説明

ベータ−セクレターゼの阻害剤としてのイミダゾールアミン

本発明は、式(I)


の化合物、および患者におけるβ−アミロイド沈着またはβ−アミロイドレベルの上昇によって特徴付けられる疾患または障害の治療、予防または改善のためのその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
主として加齢に関連する脳の進行性変性疾患であるアルツハイマー病(AD)は、深刻な健康管理上の問題である。臨床上、ADは、記憶、認識、推理、判断および見当識の喪失によって特徴付けられる。また、疾患が進行するにつれて、運動、感覚および言語能力も影響を受け、複数の認識機能の広範囲の障害が起こるまでになる。これらの認識喪失は徐々に起こるが、典型的には、4〜12年で重篤な障害に至り、最終的に死に至る。AD患者は、脳および脳血管(β−アミロイド血管症)における特徴的なβ−アミロイド沈着、ならびに神経原線維変化を示す。アミロイド生成性プラークおよび管のアミロイド血管症は、また、トリソミー21(ダウン症候群)、オランダ型アミロイド症を伴う遺伝性脳出血(HCHWA−D)、および他の神経変性障害の患者の脳の特徴でもある。神経原線維変化は、また、他の認知症誘導性障害においても起こる。
【背景技術】
【0002】
β−アミロイドとして知られるタンパク質のファミリーは、アルツハイマー病における病理およびその後の認識衰退の原因となると考えられる。アミロイド前駆体蛋白質(APP)の蛋白質分解プロセッシングは、アミロイドβ(A−ベータ)ペプチドを生じ、特に、A−ベータは、β−セクレターゼによるN末端での、および1以上のγ−セクレターゼによるC末端でのAPPの切断によって生じる。アスパルチルプロテアーゼ酵素、またはβ−セクレターゼ酵素(BACE)活性は、APPからのA−ベータペプチドの生成に直接相関する(Sinhaら、Nature,1999,402,537−540)。研究により、益々、β−セクレターゼ酵素の阻害がA−ベータペプチドの産生を阻害することが示される。β−セクレターゼの阻害、およびその結果として起こるA−ベータペプチドの低下は、脳におけるβ−アミロイド沈着および脳血管におけるβ−アミロイドレベルの減少を導き、また、それにより引き起こされる疾患または障害の有効な治療を導きうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Sinhaら、Nature,1999,402,537−540
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、β−セクレターゼの阻害剤であり、患者においてβ−アミロイド沈着またはβ−アミロイドレベルの上昇によって特徴付けられる疾患または障害の治療、予防または改善における治療剤として有用である化合物を提供することにある。
本発明の別の目的は、患者においてβ−アミロイド沈着またはβ−アミロイドレベルの上昇によって特徴付けられる疾患または障害の治療、予防または改善に有用な治療法および医薬組成物を提供することにある。
本発明の特徴は、提供される化合物がさらに、β−セクレターゼ酵素を研究および解明するのにも有用でありうることである。
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、下記に示す詳細な記載によって、より明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、式I
【化1】

[式中、
Qは、O、SまたはCHであり;
Wは、O、SまたはCHであり;
Xは、N、NO、SO、OまたはCHであり;
Yは、N、NO、SO、OまたはCR10であり;
Zは、N、NO、SO、OまたはCR11であり、但し、XがCHであり、YがCR10であって、ZがCR11である場合、QおよびWのうち1つはOまたはSであり;
mは、0、1または2であり;
nは、0または1であり;
およびRは、各々、独立して、Hまたは置換されていてもよいC−Cアルキル基であり;
およびRは、各々、独立して、H、または置換されていてもよいC−Cアルキル基であるか、またはRおよびRは一緒になって、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有していてもよい4−ないし7−員環を形成してもよく;
およびRは、各々、独立して、H、ハロゲン、NO、CN、OR12、CO13、COR14、NR1718、SONR1920、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−CアルキニルまたはC−Cシクロアルキル基であり;
およびRは、各々、独立して、H、ハロゲン、NO、CN、OR15、NR1718、または、各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキルまたはシクロヘテロアルキル基であるか、または隣接する炭素原子に結合する場合、RおよびRはそれらが結合する原子と一緒になって、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有していてもよい置換されていてもよい5−ないし7−員環を形成していてもよく;
は、H、ハロゲン、NO、CN、OR15、NR1718、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基であり;
10およびR11は、各々、独立して、H、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキルまたはアリール基であり;
12、R13、R14およびR15は、各々、独立して、H、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基であり;
17、R18、R19およびR20は、各々、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキルであるか、またはR17およびR18もしくはR19およびR20は、それらが結合している原子と一緒になって、O、NおよびSから選択される付加的なヘテロ原子を含有していてもよい5−ないし7−員環を形成していてもよく;
pは、0、1または2である]
で示されるイミダゾールアミン、またはその互変体、その立体異性体もしくはその医薬上許容される塩を提供する。
【0006】
本発明は、また、患者における増加したβ−アミロイド沈着または増加したβ−アミロイドレベルによって特徴付けられる疾患または障害の治療、予防または改善のための治療法および該疾患または障害の治療、予防または改善に有用な医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
アルツハイマー病(AD)は、臨床上、記憶、認識力、推理力、判断力および情緒的安定性の進行性喪失によって現れ、徐々に深刻な精神機能低下および死に至る、脳の主要な変性疾患である。ADの正確な原因は分かっていないが、アミロイドベータペプチド(A−ベータ)が該疾患の病因において中心的な役割を果たすことを示す証拠が増えている(D.B.Schenk;R.E.Rydelら、Journal of Medicinal Chemistry,1995,21,4141およびD.J.Selkoe,Physiology Review,2001,81,741)。AD患者は、老人斑(およびβ−アミロイド血管症において、脳血管における沈着)ならびに剖検で脳において検出される神経原線維変化などの特徴的な神経病理学的マーカーを示す。A−ベータは、AD脳における老人斑の主要成分である。さらに、β−アミロイド沈着および管β−アミロイド血管症は、また、ダウン症候群、オランダ型アミロイド症を伴う遺伝性脳出血、および他の神経変性障害および認知症誘導性障害を有する個体の特徴である。アミロイド前駆体蛋白質(APP)の過剰発現、APPのA−ベータへの改変された開裂または患者の脳由来のA−ベータのクリアランスの減少は、脳におけるA−ベータの可溶性または線維性形態のレベルを上昇しうる。β−部位APP切断酵素BACE1は、また、メマプシン−2またはAsp−2とも呼ばれ、1999年に同定された(R.Vassar,B.D.Bennettら、Nature,1999,402,537)。BACE1は、β−セクレターゼの既知の機能的特性および特徴を全て有する膜結合型アスパラギン酸プロテアーゼである。BACE1と平行して、BACE2と称される第2の相同性アスパルチルプロテアーゼがイン・ビトロでβ−セクレターゼ活性を有することが見出された。BACE1またはβ−セクレターゼの低分子量の非ペプチド性非基質関連阻害剤は、β−セクレターゼ酵素の研究における補助として、および可能性のある治療剤としての両方で本気で調べられている。
【0008】
驚くべきことに、今回、式Iのイミダゾールアミン化合物がβ−セクレターゼの阻害、およびBACE1の選択的阻害を示すことが明らかとなった。有利には、該イミダゾールアミン化合物は、患者におけるβ−アミロイド沈着またはβ−アミロイドレベルの上昇によって特徴付けられる疾患または障害の治療、予防または改善のための有効な治療剤として使用され得る。したがって、本発明は、式I:
【化2】

