説明

ホエーからのACE抑制ペプチド及び同物を提供する方法

本発明は、抗高血圧効果を有する化合物を提供する方法に関する。より特には、本発明は、ホエータンパク質から酵素的に放出されうるACE(アンジオテンシンI変換酵素)抑制ペプチドに関する。ACE抑制活性を有するタンパク質加水分解物を提供する方法であって、ホエータンパク質含有基質をバクテリアの熱不安定性中性プロテアーゼにより処理して第1の加水分解物を作ること及び該第1の加水分解物をサーモリシンにより処理して第2の加水分解物を作ることを含む上記方法が提供される。また、該方法により得られる加水分解物及び分離されたペプチド並びに、哺乳類におけるACE活性を抑制する為;血圧を低下させる為;及び/又は高血圧の発生を予防する為の医薬の調製の為にそれらを使用する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗高血圧効果を有する化合物及びそれらを提供する方法に関する。より特には、本発明は、ホエータンパク質からの放出性ACE(アンジオテンシンIを変換する酵素)抑制ペプチドに関する。さらに、本発明は、ACE抑制活性を有するホエー加水分解物及びホエーに由来する分離されたペプチド;そのようなホエー加水分解物及び/又はペプチドを含む組成物;並びに、例えば哺乳類においてACE活性を抑制する医薬の調製の為に、そのような加水分解物及び/又はペプチドを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
診断及び治療における大きな前進にもかかわらず、心臓血管疾患(CVD)は西洋工業化社会において主な死亡原因のままであった。高血圧(高い血圧)は、心臓血管に関連する疾患(梗塞、卒中発作、心不全及び/又は腎疾患)の発症にとって最も重要な危険因子である。
【0003】
有効な抗高血圧治療が、CVDの死亡率における減少に大きな寄与をしてきた。レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系(RAAS)の構成成分を抑制し又は拮抗する薬剤は、高血圧を患っている人において、得られた血圧を減少することに対する大きな効果を有した。RAASにおいて活性な酵素の一つはアンジオテンシン変換酵素(ACE)である。この酵素はカルボキシジペプチダーゼであり、及び、それはアンジオテンシンIの、生理活性ペプチドであるアンジオテンシンIIへの変換を触媒する。さらに、生理活性ペプチドブラジキニンが非機能的ペプチドへと加水分解される。アンジオテンシンII及びブラジキニンの主な生物学的機能性は、腎臓及び肺のような重要な臓器を通る体血圧及び血流の制御に関連する。血圧を低めるであろう治療法の重要な群は実際にACE酵素を標的にしている。例えばカプトプリル及びリシノプリルなどのような医薬は、ACE酵素の活性を抑制する。これらのACEインヒビターの共通の特徴は、該医薬の構造がジペプチド又はトリペプチドとの大きな類似性を有することである。カプトプリルはジペプチド(Cys−Pro)であり且つ非常に強力なACEインヒビターである。
【0004】
食品産業は、健康を増進する食品成分、いわゆる機能性食品又は栄養補助食品、を開発する新たな機会を探している。該産業は、高血圧の消費者における血圧の減少を、関心のある主要な領域と割り当てた。
【0005】
バルク量で入手できるタンパク質(カゼイン、ホエータンパク質、大豆及び魚のタンパク質)に由来する特定のペプチドがACE酵素を抑制することができ、そして結果として、血圧を下げることができ且つそれ故にCVD関連疾患のリスクを低めることができることが仮定される。或るタンパク質加水分解物がin vitroでACE活性を抑制することができることが示されている。該加水分解物は、プロテアーゼ処理又は発酵活性のいずれかにより得られる。ラットにおけるin vivoでの血圧に対する効果に関して利用可能なデータがある。これは血圧を低める活性を測定する為の一般的に用いられ且つ認められた手順である。
【0006】
この主題についての健康増進性食品は今市場に進出している。例えば、Valio及びCalpisは、乳タンパク質の微生物的発酵により得られる製品を市場に持ち込む。さらに、DMVは強力なACE抑制活性を有するペプチドを含む、カゼインの加水分解物を有する。最も多くの消費者製品は、乳に基づく製品(乳又はヨーグルト)として商品化されている。
【0007】
ACE抑制ペプチドがどのような構造的特徴を満たすべきかは正確には知られていないが、ACEインヒビターであると判明しているペプチドの間にはいくつかの類似性がある。これらは一般的には、C末端に疎水性アミノ酸を有する短いペプチド(2〜4アミノ酸)である。また、次に該ペプチドの末端に、通常はC末端に存在する該アミノ酸プロリンがしばしば言及される。
【0008】
日本の会社であるカルピス株式会社は、発酵を通じてACE抑制ペプチドを得た。これらは通常は、アミノ酸プロリンの存在及び高いACE抑制活性により特徴付けられる小さなペプチドである。発酵により得られる該活性ペプチドは主として、それらの構造中にプロリンを有する配列からなる;すなわちVal−Pro−Pro又はIle−Pro−Pro(Nakamura,Y.et al.(1996),J.Dairy Sci. 78;777−783)。抗高血圧活性を有する他のペプチドが、とりわけ、農畜産業振興機構(Nouchikusangiyou)、雪印乳業株式会社、Symbicom AB及び日清製粉株式会社において記載される。
【0009】
該活性ペプチド/加水分解物が十分なACE抑制活性を有することが、測定可能な血圧低下にとって重要であることが明白である。ACEインヒビター、例えばペプチド又は加水分解物などのACE抑制活性は、通常はIC50値として表される。この値は、ACE活性を50%だけ減少するのに必要なペプチド/加水分解物の濃度を示す。ACEインヒビターのIC50値が低ければ低いほど、ACE抑制活性はより強力になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、十分なACE抑制活性を有する加水分解物及びペプチドを提供することである。より特には、本発明は、ホエータンパク質、とりわけβ−ラクトグロブリンを出発物質として用いる、ACE抑制の酵素的製造のための新規な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは驚くべきことに、2つの異なる細菌酵素(中性プロテアーゼ及びサーモリシン)によりホエータンパク質含有基質の段階的加水分解が16μg/mlと同じくらい低いIC50を有する加水分解物を産生することができることを発見した。従って、本発明は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)抑制活性を有する少なくとも1つのペプチドを含むタンパク質加水分解物を提供する方法であって、
ホエータンパク質含有基質を細菌の熱不安定性中性プロテアーゼにより処理して第1の加水分解物を産生すること;及び、
該第1の加水分解物をサーモリシンにより処理して第2の加水分解物を産生すること
を含む上記方法に関する。すなわち、細菌の中性プロテアーゼ及びサーモリシン(EC3.4.24.27又はEC3.4.24.4)による段階的な様式でのホエータンパク質含有基質の処理を含む2段階加水分解方法が提供される。この方法により提供されうるペプチド、例えば

