説明

ホットメルト系塗料に対応したロールコーター

【課題】100℃以下で溶融し、且つ長時間外気に触れても硬化しないホットメルト系塗料を扱うとともに、その再循環使用を実現することのできる、新規なホットメルト系塗料に対応したロールコーターの開発を技術課題とした。
【解決手段】塗料Pとして低融点のホットメルト塗料が用いられるものであり、少なくとも塗料タンク72並びに案内樋76及び回収樋77を加温可能な構成とすることにより、塗料Pの溶融状態を維持してその再循環使用が可能となるようにしたことを特徴として成るものであり、ホットメルト系の塗料Pを無駄なく使用することができるため、塗工コストを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質素材の表面化粧に適した塗工装置に関するものであり、特にホットメルト系塗料を再循環使用することのできるロールコーターに係るものである。
【背景技術】
【0002】
木質素材等の表面化粧には、現状、主として無溶剤型UV塗料が使用されているが、ホットメルト系の塗料が注目されてきている。
これはホットメルト系塗料は樹脂の末端にイソシアネート基(NCO基)を有し、塗装後にOH基等と反応して強固な塗幕を形成することができる、加熱しても揮発する成分が僅かであって乾燥工程が不要である、接着効果があるといった理由によるものである。
前記ホットメルト系塗料は100〜150℃程の温度で溶かした溶融状態で使用されるものであるが、水分や温度等の条件が変化した場合に硬化してしまうことがあるため使用条件が厳しく、非常に取り扱いが難しいものである。
そしてこの塗料を扱うことのできる塗工装置は、特別の配慮が必要となるため高価であるという問題があった。具体的には、溶融状態のホットメルト系塗料が外気に長時間触れると温度が低下して硬化してしまうため、タンク及び塗工機構が外気に触れないような密閉構造を採用し、この密閉空間に窒素ガスを注入して外気から遮断して塗料の硬化を防ぐような構造の装置が実用化されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで上記塗工装置として採用されるロールコーターは、コーティングロール1′の表面に薄膜状に付着した塗料Pを被塗装体Aに転移付着させるものであり、コーティングロール1′の端部からこぼれ出た余剰の塗料Pを回収して再循環使用することが行われている(例えば特許文献2参照)。
しかしながらホットメルト系塗料は温度が低下すると硬化してしまうため、その再循環使用が可能な装置は未だ実用化されてはおらず、供給された塗料を使い切るバッチ式での使用が行われるに止まっていた。
とはいえ実用機としては加工コスト等を勘案すると塗料の再循環使用は重要であり、使用環境が厳しいホットメルト系塗料でもその実現が強く要求されてきている。
このようにホットメルト系塗料の再循環使用を可能とするためには、一方で塗料自体の素材の改良、一方で塗工装置の改良が必要となっている。
【特許文献1】特許第2689187号公報
【特許文献2】特許第3141182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、100℃以下で溶融し、且つ長時間外気に触れても硬化しないホットメルト系塗料を扱うとともに、その再循環使用を実現することのできる、新規なホットメルト系塗料に対応したロールコーターの開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーターは、平板状の被塗装体の送入側に、コーティングロールと、このコーティングロールに下側から臨むバックアップロールと、前記コーティングロールに側方から接触するドクターロールとを具え、更に前記コーティングロールの両端部下方に、案内樋を前後方向にそれぞれ傾斜させた状態で配設し、これら案内樋の下傾端に回収樋を配設し、更に前記コーティングロールと前記ドクターロールとの間には、塗料タンクから延びた塗料供給管路に接続された塗料供給ノズルを臨ませ、この塗料供給ノズルから供給された塗料を、前記送入側から送り込まれた被塗装体の上面に塗装するとともに、前記案内樋に流入した塗料を回収樋を通じて塗料供給管路に戻して再循環使用する装置において、前記塗料として低融点のホットメルト塗料が用いられるものであり、少なくとも前記塗料タンク並びに案内樋及び回収樋を加温可能な構成とすることにより、ホットメルト塗料の溶融状態を維持してその再循環使用が可能となるようにしたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、ホットメルト系の塗料を無駄なく使用することができるため、塗工コストを低減することができる。
