説明

ペプチド

【課題】緑膿菌に対してのみ抗菌性および/または殺菌性を発現する新規な抗菌・殺菌性化合物を提供する。
【解決手段】抗菌・殺菌性化合物は、緑膿菌を用いたファージディスプレイ法にて有効と判定された特定のアミノ酸配列を有するペプチドのN末端もしくはC末端に導入したL−システイン残基のチオール基と第四アンモニウム塩とを共有結合により結合させた、第四アンモニウム塩−ペプチド化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なペプチド、第四アンモニウム塩−ペプチド化合物及びその製造方法、抗菌もしくは殺菌剤、並びに消毒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第四アンモニウム塩化合物は、細菌、真菌などの微生物に有効な抗菌効果を有することから、医療産業、繊維産業、家庭などの各種産業分野において微生物制御剤として広く利用されている。第四アンモニウム塩化合物の中でも、塩化ベンザルコニウムは、細菌および真菌に対して広い抗菌スペクトルを有する殺菌消毒剤として重要な化合物である。
【0003】
しかしながら、これら第四アンモニウム塩化合物は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌を問わず、様々の菌種に対して抗菌効果を発揮し、有用な環境微生物を死滅させる致命的な欠点を有している。しかも、これら第四アンモニウム塩化合物は、一部の菌種、特に緑膿菌に対する抗菌効果が低いため、使用濃度を異常に高める必要性があり、その結果、環境中に薬剤耐性菌を誘発する危険性がある。
【0004】
このような現状から、緑膿菌に対してのみ、抗菌性および/または殺菌性を発現する新規な抗菌・殺菌性化合物の開発が切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、緑膿菌に対してのみ抗菌性および/または殺菌性を発現する新規な抗菌・殺菌性化合物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねて来た。その研究過程において、ファージディスプレイ法により緑膿菌に対して特異的に吸着する新規なペプチドを製造することに成功した。本発明者らは、さらに、該ペプチドのN末端もしくはC末端にL−システインを導入したペプチドを合成し、該ペプチド中システイン残基のチオール基と第四アンモニウム塩とを共有結合により結合させた第四アンモニウム塩−ペプチド化合物が、緑膿菌に対してのみ抗菌性および/または殺菌性を発現する所望の抗菌・殺菌性化合物になり得ることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0007】
本発明は、下記項1〜12に示すペプチド、DNA、第四アンモニウム塩−ペプチド化合物及びその製造方法、抗菌もしくは殺菌剤、並びに消毒剤を提供する。
項1.配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチド。
配列番号1:SerIleLeuProTyrProTyr
項2.項1に記載のペプチドのN末端および/もしくはC末端にシステイン以外のアミノ酸が1〜5個付加したペプチド。
項3.項1に記載のペプチドをコードするDNA。
項4.項1または項2に記載のペプチドのN末端もしくはC末端に導入したL−システイン残基のチオール基と下記一般式(1)で表される第四アンモニウム塩とを共有結合により結合させた、第四アンモニウム塩−ペプチド化合物。
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖状アルキル基を示す。Rは、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖状アルキレン基を示す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を示す。Yは、ハロゲン原子またはRSO基(Rは低級アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を示す)を示す。Zは、ハロゲン原子、OH基、CFCOO基またはRSO基(Rは低級アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を示す)を示す。]
項5.項4に記載の化合物が、一般式(2)または(3)
【0010】
【化2】

【0011】
[式中、Dは、アミノ基またはN−アシルアミノ基を示す。Eは、水酸基またはアミノ基を示す。Xは、項1または項2に記載のペプチドを示す。R、R、RおよびZは、上記と同義である。]
で表される化合物である、項4に記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物。
項6.項4に記載の化合物が、一般式(4)
【0012】
【化3】

【0013】
[式中、R1aは、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基またはn−オクタデシル基を示す。Zは、上記と同義である。]
で表される化合物である、項4に記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物。
項7.項4に記載の化合物が、一般式(5)
【0014】
【化4】

【0015】
[式中、R1aは、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基またはn−オクタデシル基を示す。Zは、上記と同義である。]
で表される化合物である、項4に記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物。
項8.項5に記載の一般式(2)または(3)で表される第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造方法であって、
一般式(1)
【0016】
【化5】