及び、ACE抑制活性を有する、それらの機能的なペプチド類似体からなる群から選ばれるアンジオテンシン変換酵素(ACE)抑制ペプチドなど、も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】Hiprotal 535のニュートラーゼ(Neutrase)による典型的な加水分解パターンを示す図である。タンパク質濃度は100mg/mlであった。
【図2】第1の加水分解物のサモアーゼ(Thermoase)による典型的な加水分解パターンを示す図である。ペプチド濃度=40mg/ml及びE/S=0.01。
【発明を実施するための形態】
【0013】
種々のバクテリアの株におけるプロテイナーゼ(この多くは発酵した乳製品の製造において用いられうる)が、乳タンパク質からのACE抑制ペプチドを放出することができることが知られている(概説のために、Meisel and Bockelmann(1999), Ant. van Leeuwen. 76:207−215又はGobbetti et al.(2000) Appl. Envir. Microbiol. 66: 3898−3904を参照されたい)。
【0014】
例えば、国際公開第03/102195号パンフレットは、1以上(1又は1より多い)のエンドプロテアーゼ、特にはプロリン特異的エンドプロテアーゼ、と1以上のトリペプチダーゼとの組み合わせの使用を開示する。例として、カゼイン加水分解物が、セリンプロテアーゼと接触され、続いてEndoProにより処理、及び最後にトリペプチダーゼTPAP−Aにより処理がされる。
【0015】
国際公開第99/65326号パンフレットは、生理活性ペプチドを含むホエータンパク質加水分解物を調製する一段階方法であって、ホエータンパク質をプロテアーゼにより処理すること及び苦味を有するペプチドが産生される前に該加水分解を終了することを含む上記方法を開示する。
【0016】
国際公開第02/19837号パンフレットは同様に、改善された風味、機能性及びACE−I抑制特性を有するホエータンパク質加水分解物を調製する方法に関する。約10%と同じくらいの加水分解が達せられるまでの、1以上の熱不安定性プロテアーゼによるホエータンパク質分離物の処理、続く酵素不活性化を含む一段階方法が開示される。好ましいプロテアーゼはプロテアーゼ6、プロテアーゼA、プロテアーゼM、ペプチダーゼ(Peptidase)、ニュートラーゼ、Validase及びAFP 2000である。
【0017】
特開平06−128287号公報は、微生物に由来する中性プロテアーゼ又はアルカリプロテアーゼによる乳タンパク質(例えば牛乳β−カゼイン)を加水分解すること及び次にオピオイド活性を有する画分を回収することによる、ACE抑制活性を有するオピオイドペプチドの調製を開示する。
【0018】
米国特許第6,998,259号明細書は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)を抑制する組成物を調製する方法であって、
(a)イオン交換及びトリプシンにより製造されたホエータンパク質画分の水性溶液を調製すること;(b)該溶液を、該ホエータンパク質画分を部分的に加水分解するのに有効な条件下に維持して、増加したACE抑制活性を有する加水分解物を提供すること;(c)加水分解度が5.5〜6.5%の範囲内に達したときに該加水分解を止めること、ここで該加水分解物はHPLCにより測定されたときに特定の分子量プロファイルを有するペプチドの混合物を含む、を含む上記方法を開示する。米国特許第6,998,259号明細書において用いられた酵素は、トリプシンVI、P Amano 6及びMultifect(非常に異なる特異性を有する)を含む。トリプシンは、Arg及びLysの近傍のペプチド結合だけを開裂すると知られている一方で、他の2つの酵素ははるかにより広い特異性を有しそしてより多い数のより短いペプチドをもたらすであろう。
【0019】
国際公開第04/098310号パンフレットは、トリペプチドVPP、IPP及び/又はLPPを含む加水分解されたカゼイン産物の調製の方法を記載し、ここでカゼイン又はカゼイン断片を含む基質は、Aspergillusに由来する酵素にさらされる。好ましくは、該酵素は、400U/kg以上のX−プロリルジペプチジルアミノペプチダーゼ活性を有する。
【0020】
国際公開第2006/025731号パンフレットは、ACE抑制活性によりタンパク質加水分解物を酵素的に生産する方法であって、第1の反応工程における広域スペクトルのエンドプロテアーゼによるβ−ラクトグロブリン(BLG)含有基質の処理、続く第2の反応工程におけるプロリン特異的エンドプロテアーゼによる処理により特徴付けられる上記方法を提供する。
【0021】
国際公開第2006/005757号パンフレットは、タンパク質から産生されるIPP対VPPの重量比が少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1及びより好ましくは少なくとも20:1であるところのタンパク質からのトリペプチドIPPを含む組成物を生産する方法に関し、これは、プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性又はプロリルオリゴペプチダーゼ活性を有する酵素活性及び−I−P−P−配列のアミノ末端側で該結合を加水分解することができる酵素活性の使用を含む。
【0022】
国際公開第2007/004876号パンフレットは、乳タンパク質に由来するACE−抑制ペプチドを製造する方法に関する。それは、逐次的な又は混合物として、酵素及び/又は微生物の組み合わせが、ACE抑制活性を有するタンパク質加水分解物を提供する為に用いられうることを開示する。適当な酵素の長いリストが開示される。国際公開第2007/004876号パンフレットは、好ましくは第1のプロテアーゼが、ニュートラーゼ、プロテアーゼ P6、プロテアーゼ A、Promod 25P、Multifect Neutral及びFungal Proteaseの群から選ばれること、及び、第2のプロテアーゼが好ましくはFlavourzyme、Orientase 9ON又はEnzeco Fungal Proteaseであることを教示する。本発明において開示されるとおりの特定の酵素の組み合わせを用いる段階的加水分解を実施することの教示又は示唆しない。
【0023】
国際公開第2004/057976号パンフレットは、植物材料からの加水分解物を含むACE抑制ペプチドを提供する方法を開示する。実施例9は、任意的にアルカラーゼ(Alcalse)との組み合わせにおける、サーモリシンの使用に関する。ホエータンパク質含有基質を、バクテリアの熱不安定性中性プロテアーゼ及びサーモリシンにより逐次的に処理することの開示はない。
【0024】
Abubakarら(Tohoku Journal of Agricultural Research, Vol. 47, No. 1-2, 1996)は、7種の異なるプロテアーゼ(このうちサーモリシン)による、ホエータンパク質及びチーズホエーパウダーの1回処理を教示する。本明細書において開示されるように非常に強力なACE抑制活性を有する加水分解物を提供する、ニュートラーゼ及びサーモリシンによる2段階処理を教示又は示唆しない。
【0025】
すなわち、1以上の異なる酵素を用いる(乳)タンパク質の1段階又は多段階加水分解は知られているが、ACE抑制ペプチドを放出する為の本明細書において開示されるとおりの特定の酵素の組み合わせによるホエータンパク質の処理は、以前に開示又は示唆されていない。
【0026】
