説明

ホスホネート−官能性粒子を含有する組成物

本発明の目的は、(a)一般式≡Si−L−P(O)(OR(式中、Lは請求項1で定義されている、炭素原子数1〜12を有する2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、R及びRは、請求項1に記載と同じものを表す)の構造要素少なくとも1個を有する粒子(P)0.02〜200質量部、(b)結合剤(B)100質量部、(c)結合剤(B)に対して反応性である硬化剤(H)0〜100質量部並びに(d)溶剤又は溶剤混合物0〜1000質量部を含有している組成物(Z)、並びにこれから製造可能な複合材料(K)及びその使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスホネート−官能性粒子を含有している組成物、これから製造される複合材料及びこの組成物の使用に関する。
【0002】
粒子−殊にナノ粒子−を含有している複合材料は、技術水準である。複合材料からの相応する被覆は、例えばEP1249470、WO03/16370、US20030194550又はUS20030162015中に記載されている。この場合に、この粒子は、相応する被覆の特性、殊にその耐引掻き性並びに場合によるその耐化学薬品性の改良をもたらす。
【0003】
有機マトリックス系中の−通常は無機の−粒子の使用の際に屡々現れる問題は、粒子とマトリックスとの大抵は不充分な融和性である。このことは、粒子をマトリックス中に充分良好には分散できなくすることがある。更に、長い使用時間又は貯蔵時間の場合には、自体良好に分散された粒子が沈殿することがあり得、この際には場合により大きい凝結体又は凝集物が生じ、これらはエネルギー適用によっても、当初の粒子に分離できないか又は劣悪に分離できるにすぎない。このような不均一系の加工は、いずれの場合にも極めて困難であり、屡々むしろ不可能ですらある。この方法では、通常は、その塗布及び硬化の後に平滑な表面を有する複合材料を製造できないか又はコストのかかる方法でのみ製造できる。
【0004】
従って、その表面上に、周りのマトリックスとの良好な融和性をもたらし、従って不所望な粒子の凝集又は凝結を抑制する有機基を有する、粒子の使用が好都合である。このように、無機粒子は有機外被によって遮蔽される。更に特別好適な複合体特性は、粒子表面上の有機官能基がなおマトリックスに対しても反応性であって、その都度の硬化条件下でそれらがマトリックスと反応できる場合に、屡々達成することができる。従って、粒子を、複合材料の硬化の間に化学的にマトリックス中に取込むことができ、このことが結果として、屡々特別良好な機械特性をも改良された耐化学薬品性をももたらす。このような系は、例えばDE10247359A1、EP0832947A1又はEP0872500A1中に記載されている。
【0005】
この遮蔽にもかかわらず、技術水準で使用されているナノ粒子の不充分な安定性が欠点となっている。この粒子の不充分な安定性は、一方では粒子の加工の際に、殊に粒子分散液の濃縮又は溶剤交換の際に、他方では未硬化粒子分散液の貯蔵の際に出現する。粒子の安定性不足の徴候は、−屡々ゲル化まで進む−粘度上昇又は粒子の沈殿である。更に、記載のナノ粒子は、高い凝集−又は凝結傾向に基づき、再分散可能な固形物として単離することができない。
【0006】
技術水準により製造可能な粒子は、例えばスプレー乾燥による単離の際に、粒子凝集体又は凝結体として沈殿し、これらは、例えばパールミルを用いるか又は超音波処置によるエネルギー適用下でも、再分散させて当初の一次粒子寸法を達成させることができない。しかしながらこのことは、貯蔵、搬送の観点で、かつ殊に押出し工程でのこの粉末の可能な加工のために特別望ましいことであろう。
【0007】
技術水準によれば、複合材料中に含有される表面変性された粒子が製造されており、その際には、遊離のシラノール−(SiOH)又は金属水酸化物官能性を有する粒子を、非反応性の基、例えばアルキル−又はアリール基又は反応性の有機官能基、例えばビニル、(メタ)アクリル、カルビノール等を含有している、アルコキシシラン又はその加水分解生成物及び縮合生成物と反応させている。技術水準で粒子官能化のために使用されているシランは、典型的にはジ−又はトリアルコキシシランである。
【0008】
これらのシランが表面官能化のために使用される場合には、水の存在下で、得られるシラノールの加水分解及び縮合の後に、この粒子の周りにシロキサン−外被が形成される。Macromol. Chem. Phys.2003,204,375-383中には、SiO−粒子の周りのこのようなシロキサン−外被の形成が記載されている。この場合に、形成されたシロキサン−外被がその表面上になお多数のSiOH−官能基を有していることが問題になりうる。このようなSiOH−官能性粒子の安定性は、この製造及び貯蔵の条件下では、結合剤の存在下でも屡々限定的にのみ得られる。
【0009】
刊行物EP0492376A及びDE102004022406Aは、その表面にアルコキシシリル−及びシラノール基を有さず、結果的に低い凝集傾向を有する、コア−シェル−粒子の製造を教示している。加えて、第1工程で、種々のシラン及びシロキサンの共縮合(この際、シラン又はシロキサンの少なくとも1種はメタクリレート基を有する)によってシロキサン粒子を生じさせ、この上に引続く工程でメチルメタクリレートとの反応によって、ポリメチルメタクリレート−シェルをグラフトさせている。得られた粒子は、有機ポリマー、例えばポリメチルメタクリレート及びPVC中で優れた融和性を示している。更にこのシロキサン−グラフトポリマーは、それらがグラフトされたシェルの好適な組成及び厚さの場合には再分散可能である利点を有している。しかしながらこれらは、その製造時に比較的経費がかかり、このことが高すぎる製造コストをもたらす欠点を有している。
【0010】
その広い使用可能性に基づき、例えばEP0768351、EP0832947、EP0872500又はDE10247359中に記載されている粒子強化されたラッカーは、特別重要なタイプの複合材料である。この場合に、強化性の充填物質として、ラッカーマトリックスとの充分な相容性を有する、表面変性された粒子が使用されている。表面変性された粒子の導入によって、殊にラッカーの耐引掻き性を著しく上昇させることができる。
【0011】
いずれにせよこの粒子の取り扱いは、殊にそれが高濃度の分散液の形で存在する場合には、その記載の限られた安定性に基づき、極めて困難である。更に、乾燥の過程で生じる凝集物は、再び当初の粒子寸法、即ち1次粒子の寸法で出現することができないので、この粒子の単離は不可能である。
【0012】
更に、この粒子強化されたラッカーの機械的硬さ−及び殊に耐引掻き性−は、多くの用途のためにはなお充分ではない。
【0013】
粒子の添加により耐引掻き性を更に改良する努力がなされる特別重要なタイプのラッカーの場合には、ヒドロキシ官能性プレポリマーからの、殊にヒドロキシ官能性ポリアクリレート及び/又はポリエステル(これらはラッカー硬化時に、イソシアネート官能性硬化剤(ポリウレタンラッカー)及び/又はメラミン硬化剤(メラミンラッカー)と反応する)からのラッカー樹脂が使用される。ポリウレタンラッカーは、特別良好な特性によって優れている。特にポリウレタンラッカーは、優れた耐化学薬品性を有し、メラミンラッカーは、おおむね良好な耐引掻き性を有する。
【0014】
典型的にこのタイプのラッカーは、特別高価でかつ要求の多い用途分野で使用され、例えば、自動車−及び乗り物工業におけるOEM−塗装用のクリアラッカー又は上塗りラッカーとして使用される。同様に、自動車補修用の大抵の上塗りラッカーもこのような系から成っている。これらのラッカーの層厚は、典型的には20〜50μmの範囲内にある。
【0015】
ポリウレタン−ラッカー系では、一般にいわゆる2K−系と1K−系との間には違いがある。前者は2成分から成り、その一方は本質的にイソシアネート硬化剤から成り、イソシアネート反応性基を有するラッカー樹脂が第2成分中に含有されている。この場合に、双方の成分は別々に貯蔵され、かつ搬送されるべきであり、加工の直前に初めて混合されるべきである。それというのも、完成された混合物は極めて限られた可使時間を有するのみであるからである。従って、1成分のみから成っていて、その中にラッカー樹脂と共に保護されたイソシアネート基を有する硬化剤が存在する、いわゆる1K−系が、屡々より好適である。1K−ラッカーは、熱的に硬化され、この際にイソシアネート単位の保護基が分離され、この保護解除されたイソシアネートが引き続きラッカー樹脂と反応することができる。このような1K−ラッカーの典型的な焼き付け温度は、120〜160℃である。メラミンラッカーは大抵は1K−ラッカーであり、焼き付け温度は典型的には、匹敵する温度範囲内にある。