【0017】
[式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖状アルキル基を示す。Rは、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖状アルキレン基を示す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を示す。Yは、ハロゲン原子またはRSO基(Rは低級アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を示す)を示す。Zは、ハロゲン原子、OH基、CFCOO基またはRSO基(Rは低級アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を示す)を示す。]
で表される第四アンモニウム塩と一般式(6)または(7)
【0018】
【化6】

【0019】
[式中、Dは、アミノ基またはN−アシルアミノ基を示す。Eは、水酸基またはアミノ基を示す。Xは、項1または項2に記載のペプチドを示す。]
で表されるペプチド−システイン付加物とを反応させる、
第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造方法。
項9.項6に記載の一般式(4)で表される第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を製造する方法であって、
一般式(1a)
【0020】
【化7】

【0021】
[式中、R1aは、項6に記載のR1aと同義である。YおよびZは、項8に記載のYおよびZと同義である。]
で表される第四アンモニウム塩と式(8)
【0022】
【化8】

【0023】
で表されるペプチド−システイン付加物とを反応させる、
第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造方法。
項10.項7に記載の一般式(5)で表される第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を製造する方法であって、
一般式(1a)
【0024】
【化9】

【0025】
[式中、R1aは、項7に記載のR1aと同義である。YおよびZは、項8に記載のYおよびZと同義である。]
で表される第四アンモニウム塩と式(9)
【0026】
【化10】

【0027】
で表されるシステイン−ペプチド付加物とを反応させる、
第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造方法。
項11.項4〜項7のいずれかに記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を有効成分として含有する抗菌もしくは殺菌剤。
項12.項4〜項7のいずれかに記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を有効成分として含有する消毒剤。
【0028】
ペプチド
本発明のペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有している。該ペプチドは、緑膿菌に対して特異的に吸着する性質を有しており、後記実施例1に示すようにファージディスプレイ法により製造される。
配列番号1に示すアミノ酸配列を有しているペプチドをコードするDNAについては、6912通り存在する。すなわち、Serでは6通り(TCT、TCC、TCA、TCG、AGTおよびAGC)、Ileでは3通り(ATT、ATCおよびATA)、Leuでは6通り(TTA、TTG、CTT、CTC、CTAおよびCTG)、Proでは4通り(CCT、CCC、CCAおよびCCG)、Tyrでは2通り(TATおよびTAC)存在することから、6×3×6×4×2×4×2=6912通りのDNA配列を取ることができる。
【0029】
本発明のペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドのN末端および/もしくはC末端にシステイン以外のアミノ酸が1〜5個付加したペプチドであってもよい。
【0030】
ペプチドのN末端および/もしくはC末端に付加するアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリンなどが挙げられる。これらアミン酸は、上記ペプチドに1〜5個、好ましくは1〜3個付加しており、付加するアミノ酸の種類は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
ペプチドにアミン酸を付加するに当たっては、公知のペプチド結合形成の反応条件を適宜採用すればよい。
【0032】
第四アンモニウム塩−ペプチド化合物
本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物は、上記ペプチド(配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドまたは該ペプチドのN末端および/もしくはC末端にシステイン以外のアミノ酸が1〜5個付加したペプチド)のN末端もしくはC末端に導入したL−システイン残基のチオール基と一般式(1)で表される第四アンモニウム塩とを共有結合により結合させた化合物である。
【0033】
一般式(1)において、Rで示される炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基,イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基などを挙げることができる。これらの中でも、炭素数6〜18の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、その中でも炭素数が偶数のものがより好ましい。具体的には、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基及びn−オクタデシル基が好ましく、n−ヘキシル基、n−オクチル基およびn−デシル基が特に好ましい。
【0034】
で示される炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基などを挙げることができる。これらの中でも、メチレン基が好ましい。
【0035】
、YおよびZで示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子などが挙げられる。好ましいハロゲン原子は、塩素原子および臭素原子である。
【0036】
、R及びRで示される低級アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0037】
で示される低級アルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基などの炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられる。
【0038】
及びRで示される置換もしくは無置換のフェニル基としては、具体的には、フェニル基、o、mまたはp−メチルフェニル基、o、mまたはp−エチルフェニル基、o、mまたはp−イソプロピルフェニル基、o、mまたはp−tert−ブチルフェニル基などの低級アルキル基(炭素数1〜6のアルキル基)などの置換基を有していてもよいフェニル基が挙げられる。
【0039】
一般式(1)において、Y−R−基は、ピリジン環上のどの位置に置換していてもよいが、好ましい置換位置はピリジン環の3または4位であり、より好ましい置換位置はピリジン環の4位である。
【0040】
一般式(1)において、Rは、水素原子であるのが好ましい。
【0041】
一般式(1)で表される第四アンモニウム塩の中でも、一般式(1a)で表される第四アンモニウム塩が好ましい。
【0042】
【化11】