[式中、
Qは、O、SまたはCHであり;
Wは、O、SまたはCHであり;
Xは、N、NO、SO、OまたはCHであり;
Yは、N、NO、SO、OまたはCR10であり;
Zは、N、NO、SO、OまたはCR11であり、但し、XがCHであり、YがCR10であって、ZがCR11である場合、QおよびWのうち1つはOまたはSであり;
mは、0、1または2であり;
nは、0または1であり;
およびRは、各々、独立して、Hまたは置換されていてもよいC−Cアルキル基であり;
およびRは、各々、独立して、H、または置換されていてもよいC−Cアルキル基であるか、またはRおよびRは一緒になって、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有していてもよい4−ないし7−員環を形成してもよく;
およびRは、各々、独立して、H、ハロゲン、NO、CN、OR12、CO13、COR14、NR1718、SONR1920、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−CアルキニルまたはC−Cシクロアルキル基であり;
およびRは、各々、独立して、H、ハロゲン、NO、CN、OR15、NR1718、または、各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキルまたはシクロヘテロアルキル基であるか、または隣接する炭素原子に結合する場合、RおよびRはそれらが結合する原子と一緒になって、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有していてもよい置換されていてもよい5−ないし7−員環を形成していてもよく;
は、H、ハロゲン、NO、CN、OR15、NR1718、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基であり;
10およびR11は、各々、独立して、H、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキルまたはアリール基であり;
12、R13、R14およびR15は、各々、独立して、H、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基であり;
17、R18、R19およびR20は、各々、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキルであるか、またはR17およびR18もしくはR19およびR20は、それらが結合している原子と一緒になって、O、NおよびSから選択される付加的なヘテロ原子を含有していてもよい5−ないし7−員環を形成していてもよく;
pは、0、1または2である]
で示されるイミダゾールアミン化合物、またはその互変体、その立体異性体もしくはその医薬上許容される塩を提供する。
【0009】
本明細書および特許請求の範囲中で使用される場合、ハロゲンなる語は、F、Cl、BrまたはIを示し、シクロヘテロアルキルなる語は、N、OおよびSから選択される同一または異なっていてもよい1または2個のヘテロ原子を含有し、かつ、1つの二重結合を含有していてもよい5−ないし7−員のシクロアルキル環系を示す。本明細書中で使用される場合、シクロヘテロアルキル環系の例は、下記の環:
【化3】

[式中、XはNR、OまたはSであり、RはHであるか、下記のような任意の置換基である]
を包含する。
【0010】
同様に、本明細書および特許請求の範囲中で使用される場合、ヘテロアリールなる語は、N、OおよびSから選択される同一または異なっていてもよい1、2または3個のヘテロ原子を含有する5−ないし10−員の芳香環系を示す。かかるヘテロアリール環系は、ピロリル、アゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソオキサゾリルなどを包含する。アリールなる語は、例えば、6〜14個の炭素原子からなる芳香族炭素環系を示し、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどがある。アリール(C−C)アルキルなる語は、直鎖または分枝鎖であってもよいC−Cアルキル基に結合した上記のアリール基を示す。該アリール(C−C)アルキル基は、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルなどを包含する。ハロアルキルなる語は、本明細書中で使用される場合、同一または異なっていてもよい1ないし2n+1個のハロゲン原子を有するC2n+1基を示し、ハロアルコキシなる語は、本明細書中で使用される場合、同一または異なっていてもよい1ないし2n+1個のハロゲン原子を有するOC2n+1基を示す。好ましくは、ハロアルキルなる語は、CFを示し、ハロアルコキシなる語は、OCFを示す。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲中で使用される場合、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリール(C−C)アルキルまたはヘテロアリールなどの用語が置換されていてもよいと示されている場合、存在していてもよい置換基は、医薬化合物の開発、またはかかる化合物の、その構造/活性、持続性、吸収性、安定性または他の有益な特性に影響を及ぼすような修飾において慣例上使用される1以上の置換基であればよい。かかる置換基の特定の例は、ハロゲン原子、ニトロ、シアノ、チオシアナート、シアナート、ヒドロキシル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ホルミル、アルコキシカルボニル、カルボキシル、アルカノイル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、カルバモイル、アルキルアミド、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、ヘテロシクリル(例えば、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル)、およびシクロアルキル基を包含し、好ましくは、ハロゲン原子または低級アルキルまたは低級アルコキシ基を包含する(ここに、低級とは、1〜6個の炭素原子を示す)。典型的に、0〜3個の置換基が存在していてもよい。上記の置換基のいずれかがアルキル置換基を示すか、または含有する場合、これは、直鎖または分枝鎖であってもよく、12個まで、好ましくは6個まで、より好ましくは4個までの炭素原子を含有していてもよい。
【0012】
医薬上許容される塩は、式Iの化合物および医薬上許容される酸、例えば、リン酸、硫酸、塩酸、臭化水素酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、乳酸、硝酸、スルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などによって形成されるいずれかの酸付加塩であってもよい。
【0013】
本発明の化合物は、エステル、カルバマートまたは他の通常のプロドラッグ形態を包含し、それらは一般に、本発明の化合物の機能的誘導体であり、イン・ビボで容易に本発明の活性形態に変換される。相応じて、本発明の方法は、式Iの化合物または特に開示されないが、投与時に、イン・ビボで式Iの化合物に変換する化合物を用いる上記の種々の病態の治療を包含する。また、本発明の化合物の生物学的系への導入時に生成される活性種として定義される本発明の化合物の代謝産物も包含される。
【0014】
本発明の化合物は、1以上の互変体として存在しうる。当業者は、式Iの化合物が下記の互変体(It)としても存在しうることを理解するであろう。
【化4】