【0006】
また請求項2記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーターは、前記要件に加え、前記コーティングロールの後段に、リバースロールと、このリバースロールに下側から臨むバックアップゴムロールとを具え、更に前記案内樋をリバースロールの両端部下方にも位置させ、更に前記リバースロールの上方に、塗料タンクから延びた塗料供給管路に接続された塗料供給ノズルを臨ませ、前記塗料供給ノズルから供給された塗料を、前記送入側から送り込まれた被塗装体の上面に塗装し、併せて前記リバースロールを逆回転させながら被塗装体に擦り込むようにして塗工するとともに、前記案内樋に流入した塗料を回収樋を通じて塗料供給管路に戻して再循環使用するように構成したことを特徴として成るものである。
この発明によれば、リバースロールを具えたロールコータにおいても、ホットメルト系の塗料を無駄なく使用することができるため、塗工コストを低減することができる。
【0007】
また請求項3記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーターは、前記要件に加え、前記塗料タンク並びに案内樋及び回収樋を加温可能とする構成は、温水ジャケットであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、塗料タンク、案内樋及び回収樋を均一に加熱することができ、塗料の循環経路において溶融状態を確実に維持することができる。
【0008】
更にまた請求項4記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーターは、前記要件に加え、前記コーティングロール及びドクターロール並びにリバースロールは温水加温されるものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、塗料と接触するローラによる塗料の温度低下を防いでその溶融状態を良好に維持することができる。
【0009】
更にまた請求項5記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーターは、前記要件に加え、前記コーティングロール及びリバースロールの表面温度を調節するためのヒータが具えられたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、コーティングロール及びリバースロールが塗料を介在させて被塗装体と接触することにより熱を奪われ、温度が低下してしまうのを防ぐことができる。
【0010】
更にまた請求項6記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーターは、前記要件に加え、前記塗料供給管路、塗料供給ノズル及び循環ポンプは、電熱ヒータによって加温されることを特徴として成るものである。
この発明によれば、形状あるいは接地状態が複雑なこれらの部材を効果的に加温することができる。
【0011】
更にまた請求項7記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーターは、前記要件に加え、前記低融点のホットメルト系塗料は、100℃以下で溶融し、且つ長時間外気に触れても硬化しないものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、ホットメルト系塗料の溶融状態が比較的低温で維持されるため、安全性を高めることができる。また停止時やメンテナンス時には、装置の温度を短時間で低下させることができる。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低融点のホットメルト系塗料を用いてその溶融状態を維持することのできる装置を提供することができ、ホットメルト系塗料の再循環使用を可能として塗工コストの低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図示の実施例に基づいて説明するものであり、初めに本発明の装置の構成について説明を行い、続いてこの装置の作動状態について説明する。
なお以下の実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0014】