【0043】
[式中、R1a、Y及びZは前記に同じ。]
第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造方法
本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物は、上記した本発明のペプチドとL−システインとを反応させ、該ペプチドのN末端もしくはC末端にL−システイン残基を導入し、次いで該L−システイン残基のチオール基と一般式(1)で表される第四アンモニウム塩とを反応させることにより製造される。
【0044】
本発明のペプチドとL−システインとの反応には、公知のペプチド結合形成の反応条件を適宜採用することができる。
【0045】
このようにして製造される本発明のペプチド−システイン付加物は、例えば、下記一般式(5)または(6)で表すことができる。
【0046】
【化12】

【0047】
[式中、D、E及びXは前記に同じ。]
本発明の好ましいペプチド−システイン付加物は、例えば、下記一般式(8)、(9)で表すことができる。
【0048】
【化13】

【0049】
【化14】

【0050】
ペプチド−システイン付加物と一般式(1)で表される第四アンモニウム塩との反応は、例えば、以下に示すように、イミダゾールの存在下、適当な溶媒中にて行われる。
【0051】
溶媒としては、ペプチド−システイン付加物が溶解されるものであれば公知の溶媒を広く使用することができる。溶媒は、例えば、水;メタノール、エタノールなどの低級アルコール類;水と低級アルコールとの混合溶媒が好ましい。溶媒は、必要に応じ、2種類以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、ペプチド−システイン付加物の濃度が、通常0.001〜1.0M、好ましくは0.01〜0.1Mとなるように使用される。
【0052】
イミダゾールは、ペプチド−システイン付加物1モルに対して、通常1〜6モル、好ましく2〜5モル使用される。
【0053】
また、ペプチド−システイン付加物は、一般式(1)で表される第四アンモニウム塩1モルに対して、通常0.1〜1.5モル、好ましく0.8〜1.2モル使用される。
【0054】
この反応は、通常4〜20℃の温度下で行われ、一般に1〜3時間で終了する。該反応の反応雰囲気は、特に制限されるものではない。
【0055】
上記反応終了後、得られる反応生成物を公知の単離、精製手段に従って、単離及び精製することにより、本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を製造することができる。
【0056】
例えば、上記反応終了後、得られる反応生成物を凍結乾燥することにより、本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を粗結晶の形態で得ることができる。
【0057】
また、得られる粗結晶の精製には、高速液体クロマトグラフィーを用いることができる。例えば、C18逆相カラムを用い高速液体クロマトグラフにより分取した本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を含む溶出液を、エバポレーターにより濃縮し、凍結乾燥を行うことにより、第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の結晶を高純度で製造することができる。
【0058】
本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物は、緑膿菌に対してのみ優れた抗菌性、殺菌性を有する。この特性を生かして、従来の様々な菌種に有効である抗菌剤、殺菌剤、消毒剤などと異なり、緑膿菌のみに抗菌性、殺菌性を発揮する抗菌もしくは殺菌剤または消毒剤として使用できる。
【0059】
抗菌もしくは殺菌剤または消毒剤
本発明の抗菌もしくは殺菌剤および消毒剤は、有効成分が本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物である以外は、これらの薬剤に含まれる他の成分、それらの配合量は公知の抗菌もしくは殺菌剤および消毒剤と同じである。
【0060】
本発明の抗菌もしくは殺菌剤および消毒剤中の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の含有量は、通常0.01〜50重量%程度、好ましくは0.1〜1重量%程度である。
【発明の効果】
【0061】
本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物は、緑膿菌に対して特異的に吸着し、その菌種のみに対し高い抗菌性、殺菌性を発現する。
【0062】
本発明のペプチドは、このような第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を製造するための中間体として極めて有用である。
【0063】
本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物は、特異的に緑膿菌に対してのみ吸着する特性を有しているため、低い薬剤使用濃度において、有効な抗菌効果を発揮することができ、その結果、薬剤の大量使用による薬剤耐性菌の出現を防止することができる。
【0064】
本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物中の第四アンモニウム塩は、単独では抗菌性が極めて低いため、仮に第四アンモニウム残基が遊離したとしても、一般細菌に対して殆ど抗菌性を発現しない。従って、本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を含有する抗菌もしくは殺菌剤は、環境微生物に対して非常に優しい抗菌もしくは殺菌剤であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、実施例2の(2.3)で得られた第四級アンモニウム塩−ペプチド化合物のH−NMRスペクトル図である。
【図2】図2は、実施例2の(2.4)で得られた第四級アンモニウム塩−ペプチド化合物のH−NMRスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0067】
実施例1
本発明ペプチドの製造