【0015】
互変体は、しばしば、互いに等量で存在しうる。これらの互変体は環境および生理学的条件下で相互変換するので、それらは、同じ有用な生物学的効果を提供する。本発明は、かかる互変体の混合物ならびに式Iおよび式Itの個々の互変体を包含する。
【0016】
本発明の化合物は、1以上の不斉炭素原子または1以上の不斉(キラル)中心を含有していてもよく、故に、光学異性体およびジアステレオマーを生じうる。かくして、本発明は、かかる光学異性体およびジアステレオマー、ならびにラセミ体および分割したエナンチオマー的に純粋な立体異性体、ならびにRおよびS立体異性体の他の混合物を包含する。当業者には当然のことながら、1の立体異性体は、より活性であってもよく、または、1の立体異性体が他の立体異性体と比較して豊富な場合、または他の立体異性体から分離された場合、有益な効果を示してもよい。さらに、豊富な立体異性体の分離方法または選択的な調製方法は、当業者に既知である。したがって、本発明は、式Iの化合物、その立体異性体、その互変体およびその医薬上許容される塩を含む。本発明の化合物は、立体異性体の混合物、個々の立体異性体、または光学活性もしくはエナンチオマー的に純粋な形態として存在していてもよい。
【0017】
11が存在しない場合、原子価要件を満たすために、結合点は、Zを介していてもよい。
【0018】
nが0である場合、5員環の例は、ピラゾリル、例えば、ピラゾール−4−イル(すなわち、XおよびYはNである)であり、該環は、置換されていてもよく、例えば、1−エチルピラゾール−4−イルまたは1−(2,2,2−トリフルオロエチル)ピラゾール−4−イルである。
【0019】
nが1である場合、6員環の例は、ピリジル、例えば、ピリド−4−イル、またはフェニルであり、該環は置換されていてもよく、例えば、2,6−ジエチルピリド−4−イルまたは4−トリフルオロメトキシフェニルである。
【0020】
本発明の好ましい化合物は、RおよびRがHである式Iの化合物である。本発明の好ましい化合物の別の群は、Rが置換されていてもよいヘテロアリール基である式Iの化合物である。また、XがNである式Iの化合物も好ましい。本発明の好ましい化合物のさらなる群は、Rが置換されていてもよいヘテロアリール基であって、フェニル環の3位に結合している式Iの化合物である。
【0021】
本発明のより好ましい化合物は、RおよびRがHであり、Rが置換されていてもよいヘテロアリール基である式Iの化合物である。本発明のより好ましい化合物の別の群は、RおよびRがHであり、Rが置換されていてもよいヘテロアリール基であり、XがNである式Iの化合物である。本発明のより好ましい化合物のさらなる群は、RおよびRがHであり、Rが置換されていてもよいヘテロアリール基であって、フェニル環の3位に結合している式Iの化合物である。
【0022】
式Iの好ましい化合物は、:
8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)−フェニル]−8−ピリジン−4−イル−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミン;
8−(2,6−ジエチルピリジン−4−イル)−8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)−フェニル]−2,3,4,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミン;
8−(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)−8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−2,3,4,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミン;
8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミン;
8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−3,4−ジヒドロ−8H−イミダゾ[5,1−c][1,2,4]オキサジアジン−6−アミン;
8−[3−(5−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−3,4−ジヒドロ−8H−イミダゾ[5,1−c][1,2,4]オキサジアジン−6−アミン;
その互変体、その立体異性体、またはその医薬上許容される塩を包含する。
【0023】
有利には、本発明は、Rが置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基である式Iの化合物(Ia)の調製方法であって、式II(式中、HalはClまたはBrである)の化合物を、パラジウム触媒および無機塩基の存在下、所望により溶媒の存在下、B(OH)、Sn(Bu)およびSn(CHから選択される脱離基を有する置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基と反応させることを特徴とする方法を提供する。該方法は、フローダイヤグラムIに示される。
【0024】
フローダイヤグラムI
【化5】

[式中、Aは、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基を示し、W’は、B(OH)、Sn(Bu)またはSn(CHであり、HalはClまたはBrである。]
【0025】
本発明の方法に使用するのに適当なパラジウム触媒は、Pd(0)またはPd(II)触媒、例えば、ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)、Pd(OCOCH/トリ−o−トリルホスフィン、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)トリフェニルホスフィンなどを包含する。
【0026】
本発明の方法に使用するのに適当な無機塩基は、水酸化、炭酸または重炭酸NaまたはK、好ましくは、NaCOまたはKCOを包含する。
【0027】
本発明の方法に使用するのに適当な溶媒は、極性または非極性有機溶媒、例えば、トルエン、ジエトキシエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、または式IIまたはヘテロアリール化合物を可溶化することのできるいずれかの不反応性有機溶媒を包含する。
【0028】
式IIの化合物は、従来の合成法を用いて、必要ならば、標準的な分離または単離技術を用いて調製されうる。例えば、RおよびRがHであり、QおよびWが CHである式IIの化合物(IIa)は、式IIIの化合物を式IVのジアミンと反応させて式Vの二環式化合物を得、式Vの化合物をt−ブチルヒドロペルオキシドおよび水酸化アンモニウムと反応させて所望の式IIaの化合物を得ることによって調製してもよい。反応を下記のフローダイヤグラムIIに示す。
【0029】
フローダイヤグラムII
【化6】

[式中、HalはClまたはBrである。]
【0030】
同様に、RおよびRがHであり、RおよびRがHであり、QがCHであり、WがOである式IIの化合物(IIb)は、式IIIの化合物と2−(アミノオキシ)エタンアミン二塩酸塩とを塩基、例えば、トリエチルアミンおよび溶媒の存在下で反応させて、式VIの二環式化合物を得、式VIの化合物をt−ブチルヒドロペルオキシドおよび水酸化アンモニウムと反応させて、所望の式IIbの化合物を得ることによって調製されうる。該反応をフローダイヤグラムIIIに示す。
【0031】
フローダイヤグラムIII
【化7】

[式中、HalはClまたはBrである。]
【0032】
およびRがHであり、RおよびRがHであり、QがOであり、WがCHである式IIの化合物(IIc)は、式IIIの化合物とBoc−保護された2−(アミノオキシ)エタンアミンとを反応させて、式VIIの保護されたアミン化合物を得、式VIIの化合物を酸、例えば、トリフルオロ酢酸の存在下で脱保護して、対応する式VIIIの遊離アミンを得、式VIIIの化合物を環化して、式IXの二環式化合物を得、式IXの化合物をt−ブチルヒドロペルオキシドおよび水酸化アンモニウムと反応させて、所望の式IIcの化合物を得ることによって調製されうる。該反応をフローダイヤグラムIVに示す。
【0033】
フローダイヤグラムIV
【化8】

[式中、Bocは、t−ブチルカルボニルオキシであり、HalはClまたはBrである。]
【0034】
式IIa、IIbおよびIIcの化合物は、上記のフローダイヤグラムIに記載される手法を用いて、対応する式Iaの化合物(式中、RおよびRはHである)に変換されうる。
式IIIの化合物は、式Xのハロゲン化ヘテロアリール化合物と式XIのベンゾニトリル化合物とを塩基、例えば、t−ブチルリチウムの存在下で反応させて、式XIIのメチルアミンを得、式XIIのアミンとチオホスゲンとを塩基、例えば、NaHCOの存在下で反応させて、式XIIIのチオシアナート化合物を得、式XIIIのチオシアナート化合物と二硫化炭素とを塩基、例えば、カリウムt−ブトキシドの存在下で反応させて、式IIIの所望の化合物を得ることによって、容易に調製されうる。該反応をフローダイヤグラムVに示す。
【0035】
フローダイヤグラムV
【化9】