図中、符号Dで示すものが本発明のロールコーターであって、このものはコーティングロール1の表面に薄膜状に付着した塗料Pを、被塗装体Aに転移付着させ、続いてリバースロール2によって擦り込むとともにその表面を平滑にすることのできる装置である。
なお本発明の装置で使用される塗料Pは、70〜100℃程度の100℃以下の低温領域で溶融して塗装適性が発揮できるように樹脂組成が設定されたものであり、また無溶剤型であるが樹脂自体に反応基を持たないため、空気中の水分と反応して硬化してしまうことがないものである。
【0015】
以下、前記ロールコーターDの詳細な構成について説明すると、このものは、機枠Fに対して、被塗装体Aの送入側にコーティングロール1が具えられ、更にその下方にバックアップロール3が具えられて成る。これらコーティングロール1とバックアップロール3との間には、被塗装体Aの通過間隙G1が形成され、両ロールは機枠Fの側方に設けられたモータM1により、被塗装体Aの進行方向に対して互いに順送り方向(図2中矢印で示す)に回転するようになっている。
なお本明細書中においては、被塗装体Aの送入側(図2中右側)を前方と定義するものであり、送出側(図2中左側)を後方と定義するものである。
【0016】
また前記コーティングロール1の前方にはドクターロール5が設けられるものであり、 このドクターロール5は、塗装作業中はその周面をコーティングロール1の周面と接触させながら回転することにより、コーティングロール1の周面に形成される塗膜の状態を調整するためのものであって、モータM2によりコーティングロール1と反対方向に回転するように構成されている。
なおこのドクターロール5は、適宜の機構によりコーティングロール1への圧接状態を調節できるようになっている。
【0017】
また機枠Fの後側すなわち被塗装体Aの送出側には、前記リバースロール2が設けられ、更にその下方にバックアップゴムロール6が具えられる。
これらリバースロール2の下面及びバックアップゴムロール6の上面は、それぞれ前記コーティングロール1の下面及びバックアップロール3の上面とほぼ同レベルに設定され、両ロールの間には通過間隙G2が形成される。
なおリバースロール2は、コーティングロール1から被塗装体A上面に転移付着した塗料の表面を擦り込むとともに平滑にする作用をなすものであり、そのためこのものは、モータM4によって被塗装体Aの進行方向に対して逆方向に回転するようになっている。
一方、バックアップゴムロール6は、モータM5により被塗装体Aの進行方向に対して順方向に回転するように構成される。
【0018】
以上のようにロールコーターDには5本のローラが設けられるが、このうちコーティングロール1とドクターロール5とは同一の機枠要素に取り付けられ、一方、リバースロール2は別の機枠要素に取り付けられ、被塗装体Aの厚さに応じてこれら機枠要素を上下動させて、通過間隙G1、G2の幅を調節できるようになっている。
またバックアップロール3及びバックアップゴムロール6の各上端と同レベルの位置には、複数のフリーローラRが各ロールと軸を平行に向けて配設され、これらの上面が移送面となる。
【0019】
更に前記コーティングロール1とリバースロール2とには図2に示すように、それぞれの後方上方個所にブレード110、210が具えられる。これらのブレード110、210は、その先端がロール表面に接触、離反できるように適宜の回動構造を有し、稼動時にはロール表面に接触し、停止時にロール表面から離反するようになっている。
【0020】
ここで塗料Pの循環経路について説明するものであり、まず供給経路7Aの構成について説明すると、前記コーティングロール1とドクターロール5との接触部付近の上方であって各ロールの幅方向の中央部分に、塗料供給ノズル70が具えられ、更に前記リバースロール2の後寄りの中央にも同様の塗料供給ノズル70が具えられる。
これら塗料供給ノズル70には塗料供給管71が接続され、この塗料供給管71と塗料タンク72との間が管路73によって接続されることにより、塗料Pの供給経路7Aが形成されるものであり、この管路73の途中に循環ポンプ74が具えられる。
なお前記塗料タンク72には攪拌装置72a及び粘度計72bが具えられる。
【0021】
また前記塗料供給管71には、図3に示すように従動ギア71aが設けられ、これに対してモータM6の出力軸に設けられた駆動ギア71bが噛合し、モータM6の駆動により塗料供給ノズル70が塗料供給管71を軸として回動できるようになっている。
