説明

ホモセリンからのメチオニンの製法

本発明は、D−及び/又はL−ホモセリンを経て、次いでメチオニンに化学的変換する、D−及び/又はL−メチオニンの製法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物工学的及び化学的工程の組合せによるメチオニンの製法に関する。
【0002】
特に本発明は、1つ以上の工程でのL−ホモセリンの発酵による製造及び次のL−メチオニンへの化学的変換に関する。
【0003】
アミノ酸メチオニンは現在世界中で大量に工業的に製造され、商業的に著しく重要である。
【0004】
メチオニンは多くの分野で、例えば製薬、健康及びフィットネス製品用に使用される。しかしメチオニンは特に種々の有用動物用の多くの飼料中の飼料添加物として使用され、その際ラセミ体並びにエナンチオマー純粋な形のメチオニンを使用することができる。
【0005】
工業的規模でメチオニンは、シュトレッカー合成の方法の1つであるブッフラー−ベルクス−反応を経て化学的に製造される。その際、出発物質メチルメルカプトプロピオンアルデヒド(アクロレイン及びメチルメルカプタンから製造)、青酸、アンモニア及び二酸化炭素を反応させて5−(2−メチル−メルカプトエチル)−ヒダントイン(メチオニンヒダントイン)にし、これを次いでアルカリにより加水分解してアルカリ金属メチオニン酸塩にし、次いで酸、例えば硫酸又は炭酸を用いて中和することによってメチオニンを遊離させる。メチオニンを製造するために、その他の種々の方法、例えばアミドカルボニル化反応、蛋白質の加水分解又は発酵を使用することもできる。
【0006】
メチオニンは工業的に大規模に製造されるので、経済的であるが環境を損なわない方法を提供することが望まれる。
【0007】
シュトレッカー合成もブッフラー−ベルクス−反応も、有毒な先駆物質青酸及びアクロレインをC−又はC−構成要素として使用するという欠点を有する。青酸はメタン及びアンモニアから高温で製造される。アクロレインはプロパンの部分的酸化によって製造され、これも石油から得られる。メチオニン法は、例えばEP1256571に詳説されている。アクロレインの製法は例えばEP417723に詳説されている。両方の方法共、高い技術的費用及び高いエネルギー消費を伴う。
【0008】
ここ数年の石油価格の上昇によってアクロレインも高騰し続け、それにより構成要素として経済的に魅力がますます減ってきている。更に、青酸もアクロレインもその毒性及びその物理特性のために、安全性及び環境保護の観点から大量取り扱いに際して付随費用が生じる。
【0009】
メチオニンは化学的合成でD−及びL−エナンチオマーから成るラセミ体混合物として生じる。このラセミ体は直接飼料添加物として使用することができる。それは、生体内条件下で非天然D−エナンチオマーが天然L−エナンチオマーに変わる変換機構が存在するからである。しかしこの変換はメチオニンの損失と結びつき、従って同量の純粋なL−エナンチオマーと比してバイオ効率の損失ももたらす。また、同じ効果を得るために、L−メチオニンと比してより多くのラセミ体のD,L−メチオニンが必要である。
【0010】
従って、できる限り経済的に有利でかつ環境に優しい安全なメチオニンの製法を提供することが求められている。特に、エナンチオマー高濃度のL−メチオニン、極めて特に有利にはできる限りエナンチオマー純粋なL−メチオニンの、工業的規模で実施可能である製法を提供することが求められていた。
【0011】