[式中、HalはClまたはBrである。]
【0036】
が置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基以外である式Iの化合物は、上記のフローダイヤグラムII〜IVに示される反応によって、Halが所望のR置換基で置き換わっている対応する式IIIの化合物を用いることによって調製されうる。
【0037】
およびRがH以外である式Iの化合物は、標準的なアルキル化技術を用いて、例えば、RおよびRがHである式Iの化合物をハロゲン化アルキルR−Halと反応させて、RがHである式Iの化合物(Id)を得、所望により、式Idの化合物を第2のハロゲン化アルキルR−Halと反応させて、RおよびRがH以外である所望の式Iの化合物を得ることによって調製されうる。
【0038】
有利には、本発明の化合物は、アルツハイマー病、ダウン症候群、オランダ型アミロイド症を伴う遺伝性脳出血、または他の神経変性もしくは認知症誘導性障害を包含する、患者におけるβ−アミロイド沈着またはβ−アミロイドレベルの上昇によって特徴付けられる疾患または障害の治療、予防または改善に有用である。したがって、本発明は、患者におけるβ−アミロイド沈着またはβ−アミロイドレベルの上昇によって特徴付けられる疾患または障害の治療、予防または改善のための方法であって、該患者に、治療上有効量の上記式Iの化合物を提供することを特徴とする方法を提供する。該化合物は、経口または非経口投与によって、または患者への治療剤の有効な投与であることが知られているいずれかの一般的な方法において提供すればよい。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「提供する」なる語は、本願発明によって包含される化合物または物質を提供することに関し、かかる化合物または物質を直接投与すること、または等量の該化合物または物質を体内で形成するプロドラッグ、誘導体またはアナログを投与することを示す。
【0040】
特定のCNS障害の治療において提供される治療上有効量は、治療されている特定の病態、患者の大きさ、年齢および応答パターン、障害の重篤度、担当している医師の判断等にしたがって変化しうる。一般に、経口投与の1日の有効量は、約0.01〜1,000mg/kg、好ましくは、約0.5〜500mg/kgであってもよく、非経口投与の場合、有効量は、約0.1〜100mg/kg、好ましくは、約0.5〜50mg/kgであってもよい。
【0041】
現実の実施において、本発明の化合物は、固形または液体形態の該化合物またはその前駆体をそのまま、または1以上の通常の医薬担体もしくは賦形剤と組み合わせて投与することによって提供される。したがって、本発明は、医薬上許容される担体および上記式Iの化合物の有効量を含む医薬組成物を提供する。
【0042】
本発明の組成物において使用するのに適当な固形担体は、フレーバー剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、増量剤、潤滑剤、圧縮補助剤、結合剤、錠剤崩壊剤またはカプセル化材料としても作用しうる1以上の物質を包含する。粉剤において、担体は、式Iの微粉化合物と混合した微粉固体であってもよい。錠剤において、式Iの化合物を必要な圧縮特性を有する担体と適当な割合で混合し、所望の形状および大きさに圧縮してもよい。該粉剤および錠剤は、99重量%までの式Iの化合物を含有しうる。本発明の組成物において使用するのに適当な固形担体は、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックスおよびイオン交換樹脂を包含する。
【0043】
溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルの調製に適当ないずれの医薬上許容される液体担体を本発明の組成物において使用してもよい。式Iの化合物は、医薬上許容される液体担体、例えば、水、有機溶媒、または医薬上許容される油脂、またはその混合物中に溶解または懸濁すればよい。該液体組成物は、他の適当な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、保存料、甘味料、フレーバー剤、懸濁化剤、増粘剤、着色料、粘度調節剤、安定化剤、浸透圧調節剤などを含有していてもよい。経口および非経口投与に適当な液体担体の例は、水(特に、上記の添加剤、例えば、セルロース誘導体、好ましくは、ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液を含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えば、グリコールを包含する)またはそれらの誘導体、および油(例えば、分別ココヤシ油および落花生油)を包含する。非経口投与の場合、担体は、油性エステル、例えば、オレイン酸エチルまたはミリスチン酸イソプロピルであってもよい。
【0044】
滅菌溶液または懸濁液である本発明の組成物は、筋内、腹腔内、または皮下注射に適当である。滅菌溶液は、また、静脈内投与してもよい。本発明の経口投与に適当な組成物は、液体または固体組成物形態のいずれかであってもよい。
【0045】
別法では、患者が毎日医薬を服用する必要性を回避するために、持続性デリバリー装置の使用が望ましい場合がある。「持続性デリバリー」なる語は、活性剤、すなわち、本発明の化合物の放出を、デリバリー環境に置いた後、しばらく経って薬剤が徐放するまで遅延させることとして定義される。当業者には、適当な持続性デリバリー装置が周知である。適当な持続性デリバリー装置の例は、例えば、ヒドロゲル(例えば、米国特許第5,266,325号、第4,959,217号および第5,292,515号参照)、浸透圧ポンプ、例えば、なかでも、Alza(米国特許第4,295,987号および第5,273,752号)またはMerck(欧州特許第314,206号)によって記載されるような浸透圧ポンプ、疎水性膜材料、例えば、エチレンメタクリレート(EMA)およびエチレンビニルアセテート(EVA)、生物再吸収ポリマー系(例えば、国際公開第WO 98/44964参照、BioxidおよびCellomeda;米国特許第5,756,127号および5,854,388参照)、例えば、ポリエステル、ポリ無水物、または乳酸/グリコール酸コポリマーからなることが記載された他の生物再吸収インプラント装置(例えば、米国特許第5,817,343号(Alkermes Inc.)参照)を包含する。かかる持続性デリバリー装置において使用するために、本発明の化合物は、本明細書中に記載のように処方してもよい。
【0046】
別の態様において、本発明は、製品のデリバリーのための医薬キットを提供する。適当には、該キットは、所望のデリバリー経路用に処方された該化合物付きのパッケージングまたは容器を含有する。例えば、キットが吸入による投与用に設計される場合、それは、吸入により所定の投与量をエーロゾルまたはスプレーでデリバリーするように処方された本発明の化合物を含有する懸濁液を含有しうる。適当には、該キットは、投与指示書および活性剤に関するインサートを含有していてもよい。所望により、該キットは、さらに、製品の循環レベルをモニターするための指示書、およびかかるアッセイを実施するための材料(例えば、試薬、ウェルプレート、容器、マーカーまたはラベルなどを包含する)を含有していてもよい。かかるキットは、所望の適応症の治療に適当な方法で容易にパッケージされる。例えば、該キットは、また、スプレーポンプまたは他のデリバリー装置の使用のための指示書を含有していてもよい。
【0047】
かかるキットに適当な他の成分は、所望の適応症およびデリバリー経路を考慮して、当業者に容易に明らかになるであろう。投与は、所的の期間、または規定のとおり、毎日、毎週または毎月に繰り返してもよい。
【0048】
より明白な理解のために、また、本願発明をさらに明白に説明するために、特定の実施例を下記に示す。下記の実施例は、単に説明であって、如何なる方法において、本発明の範囲および基礎的原理を制限するものとして理解されるべきではない。実際、本明細書中に示され、記載される以外の本発明の種々の変更は、下記の実施例および上記の記載から当業者に明らかになる。かかる変更もまた、本発明の請求の範囲内にあることが意図される。
【0049】
別記しない限り、全ての「部」は、重量部を示す。NMRなる語は、核磁気共鳴を示す。DMEおよびDMFなる語は、各々、エチレングリコールジメチルエーテルおよびジメチルホルムアミドを示す。
【実施例】
【0050】
実施例1
8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−ピリジン−4−イル−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミンの調製
【化10】