ターゲット微生物として、緑膿菌を用い、ファージディスプレイ法により、緑膿菌に結合性を有するペプチドのスクリーニングを以下の(1)〜(5)のように行った。
【0068】
なお、ファージディスプレイ法では、M13ファージの表面のマイナータンパクpIIIにペプチドがランダムに呈示されるライブラリ(呈示されるランダムアミノ酸数が7個のペプチドライブラリ)を、New England Bio Lab 社より購入した。
【0069】
(1)パニング
LB培地で一晩培養した緑膿菌を遠心にて集菌し、100μlの10mM HEPES(pH7.5)に加え、軽く撹拌し、懸濁した。
【0070】
得られる懸濁液に、約10μl(2×1010pfu以上/10μl)のファージ溶液を加えて懸濁し、室温で10分インキュベートした。遠心により菌体を集菌した後、上澄みを捨て、HEPES−Tweenバッファー(10mM HEPES+0.1% Tween20,pH7.5)で5回洗浄後、遠心にて再度菌体を集菌し、100μlの滅菌水で懸濁して、結合ファージ溶液とした。
【0071】
(2)ファージ増幅・精製
上記で得られた結合ファージ溶液90μlを、50mlのコニカルチューブに加え、そこに一晩培養した大腸菌(F+)100μlと終濃度25μg/mlになるようにテトラサイクリンを加えて感染させ、4時間半、37℃で激しく撹拌し、ファージを増幅させた。
【0072】
増幅後、上記培地を15ml遠沈管に移し変え、遠心(8,000rpm×10分、4℃)して上澄みを別の15ml遠沈管に移し、1.6mlのPEG/NaCl溶液(20%PEG、2.5M NaCl)を加えて懸濁し、4℃で一晩インキュベートした。その後、遠心(15,000rpm×5分、4℃)して上澄みを捨て、1mlのTBSを加え、沈殿(ファージ)を溶解した。この溶解液を1.5mlのエッペンチューブに移し、160μlのPEG/NaClを加えて混ぜ、氷中に1時間インキュベートした後、遠心(10,000rpm×10分、4℃)して上澄みを捨て、20μlのTB+0.02% NaNで沈殿(ファージ)を溶解した。更に、遠心(10,000rpm×2分、4℃)して、上澄みを0.5mlのエッペンチューブに移してファージ精製溶液とした。このファージ精製溶液を用いて、再びパニング、増幅および精製の操作を同様にして3回繰り返して行い、4回目はパニング工程においてファージを溶出するところまで行い、ファージ溶出液を得た。
【0073】
(3)タイター測定(プラークの形成)
4回目のファージ溶出液をTBSで希釈して102〜105倍希釈液を調製した。
【0074】
一方で、IPTGおよびX−Galを加えたLBプレート培地(プラスチックシャーレに作製)を37℃で温め、アガローストップをオートクレーブで溶解し、45℃で固まらないように暖めておいた。
【0075】
LB培地でOD600=0.5になるまで培養した大腸菌(F+)200μlに、希釈したファージ溶液を10μl加え撹拌して1〜5分間インキュベートした後、45℃で保存しておいたアガローストップに加えて撹拌してから、IPTGおよびX−Galを加えたLBプレート培地に流し込み、約5分間インキュベートした。アガローストップが固まり、余分な水気が飛んだら、フタをして、37℃で一晩インキュベートした(ファージが存在すれば、青色のプラークが出現する)。
【0076】
(4)プラークからファージの増幅
出現したプラークを楊枝でつつき、ピッキングした。ピッキングした楊枝は、LB培地に終濃度20μg/mlになるようにテトラサイクリンを加えた培地2mlに入れ、そこへ一晩培養した大腸菌(F+)20μlを添加後(試験管)、4時間半激しく振とう培養した。培養後は、上記(2)と同様の操作を行ってシングルファージの精製を行い、86個のファージを得た。
【0077】
(5)ペプチド配列確認
今回行ったファージディスプレイ法では、ペプチドはファージのpIIIタンパクのN末端に呈示されているため、ファージpIIIgene(シグナル配列部を除く)の5'上流を読めば、ペプチドのアミノ酸配列を決定することができる。
【0078】
その結果、得られたペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有していることが明らかになった。
【0079】
配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチドは、以下の理化学的性質を有している。
等電点IP=5.65
m/z:850.0。
【0080】
実施例2
(2.1) 式(8)で表されるペプチド−システイン付加物の製造
ペプチド合成は、市販のペプチド合成機を用い、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)固相合成法により行った。縮合剤は、ヘキサフルオロリン酸塩とした。ペプチド合成機のペプチド合成プログラムに従い、脱保護反応、縮合反応を反復し、樹脂に結合しているFmoc−アミノ酸からペプチド鎖を伸長する。具体的には、20%ピペリジン/ジメチルホルムアミドによって、アミノ酸保護基であるFmocを切断除去し、ジメチルホルムアミドで洗浄し、次にFmoc−アミノ酸を反応させ、ジメチルホルムアミドで洗浄する工程を反復した。伸長反応終了後、20%ピペリジン/ジメチルホルムアミドによりFmoc基を切断し、ジメチルホルムアミドで洗浄した。ペプチドは、82.5%トリフルオロ酢酸溶液(トリフルオロ酢酸:1,2−エタンジチオール:m−クレゾール:チオアニソール:水=82.5:2.5:5:5:5)により樹脂から切断され、樹脂をろ過で除き、ジエチルエーテル中に沈殿させた後、遠心分離によりジエチルエーテル層を取り除いた。このジエチルエーテル洗浄工程3回行った。得られたペプチド−システイン付加物は、純水に溶解し、凍結乾燥により結晶化させ、HPLCにより精製を行い、純度>95%で目的のペプチド−システイン付加物を得た。
等電点IP=4.97
m/z:955.5。
【0081】
(2.2) 1aがn−オクチル基、Y及びZが臭素原子を示す一般式(1a)で表される第四アンモニウム塩の製造
4−ヒドロキシルメチル−1−オクチルピリジニウムブロマイド0.331ミリモルに48%臭化水素水500μlを加えて、4時間還流した。反応後、エバポレーターにより減圧濃縮し、クロロホルム−メタノール混合溶媒を溶離液としたシリカゲルオープンカラムにより精製し、R1aがn−オクチル基、Y及びZが臭素原子を示す一般式(1a)で表される第四アンモニウム塩(4−ブロモメチル−1−オクチルピリジニウムブロマイド)95mg(収率77%)を得た。