例えばWO04/024933に記載されているような微生物を用いるL−メチオニンの製造に基づく従来の方法は、達成される収率が比較的僅かであるという欠点を有する。これは、特に微生物L−メチオニン生合成の厳密に組織され制御された網状物、メチオニンの細胞から発酵液汁中への排出及び硫酸塩の硫化水素への還元に際しての多大なエネルギーを消費する8電子工程の問題に原因を帰する。他方においてはメチオニンの水又は水性発酵液汁中の限定的な溶解性によって、メチオニンが発酵で高い生合成効率の際に沈殿し、従って精製が困難になる。費用のかかる精製は、相当な廃棄流を生じさせ、その除去には高い費用がかかる結果となる。
【0012】
WO05/059155には確かに、発酵液汁からのL−メチオニンの改良された単離方法が記載されている。しかしこの改良は、発酵液汁中のL−メチオニンの加熱及び溶解、特定温度でのバイオマスの濾過及び濾過したメチオニン含有バイオマスの後処理、母液の蒸発、冷却、母液からのL−メチオニンの晶出、濾過、洗浄及び乾燥及び母液の還流を含む比較的複雑な一連の工程の代償によって達成されるものであり、2つの異なる製造流、即ち低濃縮及び高濃縮L−メチオニン−生成物が生じることになる。この2つの異なるメチオニン−品質が否応なく生じることは、また更なる費用を意味し、更にマーケティングの観点から望ましくない。
【0013】
前記問題は最終的には純粋な発酵によるL−メチオニン法で、工業的に既に多年にわたって使用されてきた例えばL−リジンの発酵による製法に比べて全収率が低くなり及び/又はL−メチオニンの発酵による製造で相当して費用がかさむ結果となる。
【0014】
公知技術の欠点を背景に、公知方法の前記で詳説した欠点を克服するメチオニンの方法を提供することが特に課題であった。この方法は、できる限りその他の入手可能な、発酵により製造可能な先駆物質から出発し、できる限り簡単な方法でかつ前記の危険な化学薬品を使用しないで、L−、D−又はD,L−メチオニン、有利にはL−メチオニンを生じさせ、その際、特にメチオニン用の慣用の化学的方法並びに直接生物工学的製法の欠点を克服するものでなければならない。
【0015】
もう一つの課題は、少なくとも部分的に天然又は再生可能な原料から出発して実施することができる製法を提供することであった。
【0016】
第3の課題は、L−メチオニンを好適な量及び純度で製造することができる工業的に難なく実施可能な方法を提供することであった。
【0017】
この課題並びに本明細書中に詳説した内容から容易に誘導可能であるか又は結論することができる、明示記載はしてないその他の課題は、その他の供給可能な発酵によりより良好に製造可能なアミノ酸から出発して、これを次いで好適な化学的変換を経て前記の危険な化学薬品を使用せずにL−、D−又はD,L−メチオニン、しかし特にはL−メチオニンに変えることによって解決される。従って慣用のメチオニン用の化学的製造方法の欠点並びに慣用のL−メチオニン用の直接的発酵による製造法の欠点も克服される。メチオニンと反対に高い水溶性を有し、発酵による方法を経て入手可能であるアミノ酸ホモセリンが本発明により好適であると実証された。
【0018】
D,L−ホモセリンが合成中間生成物として生じる、Livak、Britton、VanderWeele及びMurrayにより記載された方法("Synthesis of dl−methionine"、Journal of the American Chemical Society、(1945)、67、2218−20)は、先ずD,L−2−アミノ−4−ブチロラクトンから出発し、これはD,L−ホモセリン、N−カルバモイルホモセリン、4−(2−ブロムメチル)−ヒダントイン及び4−(2−メチルチオエチル)−ヒダントインを経て、最後にD,L−メチオニンが生じる:
【化1】