熱不安定性中性バクテリアプロテアーゼは当技術分野で知られている。熱不安定性により、当技術分野の当業者により認識されているだろうとおり、酵素が比較的穏やかな温度で不可逆的に不活性化しやすいことが意味される。P1=Leu、Val又はPheとして定義される基質開裂特異性を有する酵素が用いられてよく、ここでP1は、切断されやすい結合のN末端側の残基である。適当な熱不安定性バクテリア中性プロテアーゼは、Bacillus種、特にはBacillus subtilis又はBacillus amyloliquefaciensから得られるものを包含する。特定の局面において、本発明の方法は、NovoZymesにより商品名Neutrase(R)下で販売される中性プロテアーゼ、特にはNeutrase 0.5L、又は同様の特性を有する酵素の使用を含む。
【0027】
サーモリシン(EC 3.4.24.27)は、バクテリアBacillus thermoproteolyticusから得られる熱安定性メタロプロテイナーゼであり、これはタンパク質中の疎水性アミノ酸、例えばLeu、Ile、Val及びPheなど(P1’=Ile、Leu、Val又はPhe)のN末端アミド結合を加水分解する。それは、約65〜75℃に及ぶ、比較的高い最適温度を有する。特定の局面において、本発明は、B.stearothermophilus(B.thermoproteolyticus変異体Rokko)により産生されるサーモリシン又は同様の特性を有するサーモリシンを用いて実施される。
【0028】
当技術分野の当業者は、該酵素処理を実施するのに適当な条件を選択することができるであろう。熱不安定性中性プロテアーゼによる基質加水分解は典型的には、約3.5〜約9.0のpHで、好ましくは約pH6.0〜8.0で実施される。適当なインキュベーション温度は、約30〜65℃、好ましくは約50〜60℃である。
【0029】
サーモリシンによるインキュベーションは、最大で約80℃の温度で実施されうるが、最適な温度は65〜70℃である。pHは、約5〜約9であってよく、最適pHは7.0〜8.5である。サーモリシンは、カルシウムイオンにより保護され及びEDTAのようなキレート剤により抑制される。
【0030】
本発明の方法において用いられる1又はそれより多い酵素は、不活性の支持体上に、例えばキトサン粒子上、カラギーナン粒子上、Eupergit上又は任意の他の適当な不活性支持体物質上などに固定化されうる。該酵素は、架橋により該支持体物質に付けられうる。
【0031】
熱不安定性中性プロテアーゼによるホエータンパク質含有基質の処理は第1の加水分解物を結果し、これは好ましくは比較的低い加水分解度(degree of hydrolysis:DH)を有し、すなわち、酵素の作用により開裂されたペプチド結合の百分率が好ましくは約10%未満である。加水分解物のDHは、当技術分野で既知のやり方により測定されうる。好ましい局面において、中性プロテアーゼによる処理は、例えばニュートラーゼを用いて、実施されて、Adler−Nissenの方法(Enzymic Hydrolysis of Food Proteins. ISBN 0-85334-386-1, pg.115-124)により測定されたときに、約3〜7%、例えば3〜5%など、のDHを有する加水分解物を産出する。該方法は、以下の等式を用いる:DH=B×N×1/α×1/MP×1/Htot×100%、ここで
B=水酸化ナトリウム消費(ml)
Nb=該水酸化ナトリウム溶液の規定度
α=α−NH基の平均解離度
tot=該タンパク質基質中のペプチド結合の合計数(meq/gタンパク質)
MP=加水分解におけるタンパク質の質量(g)
【0032】
第1の反応段階において用いられる酵素は典型的には、第2の酵素に該第1の加水分解物が付される前に、とりわけ第1の酵素による第2の酵素の加水分解を回避する為に、不活性化される。第2の加水分解の完了の前に、第2の酵素(サモアーゼ)が不活性化されうる。不活性化は、可逆的又は不可逆的な不活性化を含みうる。酵素不活性化は、典型的には高温への短時間の曝露による、酵素の変性により容易に達成される。熱不活性化は例えば、約95〜130℃の温度で、数秒間〜数分間、第1の酵素を含む第1の加水分解物を加熱することを含む。例えば、121度で約10秒加熱するいわゆるUHT処理が用いられる。これは、微生物の制御も許す。もちろん、熱不安定性中性プロテアーゼの熱不活性化は、サーモリシンの熱不活性化と比較して、より低い温度を要求する。熱不安定性バクテリア中性プロテアーゼである第1の酵素の不活性化のために用いられうる適当な温度範囲は、約55〜70℃程度、好ましくは約65℃である。
【0033】
代替的に、酵素は、該反応混合物からそれを簡単に除くことにより不活性化されうる。例えば、酵素が不活性支持体上に固定化されている場合、それはその後、第1の酵素活性の喪失を達成する為に、例えば膜ろ過により、第1の加水分解物から分離されうる。
【0034】
また、加水分解が所望の水準に達すると、第1の酵素は、限外ろ過(UF)技術の使用により、好ましくは約10〜500kDa、好ましくは約10〜200kDaの範囲の名目上の分画分子量(molecular weight cut-off)を有する限外ろ過膜を用いて、第1の加水分解物から分離されうる。
【0035】
ホエータンパク質含有基質の任意のタイプが、出発物質として用いられうる。これらは、「ホエータンパク質分離物」(WPI)又は「ホエータンパク質濃厚物」(WPC)といわれる調製物を包含する。WPCは、典型的には、濃厚なホエーの限外ろ過により得られる。ホエーは、生産工程に入る乳の全体積の80〜90%を構成し、及び、タンパク質、ラクトース、ビタミン及びミネラルなどの、最初の乳の栄養素の約50%を含む。従来、ホエーはチーズ産業の廃棄物と常に考えられてきたが、チーズホエーの排出は大きな環境問題を引き起こす。しかしながら、該タンパク質が良い機能的特性を有するので、現在は、それらの抽出のためのホエーの使用における関心が大きい。
【0036】
一般的に言えば、ホエーの0.55%だけがタンパク質からなる。乾燥物質に基づき、これは約10%である。ホエータンパク質は均一な混合物であり、このうち主なタンパク質はβ−ラクトグロブリン(BLG;約55%)、α−ラクトグロブリン(ALA;約16%)、血清アルブミン(BSA;約5%)及びイムノグロブリン(Ig;約12%)である。ホエーの乾燥物質含有量を少なくとも約50〜60%に増加することができるために、ホエーは濃厚にされ又は乾燥される。ホエータンパク質濃厚物(WPC)は、限外ろ過によりホエーを分画し且つ濃厚にすることにより作られる。さらなる濃厚化が行われるにつれて、種々の水準のタンパク質がホエータンパク質濃厚物中に生じる。工業的に製造されたWPCは、低タンパク質WPC(タンパク質含有量25〜40%)、中タンパク質WPC(タンパク質含有量(45〜60%)、及び高タンパク質WPC(タンパク質含有量68〜80%)のカテゴリーに分類される。
【0037】
ホエータンパク質の完全スペクトルを含む通常のWPCに加えて、1又はより多くの特定のホエータンパク質について富むWPC、例えばβ−ラクトグロブリン(BLG)に富むWPC又はα−ラクトグロブリン(ALA)に富むWPCなどが用いられうる。1つの実施態様において、本発明の方法は、ALAに富むWPCの段階的酵素的処理を含む。この製品は、通常のWPCからALAの特定の沈殿後に得られる。遠心及び限外ろ過の後に、比較的高い水準のALAを有するWPCが得られる。ALAに富むWPCの例は、商品名Vivinal Alpha(商標)下で販売される製品である。
【0038】