【0051】
A)化合物1の調製
tert−ブチルリチウム(ペンタン中1.7Mを30.0mL,51.0mmol)のジエチルエーテル中溶液を−78℃にて、4−ブロモピリジン(25.7mmol)のジエチルエーテル中溶液で滴下処理、−78℃で40分間攪拌し、0℃に温め、メタノールおよび水素化ホウ素ナトリウム(1.94g,51.0mmol)で連続的に処理し、室温で一晩攪拌し、飽和水性塩化アンモニウムで希釈し、減圧下で濃縮して、メタノールおよびジエチルエーテルのほとんどを除去した。得られた水性残渣を塩化メチレンで抽出した。抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。該残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,塩化メチレン〜95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、化合物1を黄色シロップとして得た(4.21g、69%収率)。H NMR (300MHz,CDCl)δ8.54(dd,J=4.5,1.5Hz,2H),7.36−7.28(m,6H),5.14(s,1H),1.25(s,2H,br);ESI MS m/z 264[C1211BrN+H]
【0052】
B)化合物2の調製
カリウムtert−ブトキシド(0.355g,3.16mmol)のテトラヒドロフラン中混合物を−78℃にて、1(0.665g,2.53mmol)のテトラヒドロフラン中溶液で滴下処理し、10分間攪拌し、二硫化炭素(0.635g,8.34mmol)で処理し、ゆっくりと室温に温め、室温で1時間攪拌した。反応混合物を−78℃に冷却し、ジ−2−ピリジル−チオカルボナート(0.880g,3.79mmol)で処理し、室温に温め、室温で一晩攪拌し、真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,97.5:2.5 塩化メチレン/メタノール)によって精製して、化合物2をピンク色油として得た(0.310g、32%収率)。H NMR (300MHz,CDCl)δ8.66(dd,J=4.5,1.5Hz,2H),7.57(dt,J=6.5,2.0Hz,1H),7.47(d,J=2.0Hz,1H),7.34(dd,J=4.5,1.5Hz,2H),7.32−7.26(m,2H);ESI MS m/z 381[C14BrN+H]
【0053】
C)化合物3の調製
2(0.310g,0.810mmol)および1,3−ジアミノプロパン(0.181g,2.44mmol)のエタノール中混合物を70℃で1時間加熱し、室温に冷却し、濃縮乾固した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,97.5:2.5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、化合物3を白色固体として得た(0.260g、83%収率)。H NMR (500MHz,CDOD)δ 8.57(dd,J=4.5,1.5Hz,2H),7.56−7.52(m,2H),7.41(dd,J=4.5,1.5Hz,2H),7.36−7.33(m,2H),3.86(t,J=6.0Hz,2H),3.56(t,J=5.5Hz,2H),1.88(tt,J=6.0,5.5Hz,2H);ESI MS m/z 387[C1715BrNS+H]
【0054】
D)化合物4の調製
3(0.260g,0.670mmol)およびt−ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液を1.73g,13.4mmol)のメタノールおよび水性濃水酸化アンモニウム中混合物を室温で一晩攪拌し、真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、化合物4を白色固体として得た(0.210g、84%収率)。H NMR (300MHz,CDCl)δ8.48(dd,J=4.5,1.5Hz,2H),7.52(t,J=1.5Hz,1H),7.46(dt,J=7.5,1.5Hz,1H),7.40(dd,J=4.5,1.5Hz,2H),7.32(dt,J=7.5,1.5Hz,1H),7.25(t,J=7.5Hz,1H),3.69(t,J=6.0Hz,2H),3.50(t,J=5.1Hz,2H),1.86(tt,J=6.0,5.1Hz,2H);ESI MS m/z 370[C1716BrN+H]
【0055】
D)8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−ピリジン−4−イル−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミンの調製
4(0.100g,0.27mmol)、2−フルオロピリジン−3−ボロン酸(0.076g,0.540mmol)、塩化ビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(II)(0.010g,0.014mmol)、トリフェニルホスフィン(0.0071g,0.027mmol)および炭酸ナトリウム(0.086g,0.810mmol)の3:1 DME/水中混合物を還流温度で2時間加熱し、室温に冷却し、酢酸エチルおよび水で希釈した。相を分離した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、白色固体を得た。該物質を2:1 アセトニトリル/水から凍結乾燥させて、標題生成物を白色固体として得た(0.082g、79%収率)。mp 125−131℃。
H NMR (500MHz,CDCl)δ8.16(dd,J=4.5,1.5Hz,2H),8.16(dt,J=5.0,1.5Hz,1H),7.83(ddd,J=9.5,7.5,2.0Hz,1H),7.70(d,J=1.5Hz,1H),7.52(dt,J=8.0,1.5Hz,1H),7.47(dd,J=4.5,1.5Hz,2H),7.47−7.46(m,1H),7.41(t,J=7.5Hz,1H),7.24(ddd,J=7.5,5.0,2.0Hz,1H),3.62−3.57(m,4H),1.88(m,2H);ESI MS m/z 387[C2219FN+H]
【0056】
実施例2
8−(2,6−ジエチルピリジン−4−イル)−8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミンの調製
【化11】

【0057】
実質的に実施例1に記載される同じ手法を用い、工程Aにおいて4−ブロモ−2,6−ジエチルピリジンを用いて、標題生成物を白色固体として得た(0.095g)。mp 174−176℃。H NMR (500MHz,CDCl)δ8.16(d,J=4.2Hz,1H),8.04−7.98(m,1H),7.54−7.37(m,5H),7.13(s,2H),3.70(t,J=6.0Hz,2H),3.50(t,J=6.0Hz,2H),2.75(q,J=7.8Hz,4H),1.87(t,J=5.7Hz,2H),1.23(t,J=7.8Hz,6H);ESI MS m/z 443[C2627FN+H]
【0058】
実施例3
8−(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)−8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミンの調製
【化12】

