(Z. Han et al., J. Clin. Invest. (2001) 108:73-81)の両方で検出された。加えて、選択的JNK阻害剤によるJNK活性化の阻害は、ヒト滑膜細胞、マクロファージおよびリンパ細胞での炎症性サイトカインおよびMMP産生を妨げた(Z. Hara et al., (2001) 上記)。重要なことには、アジュバント関節炎のラット(Z. Hara et al., (2001) 上記)またはコラーゲン誘起関節炎のマウス(P. Gaillard et al., J Med Chem. (2005) 14:4596-607)への選択的JNK阻害剤の投与は、サイトカインおよびコラゲナーゼの発現を阻害することにより、関節を破壊から有効に守り、足の腫脹を有意に減少させた。さらに、JNK2欠乏マウスは関節破壊から部分的に守られるが、受動的コラーゲン誘起関節炎モデルでの足腫脹および炎症に対してはほとんど効果を示さなかった。これらの研究は、マトリックスの劣化、炎症および足腫脹におけるそれらの役割に関して、JNK2が機能的にJNK1と重複することを示している。したがって、JNK1およびJNK2活性の双方を合わせて阻害することが、RAの有効な治療に対して必要である(Z. Hara et al., Arthritis Rheum. (2002) 46:818-23)。
【0004】
喘息は、細胞の炎症過程の存在および気道の構造的変化を伴う気管支の過応答性を特徴とする気道の慢性炎症性疾患である(B. Bradley et al., J. Allergy Clin. Immunol. (1991) 88:661-74)。この障害は、Tリンパ細胞、好酸球、肥満細胞、好中球および上皮細胞を含む、気道における多くの細胞タイプにより促進されることが示されている(J. Bousquet et al., Am. J. Respir. Crit. Care Med. (2000) 161:1720-45)。JNKは、選択的JNK阻害剤を用いた喘息の細胞および動物モデルにおける最近のコンセプト証明研究に基づき、喘息に対する有望な治療ターゲットとして浮上している(K. Blease et al., Expert Opin. Emerg. Drugs (2003) 8:71-81)。JNK阻害剤は、活性化されたヒト気道平滑細胞におけるRANTES産生を有意に妨げることが示された(K. Kujime et al., J. Immunol. (2000) 164:3222-28)。より重要なことには、JNK阻害剤は、慢性ラットおよびマウスモデルにおいて、細胞浸潤、炎症、過応答性、平滑筋増殖およびIgE産生を減少させるそれらの能力に対して良好な効能を示した(P. Nath et al., Eur. J. Pharmacol. (2005) 506:273-83; P. Eynott et al., Br. J. Pharmacol. (2003) 140:1373-80)。これらの所見は、アレルギー性炎症、過応答性に関連する気道リモデリング過程におけるJNKの重要な役割を示唆している。したがって、JNK活性の妨害は、喘息の処置に有益であると期待される。
【0005】
2型糖尿病は、酸化性ストレスに関連する慢性の低レベル炎症および異常脂質代謝の結果としての、インスリン抵抗性およびインスリン分泌機能障害を特徴とする、最も深刻で、蔓延している代謝疾患である。JNK活性は、肥満および糖尿病条件下に種々の糖尿病の標的組織において異常に上昇することが報告されている(J. Hirosumi et al., Nature (2002) 420:333-36; H. Kaneto, Expert. Opin. Ther. Targets (2005) 9:581-92)。炎症性サイトカインおよび酸化性ストレスによるJNK経路の活性化は、Ser307でのインスリン受容体基質−1(IRS−1)のリン酸化を経るインスリンシグナリングを負に制御し、したがって、インスリン抵抗性と耐糖能に寄与する(J. Hirosumi et al., Nature (2002) 上記;Y. Lee et al., J. Biol. Chem. (2003) 278: 2896-902;Y. Nakatani et al., J. Biol. Chem. (2004) 279:45803-09)。説得力のある遺伝的証拠は、遺伝的(ob/ob)肥満マウスまたは食事肥満マウスのいずれかと交差させたjnk−/−マウスを用いた的確な動物モデル研究からきた。JNK1(JNK1−/−)を欠損し、JNK2機能(jnk2−/−)を欠損していないと、肥満マウスを体重増加、定常状態での血糖値の増加、および血漿インスリン濃度の減少から保護した(J. Hirosumi et al., Nature (2002) 上記)。さらに、小分子JNK阻害剤、CC105(B. Bennett et al., Curr. Opin. Pharmacol. (2003) 3:420-25)またはJNK相互作用タンパク質−1(JIP−1)のJNK結合領域に由来するJNK阻害性ペプチドI(JIP)(H. Kaneto et al., Nat. Med. (2004) 10:1128-32)のいずれかを投与することにより、有意により低い血糖およびより高い血漿インスリン濃度を含む、有益な効果が遺伝的糖尿病モデル(db/dbマウス)において認められた。より興味深いことに、他の最近の報告では(A. Jaeschke et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. (2005) 102:6931-35)、JNK2は、インスリン産生β細胞の自己免疫破壊により引き起こされる1型糖尿病において重要な役割を果たすことが明らかとなった。JNK発現が不足した非肥満糖尿病マウスは、おそらくはTh2表現型への偏った分極により、破壊的膵島炎の減少および糖尿病への疾患の進行がより少ないことを示した。総合すれば、これらの研究は、肥満/2型糖尿病の処置におけるJNK阻害剤の有効性を示した。
【0006】
神経変性性疾患、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)および脳卒中は、シナプス損失、ニューロンの萎縮および死を特徴とする。c−Jun活性化に導くJNK経路は、種々の刺激の誘起によって、単離された一次胚ニューロンおよび多重ニューロン細胞系のアポトーシスにおいて原因となる役割を果たすことが示されている(D. Bozyczko-Coyne et al., Curr. Drug Targets CNS Neurol. Disord. (2002) 1:31-49)。JNKの過活性化が、AD患者からのヒト脳(J. Pei et al., J. Alzheimers Dis. (2001) 3:41-48)または神経変性性疾患の動物モデル由来の齧歯類脳切片(M. Saporito et al., J. Neurochem. (2000) 75:1200-08)において観察された。例えば、ホスホ−JNKの増加が、AD患者からの解剖脳において検出された。β−アミロイドペプチド投与で誘起されるADの齧歯類モデルにおけるJNK阻害性ペプチド(JIP−1ペプチド)の投与は、シナプス可塑性の欠損を予防した。PD(MPTPモデル)の動物モデルにおいて、ホスホ−MKK4およびホスホ−JNKの増加が、神経細胞死に付随して認められた。JNK阻害性ペプチド(JIP−1ペプチド)のマウスの線条体へのアデノウイルス性遺伝子導入は、MPTP−介在JNK、c−Junおよびカスパーゼ活性化を阻害することにより行動欠陥を軽減し、したがって、黒質におけるニューロン細胞死を妨げる(X. Xia et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. (2001) 98:10433-38)。加えて、グルタメート興奮毒性で誘起される虚血発作の動物モデルにおいて、JNK3が欠損し、JNK1またはJNK2が欠損していないマウスは、カイニン酸(グルタメート受容体アゴニスト)介在発作またはニューロン死に抵抗性であった(D. D. Yang et al., Nature (1997) 389:865-70)。これらのデータは、JNK3が、虚血条件における重要な成分であるグルタメート興奮毒性の主原因であることを示唆している。総合すれば、データは、JNKがニューロン細胞死に関連する多数のCNS疾患の興味ある標的であることを示唆している。
【0007】
制御されていない血管新生と共に、コントロールされていない細胞の成長、増殖および移動は、悪性腫瘍の形成をもたらす。JNKシグナル伝達経路は、アポトーシスにおいてのみ作用するものではなく、AP1活性化をもたらす持続的なJNK活性化は、最近、特異的な癌のタイプ、例えばグリア腫瘍およびBCL−ABL変換Bリンパ芽球の細胞生き残りに寄与することに関係している(M. Antonyak et al., Oncogene (2002) 21:5038-46; P. Hess et al., Nat. Genet. (2002) 32:201-05)。グリア腫瘍の場合、JNK/AP1活性の向上が、原発性脳腫瘍試料の大部分において見られた。形質転換Bリンパ芽球について、BCL−ABLは、JNK経路を活性化することが示されており、これは、次いで、抗アポトーシスbcl−2遺伝子の発現をアップレギュレートした。興味深いことに、処置難冶性のAML患者において見られる多剤耐性および過増殖は、これらのAML試料に存在する持続的なJNK活性に原因として結びついている(L. Cripe et al., Leukemia (2002) 16:799-812)。白血球細胞におけるJNKの活性化は、多剤耐性の原因となるmdr1およびMRP1等の流出ポンプの誘起された発現をもたらす。また、グルタチオン−S−トランスフェラーゼπおよびγ−グルタミルシステインシンターゼを含む酸化性ストレスに応答する生き残り有益性を持つ遺伝子は、同じく、JNK経路によりアップレギュレートされた。
したがって、JNKモジュレーターは、種々の疾患および/または症状の処置に有用である。
【0008】
細胞増殖の制御におけるサイクリン依存性キナーゼ(”cdk”)の役割は、十分に確立されている。抗増殖性治療剤としての、Cdk4、Cdk2およびCdk1における標的を阻害する化合物の使用を有効なものとする多くの文献が存在する。例えば、J. Lukas et al., Nature (1995) 79:573-82; J.R. Nevins, Science (1992) 258:424-29; I.K. Lim et al., Mol Carcinogen (1998) 23:25-35; S.W. Tam et al., Oncogene (1994) 9:2663-74; B. Driscoll et al., Am. J. Physiol. (1997) 273 (Lung Cell. Mol. Physiol.) L941-L949; およびJ. Sang et al., Chin. Sci. Bull. (1999) 44:541-44参照。細胞増殖の阻害剤は、異常な細胞成長を特徴とする疾患過程、例えば癌、ならびに例えば炎症(例えば、良性前立腺肥大、家族性腺腫、ポリポーシス、神経線維腫症、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、移植拒絶感染症)、ウイルス感染症(ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン−バーウイルスを含むが、これらに限定されない)、自己免疫疾患(例えば、狼瘡、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患)、神経変性性障害(アルツハイマー病を含むが、これに限定されない)、および神経変性性疾患(例えば、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症、および大脳変性)を含む他の細胞増殖性障害の処置に有用である可逆性細胞増殖抑制剤として作用する。
【0009】
本発明の一つの態様は、式I:
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
Rは、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、または
【0012】
【化2】

