ベーンポンプ
【解決手段】 ベーンポンプ1のハウジング2には、ポンプ室2A内の気体と残油を排出するための排出通路7が形成されるとともに、ロータ3の逆転時にポンプ室2A内の圧力をポンプ室2Aの外部へ逃す大気導入通路107が形成されている。上記排出通路7はハウジング2の外部のリード弁8によって開閉されるようになっており、大気導入通路107もハウジング2の外部のリード弁108によって開閉されるようになっている。そして、上記大気導入通路107の上端と下端の差である高低差H2は、排出通路7の上端と下端の差である高低差H1よりも大きく設定されている。
【効果】 ポンプ室2A内の残油が排出通路7を介して効率的にハウジング2の外部へ排出される。
【選択図】 図4
【効果】 ポンプ室2A内の残油が排出通路7を介して効率的にハウジング2の外部へ排出される。
【選択図】 図4
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベーンポンプに関し、より詳しくは、気体と潤滑油を排出する排出通路を備えたベーンポンプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の真空ポンプとして使用されるベーンポンプは公知である(例えば、特許文献1〜特許文献3)。
こうした従来のベーンポンプにおいては、ハウジングのポンプ室で回転するロータの摺動部分に潤滑油を供給するようになっており、摺動部分を潤滑した後の潤滑油はロータの回転に伴って、気体とともに排出通路からポンプ室の外部へ排出されるようになっている。
そして、例えば特許文献1のベーンポンプにおいては、排出通路を開閉するリード弁が設けられており、ロータが回転される際にはポンプ室内の圧力によってリード弁が開放されて、ポンプ室内の空気と潤滑油は排出通路および開放状態のリード弁を介してハウジング外部に排出される。そして、ベーンポンプの作動が停止された際には、リード弁によって排出通路は閉鎖された状態であるとともにハウジング内のポンプ室は負圧になっているので、そのポンプ室の負圧によって潤滑油通路内の潤滑油がポンプ室内に引き込まれることがある(図17参照)。このようにポンプ室内に潤滑油(残油)がある状態において、再度エンジンが起動されてロータが回転されると、ポンプ室内の残油はベーンによって押されて上記排出通路と開放されるリード弁を介してハウジング外部へ排出されることになる。しかしながら、気温が極端に低い状態において、ポンプ室内に残油がある状態からエンジンが起動されてロータが回転された場合には、残油の粘度が上昇しているために該残油を押し出す際にベーンやロータ等の構成部品に過大な負荷が掛かり、それらの構成部材が破損する恐れがあった。
そこで、従来では、上述したポンプ室内の残油による構成部品の破損を防止するために次のような対策が提案されている。すなわち、排出通路を開閉するリード弁を廃止するか、あるいは、ポンプ室内とハウジング外部の大気とを常時連通させる連通孔を設け、該連通孔を介してハウジング内の残油が自然に排出されるように構成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報WO2004/044431A2
【特許文献2】特開2005−256684号公報
【特許文献3】特開2006−226164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した残油による悪影響を防止するための対策においても、つぎのような欠点が指摘されている。すなわち、ポンプ室とハウジング外部を常時連通させる連通孔があるために、ベーンポンプの作動中に上記連通孔を介してポンプ室への空気の逆流が生じることになり、真空ポンプとしての吸引性能や駆動トルクが悪化するという問題がある。
しかも、従来では、単一の排出通路によって大気をポンプ室内に取り込むことで、ポンプ室内の残油を排出通路からポンプ室の外部へ排出することが前提となっている。このような構成においては、排出通路における上端部と下端部との高さの差である水頭差が小さいので、排出通路を介してポンプ室への大気の導入が円滑に行われず、従って、排出通路を介してポンプ室の残油が排出されにくいという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、請求項1に記載した本発明は、内部にポンプ室を有するハウジングと、上記ポンプ室内に配置されるとともにロータによって回転されて上記ポンプ室を複数の作動空間に区画するベーンと、上記ポンプ室内に潤滑油を供給する給油通路と、上記ポンプ室に気体を吸引する吸引通路と、上記ポンプ室内の下部とハウジング外部とを連通させるとともに上記ポンプ室内の気体をハウジングの外部へ排出させる排出通路と、上記ロータとベーンが通常の回転方向とは逆方向に回転された際に、上記ポンプ室内の気体をハウジングの外部に逃す大気導入通路と、この大気導入通路を開閉するリード弁とを備えて、上記ロータとベーンが回転される作動時においては上記ポンプ室内の潤滑油が排出通路を介してハウジングの外部へ排出されるように構成されたベーンポンプにおいて、
上記大気導入通路は、上記ハウジングにおける上記排出通路よりも上方位置に形成されており、また、上記大気導入通路の水頭差は上記排出通路の水頭差よりも大きく設定されており、さらに、上記リード弁は、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記大気導入通路の端部開口を閉鎖するようになっており、また、上記リード弁は、上記ロータとベーンの回転が停止される作動停止時には、上記大気導入通路の端部開口との間に隙間が維持されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記リード弁により大気導入通路の端部開口が閉鎖されるので、通常のポンプ機能を得ることができる。他方、ベーンポンプの作動が停止した際は、上記大気導入通路と上記隙間を介してポンプ室内に大気を導入することができる。そして、大気導入通路は排出通路よりも上方に位置しており、しかも、大気導入通路の水頭差は排出通路の水頭差より大きくなっている。そのため、ポンプ室内の残油は排出通路を介して速やかにハウジング外部へ排出される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図。
【図2】図1のII―II線に沿う断面図。
【図3】図2に示した実施例の斜視図。
【図4】図1においてベーンとロータを除いた状態の拡大図。
【図5】図3に示した構成部材の要部の正面図。
【図6】図3に示した構成部材の要部の正面図。
【図7】図6の矢印VII方向からの要部の正面図。
【図8】図3に示した構成部材の平面図。
【図9】図3に示した構成部材の平面図。
【図10】図9の放射方向外方からの側面図。
【図11】図7に示すリード弁の作動状態と非作動状態を誇張して示す正面図。
【図12】図1の実施例において、排出通路と大気導入通路およびそれらの水頭差とポンプ室内の残油との関係を示す概念図。
【図13】図7に示したリード弁の隙間量とポンプ室内の残油量との関係を示す図。
【図14】従来品と本実施例の駆動トルクを比較した図。
【図15】従来品と本実施例の吸引性能を比較した図。
【図16】本発明の他の実施例を示す要部の正面図。
【図17】従来のベーンポンプの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図2において、1は真空ポンプとしてのベーンポンプである。このベーンポンプ1は図示しない自動車のエンジンの側面に固定されており、図示しないブレーキ倍力装置の負圧源として機能するようになっている。