【0059】
A)化合物1の調製
t−ブチルリチウム(ペンタン中1.7M溶液を16.2mL,27.5mmol)およびジエチルエーテルの混合物を−78℃に冷却し、15分かけて、4−ブロモ−1−エチルピラゾール(2.3g,13.1mmol)のジエチルエーテル中溶液で滴下処理し、−78℃で10分間攪拌し、3−ブロモベンゾニトリル(2.58g,14.1mmol)のエーテル中溶液で滴下処理し、−78℃で45分間攪拌し、1時間室温に温めた。反応混合物を無水メタノールで処理し、0℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(0.991g,26.2mmol)で処理し、室温に温め、室温で1時間攪拌し、0℃に冷却し、気体発生が止むまで飽和塩化アンモニウムを注意深く添加することによってクエンチし、全ての沈殿物を溶解させた。反応混合物を塩化メチレンおよび水で希釈した。相を分離した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,塩化メチレン/メタノール 95:5)によって精製して、化合物1を無色油として得た(1.91g、52%収率)。H NMR (300MHz,CDCl)δ7.54(br s,1H),7.41−7.35(m,2H),7.32−7.27(m,1H),7.24−7.16(m,2H),5.11(s,1H),4.10(q,J=7.3Hz,2H),1.89(br s,2H),1.44(t,J=7.3Hz,3H);ESI MS m/z 263[(C1214BrN−NH)+H]
【0060】
B)化合物2の調製
1(0.112g,0.40mmol)の塩化メチレンおよび飽和水性重炭酸ナトリウム中混合物を氷浴で冷却し、チオホスゲン(0.05g,0.44mmol)で処理し、30分間勢い良く攪拌し、塩化メチレンで希釈した。相を分離した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物2を黄色シロップとして得た(0.11g、84%収率)。H NMR (300MHz,CDCl)δ7.51−7.45(m,2H),7.37(s,1H),7.31−7.24(m,3H),5.93(s,1H),4.14(q,J=7.3Hz,2H),1.47(t,J=7.3Hz,3H)
【0061】
C)化合物3の調製
カリウムt−ブトキシド(0.04g,0.37mmol)のテトラヒドロフラン中混合物を−78℃で2分かけて、2(0.11g,0.34mmol)および二硫化炭素(0.04g,0.51mmol)のテトラヒドロフラン中溶液で滴下処理し、−78℃で0.5時間攪拌し、ゆっくりと室温に温め、室温で1時間攪拌し、塩化メチレンおよび水で希釈した。相を分離した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物3を黄色固体として得た(0.089g、66%収率)。H NMR (300MHz,DMSO−d)δ 7.88−7.26(m,6H),4.15,4.06(2q,J=7.3Hz,2H),1.41−1.39(m,3H);ESI MS m/z 398[C1412BrN+H]
【0062】
D)化合物4の調製
3(0.50g,1.25mmol)および1,3−ジアミノプロパン(0.28g,3.75mmol)のエタノール中混合物を70℃で1時間加熱し、室温に冷却し、減圧下で蒸発させた。得られた残渣を酢酸エチルおよび水の間に分配した。有機相を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮して、化合物4を薄黄色油として得た(0.38g、75%収率)。H NMR (300MHz,CDCl)dδ 7.63(s,1H),7.53−7.47(m,2H),7.43−7.23(m,3H),4.15(q,J=7.3Hz,2H),3.83(t,J=6.0Hz,2H),3.53−3.45(m,2H),1.90−1.83(m,2H),1.43(t,J=7.3Hz,3H);ESI MS m/z404[C1718BrNS+H]
【0063】
E)化合物5の調製
化合物4(0.38g,0.94mmol)およびt−ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液を3.6g,28.2mmol)のメタノールおよび水性濃水酸化アンモニウム中混合物を室温で一晩攪拌し、10%水性チオ硫酸ナトリウム(30mL)で処理し、減圧下で濃縮して、メタノールのほとんどを除去した。得られた水性混合物を塩化メチレンで抽出した。抽出物を合わせ、水およびブラインで連続的に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。該残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、化合物5を無色シロップとして得た(0.09g、25%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.66(s,1H),7.48−7.34(m,4H),7.17(t,J=7.8Hz,1H),4.11(q,J=7.3Hz,2H),3.59(t,J=5.8Hz,2H),3.58−3.52(m,2H),1.91−1.80(m,2H),1.46(t,J=7.3Hz,3H);ESI MS m/z 387[C1719BrN+H]
【0064】
8−(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)−8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミンの調製
5(0.090g,0.230mmol)、2−フルオロピリジン−3−ボロン酸(0.065g,0.460mmol)、塩化ビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(II)(0.008g,0.011mmol)、トリフェニルホスフィン(0.006g,0.022mmol)および炭酸ナトリウム(0.073g,0.690mmol)の3:1 DME/水中混合物を還流温度で1.5時間加熱し、室温に冷却し、酢酸エチルおよび水で希釈した。相を分離した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、オフホワイト色固体を得た(0.035g)。該物質を2:1アセトニトリル/水から凍結乾燥させて白色固体を得、それをジメチルホルムアミドと混合した。該固体をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して白色固体を得、それを2:1アセトニトリル/水から凍結乾燥させて、標題生成物を白色固体として得た(0.034g、35%収率)。mp91−115℃。H NMR (300MHz,CDCl)δ8.20−8.12(m,1H),7.90−7.81(m,1H),7.71(br s,1H),7.59−7.40(m,6H),4.12(q,J=7.3Hz,2H),3.70(t,J=6.0Hz,2H),3.57(t,J=4.9Hz,2H),1.95−1.82(m,2H),1.46(t,J=7.3Hz,3H);ESI MS m/z 404[C2222FN+H]
【0065】
実施例4
8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミンの調製
【化13】

【0066】
実質的に実施例3に記載される同じ手法を用いて、工程Bにおいて1(4−ブロモフェニル)−1−[(2,2,2−トリフルオロエチル)ピラゾール−4−イル]メチルアミンを用いて、標題生成物を白色固体として得た。mp106−116℃。H NMR(300MHz,CDCl)δ8.17(dd,J=1.7,1.6Hz,1H),7.82(m,1H),7.68(d,J=1.4Hz,1H),7.63(s,1H),7.59(s,1H),7.57−7.41(m,3H),7.23(m,1H),4.68(q,J=8.4Hz,2H),3.60(t,J=5.9Hz,2H),3.54(m,2H),1.85(m,2H);ESI MS m/z 458[C2219+H]
【0067】
実施例5
8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[4−(トリフルオロメトキシ)−フェニル]−3,4−ジヒドロ−8H−イミダゾ[5,1−c][1,2,4]オキサジアジン−6−アミンの調製
【化14】

【0068】
A)化合物1の調製
4−(3−ブロモフェニル)−4−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,5−ジチオン(0.50g,1.08mmol)、2−(アミノオキシ)エタンアミン(0.48g,3.23mmol,J.Med.Chem.2000,43(12),2347に記載のように調製された)およびトリエチルアミン(0.71g,7.00mmol)のエタノール中混合物を氷浴温度で2時間攪拌し、室温に温め、室温で24時間攪拌し、70℃に加熱し、70℃で2時間攪拌し、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルおよび水の間に分配した。有機相を1N HClおよびブラインで連続的に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。該残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,1:5 酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、化合物1を白色固体として得た(0.277g、54%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.53(m,2H),7.39(d,J=8.9Hz,2H),7.38−7.22(m,4H),4.11(m,2H),4.03(m,2H);ESI MS m/z 472[C1813BrFS+H]
【0069】
B)化合物2の調製
化合物1(0.27g,0.571mmol)およびt−ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液を1.47g,11.4mmol)のメタノールおよび水性濃水酸化アンモニウム中混合物を室温で一晩攪拌し、10%水性チオ硫酸ナトリウムで処理し、濃縮して、メタノールのほとんどを除去した。得られた水性混合物を塩化メチレンで抽出した。抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。該濃縮物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、化合物2を白色固体として得た(0.166g、64%収率)。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.70(t,J=1.8Hz,1H),7.56(m,1H),7.45−7.37(m,3H),7.20−7.13(m,3H),3.99(m,2H),3.77(m,2H);ESI MS m/z 456[C1814BrF+H]
【0070】
C)8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[4−(トリフルオロメトキシ)−フェニル]−3,4−ジヒドロ−8H−イミダゾ[5,1−c][1,2,4]オキサジアジン−6−アミンの調製
2(0.16g,0.351mmol)、2−フルオロピリジン−3−ボロン酸(0.089g,0.633mmol)、塩化ビス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(II)(0.012g,0.018mmol)、トリフェニルホスフィン(0.0092g,0.035mmol)および炭酸ナトリウム(0.112g,1.05mmol)の3:1 DME/水中混合物を3時間熱還流し、室温に冷却し、酢酸エチルおよび水で希釈した。有機相を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮した。得られた濃縮物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、白色固体を得た(0.12g)。該物質を2:1 アセトニトリル/水(6mL)から凍結乾燥させて、標題生成物を白色固体として得た(0.109g、66%収率)。mp102−117℃;H NMR(300MHz,CDCl)δ8.16(m,1H),7.83(m,1H),7.71(m,1H),7.61−7.56(m,3H),7.46−7.41(m,2H),7.25(m,1H),7.15(m,2H),4.00(m,2H),3.78(m,2H);ESI MS m/z 472[C2317+H]
【0071】
実施例6
8−[3−(5−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−2,8−ジヒドロ−3H−イミダゾ[1,5−b][1,2,4]オキサジアジン−6−アミンの調製
【化15】