β−ラクトグロブリン(BLG)に富むホエータンパク質濃厚物は、本発明に従う方法において魅力的な出発物質である。この製品は、上記で記載されたようなALAに富むWPCの製造の間に「副産物」として得られる。好ましくは、本発明に従う方法は、全タンパク質に基づき少なくとも25重量%がBLGであり、例えば30重量%又は35重量%がBLGであり、好ましくは少なくとも40重量%がBLGであり、例えば45重量%、50重量%又は55重量%がBLGであり、より好ましくは少なくとも70重量%がBLGであり、例えば75重量%又は90重量%がBLGである、タンパク質の混合物からなる基質について用いられる。また、(精製された)BLGが基質として用いられうる。しかしながら、より精製されたタンパク質基質が出発物質として用いられるにつれて、ACE抑制加水分解物の製造コストがより高くなるであろうことは言うまでもない。
【0039】
出発物質としての使用にとって適当な市販のWPCは、Hiprotal 875;Hiprotal 880、Hiprotal 535及びHiprotal 580を包含し、全てFriesland Foods Domo、ズウォレ、オランダ、から入手可能である。
【0040】
ホエータンパク質含有基質が第1の酵素又は第2の酵素とインキュベートされるタンパク質濃度は、とりわけ用いられる酵素の種類及び量に依存して、変わりうる。タンパク質濃度は、第1及び第2のインキュベーション混合物について同じであってよく又は異なってよい。例えば、第1の加水分解物は、100ml当たり約1〜約50mg、好ましくは約5〜15mg/ml、例えば10mg/mlなど、のタンパク質濃度で調製される。得られた第1の加水分解物は、それ自体として(すなわち同じタンパク質濃度で)第2の酵素により処理されてよく、又は、それは次に、第2の酵素にそれを接触させるのに先立ち、水又は任意の他の適当な水性の液体を用いて、例えば2倍〜10倍に、希釈されてよい。
【0041】
特定の局面において、第1の加水分解物は、ニュートラーゼを用いる約10g/100mlでホエータンパク質を含む溶液の処理、続くサーモリシンによる処理に先立つ約3〜4g/100mlへの希釈により調製される。
【0042】
さらなる局面において、本発明は、本明細書上記で記載された方法により得られる、アンジオテンシン変換酵素(ACE)抑制活性を有するタンパク質加水分解物を提供する。この加水分解物は、強力なACE抑制活性により特徴付けられ(以下の表1及び2を参照されたい)、そして、それ故に、哺乳類、例えばヒトなどにおいてACE活性を抑制するために有利に用いられうる。加水分解物はまた、例えばネコ又はイヌにおける、獣医学の適用にとっても適当である。ACEの抑制はin vivoでの抗高血圧効果を有するので、ACE抑制加水分解物は、高血圧の処置のために用いられうる。
【0043】
本発明に従う加水分解物は、種々の製品、例えば液体製品及び乾燥製品などへと加工されうる。もし望まれるならば、下流の処理が、例えば限外ろ過(UF)処理の形で、行われる。酵素は、ペプチドよりも非常に大きな分子量を有し、及び、UFによりACE抑制ペプチドから分離されうる。UF工程の追加の利点は、酵素により減成されていないタンパク質基質が、生物学的に活性な加水分解物から分離されることもできることである。
【0044】
本発明に従うホエータンパク質を、個々のペプチド(ホエータンパク質断片)が分離される精製手順に付することにより入手可能な、アンジオテンシン変換酵素(ACE)抑制活性を有するホエー由来ペプチドも提供される。適当な方法は当技術分野で知られており、そして、典型的には、1以上の段階の逆相(RP−)HPLCを含む。分離されたペプチドの構造は、種々の分析技術、例えばNMR又はマススペクトロメトリー(MS)などを用いて解明されうる。それ故に、本発明は、ホエータンパク質含有基質をバクテリア熱不安定性中性プロテアーゼにより処理して第1の加水分解物を製造すること、該第1の加水分解物をサーモリシンにより処理して本明細書上記に記載されたとおりの第2の加水分解物を製造することを含み、及び、該第2の分解物を1以上のペプチドを含む個々の画分に分画する工程及びACE抑制活性を有する少なくとも1つのペプチドのアミノ酸配列を同定する工程をさらに含む方法により得られる、ACE抑制活性を有するペプチドにも関する。
【0045】
以下の実施例において例示されるように、いくつかのACE抑制ペプチド画分が、本発明に従う段階的酵素処理に従い得られうる。1つの実施態様において、in vitroでのACEアッセイにおいて30%以上抑制することができる1以上のホエー由来ペプチドを含む画分が提供される。好ましくは、画分は、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%の抑制を示す。
【0046】
抑制画分のいくつかに存在するペプチドの分析は、少なくとも以下のアミノ酸配列(全て標準的な1文字コードにより示される)の同定を明らかにした:

【0047】
それ故に、本発明は、

並びに、in vitroでのACE抑制活性を示すそれらの機能的ペプチド類似体からなる群から選ばれる、精製された、合成の又は分離されたペプチドを提供する。
【0048】
好ましい実施態様において、

及びin vitroでのACE抑制活性を示すそれらの機能的ペプチド類似体からなる群から選ばれるペプチドが提供される。特定の局面において、該ペプチドは、

及び、in vitroACE抑制活性を示すそれらの機能的ペプチド類似体からなる群から選ばれる。
【0049】
本明細書において用いられるときに、「精製された、合成の又は分離された」ペプチドは、天然の源から又は生物工学的な源から精製されたものであり、又はより好ましくは本明細書において記載されたとおりに合成される。
【0050】
本明細書において用いられるときに、ペプチドの「機能的類似体」は好ましくは、それが由来するペプチドと同じサイズを有し、すなわち、アミノ酸の欠失又は追加よりもむしろアミノ酸置換及び/又は修飾により作られる。また、本明細書において用いられるときに、ペプチドの「機能的類似体」は、1つの側又は両側でより多くのアミノ酸により隣接されるACE抑制ペプチドとして同定されたアミノ酸配列を含むだけのより大きなタンパク質又はペプチドを言わない。
【0051】
例えば、ペプチド類似体は、1つの実施態様において、NT−VAGTWYS−CTであってよく、ここでN末端でのNTは、H−−、CH−−、アシル基、又は一般的な保護基の群から選ばれ;及び/又はC末端でのCTは、−−OH、−−OR、−−NH、−−NHR、−−NR、又は−−N(CH1−6NRの群から選ばれ、ここでR及びRは、存在する場合、H、アルキル、アリール、アルキル(アラルキル)から独立に選ばれ、且つR及びRは互いに環式に結合されてよい。
【0052】
ペプチド類似体は、上記で開示された特定のアミノ酸配列と同じ又は等価な側鎖を有する等価化合物も包含し、及び該ペプチドと同じ順序で逐次的に配列されるが、非ペプチド結合、例えばアイソスターの結合により、例えばケトアイソスター、ヒドロキシアイソスター、ジケトアイソスター、又はケトジフルオロメチレンアイソスターなど、により一緒に結合されない。
【0053】