ベーンポンプ1は、略円形のポンプ室2Aを有する段付円筒状のハウジング2と、ポンプ室2A内に配置されるとともにポンプ室2Aの中心に対して軸心を偏心させて配置されたロータ3と、ポンプ室2A内に配置されるとともにロータ3とともに矢印方向に回転されてポンプ室2A内を常時複数の作動空間2a〜2cに区画するベーン4と、上記ハウジング2における大径部2Bの開口、すなわちポンプ室2Aの一端開口を閉鎖するカバー5とを備えている。
【0009】
上記ハウジング2は、上記ポンプ室2Aとなる大径部2Bと、この大径部2Bの端面の隣接位置に形成された中径部2Cと、この中径部2Cの隣接位置となる小径部2Dとを備えており、中径部2Cおよび小径部2Dの内周面によってロータ3を回転自在に軸支している。上記ハウジング2の大径部2Bには、上記ブレーキ倍力装置からポンプ室2Aへ気体(空気)を吸引するための吸引通路6が設けられおり、この吸引通路6内には、ブレーキ倍力装置の負圧を維持するための図示しない逆止弁が設けられている。また、ポンプ室2の最下部に隣接する中径部2Cには、ポンプ室2Aから段部端面2Eまで貫通する軸方向の貫通孔が穿設されており、この貫通孔が、ポンプ室2Aからハウジング2の外部へ気体を排出するための排出通路7となっている。また、後に詳述するが、ハウジング2の段部端面2Eには、所要時に排出通路7を開閉するリード弁8が設けられている。
【0010】
ポンプ室2A内となるロータ3の軸方向の一端には直径方向のガイド溝3Aが形成されており、このガイド溝3Aに板状のベーン4が直径方向に摺動自在に取り付けられている。上記ベーン4の両先端にはポンプ室2Aの内周面と摺動するキャップ4Aが取り付けられている。図1に示すように、ロータ3とベーン4が矢印方向に回転される際には、上記両キャップ4Aがポンプ室2Aの内周面と気密を保持して摺動するとともに、ベーン4の軸方向の両端面4B、4Bはカバー5の内壁面およびポンプ室2Aの内壁面と摺動し、かつ、ロータ3の外周面の一部がポンプ室2Aの内周面と接触した状態に維持される。それによって、ポンプ室2A内が拡縮可能な作動空間2a〜2cとして区画されるようになっている。
また、ロータ3の他端側の軸部とハウジング2の内周面とにわたっては、給油通路11が形成されている。この給油通路11は、ロータ3の軸部に穿設されるとともに給油パイプ12が接続される軸方向孔3Bと、この軸方向孔3Bの他端から連続する直径方向孔3Cと、さらに、ロータ3が矢印方向に回転される際に上記直径方向孔3Cと間欠的に連通するハウジング2の軸方向溝2Fとから構成されている。
【0011】
そして、自動車のエンジンが駆動されると、それに連動して上記ロータ3およびベーン4が図1の矢印方向に回転されるので、上記3つの作動空間2a〜2cの容積が拡縮される。これにともなって吸引通路6を介して各作動空間2a〜2c内へブレーキ倍力装置内の気体(空気)が吸引されるとともに各作動空間2a〜2c内の気体は、排出通路7および開放された状態のリード弁8を介してポンプ室2Aの外部へ排出されるようになっている。また、このようにロータ3とベーン4が回転される作動時には、上記給油通路11を介してポンプ室2A内とベーン4の摺動部分に潤滑油が供給されるようになっている。そして、ポンプ室2A内に流入した潤滑油はポンプ室2A内の下部に一次貯溜された後に、回転されるベーン4とそのキャップ4Aによって移動されてから上記排出通路7と開放状態のリード弁8を介してポンプ室2Aの外部へ排出されるようになっている。
上述した構成は、例えば特許文献2に開示された従来公知のベーンポンプの構成と変わるところはない。
【0012】
しかして、本実施例は、上述した構成を前提として、排出通路7とリード弁8およびそれらの周辺部分を以下のように改良することで、ベーンポンプ1が作動を停止した際にポンプ室2A内の残油をハウジング2の外部へ効率的に排出できるようにしたものである。
すなわち、図3ないし図7に示すように、上記ハウジング2の段部端面2Eにおける排出通路7の端部開口7Aとなる箇所は、その端部開口7Aを取り囲む凹部2Gとして形成されている。換言すると、段部端面2Eに形成された凹部2G内に排出通路7の端部開口7Aを位置させている。そして、上記凹部2Gは、リード弁8の弁座8Aとして構成されている。
排出通路7の端部開口7Aは、隣接内方の小径部2Dの円周方向に沿ってひょうたん型に形成されている。そして、弁座8Aとしての凹部2Gは、段部端面2Eを円周方向所要角度にわたって切欠いて形成されている。この凹部2Gは円周方向の中央部が最も深くなり、そこから両端部となる縁部2G’にわたって徐々に深さが浅くなっている(図7、図11参照)。
一方、上記排出通路7の端部開口7Aを覆って、かつ上記弁座8Aとしての凹部2Gの両方の縁部2G’、2G’に架け渡して弁体8Bが配置されている。この弁体8Bは、バネ性を有する薄板状の金属板からなり、図8に示すように、ハウジング2の小径部2Dの外周面に沿った略円弧状に形成されている。弁体8Bは全域において同じ厚さとなっており(約0.1mm〜0.3mm)、弁体8Bの基部となる端部側にねじ用の貫通孔8B’が穿設されている。他端となる自由端から貫通孔8B’に至る領域はバネ性を有する弾性変形部となっており、この弾性変形部は概略スプーン形に形成されている。この弁座8Bの弾性変形部が弁座8Aである凹部2Gの両方の縁部2G’、2G’にわたって配置されている(図6、図7参照)。
【0013】
図9に示すように、弁体8Bを押さえるストッパ13は、上記弁体8Bよりも一回り大きな円弧状の薄い金属板からなり、その基部には固定ねじ14用の貫通孔13Aが穿設されている。
そして、上記弁体8Bを弁座8Aとなる凹部2Gに上述したように架け渡して配置し、その上からストッパ13の基部側の箇所を重合させており、それら両部材の貫通孔8B’、13Aに固定ねじ14を挿通させてから段部端面2Eのねじ孔にねじ込むことで、弁体8Bの基部およびストッパ13の基部を段部端面2Eに固定している。なお、図10、図11に示すように、ストッパ13の自由端側の箇所は、基部側の箇所に対して所定角度傾斜させて形成されている。これにより、ストッパ13と弁座8Aとの間に介在された弁体8Bが容易に弾性変形できるようになっている。
このように、本実施例のリード弁8は、排出通路7の端部開口7Aが位置する凹部2Gからなる弁座8Aと、段部端面2Eに基部を連結されて弾性変形可能な弁体8Bと、弁体8Bを上方から押さえるストッパ13と、固定ねじ14とから構成されている。
【0014】
このように構成された本実施例のリード弁8は、図7に示すように、ベーンポンプ1が作動されていない自然状態では、弁体8Bが自己のバネ性により平坦な状態となって弁座8Aから離隔するので、排出通路7の端部開口7Aは開放されている。そして、この平坦な状態の弁体8Bと凹部2Gからなる弁座8Aとの間には、僅かな隙間δが維持されるようになっている(図7、図11参照)。
これに対して、ベーンポンプ1が作動されて、ロータ3及びベーン4が回転される際には、ポンプ室2A内(各作動空間2a〜2c)はハウジング2の外部の大気よりも負圧になるので、各作動空間2a〜2cの負圧とハウジング2外部の差圧によって弁体8Bが弾性変形して弁座8Bに密着する(図11参照)。これによって、排出通路7の端部開口7Aが閉鎖されるようになっており、その閉鎖状態においてベーン4とロータ3の回転に伴って、各作動空間2a〜2c内の圧力上昇により弁体8Bが強制的に弁座8Aから僅かに離座される。それにより、各作動空間2a〜2c内の大気および潤滑油が排出通路7と開放状態のリード弁8を介してハウジング2の外部へ排出されるようになっている。