【0016】
殊に高価なラッカーでは、更なる特性改善が所望される。このことは、殊に乗り物−上塗り塗装に当て嵌まる。特に慣用の自動車ラッカーの達成可能な耐引掻き性はなお充分ではないので、例えばその洗浄経路中で、洗浄水中の粒子によって、ラッカーが著しく引掻かれる。長い間にこれによって、ラッカーの光沢が不利に損傷される。ここに、それを用いて良好な耐引掻き性を達成することのできる処方物が所望されるはずである。
【0017】
この課題を解決するための特別有利な1方法は、その表面上に、ラッカー樹脂又は硬化剤に対して反応性である有機官能基を有する粒子の使用である。更に、粒子表面上のこの有機官能基は、粒子を遮蔽し、こうして粒子とラッカーマトリックスとの融和性の改良をもたらす。
【0018】
好適な有機官能基を有するこのような粒子は、原則的には既に公知である。これらは、被覆中でのその使用と同様に、例えばEP0768351、EP0832947、EP0872500又はDE10247359中に記載されている。
【0019】
実際にこのような粒子の取り込みによって、ラッカーの耐引掻き性を著しく上昇させることができる。いずれにせよ技術水準に記載されている全ての方法では、この粒子の使用時にもなお最適な結果は得られていない。殊に相応する被覆は、大規模塗装におけるこのようなラッカーの使用が既にコストの理由だけからも実現困難である程度に高い粒子含有率を有している。
【0020】
WO01/09231中には、ラッカーの表面セグメント中に、バルクセグメント中よりも多くの粒子が存在することを特徴としている粒子含有ラッカー系が記載されている。この粒子分布の利点は、耐引掻き性の明確な改良のために必要となる比較的低い粒子濃度である。この場合には、粒子表面上に、界面活性剤としての珪素樹脂を施与する方法によって、ラッカー表面に対する粒子の所望の高い親和性が達成されている。いずれにせよ、粒子の珪素樹脂変性のみならず、そのために必要である珪素樹脂の製造自体も、工業的に経費がかかる事実は、この方法の欠点となっている。最後のことは、殊に良好な耐引掻き性の達成のために、珪素樹脂が有機官能基、例えばカルビノール官能基を有し、それを介して相応する変性された粒子がラッカー硬化時に化学的にラッカー中に取り込まれうることが必要であるので、問題である。このように官能化された珪素樹脂は市販されていないか又は非常に限られて提供可能であるだけである。しかしながら、特にこの系における全般的に可能な有機官能基の選択も相対的に限られている。従ってこの系においても、技術水準に相応する全ての他の系におけると同様に、なお最適な結果は達成されていない。
【0021】
従って本発明の課題は、技術水準のこれらの欠点を克服する、複合材料を得るための組成物を開発することであった。
【0022】
本発明の目的物は、
(a)一般式[1]:
≡Si−L−P(O)(OR [1]
の構造要素少なくとも1個を有している粒子(P) 0.02〜200質量部、
(b)結合剤(B) 100質量部、
(c)結合剤(B)に対して反応性である硬化剤(H ) 0〜100質量部 並びに
(d)溶剤又は溶剤混合物 0〜1000質量部
を含有している組成物(Z)であり、
この際、Lは、場合によりカルビノール−、アミノ−、ハロゲン−、エポキシ−、ホスホネート−、チオール−、(メタ)アクリレート−、カルバメート−基で置換された炭素原子数1〜12を有する2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、この炭素鎖は、隣り合っていない酸素原子、硫黄原子又はNR−基で中断されていてよく、
は、水素、金属カチオン、式−N(Rのアンモニウムカチオン、式−P(Rのホスホニウムカチオン又は場合によりカルビノール−、アミノ−、ハロゲン−、エポキシ−、ホスホネート−、チオール−、(メタ)アクリレート−、カルバメート−、ウレイド−基で置換された、炭素原子数1〜12を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、この炭素鎖は、隣り合っていない酸素原子、硫黄原子又はNR−基で中断されていてよく、
は、炭素原子数1〜8を有する炭化水素基を表す。
【0023】
この組成物(Z)から製造可能である複合材料(K)も、同様に本発明の目的物である。
【0024】
本発明の1実施形で粒子(P)は、一般式[1]の官能基と並んで付加的になお、結合剤(B)又は硬化剤(H)に対して反応性である有機官能性基(F)少なくとも1個を有している。
【0025】
本発明の有利な1実施形で、複合材料(K)は、
(a)一般式[1]:
≡Si−L−P(O)(OR [1]
の構造要素少なくとも1個を有する粒子(P) 0.02〜60質量部、
(b)ヒドロキシ基−官能性ラッカー樹脂(B) 100質量部、
(c)遊離のイソシアネート基及び熱処理時に保護基の分離下にイソシアネート官能基を遊離する保護されたイソシアネート基から選択される、イソシアネート基を含有している硬化剤(H) 1〜100質量部、
(d)溶剤又は溶剤混合物 0〜1000質量部
を含有している、被覆組成物(Z)から製造可能であるラッカー系である。
【0026】
本発明は、組成物(Z)から製造される複合材料(K)が優れた機械特性を有することの発見に基づいている。更にこの組成物(Z)の製造は、組成物(Z)中に含有されている粒子(P)の高い安定性に基づき、技術水準の方法に比べて明らかに容易にされている。一般式[1]の構造要素の存在に基づき、粒子(P)は極めて低い凝集−又は凝結傾向を有し、このことが高い固体含分を有する分散液中で粒子(P)を処理することを可能にする。粒子変性の方式に依存して、部分的に、粒子(P)を固体として単離させ、組成物(Z)中に再分散させることが可能である。
【0027】
結合剤(B)、硬化剤(H)及び粒子(P)−これらが、結合剤又は硬化剤に対して反応性である有機官能基(F)を含有している場合に−は、複合材料(K)までの組成物(Z)の硬化時に、3次元的に架橋されたポリマーネットワークを形成することのできる程度に充分多くの反応性基を有していることが好ましい。
【0028】
Lは、主に炭素原子数1〜8を有する2価のアルキル基又は炭素原子数1〜10を有するアリール−又はヘテロアリール基を表し;Lはメチレン−又はプロピレン基であることが特に好ましい。Rは、炭素原子数1〜6を有するアルキル基、殊にメチル−又はエチル基であることが好ましい。Rは、アルキル基、殊にメチル−、エチル−又はブチル基を表すことが好ましい。
【0029】
組成物(Z)は、粒子(P)少なくとも0.05質量部、特に好ましくは0.1質量部を含有することが好ましい。この発明の全く有利な実施形で組成物(Z)は、粒子(P)少なくとも0.3質量部、殊に少なくとも0.5質量部を含有する。
【0030】
組成物(Z)は、好ましくは粒子(P)最大50質量部、特別好ましくは最大25質量部を含有する。この発明の全く特別有利な実施形で組成物(Z)は、粒子(P)最大10質量部、殊に最大5質量部を含有する。
【0031】
粒子(P)は、好ましくは0.1〜1000m/g、特別好ましくは10〜500m/gの比表面積(DIN EN ISO 9277/DIN 66132によるBET−法に従い測定)を有する。1次粒子の平均寸法は、好ましくは10μmより小さい、特別好ましくは1000nmより小さく、この際、この1次粒子は、凝結体(DIN 53206による定義)及び凝集体(DIN 53206による定義)として存在することができ、これらは、外部剪断負荷(例えば測定条件により限定)に依存して、1〜1000μmの寸法を有することができ、平均粒度は、透過電子顕微鏡検査(TEM)を用いて、又は等価水力直径は、光子相関分光法を用いて測定される。
【0032】
この発明の特別な1実施形では、WO2004/089961中に記載されているが付加的に一般式[1]の構造要素を有しているような粒子が使用される。
【0033】
この粒子(P)中で、一般式[1]の構造要素は、イオン性又はファン−デル−ワールス−相互作用を介して共有結合していることができる。好ましくは、一般式[1]の構造要素は共有結合している。
【0034】