【0013】
から選択される基であり、
ここで、
各々のRは、独立に、H、低級アルキル、OH、またはヒドロキシ低級アルキルであり;
各々のRは、独立に、H、低級アルキル、ハロ、ニトロ、またはハロ低級アルキルであり;
pは、2、3、または4であり;
Xは、O、CR、C(=O)、またはS(O)であり;
は、水素、ハロ、アルキル、またはNHであり;
の各々は、独立に、ハロ、−NO、低級アルキル、−CN、−OR、−NR、−C(O)−R
―O−C(O)−R、−CF、−CHF、−SO−R10であるか、またはRの2個はアルキレンジオキシを形成し;
は、水素、低級アルキル、シアノ、−(CHOR、−(CHNR、−(CHC(O)−NR
−(CH−OC(O)−NR、−(CH−C(O)−OR;−NR−SO−R10、−(CH−NR−C(O)−R11、または−(CH−NR−C(O)−ORであり;
は、水素またはアルキルであるか;
あるいはRおよびRは、一緒になって、アルキレンジオキシを形成し;
は、水素、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、または−NRであり;
10は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、または−NRであり;
11は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、または(ヘテロシクリル)アルキルであり;
およびRは、各々独立に、水素または低級アルキルであり;
は、水素、低級アルキル、またはアシルであり;
は、水素、低級アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキルであるか;
あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、場合によりOH、オキソ、低級アルキル、低級アルコキシ、またはアシルで置換されている、少なくとも1個の窒素環原子を含むヘテロシクリルを形成し;
mおよびxの各々は、独立に、0〜2の整数であり;
Yは、水素、−(CHOR、−(CH−C(O)−Rまたは−(CH−C(O)−ORであり;
yおよびzの各々は、独立に、0または1であり;
nは0〜4の整数である)
の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0014】
本発明は、また、医薬組成物、使用方法、および上記の化合物の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の化合物および組成物は、c−Jun N−末端キナーゼが介在する障害、例えば自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、神経障害、および癌の治療および/または予防に有用である。いくつかの実施態様において、本発明の化合物および組成物は、関節リウマチ、喘息、2型糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、および/または脳卒中の治療および/または予防に有用である。
【0016】
本発明の化合物および組成物は、一般に異常な細胞成長を特徴とする疾患過程であるCDK介在障害、例えば癌、ならびに例えば炎症(例えば、良性前立腺肥大、家族性腺腫、ポリポーシス、神経線維腫症、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、移植拒絶感染症)、ウイルス感染症(ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン−バーウイルスを含むが、これらに限定されない)、自己免疫疾患(例えば、狼瘡、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患)、神経変性性障害(アルツハイマー病を含むが、これに限定されない)、および神経変性性疾患(例えば、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症、および大脳変性)を含む他の細胞増殖性障害の治療および/または予防に有用である。
【0017】
特に断りのない限り、明細書および特許請求の範囲を含む本出願で使用した以下の用語は、以下に示した定義を有する。明細書および添付の特許請求の範囲で使用した単数形「a」、「an」、および「the」は、内容から明らかに違うものとして示されない限り、複数の意味をも含むことに注意されたい。
【0018】
「アルキル」は、1〜12個の炭素原子を有する、炭素原子および水素原子のみからなる、一価直鎖または分岐飽和炭化水素基を意味する。
「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子のアルキル基、すなわち、C〜Cアルキルを指す。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「分岐アルキル」は、少なくとも1個の分岐を有するアルキル部分、例えば、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチルなどを指す。同様に、「低級アルコキシ」は、式−ORの基を指し、また、「アシル」は、式−C(O)Rの基を指し、ここで、Rは、低級アルキル基である。
【0019】
「アルキレン」は、1〜6個の炭素原子の直鎖飽和二価炭化水素基、または3〜6個の炭素原子の分岐飽和二価炭化水素基、例えば、メチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレンなどを意味する。
【0020】
「アルキレンジオキシ」は、式−O−R−O−の二価基を意味し、ここで、Rは、本明細書で定義したようなアルキル基である。
【0021】
「アリール」は、単環、二環、または三環式芳香族環からなる一価環式芳香族炭化水素基を意味する。フェニルまたはナフチルが好ましい。アリール基は、本明細書で定義したように場合により置換されていてもよい。アリール基の例として、場合により置換されている、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペラヂニル(benzopiperadinyl)、ベンゾピペラジニル(benzopiperazinyl)、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニルなど(それらの部分的に水素化されている誘導体も含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
「シクロアルキル」は、単環または二環からなる一価飽和炭素環式基を意味する。シクロアルキルは、1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく、ここでの各置換基は、特に断りない限り、独立して、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、またはジアルキルアミノである。好ましいシクロアルキルは、C3〜7モノ環状シクロアルキルである。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル(それらの部分的に不飽和な誘導体も含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「シクロアルキルアルキル」は、式−R−Rの基を意味し、ここで、Rはアルキレンであり、Rは本明細書で定義したようなシクロアルキルである。
【0024】
「ヘテロアルキル」は、1、2、または3個の水素原子が、−OR、−NR、および−S(O)(ここで、nは0〜2の整数である)からなる群より独立に選択される置換基で置き換えられているC〜Cアルキルなどの本明細書で定義したようなアルキル基を意味し、ヘテロアルキル基の結合点は、炭素原子を介してであると理解され、ここで、Rは、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;RおよびRは、互いに独立に、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;nが0である場合、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;nが1である場合、Rは、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;nが2である場合、Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、またはジアルキルアミノである。代表例として、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
「ヘテロアリール」は、N、O、またはSから選択される1、2、または3個の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである、少なくとも1個の芳香族環を有する5〜12個の環原子の単環または二環式基を意味し、ヘテロアリール基の結合点は芳香族環上であると理解される。ヘテロアリール環は、本明細書で定義したように場合により置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例として、場合により置換されている、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、チエニル、チオフェニル、フラニル、ピラニル、ピリジニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジル、ピリダジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾピラニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、キノキサリニル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アゼピニル、ジアゼピニル、アクリジニル(それらの部分的に水素化されている誘導体も含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
互換的に使用しうる、「ハロ」、「ハロゲン」および「ハロゲン化物」なる用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード置換基を指す。
【0027】
「ハロアルキル」は、1個以上の水素が、同じまたは異なるハロゲンに置き換えられている本明細書で定義したようなアルキルを意味する。例示的なハロアルキルとして、−CHCl、−CHCF、−CHCCl、ペルフルオロアルキル(例えば−CF)が挙げられる。
【0028】
「ヘテロシクリル」は、1、2、3または4個のヘテロ原子(窒素、酸素または硫黄から選択される)を取り込んだ、1〜3個の環からなる、一価飽和基を意味する。3〜8個の環原子を有する一環性ヘテロシクリルが好ましい。ヘテロシクリル環は、本明細書で定義したように場合により置換されていてもよい。ヘテロシクリル基の例として、場合により置換されている、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼピニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キヌクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリリジニル、ベンゾチアゾリジニル、ベンゾアゾリリジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」または「ヘテロシクリル」に関連して使用されている場合の「場合により置換されている」は、C1−6アルキル、C1−6ヘテロアルキル、オキソ(すなわち、=O)、ハロアルキル、−(CHCOR、−(CHSO、C1−6アルコキシ、ハロゲン、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニル、−SONR、シアノ、ニトロ、および−NR(ここで、m、R、RおよびRは、本明細書で定義したとおりである)から選択される1個以上の置換基、好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個の置換基で独立に場合により置換されている、アリール、フェニル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルを意味する。
【0030】
定義が上記のとおりである化学基に対する好ましい基は、実施例で具体的に例示されているものである。
【0031】
「脱離基」は、合成有機化学で慣用的にそれに結び付けられている意味を有する基を意味し、すなわち、置換反応条件下で置換可能な原子または基を意味する。脱離基の例として、ハロゲン、アルカン−またはアリーレンスルホニルオキシ、例えばメタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、およびチエニルオキシ、ジハロホスフィノイルオキシ、場合により置換されているベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、アシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「場合による」または「場合により」は、その後に記載されている事象または状況が起こってもよいが起こる必要はなく、またこの記載には、事象または状況が起こる場合と起こらない場合とが含まれることを意味する。
【0033】
「疾患」および「疾患状態」は、任意の疾患、容態、症状、障害、または適応症を意味する。
【0034】
「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」は、溶媒が、それと共に記載されている反応条件下で不活性であることを意味し、これには、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N、N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレンまたはジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジンが挙げられる。特に断りない限り、本発明の反応に使用する溶媒は不活性溶媒である。
【0035】
「薬学的に許容しうる」は、一般的に安全で、無毒性で、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではなく、医薬組成物の調製において有用であることを意味し、獣医学的使用およびヒトの医薬的使用にも許容しうるものを含む。
【0036】
化合物の「薬学的に許容しうる塩」は、本明細書で定義したように薬学的に許容しうる、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。このような塩として、
塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸とで形成される酸付加塩;または、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などの有機酸とで形成される酸付加塩;あるいは、
親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンにより置き換えられている場合に形成される塩;または、有機もしくは無機塩基と配位している場合に形成される塩が挙げられる。
許容しうる有機塩基として、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンが挙げられる。許容される無機塩基として、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。
好ましい薬学的に許容しうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、およびマグネシウムから形成される塩である。
【0037】
「保護基(protective group)」または「保護基(protecting group)」は、多官能性化合物中の1個の反応性部位を選択的にブロックする基を意味し、これにより、合成化学における慣用的にそれに関連する意味において、別の保護されていない反応性部位で化学反応を選択的に行なうことができる。本発明の特定の工程は、反応体に存在する反応性窒素原子および/または酸素原子をブロックするための保護基に頼っている。例えば、「アミノ保護基」および「窒素保護基」なる用語は、本明細書において互換的に使用され、合成手順中の望ましくない反応から窒素原子を保護することを目的とする有機基を意味する。例示的な窒素保護基として、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bn)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(BOC)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、除去し易さおよびそれ以降の反応に耐えられるかという点から、基を選択する方法を知っているであろう。
【0038】
「対象」は、哺乳動物および非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、ヒト;非ヒト霊長類、例えばチンパンジー、および他の類人猿およびサル種;家畜動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、およびブタ;家庭動物、例えばウサギ、イヌ、およびネコ;実験動物(齧歯類、例えばラット、マウス、モルモットを含む)などが含まれるがこれに限定されない、哺乳類綱の任意のメンバーを意味する。非哺乳動物の例として、鳥類などが挙げられるが、これらに限定されない。「対象」なる用語は、特定の年齢または性別を意図しない。
【0039】
「治療有効量」は、疾患状態を処置するために対象に投与する場合に、疾患状態のためのこのような処置を行なうのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、処置する疾患状態、処置する疾患の重症度、対象の年齢および相対的健康状態、投与経路および投与形態、担当医師または獣医の判断、ならびに他の因子に応じて変動する。
【0040】
変化するものを言及する際の「上で定義したもの」および「本明細書で定義したもの」なる用語は、広義な変化するものの定義、ならびに、存在する場合には、好ましい、より好ましい、および最も好ましい定義が、参照により組み入れられる。
【0041】
疾患状態の「処置する」または「処置」には、
(i)疾患状態を予防すること、すなわち、疾患状態にさらされているかまたはその素因がある可能性があるが、まだ疾患状態の症状を経験または呈していない対象において、疾患状態の臨床症状を発症させないこと、
(ii)疾患状態を抑止すること、すなわち、疾患状態またはその臨床症状の発症を停止させること、
(iii)疾患状態を寛解すること、すなわち、疾患状態またはその臨床症状の一時的または永久的後退を引き起こすこと
が含まれる。
【0042】
化学反応に言及する際の「処理する」、「接触させる」、および「反応させる」なる用語は、2種以上の試薬を適切な条件下で添加または混合して、指定のおよび/または所望の生成物を製造することを意味する。指定のおよび/または所望の生成物を生成する反応は、最初に添加した2種の試薬の組合せから必ずしも直接的に得られる必要はなく、すなわち、指定のおよび/または所望の生成物の形成を最終的にもたらす、混合物中に生成される1種以上の中間体が存在していてもよい。
【0043】
一般に、本出願で使用した命名法は、IUPAC体系的命名法の作成のためのバイルシュタイン研究所のコンピューターシステムであるAUTONOM(商標)v.4.0に基づいている。本明細書で示される化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を使用して作成した。本明細書の構造中の炭素原子、酸素原子、または窒素原子上に出現する全ての空結合価(open valency)は、水素原子の存在を示す。
【0044】
キラル炭素が化学構造中に存在する場合はいつでも、そのキラル炭素に関連する全ての立体異性体が、その構造に包含されることが意図される。
【0045】
本明細書で同定される全ての特許および刊行物の全体は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0046】
本発明の一つの態様は、式I:
【0047】
【化3】

【0048】
(式中、
Rは、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、または
【0049】
【化4】

【0050】
から選択される基であり、
ここで、
各々のRは、独立に、H、低級アルキル、OH、またはヒドロキシ低級アルキルであり;
各々のRは、独立に、H、低級アルキル、ハロ、ニトロ、またはハロ低級アルキルであり;
pは、2、3、または4であり;
Xは、O、CR、C(=O)、またはS(O)であり;
は、水素、ハロ、アルキル、またはNHであり;
の各々は、独立に、ハロ、−NO、低級アルキル、−CN、−OR、−NR、−C(O)−R
―O−C(O)−R、−CF、−CHF、−SO−R10であるか、またはRの2個はアルキレンジオキシを形成し;
は、水素、低級アルキル、シアノ、−(CHOR、−(CHNR、−(CHC(O)−NR
−(CH−OC(O)−NR、−(CH−C(O)−OR;−NR−SO−R10、−(CH−NR−C(O)−R11、または−(CH−NR−C(O)−ORであり;
は、水素またはアルキルであるか;
あるいはRおよびRは、一緒になって、アルキレンジオキシを形成し;
は、水素、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、または−NRであり;
10は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、または−NRであり;
11は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、または(ヘテロシクリル)アルキルであり;
およびRは、各々独立に、水素または低級アルキルであり;
は、水素、低級アルキル、またはアシルであり;
は、水素、低級アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキルであるか;
あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、場合によりOH、オキソ、低級アルキル、低級アルコキシ、またはアシルで置換されている、少なくとも1個の窒素環原子を含むヘテロシクリルを形成し;
mおよびxの各々は、独立に、0〜2の整数であり;
Yは、水素、−(CHOR、−(CH−C(O)−Rまたは−(CH−C(O)−ORであり;
yおよびzの各々は、独立に、0または1であり;
nは0〜4の整数である)
の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0051】
いくつかの実施態様において、Rは、水素またはメチルである。
【0052】
他の実施態様において、Rは、
【0053】
【化5】

【0054】
であり、ここで、zは1であり、Xは、OまたはCRである。いくつかの実施態様において、Rは、OH、−C(O)NR、−NR、−NR−SO10、または−ORである。
【0055】
さらに他の実施態様において、mは0である。
【0056】
また他の実施態様において、Rは、水素、メチル、クロロ、またはフルオロである。
【0057】
一つの実施態様において、Xは、CRであり、ここで、RおよびRは、本明細書で定義したものである。
【0058】
他の実施態様において、Rは、水素またはメチルである。
【0059】
さらにいくつかの実施態様において、zは1である。
【0060】
さらにまた他の実施態様において、Rは、−NR−SO−R10であり、ここで、RおよびR10は、本明細書で定義したものである。
【0061】
他の実施態様において、xは2であり、Rは、水素またはメチルであり、R10は、メチル、エチル、または−N(CHである。
【0062】
さらにまた他の実施態様において、zは1であり、Rは、水素、低級アルキル、シアノ、−(CHOR、または−(CHNRであるか、あるいはRおよびRは、一緒になって、アルキレンジオキシを形成し、ここで、n、R、R、およびRは、本明細書で定義したものである。
【0063】
また他の実施態様において、Rは、−(CHORであり、nは0または1であり、Rは、水素またはメチルである。
【0064】
さらに他の実施態様において、Rは、−(CHNRであり、ここで、n、R、およびRは、本明細書で定義したものである。これらの実施態様のうち、nが0であり、Rが水素である場合、Rは、水素、ピリミジン−2−イル、またはピリジン−2−イルである。これらの実施態様内のさらに他の実施態様において、nは0であり、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルを形成する。
【0065】
また他の実施態様において、Rは、水素、メチル、エチル、またはシアノである。
【0066】
他の実施態様において、RおよびRは、一緒になって、エチレンジオキシを形成する。
【0067】
さらに他の実施態様において、式Iの化合物は、zが1であり、Rが、−(CH−NR−C(O)−R11(ここで、n、R、およびR11は、本明細書で定義したものである)であるものを包含する。これらの実施態様のうち、いくつかの例において、nは0であり、Rは、水素またはメチルであり、R11は、メチル、エチル、メトキシメチル、ヒドロキシメチル、(モルホリン−4−イル)メチル、または(4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチルである。
【0068】
また他の実施態様において、zは1であり、Rは、−(CH−C(O)−NRであり、ここで、n、R、およびRは、本明細書で定義したものである。これらの実施態様のうち、いくつか例において、nは0であり、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、または4−メチル−ピペラジン−1−イルを形成する。さらに他の実施態様において、nは0であり、Rは水素またはメチルであり、Rは、(2−アミノ−2−メチル)プロピル、(2−ヒドロキシ)エチル、テトラヒドロピラン−4−イル、シクロプロピル、またはエチルである。
【0069】
他の実施態様において、zは1であり、Rは、−(CH−C(O)−ORであり、ここで、nおよびRは、本明細書で定義したものである。これらの実施態様のうち、いくつかの例において、nは0であり、Rは、水素またはメチルである。
【0070】
さらに他の実施態様において、RおよびRは、水素であり、zは0であり、yは1であり、Yは、シクロペンチル環部分の3位のヒドロキシである。
【0071】
また他の実施態様において、RおよびRは、水素であり、zは1であり、yは1であり、Yは、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、またはシクロヘキシル環部分の2位の−COCHCH基である。
【0072】
式Iの化合物のいくつかの実施態様において、zは1であり、Xは、O、C(=O)、またはSOである。
【0073】
式Iの化合物の他の実施態様において、XはNRであり、ここで、Rは、請求項1に定義したものである。これらの実施態様のうち、いくつかの例において、Rは、水素、−S(O)CH、または−CHC(O)NHである。
【0074】
本明細書に記載の異なる基の組み合わせが、他の実施態様を形成してもよいことを理解されたい。このようにして、種々の異なる化合物が、本発明内で実施態様とされる。例えば、一つの実施態様において、Xは、CRであり、ここで、RおよびRは、本明細書で定義したものである。この実施態様のうち、いくつかの例において、Rは、水素またはメチルである。この実施態様のうちのさらに他の例において、zは1であり、Rは、−NR−SO−R10であり、ここで、RおよびR10は、本明細書で定義したものである。これらの例のうち、いくつかの例において、Rは、水素またはメチルであり、R10は、メチル、エチル、または−N(CHである。この実施態様のうちのまた他の例において、zは1であり、Rは、水素、低級アルキル、シアノ、−(CHOR、または−(CHNRであるか、あるいはRおよびRは、一緒になって、アルキレンジオキシを形成し、ここで、n、R、R、およびRは、本明細書で定義したものである。これらの例のうち、いくつかの場合において、Rは、−(CHORであり、nは0または1であり、Rは、水素またはメチルである。これらの例のうちの他の場合において、Rは、−(CHNRであり、ここで、n、R、およびRは、本明細書で定義したものである。これらの場合のうち、特定の化合物のいくつかは、nが0であり、Rが水素であり、Rが、水素、ピリミジン−2−イル、またはピリジン−2−イルであるものを包含する。これらの場合のうちの他の特定の化合物は、nが0であり、RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルを形成しているものを包含する。さらに他の場合、Rは、水素、メチル、エチル、またはシアノである。この実施態様のうちのいくつかの例において、RおよびRは、一緒になって、エチレンジオキシを形成する。
【0075】
さらに他の実施態様において、式Iの化合物は、zが1であり、Rが、−(CH−NR−C(O)−R11(ここで、n、R、およびR11は、本明細書で定義したものである)であるものを包含する。これらの実施態様のうち、いくつかの例において、nは0であり、Rは、水素またはメチルであり、R11は、メチル、エチル、メトキシメチル、ヒドロキシメチル、(モルホリン−4−イル)メチル、または(4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチルである。
【0076】
また他の実施態様において、zは1であり、Rは、−(CH−C(O)−NRであり、ここで、n、R、およびRは、本明細書で定義したものである。これらの実施態様のうち、いくつかの例において、nは0であり、RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、または4−メチル−ピペラジン−1−イルを形成する。さらに他の例において、nは0であり、Rは水素またはメチルであり、Rは、(2−アミノ−2−メチル)プロピル、(2−ヒドロキシ)エチル、テトラヒドロピラン−4−イル、シクロプロピル、またはエチルである。
【0077】
他の実施態様において、zは1であり、Rは、−(CH−C(O)−ORであり、ここで、nおよびRは、本明細書で定義したものである。これらの実施態様のうち、いくつかの例において、nは0であり、Rは、水素またはメチルである。
【0078】
さらに他の実施態様において、RおよびRは、水素であり、zは0であり、yは1であり、Yは、シクロペンチル環部分の3位のヒドロキシである。
【0079】
また他の実施態様において、RおよびRは、水素であり、zは1であり、yは1であり、Yは、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、またはシクロヘキシル環部分の2位の−COCHCH基である。
【0080】
式Iの化合物のいくつかの実施態様において、zは1であり、Xは、O、C(=O)、またはSOである。
【0081】
式Iの化合物の他の実施態様において、XはNRであり、ここで、Rは、請求項1に定義したものである。これらの実施態様のうち、いくつかの例において、Rは、水素、−S(O)CH、または−CHC(O)NHである。
【0082】
さらに他の実施態様において、式Iの化合物は、式IA:
【0083】
【化6】