【0015】
他方、上記作動状態からエンジンが停止されて、ロータ3およびベーン4が停止すると、リード弁8は閉鎖状態となっており、ポンプ室2A内はハウジング2外部の大気圧よりも負圧となっているので、給油通路11内の潤滑油がポンプ室2A内に引き込まれる。
すると、この直後、リード弁8の弁体8Bは自己のバネ性によって図11に実線で示す湾曲状態(閉鎖状態)から想像線で示す平坦な状態(開放状態)に復帰する。つまり、ポンプ室2A内の負圧が低下したことにより、ポンプ室2A内とハウジング2外部の大気圧との差圧が小さくなるので弁体8Bが弁座8Aから離座して平坦な状態となり、排出通路7の端部開口7Aが開放される。そのため、ポンプ室2A内の下部に引き込まれた潤滑油(残油)は、排出通路7と、その端部開口7Aおよび弁体8Bの位置の隙間δを介してハウジング2の外部に排出されるようになっている。
このように、本実施例においては、排出通路7を開閉するリード弁8を上述したように構成しているので、ベーンポンプ1の作動が停止した際にポンプ室2A内に生じる残油をハウジング2の外部へ効率的に排出させることができる。
【0016】
さらに、本実施例は、図3から図6に示すように、ポンプ室2A内に生じる残油をより一層効率的にハウジング2外へ排出させるために、上記排出通路7と同様の大気導入通路107をハウジング2の中径部2Cに形成するとともに、この大気導入通路107を開閉するための第2のリード弁108を段部端面2Eに設けている。
より詳細には、ハウジング2の中径部2Cには、排出通路7から円周方向に位置をずらして該排出通路7と同様の軸方向孔を形成してあり、それを大気導入通路107としている。図4に示すように、ポンプ室2Aの内方から見ると、上記排出通路7Aはポンプ室2A内の最下部に位置する一方、大気導入通路107はロータ3の軸心よりも上方に形成されている。そして、両通路7,107内における上端部と下端部との差である水頭差を比較すると、大気導入通路107の水頭差H2が排出通路7の水頭差H1よりも大きく設定されている(図4参照)。
【0017】
また、大気導入通路107の端部開口107Aの位置には、大気導入通路107を開閉する第2のリード弁108が設けられている。つまり、前述した排出通路7と同様の凹部102Gからなる弁座108Aと弁体108Bが設けられている。そして、上記リード弁8のものと同様に、弁体108Bをストッパ113で押さえた状態で固定ねじ114によりそれらの部材が段部端面2Eに連結されている。
なお、第2のリード弁108を構成する弁座108A(凹部102G)、および弁体108Bの形状は、前述した他方のリード弁8の弁座8Aと弁体8Bに対して左右対象の形状となっており、その弁座108Bと弁体108Aの詳細な構成は他方のリード弁8のものと同じである。また、第2のリード弁108においては、上記他方のリード弁8の構成部材と対応する部材には、100を加算した部材番号を付している。
このように、第2のリード弁108は、大気導入通路107の端部開口107Aの位置の弁座108Aと、バネ性を有する薄板状の弁体108Bと、弁体108Bを押さえるストッパ113と、固定ねじ114とによって構成されている。なお、上記リード弁8、108の弁体8B、108B厚さは、それらの材質や凹部2G、凹部102Gの凹み量に応じてそれぞれ変えることができる。
【0018】
以上のように構成された大気導入通路107と第2のリード弁108は、ロータ3とベーン4が回転されている作動中においては、ポンプ室2Aの負圧によって弾性変形した弁体108Bが弁座108Aに密着することで、大気導入通路107の端部開口107Aは閉鎖されるようになっている。それによって、ベーンポンプ1は通常のポンプ作動を得ることができる。しかしながら、例えばエンジンの始動時においては、ロータ3およびベーン4が正常な回転方向と逆方向に回転される場合があり、その際にはポンプ室2A内が急激に高圧になる。この時、つまり、ロータ3とベーン4が逆転された際に、リード弁108の弁体108Bが弁座108Aから強制的に離座されることで大気導入通路107が開放されて、ポンプ室2A内の高圧の大気が大気通路107と開放状態のリード弁108を介してポンプ室2Aの外部へ排出されるようになっている。つまり、ポンプ室2Aの圧力をハウジング2の外部へ逃すリリーフ通路およびリリーフ弁として、大気導入通路107とリード弁108が機能するようになっている。
【0019】
また、ロータ3とベーン4が回転されているベーンポンプ1の作動中においては、ポンプ室2Aの負圧によってリード弁108は閉鎖されるが、ベーンポンプ1が作動状態から停止された際には、前述したように排出通路7側のリード弁8がバネ性によって弁座8Bから離座する。そして、それと同期して、第2のリード弁108の弁体108Bも弁座108Aから離座して平坦状になり、それによって大気導入通路107が開放され、かつ、弁体108Bと弁座108Aとの間に隙間δが維持される(リード弁8に関する図11の想像線と同じ状態)。これにより、該隙間δと大気導入通路107を介してハウジング2外部の大気がポンプ室2A内に導入される。
このように、ベーンポンプ1の作動が停止した際には、第1のリード弁8により排出通路7が開放されるタイミングに合わせて、第2のリード弁108も大気導入通路107を開放させる。そして、上記大気導入通路107は排出通路7より上方位置に配置されており、しかも、大気導入通路107の水頭差H2は、排出通路7の水頭差よりも大きく設定されている。そのため、ポンプ室2Aの最下部にある排出通路7を通過する残油は、大気導入通路107から導入される大気によって、効率的に排出通路7からハウジング2外部へ排出されるようになっている。この作用は、例えば液体を充填したプラスチックの容器を逆さにして、下端となる口部から液体を排出させようとする際に、上端に位置する容器の底に空気孔を開けると、下端となる容器の口部から速やかに液体がこぼれるのと同じ原理である。
なお、ポンプ室2A内に残油が生じる場合としては、例えば図12(a)に示すように、大気導入通路107よりも上部まで残油が生じることがある。このような場合であっても、本実施例においては、排出通路7を介して残油を確実に排出することができる。すなわち、前述した容易本実施例においては、上記大気導入通路107は排出通路7よりも上方位置に設けられており、それらの水頭差H2、H1の違いは、H2の方がH1より大きくなっている。そのため、このような場合には、図12(a)に示すように、先ず大気導入通路107とリード弁108の隙間δを介して大気がポンプ室2A内に導入され、それに伴って、少しづつ排出通路7から残油が排出される。その後、徐々に減少した残油の液面が大気導入通路107の上端よりも低くなると、大気導入通路107とリード弁108の隙間δを介しての大気の導入量が増えるので、図12(b)に示すように、排出通路7からの残油の排出量も増加する。そして、さらに、減少した残油の液面が大気導入通路107の下端よりも低くなると、大気導入通路107とリード弁108の隙間δを介しての大気の導入量が増大するので、図12(c)、図12(d)に示すように、排出通路7からの残油の排出量も増大して、速やかに残油がポンプ室2Aから排出される。このような、特別な状況であっても、本実施例においては、ポンプ室2A内の残油を確実にハウジング2外部へ排出することができる。
【0020】