この発明の好ましい1実施形で、粒子(P)は、金属−OH、金属−O−金属、Si−OH、Si−O−Si、Si−O−金属、Si−X、金属−X、金属−OR、Si−ORから選択される官能基を有する粒子(P1)とシラン(S)又は少なくとも1個の一般式[1]の構造要素並びに少なくとも1個の反応性シリル基 ≡Si−Y(これは粒子(P1)の表面に対して反応性である)を有しているその加水分解−、アルコール分解−及び縮合生成物との反応により変換され、この際、Rは置換又は非置換のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、Yはハロゲン、ヒドロキシ−又はアルコキシ基、カルボキシレート又はエノレートを表す。
は、炭素原子数1〜10、殊に1〜6を有するアルキル基であるのが有利である。メチル、エチル、n−プロピル及びi−プロピル基が特別好ましい。Xは、弗素又は塩素が有利である。基Yは、好ましくはハロゲン、ヒドロキシ−又はアルコキシ基である。基Yは、塩素原子、ヒドロキシ−、エトキシ−又はメトキシ基を表すことが特別好ましい。
【0035】
粒子(P)の製造のために、金属−OH、Si−OH、Si−X、金属−X、金属−OR、Si−ORから選択される官能基を有する粒子(P1)が使用される場合には、シラン(S)の結合は、加水分解及び/又は縮合によって行われる。粒子(P1)中にもっぱら金属−O−金属−、金属−O−Si又はSi−O−Si−官能基が存在する場合には、シラン(S)の共有結合を平衡化反応によって行なうことができる。処置法並びに平衡化反応のために必要な触媒は、当業者にとっては周知であり、文献中に多様に記載されている。
【0036】
選択的に、一般式[1]の構造要素の結合を粒子合成の間に行わせることもできる。
【0037】
この発明の好ましい1実施形では、粒子(P1)の変性のために使用されるシラン(S)は、一般式[2]の構造を有する:
(RO)3−aSi−(CR−P(O)(OR [2]
[式中、aは、0、1又は2の値を表し、nは、1、2又は3の値を表し、
は、水素、炭素原子数1〜6を有する置換又は非置換の脂肪族又は芳香族炭化水素を表し、R及びRは、Rと同じものを表す]。
【0038】
この場合に、nは好ましくは1又は3の値、特別好ましくは1の値である。aは、有利に0又は2の値を表し、特別好ましくは、aは2に等しい。Rは好ましくはメチル又はエチル基を、Rは好ましくは水素を、かつRは好ましくはメチル−又はエチル基を表す。
【0039】
この場合に、粒子(P1)の変性のために使用されるシラン(S)又はその加水分解−又は縮合生成物を、1質量%(粒子(P1)に対して)を上回る、好ましくは5質量%を上回る、特別好ましくは8質量%を上回る量で使用することが有利である。
【0040】
粒子(P1)から粒子(P)を製造する場合に、シラン(S)又はその加水分解−及び縮合生成物と並んで付加的に、他のシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は他の化合物(L)を使用することができる。これらシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は他の化合物(L)は、粒子(P)の表面の官能基に対して反応性であることが好都合である。この場合に、シラン(S1)及びシロキサン(S3)は、シラノール基又は加水分解可能なシリル官能基を有し、この際、後者が好ましい。この場合に、シラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)は、結合剤(B)又は硬化剤(H)に対して反応性である有機官能基(F)を有することができるが、有機官能基を有しないシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)を使用することもできる。この場合には、シラン及びシロキサン(S)を、シラン(S1)、シラザン(S2)又はシロキサン(S3)との混合物として使用することができる。更に、粒子を、種々異なるタイプのシランを用いて順次に官能化することもできる。
【0041】
化合物(L)としては、例えば金属アルコレート、例えばチタン(IV)イソプロパノレート又はアルミニウム(III)ブタノレート、保護コロイド、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体又はビニルピロリドン含有ポリマー並びに乳化剤、例えばエトキシル化されたアルコール及びフェノール(アルキル基C〜C18、EO−度3〜100)、アルキルスルフェート(C〜C18)のアルカリ金属−及びアンモニウム塩、硫酸−並びにリン酸エステル及びアルキルスルホネートが好適である。スルホコハク酸エステル並びにアルカリアルキルスルフェート並びにポリビニルアルコールが特別好ましい。複数の保護コロイド及び/又は乳化剤を混合物として使用することもできる。
【0042】
シラン(S)及び(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)及び化合物(L)から構成される全量に対する、シラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)及び化合物(L)の質量割合は、少なくとも1質量%、特別好ましくは少なくとも5質量%であることが好ましい。本発明のもう一つの特別好ましい実施形では、化合物(S1)、(S2)、(S3)及び(L)の使用は完全に放棄される。
【0043】
この場合には、シラン(S)と一般式[3]:
(RO)4−a−b(Z)Si(R [3]
[式中、Zはハロゲン原子、偽ハロゲン基、Si−N−結合したアミノ基、アミド基、オキシム基、アミノキシ基又はアシロキシ基を表し、
aは、0、1、2又は3であり、bは、0、1、2又は3であり、
は、Rと同じものを表し、
は炭素原子数1〜12を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、この炭素鎖は隣り合っていない酸素原子、硫黄原子又はNR−基によって中断されていてもよく、かつ場合によっては、なお結合剤(B)又は硬化剤(H)に対して反応性である有機官能基(F)1個を有しており、かつa+bは、4より小さいか又は4に等しい]のシラン(S1)又はその加水分解−又は縮合生成物とからの混合物が特別好ましい。
【0044】
この場合に、aは好ましくは0、1又は2を表し、bは好ましくは0又は1を表す。Rは、メチル−又はエチル基が有利である。Zは塩素原子が有利である。Rは有利にはカルビノール、アミン、(メタ)アクリレート、エポキシ、チオール、イソシアネート、ウレイド及び/又はカルバメートタイプの官能基を含有している基である。
【0045】
シラザン(S2)又はシロキサン(S3)としては、ヘキサメチレンジシラザン又はヘキサメチルジシロキサン又は線状シロキサン(これらは側鎖−又は末端位に有機官能基を有している)が特別好ましく使用される。
【0046】
結合剤(B)又は硬化剤(H)に対して反応性である有機官能性基(F)を有するシラン(S1)が特別好ましい。このようなシラン(S1)の例は、アミノ官能性シラン、例えばアミノプロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン、フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、不飽和官能基を有するシラン、例えばビニルトリメトキシシラン、メタクリレートプロピルトリメトキシシラン、メタクリレートメチルトリメトキシシラン、エポキシ官能性シラン、例えばグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプト官能性シラン、例えばメルカプトプロピルトリメトキシシラン、遮蔽されたNCO−基を有し、熱処理時に保護基の分離下にNCO−官能基を遊離するシラン及び粒子(P1)との反応時にカルビノール−又はアミノ官能基を遊離するシランである。
【0047】
粒子(P1)としては、工業的取り扱い性の理由から、金属−酸素−結合中に共有結合部分を有する酸化物、有利には第3主族の酸化物、例えばホウ素−、アルミニウム−、ガリウム−又はインジウム酸化物、第4主族の酸化物、例えば二酸化珪素、二酸化ゲルマニウム、酸化錫、二酸化錫、酸化鉛、二酸化鉛又は第4副族の酸化物、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウムが好適である。更なる例は、ニッケル−、コバルト−、鉄−、マンガン−、クロム−及びバナジウム酸化物である。
【0048】