許容できる塩の形にあるペプチドも提供される。本明細書において用いられるときに、「許容できる塩」は、ペプチド又は等価化合物の所望の活性を維持するが好ましくは該ペプチドを用いる系の該ペプチド又は他の成分の活性に悪影響を及ぼさない塩をいう。そのような塩の例は、無機酸、例えば塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸及び同様物などにより形成された酸付加塩である。塩は、有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、及び同様物などによっても形成されうる。塩は、多価金属カチオン、例えば亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル及び同様物などにより形成されてよく、又は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン又はエチレンジアミンから形成される有機的カチオンにより形成されてよく、又はそれらの組み合わせ(例えば、タンニン酸亜鉛塩)でありうる。
【0054】
本発明に従うペプチド又は類似体は、そのような化合物にとって慣用的な様式で調製されうる。そのために、適当に、Nα保護された(及びもし反応性側鎖が存在するならば側鎖保護された)アミノ酸類似体又はペプチドが活性化され及び、溶液中又は固体支持体上のいずれかにおいて適当にカルボキシル保護されたアミノ酸又はペプチド誘導体に結合される。αアミノ官能基の保護は一般に、ウレタン官能基、例えば酸不安定性ターシャリー−ブチルオキシカルボニル基(「Boc」)、ベンジルオキシカルボニル(「Z」)基及び置換された類似体又は塩基不安定性9−フルオレミル−メチルオキシカルボニル(「Fmoc」)などにより行われる。該Z基は、触媒的水素化によって除去されうる。他の適当な保護基は、Nps、Bmv、Bpoc、Aloc、MSC等を包含する。アミノ保護基のよい概説が、The peptides, Analysis, Synthesis, Biology, Vol. 3, E. Gross and J. Meienhofer, eds. (Academic Press, New York, 1981)において与えられる。カルボキシル基の保護は、エステル形成により行われてよく、例えば、メチル又はエチルのような塩基不安定性エステル、ターシャリーブチルのような酸不安定性エステル、若しくは、置換された、ベンジルエステルにより行われてよく又は水素化分解的に行われてよい。側鎖官能基、例えばリシン及びグルタミン酸又はアスパラギン酸のそれらなどの保護は、上述された基を用いて行われうる。チオールの保護、及び常に要求されないが、グアニジノ基、アルコール基及びイミダゾール基の保護は、種々の試薬、例えばThe Peptides, Analysis, Synthesis, Biology,(同上)又はPure and Applied Chemistry, 59(3), 331-344 (1987)において記載されたそれらなどを用いて行われうる。適当に保護されたアミノ酸又はペプチドのカルボキシル基の活性化は、アジド、混合無水物、活性エステル、又はカルボジイミド方法、特には1−N−N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシスクシンイミド、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3,−ベンゾトリアジン、N−ヒドロキシ−5 ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドのような触媒的かつラセミ化抑制化合物の添加を伴う、により行われうる。また、リンに基づく酸の無水物が用いられうる。例えば、The Peptides, Analysis, Synthesis, Biology,(上記参照)及びPure and Applied Chemistry, 59(3), 331-344(1987)を参照されたい。Merrifieldの固相方法により該化合物を調製することも可能である。種々の固体支持体及び種々の戦略が知られており、例えば、The Peptides, Analysis, Synthesis, Biology, Vol.2, E. Gross and J. Meienhofer, eds. (Acad. Press, New York, 1980)におけるBarany及びMerrifield;Kneib-Cordonier and Mullen, Int. J. Peptide Protein Res., 30, 705-739(1987)並びに、Fields and Noble, Int. J. Peptide Protein Res., 35, 161-214(1990)、を参照されたい。ペプチド結合がアイソスターにより置き換えられる化合物の合成は、一般に、前に記載された保護基及び活性化手順を用いて実施されうる。該修正されたアイソスターを合成する為の手順は、該文献において、例えば−−CH−−NH−−アイソスター及び−−CO−−CH−−アイソスターについて記載されている。
【0055】
保護基の除去及び、固相ペプチド合成の場合、固体支持体からの開裂は、それらの保護基の性質及び該固体支持体へのリンカーの種類に依存して、種々の方法で行われることができる。通常は、脱保護は、酸性条件下で及びスカベンジャーの存在下で行われる。例えば、The Peptides Analysis, Synthesis, Biology(上記参照)のシリーズの第3、5及び9巻を参照されたい。
【0056】
他の可能性は、そのような化合物の合成における酵素の適用である;概説のために、例えば、The Peptides, Analysis, Synthesis, Biology, Vol. 9, S. Udenfriend and J. Meienhofer, eds. (Acad. Press, New York, 1987)におけるH.D. Jakubkeを参照されたい。
【0057】
経済的な観点から望ましくないかもしれないが、本発明に従うACE抑制ペプチドは、組み換えDNA方法に従い作成されることもできるだろう。そのような方法は、宿主として適当な微生物において問題のペプチドの1以上をコードする組み換えポリヌクレオチド配列を発現することによるそれらの所望のペプチドの調製を含む。一般に、該方法は、クローニングビヒクル(例えばプラスミド、ファージDNA、又は宿主細胞において複製することができる他のDNA配列)へ、特定のペプチドをコードするDNA配列を導入すること、適当な真核宿主細胞又は原核宿主細胞への該クローニングビヒクルを導入すること、及び、このように形質転換された該宿主細胞を培養することを含む。真核宿主細胞が用いられるとき、該化合物はグリコプロテイン部分を含みうる。
【0058】
本明細書で用いられるときに、ペプチドの「機能的類似体」は、配列の機能的特性が種類において本質的に同じである(量においては必ずしも同じでない)ように改変されたアミノ酸配列、又は他の配列モノマー、を含む。例えば、類似体は、L−アミノ酸残基のD−アミノ酸残基による置換により産生されうる。自然界において天然に生じないペプチドをもたらすこの置換は、アミノ酸配列の特性を改善しうる。例えば、レトロ反転形式(retro inversion format)で全てのD−アミノ酸の既知の活性のペプチド配列を提供することが有用であり、それにより維持された活性及び増加した半減期値を許す。元のアミノ酸配列の多くの位置的変異体を産生し及び特定の活性についてスクリーニングすることにより、そのようなD−アミノ酸を含む改善されたペプチド誘導体が、さらに改善された特徴を目指して設計されうる。1又は両方の末端でD−アミノ酸により保護されたペプチドは、L−アミノ酸だけからなるものよりも安定であることが分かったことが、当技術分野で示されている。他の種類の修飾は、栄養組成物又は医薬組成物におけるペプチドの使用についての有益な効果を有する為のペプチド薬開発の分野において既知のものを含む。これらの効果は、改善された有効性、変化した薬物動態、より長い貯蔵寿命を結果する安定性の増加及びより厳格でないコールドチェーンの取扱い要求を含みうる。