以上のように、本実施例のベーンポンプ1は、ベーンポンプ1の作動が停止して潤滑油がポンプ室2A内に引き込まれた際に、排出通路7の端部開口7Aがリード弁8によって開放されるとともに、第2のリード弁107によって大気導入通路107が開放されることで、ポンプ室2A内にハウジング2外部の大気が導入される。さらに、大気導入通路107の水頭差H2が排出通路7の水頭差H1よりも大きいため、ポンプ室2A内に引き込まれた潤滑油(残油)は、速やかに排出通路7を介してハウジング2の外部へ排出されるようになっている。
ここで、ポンプ室2A内の残油とリード弁8の間隙δの大きさとの相関関係を実験によって調べた結果を示したものが図13である。この図13に示すように、間隙δが零の場合、つまり、特許文献1に示したような従来一般的なリード弁を用いた場合には、残油量は変動がなくポンプ室内に残ったままとなる。これに対して、間隙δを0.3〜0.5mmに維持した場合、つまり、本実施例の場合にはポンプ室2A内の残油量が停止後の時間の経過に伴って急激に減少することが理解できる。
次に、エンジン運転時におけるベーンポンプ1の駆動トルクの違いについて従来品(1)、(2)と上記本実施例とを比較したデータが図14である。ここで従来品(1)とは、特許文献1に示したような一般的なリード弁の場合である。また、従来品(2)とはリード弁がないものである。この図14のデータから見ると、エンジン運転時におけるベーンポンプ1の駆動トルクは、本実施例は従来品(1)と比較して遜色ないことが理解できる。
さらに、ベーンポンプ1の作動時における吸引性能を従来品と上記本実施例とで比較したデータが図15である。ここで従来品とは、特許文献1に示したような一般的なリード弁の場合である。この図15のデータから言えることは、本実施例においては、上述したような非作動時に間隙δが維持される構成のリード弁8を採用しているにも拘わらず、従来品と遜色ない吸引性能が得られるということである。
【0021】
以上のように、本実施例のベーンポンプ1によれば、ベーンポンプ1の構成部材として高価な材料を使用することなく、従来公知のベーンポンプ1に上述した改良を加えることで、ポンプ室2A内の残油をハウジング2外部へ効率的に排出させることができる。また、これに関連して、リード弁8の弁体8Bは、全体として小径部2Dの外周面に沿った円弧状に形成されているので、弁体8Bの先端側となる弾性変形部は、一側だけが片当たりすることなく両側部が同時に弁座8Aに接離する。この作用は、第2のリード弁108と大気導入通路107に関しても同様である。この点においても、本実施例によれば、ポンプ室2A内の残油をハウジング2外部へ効率的に排出させることが可能である。
また、ベーンポンプ1の作動時には、排出通路7はリード弁8によって確実に閉鎖されるとともに、大気導入通路107は第2のリード弁108によって確実に閉鎖される。そのため、本実施例においては、上記図15の比較データからも明らかなように、ベーンポンプ1の吸引性能や駆動トルクを損なうことがない。
さらに、上記本実施例のベーンポンプ1は、ハウジング2内への潤滑油の供給量を減少させる構成は採用していない。そのため、ポンプ室2A内のベーン4の摺動部分への必要な潤滑油は確保されるので、貧潤滑によるベーン4およびそれとの摺動部分の焼付きを防止することができる。
【0022】
なお、上述した実施例においては、リード弁8は、凹部2Gからなる弁座8Aと、バネ性を有する弁体8Bとを備えて、自然状態では両者の間に間隙δが維持される構成となっているが、リード弁8としては、図16に示すような構成であっても良い。すなわち、弁座8Aとしては、平坦な段部端面2Eをそのまま利用する一方、弁体8Bとしては自然状態で隙間δが維持されるような膨らんだ形状(湾曲形状)を採用しても良い。このような構成のリード弁8においても、ポンプ室2A内の負圧が弁体8Bに作用する際には、弁体8Bが平坦状に弾性変形して弁座8Aに着座し、排出通路7の端部開口7Aが閉鎖される。他方、ポンプ室2Eの負圧が低下したベーンポンプの作動停止時には、弁体8Bは自己のバネ性によって元の膨らんだ湾曲状態に復帰する。このような構成のリード弁8を、上記第2のリード弁108の代わりに採用しても良い。
【符号の説明】
【0023】
1‥ベーンポンプ 2‥ハウジング
3‥ロータ 4‥ベーン
6‥吸引通路 7‥排出通路
102G‥凹部 107‥大気導入通路
107A‥端部開口 108‥リード弁
108A‥弁座 108B‥弁体
【技術分野】
【0001】
本発明はベーンポンプに関し、より詳しくは、気体と潤滑油を排出する排出通路を備えたベーンポンプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の真空ポンプとして使用されるベーンポンプは公知である(例えば、特許文献1〜特許文献3)。
こうした従来のベーンポンプにおいては、ハウジングのポンプ室で回転するロータの摺動部分に潤滑油を供給するようになっており、摺動部分を潤滑した後の潤滑油はロータの回転に伴って、気体とともに排出通路からポンプ室の外部へ排出されるようになっている。
そして、例えば特許文献1のベーンポンプにおいては、排出通路を開閉するリード弁が設けられており、ロータが回転される際にはポンプ室内の圧力によってリード弁が開放されて、ポンプ室内の空気と潤滑油は排出通路および開放状態のリード弁を介してハウジング外部に排出される。そして、ベーンポンプの作動が停止された際には、リード弁によって排出通路は閉鎖された状態であるとともにハウジング内のポンプ室は負圧になっているので、そのポンプ室の負圧によって潤滑油通路内の潤滑油がポンプ室内に引き込まれることがある(図17参照)。このようにポンプ室内に潤滑油(残油)がある状態において、再度エンジンが起動されてロータが回転されると、ポンプ室内の残油はベーンによって押されて上記排出通路と開放されるリード弁を介してハウジング外部へ排出されることになる。しかしながら、気温が極端に低い状態において、ポンプ室内に残油がある状態からエンジンが起動されてロータが回転された場合には、残油の粘度が上昇しているために該残油を押し出す際にベーンやロータ等の構成部品に過大な負荷が掛かり、それらの構成部材が破損する恐れがあった。
そこで、従来では、上述したポンプ室内の残油による構成部品の破損を防止するために次のような対策が提案されている。すなわち、排出通路を開閉するリード弁を廃止するか、あるいは、ポンプ室内とハウジング外部の大気とを常時連通させる連通孔を設け、該連通孔を介してハウジング内の残油が自然に排出されるように構成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報WO2004/044431A2
【特許文献2】特開2005−256684号公報
【特許文献3】特開2006−226164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した残油による悪影響を防止するための対策においても、つぎのような欠点が指摘されている。すなわち、ポンプ室とハウジング外部を常時連通させる連通孔があるために、ベーンポンプの作動中に上記連通孔を介してポンプ室への空気の逆流が生じることになり、真空ポンプとしての吸引性能や駆動トルクが悪化するという問題がある。