【0082】
得られた化合物の分析を行ったところ、得られた化合物のH−NMRスペクトル(CDOD、基準物質 TMS)により、目的化合物が得られていることを確認した。
H−NMR(CDOD,TMS)δppm:0.89(3H,t,J=6.9 Hz)、1.27−1.32(8H,m)、1.36−1.40(2H,m)、2.01(2H,m)、4.61(2H,t,J=7.7)、4.81(2H,s)、8.15(2H,d,J=6.6)、8.96(2H,d,J=6.8)。
【0083】
(2.3) 第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造
(2.1)で製造した式(8)で表されるペプチド−システイン付加物と(2.2)で製造した4−ブロモメチル−1−オクチルピリジニウムブロマイドとを以下に示すように反応させることにより、R1aがn−オクチル基、Zが臭素原子を示す一般式(4)で表される第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を製造した。
【0084】
ペプチド−システイン付加物(8)0.0249ミリモルを、氷浴で冷却し、撹拌しながら水2.4mlに溶解させた。次に、4−ブロモメチル−1−オクチルピリジニウムブロマイド(1a)0.0253ミリモルを加え、最後にイミダゾール0.111ミリモルを加え、氷浴中で撹拌しながら1時間反応させた。反応後、液体窒素で水溶液形態の反応混合物を凍結し、凍結乾燥し、粗結晶40.0mgを得た。
【0085】
得られた粗結晶を高速液体クロマトグラフにて精製を行った。具体的には、プレカラム(GL Science社製品、製品名Inertsil WP300 C18、10mm I.D.×30mm)およびC18逆相カラム(GL Science社製品、製品名Peptides C18、10mm I.D.×150mm)を使用し、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液との混合液を溶離液に用いた。すなわち、溶離液に含まれる上記トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液の分量を経時的に増大させつつ(容積比で0%から100%への濃度勾配を設ける)、2ml/分の流速で上記カラムを用いて27分間分離精製を行った。なお、逆相カラムから溶離したペプチドは紫外線検出器を用いて254nmで検出し、記録チャート上にピークとして示される。得られた化合物(保持時間18.95分)の分析を行ったところ、収率65%、純度>93%であった。
【0086】
また、溶離した化合物の質量をVoyager−DE STR質量分析装置(Applied Biosystems,USA)を用いてMALDI−TOF/MS(Matrix-Assisted Laser Desorption Time of Flight Mass Spectrometry:マトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間型−質量分析)に基づいて決定した。さらに、得られた化合物のH−NMRスペクトル(CDOD、基準物質 TMS)により、1−オクチルピリジニウム塩に特徴的なピリジニウム骨格のプロトンピーク(8.07ppm,8.86ppm)、ならびにn−オクチル基由来のメチレンプロトンピーク(1.37ppm−1.54ppm)を検出し、1−オクチルピリジニウム塩がペプチド鎖に結合していることを確認した。その結果、目的とする第四アンモニウム塩−ペプチド化合物が製造されていることを確認した。
m/z:1158.6
得られた本発明化合物1である第四級アンモニウム塩−ペプチド化合物のH−NMRスペクトル図を図1に示す。
【0087】
(2.4) 第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造
(2.1)と同様の手法で製造した式(9)で表されるペプチド−システイン付加物と(2.2)で製造した4−ブロモメチル−1−オクチルピリジニウムブロマイドとを以下に示すように反応させることにより、R1aがn−オクチル基、Zが臭素原子を示す一般式(5)で表される第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を製造した。
【0088】
システイン−ペプチド付加物(9)0.0313ミリモルを、氷浴で冷却し、撹拌しながら水5.0ml溶解させた。次に、4−ブロモメチル−1−オクチルピリジニウムブロマイド(1a)0.0344ミリモルを加え、最後にイミダゾール0.128ミリモルを加え、氷浴中で撹拌しながら1.5時間反応させた。反応後、液体窒素で水溶液形態の反応混合物を凍結し、凍結乾燥し、粗結晶55.3mgを得た。
【0089】
得られた粗結晶を高速液体クロマトグラフにて精製を行った。具体的には、プレカラム(GL Science社製品、製品名Peptides C18、20mm I.D.×50mm)およびC18逆相カラム(GL Science社製品、製品名Peptides C18、20mmI.D.×200mm)を使用し、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液との混合液を溶離液に用いた。すなわち、溶離液に含まれる上記トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液の分量を経時的に増大させつつ(容積比で0%から100%への濃度勾配を設ける)、8ml/分の流速で上記カラムを用いて45分間分離精製を行った。なお、逆相カラムから溶離したペプチドは紫外線検出器を用いて254nmで検出し、記録チャート上にピークとして示される。得られた化合物(保持時間24−26分)の分析を行ったところ、収率63%、純度>98%であった。
【0090】