因みにこのような構造により、洗浄作業終了後に塗料供給ノズル70を上向きに回動させておけば、洗浄液等がノズルから滴下するのを防ぎ、コーティングロール1の汚損を回避することができる。
このように、塗料タンク72からロールコーターDに至る塗料Pの通過経路を供給経路7Aと称するものである。
なお前記循環ポンプ74と塗料供給管71との間にバルブV3が具えられる。
【0022】
次に塗料Pの回収経路7Bの構成について説明すると、まず図4に示すように、前記ブレード210によってリバースロール2から掻き取られる塗料Pを受け入れるための受け樋75が、リバースロール2の幅方向全域をカバーするようにその後方に設けられる。
また前記コーティングロール1及びリバースロール2の各両端部下方に、前後方向に延びる二本の案内樋76が傾斜して設けられる。
これら案内樋76は、コーティングロール1及びリバースロール2の端部からこぼれ出た余剰の塗料Pや洗浄液を受け入れるとともに、前記受け樋75の両端に形成されたシュート75aから落とし込まれた塗料Pや洗浄液を受け入れるようになっている。
【0023】
また各案内樋76の後端にはシュート76aが形成され、その下方には回収樋77が傾斜して設けられる。
そしてこの回収樋77の排出端付近には、塗料タンク72及び洗浄液タンク78が設けられ、これらに対して塗料Pあるいは洗浄液が回収されることとなる。
なお前記回収樋77は排出端の位置を変更することができるよう、一例として長さ方向に移動できるような構成が採られるものであり、回収樋77の下面に取り付けられたブラケット77aに対しシリンダ77bが固定され、ロッド収縮時には回収樋77の排出端が塗料タンク72の上方に位置し、一方ロッド伸張時には排出端が洗浄液タンク78の上方に位置して、塗料P及び洗浄液の回収が区別して行えるようになっている。
【0024】
また前記バックアップロール3乃至バックアップゴムロール6の下方には、ロール幅全域を受容する受皿79が設けられ、こぼれた塗料Pや洗浄液を受け止めるようになっており、これらを直接塗料タンク72や洗浄液タンク78に導いたり、前記回収樋77あるいは案内樋76に導いたりして回収できるように構成されている。
このようにロールコーターDから塗料タンク72あるいは洗浄液タンク78に至る経路を回収経路7Bと称するものである。
そしてこのような構成が採られることにより、シリンダ77bの収縮時に供給経路7Aと回収経路7Bとが塗料タンク72において接続され、塗料Pの循環経路が形成されることとなる。
【0025】
また前記塗料タンク72と洗浄液タンク78との間を、バルブV1を介在させて管路73によって結ぶことにより、シリンダ77bの伸長時に供給経路7Aと回収経路7Bとが洗浄液タンク78において接続されて、洗浄液の循環経路が形成されることとなる。
なお前記バルブV1としては一例として三方弁が採用される。
また前記管路73における循環ポンプ74と塗料供給管71との間には、バルブV2を介在させて塗料タンク72に至る回収管73aが接続される。
【0026】
以上がロールコーターDの基本的な構成であり、ここで本発明の特徴的構成について説明する。
すなわち前記供給経路7A及び回収経路7Bから成る循環経路及びこの循環経路に位置する部材については、塗料Pの溶融状態を維持することができるような構成が採られるものであり、前記塗料タンク72、管路73、塗料供給管71、塗料供給ノズル70、コーティングロール1、ドクターロール5及びリバースロール2並びに受け樋75、案内樋76、回収樋77及び受皿79を加温可能な加温機構8が具えられることにより、塗料Pの溶融状態を維持してその再循環使用が可能となるようにする。
【0027】
この実施例では、前記塗料タンク72並びに受け樋75、案内樋76及び回収樋77を被加温体とする構成として温水ジャケットを採用するものであり、これら部材を図6に示すようにジャケット外体80を具えた二重構造として、このジャケット外体80の内側に温水供給装置81から送られる温水を通過させることにより加温するようにした。
すなわち、ジャケット外体80の両端部を側板80aで塞ぐとともに、一方の側板80aに入水口80b及び出水口80cを形成し、更にジャケット外体80の内部を仕切板80dによって区画することにより、入水口80bから進入した温水が被加温体の全域を満遍なく加温した後に出水口80cから排出されるような構成が採られるものである。
【0028】