しかも、従来では、単一の排出通路によって大気をポンプ室内に取り込むことで、ポンプ室内の残油を排出通路からポンプ室の外部へ排出することが前提となっている。このような構成においては、排出通路における上端部と下端部との高さの差である水頭差が小さいので、排出通路を介してポンプ室への大気の導入が円滑に行われず、従って、排出通路を介してポンプ室の残油が排出されにくいという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、請求項1に記載した本発明は、内部にポンプ室を有するハウジングと、上記ポンプ室内に配置されるとともにロータによって回転されて上記ポンプ室を複数の作動空間に区画するベーンと、上記ポンプ室内に潤滑油を供給する給油通路と、上記ポンプ室に気体を吸引する吸引通路と、上記ポンプ室内の下部とハウジング外部とを連通させるとともに上記ポンプ室内の気体をハウジングの外部へ排出させる排出通路と、上記ロータとベーンが通常の回転方向とは逆方向に回転された際に、上記ポンプ室内の気体をハウジングの外部に逃す大気導入通路と、この大気導入通路を開閉するリード弁とを備えて、上記ロータとベーンが回転される作動時においては上記ポンプ室内の潤滑油が排出通路を介してハウジングの外部へ排出されるように構成されたベーンポンプにおいて、
上記大気導入通路は、上記ハウジングにおける上記排出通路よりも上方位置に形成されており、また、上記大気導入通路の水頭差は上記排出通路の水頭差よりも大きく設定されており、さらに、上記リード弁は、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記大気導入通路の端部開口を閉鎖するようになっており、また、上記リード弁は、上記ロータとベーンの回転が停止される作動停止時には、上記大気導入通路の端部開口との間に隙間が維持されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記リード弁により大気導入通路の端部開口が閉鎖されるので、通常のポンプ機能を得ることができる。他方、ベーンポンプの作動が停止した際は、上記大気導入通路と上記隙間を介してポンプ室内に大気を導入することができる。そして、大気導入通路は排出通路よりも上方に位置しており、しかも、大気導入通路の水頭差は排出通路の水頭差より大きくなっている。そのため、ポンプ室内の残油は排出通路を介して速やかにハウジング外部へ排出される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図。
【図2】図1のII―II線に沿う断面図。
【図3】図2に示した実施例の斜視図。
【図4】図1においてベーンとロータを除いた状態の拡大図。
【図5】図3に示した構成部材の要部の正面図。
【図6】図3に示した構成部材の要部の正面図。
【図7】図6の矢印VII方向からの要部の正面図。
【図8】図3に示した構成部材の平面図。
【図9】図3に示した構成部材の平面図。
【図10】図9の放射方向外方からの側面図。
【図11】図7に示すリード弁の作動状態と非作動状態を誇張して示す正面図。
【図12】図1の実施例において、排出通路と大気導入通路およびそれらの水頭差とポンプ室内の残油との関係を示す概念図。
【図13】図7に示したリード弁の隙間量とポンプ室内の残油量との関係を示す図。
【図14】従来品と本実施例の駆動トルクを比較した図。
【図15】従来品と本実施例の吸引性能を比較した図。
【図16】本発明の他の実施例を示す要部の正面図。
【図17】従来のベーンポンプの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図2において、1は真空ポンプとしてのベーンポンプである。このベーンポンプ1は図示しない自動車のエンジンの側面に固定されており、図示しないブレーキ倍力装置の負圧源として機能するようになっている。
ベーンポンプ1は、略円形のポンプ室2Aを有する段付円筒状のハウジング2と、ポンプ室2A内に配置されるとともにポンプ室2Aの中心に対して軸心を偏心させて配置されたロータ3と、ポンプ室2A内に配置されるとともにロータ3とともに矢印方向に回転されてポンプ室2A内を常時複数の作動空間2a〜2cに区画するベーン4と、上記ハウジング2における大径部2Bの開口、すなわちポンプ室2Aの一端開口を閉鎖するカバー5とを備えている。
【0009】
上記ハウジング2は、上記ポンプ室2Aとなる大径部2Bと、この大径部2Bの端面の隣接位置に形成された中径部2Cと、この中径部2Cの隣接位置となる小径部2Dとを備えており、中径部2Cおよび小径部2Dの内周面によってロータ3を回転自在に軸支している。上記ハウジング2の大径部2Bには、上記ブレーキ倍力装置からポンプ室2Aへ気体(空気)を吸引するための吸引通路6が設けられおり、この吸引通路6内には、ブレーキ倍力装置の負圧を維持するための図示しない逆止弁が設けられている。また、ポンプ室2の最下部に隣接する中径部2Cには、ポンプ室2Aから段部端面2Eまで貫通する軸方向の貫通孔が穿設されており、この貫通孔が、ポンプ室2Aからハウジング2の外部へ気体を排出するための排出通路7となっている。また、後に詳述するが、ハウジング2の段部端面2Eには、所要時に排出通路7を開閉するリード弁8が設けられている。
【0010】
ポンプ室2A内となるロータ3の軸方向の一端には直径方向のガイド溝3Aが形成されており、このガイド溝3Aに板状のベーン4が直径方向に摺動自在に取り付けられている。上記ベーン4の両先端にはポンプ室2Aの内周面と摺動するキャップ4Aが取り付けられている。図1に示すように、ロータ3とベーン4が矢印方向に回転される際には、上記両キャップ4Aがポンプ室2Aの内周面と気密を保持して摺動するとともに、ベーン4の軸方向の両端面4B、4Bはカバー5の内壁面およびポンプ室2Aの内壁面と摺動し、かつ、ロータ3の外周面の一部がポンプ室2Aの内周面と接触した状態に維持される。それによって、ポンプ室2A内が拡縮可能な作動空間2a〜2cとして区画されるようになっている。
また、ロータ3の他端側の軸部とハウジング2の内周面とにわたっては、給油通路11が形成されている。この給油通路11は、ロータ3の軸部に穿設されるとともに給油パイプ12が接続される軸方向孔3Bと、この軸方向孔3Bの他端から連続する直径方向孔3Cと、さらに、ロータ3が矢印方向に回転される際に上記直径方向孔3Cと間欠的に連通するハウジング2の軸方向溝2Fとから構成されている。
【0011】
そして、自動車のエンジンが駆動されると、それに連動して上記ロータ3およびベーン4が図1の矢印方向に回転されるので、上記3つの作動空間2a〜2cの容積が拡縮される。これにともなって吸引通路6を介して各作動空間2a〜2c内へブレーキ倍力装置内の気体(空気)が吸引されるとともに各作動空間2a〜2c内の気体は、排出通路7および開放された状態のリード弁8を介してポンプ室2Aの外部へ排出されるようになっている。また、このようにロータ3とベーン4が回転される作動時には、上記給油通路11を介してポンプ室2A内とベーン4の摺動部分に潤滑油が供給されるようになっている。そして、ポンプ室2A内に流入した潤滑油はポンプ室2A内の下部に一次貯溜された後に、回転されるベーン4とそのキャップ4Aによって移動されてから上記排出通路7と開放状態のリード弁8を介してポンプ室2Aの外部へ排出されるようになっている。
上述した構成は、例えば特許文献2に開示された従来公知のベーンポンプの構成と変わるところはない。
【0012】
しかして、本実施例は、上述した構成を前提として、排出通路7とリード弁8およびそれらの周辺部分を以下のように改良することで、ベーンポンプ1が作動を停止した際にポンプ室2A内の残油をハウジング2の外部へ効率的に排出できるようにしたものである。
