説明

ホモシステイン低下用組成物

【課題】ビタミンB6、B12、葉酸の摂取による血中ホモシステイン低下作用を相乗的かつ安全に高めることができる組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ビタミンB6、B12、葉酸類の1種以上と胡麻の有効成分であるセサミン類とを含有する組成物。本発明の組成物は、セサミン類を併用することにより、ビタミンB6、B12、葉酸の血中ホモシステイン濃度の低下作用又は上昇抑制作用を、安全にかつ、相乗的に増強することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中ホモシステイン濃度を低下させ、あるいは上昇を抑制しうる組成物に関し、更に詳細には、ビタミンB6、B12、葉酸からなるビタミン群のうちの1種又は2種以上の成分と、セサミン類とを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホモシステインは、メチオニン代謝経路の中間産物で、食事中のタンパク質から供給されるメチオニン由来の含硫アミノ酸の一種である。生体内でホモシステインは、メチオニン又はシステインに代謝されるが、代謝経路に異常が生じると血中のホモシステイン濃度が上昇する。血中ホモシステイン濃度の上昇は、心血管系や脳血管系、末梢静脈系の疾患の発生と関連し、アルツハイマー痴呆やうつ病の発生頻度の上昇とも関連することが指摘されている。また、ホモシステインの体内への蓄積により、体内組織の老化が促進されることも報告されている。したがって、これらのホモシステインが関与していると言われている疾患の予防又は治療や老化に伴う症状を予防又は治療するために、生体内ホモシステイン量、即ち、血中ホモシステイン濃度を低下する、あるいは血中ホモシステイン濃度の上昇を抑制することが重要であると考えられている。
【0003】
遺伝的素因、ビタミン補因子(ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸)の欠乏、加齢、性(男性)、腎機能低下、糖尿病、その他の疾患、薬剤、喫煙等の因子により、血中ホモシステイン濃度の上昇が生じる高ホモシステイン血症が知られている(非特許文献1参照)。生体内のホモシステインは、1)ビタミンB12と葉酸に依存し、メチルテトラヒドロ葉酸−ホモシステインメチルトランスフェラーゼの関与する経路により代謝されるか、2)ビタミンB6に依存し、シスタチオニンシンターゼの関与する経路により代謝されることが知られている。
【0004】
従来の技術では、高ホモシステイン血症に対する治療として、ホモシステイン代謝を円滑にすすめるための葉酸投与を第一段階治療とし、第二段階としてビタミンB6とビタミンB12の投与が行われている(非特許文献1参照)。しかしながら、ホモシステイン低下効果を期待するためには、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12を、一日の必要摂取量を大きく上回る用量で摂取しなければならず、このような酵素補助因子等の多量投与については副作用も懸念される。
【0005】
また、日常の食品素材などを利用して、血中ホモシステイン濃度の上昇抑制あるいは低下を図ることも考えられ、このような食品素材としては、例えばコーヒー生豆抽出物(特許文献1)が提案されているが、ビタミンB6、B12、葉酸と併用して、これらの効果を安全にかつ相乗的に高める食品成分についてはこれまで報告されていない。
【特許文献1】特開2006−16311号公報
【非特許文献1】プログレス・イン・メディシン(Progress in Medicine), Vol.19, No.8, 1999 p. 49-54
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ビタミンB6、B12、葉酸の摂取による血中ホモシステイン低下作用を相乗的かつ安全に高めることができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ビタミンB6、B12、葉酸の摂取による血中ホモシステイン低下作用について検討したところ、その作用は投与量に依存せず、頭打ちになることを見出した。そして、この作用をさらに増強すべく鋭意研究を重ねた結果、ビタミンB6、B12、葉酸とともにセサミン類を配合することで、ホモシステイン低下作用及び/または上昇抑制作用を相乗的に高めることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
1. ビタミンB6、ビタミンB12及び葉酸の1種又は2種以上からなるビタミンB群と、セサミン類とを含有する組成物。
2. ビタミンB6、ビタミンB12及び葉酸からなるビタミンB群とセサミン類とを含有する組成物。
3. ビタミンB群の総重量が、セサミン類の総重量を100として、1〜500(重量比)である、上記1又は2に記載の組成物。
4. セサミン類が、セサミン、エピセサミン、又はこれらの混合物から選択される上記1〜3のいずれかの項に記載の組成物。
5. 飲食品である、上記1〜4のいずれかの項に記載の組成物。