【0084】
のものまたはその薬学的に許容しうる塩である(式中、X、R、R、R、X、Y、m、y、およびzは本明細書で定義したものである)。
本発明の代表的化合物を下表1に示す。
【0085】
【表1】





























【0086】
合成
本発明の化合物は、以下の実施例の部に示した例示的な例に記載の様々な方法により製造できる。これらの化合物の調製に使用する出発材料および試薬は、一般に、アルドリッチ・ケミカル社などの業者から入手できるか、または、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis;Wiley & Sons:New York、1991、Vol 1-15;Rodd's Chemistry of Cabon Compounds、Elsevier Science Publishers、1989、Vol 1-5および追補;ならびにOrganic Reactions、Wiley & Sons:New York、1991、Vol 1-40などの文献に示される手順に従って、当業者に既知の方法により調製される。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成できるいくつかの方法の単なる例示であり、これらの合成反応スキームに様々な改変を行なうことができ、これは本出願に含まれる開示を参照すれば当業者には思い付くであろう。
【0087】
合成反応スキームの出発材料および中間体は、所望であれば、慣用的な技術(ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用して単離精製できる。このような材料は、慣用的な手段(物理定数およびスペクトルデータなどが挙げられる)を使用して特徴づけることができる。
【0088】
特に断りのない限り、本明細書に記載した反応は、好ましくは、不活性雰囲気下で、大気圧で、約−78℃〜約230℃の範囲の反応温度、最も好ましく簡便には室温(または周囲温度)で、例えば約20℃で行なう。
【0089】
【化7】

【0090】
スキームIにおいて、R、RおよびRならびにzは、上で定義したとおりであり、YはClまたはSMeであり、Zは、MeSOまたはClである。工程Aにおいて、置換された4−クロロピリミジンは、水素化ナトリウムのような塩基の存在下に、N,N−ジメチルホルムアミドのような極性非プロトン性溶媒中で、0℃〜約RTの間の範囲の温度で、様々に置換された1H−ベンゾトリアゾールとSNAr反応する。
【0091】
工程Bにおいて、チオメチル基Yは、クロロホルムのような非プロトン性溶媒中での3−クロロ過安息香酸での酸化により、あるいはN−クロロコハク酸イミドでの塩素化により、脱離基に変換される。
【0092】
工程Cにおいて、脱離基YまたはZ(ClまたはMeSO)は、1−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性溶媒中、約100℃〜約130℃の間の範囲の温度で混合物を加熱することにより熱的に、あるいはテトラヒドロフラン等の極性非プロトン性溶媒中、RT〜60℃の間の範囲の温度でトリエチルアミン等の塩基で処理することにより、一級アミンで置換される。アミンには、例えば、様々に置換されたシクロヘキシルアミンおよびシクロペンチルアミン等のシクロアルキルアミン;イソブチルアミン等のアルキルアミン;4−アミノ−1−ブタノール等のヒドロキシアルキルアミン;4−アミノテトラヒドロピラン、4−アミノ−1−BOC−ピペリジン等のヘテロ環状アミンが含まれてよい。多数の様々に置換されたアルキル、シクロアルキルおよびヘテロ環状アミンが市販されているか、あるいは当業者に周知の手法により容易に製造される。
次いで、生成物は、例えば、抽出、結晶化、分取用HPLC、フラッシュクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーなどにより、精製することができる。
【0093】
一般式(iv)の化合物は、スキームIIに示されている変換を受けて、本発明の目的である化合物を与えることができる。
【0094】
【化8】

【0095】
スキームIIにおいて、R、R11、RおよびRは、上で定義したとおりである。Rは、COR11、CHCONR,SO11、またはSONRである。Rは、アルキル、ヘテロアルキル、(ヘテロ環状)アルキルである。RおよびRは、独立に、H、アルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、またはヘテロ環状である。RおよびRは、独立に、H、アルキル、シクロアルキル、またはヘテロ環状である。Zは、ヘテロ環状である。RはCOR11、SO11またはSONRである。Rは、アルキルまたはアリールである。
【0096】
工程F:または,NMP、加熱または,NMP、MWまたはNaBH,MeOH。
工程G:NaH、,NMP。
工程H:NaOH、THF。
工程I:,BOP、DIPEA、THF。
工程J:LAH、THF。
工程N:1.IBX、DMSO;2.,NaBH(OAc)、AcOH、DCE。
工程K:PPh、DIAD、,PhMe。
工程L:,N2H4、EtOH、加熱
工程M:1.HCl、THF;2.,THF。
【0097】
がNHである場合、一般式(iv)の化合物は、1−メチル−2−ピロリジノン等の極性非プロトン性溶媒中、約RT〜70℃の間の範囲の温度で、例えば無水酢酸等のアシル化剤を用いて、工程Fに記載されているように、アシル化またはスルホニル化反応することができ;同じ条件下に、(iv)は、スルホニル化剤として、例えば無水メタンスルホン酸を用いてスルホニル化しうる。あるいは、(iv)は、1−メチル−2−ピロリジノン等の極性非プロトン性溶媒中、高温で、マイクロ波条件下に、ハロゲン化ヘテロアリール、例えば2−フルオロピリジンを用いて、アリール化反応することができる。
【0098】
アシル化剤およびスルホニル化剤およびは、例えば、アルキル無水物、環状無水物、塩化アシルおよび塩化ベンゾイル、アルキルスルホニル無水物、ならびに塩化アルキルスルホニルおよび塩化ベンゾイルスルホニルを含みうる。
【0099】
一般式(v)の生成物を得る別法は、メタノール等の極性プロトン性溶媒中、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、およびホルムアルデヒド等のアルデヒドを用いる、還元的アミノ化反応によるものであり、生成物は、続いて上記と同じ条件を用いるアシル化またはスルホニル化することができる。多数のアルキル、シクロアルキルおよびアリールアルデヒドは、市販されているか、または当業者に周知の手法により容易に製造される。
【0100】
工程Gにおいて、一般式(v)のアミン、アミドまたはスルホンアミドは、1−メチル−2−ピロリジノン等の極性非プロトン性溶媒中、水素化ナトリウム等の塩基およびヨウ化メチル等のアルキル化剤を用いてアルキル化される。アルキル化剤は、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化ヘテロアルキルおよびハロゲン化(ヘテロ環状)アルキルを含みうる。
【0101】
がCOOMeまたはCOOEtである場合、式(iv)のエステルは、工程Hに記載されているように、テトラヒドロフラン等の極性非プロトン性溶媒中、水酸化ナトリウム等の無機塩基の水溶液を用いて、対応するカルボン酸に加水分解することができる。続いて、カルボン酸(vi)は、工程Iに記載されているように、テトラヒドロフラン等の極性非プロトン性溶媒中、BOP等のカップリング剤およびジイソプロピルエチルアミン等の塩基の存在下に一級または二級アミンとカップリングさせて、一般式(vii)のアミドを得ることができる。アミンは、例えば、アルキルアミン、アルコキシアルキルアミン、ヒドロキシアルキルアミン、シクロアルキルアミンおよびヘテロ環状アミンを含みうる。
【0102】
がCOOMeまたはCOOEtである場合、式(iv)のエステルは、工程Jに記載されているように、THF等の極性非プロトン性溶媒中、約−78℃〜約RTの間の範囲の温度で、水素化リチウムアルミニウムで処理することにより、対応するアルコールに還元することができる。一般式(ix)のアルコールは、DMSO等の極性非プロトン性溶媒中、o−ヨードキシ安息香酸等の酸化剤で処理することにより、対応するアルデヒドに酸化することができる。この方法で得られるアルデヒドは、続いて、1,2−ジクロロエタン等の非プロトン性溶媒中、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムおよび氷酢酸の存在下に、モルホリン等の一級または二級アミンで還元的アミノ化反応することができる(工程N)。アミンhは、例えば、アルキルアミン、シクロアルキルアミンおよびヘテロ環状アミンを含みうる。あるいは、アルコール(ix)は、工程Kに記載されているように、トルエン等の非極性非プロトン性溶媒中、トリフェニルホスフィンおよびDIADの存在下に、フタルイミド等のイミドで光延反応を受けることができる。イミンは、環状およびヘテロ環状イミンを含みうる。Zがフタルイミドである場合の一般式(viii)の化合物は、高温でエタノール等の極性プロトン性溶媒中、ヒドラジンで処理して、対応する一級アミンを与えることができ、これは、次いで、工程Lに記載されているようにトリエチルアミン等の塩基の存在下に、塩化アセチル等のアシル化剤またはスルホニル化剤で処理することにより、アシル化またはスルホニル化することができる。アシル化剤およびスルホニル化剤には、市販されているかまたは当業者に周知の手法により容易に製造されるかのいずれかである、塩化アシルおよび塩化アリール、塩化スルホニルおよび塩化ベンゼンスルホニルを包含しうる。
【0103】
がO(CHOである場合、ケタール(iv)は、高温で、テトラヒドロフラン等の極性非プロトン性溶媒中、HClの水溶液で処理することにより、対応するケトンに変換することができ;このようにして得られるケトンは、低温で、テトラヒドロフラン等の極性非プロトン性溶媒中、グリニャール反応体との付加反応を経て、工程Mに記載されているように、対応する三級アルコールを与えることができる。多数のアルキル−、シクロアルキル−およびアリール−グリニャール反応体は、市販されているか、または当業者に既知の手法により容易に製造される。
【0104】
生成物は、次いで、例えば、抽出、結晶化、分取用HPLC、フラッシュクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーなどにより、精製することができる。
【0105】
用途
本発明の化合物は、CDKおよびJNKモジュレーターであり、それ自体、広い範囲のCDKおよびJNK介在障害の処置に有効であると期待される。例としてのJNK介在障害として、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、神経障害、または癌が挙げられるが、これらに限定されない。
したがって、本発明の化合物は、1以上のこのような障害を処置するために使用することができる。いくつかの実施態様において、本発明の化合物は、関節リウマチ、喘息、2型糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、または脳卒中等のJNK介在障害を処置するために使用することができる。例としてのCDK介在障害として、炎症(例えば、良性前立腺肥大、家族性腺腫、ポリポーシス、神経線維腫症、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患、移植拒絶感染症)、ウイルス感染症(ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン−バーウイルスを含み、これらに限定されない)、自己免疫疾患(例えば、狼瘡、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患)、神経変性性障害(アルツハイマー病を含み、これに限定されない)、および神経変性性疾患(例えば、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症、および大脳変性)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
投与および医薬組成物
本発明は、少なくとも1種の本発明の化合物、または個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物、またはその薬学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1種の薬学的に許容しうる担体ならびに場合により他の治療成分および/または予防成分と一緒に含む、医薬組成物を包含する。
【0107】
一般に、本発明の化合物は、治療有効量で、類似の有用性をもたらす薬剤について許容される任意の投与形態により投与される。適切な用量範囲は、典型的には、処置する疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康状態、使用する化合物の効力、投与経路および投与形態、投与が目指す適応症、ならびに担当医師の好みと経験などの数多くの因子に応じて、1日あたり1〜500mg、好ましくは1日あたり1〜100mg、最も好ましくは1日あたり1〜30mgである。このような疾患を処置する当業者は、過度の実験を行なうことなく、個人の知識および本出願の開示を頼りにして、所与の疾患に対する本発明の化合物の治療有効量を確定することができる。
【0108】
本発明の化合物は、経口(口腔内および舌下を含む)、直腸、鼻腔、局所、肺内、膣内、または非経口(筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下および静脈内を含む)投与に適した医薬製剤などの医薬製剤として、あるいは、吸入または注入による投与に適した形態の医薬製剤として投与してもよい。好ましい投与方法は、一般に、罹患度に応じて調整できる、簡便な1日用量計画を使用しての、経口である。
【0109】
本発明の化合物は、1種以上の慣用的な補助剤、担体、または希釈剤と一緒に、医薬組成物または単位用量の形態とすることができる。医薬組成物および単位用量形態は、追加の活性化合物または活性成分を含むかまたは含まない、慣用的な比率の慣用的な成分から構成されていてもよく、単位用量形態は、採用する目的の1日用量範囲に相応する任意の適切な有効量の活性成分を含みうる。医薬組成物は、錠剤もしくは充填カプセル剤、半固体剤、散剤、持続放出製剤などの固体として使用しても、または、液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、もしくは経口使用のための充填カプセル剤などの液体として使用してもよく;あるいは、直腸もしくは膣内投与のための坐剤の形態で使用してもよく;あるいは、非経口使用のための無菌注射溶液の形態で使用してもよい。したがって、錠剤1個あたり約1mgの活性成分、より広くは約0.01〜約100mgの活性成分を含む製剤が、適切な代表的な単位用量形態である。
【0110】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与用の用量形態で製剤化してもよい。医薬組成物および用量形態は、本発明の化合物またはその薬学的に許容しうる塩を活性成分として含みうる。薬学的に許容しうる担体は、固体でも液体でもよい。固体形態の調製物として、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、風味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても作用しうる1種以上の物質であってもよい。散剤では、担体は、一般に、微粉砕された活性成分との混合物である微粉砕された固体である。錠剤では、活性成分は、一般に、必要な結合能を有する担体と適切な比率で混合されており、所望の形状およびサイズに圧縮されている。散剤および錠剤は、好ましくは、活性化合物を約1〜約70%含む。適切な担体として、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点蝋、ココアバターなどが挙げられるが、これらに限定されない。「調製物」なる用語は、担体を有するかまたは有さない活性成分がそれと関連する担体により周囲を囲まれているカプセル剤を与える、担体としてのカプセル化材料を有する活性化合物の製剤を包含することが意図されている。同様に、カシェ剤およびトローチ剤も包含される。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびトローチ剤は、経口投与に適した固体形態でありうる。
【0111】
経口投与に適した他の形態として、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤などのような液体形態調製物、または、使用直前に液体形態調製物に変換されることが意図されている固体形態の調製物などが挙げられる。乳剤は、溶液中、例えばプロピレングリコール水溶液中で調製しても、または、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエートもしくはアカシアなどの乳化剤を含んでいてもよい。水性液剤は、活性成分を水に溶かし、適切な着色剤、風味剤、安定化剤および粘稠化剤を加えることにより調製することができる。水性懸濁剤は、微粉砕活性成分を、天然もしくは合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび他の公知の懸濁化剤などの粘性物質と一緒に水に分散させることにより調製することができる。固体形態の調製物には、液剤、懸濁剤、および乳剤が包含され、活性成分に加えて、着色剤、風味剤、安定化剤、緩衝剤、人工および天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含んでいてもよい。
【0112】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射による投与、例えば、ボーラス注射または連続注入による投与)用に製剤化することが可能であり、アンプル、予め充填してある注射器もしくは小容量輸液中の単位投与形態で供することができるか、または、保存剤を添加してある複数回服用のための容器で供することができる。その組成物は、懸濁剤、液剤、または、油性もしくは水性ビヒクル中の乳剤のような形態、例えば、水性ポリエチレングリコール中の液剤の形態を取ることができる。油性もしくは非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)および注射可能な有機エステル類(例えば、オレイン酸エチル)などを挙げることができ、製剤助剤、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤もしくは懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤を含んでいてもよい。あるいは、活性成分は、無菌の固体を無菌的に単離することにより得られるかまたは溶液から凍結乾燥により得られる、使用する前に適切なビヒクル(例えば、無菌で、発熱性物質を含まない水)で構成するための粉末形態であり得る。
【0113】
本発明の化合物は、表皮への局所投与用に、軟膏剤、クリーム剤もしくはローション剤または経皮貼付剤として製剤化してもよい。軟膏剤およびクリーム剤は、例えば、水性または油性の基剤を使用し、それに、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を添加して製剤化しうる。ローション剤は、水性または油性の基剤を使用して製剤化可能であり、一般に、1種以上の乳化剤、安定化剤、分散化剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤を含む。口内に局所投与するのに好適な製剤としては、風味を付けた基剤(通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガカント)中に活性薬物を含有するトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアカシアのような不活性基剤中に活性成分を含有するパステル剤;ならびに、適切な液体担体中に活性成分を含有する洗口液などが挙げられる。
【0114】
本発明の化合物は、坐剤として投与するために製剤化しうる。脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物などの低融点蝋を最初に融解させ、例えば攪拌することにより、活性成分を均質に分散させる。次いで、融解している均質な混合物を好都合な寸法の型に注ぎ入れ、冷却し、固化させる。
【0115】
本発明の化合物は、膣内投与用に製剤化しうる。活性成分に加えて、この技術分野において適切であることが知られている担体を含有する、ペッサリー剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡剤、またはスプレー剤。
【0116】
主題化合物は、鼻腔内投与用に製剤化しうる。液剤または懸濁剤を、慣用的な手段により、例えば、点滴器、ピペット、またはスプレーを用いて、鼻腔に直接適用する。製剤は、単一用量形態または複数の用量を含む形態で供しうる。点滴器またはピペットの後者の場合、これは、適切な所定容積の液剤または懸濁剤を、患者が投与することによって達成しうる。スプレー剤の場合は、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプを用いて達成しうる。
【0117】
本発明の化合物は、特に気道への、エアゾール投与(鼻腔内投与を含む)用に製剤化することができる。この化合物は、一般に、小さな粒径、例えば、5ミクロン以下の粒径を有する。このような粒径は、この技術分野において既知の手段により、例えば、微粒化により得ることができる。活性成分は、適切な噴射剤、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、もしくはジクロロテトラフルオロエタン、または二酸化炭素、あるいは他の適切なガスを用いた加圧パックに入れて供される。エアゾールは、好都合には、レシチンのような界面活性剤をも含有しうる。薬物の用量は、計量バルブで調節しうる。あるいは、活性成分は、乾燥粉末の形態で、例えば適切な粉末基剤(例えば、乳糖、デンプン、デンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドン(PVP))中のその化合物の混合粉末の形態で供することができる。粉末状担体は、鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、単位投与形態で、例えば、カプセルもしくはカートリッジ(例えば、ゼラチンの)またはブリスターパックに入れて供することができ、そこから、吸入器を用いてその粉末を投与することができる。
【0118】
望ましい場合には、製剤は、活性成分の持続的放出投与または制御放出投与に適合させた腸溶性コーティングを施して調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮薬物送達デバイスまたは皮下薬物送達デバイス内で製剤化することができる。これらの送達システムは、その化合物の持続的放出が必要な場合、および、患者による治療計画のコンプライアンスが重要である場合に有利である。経皮送達システムにおける化合物は、多くの場合、皮膚接着性固体支持体に付着させる。対象の化合物は、浸透増強剤、例えばAzone(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。持続的放出送達システムを、手術または注射により、皮下層に皮下挿入する。皮下インプラントでは、その化合物を、脂溶性膜(例えばシリコーンゴム)または生分解性ポリマー(例えばポリ乳酸)中に封入している。
【0119】
医薬調製物は、単位用量形態にあることが好ましい。そのような形態において、調製物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量へと分割されている。単位用量形態は、パッケージ調製物であることができ、そのパッケージは、パケット錠剤、カプセル剤および、バイアルまたはアンプル中の粉末剤のような調製物の個々の分量を含有する。また、単位用量形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、もしくはトローチ剤自体であってもよく、またはこれらのいずれかが適切な数でパッケージされた形態であることも可能である。
【0120】
その他の適切な医薬的担体およびそれらの製剤化は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有している代表的な医薬製剤を、以下に記載する。
【0121】
本発明の化合物は、放射線療法等の公知の抗癌処置と、または細胞増殖抑制剤もしくは細胞傷害剤(例えば、DNA相互作用剤、例えばシスプラチンまたはダウノルビシン;エトポシド等のトポイソメラーゼII阻害剤;CPT−11またはトポテカン等のトポイソメラーゼI阻害剤;パクリタクセル(paclitaxel)、ドセタクセル(docetaxel)またはエポチロン(epothilones)等のチューブリン相互作用剤;タモキシフェン(tamoxifen)等のホルモン剤;5−フルオロウラシル等のチミジラエート(thymidilaate)合成阻害剤;およびメトトレキセート(methotrexate)等の抗代謝剤と組み合わせて使用しうる(組み合わせてまたは連続して投与される)。式Iの化合物は、また、p53転写促進のモジュレーターと組み合わせて有用でありうる。
【0122】
固定の用量で製剤化した場合、上記の組み合わせ製品は、上記の用量範囲内の本発明の化合物およびその許容用量範囲内の他の薬学的に活性な薬剤または処置法とを含む。例えば、初期のcdk1阻害剤オロムシン(olomucine)は、アポトーシスの誘起における周知の細胞傷害剤と相乗的に作用することが見出されている(J. Cell Sci. (1995) 108:2897-904)。式Iの化合物は、また、同時投与または組み合わせが不適当である場合には、公知の抗癌剤または細胞傷害剤と順次に投与しうる。本発明では、投与の順序に制限は無く:式Iの化合物は、公知の抗癌剤または細胞傷害剤の投与の前または後に投与しうる。例えば、cdk阻害剤フラボピリドール(flavopiridol)の細胞毒性活性は、抗癌剤との投与順序に影響される(Cancer Res (1997) 57:3375)。
【0123】
本発明の化合物の薬理学的特性は、いくつかの薬理学的アッセイにより確認しうる。以下の例示の薬理学的アッセイは、本発明に係る化合物およびそれらの塩を用いて行われている。本発明の化合物は、1.0□M未満のIC50値およびKi値でcdk4/サイクリンD活性を示した。さらに、本発明のいくつかの化合物の抗増殖有効性を、ヒト結腸腫瘍細胞系HCT116において試験し、MTTアッセイから30□M未満、好ましくは5□M未満のIC90値が報告された。
【0124】
本発明のさらなる目的、利点、および新規な特徴は、限定することを意図するものではない、以下の実施例の試験において、当業者に明らかになろう。
【0125】
実施例
略語のリスト
BOP ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムへキサフルオロホスファート
DCE 1,2−ジクロロエタン
DCM ジクロロメタン/塩化メチレン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DIAD アゾジカルボン酸ジイソプロピル
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
LAH 水素化アルミニウムリチウム
IBX o−ヨードキシ安息香酸
m−CPBA 3−クロロペルオキシ安息香酸
MeOH メタノール
MsCl 塩化メタンスルホニル
MW マイクロ波
NCS N−クロロスクシンイミド
NMP 1−メチル−2−ピロリジノン
RT 室温
STABH トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0126】
実施例1:2,4,5−トリクロロ−ピリミジンの合成
2,4,5−トリクロロ−ピリミジンの合成を、スキームAに示した方法にしたがって実施した。
【0127】
【化9】