すなわち、図3ないし図7に示すように、上記ハウジング2の段部端面2Eにおける排出通路7の端部開口7Aとなる箇所は、その端部開口7Aを取り囲む凹部2Gとして形成されている。換言すると、段部端面2Eに形成された凹部2G内に排出通路7の端部開口7Aを位置させている。そして、上記凹部2Gは、リード弁8の弁座8Aとして構成されている。
排出通路7の端部開口7Aは、隣接内方の小径部2Dの円周方向に沿ってひょうたん型に形成されている。そして、弁座8Aとしての凹部2Gは、段部端面2Eを円周方向所要角度にわたって切欠いて形成されている。この凹部2Gは円周方向の中央部が最も深くなり、そこから両端部となる縁部2G’にわたって徐々に深さが浅くなっている(図7、図11参照)。
一方、上記排出通路7の端部開口7Aを覆って、かつ上記弁座8Aとしての凹部2Gの両方の縁部2G’、2G’に架け渡して弁体8Bが配置されている。この弁体8Bは、バネ性を有する薄板状の金属板からなり、図8に示すように、ハウジング2の小径部2Dの外周面に沿った略円弧状に形成されている。弁体8Bは全域において同じ厚さとなっており(約0.1mm〜0.3mm)、弁体8Bの基部となる端部側にねじ用の貫通孔8B’が穿設されている。他端となる自由端から貫通孔8B’に至る領域はバネ性を有する弾性変形部となっており、この弾性変形部は概略スプーン形に形成されている。この弁座8Bの弾性変形部が弁座8Aである凹部2Gの両方の縁部2G’、2G’にわたって配置されている(図6、図7参照)。
【0013】
図9に示すように、弁体8Bを押さえるストッパ13は、上記弁体8Bよりも一回り大きな円弧状の薄い金属板からなり、その基部には固定ねじ14用の貫通孔13Aが穿設されている。
そして、上記弁体8Bを弁座8Aとなる凹部2Gに上述したように架け渡して配置し、その上からストッパ13の基部側の箇所を重合させており、それら両部材の貫通孔8B’、13Aに固定ねじ14を挿通させてから段部端面2Eのねじ孔にねじ込むことで、弁体8Bの基部およびストッパ13の基部を段部端面2Eに固定している。なお、図10、図11に示すように、ストッパ13の自由端側の箇所は、基部側の箇所に対して所定角度傾斜させて形成されている。これにより、ストッパ13と弁座8Aとの間に介在された弁体8Bが容易に弾性変形できるようになっている。
このように、本実施例のリード弁8は、排出通路7の端部開口7Aが位置する凹部2Gからなる弁座8Aと、段部端面2Eに基部を連結されて弾性変形可能な弁体8Bと、弁体8Bを上方から押さえるストッパ13と、固定ねじ14とから構成されている。
【0014】
このように構成された本実施例のリード弁8は、図7に示すように、ベーンポンプ1が作動されていない自然状態では、弁体8Bが自己のバネ性により平坦な状態となって弁座8Aから離隔するので、排出通路7の端部開口7Aは開放されている。そして、この平坦な状態の弁体8Bと凹部2Gからなる弁座8Aとの間には、僅かな隙間δが維持されるようになっている(図7、図11参照)。
これに対して、ベーンポンプ1が作動されて、ロータ3及びベーン4が回転される際には、ポンプ室2A内(各作動空間2a〜2c)はハウジング2の外部の大気よりも負圧になるので、各作動空間2a〜2cの負圧とハウジング2外部の差圧によって弁体8Bが弾性変形して弁座8Bに密着する(図11参照)。これによって、排出通路7の端部開口7Aが閉鎖されるようになっており、その閉鎖状態においてベーン4とロータ3の回転に伴って、各作動空間2a〜2c内の圧力上昇により弁体8Bが強制的に弁座8Aから僅かに離座される。それにより、各作動空間2a〜2c内の大気および潤滑油が排出通路7と開放状態のリード弁8を介してハウジング2の外部へ排出されるようになっている。
【0015】
他方、上記作動状態からエンジンが停止されて、ロータ3およびベーン4が停止すると、リード弁8は閉鎖状態となっており、ポンプ室2A内はハウジング2外部の大気圧よりも負圧となっているので、給油通路11内の潤滑油がポンプ室2A内に引き込まれる。
すると、この直後、リード弁8の弁体8Bは自己のバネ性によって図11に実線で示す湾曲状態(閉鎖状態)から想像線で示す平坦な状態(開放状態)に復帰する。つまり、ポンプ室2A内の負圧が低下したことにより、ポンプ室2A内とハウジング2外部の大気圧との差圧が小さくなるので弁体8Bが弁座8Aから離座して平坦な状態となり、排出通路7の端部開口7Aが開放される。そのため、ポンプ室2A内の下部に引き込まれた潤滑油(残油)は、排出通路7と、その端部開口7Aおよび弁体8Bの位置の隙間δを介してハウジング2の外部に排出されるようになっている。
このように、本実施例においては、排出通路7を開閉するリード弁8を上述したように構成しているので、ベーンポンプ1の作動が停止した際にポンプ室2A内に生じる残油をハウジング2の外部へ効率的に排出させることができる。
【0016】
さらに、本実施例は、図3から図6に示すように、ポンプ室2A内に生じる残油をより一層効率的にハウジング2外へ排出させるために、上記排出通路7と同様の大気導入通路107をハウジング2の中径部2Cに形成するとともに、この大気導入通路107を開閉するための第2のリード弁108を段部端面2Eに設けている。
より詳細には、ハウジング2の中径部2Cには、排出通路7から円周方向に位置をずらして該排出通路7と同様の軸方向孔を形成してあり、それを大気導入通路107としている。図4に示すように、ポンプ室2Aの内方から見ると、上記排出通路7Aはポンプ室2A内の最下部に位置する一方、大気導入通路107はロータ3の軸心よりも上方に形成されている。そして、両通路7,107内における上端部と下端部との差である水頭差を比較すると、大気導入通路107の水頭差H2が排出通路7の水頭差H1よりも大きく設定されている(図4参照)。
【0017】
また、大気導入通路107の端部開口107Aの位置には、大気導入通路107を開閉する第2のリード弁108が設けられている。つまり、前述した排出通路7と同様の凹部102Gからなる弁座108Aと弁体108Bが設けられている。そして、上記リード弁8のものと同様に、弁体108Bをストッパ113で押さえた状態で固定ねじ114によりそれらの部材が段部端面2Eに連結されている。
なお、第2のリード弁108を構成する弁座108A(凹部102G)、および弁体108Bの形状は、前述した他方のリード弁8の弁座8Aと弁体8Bに対して左右対象の形状となっており、その弁座108Bと弁体108Aの詳細な構成は他方のリード弁8のものと同じである。また、第2のリード弁108においては、上記他方のリード弁8の構成部材と対応する部材には、100を加算した部材番号を付している。
このように、第2のリード弁108は、大気導入通路107の端部開口107Aの位置の弁座108Aと、バネ性を有する薄板状の弁体108Bと、弁体108Bを押さえるストッパ113と、固定ねじ114とによって構成されている。なお、上記リード弁8、108の弁体8B、108B厚さは、それらの材質や凹部2G、凹部102Gの凹み量に応じてそれぞれ変えることができる。
【0018】