6. ビタミンB6、ビタミンB12及び葉酸の1種又は2種以上からなるビタミンB群と、セサミン類とを有効成分とする、高ホモシステイン血症改善剤。
7. ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、及びセサミン類を有効成分とする、高ホモシステイン血症改善剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、高ホモシステイン血症改善作用を有する、ビタミンB6、ビタミンB12及び葉酸の1種又は2種以上からなるビタミンB群と、セサミン類とを含有する組成物を提供する。ビタミンB群や胡麻由来の成分であるセサミン類は、長年に渡って飲食品として摂取されている安全な物質であり、中期、長期にわたって経口摂取しても安全であるから、これらの成分を含む本発明の組成物は、高ホモシステイン血症及びそれに関連する疾患の予防、改善及び治療に有効である。また、セサミン類及びビタミンB群を経口投与することにより、高ホモシステイン血症改善作用だけでなく、その他の生理活性も相加的又は相乗的に発揮することが期待できることから、有効な健康食品として提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(ビタミンB6、B12、葉酸)
本発明の組成物は、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸からなるビタミンB群のうちの1種以上の成分を必須成分とする。ここで、ビタミンB6、B12、葉酸とは、通常飲食物及び医薬品に用いられるものでよく、公知の方法により合成してもよく市販品として入手することもできる。ビタミンB6類としては、例えば、ピリドキシン、ピリドキサール又はこれらの塩(塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩など)などが挙げられ、好ましくは塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサールである。ビタミンB12 類としては、例えば、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メコバラミン又はこれらの塩(塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩など)などが挙げられ、好ましくはシアノコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、メコバラミンである。葉酸類としては、広義には プテロイルグルタミン酸(pteroylglutamate) や 7,8−ジヒドロプテロイルグルタミン酸(7,8-dihydropteroylglutamate)等とそれらのポリグルタミン体などが挙げられる。これらのビタミンB6、B12、葉酸類は、各々1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これら成分は、その製造方法になんら限定されず、天然抽出品、微生物発酵品、合成品のいずれも用いることができる。
【0011】
ビタミンB6、B12、葉酸からなるビタミンB群は、血中のホモシステイン濃度を低下させる作用をもつことが知られている。ビタミンB6は、ホモシステインからシステインへ代謝する分解系酵素の補酵素として、葉酸及びビタミンB12は、ホモシステインからメチオニンへ代謝する分解系酵素の補酵素として作用する。しかし、ビタミンB群は多量に投与しなければその効果が期待できず、多量に摂取した場合の副作用が問題となることもある。また、本発明者らによると、ビタミンB群を多量に摂取させてもある一定以上の効果は得られない、すなわち効果が頭打ちになることがわかっている。
【0012】
本発明の組成物は、ビタミンB群を安全な量で摂取でき、かつビタミンB群の血中ホモシステイン濃度低下作用が増強されたものである。
(セサミン類)
本発明の組成物は、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸からなるビタミンB群のうちの1種以上の成分に、セサミン類を配合することにより、上記ビタミンB群の活性を相乗的に高めたことを特徴とするものである。本発明のセサミン類とは、セサミン及びその類縁体を含む。前記のセサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4−9331号公報に記載されたジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン誘導体がある。セサミン類の具体例としては、セサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモリン等を例示できる。なかでも、セサミン及びエピセサミンは、本発明において相乗的に効果を発揮しうると考えられることから、より好ましい態様として例示できる。
【0013】