【0059】
ペプチド又はその機能的類似体の機能性は、in vivo及び/又はin vitroでの試験を用いて決定されうる。ACE抑制活性のin vitroでの試験が好ましい。1つの実施態様において、候補ペプチド類似体は、参照ペプチド又は対照ペプチド、例えばL−アミノ酸だけからなるペプチド類似体などを用いた比較試験に付される。適当な試験は、市販入手可能なACEによりヒプリル−His−Leuの加水分解を抑制する候補ペプチドの能力を決定することを含む。
【0060】
経口摂取後、本発明に従う加水分解物中に存在するペプチドは、無傷で又は実質的に無傷の形で腸管に行って、その後血流中に摂取されることが仮定されうる。任意的に、本発明に従う加水分解物又はペプチドは、1以上の他のACEインヒビターと一緒に用いられうる。本発明のさらなる局面において、該ACE抑制加水分解物又は分離されたペプチドは、例えば高血圧の遺伝的傾向を有するヒトにおいて又は副作用として高血圧を引き起こす医薬が用いられるならば、高血圧を防ぐ為に予防的に用いられる。
【0061】
高血圧に有効であることに加えて、ACEインヒビターは、心不全に有効であることも分かる。本発明に従う方法により得られるACE抑制加水分解物、又は分離されたペプチド(類似体)は、それ故に、例えば冠動脈の後に再発を防ぐ為の、心臓障害に対しても用いられうる。
【0062】
本発明は、任意的に1以上の追加の有益な栄養的又は治療的成分と一緒に、本発明に従うACE抑制加水分解物及び/又はペプチドと適当なキャリアとを含む組成物も提供する。ACE抑制/抗高血圧活性を有するそのような組成物は、例えば、医薬組成物又は食品若しくは嗜好食品である。ACE抑制組成物は、固体の又は液体の形態を有しうる。それは例えば粉又は錠剤である。好ましくは、本発明に従うACE抑制組成物は液体の形態、例えば液体の乳製品、果物ジュース又は、とりわけ高血圧を予防し又は処置する為に用いられうる飲用製品の他のタイプなど、を有する。すなわち、本発明は、哺乳類においてACE活性を抑制するための処置方法であって、本発明の方法により得られるACE抑制加水分解物、ペプチド、ペプチド類似体、又は、任意の組み合わせでそれらのいずれか1つを含む組成物の、ACE活性を抑制する為に十分であり又は増加したACE活性に関連する1以上の症状を少なくとも軽減する量及び頻度での投与、好ましくは経口投与を含む上記方法も提供する。
【0063】
本発明のさらなる他の局面は、哺乳類における高血圧の症状を減少する処置方法であって、本発明に従う加水分解物又は組成物の、高血圧の症状を抑制するのに十分な量及び頻度での投与、好ましくは経口投与を含む上記方法に関する。
【0064】
最後に、本発明は、心臓及び血管の疾患を(予防的に)処置し又は防ぐ医薬の調製の為に、本発明に従う加水分解物及び/又はペプチド(類似体)を使用する方法に関する。特に、調製されるべき医薬は、哺乳類(例えばヒト又はペット)におけるACE活性を抑制する為の医薬;血圧を低下させる為の医薬;及び/又は高血圧の発生を防ぐ為の(予防的)医薬である。
【0065】
実験の部
【実施例1】
【0066】
実施例1:ACE抑制のin vitro測定
【0067】
加水分解物のACE抑制活性のin vitro測定が以下のとおりに実施された:
・ACE活性の測定のために用いられた基質は、Sigma社からのヒプリル−His−Leu(H−1635)である
・この製品(約40mg)が、pH8.3で、0.1Mのボレート、0.3Mの塩化ナトリウムからなる14mlのアッセイバッファー中に溶解される
・最終アッセイ混合物は、200μlの基質溶液及び800μlのアッセイバッファーからなる。
【0068】
アッセイは、37℃で、Carry 100(Varian)分光光度計において実施される。インキュベーションの開始で、20μlのACE(1U/ml;シグマ社)が添加される。ACE酵素活性が260nmの波長で監視される。得られたACE活性は、インキュベーションの2〜11分の間で計算された。ACE活性が、分インキュベーション当たりのE260nmの増加として定義される。
【0069】
ホエー加水分解物の該抑制効果の測定のために、バッファー体積の一部が、加水分解物の溶液により置き換えられる。
【0070】
試験されるべき加水分解物の存在下において、この活性の抑制は、該酵素の活性を50%だけ減少するのに必要とされる、産物の要求される量として測定され且つ表現される。この抑制は、測定されるべき産物の4つの異なる濃度について決定される。
【実施例2】
【0071】
実施例2:ホエータンパク質含有基質
【0072】
他に示されない限り、ホエータンパク質含有基質Hiprotal 535(Friesland Foods Domo)が出発物質として用いられた。これは、β−ラクトグロブリンに富むホエータンパク質濃厚物である。それは、56%のラクトース、35%のタンパク質、3%のミネラル、2%の有機的ミルクソルト(organic milk salt)、0.5%の脂質及び3.5%の水分を含む。
【0073】
RP−HPLCによる該タンパク質の特徴付けは、以下の組成を明らかにした:

【実施例3】
【0074】
実施例3:第1の加水分解物の調製
【0075】
Hiprotal 535からのACE抑制ペプチドの遊離のために、第1の加水分解物が、Novozymesから購入されたニュートラーゼ0.5Lとのインキュベーションで調製された。ニュートラーゼインキュベーションについての最適な条件は50℃及びpH=7.0である。第1の実験の目的は、ニュートラーゼにより触媒される加水分解の動力学を決定することであった。この実験において、10gのタンパク質(28.6g産物)が、100mlの水の最終体積中に溶解された。全部の溶液が、pH−Statの滴定スタンド中に置かれた。該溶液の出発pHは、おおよそpH=6.45であった。50℃の温度への平衡後、予備滴定が、所望のpH=7.0が達成されるまで、該pH−Statにより実施された。その点で、100μlのニュートラーゼが該溶液に添加され、そして、インキュベーションが開始された。該滴定装置は反応のpHを連続的に監視した。pHは、水酸化ナトリウムの制御された添加により、予め設定された値で維持される。タンパク質加水分解物の加水分解度(DH)は、塩基の消費から直接的にに計算されることができる(Adler-Nissen, Jens; Enzymic hydrolysis of food proteins; ISBN 0-85334-386-1; blz 115-124)。
【0076】
用いられる等式は:
DH=B×N×1/α×1/MP×1/Htot×100%
であり、ここで、
B=水酸化ナトリウム消費(ml)
=水酸化ナトリウム溶液の規定度
α=αNH基の平均解離度
tot=タンパク質基質中のペプチド結合の合計数(meq/gタンパク質)
MP=加水分解におけるタンパク質の質量(g)
【0077】
DHの決定の為に、8.8の値がMPについて用いられた。1/αの値は、インキュベーションの間に適用された温度及び実際のpHに依存した。pH=8、50℃について、1/αは1.13であり、pH=7、50℃について、1/αは2.27であった。
【0078】