【0128】
5−クロロウラシル(4.5g、30.82mmol)をオキシ塩化リン(100mL)に溶解して、五塩化リン(19.2g、92.46mmol)を加えた。反応混合物を一晩加熱還流した;次に、それを室温に冷却して、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物を0℃に冷却して、アイスフレークを注意深く加えた。得られた混合物を10分間撹拌した;次に、それを水とDCMに分配した。有機相を分離して、3回水で洗浄した。水層を合わせて、2回DCMで抽出した。合わせた有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過して、減圧下で蒸発させて、さらに精製しないで黄色の油状物として2,4,5−トリクロロ−ピリミジン6g(95%収率)を得た。
【0129】
実施例2:1−(2,5−ジクロロ−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾールの合成
1−(2,5−ジクロロ−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾールの合成を、スキームBに示した方法にしたがって実施した。
【0130】
【化10】

【0131】
DMF(10mL)中のベンゾトリアゾール(2.14g、18.03mmol)の溶液を、0℃で、窒素雰囲気下、DMF(20mL)中のNaH(鉱油中60%、0.850g、21.3mmol)の溶液にゆっくり加えた。反応混合物を0℃で15分間撹拌した;次に、DMF(20mL)中の2,4,5−トリクロロピリミジン(3g、16.39mmol)の溶液を0℃でゆっくり加えた。反応混合物を一晩撹拌する間に室温に到達させた。溶媒を減圧下で蒸発させた;残留物をEtOAcで取り、3×水で洗浄した。水層を合わせて、3回EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過して、減圧下で蒸発させて、粗油状物を得た。この物質をフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/EtOAc、8/2)を通して精製して、1−(2,5−ジクロロ−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール1.5g(34%収率)を得た。
【0132】
以下の化合物を、適切なクロロピリミジンを使用して同様に調製した:
1−(2−クロロ−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール;
1−(2−クロロ−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール;および
1−(2−クロロ−5−メチル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール。
【0133】
実施例3:1−(2−メタンスルホニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾールの合成
1−(2−メタンスルホニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾールの合成を、スキームCに示した方法にしたがって実施した。
【0134】
【化11】

【0135】
工程1:1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾールの合成
1L丸底フラスコを、水素化ナトリウム分散体(10.0g、250mmol、鉱油中60%)およびDMF 200mLで満たし、得られたスラリーを氷浴で冷却した。ベンゾトリアゾール(18.02g、151mmol)を10−12分の時間をかけて分割して加えた。反応混合物を、ガス発生が消滅するために10分間撹拌した;次に、氷浴を除去して、4−クロロ−2−メチルチオピリミジン(24.07g、150mmol)を加えた。得られた混合物を室温で15分間撹拌して、次に、90℃油浴に1.5時間入れた。熱浴を止めて、反応混合物を放置して撹拌しながら一晩ゆっくり冷却した。次に、反応混合物を水500mLに注いで、20分間撹拌して、次に濾過した。回収した固体を3分割の水およびヘキサン類/EtOAc(10:1〜5:1)の混合物の3分割で洗浄して、次に乾燥させて、オフホワイトの固体として1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(27.05g、74%収率)、融点=180.5−181.7℃;MS=244(M+H)を得た。
【0136】
工程2:1−(2−メタンスルホニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾールの合成
1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(27.05g、111mmol)を、2L丸底フラスコ中に、CHCl 600mLに溶解/懸濁した。混合物を氷浴で冷却して、m−CPBA(58.03g、259mmol、ca.77%)を、15℃以下の反応温度を維持しながらゆっくり分割して加えた。反応混合物をゆっくり室温に温めて、16時間撹拌して、次に1時間還流した。それを冷却して、含水チオ硫酸ナトリウムで処理した;有機層を分離して、3分割の含水重炭酸ナトリウムで洗浄した。次に、それを硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して、懸濁液の形成まで減圧下で濃縮して、それを濾過して、乾燥させて、白色の固体として1−(2−メタンスルホニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(20.78g、68%収率)、融点=201.8−202.5℃;MS=276(M+H)を得た。
【0137】
実施例4:N−ピリミジン−2−イル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミンの合成
N−ピリミジン−2−イル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミンの合成を、スキームDに示した方法にしたがって実施した。
【0138】
【化12】

【0139】
ジオキサン/MeOH(40mL/40mL)中のトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン(10.10g、88mmol)の90℃溶液に、ゆっくりジオキサン/MeOH(40mL/40mL)中の2−クロロピリミジン(3.14g、45mmol)の溶液を加えた。反応混合物を一晩還流し、次に冷却して、形成した懸濁液を濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、別の懸濁液を形成して、それを再度濾過した。回収した液体をEtOAcと含水NaHCOに分配した。生成物が水層中に残り、3分割のCHClで抽出し、NaSO上で乾燥させて、濾過した;溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物をヘキサン類/CHCl(1/1)から再結晶化して、乾燥させて、オフホワイトの固体としてN−ピリミジン−2−イル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン(1.20g、14%収率)、融点=126.9−128.4℃;MS=193(M+H)を得た。
【0140】
実施例5:アミン類の合成
種々のアミン類の合成を、スキームEに示した方法にしたがって実施した。
【0141】
【化13】

【0142】
工程1:メタンスルホン酸(S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−プロピルエステルの合成
2−(S)−Boc−アミノ−プロパノール(10g、57.1mmol、1.00当量)を、窒素雰囲気下でDCM(200mL)に溶解した;そして、トリエチルアミン(7.49g、10.32mL、74.2mmol、1.30当量)を室温で加えた。反応混合物を0℃に冷却して、塩化メシル(7.39g、4.99mL、64.5mmol、1.13当量)を窒素雰囲気下で加えた。得られた混合物を0℃で3時間撹拌し、次に、3回HO(100mL)で洗浄し、水相を合わせて、3回DCM(50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、NaSO上で乾燥させ、濾過して、蒸発させて、白色の固体としてメタンスルホン酸(S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−プロピルエステル(14.17g、98%収率)を提供した。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ ppm 4.56-4.70(1 H、m), 4.17-4.27(1 H,m), 4.10-4.17(1 H,m), 3.89-4.02(1 H,m)、2.97-3.05(3 H,m), 1.38-1.47(9 H,m), 1.22(3 H,d,J=6.85Hz).
【0143】
同じ方法で、出発物質として2−(R)−boc−2−アミノ−プロパノール(収率=14.09g、97%収率)を使用してメタンスルホン酸(R)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−プロピルエステル(白色の固体)を調製した;1H NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm 4.55-4.67(1 H,m), 4.17-4.27(1 H,m), 4.11-4.17(1 H,m), 3.90-4.02(1 H,m), 3.02(3 H,s), 1.43(9 H,s), 1.22(3 H,d,J=6.85Hz).
【0144】
工程2:アミンAの合成
メタンスルホン酸(S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−プロピルエステル(1.00g、3.94mmol、1当量)を、窒素雰囲気下で、DMF(16mL)に溶解し、次に、KCO(1.09g、7.89mmol、2当量)および式RR’NHの適切なアミン(3.95mmol、1当量)を室温で加えた。反応混合物を90℃で1時間撹拌した。得られた混合物を濃縮して、粗固体を提供して、それを1:1 iPrOH/CHCl混合物で溶解し、2回HO(10mL)で洗浄した。水相を合わせ、3回1:1 iPrOH/CHCl混合物(20mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、NaSO上で乾燥させ、濾過して、蒸発させて、所望の粗アミンを提供した。
【0145】
同様の反応を(S)−および(R)−bocアミノメシル酸誘導体、ならびに対応する生成物を得るための以下のアミン類で実施した:スクシンイミド;2−ピロリジノン;5,5−ジメチルオキサゾリジン−2,4−ジオン;5−メチル−1H−テトラゾール;1,2,3−トリアゾール;1,2,4−トリアゾール;メチル−4−イミダゾールカルボキシラート;およびメチル−1,2,3−トリアゾール−3−カルボキシラート。
【0146】
粗混合物のH NMRを実行した。これらのbocアミノ誘導体を精製しないで次の工程で使用した。
【0147】
工程3:アミンBの合成
(S)−boc−アミノ誘導体A(3.5mmol、1当量)を、1,4−ジオキサン(5mL)中の4N HClの溶液に溶解した。反応混合物を18時間、室温で撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗固体を提供して、それを次の工程でさらに精製しないで使用した。
【0148】
この手順を使用して、以下のアミン類を調製した:
3−((R)−2−アミノ−プロピル)−5,5−ジメチル−オキサゾリジン−2,4−ジオン;
1−((R)−2−アミノ−プロピル)−ピロリジン−2,5−ジオン;
(R)−1−メチル−2−[1,2,3]トリアゾール−2−イル−エチルアミン;
(R)−1−メチル−2−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−エチルアミン;
1−((S)−2−アミノ−プロピル)−ピロリジン−2,5−ジオン;
(S)−1−メチル−2−[1,2,3]トリアゾール−2−イル−エチルアミン;
(S)−1−メチル−2−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−エチルアミン;および
(R)−1−メチル−2−(5−メチル−テトラゾール−1−イル)−エチルアミン。
【0149】
実施例6:(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキシル−アミンの合成
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキシル−アミンの合成を、スキームFに示した方法にしたがって実施した。
【0150】
【化14】

