説明

ホイールアライメント測定方法

【課題】精度の高いホイールアライメント測定方法を提供する。
【解決手段】ホイールアライメント測定方法は、光学式センサを用いて車輪のホイールアライメントを測定する。その場合、測定対象として、光学式センサから出射される光に対するサイドウォールに設けられた突起22の反射率とその突起22が設けられていないサイドウォール18aの非突起領域24の反射率とが異なるタイヤを用いる。また、突起22は、その反射率がサイドウォール18aの非突起領域24の反射率よりも低い材料で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のホイールアライメントを測定するホイールアライメント測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤに向けて出射した光や超音波が反射して戻ってくるまでの時間によりトーやキャンパ角を測定するホイールアライメント装置が考案されている(特許文献1参照)。しかしながら、タイヤのサイドウォールにロゴマーク等の凹凸部が存在すると、その凹凸部を含めることによる誤差の影響により正確なアライメント測定値が得られないという問題があった。
【0003】
そこで、センサとタイヤとの距離信号が異常な場合に、直前の測定位置における出力値を基に補正することで、タイヤのサイドウォールなどの凹凸部の影響を除去し正確な距離測定が行えるとされる距離測定装置が考案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−34347号公報
【特許文献2】特開2002−350126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サイドウォールに凹凸部があるタイヤのホイールアライメントを測定する場合、一般にはセンサとタイヤとの距離は凹凸部からの信号も含めて平均化される。そのため、凹凸部がない理想状態でのセンサとタイヤとの距離に対して誤差を生じる可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、精度の高いホイールアライメント測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のホイールアライメント測定方法は、光学式センサを用いて車輪のホイールアライメントを測定するホイールアライメント測定方法であって、測定対象として、光学式センサから出射される光に対するサイドウォールに設けられた凸部の反射率と該凸部が設けられていないサイドウォールの反射率とが異なるタイヤを用いる。
【0007】
この態様によると、例えば、相対的に反射率の低い凸部からの反射光が検出されないように光学式センサで受光できる反射光の閾値を設定することで、ホイールアライメントを測定する際の光学式センサとサイドウォールとの平均距離を精度よく測定できる。
【0008】
前記凸部は、その反射率が前記サイドウォールの反射率よりも低くてもよい。これにより、適切な材料を選択することで反射率を異ならせることができる。また、凸部からの反射光が光学式センサで検出されにくくなり、凸部が存在することによるホイールアライメントの測定誤差を抑えることができる。
【0009】
前記凸部は、その反射率が前記サイドウォールの反射率よりも低いゴム材料で形成されていてもよい。あるいは、前記凸部は、その反射率が前記サイドウォールの反射率よりも低い非ゴム材料で形成されていてもよい。これにより、ゴム材料では実現が困難な、より反射率の低い凸部を形成することが可能となり、測定精度を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サイドウォールに凹凸部のあるタイヤに対しても精度の高いホイールアライメントの測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
はじめに、ホイールアライメントの測定方法の一例について概略を説明する。図1は、光学式計測計を用いたトーの測定を模試的に示した車両の概略上面図である。このような測定装置を用いて車両検査ラインでホイールアライメントの測定が行われる。
【0013】
通常、タイヤの抵抗やキャンパによるトーアウト化の防止のために、車両が備える車輪は、進行方向に対しタイヤ前端を内側に向けたいわゆるトーインの状態となるように設定されることが多い。そのため、車両検査ラインでは、トーインの量が所望の範囲に収まっているか否かが検査されることになる。
【0014】
図1に示すように、光学式計測装置10は、左右の車輪12R,12Lごとにその側方に配置されており(なお、車輪12R側の光学式計測装置は図示を省略する)、一対の光学式の距離センサ13F,13R(以下、適宜距離センサ13と称す)と、不図示の演算装置および表示装置等を備えている。以下の説明では、左の車輪12Lに対する測定について説明するが、右の車輪12Rに対しても同様の方法で測定されるため、その説明は省略する。
【0015】
距離センサ13F,13Rは、例えば対象物であるタイヤのサイドウォールに赤外線レーザ光Lを射出し、対象物で反射されたレーザ光Lを受光することにより対象物との距離を検出する光学式の非接触型のセンサで構成される。そして、光学式計測装置10は、タイヤを回転させながらタイヤの前端14および後端16の2箇所を測定することで、光学式計測装置10とタイヤとの平均距離xa、xb(mm)を算出する。この測定を左右1対の車輪に対して行うことで、トーインの値x’a−x’bが算出される。本実施の形態では、左右の車輪12R,12Lは、車両前方F側が狭くなってなるように設定されており、トーインの値はプラスとなっている。
【0016】
ところで、タイヤのサイドウォールは必ずしも平滑ではなく、タイヤ情報の表示、デザイン、その他機能的な観点から、何らかの凹凸が形成されている場合が多い。図2は、本実施の形態に係る車輪の要部を示す断面図である。図3は、図2に示す車輪をA方向から見た場合の概略側面図である。
【0017】
図2に示すように、車輪12Lは、タイヤ18とホイール20で構成されている。また、車輪12Lには、突起22のようなタイヤの径方向に伸びたフィン形状があり、図3に示すように、サイドウォール18aの周方向にほぼ等間隔に複数設けられている。
【0018】
このような突起22が設けられている車輪12Lに対して、前述の距離測定をタイヤの前端14および後端16で行うと、測定場所である前端14および後端16をタイヤの回転により突起22が通過するたびに、測定距離の値が変動する。これは、サイドウォールの基準面Sが理想的な形状(換言すると偏心や不均一な変形が起きていない状態)であり、かつ、光学式計測装置10とタイヤとの位置関係がタイヤが回転しても常に一定の場合であっても同様である。ここで、基準面Sは、突起22がない場合のサイドウォール18aの仮想面として考えることもできる。