更に、酸化された表面を有する金属、ゼオライト(Atlas of Zeolite Framework Types ,5th edition,Ch.Baerlocher,W.M.Meier D.H.Olson,Amsterdam: Elsvier 2001に好適なゼオライトが列挙されている)、ケイ酸塩、アルミン酸塩、アルミノ燐酸塩、チタン酸塩及びアルミニウム層ケイ酸塩(例えばベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト)が好適であり、この際、粒子(P1)は、好ましくは0.1〜1000m/g、特別好ましくは10〜500m/gの比表面積(DIN 66131及び66132によるBET−法に従い測定)を有している。好ましくは10μmより小さい、特別好ましくは1000nmより小さい平均直径を有する粒子(P1)は、凝結体(DIN 53206による定義)及び凝集体(DIN 53206による定義)として存在することができ、これらは外部剪断負荷(例えば測定条件により限定)に依存して、1〜1000μmの大きさを有することができる。この場合に、平均粒径は透過電子顕微鏡検査(TEM)を用いて、又は等価水力直径は光子相関分光法を用いて測定される。
【0049】
本発明の好ましい1実施形では、粒子(P1)として、一般に水性又は有機溶剤中のサブミクロン寸法の相応する酸化物粒子の分散液として存在するコロイド珪素−又は金属酸化物が使用される。この場合には、特に金属アルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウム及び錫の酸化物又は相応する混合酸化物を使用することができる。ケイ酸ゾルが特別好ましい。通常、ケイ酸ゾルは、1〜50質量%の溶液、好ましくは20〜40質量%溶液である。この場合に典型的な溶剤は、水と並んで特にアルコール、殊に炭素原子数1〜6を有するアルコール−屡々イソプロパノールであるが、他の大抵の低分子量アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール及びt−ブタノールでもある。同様に、極性の非プロトン性溶剤、例えばメチルエチルケトン又は芳香族溶剤、例えばトルエン中のオルガノゾルも利用可能である。二酸化珪素粒子(P1)の平均粒度は、一般に1〜100nm、好ましくは5〜50nm、特別好ましくは8〜30nmである。
【0050】
粒子(P)の製造のために好適である、市場で得られるケイ酸ゾルの例は、製品系列LUDOX(R)(Grace Davison)、Snowtex(R)(Nissan Chemical)、Klebosol(R)(Clariant)及びLevasil(R)(H.C.Starck)のケイ酸ゾル、有機溶剤中のケイ酸ゾル、例えばIPA−ST(Nissan Chemical)又はStoeber−法で製造できるようなケイ酸ゾルである。
【0051】
コロイド珪素−又は金属酸化物(P1)から出発して、粒子(P)の製造は種々の方法で行うことができる。しかしながらこれは、シラン(S)又はその加水分解−又は縮合生成物を−場合によっては溶剤中で及び/又は他のシラン(S1)、シラザン(S2)又はシロキサン(S3)との混合物中で−、粒子(P1)又は水性又は有機溶剤中のその溶液に添加することによって行うことが好ましい。この反応は、通常は0〜200℃、好ましくは20〜80℃、特別好ましくは20〜60℃の温度で行われる。反応時間は、典型的には5分〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0052】
選択的に、酸性、塩基性又は重金属含有触媒を添加することもできる。これ等を痕跡量(<1000ppm)で使用することが好ましい。しかしながら、特別な触媒の添加を放棄することは特別有利である。
【0053】
場合によっては、粒子(P1)とシラン(S)との反応のために水の添加が好ましい。
【0054】
コロイド珪素−又は金属酸化物は屡々水性又はアルコール分散液中に存在するので、粒子(P)の製造の間又はその後に、溶剤を他の溶剤又は他の溶剤混合物と交換することが有利であり得る。このことは、例えば当初溶剤の留去によって行うことができ、この際に、新しい溶剤又は溶剤混合物を、1工程又は複数工程で、蒸留の前、間又はその後に初めて添加することができる。この場合に好適な溶剤は、例えば次のものであることができる:水、芳香族又は脂肪族アルコール、この際、脂肪族アルコール、殊に炭素原子数1〜6を有する脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール及びヘキサノールの種々のレギオ異性体)が好ましく、エステル(例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ブチルジグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えばジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、THF)、芳香族溶剤(トルエン、キシレンの種々のレギオ異性体、ソルベントナフサのような混合物)、ラクトン(例えばブチロラクトン等)又はラクタム(例えばN−メチルピロリドン)。この場合に、非プロトン性溶剤又は溶剤混合物(これらは、もっぱら又は少なくとも部分的に非プロトン性溶剤から成っている)が有利である。粒子(P1)から得られる変性された粒子(P)は、慣用の方法、例えば使用溶剤の蒸発除去又は例えばスプレー乾燥機、薄層蒸発器又は円錐乾燥機中での乾燥によって、粉末として単離することができる。
【0055】
選択的に、粒子(P)の単離を放棄することもできる。
【0056】
付加的に、好ましい1方法で、粒子(P)の製造に引き続き、粒子の解凝集のための方法を使用することができ、例えばピンミル又は粉砕分級用の装置、例えばピンミル、ハンマミル、向流ミル、パールミル、ボールミル、インパクトクラッシャミル又は粉砕分級用の装置を使用することができる。
【0057】
本発明のもう一つの好ましい実施形では、粒子(P1)として、一般式[4]:
【化1】

[式中、Rは、OH−官能基、場合によりハロゲン−、ヒドロキシル−、アミノ−、エポキシ−、チオール−、(メタ)アクリル−、カルバメート−、ウレイド−又はNCO−置換された、炭素原子数1〜18を有する炭化水素基を表し、この際、炭素鎖は隣り合っていない酸素−、硫黄−又はNR10−基で中断されていてもよく、
10はRと同じものを表し、
i、j、k、lは0に等しいか又は0より大きい値を表す、但し、i+j+k+lは3に等しいか又は3より大きく、殊に小さくとも10であり、かつ少なくとも1個の基RはOH−官能基を表すことを条件とする]のオルガノポリシロキサンが使用される。
【0058】
一般式[4]のオルガノポリシロキサン(P1)からの粒子(P)の製造は、前記のように行われる。
【0059】
粒子(P1)としては、有機珪素化合物から炎内反応で製造される、熱分解法ケイ酸、例えば四塩化珪素又はメチルジクロロシラン又はヒドロゲントリクロロシラン又はヒドロゲンメチルジクロロシラン又は他のメチルクロロシラン又はアルキルクロロシランから、炭化水素との混合物としても、又は挙げられているような有機珪素化合物及び炭化水素からの任意の揮発可能な又はスプレー可能な混合物から、例えば水素−酸素−火炎中で、又は一酸化炭素−酸素火炎中で製造される、熱分解法ケイ酸が特別好ましい。この場合に、ケイ酸の製造は、選択的に水を添加して又は添加せずに、例えば精製の工程で;好ましくは水の添加なしに行うことができる。
【0060】
熱分解法で製造されたケイ酸又は二酸化珪素は、例えば、Ullmann’s Enzyklopaedie der Technischen Chemie 4.Auflage,Band 21,464頁から公知である。未変性の熱分解法ケイ酸は、DIN EN ISO 9277/DIN 66132により測定される比BET−表面積10m/g〜600m/g、好ましくは50m/g〜400m/gを有する。
【0061】
熱分解法ケイ酸からの粒子(P)の製造は、種々の方法で行うことができる。好ましい1実施形では、乾燥粉末状熱分解法ケイ酸を、直接、微細シラン(S)−場合によっては他のシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は化合物(L)と混合して−と反応させる。
【0062】