【0151】
シクロヘキシルアミン(0.21mL、1.88mmol)を、室温、窒素雰囲気下で、分割してTHF(30mL)中の1−(2,5−ジクロロ−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(250mg、0.94mmol)の溶液に加えた。得られた無色の溶液を室温で4時間撹拌した。次に、TEA(2.82mmol)を加えて、反応混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を水(50mL)とEtOAc(50mL)に分配した。有機層を分離し、2回水(50mL)で、1回ブライン(50mL)で洗浄して、次に、NaSO上で乾燥させ、濾過して、減圧下で蒸発させて、オフホワイトの固体を得た。この粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/EtOAc、98/2)を通して精製して、オフホワイトの固体として(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキシル−アミン162mg(53%収率)が得られた。MS:329.14(M+1)、301.14((M+1)−28)。
【0152】
以下の化合物を、同様の手順ならびに適切なアミンおよびピリミジン誘導体を使用して調製した:
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボニトリル;MS:320.15(M+1)、292.18((M+1)−28);
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−メチル−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキシル−アミン;MS:309.23(M+1)、281.24((M+1)−28);
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−フルオロ−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキシル−アミン;MS:313.17(M+1)、285.21((M+1)−28);
3−[(R)−2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−プロピル]−5,5−ジメチル−オキサゾリジン−2,4−ジオン;MS:381.94(M+1)、353.98((M+1)−28);
1−[(R)−2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−プロピル]−ピロリジン−2,5−ジオン;MS:351.96(M+1)、324.01((M+1)−28);
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−((R)−1−メチル−2−[1,2,3]トリアゾール−2−イル−エチル)−アミン;MS:321.99(M+1)、293.98((M+1)−28);
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−((R)−1−メチル−2−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−エチル)−アミン;MS:321.99(M+1)、293.98((M+1)−28);
1−[(S)−2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−プロピル]−ピロリジン−2,5−ジオン;MS:351.96(M+1)、324.1((M+1)−28);
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−((S)−1−メチル−2−[1,2,3]トリアゾール−2−イル−エチル)−アミン;MS:321.99(M+1)、293.98((M+1)−28);
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−[(R)−1−メチル−2−(5−メチル−テトラゾール−1−イル)−エチル]−アミン;MS:337.16(M+1)、309.13((M+1)−28);および
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−((S)−1−メチル−2−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−エチル)−アミン;MS:322.17(M+1)、294.15((M+1)−28)。
【0153】
実施例7:トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサノールの合成
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサノールを、スキームGに示した方法にしたがって実施した。
【0154】
【化15】

【0155】
NMP 15mL中の1−(2−メタンスルホニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(1.59g、6mmol)の溶液に、トランス−4−アミノシクロヘキサン(3.11g、27mmol)を加えて、得られた混合物を120℃で2時間撹拌した。次に、それを冷却し、水100mLへ注ぎ、撹拌して、一晩そのまま放置した。得られた懸濁液を濾過し、回収した固体を水で洗浄して、CHClで溶解した;溶媒を減圧下で除去した。形成した固体残留物をEtOAcで取り、濾過して、乾燥させて、白色の固体としてトランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサノール(910mg、51%収率)、融点=224.8−228.1℃;MS=311(M+H)を得た。
【0156】
以下の化合物を、同様の手順ならびに適切なアミン類を使用して調製した:
シス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサノール(白色の固体);融点=220.0−221.0℃;MS=311(M+H)
トランス−2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサノール(白色の結晶質固体);融点=166.9−169.3℃;MS=311(M+H)
(1R、3R)−3−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロペンタノール(白色の固体);融点=194.5−196.5℃;MS=297(M+H)
(1S、3S)−3−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロペンタノール(白色の固体);融点=194.1−195.9℃;MS=297(M+H)
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(4−エチル−シクロヘキシル)−アミン(白色の固体);融点=191.2−191.7℃;MS=323(M+H)
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−ピペリジン−4−イル−アミン(白色の固体;tert−ブチル4−アミノ−1−ピペリジンカルボキシラートを使用して得た、4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの標準tert−ブチルカルバマート脱保護から得た);融点=230.1−233.9℃;MS=296(M+H)
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(4−メチル−シクロヘキシル)−アミン(白色の固体);融点=192.5−196.0℃;MS=309(M+H)
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(トランス−4−メトキシ−シクロヘキシル)−アミン(白色の固体)(J. Med. Chem. (1989)32:355に記載の通りに4−メトキシ−シクロヘキサノールから得た、J. Med. Chem. (1977)20:289に記載の通りに4−メトキシ−シクロヘキサノンから得た、4−メトキシ−シクロヘキシルアミンをJ. Org. Chem. (1985)50:1160に記載の通りに4−メトキシ−シクロヘキサノンオキシムから得た);融点=184.0−186.9℃;MS=325(M+H)
N−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−N’−ピリミジン−2−イル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン(白色の固体)(N−ピリミジン−2−イル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミンを調製4に記載の通りに調製した);融点=286.0−286.4℃;MS=388(M+H)
N−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−N’−ピリミジン−2−イル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミンビス−メタンスルホン酸塩(これは、CHCl 100mL中のN−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−N’−ピリミジン−2−イル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミンビス−メタン(150mg)およびMeOHの20mLの溶液に、過剰量のメタンスルホン酸を加えて調製した。得られた混合物を濃縮して、CHCl/EtOAcから再結晶化した。固体を濾過して、乾燥させて、白色の固体としてメタンスルホン酸塩(214mg、95%収率);融点=282.6−288.9℃;MS=388(M+H)を得た)。
【0157】
同様に、以下の化合物のメタンスルホン酸塩を調製した:
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]dec−8−イル)−アミン(白色の固体);融点=207.9−209.0℃;MS=353(M+H)
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−アミン(白色の細針結晶);融点=202.0−202.4℃;MS=297(M+H);および
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(1,1−ジオキソ−ヘキサヒドロ−1λ−チオピラン−4−イル)−アミン(白色の粉末);融点=268.5−270.2℃;MS=345(M+H)
【0158】
実施例8:(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキシル−アミンの合成
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキシル−アミンの合成を、スキームHに示した方法にしたがって実施した。
【0159】
【化16】

【0160】
NMP 4mL中の1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(376mg、1.5mmol)の溶液に、N−クロロスクシンアミド(250mg、1.9mmol)および水0.5mLを加えた。混合物を、油浴に130℃で5−10分間入れて、次に、シクロヘキシルアミン(450mg、5mmol)を加えて、反応混合物を油浴中、130℃で30分間撹拌した。冷却した反応混合物を水(40mL)とEtOAc(40mL)に分配した。有機層を分離して、2回水(40mL)で洗浄し、次にNaSO上で乾燥させ、濾過して、溶媒を減圧下で除去した。粗残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、CHCl/EtOAcから再結晶化して、白色の短針結晶質固体(255mg、56%収率)として(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキシル−アミンを得た。融点=202.0−204.0℃;MS=295(M+H)
【0161】
実施例9:(1S、2R)−[2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタノールの合成
(1S、2R)−[2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタノールの合成を、スキームIに示した方法にしたがって実施した。
【0162】
【化17】

【0163】
工程1:シス−(1S、2R)−2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステルの合成
(1S、2R)−シス−2−アミノ−1−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル臭化水素酸(0.41g、1.62mmol)およびトリエチルアミン(0.30mL、2.16mmol)を、NMP 2mL中の1−(2−メタンスルホニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(0.30g、1.09mmol)の溶液に加えた。反応混合物を、45分間、120℃で撹拌して、次に、酢酸エチル50mLへ注いだ。有機層を分離し、水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて、濾過した;溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物をメタノールとジクロロメタンの溶液で粉砕した;次に、それを濾過して、乾燥させて、オフホワイトの固体としてシス−(1S、2R)−2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(0.22g、55%収率);融点=106.3−107.9℃;MS=367(M+H)を得た。
【0164】
工程2:(1S、2R)−[2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタノールの合成
水素化アルミニウムリチウム(THF中1.0M、0.52mL、0.52mmol)を、THF 5mL中のシス−(1S、2R)−2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(0.19g、0.52mmol)の−78℃溶液に滴下した。反応混合物を2時間撹拌し、次に10分間かけて室温に温めた。標準フィーザー処理(Fieser work-up)後(1:1:3 HO、15% NaOH、HO)、反応混合物を室温で約18時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、混合物を濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、粗残留物をクロロホルムに溶解し、セライトパッドを介して濾過し、減圧下で濃縮して、乾燥させて、白色の固体として(1S、2R)−[2−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタノール(0.04g、24%収率);融点=206.1−207.8℃;MS=325(M+H)を得た。
【0165】
トランス−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタノールを、適切なアミノエステルを使用して、同様の方法で調製した;MS:325.19(M+1)、297.17((M+1)−28)。
【0166】
実施例10:N−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミンの合成
N−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミンの合成を、スキームJに示した方法にしたがって実施した。
【0167】
【化18】

【0168】
NMP 80mL中の1−(2−メタンスルホニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(10.07g、37mmol)の温溶液を、10分間かけて添加漏斗を通して、NMP 100mL中のトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン(25.58g、224mmol)の115℃溶液に滴下した。反応混合物を、1.5時間、油浴中、115−120℃で撹拌した;次に、それをゆっくり一晩室温に冷却した。反応混合物を水300mLに注いで、4時間撹拌した;次に、それを2回EtOAc(400mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を1回水(生成物が水溶性である)で洗浄し、NaSO上で乾燥させて、濾過した。溶媒を、生成物が晶出しはじめるまで、減圧下で蒸発させた。固体を濾過し、EtOAc/ヘキサン類で洗浄して、乾燥させて、標記化合物の第一クロップを得た。さらなるクロップを、同様の方法で母液から得て、オフホワイトの固体としてN−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン総量6.47g(57%収率);融点=223.5−227.8℃;MS=310(M+H)を得た。
【0169】
実施例11:N−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−アセトアミドの合成
N−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−アセトアミドの合成を、スキームKに示した方法にしたがって実施した。
【0170】
【化19】

【0171】
NMP 1.5mL中のN−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン(0.22g、0.71mmol)の懸濁液に、無水酢酸(0.13mL、1.38mmol)を加えた。反応物を1時間撹拌した。酢酸エチルを懸濁液に加えて、得られた混合物を10分間撹拌した。沈殿物を濾過し、ジクロロメタンで粉砕して、乾燥させて、白色の固体としてN−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−アセトアミド(0.18g、74%収率);融点=286.6−287.6℃;MS=352(M+H)を得た。
【0172】
以下の化合物を、適切なアシル化剤を使用して同様に調製した:
N−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−アセトアミドメシラート(白色の固体);融点=202.2−206.6℃;MS=352(M+H)
N−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタンスルホンアミド(白色の固体);融点=279.2−280.0℃;MS=388(M+H)
メタンスルホン酸(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(4−メタンスルホニルアミノ−シクロヘキシル)−アンモニウム(白色の固体、161mg、90%収率);融点=252.3−256.6℃;MS=388(M+H)
N−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−プロピオンアミド(白色の固体);融点=293.0−294.3℃;MS=366(M+H)
エタンスルホン酸[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−アミド(白色の固体);融点=282.1−287.3℃;MS=402(M+H)
ジメチルスルファミン酸[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル−アミノ)−シクロヘキシル]アミド(白色の固体);融点=242.0−244.0℃;MS=417(M+H);および
2−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ピペリジン−1−イル]−アセトアミド(オフホワイトの固体);融点=247.9−249.3℃;MS=353(M+H)
【0173】
実施例12:N−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−N−メチル−アセトアミドの合成
N−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−N−メチル−アセトアミドの合成を、スキームLに示した方法にしたがって実施した。
【0174】
【化20】

【0175】
工程1:(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−N’−メチル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミンの合成
N−4−ベンゾトリアゾール−1−イルピリミジン−2−イル)−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン(0.30g、0.97mmol)、ホルムアルデヒド(0.5mL、水中37%、0.87mmol)およびメタノール(5mL)の懸濁液を、4時間、室温、窒素雰囲気下で撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(0.06g、1.59mmol)を分割して加えて、懸濁液を1時間撹拌した。水酸化ナトリウム(1M、10mL)の溶液を加えた。反応混合物を25℃水浴中で冷却して、30分間撹拌した。酢酸エチル(50mL)を加えて、得られた混合物を5分間撹拌し、次に濾過した。濾液の有機層を廃棄した。水層をEtOAcで抽出した;有機層を分離した;NaSO上で乾燥させて、濾過した;溶媒を減圧下で蒸発させた。粗固体を15% MeOH/CHClを使用してフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、固体として(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−N’−メチル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン(0.05g、16%収率)を得た。MS=324(M+H)
【0176】
工程2:N−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−N−メチル−アセトアミドの合成
標記化合物を、(4−ベンゾトリアゾール−1−イルピリミジン−2−イル)−N’−メチル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミンから実施例11に記載の通りに同様の方法でオフホワイトの粉末として得た。MS=366(M+H)
【0177】
N−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−N−メチル−メタンスルホンアミド(オフホワイトの固体)を、同様の方法で、塩化メタンスルホニルを使用して調製した;融点=249.9−251.7℃;MS=402(M+H)
【0178】
実施例13:N−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−N’−ピリジン−2−イル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン塩酸塩の合成
N−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−N’−ピリジン−2−イル−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン塩酸塩を、スキームMに示した方法にしたがって実施した。
【0179】
【化21】

【0180】
NMP 1.5mL中のN−(4−ベンゾトリアゾール−1−イルピリミジン−2−イル)−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン(0.20g、0.65mmol)および2−フルオロピリジン(0.11mL、1.28mmol)の溶液を、マイクロ波反応器中、230℃で20分間加熱した。NMPを蒸留により除去した。固体を飽和重炭酸ナトリウムで洗浄し、エーテルで粉砕して、分取TLCにより精製した。この方法で得た遊離塩基を、エーテル中のHClを加えることにより対応する塩酸塩に変換して、黄色の固体として標記化合物(0.04g、16%収率);融点=207.0−210.0℃を得た。MS=387(M+H)
【0181】
実施例14:N−{トランス−4−[(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−メチル−アミノ]−シクロヘキシル}−N−メチル−メタンスルホンアミドの合成
N−{トランス−4−[(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−メチル−アミノ]−シクロヘキシル}−N−メチル−メタンスルホンアミドの合成を、スキームNに示した方法にしたがって実施した。
【0182】
【化22】

【0183】
NMP 4mL中のN−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタンスルホンアミド(0.13g、0.3mmol)の溶液に、過剰量のNaH(鉱油中で分散体)を加えた。直ちに、混合物が黄色に変色して、反応が現れて僅かに発熱する;次に、それを室温で10−15分間撹拌して、次に、ヨードメタン2滴を加えた。黄色が薄くなって、反応混合物を15分間撹拌した。次に、それを水100mLに注ぎ、EtOAc 100mLで抽出した。有機層を分離して、2回水100mLで洗浄した;次に、それをNaSO上で乾燥させて濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させて、粗残留物をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン類、1:1)により精製した。EtOAc/ヘキサン類から再結晶化を行って、白色の固体として標記生成物(51mg、37%収率);融点=203.5−204.0℃;MS=416(M+H)を得た。
【0184】
実施例15:1−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−ピロリジン−2,5−ジオンの合成
1−[トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−ピロリジン−2,5−ジオンの合成を、スキームOに示した方法にしたがって実施した。
【0185】
【化23】