また、溶離した化合物の質量をVoyager−DE STR質量分析装置(Applied Biosystems,USA)を用いてMALDI−TOF/MS(Matrix-Assisted Laser Desorption Time of Flight Mass Spectrometry:マトリックス支援レーザーイオン化−飛行時間型−質量分析)に基づいて決定した。さらに、得られた化合物のH−NMRスペクトル(CDOD、基準物質 TMS)により、1−オクチルピリジニウム塩に特徴的なピリジニウム骨格のプロトンピーク(8.13ppm−8.15ppm,8.90ppm−8.94ppm)、ならびにn−オクチル基由来のメチレンプロトンピーク(1.29ppm−1.38ppm)を検出し、1−オクチルピリジニウム塩がペプチド鎖に結合していることを確認した。その結果、目的とする第四アンモニウム塩−ペプチド化合物が製造されていることを確認した。
m/z:1158.6
得られた本発明化合物2である第四級アンモニウム塩−ペプチド化合物のH−NMRスペクトル図を図2に示す。
【0091】
実施例3
実施例2の(2.3)で得られた第四アンモニウム塩−ペプチド化合物(本発明化合物1)について、下記に記載のグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌に対する殺菌力(最小殺菌濃度:MBC)を96穴(well)マイクロプレートを用いた無菌水希釈法により求め、Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145に対する特異的殺菌性能を検討した。
【0092】
また、実施例2の(2.2)の原料である第四アンモニウム塩(4−ヒドロキシルメチル−1−オクチルピリジニウムブロマイド、比較化合物A)および(2.1)のペプチド(比較化合物B)についても、上記と同じようにグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌に対する殺菌力(最小殺菌濃度:MBC)を求めた。
【0093】
供試菌
・グラム陰性菌
Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145
Klebsiella pneumoniae ATCC 4352
Escherichia coli NBRC 12713
Proteus mirabilis NBRC 3849
Serratia marcescens ATCC 13880
・グラム陰性菌
Kocuria rhizophila NBRC 12708
Staphylococcus aureus NBRC 12732
Staphylococcus aureus COL 1(MRSA)
最小殺菌濃度(MBC)の測定
この測定は、無菌フード(エアテック社製、クリーンベンチ)内で行い、特に記載のない限り、微生物は氷冷下に保った。細菌をL−broth(トリプトン1.0%(W/V)、酵母抽出物0.5%(W/V)、塩化ナトリウム0.5%(W/V)、pH7.0〜7.2)5ml中で、37℃、18時間前培養した。この前培養菌体を遠心分離機(株式会社佐久間製作所製、MODEL 50A−7)で冷却遠心分離(0℃、6500rpm×10分)により集菌し、生理食塩水で洗菌後、無菌水で希釈し、分光光度計(株式会社島津製作所製、型名:UV−1700)を用いて、菌懸濁液濃度が1×10cell/ml(OD660=0.00001)となるように調製した。殺菌試験については、80%のエチルアルコールを用いて調製した薬剤溶液を、無菌水で50倍希釈した後、2倍の10段階希釈した。各薬剤溶液25μlに上記の菌懸濁液25μlを接種し、37℃、1時間薬剤接触した後、試料液20μlを分取し、NB培地200μl中に接種した。このNB判定培地を37℃で24時間培養し、増殖の有無を肉眼で判定し、増殖の認められない最小薬剤濃度を最小殺菌濃度(Minimum Bactericidal Concentration、MBC)とした。本発明化合物1および比較化合物Aについては上記試験を3回以上行った。
【0094】
結果を表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1から、本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物(本発明化合物1)は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145)に対してのみ優れた抗菌性、殺菌性を有し、他の菌種に対しては抗菌効果が低いことが明らかである。また、未結合の第四アンモニウム塩(比較化合物A)単独では低い抗菌力であったのに対し、ペプチド(比較化合物B)に結合させたことによって著しく抗菌性が上昇したことから、ペプチドの緑膿菌吸着特異性が十分に発揮され、第四アンモニウム塩の菌種特異性が付与されていることが明らかになった。
【0097】
実施例4
実施例2の(2.4)で得られた第四アンモニウム塩−ペプチド化合物(本発明化合物2)について、下記に記載のグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌に対する殺菌力(最小殺菌濃度:MBC)を96穴(well)マイクロプレートを用いた無菌水希釈法により求め、Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145に対する特異的殺菌性能を検討した。
【0098】
また、実施例2の(2.2)の原料である第四アンモニウム塩(4−ヒドロキシルメチル−1−オクチルピリジニウムブロマイド、比較化合物A)についても、上記と同じようにグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌に対する殺菌力(最小殺菌濃度:MBC)を求めた。
【0099】
供試菌
・グラム陰性菌
Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145
Klebsiella pneumoniae ATCC 4352
Escherichia coli NBRC 12713
Serratia marcescens ATCC 13880
・グラム陰性菌
Kocuria rhizophila NBRC 12708
Staphylococcus aureus NBRC 12732
Staphylococcus aureus COL 1(MRSA)
最小殺菌濃度(MBC)の測定
この測定は、実施例3と同様に行い、本発明化合物2および比較化合物Aについては上記試験を3回以上行った。
【0100】
結果を表2に示す。
【0101】
【表2】