本発明に用いるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミン類としてセサミンを選択した場合には、通常、ゴマ油から公知の方法(例えば、特開平4−9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または濃縮物という)を用いることもできるが、市販のゴマ油(液状)をそのまま用いることもできる。しかしながら、ゴマ油を用いた場合には、セサミン含量が低い(通常、1%未満)ため、セサミンの生理作用を得るのに必要なセサミンを配合しようとすると、処方される組成物の単位投与当りの体積が大きくなり過ぎるため、摂取に不都合を生じることがある。特に、経口投与用に製剤化した場合は、製剤(錠剤、カプセルなど)が大きくなり過ぎて摂取に支障が生じる。したがって、摂取量が少なくてよいという観点からもゴマ油からのセサミン抽出物(又はセサミン濃縮物)を用いることが好ましい。なお、ゴマ油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、セサミン抽出物(又はセサミン濃縮物)を公知の手段、例えば活性白土処理等により無味無臭としてもよい。
【0014】
このように、セサミン類としては、ゴマ油等の食品由来の素材から抽出及び/又は精製によりセサミン類の含有濃度を向上させて得られるセサミン類濃縮物を用いるのが好ましい。濃縮の度合いは、用いるセサミン類の種類や配合する組成物の形態により適宜設定すればよいが、通常、セサミン類が総量で1重量%以上となるように濃縮されたセサミン類濃縮物を用いるのが好ましい。セサミン類濃縮物中のセサミン類総含量は、20重量%以上がより好ましく、さらに50重量%以上が好ましく、さらにまた70重量%以上が好ましく、90重量%以上まで濃縮(精製)されたものが最適である。なお、セサミン類の代謝体も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。
【0015】
(組成物、飲食品、飼料)
本発明のビタミンB6、B12、葉酸とセサミン類とを含有する組成物は、ビタミンB6、B12、葉酸の血中ホモシステイン低下作用を増強させることができる。また、この組成物中の各成分はそれぞれの生理作用を持ち、またその生理作用を相互に阻害することがないから、この組成物を健康食品として利用することで効果的に健康増進を図ることができる。
【0016】
本発明の組成物は、ビタミンB6、B12及び葉酸のいずれか1種又は2種以上とセサミン類とを配合する。本発明の組成物(飲食品、飼料等)中におけるセサミン類及び、ビタミンB6、B12、葉酸の配合量や配合比率は、ホモシステイン低下効果が発揮される範囲であれば特に制限されず、組成物の形態や対象となる病態等の条件によって適宜選択すればよい。
【0017】
セサミン類は、通常、成人1日当り1〜200mg摂取できるよう配合することが好ましく、より好ましくは5〜100mg程度である。またビタミンB群の成人1日当りの摂取量は、一般に、ビタミンB6、B12、葉酸が、それぞれ一日当たり、0.1〜50mg、0.2〜30μg、10〜800μg、好ましくは.0.2〜30mg、0.5〜20μg、50〜500μg、程度である。
【0018】
本発明の組成物には、組成物の全重量にもよるが、例えばセサミン類を1〜100mg、好ましくは1〜60mg、より好ましくは3〜60mg程度の量で配合することができる。また、ビタミンB群は、ビタミンB6、B12、葉酸を、それぞれ、0.1〜50mg、0.2〜30μg、10〜800μg程度、好ましくは、0.1〜30mg、0.5〜20μg、20〜500μg、より好ましくは0.2〜20mg、0.5〜10μg、20〜200μg、程度の量を配合することができる。
【0019】
本発明の組成物中における、セサミン類の配合割合は、組成物全重量に対し、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは1〜50重量%であり、さらに好ましくは1〜10重量%で配合するのがよいが、本発明の組成物の形態が液剤である場合、組成物全重量に対するセサミン類の総配合割合は0.0002〜0.4重量%程度、好ましくは0.001〜0.04重量%、さらに好ましくは0.002〜0.01重量%となるよう配合することができる。ここで言う液剤とは、水溶性の液体で容器詰の飲料形態で提供されるものをいい、例えば後述するような清涼飲料、茶飲料、ドリンク剤、シロップ剤等が含まれる。
【0020】
組成物中におけるセサミン類と、ビタミンB6、B12、葉酸の配合比も、ホモシステイン低下効果が発揮される範囲であれば特に限定されず、組成物の形態や対象となる病態等の条件によって適宜選択すればよいが、ビタミンB6、B12又は葉酸のいずれか1種又は2種以上を配合した場合、好ましくはセサミン類100重量部に対して、ビタミンB6、B12、葉酸が、それぞれ、0.1〜1000重量部、0.0001〜10重量部、0.01〜100重量部の比率である。さらに好ましくは、それぞれ、1〜500重量部、0.001〜1重量部、0.1〜10重量部の比率であり、最も好ましくは10〜500重量部、0.01〜1重量部、0.1〜5重量部の比率である。この比率は、ビタミンB6、B12又は葉酸のいずれか1種又は2種以上を配合する場合の各成分のセサミン類に対するものであり、使用しない成分については、その成分は0重量部である。
【0021】
ビタミンB群の総重量が、セサミン類の総重量を100として、1〜500(重量比)となるのが最も好ましい。