ニュートラーゼによるHiprotal 535の典型的な加水分解パターンが図1に表される。インキュベーションの最初の数分において、加水分解は、比較的高い速度で進んでいる。或る時に、速度はかなりゆっくりになっている。利用可能なペプチド結合の約5%が加水分解されたときに、得られた酵素活性は再度増加する。理論にとらわれることを望まないで、インキュベーションの開始の間に、基質のコンフォメーションが酵素を抑制していることが考えられる。或る時(DH=5%)に、基質のコンフォメーションが変化し、そして、タンパク質分解攻撃にとってそれをより脆弱にする。
【0079】
時間に応じた加水分解度の実験データ

【0080】
第1の加水分解物における加水分解の延長の効果を決定する為に、夫々異なる加水分解度を有する、3つの異なる試料が調製された(A=5.0%、B=10.6%及びC=18.3%)。得られた加水分解物のRP−HPLCは、酵素ニュートラーゼによるタンパク質の分解は、比較的ゆっくりだが制御可能な反応速度で進んでいることを示した。
【実施例4】
【0081】
実施例4:第2の加水分解物の調製
【0082】
得られた第1の加水分解物は、10g/100mlのペプチド/タンパク質濃度を有した。第2の酵素サーモリシンによるインキュベーションに先立ち、第1の加水分解物が、10gタンパク質/250mlの最終濃度へと水により希釈された。用いられたサーモリシンは、Amanoから購入されたサモアーゼ PC10Fであった。
【0083】
サモアーゼ PC10Fインキュベーションのために用いられた条件は、pH=8.0及び50℃であった。第2の加水分解を開始する為に、100mlの第1の加水分解物が、pH−Stat装置に置かれた。予備滴定により、溶液のpHが、pH=8.0に調節された。インキュベーションは、サーモリシン酵素の既知の量の添加により開始された。典型的には、1/100又は1/50の酵素対基質(E/S)比が用いられた。酵素サモアーゼによる第1の加水分解物の典型的な加水分解パターンが図2に示され、サモアーゼによる第1の加水分解物の加水分解が、比較的高い速度で進んでいることを示す。さらに、サモアーゼによる延長されたインキュベーション後、高い加水分解度が得られることができたことが結論付けられうる。
【0084】
夫々異なる加水分解度を有するいくつかの第2の加水分解物が調製された。そのために、アリコートが、サモアーゼによるインキュベーションの60、120及び180分の後に、第2の加水分解物から採られた。
【0085】
該試料は、水により、10mg/mlのタンパク質/ペプチド最終濃度へと希釈された。酵素は、水浴(95℃)中で5分間、希釈された加水分解物を置くことにより、失活された。
【0086】
対照として、第2の加水分解物は、第2の酵素として、酵素Protease Aによっても調製された。この酵素は、P1位で、Ile、Leu又はValについての特異性を有する。試料は、ACE抑制活性の決定まで、冷蔵庫で保存された。ACE抑制活性は、上記で記載されたHip−His−Leuアッセイにより分析された。表1は、20μg/mlの加水分解物のインヒビター(ペプチド)濃度で得られた百分率ACE抑制を示す。
【0087】
表1:第2のホエータンパク質加水分解物によるACE抑制

【0088】
表1は、サモアーゼによる第1の加水分解物のインキュベーションが、少なくとも3時間のインキュベーションまで増加するACE抑制活性の放出を結果することを示す。最大の効果は、第1の加水分解物A(ニュートラーゼ DH=5.0%)により見られた。
【0089】
対照的に、第2の加水分解物を製造する為にサーモリシンの代わりに菌のProtease A(メタルプロテイナーゼ;EC 3.4.24.39)による同じ第1の加水分解物の処理は、ACE抑制ペプチドの放出に関してほとんど何も改善を結果しなかった。
【0090】
さらなる比較の例として、第1の加水分解物が、アルカラーゼ(広い範囲のタンパク質分解酵素)により調製された。サモアーゼによるこの第1の加水分解物の処理後、得られたACE抑制活性について、改善はほとんど何も見られなかった(表1、試料D)。
【0091】
表1の結果に基づき、ACE抑制ペプチドの産生は、サモアーゼによる延長されたインキュベーションのときに、さらにさえ継続するだろうことについて仮説が立てられた。この仮説を試験する為に、追加の加水分解物が、23時間のインキュベーション時間により調製された。この加水分解物におけるACE抑制活性はさらにより強力であった。
【0092】
次の実験において、多くの第2の加水分解物からのIC50値が決定された。ニュートラーゼを用いることによりBLGに富むホエータンパク質を処理することによって得られた第1の加水分解物(最終DHは5.0又は10.6%)が、次に、示された時間(1、3又は23時間)、示されたE/S比でサモアーゼと接触された。IC50値が、上記で記載されたアッセイを用いてin vitroで決定された。結果は表2に示される。12及び23時間のインキュベーションの間で、実質的に変化がないこと、及び、約23μg/mlのIC50が、サモアーゼによる12時間の処理後に得られることを、さらなる試験は明らかにした。
【0093】
表2:本発明の酵素の組み合わせを用いて調製された加水分解物のACE抑制活性(IC50として表される)

【0094】
この結果は、同様の基質を用いたが、アルカラーゼ/EndoProの酵素の組み合わせを用いて得られた第2の加水分解物の、以前に報告されたIC50値(IC50=27μg/ml;国際公開第2006/025731号パンフレットを参照されたい)よりもよい。
【0095】
ホエー由来加水分解物のACE抑制活性をさらにさえ改善する為に、3.0%又は7.0%のDHを有する第1の加水分解物から第2の加水分解物を調製することが決定された。サーモリシンによる第1の加水分解物の延長されたインキュベーション(サモアーゼ;23時間、E/S=1/50)後、IC50値が決定された。
【0096】
第1の加水分解物が3%のDHを有したとき、得られたIC50値は約23μg/mlであり、すなわちDH=5.0%について見られたものとちょうど同じであった。対照的に、第1の加水分解物が7%のDHを有したとき、得られたIC50値はいくぶんより高く、約27μg/mlであった。すなわち、第1の酵素としてニュートラーゼを用いた最適の結果について、第1の加水分解物の加水分解度は、約5%の最大の値を有すると分かる。
【0097】
ホエータンパク質BLG、ALA、CMP、IgG及びBSAを含む一般的なWPC(Hiprotal 875)が、上記で記載されたのと同じ条件を用いて本発明の方法においてホエー含有基質として用いられたときに、16μg/mlの最終IC50値が達せられた。
【実施例5】
【0098】
実施例5:ACE抑制ペプチドの分離及び同定
【0099】
例4からの第2の加水分解物の一部が、最後のプロテアーゼ処理後に、製造されそして乾燥された。ペプチドの分離のために、乾燥した加水分解物が、ホスフェート−生理食塩水バッファー(50mM、pH=6.0、0.15M塩化ナトリウム)中に、20mg/mlの最終タンパク質/ペプチド濃度で溶解された。該加水分解物は、溶液からの全ての粒子を除去する為に、溶解後に遠心された。
【0100】
5mlのこの溶液が、ゲルろ過カラム(Superdex 30−PG、16/60)に施与され、そして次に、ホスフェート−生理食塩水バッファー(50mM、pH=6.0、0.15M塩化ナトリウム)により1ml/分の流速で溶出された。8つの20ml画分が集められそして、それらのACE抑制活性について分析された。さらに、それぞれのsuperdex画分のペプチドプロファイルがRP−HPLCにより決定された。