熱分解法ケイ酸からの粒子(P)の製造のために好適である方法は公知であり、多様に文献中に記載されている。例えば全体的にWO 2006/01844中に記載されている方法(ここでは好ましく、紛状ケイ酸が官能化される)を、本発明による粒子(P)の製造のために使用することもできる。この場合に、熱分解法ケイ酸を、好ましくは式[2]に相当するシラン(S)及び場合によっては付加的な他のシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は他の化合物(L)と反応させることが好ましい。
【0063】
もう一つの好ましい方法では、熱分解法ケイ酸を、粉末状ではなく、水又は典型的な工業用の溶剤、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、i−プロパノール、ケトン、例えばアセトン、メチル−エチル−ケトン、エーテル、例えばジエチルエーテル、THF、炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、芳香族化合物、例えばトルエン又は他の揮発性溶剤、例えばヘキサメチルジシロキサン又はこれらの混合物中の分散液中で、シラン(S)及び場合によるシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は化合物(L)と反応させる。
【0064】
この方法は、連続的に又は非連続的に実施することができ、1工程又は多工程から構成されることができる。連続的方法が好ましい。変性された熱分解法ケイ酸は、好ましくは次の方法を用いて製造される:ケイ酸を(1)前記の溶剤1種以上中に混入し、(2)シラン(S)及び場合によりシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は化合物(L)を反応させ、かつ(3)溶剤、過剰なシラン及び副生成物を除去する。
【0065】
分散(1)、反応(2)及び乾燥(3)は、好ましくは10容量%を下回る、特に好ましくは2.5容量%を下回る酸素を含有する雰囲気中で実施され、最良の結果は、1容量%を下回る酸素の場合に得られる。
【0066】
混入(1)は、慣用の混合装置、例えばアンカー攪拌機又はビーム攪拌機を用いて行うことができる。場合によってはこの混入を、ディソルバー、ロータ−ステータ−装置を用いる高剪断下に、場合によっては超音波発生器又は粉砕装置、例えばボールミルを用いて剪断スリット中への直接配量添加することにより行うことができる。場合によっては、種々の前記装置を並列に又は順次に使用することができる。
【0067】
シラン(S)及び場合によるシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は化合物(L)とケイ酸との反応(2)のために、これらを純粋な形で又は適当な溶剤中の溶液として、ケイ酸分散液に添加し、均一に混合させる。この場合に、シラン(S)及び場合によるシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は化合物(L)の添加を、分散液の製造のために使用される容器中で又は別の1反応容器中で行うことができる。シランを分散容器中に供給する場合に、このことは、分散に平行して又は分散の終了後に行うことができる。場合によっては、分散媒体中に溶かされたシラン(S)及び場合よるシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は化合物(L)を、直接分散工程に供給することができる。
【0068】
場合によっては、この反応混合物に水を加える。
【0069】
場合によっては、この反応混合物に、酸性触媒、例えばブレンステッド−酸、例えば液状又はガス状のHCl、硫酸、リン酸又は酢酸又は塩基性触媒、例えばブレンステッド−塩基、例えば液状又はガス状のアンモニア、アミン、例えばNEt又はNaOHを加える。
【0070】
この反応工程は、0℃〜200℃、好ましくは10℃〜180℃、特別好ましくは20℃〜150℃の温度で実施される。
【0071】
溶剤、過剰なシラン(S)及び場合よるシラン(S1)、シラザン(S2)、シロキサン(S3)又は化合物(L)及び副産物(3)の除去は、乾燥機を用いて又はスプレー乾燥によって行うことができる。場合によってはこの乾燥工程に、なお反応の完結のための熱処理工程を接続することができる。
【0072】
付加的に、この乾燥に引き続き、ケイ酸の機械的圧縮のための方法を使用することができる:例えばプレス圧延、粉砕装置、例えば輪転粉砕機及びボールミルを用いる方法、スクリュウ又はスクリュウミキサー、スクリュウ圧縮機、練団機による連続的又は不連続的な圧縮又は適当な真空化法による空気−又はガス内容物の吸引による圧縮。
【0073】
もう一つの好ましい1方法では、乾燥に引き続き、ケイ酸の機械的圧縮のための方法、例えば適当な真空化法又はプレス圧延又は双方の方法の組み合わせによる空気−又はガス内容物の吸引による圧縮が使用される。
【0074】
付加的に、特別好ましい方法で、乾燥に引き続き、ケイ酸の解凝集のための方法は、例えばピンミル、ハンマミル、向流ミル、インパクトクラッシャー又は粉砕分級用の装置を使用することができる。
【0075】
粒子(P)を製造するもう一つの好ましい方法では、オルガノシラン(S)と他のシラン(S4)又は化合物(L)と一緒の共加水分解によって、粒子(P)が製造される。この場合には、シラン(S4)として、全ての加水分解可能なシラン並びにヒドロキシシリル基含有シランを使用することができる。同様に、シロキサン又はシラザンを使用することもできる。好適なシラン(S4)の典型的な例は、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン又はトリメチルエトキシシランである。当然、種々のシラン(S4)からの種々の混合物を使用することもできる。この場合に、シラン(S)と並んで、付加的有機官能性を有しないシラン(S4)のみを含有する混合物も、シラン(S)と並んで、付加的官能性を有しないシラン(S4)及び付加的有機官能性を有するシラン(S4)を含有する混合物も使用することができる。共加水分解による粒子(P1)の製造時には、種々のシランを一緒にも順々にも添加することができる。
【0076】
組成物(Z)は、1種以上の種々のタイプの粒子(P)、例えば変性された二酸化珪素並びに変性された酸化アルミニウムを含有することができる。
【0077】
結合剤(B)としては、無機ポリマーも有機ポリマーも使用される。このようなポリマーマトリックス(B)の例は次のものである:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTEF)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエーテルグリコール(PEG)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリアリールエーテルケトン、エポキシド樹脂、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及び珪素樹脂。
【0078】
同様に結合剤(B)として好適であるポリマーは、慣用の、当業者に公知のゾル−ゲル−法で入手される酸化物系物質である。このゾル−ゲル−法では、加水分解可能で縮合可能なシラン及び/又は金属有機試薬が、水を用いて、かつ場合により触媒の存在下に加水分解され、かつ好適な方法で硬化されて、シリケート系又は酸化物系物質にされる。
【0079】
シラン又は金属有機試薬が、架橋に利用されうる有機官能基(例えば、エトキシ−、メタクリル−、アミノ基)を有する場合には、これら変性されたゾル−ゲル−物質を、付加的にその有機部分を介して硬化させることができる。この場合に有機部分の硬化は、−場合により更なる反応性有機成分の添加の後に−特に熱的に又はUV−処理により行うことができる。例えば、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシド樹脂との反応により、かつ場合によってはアミン硬化剤の存在下に入手されているようなゾル−ゲル−物質が、マトリックス(B)として好適である。このような無機−有機ポリマーのもう一つの例は、アミノ官能性アルコキシシランとエポキシド樹脂とから製造できるゾル−ゲル−物質(B)である。有機部分の導入により、例えばゾル−ゲル−膜の弾性を改良することができる。このような無機−有機ポリマーは、例えばThin Solid Films 1999,351,198-203中に記載されている。
【0080】