【0072】
A)化合物1の調製
4−(3−ブロモフェニル)−4−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−1,3−チアゾリジン−2,5−ジチオン(1.32g,2.84mmol)およびBoc−保護した2−(アミノオキシ)エタンアミン(1.49g,8.53mmol)のエタノール中混合物を70℃で1.5時間攪拌し、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルおよび水の間に分配した。有機相を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。該残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,1:4酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、化合物1を白色固体として得た(1.12g、65%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.72(bs,1H),7.56(dt,J=4.1,1.6Hz,1H),7.49(d,J=1.8Hz,1H),7.38(d,J=8.7Hz,2H),7.30(m,3H),4.68(bs,1H),4.21(t,J=5.1Hz,2H),3.37(bs,2H),1.43(s,9H);ESI MS m/z 607[C2323BrF+H]
【0073】
B)化合物2の調製
化合物1(1.12g,1.85mmol)、トリフルオロ酢酸(6.0mL)および塩化メチレンの混合物を周囲温度で1時間攪拌し、減圧下で濃縮した。濃縮物を10%水性炭酸カリウムでpH9に塩基性化し、塩化メチレンで抽出した。抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、化合物2をオフホワイト色固体として得た(0.842g、90%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.21−7.60(m,6H),7.11−7.25(m,2H),4.22(t,J=5.3Hz,2H),2.94(t,J=5.2Hz,2H),1.62(s,2H);ESI MS m/z507[C1815BrF+H]
【0074】
C)化合物3の調製
化合物2(0.842g,1.66mmol)のエタノール中溶液を還流温度で1時間加熱し、室温に冷却し、真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,3:1ヘキサン/酢酸エチル)によって精製して、化合物3をオフホワイト色固体として得た(0.437g、56%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.63(m,2H),7.39(dd,J=4.6,2.1Hz,2H),7.28(m,2H),7.23(d,J=8.0Hz,2H),4.11(t,J=2.9Hz,2H),4.02(t,J=3.2Hz,2H);ESI MS m/z 473[C1813BrFS+H]
【0075】
D)化合物4の調製
化合物3(0.434g,0.920mmol)およびt−ブチルヒドロペルオキシド(70%水溶液を3.55g,27.6mmol)のメタノールおよび水性濃水酸化アンモニウム中混合物を室温で一晩攪拌し、10%水性チオ硫酸ナトリウムで処理し、濃縮して、メタノールのほとんどを除去した。得られた水性混合物を塩化メチレンで抽出した。抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮乾固させた。該残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、化合物4をオフホワイト色固体として得た(0.284g、68%収率)。H NMR(500MHz,CDCl)δ7.69(t,J=1.8Hz,1H),7.55(dd,J=4.7,2.1Hz,2H),7.42(dt,J=5.2,1.0Hz,1H),7.40(dt,J=6.0,1.0Hz,1H),7.18(m,3H),4.00(t,J=4.5Hz,2H),3.79(t,J=6.1Hz,2H);ESI MS m/z 456[C1814BrF+H]
【0076】
E)8−[3−(5−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[4−(トリフルオロメトキシ)−フェニル]−2,8−ジヒドロ−3H−イミダゾ[1,5−b][1,2,4]オキサジアジン−6−アミンの調製
化合物4(0.095g,0.209mmol)、化合物5(0.122g,0.313mmol)、およびジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.007g,0.011mmol)のDMF中混合物を脱気し、次いで、密閉管中150℃で1.5時間加熱した。混合物を室温に冷却し、酢酸エチルおよび5%水性LiClで希釈した。有機相を分離し、5%水性LiClで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカ,95:5:0.25 塩化メチレン/メタノール/濃水酸化アンモニウム)によって精製して、標題生成物を白色固体として得た(0.050g、38%収率)。mp120−135℃。H NMR (500MHz,CDCl)δ8.67(bs,1H),8.38(d,J=2.3Hz,1H),7.78(bs,1H),7.45−7.62(m,6H),7.18(d,J=8.3Hz,2H),4.05(bs,2H),3.99(bs,2H);ESI MS m/z472[C2317+ H]
【0077】
実施例7
試験化合物の酵素活性および試験化合物によるhBACE1、MuBACE1およびhBACE2の阻害の評価
アッセイ条件:
10nMヒトBACE1(または10nMネズミBACE1、1.5nMヒトBACE2)、25μM基質(WABC−6,MW1549.6,AnaSpec製);最終バッファー条件:50mM 酢酸Na,pH4.5、0.05%CHAPS、25%PBS;温度:室温;試薬情報:酢酸NaはAldrich(Cat.#24,124−5)、CHAPSはResearch Organics(Cat.#1304C)、1XPBSはMediatech(Cellgro)(Cat#21−031−CV)、ペプチド基質AbzSEVNLDAEFRDpaはAnaSpec(ペプチド名:WABC−6)。
【0078】
ストック基質(AbzSEVNLDAEFRDpa)濃度の決定:
ジメチルスルホキシド(DMSO)中における25mMストック溶液をペプチド重量およびMWを用いて作製し、25μMに希釈する。濃度は、354nmでの吸光度により、吸光係数ε 18172M−1cm−1を用いて決定する。基質ストックを少量のアリコートに分けて−80℃で保存する。
[基質ストック]=ABS354nm 10/18172(mM)
【0079】
ストック酵素濃度の決定:
各酵素のストック濃度は、280nmのABSにより、6Mグアニジニウム塩酸塩(Research Organics製,Cat.#5134G−2)pH6中、hBACE1およびMuBACE1についてε 64150M−1cm−1、hBACE2について62870 M−1cm−1を用いて決定される。
各酵素に関する吸光係数ε280nmは、既知のアミノ酸組成およびTrp(5.69M−1cm−1)およびTyr(1.28M−1cm−1)残基(Anal.Biochem.182,319−326)についての発表された吸光係数に基づいて計算された。
【0080】
希釈および混合工程:
全反応容量:100μL
1.バッファーA(66.7mM酢酸Na,pH4.5,0.0667%CHAPS)中における2X阻害剤希釈を調製する。
2.バッファーA(66.7mM酢酸Na,pH4.5,0.0667%CHAPS)中における4X酵素希釈を調製する。
3.1XPBS中における100μM基質希釈を調製する。
4.50μL 2X阻害剤、25μL 100μM基質を96ウェルプレート(DYNEX Technologies製,VWR#:11311−046)の各ウェルに加えてすぐに、25μL 4X酵素を阻害剤および基質ミキサーに加え、蛍光読み取りを開始する。
【0081】
蛍光読み取り:
λex 320nmおよびλem 420nmでの読み取りを室温で30分間、40秒毎に行い、基質開裂速度に関する直線の傾斜(v)を決定する。
【0082】
%阻害の計算:
%阻害=100(1−v/v
(v=阻害剤存在下の基質開裂速度
=阻害剤不在下の基質開裂速度)
IC50決定:
%阻害=[(BIC50)+(100)]/(IC50+I
【0083】
ヒト組み換えBACE2について蛍光キネティックアッセイ
該アッセイを用いて、試験化合物の分析のための速度パラメーターおよび選択性パラメーターを提供する。
【0084】
材料および方法:
最終アッセイ条件:10nMヒトBACE1(または10nMネズミBACE1,1.5nMヒトBACE2)、25μM基質(WABC−6,MW1549.6,AnaSpec製)。最終バッファー条件:50mM 酢酸Na,pH4.5,0.05%CHAPS,25%PBS。温度:室温。試薬情報:酢酸Na:Aldrich,Cat.#24,124−5、CHAPS:Research Organics,Cat.#1304C、1XPBS:Mediatech(Cellgro),Cat#21−031−CV、ペプチド基質AbzSEVNLDAEFRDpa:AnaSpec,ペプチド名:WABC−6。
【0085】
ストック基質(AbzSEVNLDAEFRDpa)濃度の決定:
DMSO中における25mMストック溶液をペプチド重量およびMWを用いて調製し、25μMに希釈する。濃度は、354nmでの吸光度により、吸光係数ε 18172M−1cm−1を用いて決定する。基質ストックを少量のアリコートに分けて−80℃で保存する。
[基質ストック]=ABS354nm 10/18172(mM)
【0086】
ストック酵素濃度の決定:
各酵素のストック濃度は、280nmのABSにより、6Mグアニジニウム塩酸塩(Research Organics製,Cat.#5134G−2)pH6中、hBACE1およびMuBACE1についてε 64150M−1cm−1、hBACE2について62870 M−1cm−1を用いて決定される。(各酵素に関する吸光係数ε280nmは、既知のアミノ酸組成およびTrp(5.69M−1cm−1)およびTyr(1.28M−1cm−1)残基(Anal.Biochem.182,319−326)について発表された吸光係数に基づいて計算される。)
【0087】
希釈および混合工程:全反応容量:100μL
1.バッファーA(66.7mM酢酸Na,pH4.5,0.0667%CHAPS)中における2X阻害剤希釈を調製する。
2.バッファーA(66.7mM酢酸Na,pH4.5,0.0667%CHAPS)中における4X酵素希釈を調製する。
3.1XPBS中における100μM基質希釈液、50μL 2X阻害剤および25μL 100μM基質を96ウェルプレート(DYNEX Technologies製,VWR#:11311−046)の各ウェルに加えてすぐに、25μL 4X酵素を阻害剤および基質ミキサーに加え、蛍光読み取りを開始する。
【0088】
蛍光読み取り:
λex320nmおよびλem420nmでの読み取りを室温で30分間、40秒毎に行い、基質開裂速度に関する直線の傾斜(v)を決定する。
【0089】
%阻害の計算の分析:
%阻害=100(1−v/v
=阻害剤存在下の基質開裂速度
=阻害剤不在下の基質開裂速度
IC50決定:
%阻害=[(BIC50)+(100)]/(IC50+I
【0090】
得られたデータを下記の表Iに示す。別記しないかぎり、IC50値は100%阻害で得られた値を示す。
【0091】
表I
【表1】