以上のように構成された大気導入通路107と第2のリード弁108は、ロータ3とベーン4が回転されている作動中においては、ポンプ室2Aの負圧によって弾性変形した弁体108Bが弁座108Aに密着することで、大気導入通路107の端部開口107Aは閉鎖されるようになっている。それによって、ベーンポンプ1は通常のポンプ作動を得ることができる。しかしながら、例えばエンジンの始動時においては、ロータ3およびベーン4が正常な回転方向と逆方向に回転される場合があり、その際にはポンプ室2A内が急激に高圧になる。この時、つまり、ロータ3とベーン4が逆転された際に、リード弁108の弁体108Bが弁座108Aから強制的に離座されることで大気導入通路107が開放されて、ポンプ室2A内の高圧の大気が大気通路107と開放状態のリード弁108を介してポンプ室2Aの外部へ排出されるようになっている。つまり、ポンプ室2Aの圧力をハウジング2の外部へ逃すリリーフ通路およびリリーフ弁として、大気導入通路107とリード弁108が機能するようになっている。
【0019】
また、ロータ3とベーン4が回転されているベーンポンプ1の作動中においては、ポンプ室2Aの負圧によってリード弁108は閉鎖されるが、ベーンポンプ1が作動状態から停止された際には、前述したように排出通路7側のリード弁8がバネ性によって弁座8Bから離座する。そして、それと同期して、第2のリード弁108の弁体108Bも弁座108Aから離座して平坦状になり、それによって大気導入通路107が開放され、かつ、弁体108Bと弁座108Aとの間に隙間δが維持される(リード弁8に関する図11の想像線と同じ状態)。これにより、該隙間δと大気導入通路107を介してハウジング2外部の大気がポンプ室2A内に導入される。
このように、ベーンポンプ1の作動が停止した際には、第1のリード弁8により排出通路7が開放されるタイミングに合わせて、第2のリード弁108も大気導入通路107を開放させる。そして、上記大気導入通路107は排出通路7より上方位置に配置されており、しかも、大気導入通路107の水頭差H2は、排出通路7の水頭差よりも大きく設定されている。そのため、ポンプ室2Aの最下部にある排出通路7を通過する残油は、大気導入通路107から導入される大気によって、効率的に排出通路7からハウジング2外部へ排出されるようになっている。この作用は、例えば液体を充填したプラスチックの容器を逆さにして、下端となる口部から液体を排出させようとする際に、上端に位置する容器の底に空気孔を開けると、下端となる容器の口部から速やかに液体がこぼれるのと同じ原理である。
なお、ポンプ室2A内に残油が生じる場合としては、例えば図12(a)に示すように、大気導入通路107よりも上部まで残油が生じることがある。このような場合であっても、本実施例においては、排出通路7を介して残油を確実に排出することができる。すなわち、前述した容易本実施例においては、上記大気導入通路107は排出通路7よりも上方位置に設けられており、それらの水頭差H2、H1の違いは、H2の方がH1より大きくなっている。そのため、このような場合には、図12(a)に示すように、先ず大気導入通路107とリード弁108の隙間δを介して大気がポンプ室2A内に導入され、それに伴って、少しづつ排出通路7から残油が排出される。その後、徐々に減少した残油の液面が大気導入通路107の上端よりも低くなると、大気導入通路107とリード弁108の隙間δを介しての大気の導入量が増えるので、図12(b)に示すように、排出通路7からの残油の排出量も増加する。そして、さらに、減少した残油の液面が大気導入通路107の下端よりも低くなると、大気導入通路107とリード弁108の隙間δを介しての大気の導入量が増大するので、図12(c)、図12(d)に示すように、排出通路7からの残油の排出量も増大して、速やかに残油がポンプ室2Aから排出される。このような、特別な状況であっても、本実施例においては、ポンプ室2A内の残油を確実にハウジング2外部へ排出することができる。
【0020】
以上のように、本実施例のベーンポンプ1は、ベーンポンプ1の作動が停止して潤滑油がポンプ室2A内に引き込まれた際に、排出通路7の端部開口7Aがリード弁8によって開放されるとともに、第2のリード弁107によって大気導入通路107が開放されることで、ポンプ室2A内にハウジング2外部の大気が導入される。さらに、大気導入通路107の水頭差H2が排出通路7の水頭差H1よりも大きいため、ポンプ室2A内に引き込まれた潤滑油(残油)は、速やかに排出通路7を介してハウジング2の外部へ排出されるようになっている。
ここで、ポンプ室2A内の残油とリード弁8の間隙δの大きさとの相関関係を実験によって調べた結果を示したものが図13である。この図13に示すように、間隙δが零の場合、つまり、特許文献1に示したような従来一般的なリード弁を用いた場合には、残油量は変動がなくポンプ室内に残ったままとなる。これに対して、間隙δを0.3〜0.5mmに維持した場合、つまり、本実施例の場合にはポンプ室2A内の残油量が停止後の時間の経過に伴って急激に減少することが理解できる。
次に、エンジン運転時におけるベーンポンプ1の駆動トルクの違いについて従来品(1)、(2)と上記本実施例とを比較したデータが図14である。ここで従来品(1)とは、特許文献1に示したような一般的なリード弁の場合である。また、従来品(2)とはリード弁がないものである。この図14のデータから見ると、エンジン運転時におけるベーンポンプ1の駆動トルクは、本実施例は従来品(1)と比較して遜色ないことが理解できる。
さらに、ベーンポンプ1の作動時における吸引性能を従来品と上記本実施例とで比較したデータが図15である。ここで従来品とは、特許文献1に示したような一般的なリード弁の場合である。この図15のデータから言えることは、本実施例においては、上述したような非作動時に間隙δが維持される構成のリード弁8を採用しているにも拘わらず、従来品と遜色ない吸引性能が得られるということである。
【0021】
以上のように、本実施例のベーンポンプ1によれば、ベーンポンプ1の構成部材として高価な材料を使用することなく、従来公知のベーンポンプ1に上述した改良を加えることで、ポンプ室2A内の残油をハウジング2外部へ効率的に排出させることができる。また、これに関連して、リード弁8の弁体8Bは、全体として小径部2Dの外周面に沿った円弧状に形成されているので、弁体8Bの先端側となる弾性変形部は、一側だけが片当たりすることなく両側部が同時に弁座8Aに接離する。この作用は、第2のリード弁108と大気導入通路107に関しても同様である。この点においても、本実施例によれば、ポンプ室2A内の残油をハウジング2外部へ効率的に排出させることが可能である。
また、ベーンポンプ1の作動時には、排出通路7はリード弁8によって確実に閉鎖されるとともに、大気導入通路107は第2のリード弁108によって確実に閉鎖される。そのため、本実施例においては、上記図15の比較データからも明らかなように、ベーンポンプ1の吸引性能や駆動トルクを損なうことがない。
さらに、上記本実施例のベーンポンプ1は、ハウジング2内への潤滑油の供給量を減少させる構成は採用していない。そのため、ポンプ室2A内のベーン4の摺動部分への必要な潤滑油は確保されるので、貧潤滑によるベーン4およびそれとの摺動部分の焼付きを防止することができる。
【0022】
なお、上述した実施例においては、リード弁8は、凹部2Gからなる弁座8Aと、バネ性を有する弁体8Bとを備えて、自然状態では両者の間に間隙δが維持される構成となっているが、リード弁8としては、図16に示すような構成であっても良い。すなわち、弁座8Aとしては、平坦な段部端面2Eをそのまま利用する一方、弁体8Bとしては自然状態で隙間δが維持されるような膨らんだ形状(湾曲形状)を採用しても良い。このような構成のリード弁8においても、ポンプ室2A内の負圧が弁体8Bに作用する際には、弁体8Bが平坦状に弾性変形して弁座8Aに着座し、排出通路7の端部開口7Aが閉鎖される。他方、ポンプ室2Eの負圧が低下したベーンポンプの作動停止時には、弁体8Bは自己のバネ性によって元の膨らんだ湾曲状態に復帰する。このような構成のリード弁8を、上記第2のリード弁108の代わりに採用しても良い。