更に反応性樹脂も、結合剤(B)として使用することができる。この際、反応性樹脂とは、1個以上の反応可能な基を有している化合物であると理解される。ここで反応可能な基の例としては、ヒドロキシ−、アミノ−、イソシアネート−、エポキシド−、メルカプト基、エチレン系不飽和基並びに湿式架橋性のアルコキシシリル基が挙げられる。好適な硬化剤(H)又は開始剤の存在下に、反応性樹脂を、熱処理、化学線及び/又は(大気中の−)湿気によって重合させることができる。この場合に反応性樹脂は、モノマー、オリゴマー及びポリマーの形で存在することができる。慣用の反応性樹脂の例は次のものである:ヒドロキシ官能性樹脂、例えばイソシアネート官能性硬化剤(H)で架橋されうるヒドロキシル基含有ポリアクリレート又はポリエステル;開始剤の添加の後に、熱的に、化学線により又はアミノ官能性硬化剤(H)により硬化されうる、アクリル−並びにメタクリル官能性樹脂;アミン硬化剤(H)と架橋されうるエポキシド樹脂;SiH−官能性硬化剤(H)との反応により架橋されうるビニル官能性シロキサン;重縮合により硬化されうるSiOH−官能性シロキサン。
【0081】
結合剤(B)は、カルビノール−、(メタ)アクリレート−、エポキシ−及びイソシアネート官能性樹脂であることが好都合である。ラッカー系の製造のために、ラッカー樹脂として好ましくは、ヒドロキシル基−含有プレポリマー、特別好ましくはヒドロキシ基含有ポリアクリレート又はポリエステルが使用される。このようなラッカー製造のために好適なヒドロキシル基含有ポリアクリレート及びポリエステルは、当業者に充分に公知であり、関連文献中に多様に記載されている。これらは多くの製造業者により製造され、市販されている。
【0082】
更に結合剤(B)として、種々のマトリックスポリマー、相応するコポリマー並びにモノマー、オリゴマー及びポリマー反応性樹脂の混合物も好適である。
【0083】
硬化剤(H)として、前記の結合剤(B)を得るために典型的に使用される化合物が使用される。好適な硬化剤の例は、アミノ−、エポキシ−、イソシアネート−官能性モノマー、オリゴマー又はポリマーである。
【0084】
この場合に、殊にラッカー系として使用される組成物(Z)は、1−成分(1K)又は2−成分(2K)系であることができる。第1の場合には、硬化剤(H)として、好ましくは保護されたイソシアネート基を有している化合物が使用される。第2の場合には、硬化剤(H)として、好ましくは遊離のイソシアネート基を有する化合物が使用される。1K−ラッカー中でも2K−ラッカー中でも、イソシアネートとして、場合により予めそれぞれの保護基を有している、慣用のジ−及び/又はポリイソシアネートが使用される。この場合には原則的に、文献中に多様に記載されているような全ての慣用のイソシアネートが使用される。慣用のジイソシアネートは例えば次のものである:粗製又は工業用MDIの形であっても、純粋な4,4’−又は2,4’−異性体又はそれらの混合物の形であってもよいジイソシアネートジフェニルメタン(MDI)又はそれらの混合物、その種々のレギオ異性体の形でのトリレンジイソシアネート(TDI)、ジイソシアネートナフタリン(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、過水素化されたMDI(H−MDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサン、1,3−ジイソシアネート−4−メチルシクロヘキサン又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)。ポリイソシアネートの例は、ポリマーMDI(P−NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート並びに前記のジイソシアネートの全てのイソシアヌレート−又はビウレット−三量体である。更に、ブロックされたNCO−基を有する前記イソシアネートの他のオリゴマーも使用することができる。全てのジ−及び/又はポリイソシアネートを、単独で又は混合しても使用することができる。この場合に好ましくは、−比較的UV安定な−脂肪族イソシアネートのイソシアヌレート−及びビウレット−三量体、特別好ましくは、HDI及びIPDIの三量体が使用される。
【0085】
硬化剤(H)として保護されたイソシアネート基を有するイソシアネートが使用される場合には、80〜200℃、特別好ましくは100〜170℃の温度で分離されうる保護基が有利である。保護基としては、2級又は3級のアルコール、例えばイソプロパノール又はt−ブタノール、CH−酸化合物、例えばマロン酸ジエチルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルエステル、オキシム、例えばホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、ブタノキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム又はジエチレングリオキシム、ラクタム、例えカプロラクタム、バレロラクタム、ブチロラクタム、フェノール類、例えばフェノール、o−メチルフェノール、N−アルキルアミド、例えばN−メチルアセタミド、イミド、例えばフタルイミド、2級アミン、例えばジイソプロピルアミン、イミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、ピラゾ−ル、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール及び2,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾールを使用することができる。この場合に、ブタノキシム、3,5−ジメチルピラゾール、カプロラクタム、マロン酸ジエチルエステル、マロン酸ジメチルエステル、アセト酢酸エステル、ジイソプロピルアミン、ピロリドン、1,2,4−トリアゾール、イミダゾール及び2−イソプロピルイミダゾール等の保護基が有利に使用される。特別好ましくは、低い焼き付け温度を可能とする保護基、例えばマロン酸ジエチルエステル、マロン酸ジメチルエステル、ブタノキシム、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾール及び2−イソプロピルイミダゾールが使用される。
【0086】
この組成物(Z)中のラッカ−樹脂(B)のイソシアネート反応性基に対する−場合によりブロックされた−イソシアネート基の割合は、通常は、0.5〜2、好ましくは0.8〜1.5、かつ特別好ましくは1.0〜1.2である。
【0087】
更に硬化剤(H)としては、種々の硬化剤(H)の混合物も好適である。
【0088】
更に組成物(Z)は、慣用の溶剤並びに処方物中に慣用の添加剤及び添加物を含有することができる。ここで、特にレベリング助剤、界面活性物質、付着助剤、遮光剤、例えばUV−吸収剤及び/又はラジカル捕捉剤、チキソトロピー剤並びに他の固形物及び充填物質が挙げられるであろう。組成物(Z)でも複合材料(K)でも、それぞれ望ましい特性像を得るためには、このような添加物が好ましい。
【0089】
複合材料(K)の製造は、有利には2工程法で行なわれる。第1工程で、粒子(P)、結合剤(B)及び場合による硬化剤(H)及び更なる添加剤及び添加物の混合によって、組成物(Z)を製造する。第2工程で、この組成物(Z)は、硬化によって、即ち乾燥、結合剤(B)及び硬化剤(H)の間の反応によって、(大気中−)湿気によって及び/又は熱線又は化学線での処理によって、複合材料(K)に移行される。
【0090】
組成物(Z)の製造のための好ましい1実施形では、結合剤(B)、粒子(P)並びに場合により硬化剤(H)及び場合により更なる添加物を、溶剤中又は溶剤混合物中に溶解させるか又は分散させる。0.1MPaで120℃までの沸点又は沸点範囲を有する溶剤又は溶剤混合物が好ましい。好適な溶剤は、エーテル、例えばTHF、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エステル、例えば酢酸ブチル、芳香族炭化水素、例えばトルエン及びキシレン、線状又は分枝した脂肪族溶剤、例えばペンタン、ヘキサン、ドデカン並びにジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、メトキシプロピルアセテート、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン及び水である。更に組成物(Z)中に粒子(P)を分散させるために、分散のために慣用の添加剤及び添加物を使用することができる。ここに、ブレンステッド−酸、例えば塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、メチルスルホン酸、ブレンステッド−塩基、例えばトリエチルアミン及びエチルジイソプロピルアミンを挙げることができる。更に、他の添加物として通常使用される全ての乳化剤及び/又は保護コロイドを使用することができる。保護コロイドの例は、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体又はビニルピロリドン含有ポリマーである。慣用の乳化剤は、例えばエトキシル化されたアルコール及びフェノール(アルキル基C〜C18、EO−度3〜100)、アルキルスルフェート(C〜C)、硫酸−並びにリン酸エステル及びアルキルスルホネートのアルカリ金属−及びアンモニウム塩である。