【0102】
表2から、本発明の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物(本発明化合物2)は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa ATCC 10145)に対してのみ優れた抗菌性、殺菌性を有し、他の菌種に対しては抗菌効果が低いことが明らかである。また、未結合の第四アンモニウム塩(比較化合物A)単独では低い抗菌力であったのに対し、ペプチドに結合させたことによって著しく抗菌性が上昇したことから、ペプチドの緑膿菌吸着特異性が十分に発揮され、第四アンモニウム塩の菌種特異性が付与されていることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に示すアミノ酸配列を有するペプチド。
配列番号1:SerIleLeuProTyrProTyr
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドのN末端および/もしくはC末端にシステイン以外のアミノ酸が1〜5個付加したペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドをコードするDNA。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のペプチドのN末端もしくはC末端に導入したL−システイン残基のチオール基と下記一般式(1)で表される第四アンモニウム塩とを共有結合により結合させた、第四アンモニウム塩−ペプチド化合物。
【化1】

[式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖状アルキル基を示す。Rは、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖状アルキレン基を示す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を示す。Yは、ハロゲン原子またはRSO基(Rは低級アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を示す)を示す。Zは、ハロゲン原子、OH基、CFCOO基またはRSO基(Rは低級アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を示す)を示す。]
【請求項5】
請求項4に記載の化合物が、一般式(2)または(3)
【化2】