【0186】
NMP 2mL中のN−(4−ベンゾトリアゾール−1−イルピリミジン−2−イル)−シクロヘキサン−トランス−1,4−ジアミン(0.26g、0.8mmol)および無水コハク酸(0.09g、0.9mmol)の溶液を、反応チューブに入れ、密閉して、次に17時間、60−65℃に加熱した。冷却した反応混合物を濃縮して、無水酢酸8mLおよび酢酸ナトリウム(0.09g、1.10mmol)で処理した。混合物を加熱し還流して、21時間撹拌した。反応混合物を氷冷水へ注ぎ、1M水酸化ナトリウムで中和した。沈殿物を濾過して、分取TLCにより精製して、白色の固体として標記化合物(0.07g、21%収率)を得た。融点=205.0−210.0℃;MS=392(M+H)
【0187】
実施例16:4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサノンの合成
4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサノンの合成を、スキームPに示した方法にしたがって実施した。
【0188】
【化24】

【0189】
THF 80mL中の(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(1,4−ジオキサ−スピロ[4.5]dec−8−イル)−アミン(実施例2に記載の通りに同様の方法で調製した)(1.53g、4mmol)の懸濁液に、HClの3M水溶液25mLを加えた。反応混合物を室温で20分間撹拌した。反応物を加熱し30分間還流した。次に、それを冷却して、NaHCO水溶液へ注いだ。得られた混合物をEtOAcで抽出し、NaSO上で乾燥させて、濾過した。溶媒を、生成物が溶液に晶出し始めるまで、減圧下で蒸発させた;次に、それを濾過して、乾燥させて、白色の粉末として標記生成物(942mg、70%収率);融点=204.9−206.5℃;MS=309(M+H)を得た。
【0190】
実施例17:4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−1−メチル−シクロヘキサノールの合成
4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−1−メチル−シクロヘキサノールの合成を、スキームQに示した方法にしたがって実施した。
【0191】
【化25】

【0192】
−78℃で冷却した、THF 80mL中の4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサノン(764mg、2.5mmol)の溶液に、メチルマグネシウムクロリド(3.5mL、THF中3.0M、10.5mmol)を滴下した。反応混合物は直ちに明黄色に変色した;次に、それを放置して室温に温めた。反応が完了しないので、それを−78℃に再冷却して、さらなる分割量のMeMgCl(3mL、9mmol)を加えた。得られた混合物を室温に温めて、次に、NHClの水溶液へ注いだ;それをEtOAcで抽出した。有機層を分離し、NaSO上で乾燥させて、濾過した;溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物をカラムクロマトグラフィー(1−5/99−95 MeOH/CHCl)により精製して:より低い極性のトランス−異性体(130mg、16%収率、融点=193.0−195.4℃;MS=325(M+H))、および白色の結晶質固体として、より高い極性のシス−異性体(360mg、45%収率、融点=202.1−205.6℃;MS=325(M+H))を得た。
【0193】
実施例18:トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸の合成
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸の合成を、スキームRに示した方法にしたがって実施した。
【0194】
【化26】

【0195】
工程1:4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルの合成
トランス−4−アミノ−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(727mg、3.76mmol)を、室温で、窒素雰囲気下、THF(50mL)中の1−(2,5−ジクロロ−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(500mg、1.88mmol)の溶液に、続けてTEA(0.79mL、5.64mmol)を分割して加えた。得られた白色の懸濁液を、室温で一晩、次に、60℃で2.5日間撹拌した。混合物を水(100mL)とEtOAc(100mL)に分配した。有機層を分離し、2回水(100mL)で、そして1回ブライン(100mL)で洗浄し、次に、NaSO上で乾燥させ、濾過して、溶媒を減圧下で蒸発させて、オフホワイトの固体を得た。この粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/EtOAc、90/10)を通して精製して、オフホワイトの固体として4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル538mg(74%収率)が得られた。MS:387.10(M+1)、359.13((M+1)−28)。
【0196】
以下の化合物を、適切なピリミジンを使用して同様に調製した:
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−フルオロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル;MS:371.12(M+1)、343.14((M+1)−28);
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−メチル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル;MS:367.20(M+1)、339.23((M+1)−28);および
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル;MS:353.21(M+1)、325.19((M+1)−28)。
【0197】
工程2:トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸の合成
NaOHの水溶液(2M、10mL)を、室温でTHF(10mL)中の4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(482mg、1.25mmol)の無色の溶液に加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した;次に、それを水(15mL)で希釈して、HCl(2M)を加えてpH3まで酸性化した。形成した白色の沈殿物を濾過により回収し、水で洗浄して、空気乾燥させて、白色の固体としてトランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸435mg(85%収率)を得た。MS:373.12(M+1)、345.15((M+1)−28)。
【0198】
以下の化合物を、適切なピリミジンを使用して同様に調製した:
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸;MS:339.21(M+1)、311.21((M+1)−28);および
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−フルオロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸;MS:357.12(M+1)、329.15((M+1)−28)。
【0199】
実施例19:トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルアミドの合成
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルアミドの合成を、スキームSに示した方法にしたがって実施した。
【0200】
【化27】

【0201】
THF(60mL)中のトランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸(70mg、0.17mmol)、エチルアミン(21μL、0.26mmol)、BOP(114mg、0.26mmol)およびDIPEA(59μL、0.34mmol)の混合物を、室温で2日間撹拌した。形成した白色の固体を濾過により除去して、濾液を水(25mL)で希釈して、3回混合物イソプロパノール/クロロホルム(1/1、20mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過して、減圧下で蒸発させて、オフホワイトの残留物を得て、それをフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH、98/2)を通して精製して、白色の固体としてトランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルアミド68mg(定量的収率)が得られた。MS:400.17(M+1)+,372.17((M+1)+-28). 1H NMR(250MHz,CD3OD)δ ppm:8.55(1 H,s), 8.09-8.21(2 H,m), 7.69(1 H,dd,J=7.50Hz), 7.55(1 H,dd,J=7.50Hz), 3.71-3.88(1 H,m), 3.18(2 H,q,J=7.29Hz), 2.10-2.25(3 H,m), 1.82-1.95(2 H,m), 1.50-1.71(2 H,m), 1.26-1.48(2 H,m), 1.10(3 H,t,J=7.29Hz).
【0202】
以下の化合物を、適切なアミンおよびピリミジン誘導体を使用して同様に調製した:
トランス−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−メタノン;1H NMR(400MHz,eOD)δ ppm 8.54-8.99(1 H,bd), 8.44(1 H,d,J=5.38Hz), 8.11(1 H,d,J=8.31Hz), 7.70(1 H,m), 7.55(1 H,m), 7.44(1 H,d,J=5.38Hz), 4.15-4.29(1 H,m), 3.70-4.10(2 H,m), 3.14-3.39(6 H,m), 2.90(3H,s), 2.83-2.94(1 H,m), 2.00-2.13(2 H,m), 1.80-1.99(4 H,m), 1.65-1.77(2 H,m);
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸シクロプロピルアミド;MS:378.22(M+1)、350.22((M+1)−28);
トランス−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−ピロリジン−1−イル−メタノン;MS:391.21(M+1)
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−アミド;MS:382.18(M+1)
シス−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−メタノン;MS:421.23(M+1)
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−アミド;MS:422.24(M+1)
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アミド;MS:396.12(M+1)
トランス−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−モルホリン−4−イル−メタノン;MS:408.26(M+1)
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−アミド;MS:409.27(M+1)
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルアミド;MS:366.19(M+1)、338.23((M+1)−28);
トランス−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−フルオロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−モルホリン−4−イル−メタノン;MS:426.15(M+1)、398.14((M+1)−28);
トランス−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−メチル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−モルホリン−4−イル−メタノン;MS:422.18(M+1)、394.15((M+1)−28);
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−フルオロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルアミド;MS:384.15(M+1)、356.17((M+1)−28);および
トランス−4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−5−メチル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルボン酸エチルアミド;MS:380.18(M+1)、352.21((M+1)−28)。
【0203】
実施例20:トランス−(4−アミノメチル−シクロヘキシル)−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−アミンの合成
トランス−(4−アミノメチル−シクロヘキシル)−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−アミンの合成を、スキームTに示した方法にしたがって実施した。
【0204】
【化28】

【0205】
工程1:トランス−2−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−イソインドール−1,3−ジオンの合成
トリフェニルホスフィン(972mg、1.2当量)を、トルエン(100mL)中のトランス−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタノールの溶液(1g、1当量;実施例4に記載の通りに同様の方法で調製した)に加えて、次に、それに続けてDIAD(0.73mL、1.2当量)の滴下を行った。反応混合物を室温で10分間撹拌して、次に、フタルイミド(545mg、1.2当量)を加えた。混合物を一晩室温で撹拌し、次に水を加えて、得られた混合物を3回EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過して、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物をMeOHで粉砕して、トランス−2−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−イソインドール−1,3−ジオン976mg(70%収率);MS=454.40(M+1)を得た。
【0206】
トランス−4−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−モルホリン−3,5−ジオンを、適切なイミドを使用して同様に調製した;MS:422.35(M+1)
【0207】
工程2:トランス−(4−アミノメチル−シクロヘキシル)−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−アミンの合成
ヒドラジン一水和物(0.28mL、2.7当量)を、EtOH(60mL)中のトランス−2−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−イソインドール−1,3−ジオン(976mg、1当量)の溶液に加えた。反応混合物を一晩70℃で撹拌し、次に、第二の分割量のヒドラジン一水和物(0.22mL、2.0当量)を加えて、混合物を還流で7時間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をイソプロパノールとクロロホルムの混合物に溶解して、それをHCl(1M)を加えてpH3まで酸性化した。有機相を3回水で洗浄した。水相をNaOH(1M)を加えてpH8−9に塩基性化して、それをイソプロパノールとクロロホルムの混合物で5回抽出した。合わせた有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過して、溶媒を減圧下で蒸発させた。この酸/塩基抽出手順を、フタラジノンを除去するために3回繰り返した。トランス−(4−アミノメチル−シクロヘキシル)−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−アミンを71%純度(450mg、65%収率)で得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ ppm 8.53-8.85(1 H,bd), 8.40(1 H,d,J=5.50Hz), 8.09(1 H,d,J=8.31Hz), 7.67(1 H,m), 7.53(1 H,m), 7.39(1 H,d,J=5.50Hz), 3.76-3.89(1 H,m), 2.60(2 H,d,J=6.60Hz), 2.11-2.28(2 H,m), 1.88-2.02(2 H,m), 1.08-1.54(5 H,m).
【0208】
実施例21:トランス−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−アセトアミドの合成
トランス−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−アセトアミドの合成を、スキームUに示した方法にしたがって実施した。
【0209】
【化29】

【0210】
TEA(52μL、0.37mmol)を、窒素雰囲気下で、DCM(3mL)中のトランス−(4−アミノメチル−シクロヘキシル)−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−アミン(60mg、0.185mmol)の溶液に加えた。混合物を−78℃に冷却して、塩化アセチル(13.2μL、0.185mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した;次に、それを水に注いで、3回イソプロパノールとクロロホルムの混合物で抽出した。合わせた有機抽出物をNaSO上で乾燥させ、濾過して、溶媒を減圧下で蒸発させた。粗残留物を、分取TLCを通して精製して、トランス−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−アセトアミド10mgを得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm 8.55 (1 H,d,J=8.19Hz), 8.41(1 H,d,J=5.14Hz), 8.12(1 H,d,J=8.19Hz), 7.57-7.67(1 H,m), 7.42-7.51(2 H,m), 7.16-7.24(0.3 H,m)、5.55-5.64(0.7 H,m), 5.18-5.43(1 H,m), 3.80-3.93(1 H,m), 3.11-3.25(2 H,m), 2.27(1 H,s), 2.19-2.35(2 H,m), 2.00(2 H,s), 1.85-1.95(2 H,m), 1.50-1.63(1 H,m), 1.11-1.37(4 H,m).
【0211】
トランス−N−N’−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−ジメチル−スルファモイルウレアを、アシル化剤としてジメチルスルファモイルクロリドを使用して同様の方法で調製した。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm 8.52(1 H,d,J=8.19Hz), 8.34-8.42(1 H,bd), 8.11(1 H,d,J=8.19Hz), 7.60(1 H,m), 7.41-7.51(2 H,m), 3.75-3.89(1 H,m), 2.94(2 H,d,J=6.36Hz), 2.79(6 H,s), 2.20-2.33(2 H,m), 1.86-2.00(2 H,m), 1.48-1.62(1 H,m), 1.09-1.39(4 H,m).
【0212】
実施例22:(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(4−モルホリン−4−イルメチル−シクロヘキシル)−アミンの合成
(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(4−モルホリン−4−イルメチル−シクロヘキシル)−アミンの合成を、スキームVに示した方法にしたがって実施した。
【0213】
【化30】

【0214】
工程1:4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサン−カルバルデヒドの合成
ヨードキシ安息香酸(830mg、2.96mmol)をDMSO(10mL)中のトランス−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−メタノール(640mg、1.97mmol)の溶液に加えて、得られた混合物を室温で23時間撹拌した。次に、さらなる分割量のo−ヨードキシ安息香酸(830mg、2.96mmol)を加えた。数時間後、反応を停止した。水を加えて、得られた混合物を20分間撹拌し、形成した固体を濾過して、濾液を3回EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を1回水で洗浄し、NaSO上で乾燥させて、濾過した;溶媒を減圧下で蒸発させた。形成した白色の固体を数回EtOAcで洗浄して、それをあらかじめ得られた固体と合わせて、粗残留物789mgを得た。この粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc 20%〜50%の勾配で、ヘプタン/EtOAc)を通して精製して、4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルバルデヒド452mg(70%収率)を得た。
【0215】
工程2:(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(4−モルホリン−4−イルメチル−シクロヘキシル)−アミンの合成
DCE(2mL)中の4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキサンカルバルデヒド(39mg)、モルホリン(14μL)および酢酸(2滴)の混合物を、室温で2時間撹拌した;次に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを加えた。得られた混合物を3時間、室温で撹拌した。水を加えた;有機層を分離して、3回水で洗浄した。水層をDCMで再抽出した。合わせた有機抽出物をNaSO上で乾燥させて、濾過した;溶媒を減圧下で蒸発させて、残留物を、分取TLCを通して精製して、(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−(4−モルホリン−4−イルメチル−シクロヘキシル)−アミン13.2mgが得られた。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm 8.56(1 H,d,J=8.31Hz), 8.36-8.46(1 H,bd)、8.12(1 H,d,J=8.31Hz), 7.55-7.69(1 H,m), 7.40-7.52(2 H,m), 5.22-5.64(1 H,m), 3.49-3.96(5 H,m), 2.12-2.56(6 H,m), 1.46-2.04(5 H,m), 1.03-1.46(4 H,m).
【0216】
以下の化合物を、適切なアミンを使用して同様に調製した:
トランス−4−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシルメチル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ ppm 8.56(1 H,d,J=8.43Hz), 8.41(1 H,bd), 8.12(1 H,d,J=8.43Hz), 7.61(1 H,m), 7.43-7.51(2 H,m), 5.10-5.87(1 H,m), 3.81-3.94(1 H,m), 3.39-3.47(4 H,m), 2.33-2.42(3 H,m), 2.19-2.32(4 H,m), 1.87-2.02(2 H,m), 1.50-1.83(2 H,m), 1.45(9 H,s), 1.05-1.41(4 H,m);
および
トランス−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イル)−{4−[(2−メトキシ−エチルアミノ)−メチル]−シクロヘキシル}−アミン。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm 8.56(1 H,d,J=8.31Hz), 8.38-8.45(1 H,m), 8.12(1 H,d,J=8.31Hz), 7.61(1 H,m), 7.42-7.50(2 H,m), 5.17-5.64(1 H,bd), 3.76-3.94(1 H,m), 3.47-3.54(2 H,m), 3.36(3 H,s), 2.75-2.82(2 H,m), 2.50-2.58(2 H,m), 2.18-2.35(1 H,m), 1.89-1.99(1 H,m), 1.60-1.83(4 H,m), 1.10-1.41(4 H,m).
【0217】
実施例23:トランス−N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセトアミドの合成
トランス−N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセトアミドの合成を、スキームWに示した方法にしたがって実施した。
【0218】
【化31】