(高ホモシステイン血症改善剤)
本発明の組成物は、優れたホモシステイン低下作用及び/または上昇抑制作用を有することから、高ホモシステイン血症改善剤としても有用である。本明細書における「改善」との用語の定義には、高ホモシステイン血症を軽減又は治療することだけでなく、予防又は防止することも含まれる。そして、本明細書において、「改善剤」とは、前記改善のために用いる剤をいう。
【0022】
ホモシステイン(以下、Hcyと略す)は、臨床検査等においては、酸化型及び還元型あわせて総ホモシステイン値として測定される。一般に、空腹時の血中総Hcy濃度の正常値は5〜15μmol/L(好ましくは6μmol/L未満)とされ、高ホモシステイン血症は軽度で15〜30μmol/L、中等度で30〜100μmol/L、高度で>100μmol/Lとされている。
【0023】
本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、上記の高ホモシステイン血症の患者(空腹時の血中総Hcy濃度が15μmol/Lを超える患者)や、正常値であってもやや高値を示す患者(空腹時の血中総Hcy濃度が6〜15μmol/Lの患者)に対し、好適に使用される。血中総Hcy濃度が14μmol/Lを超えると、アルツハイマー痴呆の発症リスクが2倍になることが報告されているから、本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、アルツハイマー痴呆の予防剤としても有用であるといえる。
【0024】
ここで、本発明の高ホモシステイン血症改善剤を投与する対象(患者)は、ヒトのみならず、作業用家畜、猟犬、競走馬、愛玩動物、その他の動物等の哺乳動物である。
血中総Hcy濃度は、Hcy代謝に必須の酵素(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素、シスタチオニン合成酵素、メチオニン合成酵素)の変異、ビタミンB群(ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸)の欠乏、腎機能低下、加齢、性(男性)、悪性腫瘍(乳癌、卵巣癌、膵癌、急性白血病など)、乾癬、薬物(メトトレキサート、フェニトイン、カルバマゼビン、ナイアシン、テオフィリン、経口避妊薬など)の他、喫煙や飲酒など様々な原因により上昇する。本発明でいう高ホモシステイン血症改善剤とは、これら様々な原因により上昇する血中総Hcy濃度の上昇を抑制する、あるいは、上昇した血中総Hcy濃度を低下させる作用をもつものをいう。
【0025】
本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、ビタミンB群の不足又は欠乏、喫煙、飲酒などにより軽度に上昇する血中Hcy濃度の抑制に効果的であり、特に、ビタミンB群の不足又は欠乏した哺乳動物に好適に使用される。また、本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、薬物と併用してもその効果を発揮することが期待されることから、上記の薬物により上昇する血中Hcy濃度の抑制にも有用である。中高年において、自覚症状がない場合にもMRI診断によって25%くらいの人に無症候性脳梗塞(SBI)が発見されており、SBIと高ホモシステイン血症は正の比例をすることが報告されている。本発明の高ホモシステイン血症改善剤は、このような加齢に伴う疾患又は症状の予防又は治療剤として日常的に摂取することもできる。
【0026】
また、ホモシステインの体内への蓄積により、体内組織の老化が促進されることも報告されているから、本発明のホモシステイン血症改善剤は、体内組織の老化を予防又は改善するための抗老化剤としても有用である。
【0027】
(組成物、飲食品及び剤の投与形態)
本発明の組成物においては、その効果を損なわない限り、上記ビタミンB6、B12、葉酸とセサミン類との他に、任意の生理作用を持つ有効成分を配合することができる。例えば、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA等のビタミン類や抗酸化剤を配合することができる。また、本発明の組成物又は健康食品を製剤化する場合、例えば、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、希釈剤、担体、賦形剤等を適宜配合することができる。希釈剤、担体の例としては、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等の液体希釈剤、及び、グルコース、シュークロース、デキストリン、シクロデキストリン、アラビアガム等固体希釈剤又は賦形剤を挙げることができる。
【0028】
本発明において、健康食品とは、例えばカプセル剤や錠剤のように、本発明のビタミンB6、B12、葉酸とセサミン類とを含有する組成物そのものを有効成分とする製剤又は食品、ならびに一般の食品に上記本発明組成物を1つの成分として配合して、生体に対するホモシステイン低下作用や抗酸化作用、代謝機能改善作用等の機能をその食品に付加してなる機能性食品(特定保健用食品や条件付き特定保健用食品が含まれる)を挙げることができる。