[式中、Dは、アミノ基またはN−アシルアミノ基を示す。Eは、水酸基またはアミノ基を示す。Xは、請求項1または請求項2に記載のペプチドを示す。R、R、RおよびZは、上記と同義である。]
で表される化合物である、請求項4に記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物。
【請求項6】
請求項4に記載の化合物が、一般式(4)
【化3】

[式中、R1aは、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基またはn−オクタデシル基を示す。Zは、上記と同義である。]
で表される化合物である、請求項4に記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物。
【請求項7】
請求項4に記載の化合物が、一般式(5)
【化4】

[式中、R1aは、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基またはn−オクタデシル基を示す。Zは、上記と同義である。]
で表される化合物である、請求項4に記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物。
【請求項8】
請求項5に記載の一般式(2)または(3)で表される第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造方法であって、
一般式(1)
【化5】

[式中、Rは、炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐鎖状アルキル基を示す。Rは、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖状アルキレン基を示す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を示す。Yは、ハロゲン原子またはRSO基(Rは低級アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を示す)を示す。Zは、ハロゲン原子、OH基、CFCOO基またはRSO基(Rは低級アルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を示す)を示す。]
で表される第四アンモニウム塩と一般式(6)または(7)
【化6】

[式中、Dは、アミノ基またはN−アシルアミノ基を示す。Eは、水酸基またはアミノ基を示す。Xは、請求項1または請求項2に記載のペプチドを示す。]
で表されるペプチド−システイン付加物とを反応させる、
第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載の一般式(4)で表される第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を製造する方法であって、
一般式(1a)
【化7】

[式中、R1aは、請求項6に記載のR1aと同義である。YおよびZは、請求項8に記載のYおよびZと同義である。]
で表される第四アンモニウム塩と式(8)
【化8】

で表されるペプチド−システイン付加物とを反応させる、
第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載の一般式(5)で表される第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を製造する方法であって、
一般式(1a)
【化9】

[式中、R1aは、請求項7に記載のR1aと同義である。YおよびZは、請求項8に記載のYおよびZと同義である。]
で表される第四アンモニウム塩と式(9)
【化10】

で表されるシステイン−ペプチド付加物とを反応させる、
第四アンモニウム塩−ペプチド化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項4〜請求項7のいずれかに記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を有効成分として含有する抗菌もしくは殺菌剤。
【請求項12】
請求項4〜請求項7のいずれかに記載の第四アンモニウム塩−ペプチド化合物を有効成分として含有する消毒剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−254355(P2009−254355A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65464(P2009−65464)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】