【0219】
工程1:トランス−[4−(2−クロロ−アセチルアミノ)−シクロヘキシル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの合成
DCM(15mL)中のトランス−4−メチル−シクロヘキシルアミン(520mg、1.5mmol)の氷冷した溶液に、ピリジン(0.36mL、4.5mmol)を加えて、続けて塩化クロロアセチル(1当量)を滴下した。混合物を放置して室温に温めて、3日かけて撹拌した。さらなる分割量のピリジン(1当量)と塩化クロロアセチル(1当量)を加えて、得られた混合物を一晩撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、NaHCOの飽和水溶液で洗浄し、EtOAc中に抽出して、再度水で洗浄した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮して、さらに精製しないでトランス−[4−(2−クロロ−アセチルアミノ)−シクロヘキシル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル478mgが得られた。
【0220】
工程2:トランス−{4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセチルアミノ]−シクロヘキシル}−カルバミン酸tert−ブチルエステルの合成
DCM(12mL)中のトランス−[4−(2−クロロ−アセチルアミノ)−シクロヘキシル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(330mg、1.14mmol)の溶液を、室温でDCM(1mL)中のメチルピペラジン(0.1mL、0.95mmol)の溶液に加えた。得られた混合物を一晩撹拌し、次に、DCMで希釈して、NaHCOの飽和水溶液で洗浄した。水相をDCM、次にEtOAcで抽出した。合わせた有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮して、さらに精製しないでトランス−{4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセチルアミノ]−シクロヘキシル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル199mgが得られた。
【0221】
工程3:トランス−N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセトアミドの合成
HClの水溶液(2M、15mL)を、室温でMeOH(15mL)中のトランス−{4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセチルアミノ]−シクロヘキシル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(199mg、0.56mmol)の溶液に加えて、得られた混合物を一晩撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮して、固体残留物を得た。EtOをこの物質に加えて、得られた懸濁液を超音波処理した。エーテル相を静かに移し、粉末状の褐色の固体が残り、それを分取TLCにより精製した。得られた油状物を最少量のMeOHに溶解して、EtOを加えた。固体が沈殿した;液体相を静かに移して、乾燥後、微細粉末としてトランス−N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセトアミド75mgを得た。
【0222】
同様の方法で、適切な出発物質を利用して、以下の化合物もまた調製した:
− トランス−N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−モルホリン−4−イル−アセトアミド;
− トランス−N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−メトキシ−アセトアミド;および
− トランス−N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−ヒドロキシ−アセトアミド。
【0223】
実施例24:トランス−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−2−メトキシ−アセトアミドの合成
トランス−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−2−メトキシ−アセトアミドの合成を、スキームXに示した方法にしたがって実施した。
【0224】
【化32】

【0225】
1−(2−メタンスルホニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾール(99.1mg、0.36mmol)で満たされた10mLシール可能チューブに、NMP(1mL)およびジイソプロピルエチルアミン(0.19mL、1.09mmol)を加えた。N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−メトキシ−アセトアミド(100mg、0.36mmol)で満たされた第二の5mLシール可能チューブに、NMP(1mL)を加えた。両チューブを120℃で加熱して、固体の完全な溶解において、1−(2−メタンスルホニル−ピリミジン−4−イル)−1H−ベンゾトリアゾールの溶液を、カニューレを通して、N−(4−アミノ−シクロヘキシル)−2−メトキシ−アセトアミドの溶液を含有するチューブ中に移した。得られた混合物を、1.5時間、120℃で撹拌し、次に、室温に冷却して、水(15mL)に注いだ。得られた混合物を一晩撹拌し、次に、DCMで希釈して、水で洗浄した。水層を分離して、DCMで抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮して、油状物を得て、それを少量のEtOAcに溶解して、固体を沈殿させるためにヘキサンを加えた。得られた混合物を、放置して1時間安定にして、その後、上澄み液を注意深く静かに移した。残りの固体を減圧下で乾燥させて、トランス−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−2−メトキシ−アセトアミド86mg(63%収率)が得られた。MS=381[M+H];融点=233.5−235.4℃。
【0226】
同様の方法で、適切な出発物質を利用して、以下の化合物もまた調製した:
− トランス−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−2−ヒドロキシ−アセトアミド、MS=368[M+H]
− トランス−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−2−モルホリン−4−イル−アセトアミド,MS=437[M+H];および
− トランス−N−[4−(4−ベンゾトリアゾール−1−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−シクロヘキシル]−2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−アセトアミド、MS=450[M+H]
【0227】
製剤
【0228】
種々の経路で送達される医薬調製物を、下記の表で示されるように製剤化した。表中で使用される「活性成分」または「活性化合物」は、1種以上の式Iの化合物を意味する。
【0229】
【表2】

【0230】
成分を混合し、それぞれ約100mgを含有するカプセルに分配し;1カプセルが1日用量のほぼ全てとなる。
【0231】
【表3】

【0232】
成分を合わせ、メタノールのような溶媒を使用して造粒する。次いで、配合物を乾燥し、適切な錠剤成形機を用いて錠剤(活性化合物約20mg含有)を形成する。
【0233】
【表4】

【0234】
成分を混合して、経口投与用の懸濁剤を形成する。
【0235】
【表5】

【0236】
活性成分を注射用の水の一部に溶解する。次に塩化ナトリウムの十分な量を撹拌しながら加えて、溶液を等張にする。注射用の水の残りで溶液を増量して、0.2μ膜フィルターを通して濾過し、滅菌条件下で包装する。
【0237】
【表6】

【0238】
成分を、スチームバス上で一緒に溶融し混合し、全重量2.5gを含有する型に注ぐ。
【0239】
【表7】

【0240】
水以外の全ての成分を合わせ、撹拌しながら約60℃に加熱する。次に、十分な量の水を激しく撹拌しながら約60℃で加え、成分を乳化し、次に、約100gにするのに十分な量の水を加える。
【0241】
鼻腔スプレー製剤
約0.025〜0.5%の活性化合物を含むいくつかの水性懸濁剤を、鼻腔スプレー製剤として調製した。この製剤は、場合により、例えば、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロースなどの不活性成分を含む。塩酸を加えてpHを調整してもよい。鼻腔スプレー製剤は、典型的には1回の作動で約50〜100μlの製剤を送達する鼻腔スプレー計量ポンプにより送達してもよい。典型的な投与スケジュールでは、4〜12時間毎に2〜4回噴霧する。
【0242】
実施例28
キナーゼアッセイ
A: IC50測定
Cdk4、Cdk2およびCdk1活性の阻害を決定するために、キナーゼアッセイをFlashPlate(商標)アッセイを用いて行った(NEN(商標)−Life Science Products)。FlashPlateアッセイは、組換えヒトサイクリンB−CDK1、ヒトサイクリンE−CDK2またはヒトサイクリンD1−CDK4複合体を用いて行った。バキュロウイルスベクター中のGST−サイクリンE(GST−cycE)、CDK2、GST−サイクリンB(GST−cycB)、CDK1,GST−CDK4およびサイクリンD1(cycD1)cDNAクローンは、Baylor College of Medicine, Houston, TXのW.Harper博士より提供された。タンパク質は、High Five(商標)昆虫細胞中で共発現し、先に記述されたように、複合体をグルタチオンSepharose(登録商標)樹脂(Pharmacia, Piscataway, NJ)上で精製した(J.W. Harper et al., Cell (1993) 75:805-16)。網膜芽腫(R)タンパク質の6X−ヒスチジン標識不完全形態(アミノ酸386−928)を、cycD1−CDK4、cycB−CDK1およびcycE−CDK2アッセイ用の基質として使用した(発現プラスミドは、英国、Welwyn Garden CityのRoche Research Centre, Department of Molecular VirologyのVeronica Sullivan博士により提供された)。Rタンパク質は、CDK4、CDK2およびCDK1によるリン酸化用の天然基質である(Herwig and Strauss Eur. J. Biochem. (1997) 246:581-601およびその中に引用の文献を参照のこと)。
【0243】
62Kdタンパク質の発現は、M15大腸菌株中でIPTG誘導プロモーターのコントロール下であった。細胞を超音波処理して溶解し、精製は、溶解物をpH8.0で、1mMイミダゾールで前処理したNiキレート化アガロースカラムに結合させることにより行った。次いで、樹脂を、pH6.0まで徐々に低下するpH緩衝液で数回洗浄し、500mMイミダゾールで溶出した。溶出したタンパク質を、20mM HEPES pH7.5、30%グリセリン、200mM NaClおよび1mM DTTに対して透析した。精製したRb融合タンパク質ストックは、タンパク質濃度について定量し、等分し、−70℃で保存した。
【0244】
本明細書中で報告した全ての3種のキナーゼアッセイのために、96ウエルFlashPlatesを、1ウエルあたり100μlを用いて、10μg/mlにてRbタンパク質でコーティングした。プレートを、振盪器上で、4℃で一晩またはRTで3時間インキュベートした。非特異的リン酸化をコントロールするために、ウエルの一列を、100μl/ウエルコーティング緩衝液(20mM HEPES、0.2M NaCl)でコーティングした。次いで、プレートを洗浄緩衝液(リン酸塩緩衝化食塩水中の0.01%Tween(登録商標)20)で2回洗浄した。試験される化合物(「試験化合物」)を、5x最終濃度でウエルに加えた。反応は、40μl反応ミックス(25mM HEPES、20mM MgCl、0.002%Tween20、2mM DTT、1μM ATP、4nM 33P−ATP)および十分量の酵素を直ちに加えることにより開始すると、バックグラウンドに対して少なくとも10倍以上であるカウントを与えた。プレートを、振盪器上で、RTで30分間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で4回洗浄し、密封し、TopCountシンチレーションカウンター(Packard Instrument Co., Downers Grove, IL)でカウントした。CDK活性の阻害の尺度である、Rリン酸化のパーセント阻害を、以下の式に従って決定した:
【0245】
【数1】

【0246】
(ここで、「試験化合物」は、2回の試験での分あたりの平均カウントを指し、「非特異的」は、サイクリンD/Cdk4等を加えなかった場合の分あたりの平均カウントを指し、「合計」は、化合物を加えなかった場合の分あたりの平均カウントを指す)。
【0247】
IC50値は、記載の試験条件下にプロテインキナーゼで誘起された放射標識の組み込みを50%減少させる試験化合物の濃度である。
【0248】
B.Ki測定
別法として、阻害活性は、Kiを用いて測定しうる。上記の実施例28(A)で上記したタンパク質構築物を用いて、CDK1、CDK2およびCDK4 HTRFアッセイをセットアップした。これらは、96ウエルフォーマットで行われ、384ウエルプレートフォーマットで読み取った。アッセイは、ATPについてそれらの各々のKmの3倍で実施した。
【0249】
CDK4アッセイにおいて、試験化合物は、25mM Hepes、pH7.0、6.25mM MgCl、1.5mM DTT、135μM ATP中でそれらの最終濃度の3倍に希釈した。DMSO濃度は、4.76%より多くはなかった。20マイクロリットルを96ウエルプレートのウエルに加えた。キナーゼ反応は、25mM HEPES、pH7.0、6.25mM MgCl、0.003%Tween20、0.3mg/ml BSA、1.5mM DTT中の0.185μM Rおよび2.25μg/ml CDK4を含有する溶液を40μl/ウエル添加することにより開始した。CDK4を含まないブランクウエルを含ませた。プレートを、振盪しながら、37℃で30分間インキュベートした。キナーゼ反応は、25mM HEPES、pH7.0、24mM EDTA、0.2mg/ml BSA中の1.6μM抗ホスホ−R(Ser780)抗体(Cell Signaling Inc.)を15μl/ウエル添加することにより停止した。37℃で30分後、25mM Hepes、pH7.0、0.5mg/ml BSA中の3nM Lance−Eu−W1024標識抗ウサギIgGおよび60mM アロフィコシアニン抱合抗His6(PerkinElmer Life Sciences)を15μl/ウエル加えた。37℃で1時間インキュベートしたのち、各ウエルの35μlを、二通りに、384ウエルブラックプレートに移した。プレートを、ViewLuxまたはVictor V リーダー(PerkinElmer Life Sciences)のいずれかを用いて、励起波長340nmならびに二重発光波長615nmおよび665nmを用いて読み取った。IC50値(アッセイコントロール蛍光読取を50%減少させる試験化合物の濃度)を、615nmでのユーロピウム読取に対して正規化した、665nmでの正味の読取からまず算出した。ATP競合阻害剤については、Ki値は、以下の式:
Ki=IC50/(1+S/Km) (ここで、Sは基質濃度を指し、Kmはミカエリス−メンテン定数を指す)
に従って算出した。
CDK1およびCDK2アッセイは、試薬およびタンパク質濃度を少し変えた以外は同様に実施した:
【0250】
双方のアッセイ用の化合物および酵素緩衝液は、10mM MgClを含んでいた。CDK1およびCDK2について、各々の試薬ATP濃度は、162μMおよび90μMであった。試薬濃度が0.15ng/μlのCDK1および試薬濃度が0.06ng/μlのCDK2を使用した。検出試薬の試薬濃度は、3〜12nM Eu−Abおよび60〜90nM APC−抗His6の間に調整して、シグナル/バックグランド比を少なくとも10/1とした。
【0251】
実施例29
細胞をベースとするアッセイ(テトラゾリウム染料増殖アッセイ)(「MTTアッセイ」)
増殖を、DenizotおよびLangの手順に従って、テトラゾリウム染料アッセイにより評価した(F. Denizot and R. Lang, J. Immunol Meth (1986) 89:271-77)。使用した細胞系は、American Type Cell Culture Collection (ATCC; Rockville, MD)から得られた結腸直腸癌細胞系、HCT116であった。細胞は、10%FCSおよびL−グルタミンを補充したMcCoyの5A培地中で生育させた。
【0252】
細胞を適切な接種密度でプレートに加えて、96ウエル組織培養プレート中でのアッセイの間、対数増殖するようにした。プレートを、5%COを含む加湿したインキュベーター中で、37℃で一晩インキュベートした。翌日、試験化合物を、1.2%DMSOを含む適切な媒体中で最終濃度の4倍に連続的に希釈した。各希釈物の最終容量の4分の一を、細胞を含むプレートに、二通りに、加えた。培地中の1.2%DMSOの同じ容量を、各ウエルのDMSOの最終濃度が0.3%となるように、「対照ウエル」の列に加えた。細胞を加えなかったウエルは、「ブランク」として機能した。阻害剤を加えなかったウエルは、「無阻害剤対照」として機能した。プレートをインキュベーターに戻し、設定した時点(それらの増殖曲線により決定される)で、プレートを以下に記載するようにして分析した。
【0253】
臭化3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム(チアゾリルブルー;MTT;Sigma)を各ウエルに加えて、1mg/mlの最終濃度とした。プレートをインキュベーターに、37℃で2.5〜3時間戻した。MTT含有培地を取り除き、得られたホルマザン代謝物を、RTで15分間振盪しながら、100%エタノールに溶解した。吸光度の読み取りを、650nmを対照として、570nmの波長でマイクロタイタープレートリーダー(DynatechおよびMolecular Devices のプレートリーダーを互換的に用いた)中で行った。パーセント阻害(%INH)を、全てのウエルからブランクウェルの吸光度を差し引き、次いで各試験の二通りの平均吸光度(SAVE)の対照の平均(CAVE)との比を1.00から差し引いて、算出した。次いで、最終数字を100倍した(%INH=(1.00−SAVE/CAVE)x100)。細胞増殖の90%阻害が得られる濃度(IC90)は、濃度対パーセント阻害の対数プロットの直線回帰から決定した。
【0254】
American Tissue Culture Collection(ATCC)から購入したSW1353細胞は、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(Invitrogen)2mlを含有する1ウエルあたり3x10細胞の密度で、6−ウエルプレート中でコンフルエンシーまで37℃で生育した。次いで、細胞を無血清培地で、37℃で2時間置いた。化合物ストック(10mM)をジメチルスルホキシド(DMSO)中で希釈し、1000倍濃度溶液として3μlの容量で各ウエルに加え、混合し、細胞と共に30分間予備インキュベートした。化合物ビヒクルDMSOを、全ての試料で0.3%の最終濃度に維持した。TNF(Roche Biochem)を、成長培地中で作製した10x濃度溶液として、無血清培地300μlの全容量中で1ng/mlの最終濃度で、1ウエルあたり30μlの容量で加えた。次いで、細胞プレートを37℃で20分間インキュベートした。細胞培地を除去したのち、細胞溶解物を120μlの溶解緩衝液(Biosource)中に収集した。溶解物試料のタンパク質濃度は、製造者(Bio-Rad)の指示に従って、Lowryアッセイにより決定した。
【0255】
細胞溶解物試料(試料あたり全タンパク質15μg)を、10%NuPAGE Bis−Trisゲル(Invitrogen)上にロードし、ニトロセルロース膜(Invitrogen)に移した。膜を、1xTBS中の5%ドライミルク中で、RTで1時間ブロックした。試料中のリン酸化されたcJunおよび全cJunの双方の濃度を決定するために、膜を、4℃で一晩、0.1%Tween20(Roche Biochem)を含むOdysseyブロック用緩衝液(Li-cor)中で、ウサギ抗−p−cjunおよびマウス抗−全cJun抗体(Cell Signaling)で同時に探査した。
【0256】
膜を、0.1%Tween(登録商標)20を含む1xPBS中で3回洗浄した。二次抗体として、IRDye700ヤギ抗−マウスIgG(Rockland)およびIRDye800ヤギ抗−ウサギIgG(Rockland)を、Odysseyブロック用緩衝液中、1:6500の希釈で使用した。膜ブロットをスキャンし、Odyssey Infrared Imager(Li-cor Cat. No. 9201)を用いて定量した。
【0257】
p−c−Jun対全c−Junの正規化した強度を、マイクロソフトエクセルのXlfit3プログラムでのIC50算出に使用した。IC50値は、阻害剤濃度対パーセント阻害のグラフから内挿した。
【0258】
実施例30
インビトロJNKアッセイ
JNK活性は、GST−ATF2(19−96)の[γ−33P]ATPでのリン酸化により測定した。酵素反応は、25mM Hepes、pH7.5、2mM ジチオトレイトール、150mM NaCl、20mM MgCl、0.001%Tween(登録商標)20、0.1% BSAおよび10%DMSOを含有する緩衝液中で、ATPと基質のKm濃度で、最終容量40μlで行った。ヒトJNK2α2アッセイは、1nM酵素、1μM ATF2、1μCi[γ−33P]ATPを含む8μM ATPを含有していた。ヒトJNK1α1アッセイは、2nM酵素、1μM ATF2、1μCi[γ−33P]ATPを含む6μM ATPを含有していた。ヒトJNK3(Upstate Biotech #14-501M)アッセイは、2nM酵素、1μM ATF2、1μCi[γ−33P]ATPを含む4μM ATPを含有していた。酵素アッセイは、10種の化合物濃度の存在下または不存在下に実施した。JNKおよび化合物は、10分間予備インキュベートした。その後、酵素反応を、ATPと基質を加えることにより開始した。反応混合物は、30℃で30分間インキュベートした。インキュベーションの最後に、反応混合物25μlを、135mM EDTAを含有する150μlの10%グルタチオンセファローススラリー(Amersham #27-4574-01)に移すことにより、反応を停止した。反応生成物をアフィニティー樹脂上に捕集し、濾過プレート(Millipore, MABVNOB50)上でリン酸塩緩衝塩水で6回洗浄して、遊離の放射性ヌクレオチドを除去した。次いで、33PのATF2への組み込みは、マイクロプレートシンチレーションカウンター(Packard Topcount)上で定量した。JNKに対する化合物の阻害能は、3−パラメーターモデル:%阻害=最大/(1+(IC50/[阻害剤])slope)に当てはめた10種の濃度の阻害曲線からもたらされたIC50値により測定した。データは、パラメーター推定用のマイクロソフトエクセル上で分析した。
【0259】
【表8】