【0091】
スルホコハク酸エステル並びにアルカリアルキルスルフェート並びにポリビニルアルコールが特別好ましい。複数の保護コロイド及び/又は乳化剤も混合物として使用することができる。粒子(P)の分散のために添加物が不必要であることは好都合である。
【0092】
組成物(Z)中の粒子(P)の分散のために、粒子の均質混合をパールミル、超音波処理又は他の慣用の撹拌装置を用いて実施することは有利でありうる。
【0093】
選択的に、複合材料(K)と同様に、粒子(P)、結合剤(B)及び場合による硬化剤(H)及び更なる添加物から出発して、溶融−又は押出法で、組成物(Z)を製造することもできる。
【0094】
選択的に、粒子(P1)を、結合剤(B)中又は結合剤(B)、硬化剤(H)及び場合による更なる添加物の混合物中で変性させる方法で、組成物(Z)を製造することもできる。そのために、粒子(P1)を結合剤(B)中に分散させ、引き続きシラン(S)と反応させて、粒子(P)にする。
【0095】
好ましい1実施法では、粒子(P)を混合過程の間に粉末又は好適な溶剤中の分散液として添加する方法で、組成物(Z)が製造される。それと並んでなお、粒子(P)及び組成物(Z)の成分1種以上から、差し当たり、粒子濃度>15質量%、好ましくは>25質量%、特別好ましくは>30質量%を有するマスターバッチを製造する、もう一つの方法が有利である。次いで、組成物(Z)の製造時に、このマスターバッチを残りの成分と混合させる。このマスターバッチの製造時に粒子分散液から出発する場合には、この粒子分散液の溶剤をマスターバッチの製造の過程で、例えば蒸留工程により除去するか又は他の溶剤又は溶剤混合物で交換する場合が有利であり得る。
【0096】
組成物(Z)が水性又は有機溶剤を含有する場合には、この組成物(Z)の製造の後に、場合により相応する溶剤を除去する。この場合に、溶剤の除去を蒸留により行うのが好ましい。選択的に、溶剤を組成物(Z)中に残留させ、複合材料(K)の製造の過程で乾燥により除去することもできる。
【0097】
複合材料(K)の製造のために、組成物(Z)を基材上にナイフ塗布するのが有利である。更なる方法は、浸漬−、噴霧−、流し込み−及び押出法である。好適な基材は、特にガラス、金属、木材、珪素−ウエファ及びプラスチック、例えばポリカーボネート、ポリエチレンン、ポリプロピレン、ポリスチレン及びPTFEである。
【0098】
組成物(Z)が反応性樹脂(B)を含有する場合には、硬化剤(H)又は開始剤の添加の後に、化学線又は熱エネルギーによって硬化を行うことが好ましい。この場合の硬化条件は、粒子不含の組成物のそれに相当する。
【0099】
粒子(P)が結合剤(B)又は硬化剤(H)に対して反応性である有機官能性基を有する場合には、この粒子(P)を結合剤(B)又は硬化剤に共有結合させることができる。
【0100】
粒子(P)は複合材料(K)中で分布勾配を有するか又は均一に分配されて存在することができる。この発明の特別な1実施形では、境界面被覆/空気のところの粒子(P)の濃度は、バルクセグメント中の及び境界面被覆/基材のところのそれよりも高い。ここで、境界面被覆/空気とは、最大150nmの厚さを有する境界面隣接の層であると理解される。選択的に、境界面被覆/基材のところの粒子(P)の濃度が、バルクセグメント中の、及び境界面被覆/空気のところのそれよりも高いこともありうる。ここで、境界面被覆/基材とは、最大150nmの厚さを有する境界面隣接の層であると理解される。本発明のもう一つの好ましい実施形では、粒子(P)の濃度は境界面被覆/空気のところでも、境界面被覆/基材のところでも、バルクセグメント中のそれよりも高い。
【0101】
選択されるマトリックス系に依存して、粒子の均一分布も不均一分布も、例えば機械的安定性、耐化学薬品性、耐腐食性及び付着性を高めることができる。
組成物(Z)は、それから製造された複合材料(K)の優れた化学的、熱的及び機械的特性に基づき、殊に接着剤、パッキン剤として並びにシーリング−、流し込み−及び歯科用組成物として使用することができる。
【0102】
組成物(Z)から製造された複合材料(K)は、耐引掻き性のクリアー又は上塗りラッカーとして、殊に乗り物工業でOEM−及び補修ラッカーとして特別有利に役立つ。組成物(Z)の施与は、任意の方法、例えば、浸漬−、スプレー及びフローコーティング法によって行うことができる。ウエット−イン−ウエット−法でベースコート上に組成物(Z)を施与することも可能である。硬化は、通常、その都度の必要条件下で(2Kラッカーは典型的に0〜100℃、好ましくは20〜80℃で、1Kラッカーは100〜200℃、好ましくは120〜160℃で)加熱することによって行われる。
【0103】
当然、好適な触媒の添加によって、組成物(Z)の硬化を促進させることができる。この場合には触媒として、殊に酸性、塩基性の並びに重金属を含有している化合物も好適である。
【0104】
前記式の全ての前記記号は、その意味をそれぞれ相互に無関係に有している。全ての式中で、珪素原子は4価である。
【0105】
別に記載のない限り、全ての量−及び百分率の値は質量に関連しており、全ての圧力は0.10MPa(絶対)であり、全ての温度は20℃である。
【0106】
例1:水性ケイ酸ゾルからのホスフェート−官能性粒子の合成
メトキシプロピルアセテート40ml中のジエチルホスホネートメチル−ジメチルメトキシシラン1.96gの溶液を、強い撹拌下に10分かかって、水性ケイ酸ゾル(Firma GRACE DAVISONのLUDOX(R)AS 40、24nm、40質量%)14.0gに滴加し、この混合物を60℃に4時間加熱した。引続き、生じた乳状エマルジヨンを真空中で、透明なケイ酸ゾルが得られるまで濃縮させた。変性されたこのケイ酸ゾルの、動的光散乱(Firma MalvernのZetasizer Nano)を用いて測定された平均粒子寸法は32nmであった。溶剤の留去の後に、無色の固体7.16gが得られ、これは、撹拌導入によりイソプロパノール中に再分散させることができた。イソプロパノール中のこのケイ酸ゾルの平均粒子寸法は、44nmであった。
【0107】
例2:有機ケイ酸ゾルからのホスフェート−官能性粒子の合成
イソプロパノール中のケイ酸ゾル(Firma NISSAN CHEMICALのIPA−ST、12nm、30質量%)480g及びジエチルホスホネートメチル−ジメチルメトキシシラン48.0gから成っている混合物を、60℃に6時間加熱した。変性されたこのケイ酸ゾルの、動的光散乱(Firma MalvernのZetasizer Nano)を用いて測定された平均粒子寸法は13nmであった。溶剤の留去の後に、無色の固体191gが得られ、これは撹拌導入によりアセトン中にもイソプロパノール中にも再分散させることができた。イソプロパノール中のこのケイ酸ゾルの平均粒子寸法は、14.5nmであった。
【0108】
例3:保護されたイソシアネート官能性を有するホスホネート−官能性粒子の合成
イソプロパノール中のケイ酸ゾル(Firma NISSAN CHEMICALのIPA−ST、12nm、30質量%)48.0g、ジエチルホスホネートメチル−ジメチルメトキシシラン4.32g並びに保護されたイソシアネートシラン[5]0.48から成っている混合物を、60℃に6時間加熱した。
【0109】
【化2】

【0110】
この変性されたケイ酸ゾルの、動的光散乱(Firma MALVERNのZetasizer Nano)を用いて測定された平均粒子寸法は12nmであった。溶剤の留去の後に、無色の固体184gが得られ、これは、撹拌導入によりアセトン中にもイソプロパノール中にも再分散させることができた。イソプロパノール中のこのケイ酸ゾルの平均粒子寸法は、23nmであった。