また前記循環ポンプ74、管路73、塗料供給管71、塗料供給ノズル70については、ポリイミド面状ヒータ等の電熱ヒータ82を耐熱両面テープや耐熱接着剤によって貼付し、これによって加温を行うようにするとともに、適宜断熱材を貼付して保温を図るようにした。
もちろんこれらの部材も、上記温水ジャケット方式によって加温するような構成としてもよいが、形状あるいは設置状態が複雑なこれらの部材は、電熱ヒータ82を用いた方が容易に加温機構8を構築することができる。
【0029】
更に前記コーティングロール1、リバースロール2及びドクターロール5は、その内部を空洞として、ここを前記温水供給装置81から送られる温水が通過することによりロール本体10を加温するような構成が採られる。
具体的には図7に示すように、中空円筒状のロール本体10の両端が側板11で塞がれるとともに、側板11の内側に支持板12が設けられ、これら側板11と支持板12の中心を貫くようにそれぞれ軸13が固定される。
そして一方の軸13内には長手方向に沿って戻り管83が設けられるものであり、更にこの戻り管83内にサイホン管84が挿通され、その端部がロール本体10内の対向する支持板12間に臨むこととなる。
そして前記戻り管83及びサイホン管84は、軸13に接続されたロータリージョイント85における出水口85b及び入水口85aにそれぞれ連通される。
このような構成により、入水口85aからサイホン管84を経由してロール本体10内に供給された温水は、ロール本体10をその内側から加温し、その後、戻り管83を経由して出水口85bから排出されることとなるものである。
なおこの実施例では一例として、前記サイホン管84の先端をロール本体10の長手方向の略中心に位置するようにしたが、この位置についてはロール本体10を均等に加温できるような適宜の個所に設定されるものである。
【0030】
更にまた前記コーティングロール1及びリバースロール2は、その表面に塗料Pが付着した状態で被塗装体Aと接触するため、被塗装体A側に多くの熱が移動して温度低下を引き起こすことが予想されるため、前記温水以外の加熱手段が併設される。
この実施例では一例として遠赤外線セラミックヒータ86を、これらコーティングロール1及びリバースロール2の外周面に臨ませて配置するようにした。
このような構成が採られることにより、放射温度計を用いる等してロール表面温度を監視し、適宜遠赤外線セラミックヒータ86への通電をオンオフするようにすれば、ロール表面温度を所望の一定値とすることが可能となる。
【0031】
本発明のロールコーターDは一例として上述したように構成されるものであり、以下この装置の作動態様について説明する。
【0032】
〔初期設定〕
始めに被塗装体Aの厚みに応じてコーティングロール1及びリバースロール2を上下動させ、通過間隙G1、G2の寸法を設定する。
またシリンダ77bを収縮させて回収樋77の排出端が塗料タンク72の上方に位置するようにしておく。
〔装置の加温〕
次いで加温機構8を機能させて、ロールコーターD並びに供給経路7A及び回収経路7Bの温度を、塗料Pの溶融状態を維持してその再循環使用が可能となるように高めておく。すなわち塗料タンク72、受け樋75、案内樋76及び回収樋77における入水口80b並びにコーティングロール1、リバースロール2及びドクターロール5における入水口85aに対し、温水供給装置81から温水を供給するものであり、この温水は上記各要素を加温した後、出水口80c、85bから排出され、再び温水供給装置81によって昇温され、上記経路を再循環することなる。
因みに本発明のロールコーターDにおいて用いられる塗料Pは、70〜100℃程度の100℃以下の低温領域で溶融するものであるため、温水による加温であってもその溶融状態が維持されることとなるものである。
また循環ポンプ74、管路73、塗料供給管71及び塗料供給ノズル70に設けられた電熱ヒータ82を通電状態とし、これら要素が塗料Pの溶融状態を維持できる温度となるように加温する。
【0033】
〔塗料の投入〕
次いで塗料タンク72に対して、予め溶融状態にしておいた塗料Pを供給するとともに、攪拌装置72aを起動してこのものを攪拌し、温度を均等にして粘度の均一化を図る。なお塗料タンク72においては粘度計72bによって塗料Pの粘度を監視し、この粘度に応じて温水供給装置81から供給される温水の温度を制御するようにする。
【0034】
〔ロールの回転開始〕
次にコーティングロール1、リバースロール2、ドクターロール5、バックアップロール3及びバックアップゴムロール6を所定の速度で回転させるとともに、ドクターロール5をコーティングロール1に接触させ、循環ポンプ74を起動して塗料供給ノズル70から適量の塗料Pを供給する。