【0260】
実施例31
ラットのインビボTNFα誘起IL−6産生アッセイ
チャールスリバーラボラトリーズから調達した雌のウィスター−ハムラットを、使用前に1週間馴化させ、95〜130gのおよその体重を達成した。ラットに、0.5μgの組換えラットTNF−α(Biosource)の腹膜内チャレンジの30分前に、経口強制経管投与、皮下注射または静脈内注射(尾静脈)により試験化合物を投与した。TNF−αチャレンジの90分後に、心臓穿刺により採血した。血漿を、リチウムヘパリン分離チューブ(BD microtainer)を用いて調製し、分析するまで、−80℃に凍結した。IL−6濃度を、ラット特異的IL−6ELISAキット(Biosource)を用いて決定した。パーセント阻害およびED50値(TNF−α産生が対照値の50%であるときの、化合物の投与量として算出)を決定した。
【0261】
実施例32
齧歯類コラーゲン誘起関節炎
ハーランラボラトリーズから調達した7〜8週齢の雌のルイスラットを、使用前に1週間馴化させ、120〜140gのおよその体重を達成した。検討の0日目に、不完全フロイントアジュバント(IFA;2〜3部位に合計0.1ml)中の100μgウシII型コラーゲン(Chondrex)のエマルジョンで、ラットの背中のいくつかの部位に皮内的に(i.d.)抗原刺激した。関節炎の誘起は、一般に、刺激から12〜14日で認められるが;100μgコラーゲン/IFAの追加免疫注射を、尾の基部または背部の別の部位におよそ7〜10日間(i.d.合計0.1mlまで)与えて、疾患の誘起を同時発生させた。化合物の投与は、予防的(追加免疫時または1〜2日前に開始)または治療的(追加免疫後に始め、初期の疾患点数1〜2と同時に発生する−以下の臨床的採点法参照)であることができる。動物は、次の21日間に亘って、疾患の発症および進行について評価した。
【0262】
ラットは、採点システム(下記)、各々の足についてのプレチスモメーターを用いる足容積測定、またはキャリパーでの足または関節厚さの測定を用いて評価した。ベースライン測定は、0日目に行い、実験の終了まで、週に3回まで、最初の徴候または腫脹時に再度始めた。採点は、各々の足について以下のようにして評価した:
【0263】
1=足または1本の指の腫脹および/または発赤
2=2以上の関節に腫脹
3=2より多い関節を含んで足の全体の腫脹
4=全部の足および指の重篤な関節炎
【0264】
各々のラットについての関節炎の指標を、個々の足の4つの点数を加えることにより評価し、最大点数は16である。疾患の発症および進行を連続的に測定するために、後足の足体積を同様にプレチスモメーターを用いて決定した。
【0265】
検討の最後に、後足(および他の組織)を重量決定、組織学、細胞および/または分子分析のために収集した。さらに、心臓穿刺により採血し、血漿を、リチウムヘパリン分離チューブ(BDmicrotainer)を用いて調製し、分析するまで、−80℃に凍結した。血漿からのまたはホモジナイズした関節組織からの炎症性サイトカイン濃度(例えば、TNF−α、IL−1およびIL−6)を、ラット特異的ELISAキット(R&D)を用いて決定した。疾患の防御または阻害の程度は、対照動物と比較した、臨床点数、足体積および組織学における変化の複合として決定した。
【0266】
実施例33
TNFα誘起ヒト軟骨肉腫SW1353細胞中でのIL−8産生アッセイ
SW1353細胞を、American Tissue Culture Collectionから購入し、5%CO中37℃の培養条件下に、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)、アスコルビン酸(Sigma)およびペニシリン(Invitrogen)を含むDMEM培地(Invitrogen)よりなる成長培地中で維持した。細胞を、化合物処理の48時間前に、培地100μl中、ウエルあたり1.0x10細胞の密度でプレートに入れた。化合物処理の直前に、培地を160μlの新鮮培地で置き換えた。化合物ストック(10mM)を成長培地中に希釈し、各ウエルに20μlの容積で、10x濃度溶液として加え、混合し、細胞と共に30分間予備インキュベートした。化合物ビヒクル(DMSO)は、全ての試料で1%の最終濃度に維持した。30分後、細胞を、10ng/mlのTNF−α(Roche Biochem)で活性化した。TNF−αは、成長培地中で作製した10x濃度溶液として加え、1ウエルあたり20μlの容量で加えた。細胞プレートを5時間培養した。細胞培地を収穫し、−20℃で保存した。培地アリコートは、製造者(BD Bioscience)の指示に従って、IL−8の存在についてサンドイッチELISAにより分析した。IC50値は、マイクロソフトエクセルプログラムでのXlfit3を用いて、IL−8産生が対照値の50%に減少するときの、化合物の濃度として算出した。ある種の化合物は、このアッセイで0.1〜20μMの範囲のIC50値を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化33】


[式中、
Rは、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、または
【化34】


から選択される基であり、
ここで、
各々のRは、独立に、H、低級アルキル、OH、またはヒドロキシ低級アルキルであり;
各々のRは、独立に、H、低級アルキル、ハロ、ニトロ、またはハロ低級アルキルであり;
pは、1、2、3、または4であり;
Xは、O、CR、C(=O)、またはS(O)であり;
は、水素、ハロ、アルキル、またはNHであり;
の各々は、独立に、ハロ、−NO、低級アルキル、−CN、−OR、−NR、−C(O)−R
―O−C(O)−R、−CF、−CHF、−SO−R10であるか、またはRの2個はアルキレンジオキシを形成し;
は、水素、低級アルキル、シアノ、−(CHOR、−(CHNR、−(CHC(O)−NR
−(CH−OC(O)−NR、−(CH−C(O)−OR;−NR−SO−R10、−(CH−NR−C(O)−R11、または−(CH−NR−C(O)−ORであり;
は、水素またはアルキルであるか;
あるいはRおよびRは、一緒になって、アルキレンジオキシを形成し;
は、水素、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、または−NRであり;
10は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、または−NRであり;
11は、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、または(ヘテロシクリル)アルキルであり;
およびRは、各々独立に、水素または低級アルキルであり;
は、水素、低級アルキル、またはアシルであり;
は、水素、低級アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキルであるか;
あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、場合によりOH、オキソ、低級アルキル、低級アルコキシ、またはアシルで置換されている、少なくとも1個の窒素環原子を含むヘテロシクリルを形成し;
mおよびxの各々は、独立に、0〜2の整数であり;
Yは、水素、−(CHOR、−(CH−C(O)−Rまたは−(CH−C(O)−ORであり;
yおよびzの各々は、独立に、0または1であり;
nは0〜4の整数である]
の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
が、水素またはメチルである、請求項1の化合物。
【請求項3】
mが0である、請求項1の化合物。
【請求項4】
が、水素、メチル、クロロ、またはフルオロである、請求項1の化合物。
【請求項5】
Xが、CRである、請求項1の化合物。
【請求項6】
が、水素またはメチルである、請求項5の化合物。
【請求項7】
zが1であり、Rが、−NR−SO−R10である、請求項5の化合物。
【請求項8】
が、水素またはメチルであり、R10が、メチル、エチル、または−N(CHである、請求項7の化合物。
【請求項9】
zが1であり、Rが、水素、低級アルキル、シアノ、−(CHOR、もしくは−(CHNRであるか、またはRおよびRが、一緒になって、アルキレンジオキシを形成している、請求項5の化合物。
【請求項10】
が、−(CHORであり、nが0または1であり、Rが、水素またはメチルである、請求項9の化合物。
【請求項11】
が、−(CHNRである、請求項9の化合物。
【請求項12】
nが0であり、Rが水素であり、Rが、水素、ピリミジン−2−イル、またはピリジン−2−イルである、請求項11の化合物。
【請求項13】
nが0であり、RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルを形成している、請求項11の化合物。
【請求項14】
が、水素、メチル、エチル、またはシアノである、請求項9の化合物。
【請求項15】
およびRが、一緒になって、エチレンジオキシを形成している、請求項9の化合物。
【請求項16】
zが1であり、Rが、−(CH−NR−C(O)−R11(ここで、n、R、およびR11は、請求項1に定義したものである)である、請求項5の化合物。
【請求項17】
nが0であり、Rが、水素またはメチルであり、R11が、メチル、エチル、メトキシメチル、ヒドロキシメチル、(モルホリン−4−イル)メチル、または(4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチルである、請求項16の化合物。
【請求項18】
zが1であり、Rが、−(CH−C(O)−NRである、請求項5の化合物。
【請求項19】
nが0であり、RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一緒になって、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、または4−メチル−ピペラジン−1−イルを形成している、請求項18の化合物。
【請求項20】
nが0であり、Rが水素またはメチルであり、Rが、(2−アミノ−2−メチル)プロピル、(2−ヒドロキシ)エチル、テトラヒドロピラン−4−イル、シクロプロピル、またはエチルである、請求項18の化合物。
【請求項21】
zが1であり、Rが、−(CH−C(O)−ORである、請求項5の化合物。
【請求項22】
nが0であり、Rが、水素またはメチルである、請求項21の化合物。
【請求項23】
およびRが、水素であり、zが0であり、yが1であり、Yが、シクロペンチル環部分の3位のヒドロキシである、請求項5の化合物。
【請求項24】
およびRが、水素であり、zが1であり、yが1であり、Yが、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、またはシクロヘキシル環部分の2位の−COCHCH基である、請求項5の化合物。
【請求項25】
zが1であり、Xが、O、C(=O)、またはSOである、請求項1の化合物。
【請求項26】
Rが、
【化35】


であり、zが1であり、Xが、OまたはCRである、請求項2の化合物。
【請求項27】
Xが、Oである、請求項26の化合物。
【請求項28】
Xが、CRである、請求項26の化合物。
【請求項29】
が、−OH、−OR、−C(O)NR、−NR、または−NRSO10である、請求項28の化合物。
【請求項30】
式(Ia):
【化36】


の化合物の製造方法であって、式(II):
【化37】


の化合物または式(III):
【化38】


の化合物を、RNHと反応させる工程を含む、製造方法(R、R1およびR3は、請求項1に定義したとおりであり、YはClまたはSMeであり、Zは、MeSOまたはClである)。
【請求項31】
請求項1〜29のいずれか一項の化合物および薬学的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項32】
治療用物質として使用するための、請求項1〜29のいずれか一項記載の化合物。
【請求項33】
c−Jun N−末端キナーゼが介在する障害の治療的および予防的処置用の医薬を製造するための、請求項1〜29のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項34】
c−Jun N−末端キナーゼが介在する障害が、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、神経障害、または癌である、請求項33記載の使用。
【請求項35】
c−Jun N−末端キナーゼが介在する障害が、関節リウマチ、喘息、2型糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、または脳卒中である、請求項34記載の使用。
【請求項36】
先に定義した、特に新規化合物、中間体、医薬、使用および方法に関連する発明。

【公表番号】特表2010−502668(P2010−502668A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527118(P2009−527118)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059040
【国際公開番号】WO2008/028860
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】