【0092】
結果および考察:
上記表Iに示されるデータから分かるように、本発明の化合物は、BACE1の強力かつ選択的な阻害剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
Qは、O、SまたはCHであり;
Wは、O、SまたはCHであり;
Xは、N、NO、SO、OまたはCHであり;
Yは、N、NO、SO、OまたはCR10であり;
Zは、N、NO、SO、OまたはCR11であり、但し、XがCHであり、YがCR10であって、ZがCR11である場合、QおよびWのうち1つはOまたはSであり;
mは、0、1または2であり;
nは、0または1であり;
およびRは、各々、独立して、Hまたは置換されていてもよいC−Cアルキル基であり;
およびRは、各々、独立して、H、または置換されていてもよいC−Cアルキル基であるか、またはRおよびRは一緒になって、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有していてもよい4−ないし7−員環を形成してもよく;
およびRは、各々、独立して、H、ハロゲン、NO、CN、OR12、CO13、COR14、NR1718、SONR1920、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−CアルキニルまたはC−Cシクロアルキル基であり;
およびRは、各々、独立して、H、ハロゲン、NO、CN、OR15、NR1718、または、各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキルまたはシクロヘテロアルキル基であるか、または隣接する炭素原子に結合する場合、RおよびRはそれらが結合する原子と一緒になって、O、NおよびSから選択される1または2個のヘテロ原子を含有していてもよい置換されていてもよい5−ないし7−員環を形成していてもよく;
は、H、ハロゲン、NO、CN、OR15、NR1718、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基であり;
10およびR11は、各々、独立して、H、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキルまたはアリール基であり;
12、R13、R14およびR15は、各々、独立して、H、または各々、置換されていてもよいC−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基であり;
17、R18、R19およびR20は、各々、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキルであるか、またはR17およびR18もしくはR19およびR20は、それらが結合している原子と一緒になって、O、NおよびSから選択される付加的なヘテロ原子を含有していてもよい5−ないし7−員環を形成していてもよく;
pは、0、1または2である]
で示される化合物、またはその互変体、その立体異性体もしくはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
およびRがHである請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が置換されていてもよいヘテロアリール基である請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
がフェニル環の3位に結合している請求項3記載の化合物。
【請求項5】
XがNである請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
およびRがHである請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
nが0であり、XおよびYがNである請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
nが1であり、XがCHまたはNであり、YがCR10である請求項1〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)−フェニル]−8−ピリジン−4−イル−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミン;
8−(2,6−ジエチルピリジン−4−イル)−8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)−フェニル]−2,3,4,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミン;
8−(1−エチル−1H−ピラゾール−4−イル)−8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−2,3,4,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミン;
8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[1−(2,2,2−トリフルオロエチル)−1H−ピラゾール−4−イル]−2,3,4,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリミジン−6−アミン;
8−[3−(2−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−3,4−ジヒドロ−8H−イミダゾ[5,1−c][1,2,4]オキサジアジン−6−アミン;
8−[3−(5−フルオロピリジン−3−イル)フェニル]−8−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]−3,4−ジヒドロ−8H−イミダゾ[5,1−c][1,2,4]オキサジアジン−6−アミン;
その互変体、その立体異性体、またはその医薬上許容される塩のうちの1つである請求項1記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の式Iの化合物またはその互変体、その立体異性体、またはその医薬上許容される塩の治療上有効量を患者に提供する事を特徴とする、患者におけるβ−アミロイド沈着またはβ−アミロイドレベルの上昇によって特徴付けられる疾患または障害の治療、予防または改善のための方法。
【請求項11】
疾患または障害がアルツハイマー病、認識機能障害、ダウン症候群、HCHWA−D、認識衰退、老人性認知症、脳アミロイド血管症、および神経変性障害から選択される請求項10記載の方法。
【請求項12】
疾患または障害がβ−アミロイド沈着または神経原線維変化の形成によって特徴付けられる請求項10記載の方法。
【請求項13】
BACEの受容体と有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物とを接触させることを特徴とするBACEの活性を調節する方法。
【請求項14】
有効量の請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物を患者に提供することを特徴とする、治療の必要な患者におけるアルツハイマー病の治療方法。
【請求項15】
医薬上許容される担体、および請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物、またはその互変体、その立体異性体、またはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項16】
式II
【化2】

[式中、Halは、ClまたはBrであり、R、R、R、R、R、R、R、R、n、Q、W、X、YおよびZは、上記式Iの定義通りである]
で示される化合物と式A−W’(式中、Aは、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり、W’は、B(OH)、Sn(nBu)およびSn(CHから選択される脱離基である)とを、溶媒の存在下であってもよく、パラジウム触媒の存在下で反応させることを特徴とする、Rが置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基である請求項1において定義される式Iの化合物の調製方法。

【公表番号】特表2010−500999(P2010−500999A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524746(P2009−524746)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/075690
【国際公開番号】WO2008/022024
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】