なお塗料Pの供給は必要に応じてリバースロール2に対しても行われる。
そしてドクターロール5のコーティングロール1への圧接状態を調整して塗膜厚を調整する。
なおコーティングロール1及びリバースロール2が回転した時点でブレード110、210をこれらに接触させておく。
【0035】
〔塗料の塗布〕
このような状態で被塗装体Aを前方から通過間隙G1に入れ込み、通過間隙G2側へ移送する間に、コーティングロール1の表面に付着した塗料Pを被塗装体Aの上面に転移付着させ、引き続いてリバースロール2によって塗料Pを擦り込むようにする。
このようにしながら順次被塗装体Aに塗装を施すわけであるが、コーティングロール1に付着した残余の塗料Pは、ブレード110によって掻き取られ、コーティングロール1両端部から案内樋76に流れ込んで回収樋77を経由して塗料タンク72に回収されることとなる。またリバースロール2に付着した残余の塗料Pは、ブレード210によって掻き取られ、受け樋75から案内樋76に流れ込み、回収樋77を経由して塗料タンク72に回収されることとなる。
【0036】
そして塗料タンク72に至った塗料Pは、循環ポンプ74の作用によって供給経路7Aに送り込まれ、再び塗料供給ノズル70からコーティングロール1、リバースロール2に供給されることとなる。
このとき、コーティングロール1、リバースロール2及びドクターロール5並びに供給経路7A及び回収経路7Bの温度は、塗料Pの溶融状態が維持される温度に加温されているため、塗料Pの円滑な再循環使用が可能となるものである。
なお、コーティングロール1及びリバースロール2は、その表面に塗料Pが付着した状態で被塗装体Aと接触するため、被塗装体A側に多くの熱が移動して温度低下を引き起こすことがある。これを防止するために、放射温度計等によってロール表面温度を監視し、遠赤外線セラミックヒータ86への通電を適宜オンオフして、ロール表面温度が所望の値を保つようにして塗料Pの粘度低下を防止するようにする。
【0037】
〔装置の洗浄〕
そして上述のような塗装作業が終了したらバルブV1、V2、V3を切り替えて残余の塗料Pを塗料タンク72内に回収し、循環ポンプ74を停止する。
次いでシリンダ77bを伸長させ、その排出端を洗浄液タンク78の上方に位置させるとともに、バルブV1を切り替えて洗浄液タンク78が含まれた循環経路を形成する。
次いで洗浄液タンク78に洗浄液を投入するとともに循環ポンプ74を起動して、コーティングロール1、リバースロール2及びドクターロール5並びに供給経路7A及び回収経路7B内に洗浄液を通過させてこれらの洗浄を図るものである。なおこの際、前記加温機構8を機能させてコーティングロール1、リバースロール2及びドクターロール5並びに供給経路7A及び回収経路7Bを加温しておくことにより、洗浄が効果的に行われることとなる。
そして洗浄が終了した時点でブレード110、210をコーティングロール1、リバースロール2から引き離し、更に塗料供給ノズル70を回動させてその吐出口を上方に向けておく。
【0038】
なお上述した実施例では、ロールコーターDとして、コーティングロール1から被塗装体Aの上面に転移付着した塗料Pの表面を擦り込むとともに平滑にする作用をなすリバースロール2を具えた装置を採用したが、このような作用を要しない場合には、コーティングロール1のみを具えた装置を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のロールコーターを示す斜視図である。
【図2】本発明のロールコーターを示す縦断側面図である。
【図3】供給経路及び回収経路を示す骨格図である。
【図4】本発明のロールコーターを示す平面図である。
【図5】加温機構の構成を説明するための骨格図である。
【図6】温水ジャケットタイプの加温機構を一部透視して示す三面図である。
【図7】ロール本体に適用される加温機構を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 コーティングロール
10 ロール本体
11 側板
110 ブレード
12 支持板
13 軸
2 リバースロール
210 ブレード
3 バックアップロール
5 ドクターロール
6 バックアップゴムロール
7A 供給経路
7B 回収経路
70 塗料供給ノズル
71 塗料供給管
71a 従動ギア
71b 駆動ギア
72 塗料タンク
72a 攪拌装置
72b 粘度計
73 管路
73a 回収管