【0111】
例4:粒子強化されたエポキシド樹脂の製造
例2中に記載されている粉状粒子7.48gを、アセトン30ml中に分散させた。引き続き、この透明なケイ酸ゾルを、アセトン100ml中のエポキシド樹脂D.E.R.332(Firma DOW CHEMICAL)30.0g及び4−アミノフェニルスルホン8.00gの溶液に滴加した。減圧下での溶剤の留去の後に、低粘度の混合物をアルミニウムシャーレ中に注ぎ入れ、190℃で30分及び240℃で3時間硬化させた。厚さ6mmを有する透明な固体が得られた。電子顕微鏡写真は、使用された粒子が複合材料中に単離されて存在することを示していた。
【0112】
例5:粒子含有1K−PU−被覆処方物の製造
被覆処方物の製造のために、52質量%の固体含有率及び156のOHZを有するアクリレートベースのラッカーポリオール(BASF AGのParocryl(R)54.4)を、Bayer AGのDesmodur(R)BL 3175 SN(ブタノキシム−ブロックされたポリイソシアネート、75質量%のFG及び11.1%のブロックされたNCO−含有率を有する)と混合させる。更に、ジブチル錫ジラウレート(酢酸ブチル中1%)1質量%及びTEGO AGのTEGO ADDID(R)100(ポリジメチルシロキサンをベースとするレベリング助剤;酢酸ブチル中の10%溶液)1質量%を、並びに例1〜3の変性されたケイ酸ゾルを添加混合すると、これにより、約60質量%の固体含有率を有する被覆処方物が得られた。この場合に使用されたそれぞれの成分の量が第1表中に挙げられている。始めになお僅かに濁っている混合物を、室温で24時間撹拌すると、この際に澄明な被覆処方物(混合物2−5)が得られる。
【0113】
【表1】

【0114】
* 本発明によらない
** 例1〜3の粉末として単離された粒子がアセトン中に予め分散された。
【0115】
例6:粒子含有2K−PU−被覆処方物の製造
被覆処方物の製造のために、65質量%の固体含有率及び180のOHZを有するアクリレートベースのラッカーポリオール(BASF AGのParocryl(R)49.5)を、酢酸ブチル20質量%で希釈し、例2又は3の変性されたケイ酸ゾルと混合させ、室温で24時間撹拌する。硬化剤成分Fa.BASE CoatingsのBasonat 100(イソシアヌレート化されたヘキサメチレンジイソシアネートをベースとする脂肪族ポリイソシアネート、NCO−含有率22質量%)及びTEGO AGのADDID(R)100(ポリジメチルシロキサンをベースとするレベリング助剤;酢酸ブチル中の10%溶液)1質量%の添加の後に、この混合物を更に5時間撹拌すると、固体含有率約50質量%を有する澄明な被覆処方物(混合物7−10)が得られる。
【0116】
この場合に使用された、それぞれの成分の量が第2表中に挙げられている。
【0117】
【表2】

【0118】
* 本発明によらない
** 例1〜3の粉末として単離された粒子がアセトン中に予め分散された。
【0119】
例7:例5及び6の混合物からの塗膜の製造及び評価
例5及び6からの被覆組成物を、それぞれ、フィルムアプリケーター Fa.Erichenの スリット幅120μmのドクターを有するCoatmaster(R)509 MCを用いて、ガラスプレート上にドクター塗布する。引き続き、得られた被覆膜を、回転空気箱中、70℃で30分間、引き続き150℃で30分間乾燥させる。例5及び6の混合物1−10から、光学的に申し分のない平坦な被覆が得られる。この被覆の光沢は、Fa.Bykの光沢測定装置Micro gloss 20°を用いて測定され、全てのラッカーで光沢単位は160〜170である。
【0120】
こうして得られた硬化された塗膜の耐引掻き性を、Peter−Dahnによる摩耗試験機を用いて測定する。このために、45×45mmの面積を有する摩耗フリースScotch Brite(R)2297に500gの重量をかける。これを用いて塗板を、合計50ストロークで引掻いた。この引掻き試験の開始前にも終了後にも、それぞれの被覆の光沢を、Fa.Bykの光沢試験装置Micro gloss 20°を用いて測定した。それぞれの被覆の耐引掻き性の尺度として、当初値と比較した光沢損失を測定した:
【表3】

【0121】
*本発明によらない。
【0122】
結果は、粒子(P)の小含分で既に、相応する被覆の耐引掻き性の明白な上昇をもたらすことを示している。更に、結合剤(B)に対して反応性である官能基(F)を有する粒子(P)を含有しているラッカー(混合物5〜10からの塗板)の耐引掻き性の上昇が観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式[1]:
≡Si−L−P(O)(OR [1]
[式中、Lは、場合によりカルビノール−、アミノ−、ハロゲン−、エポキシ−、ホスホネート−、チオール−、(メタ)アクリレート−、ウレイド−、カルバメート−基で置換された、炭素原子数1〜12を有する2価の脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、この炭素鎖は、隣り合っていない酸素原子、硫黄原子又はNR−基で中断されていてよく、
は、水素、金属カチオン、式−N(Rのアンモニウムカチオン、式−P(Rのホスホニウムカチオン又は場合によりカルビノール−、アミノ−、ハロゲン−、エポキシ−、ホスホネート−、チオール−、(メタ)アクリレート−、カルバメート−、ウレイド−基で置換された、炭素原子数1〜12を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、この炭素鎖は、隣り合っていない酸素原子、硫黄原子又はNR−基で中断されていてよく、かつ
は、炭素原子数1〜8を有する炭化水素基を表す]の構造要素少なくとも1個を有している粒子(P) 0.02〜200質量部、
(b)結合剤(B) 100質量部、
(c)結合剤(B)に対して反応性である硬化剤(H) 0〜100質量部並びに
(d)溶剤又は溶剤混合物 0〜1000質量部
を含有している組成物(Z)。
【請求項2】
粒子(P)は、一般式[1]の官能基と並んで付加的になお、結合剤(B)又は硬化剤(H)に対して反応性である有機官能性基(F)少なくとも1個を有している、請求項1に記載の組成物(Z)。
【請求項3】
式中のLはメチレン基又はプロピレン基である、請求項1又は2に記載の組成物(Z)。
【請求項4】
式中のRは炭素原子数1〜6を有するアルキル基である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物(Z)。
【請求項5】
粒子(P)は、DIN EN ISO 9277/DIN 66132によるBET−法に従って測定された比表面積10〜500m/gを有している、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物(Z)。
【請求項6】
請求項1から5に記載の組成物(Z)から製造可能である、複合材料(K)。
【請求項7】
(a)一般式[1]:
≡Si−L−P(O)(OR [1]
の構造要素少なくとも1個を有している粒子(P) 0.02〜60質量部、
(b)ヒドロキシル基−官能性ラッカー樹脂(B) 100質量部、
(c)遊離のイソシアネート基及び熱処理時に保護基の分離下にイソシアネート官能基を遊離する、保護されたイソシアネート基から選択される、イソシアネート基を含有しているラッカー硬化剤(H) 1〜100質量部、
(d)溶剤又は溶剤混合物 0〜1000質量部
を含有している被覆組成物(Z)から製造可能であるラッカー系である、請求項6に記載の複合材料(K)。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の組成物(Z)を、接着剤又はパッキン剤として、又はシーリング−、流し込み−又は歯科用組成物又はラッカーとして使用する、組成物(Z)の使用。

【公表番号】特表2010−509416(P2010−509416A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535663(P2009−535663)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061257
【国際公開番号】WO2008/055768
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】