【0019】
図4は、トーインの測定データの一例を示す図である。理想的な基準面Sの表面(突起22が設けられていない領域)が測定場所に位置する場合、測定距離x1として検出される(図4に示す下側の平らな実線部分)。一方、突起22が測定場所を通過する場合、測定距離x2として検出される(図4に示す上側の平らな実線部分)。そのため、これらの値を平均化すると、点線に示す測定距離x3となり、基準面Sの本来の値である測定距離x1とは異なる値となる。
【0020】
したがって、測定距離の平均値の算出に突起22からの反射光を利用しないようにすればよいことになる。そのためには、まず、突起22からの反射光とサイドウォールのうち突起22が設けられていない部分からの反射光とが識別できることが望まれる。その一つの方法として、突起22からの反射光が、光学式計測装置10の受光部において受光したと認識できない程度のレベルであればよいことになる。
【0021】
図5は、本実施の形態に係る車輪の一部側面図である。車輪12Lは、光学式計測装置10のセンサから出射されるレーザ光に対する突起22の反射率と突起22が設けられていないサイドウォール18aの非突起領域24の反射率とが異なるタイヤ18を備えている。そして、本実施の形態に係るホイールアライメント測定方法は、光学式計測装置10を用いて車輪12L,12Rのホイールアライメントを測定するホイールアライメント測定方法であって、測定対象として、前述のタイヤ18を用いる。
【0022】
この方法によると、例えば、相対的に反射率の低い突起22からの反射光が検出されないように、光学式計測装置10で受光できる反射光の閾値の下限を設定することで、ホイールアライメントを測定する際の距離センサ13とサイドウォール18aとの平均距離を精度よく測定できる。
【0023】
図6は、本実施の形態に係る方法によるトーインの測定データを示す図である。図6に示すように、相対的に反射率の低い突起22に対応する位置では測定距離を示す信号が検出されない。そのため、非突起領域24からの反射光に基づいてサイドウォールの複数の測定点を平均してトーインを算出する場合に、突起22に起因する誤差の発生を低減できる。また、突起22からの反射光に基づく信号を演算の過程で除外したり補正したりする必要がないため、精度の高い測定が可能となる。
【0024】
本実施の形態の突起22は、サイドウォール18aの非突起領域24の反射率よりも低い材料で形成されている。具体的には、非突起領域24に代表されるサイドウォール18aの表面は反射率が0.95程度のゴム材料で形成されており、突起22は反射率が0.86程度のゴム材料で形成されている。このように、適切な材料を選択することで反射率を簡便に異ならせることができる。また、突起22からの反射光が光学式計測装置10が備える距離センサ13で検出されにくくなり、突起22が存在することによるホイールアライメントの測定誤差を抑えることができる。
【0025】
なお、突起22は、その表面がサイドウォール18aの非突起領域24の反射率よりも低い非ゴム材料で形成されていてもよい。例えば、突起22の表面に反射率の低いシリカ等を埋め込んでもよい。これにより、ゴム材料では実現が困難な、より反射率の低い表面を有する突起22を形成することが可能となり、ホイールアライメントの測定精度を更に高めることができる。
【0026】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、これは例示であり、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0027】
反射率を異ならせるためには、材質を変えるだけでなく、例えば表面の粗さや形状を変えることで実現してもよい。また、上述の実施の形態では、突起22と非突起領域24との反射率を異なる例として、突起22の反射率が非突起領域24の反射率よりも低い場合について説明したが、突起22の反射率が非突起領域24の反射率よりも高くなるようにしてもよい。この場合、例えば、相対的に反射率の高い突起22からの反射光が検出されないように、光学式計測装置10で受光できる反射光の閾値の上限を設定することで、ホイールアライメントを測定する際の距離センサ13とサイドウォール18aとの平均距離を精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】光学式計測計を用いたトーの測定を模試的に示した車両の概略上面図である。
【図2】本実施の形態に係る車輪の要部を示す断面図である。
【図3】図2に示す車輪をA方向から見た場合の概略側面図である。
【図4】トーインの測定データの一例を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る車輪の一部側面図である。
【図6】本実施の形態に係る方法によるトーインの測定データを示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 光学式計測装置、 12L 車輪、 12R 車輪、 13 距離センサ、 14 前端、 16 後端、 18 タイヤ、 18a サイドウォール、 20 ホイール、 22 突起、 24 非突起領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式センサを用いて車輪のホイールアライメントを測定するホイールアライメント測定方法であって、
測定対象として、光学式センサから出射される光に対するサイドウォールに設けられた凸部の反射率と該凸部が設けられていないサイドウォールの反射率とが異なるタイヤを用いることを特徴とするホイールアライメント測定方法。
【請求項2】
前記凸部は、その反射率が前記サイドウォールの反射率よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のホイールアライメント測定方法。
【請求項3】
前記凸部は、その反射率が前記サイドウォールの反射率よりも低いゴム材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホイールアライメント測定方法。
【請求項4】
前記凸部は、その反射率が前記サイドウォールの反射率よりも低い非ゴム材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホイールアライメント測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−48718(P2010−48718A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214461(P2008−214461)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】