【0029】
ビタミンB6、B12、葉酸とセサミン類とを含有する本発明の組成物又は健康食品としては、その形態を特に制限するものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;溶液状、乳液状、分散液状等の液状;またはペースト状等の半固体状などの、任意の形態に調製することができる。具体的な剤形としては、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤を含む)、チュアブル剤、ドリンク剤(溶液剤及び懸濁液剤が含まれる)、シロップ剤などが例示できる。
【0030】
本発明の組成物を飲食品として使用する場合は、飲食品の種類、形態に特に制限はなく、有効成分であるビタミンB6、B12、葉酸とセサミン類とに、慣用の飲食品材料を添加して調製することができる。例えば、ジュース、牛乳、コーヒー飲料、清涼飲料、茶飲料等の飲料、スープ等の液状食品、ヨーグルト等のペースト状食品、ゼリー、グミ等の半固形状食品、クッキー、ガム等の固形状食品、ドレッシング、マヨネーズ等の油脂含有食品等のどのような飲食品であっても良い。
【実施例】
【0031】
以下の実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.血中ホモシステイン濃度低下作用
ビタミンB6、B12、葉酸と低用量のセサミン類を摂取させた時のホモシステイン低下効果について検証した。
【0032】
Sprague Dawley系雄性ラット(9週齢)を日本チャールズ・リバー株式会社より購入し、1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。試験開始前日にラットを各群3匹からなる4群に分け、第1群はAIN−93Gを一部改変して作製した低ビタミン飼料(通常飼料の5分の1のビタミン量。飼料100g中の配合量は、ビタミンB6:0.12mg、ビタミンB12:0.5μg、葉酸:0.04mg:オリエンタル酵母工業株式会社)で、第2群はAIN−93Gを一部改変して作製した通常飼料(通常のビタミン量:オリエンタル酵母工業株式会社)で、さらに残りの第3、第4群はAIN−93Gを一部改変して作製した高ビタミン飼料(通常飼料の2倍のビタミン量。飼料100g中の配合量は、ビタミンB6:1.2mg、ビタミンB12:5μg、葉酸:0.4mg:オリエンタル酵母工業株式会社)で2週間飼育し、第1群〜第3群にはオリーブ油を3ml/Kgの用量で、第4群にはセサミン類(セサミン/エピセサミン混合物;セサミン:エピセサミン(重量比)=5:5)を20mg/Kgの用量でオリーブ油に溶解し、ゾンデを用いて経口投与した。一日当たりのビタミン摂取量は、低ビタミン飼料摂取群では、ビタミンB6、B12、葉酸がそれぞれ0.072mg/Kg、0.3μg/Kg、0.024mg/Kgに相当し、高ビタミン飼料摂取群では、ビタミンB6、B12、葉酸がそれぞれ0.72mg/Kg、3μg/Kg、0.24mg/Kgに相当する。この投与を5回/週の割合で2週間行い、一晩絶食させた後採血して、血漿中ホモシステイン量(血中総ホモシステイン濃度)を測定した。ホモシステイン量の測定は、Kuo K et al.(1997) Clin. Chem. 43, 1653に記載の方法に従って実施した。具体的には、採血後EDTA血漿を分離し、ホモシステインのチオール基を還元した後、酸により除蛋白した。中和後バッファーで希釈し、蛍光標識してHPLCにより分析した。HPLC分析には、カラム:Develosil RP AQUEOUS-AR、蛍光:Ex.385nm/Em.515nm、流速:0.8ml/min、バッファー:0.1M KH2PO4(4%AcCN、pH2.0)を用いた。その結果を図1に示す。
【0033】
図1から、低ビタミン飼料群と比べ、通常飼料群、高ビタミン飼料群ではホモシステイン量が低下しており、ビタミンB6、B12、葉酸摂取によるホモシステイン低下効果が認められた。しかし、通常飼料群と高ビタミン飼料群で差は見られず、ビタミンB6、B12、葉酸摂取量を増加させてもこれらのホモシステイン低下作用は頭打ちとなっている可能性が示唆された。ここで、高ビタミン飼料にセサミン類20mg/Kg投与を組み合わせた群では、高ビタミン飼料群と比べ、ホモシステイン量がさらに低下するという結果が得られ、ビタミンB6、B12、葉酸とセサミン類とを組み合わせて摂取することにより、相乗的なホモシステイン低下効果を発揮することが明らかとなった。
【0034】
参考例:低容量のセサミン投与による血中ホモシステイン低下作用
実施例1と同様にして、低容量(20mg/Kg)のセサミンを経口投与したラットの血中ホモシステイン低下作用を調べた。
【0035】
Sprague Dawley系雄性ラット(9週齢)を日本チャールズ・リバー株式会社より購入し、1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。試験開始前日にラットを各群3匹からなる2群に分け、共に実施例1で使用した低ビタミン飼料で2週間飼育し、その後コントロール群にはオリーブ油を3mg/Kgの用量で、セサミン群にはセサミン類(セサミン/エピセサミン混合物;セサミン:エピセサミン(重量比)=5:5)を20mg/Kgの用量でオリーブ油に溶解し、ゾンデを用いて経口投与した。この投与を5回/週の割合で2週間行い、一晩絶食させた後採血して、血漿中ホモシステイン量を測定した。結果を図2に示す。セサミン類20mg/Kg投与群でホモシステイン量の変化は認められず、セサミン類を低用量で摂取させてもホモシステイン低下効果を示さないことが明らかとなった。