74 循環ポンプ
75 受け樋
75a シュート
76 案内樋
76a シュート
77 回収樋
77a ブラケット
77b シリンダ
78 洗浄液タンク
79 受皿
8 加温機構
80 ジャケット外体
80a 側板
80b 入水口
80c 出水口
80d 仕切板
81 温水供給装置
82 電熱ヒータ
83 戻り管
84 サイホン管
85 ロータリージョイント
85a 入水口
85b 出水口
86 遠赤外線セラミックヒータ
A 被塗装体
D ロールコーター
F 機枠
G1 通過間隙
G2 通過間隙
M1 モータ
M2 モータ
M4 モータ
M5 モータ
M6 モータ
P 塗料
R フリーローラ
V1 バルブ
V2 バルブ
V3 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の被塗装体の送入側に、コーティングロールと、このコーティングロールに下側から臨むバックアップロールと、前記コーティングロールに側方から接触するドクターロールとを具え、更に前記コーティングロールの両端部下方に、案内樋を前後方向にそれぞれ傾斜させた状態で配設し、これら案内樋の下傾端に回収樋を配設し、更に前記コーティングロールと前記ドクターロールとの間には、塗料タンクから延びた塗料供給管路に接続された塗料供給ノズルを臨ませ、この塗料供給ノズルから供給された塗料を、前記送入側から送り込まれた被塗装体の上面に塗装するとともに、前記案内樋に流入した塗料を回収樋を通じて塗料供給管路に戻して再循環使用する装置において、前記塗料として低融点のホットメルト塗料が用いられるものであり、少なくとも前記塗料タンク並びに案内樋及び回収樋を加温可能な構成とすることにより、ホットメルト塗料の溶融状態を維持してその再循環使用が可能となるようにしたことを特徴とするホットメルト系塗料に対応したロールコーター。
【請求項2】
前記コーティングロールの後段に、リバースロールと、このリバースロールに下側から臨むバックアップゴムロールとを具え、更に前記案内樋をリバースロールの両端部下方にも位置させ、更に前記リバースロールの上方に、塗料タンクから延びた塗料供給管路に接続された塗料供給ノズルを臨ませ、前記塗料供給ノズルから供給された塗料を、前記送入側から送り込まれた被塗装体の上面に塗装し、併せて前記リバースロールを逆回転させながら被塗装体に擦り込むようにして塗工するとともに、前記案内樋に流入した塗料を回収樋を通じて塗料供給管路に戻して再循環使用するように構成したことを特徴とする請求項1記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーター。
【請求項3】
前記塗料タンク並びに案内樋及び回収樋を加温可能とする構成は、温水ジャケットであることを特徴とする請求項1または2記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーター。
【請求項4】
前記コーティングロール及びドクターロール並びにリバースロールは温水加温されるものであることを特徴とする請求項1、2または3記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーター。
【請求項5】
前記コーティングロール及びリバースロールの表面温度を調節するためのヒータが具えられたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーター。
【請求項6】
前記塗料供給管路、塗料供給ノズル及び循環ポンプは、電熱ヒータによって加温されることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーター。
【請求項7】
前記低融点のホットメルト塗料は、100℃以下で溶融し、且つ長時間外気に触れても硬化しないものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のホットメルト系塗料に対応したロールコーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−23421(P2008−23421A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196379(P2006−196379)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(593011014)株式会社望月機工製作所 (1)
【Fターム(参考)】