【0101】
表3:Superdex画分のACE抑制活性;100μlの得られた画分が、抑制アッセイにおいて含まれた

【0102】
最も高いACE抑制活性が、画分X5において及び画分X6において見られた。RP−HPLCから、画分X−6はほとんど純粋なペプチドであることが明らかであった(RP−HPLCクロマトグラムにおいて1つのピーク)。このピークの正体が、LC−MCMSにより決定され、そして、ペプチド VAGTWYSL及びVAGTWYSを含むことが分かった。
【0103】
画分X−5は、RP−HPLCによりさらに精製された。画分X−5のpHが、ギ酸の添加により低められた。約10mlが、調製用の(preparative)逆相カラム(Resource RPC−3ml)に施与された。該カラムをバッファーによりリンスした後、吸着したペプチドはその後、RP−カラムから、ホスフェート−生理食塩水バッファー(50mM、pH=6.0、0.15M塩化ナトリウム)中のアセトニトリル勾配により、選択的に溶出された。該溶出されたペプチドは、画分(サイズ 1ml)に集められた。次の分析の為に十分な量のペプチドを得る為に、この手順が5回繰り返された。
【0104】
乾燥及び次のACE抑制バッファー中への該ペプチドの溶解の後、これらの画分のACE抑制活性が決定された。さらに、該画分の主なペプチド構成成分が、LC−MSMS又はMALDI−TOFにより同定された。
【0105】
画分X−5に存在する主なペプチドは、

であると分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ペプチド

及び、アンジオテンシン変換酵素(ACE)抑制活性を有するそれらの機能的ペプチド類似体からなる群から選ばれるACE抑制ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドを含むタンパク質加水分解物を提供する方法であって、
ホエータンパク質含有基質をバクテリアの熱不安定性中性プロテアーゼにより処理して第1の加水分解物を作ること;及び
該第1の加水分解物をサーモリシンにより処理して第2の加水分解物を作ること
を含む上記方法。
【請求項3】
該中性プロテアーゼが、Bacillus subtilis又はBacillus amyloliquefaciensに由来するものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該中性プロテアーゼが、商品名Neutrase(R)下で販売される中性プロテアーゼ又は同様の特性を有する酵素である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
該サーモリシンが、B.stearothermophilus(B.thermoproteolyticus変異体Rokko)に由来する、バクテリアの中性熱安定性メタロプロテイナーゼ(EC 3.4.24.4又はEC 3.4.24.27)又は同様の特性を有するサーモリシンである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該第1の加水分解物をサーモリシンにより処理する前に、バクテリアの熱不安定性中性プロテアーゼを不活性化する工程を含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該第1及び/又は第2の加水分解の反応混合物における酵素対基質比(E/S)が、1/20〜1/250、好ましくは1/50〜1/100である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該基質が、ホエータンパク質濃厚物(WPC)、好ましくはβ−ラクトグロブリン(BLG)に富んだWPCである、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該ホエータンパク質含有基質が、該基質の合計重量に対し、少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも60%のBLGを含む、請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該第1及び/又は第2の加水分解物のホエータンパク質濃度が、100ml当たり約1〜約50mg、好ましくは約2〜約15mg/mlである、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
第1の反応工程が、約10の加水分解度(DH)、好ましくは約3〜7%が達せられるまで、より好ましくはDHが約3〜5%になるまで実施される、請求項2〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該中性プロテアーゼによる処理が、約50℃で且つ約7のpHで、好ましくは約3〜4時間、実施される、請求項2〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該サーモリシンによる処理が、約50〜60℃で且つ約8のpHで、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも12時間、実施される、請求項2〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第2の加水分解物を1以上のペプチドを含む個々の画分に分画すること及びACE抑制活性を有する少なくとも1のペプチドのアミノ酸配列を同定することをさらに含む、請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法により得られる、アンジオテンシン変換酵素(ACE)抑制活性を有するホエー加水分解物。
【請求項16】
請求項14に記載の方法により得られるACE抑制ペプチド。
【請求項17】
請求項15に記載の加水分解物及び/又は請求項1又は16に記載の少なくとも1のペプチド、並びに適当なキャリアを含む組成物。
【請求項18】
該組成物が、医薬組成物又は食品若しくは嗜好食品である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
該組成物が、液体の製品、例えば乳製品若しくは果物ジュースなど、又は固体の製品、例えば粉などである、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
哺乳類においてACE活性を抑制する為、血圧を低下させる為、及び/又は高血圧の発生を防ぐ為の医薬の調製の為に、請求項15に記載の加水分解物又は請求項1若しくは16に記載のペプチドを使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−520274(P2010−520274A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552615(P2009−552615)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050131
【国際公開番号】WO2008/108649
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507058203)フリーズランド ブランズ ビー.ブイ. (12)
【Fターム(参考)】