【符号の説明】
【0023】
1‥ベーンポンプ 2‥ハウジング
3‥ロータ 4‥ベーン
6‥吸引通路 7‥排出通路
102G‥凹部 107‥大気導入通路
107A‥端部開口 108‥リード弁
108A‥弁座 108B‥弁体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にポンプ室を有するハウジングと、上記ポンプ室内に配置されるとともにロータによって回転されて上記ポンプ室を複数の作動空間に区画するベーンと、上記ポンプ室内に潤滑油を供給する給油通路と、上記ポンプ室に気体を吸引する吸引通路と、上記ポンプ室内の下部とハウジング外部とを連通させるとともに上記ポンプ室内の気体をハウジングの外部へ排出させる排出通路と、上記ロータとベーンが通常の回転方向とは逆方向に回転された際に、上記ポンプ室内の気体をハウジングの外部に逃す大気導入通路と、この大気導入通路を開閉するリード弁とを備えて、上記ロータとベーンが回転される作動時においては上記ポンプ室内の潤滑油が排出通路を介してハウジングの外部へ排出されるように構成されたベーンポンプにおいて、
上記大気導入通路は、上記ハウジングにおける上記排出通路よりも上方位置に形成されており、また、上記大気導入通路の水頭差は上記排出通路の水頭差よりも大きく設定されており、
さらに、上記リード弁は、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記大気導入通路の端部開口を閉鎖するようになっており、また、上記リード弁は、上記ロータとベーンの回転が停止される作動停止時には、上記大気導入通路の端部開口との間に隙間が維持されるように構成されていることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
上記大気導入通路は、上記ポンプ室から上記ハウジングの段部端面まで貫通する軸方向の貫通孔からなり、また、上記リード弁は、上記段部端面に形成されて上記大気導入通路の端部開口が開口する位置の凹部からなる弁座と、バネ性を有する薄板状の弁体とを備えており、
上記リード弁は、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記弁体が弁座に密着して大気導入通路の端部開口を閉鎖するようになっており、また、上記リード弁は、上記ロータとベーンの回転が停止される作動停止時には上記弁体が弁座から離座して、上記弁体と大気導入通路の端部開口との間に上記隙間が維持されることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項3】
上記排出通路を開閉させる排出通路用のリード弁を備えて、上記ロータとベーンが回転される作動時においては上記ポンプ室内に供給された潤滑油を上記排出通路と排出通路用のリード弁とを介してハウジングの外部へ排出するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベーンポンプ。
【請求項4】
上記排出通路用のリード弁は、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記排出通路の端部開口を閉鎖するようになっており、また、上記排出通路用のリード弁は、上記ロータとベーンの回転が停止される作動停止時には、上記排出通路の端部開口との間に隙間が維持されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のベーンポンプ。
【請求項1】
内部にポンプ室を有するハウジングと、上記ポンプ室内に配置されるとともにロータによって回転されて上記ポンプ室を複数の作動空間に区画するベーンと、上記ポンプ室内に潤滑油を供給する給油通路と、上記ポンプ室に気体を吸引する吸引通路と、上記ポンプ室内の下部とハウジング外部とを連通させるとともに上記ポンプ室内の気体をハウジングの外部へ排出させる排出通路と、上記ロータとベーンが通常の回転方向とは逆方向に回転された際に、上記ポンプ室内の気体をハウジングの外部に逃す大気導入通路と、この大気導入通路を開閉するリード弁とを備えて、上記ロータとベーンが回転される作動時においては上記ポンプ室内の潤滑油が排出通路を介してハウジングの外部へ排出されるように構成されたベーンポンプにおいて、
上記大気導入通路は、上記ハウジングにおける上記排出通路よりも上方位置に形成されており、また、上記大気導入通路の水頭差は上記排出通路の水頭差よりも大きく設定されており、
さらに、上記リード弁は、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記大気導入通路の端部開口を閉鎖するようになっており、また、上記リード弁は、上記ロータとベーンの回転が停止される作動停止時には、上記大気導入通路の端部開口との間に隙間が維持されるように構成されていることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
上記大気導入通路は、上記ポンプ室から上記ハウジングの段部端面まで貫通する軸方向の貫通孔からなり、また、上記リード弁は、上記段部端面に形成されて上記大気導入通路の端部開口が開口する位置の凹部からなる弁座と、バネ性を有する薄板状の弁体とを備えており、
上記リード弁は、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記弁体が弁座に密着して大気導入通路の端部開口を閉鎖するようになっており、また、上記リード弁は、上記ロータとベーンの回転が停止される作動停止時には上記弁体が弁座から離座して、上記弁体と大気導入通路の端部開口との間に上記隙間が維持されることを特徴とする請求項1に記載のベーンポンプ。
【請求項3】
上記排出通路を開閉させる排出通路用のリード弁を備えて、上記ロータとベーンが回転される作動時においては上記ポンプ室内に供給された潤滑油を上記排出通路と排出通路用のリード弁とを介してハウジングの外部へ排出するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベーンポンプ。
【請求項4】
上記排出通路用のリード弁は、上記ロータとベーンが回転される作動時には、上記排出通路の端部開口を閉鎖するようになっており、また、上記排出通路用のリード弁は、上記ロータとベーンの回転が停止される作動停止時には、上記排出通路の端部開口との間に隙間が維持されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のベーンポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−67730(P2012−67730A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215460(P2010−215460)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000207791)大豊工業株式会社 (152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000207791)大豊工業株式会社 (152)
【Fターム(参考)】
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