【0036】
これより、実施例1で得られたセサミン類の血中ホモシステイン低下作用は、セサミン類単独では発揮されないが、ビタミンB群と併用することにより、ビタミンB群の作用を増強するように発揮される、相乗効果であることがわかった。
【0037】
実施例2:処方例
(製剤例1)顆粒剤
セサミン 2.0g
ビタミンB6 900mg
ビタミンB12 1.4mg
葉酸 60mg
酢酸トコフェロール 20g
無水ケイ酸 10g
トウモロコシデンプン 167g
以上の各粉体成分を均一に混合した後に10%ハイドロキシプロピルセルロース・エタノール溶液100mlを加え、常法通り練和し、押し出し、乾燥して顆粒剤を得た。
【0038】
(製剤例2)カプセル剤
ゼラチン 60.0%
グリセリン 30.0%
パラオキシ安息香酸メチル 0.15%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51%
水 適量
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、以下に示す組成物を常法により充填し、1粒約360mgのソフトカプセルを得た。
【0039】
セサミン 3.5mg
ビタミンB6 0.4mg
ビタミンB12 0.7μg
葉酸 45μg
グリセリン脂肪酸エステル 15.0mg
ミツロウ 15.0mg
小麦胚芽油 257mg
(製剤例3)錠剤
セサミン 20g
ビタミンB6 3g
ビタミンB12 3.5mg
葉酸 200mg
デンプン 259g
ショ糖脂肪酸エステル 9.0g
酸化ケイ素 9.0g
これら各成分を混合し、単発式打錠機にて打錠して経9mm、重量300mgの錠剤を製造した。
【0040】
(製剤例4)ドリンク剤
呈味: DL−酒石酸ナトリウム 0.1g
コハク酸 0.009g
甘味: 液糖 800g
酸味: クエン酸 12g
ビタミンC 50g
セサミン 1g
ビタミンB6 100mg
ビタミンB12 240μg
葉酸 16mg
ビタミンE 6g
シクロデキストリン 5g
乳化剤 5g
香料 15ml
塩化カリウム 1g
硫酸マグネシウム 0.5g
上記成分を配合し、水を加えて10リットルとした。このドリンク剤は、1回あたり約100mlを飲用する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は優れたホモシステイン低下作用を示し、また、セサミン類に抗血栓作用、血圧降下作用、コレステロール低下作用等が知られていることからも、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、虚血性心疾患、循環機能不全、末梢血管障害、アルツハイマー病、その他血管に起因する症状等の予防または治療等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ビタミンB6、B12、葉酸とセサミン類とによる、ホモシステイン低下効果を示す図である。
【図2】セサミン類20mg/Kg摂取のホモシステイン低下効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB6、ビタミンB12及び葉酸の1種又は2種以上からなるビタミンB群と、セサミン類とを含有する組成物。
【請求項2】
ビタミンB6、ビタミンB12及び葉酸からなるビタミンB群とセサミン類とを含有する組成物。
【請求項3】
ビタミンB群の総重量が、セサミン類の総重量を100として、1〜500(重量比)である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
セサミン類が、セサミン、エピセサミン、又はこれらの混合物から選択される請求項1〜3のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項5】
飲食品である、請求項1〜4のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項6】
ビタミンB6、ビタミンB12及び葉酸の1種又は2種以上からなるビタミンB群と、セサミン類とを有効成分とする、高ホモシステイン血症改善剤。
【請求項7】
ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、及びセサミン類を有効成分とする、高ホモシステイン血症改善剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−173640(P2009−173640A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329248(P2008−329248)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】