【0019】
ジューテロ化ホモセリン誘導体HO−CHD−CH−CH(HNCOOtBu)COOtBu又はHCCSOO−CHD−CH−CH(HNCOOtBu)COOtBu(tBu=tert.−ブチル)は、Son及びWoodard("Stereochemical mechanism of iodoacetic acid mediated decomposition of L−methionine to L−homoserine lactone"、Journal of the American Chemical Society(1989)、111(4)、1363−7)によれば4−位でジューテロ化された相応するL−ホモセリンの先駆物質として使用される。相応する非ジューテロ化化合物HO−CH−CH−CH(HNCOOtBu)COOtBu又はHCCSOO−CH−CH−CH(HNCOOtBu)COOtBuは、ホモセリンへの途中では記載されていなかった。
【0020】
下記化合物3,6−ジ(2−ヒドロキシエチル)−2,5−ジケトピペラジン、3,6−ジ(2−クロロエチル)−2,5−ジケトピペラジン又は3,6−ジ(2−メチルチオエチル)−2,5−ジケトピペラジンは、化学的中間段階であり、これはUS2397628によればD,L−メチオニンへの途中で生じるが、もちろんホモセリンから出発するのではなく、2−アセチル−4−ブチロラクトンから出発する:
【化2】

【0021】
付加的にD,L−メチオニンのその他の製法があるが、これはSnyder、Andreen、John、Cannon及びPeters("Convenient synthesis of dl−methionine"、Journal of the American Chemical Society(1942)、64、2082−4)により同じくホモセリンから出発するのではなく、例えば2−アセチル−4−ブチロラクトンから出発して、2−アミノ−4−ブチロラクトン又は相応する保護された2−アミノ−4−ブチロラクトンを経由する。
【0022】
Plieningerによる合成は、2−アミノ−4−ブチロラクトンから出発する("Die Aufspaltung des γ−Butyrolactons und α−Amino−γ−butyrolactons mit Natriummethylmercaptid bzw.−selenid.Eine Synthese des Methionins"、Chemische Berichte(1950)、83、265−8)。
【0023】
下記化合物3,6−ジ(2−ビニル)−2,5−ジケトピペラジン又は3,6−ジ(2−ブロムエチル)−2,5−ジケトピペラジンは、同じく化学的先駆物質であり、
【化3】

これは、Snyder及びChiddix("Non−Markovnikov addition in reactions of 3,6−divinyl−2,5−diketopiperazine"、Journal of the American Chemical Society(1944)、66 1002−4)によれば、D,L−メチオニンへの途中で生じる。しかしここでもホモセリンは使用されない。
【0024】
前記課題は特に、特許請求項1に記載の方法により解決される。本発明による方法の有利な実施態様及び変更態様は、請求項1による従属請求項で保護されるものである。
【0025】
L−メチオニン、D−メチオニン又はL−及びD−メチオニンの任意の混合物を製造するために、ホモセリンから出発し、下記式I
【化4】

のL−ホモセリン、D−ホモセリン又はL−及びD−ホモセリンの相応する混合物を化学的変換によりメチオニンに変え、その際中間段階N−カルバモイルホモセリン、4−(2−ブロムエチル)−ヒダントイン及び4−(2−メチルチオエチル)−ヒダントイン(式A−C)
【化5】

を経由しない方法を使用することによって、前記の純粋な化学的又は直接生物工学的方法の欠点を克服することができる。
【0026】
これらの欠点は特に使用するL−ホモセリンが発酵を経て製造されたものである場合に克服される。L−ホモセリンが微生物、特に腸内細菌科の細菌又はコリネ形細菌の発酵によって製造することができ、その際、炭素源、例えば蔗糖、グルコース、フルクトース及びグリセリン又はそれから成る混合物及び慣用の窒素源、例えばアンモニアを使用することは既に公知である。
【0027】
腸内細菌、特に大腸菌を使用するL−ホモセリンの微生物による製造の例は、US6303348、US6887691又はUS6960455又はEP1217076A1に記載されている。
【0028】
コリネ形細菌、特にCorynebacterium glutamicumを使用するL−ホモセリンの微生物による製造の例は、US3189526又はUS3598701に記載されている。
【0029】
発酵により得たL−ホモセリンを使用することによって、前記の比較的危険な原料アクロレイン及び青酸を回避することができる。
【0030】
しかし、発酵により得たL−ホモセリンを典型的な化学的方法で製造したラセミ体のD,L−ホモセリンと混合し、相応して得たD−及びL−ホモセリンから成る混合物を化学的変換用に使用し、それから終わりにD−及びL−メチオニンから成る相応する混合物を生じることも有利である。これは特に、D−/L−ホモセリンをD−/L−ホモセリン製造の化学的製造工程の残余物質として使用すべきである場合に有利である。純粋なD−ホモセリンを使用することもできる。これは特に、D−ホモセリンをD−/L−ホモセリンのラセミ体分割からの残余物質として使用すべきである場合に有利である。しかし純粋なD−ホモセリンの使用は通常、目的とするD−メチオニンを製造すべきである場合にのみ有利である。
【0031】
これに対して発酵により得たL−ホモセリンを使用することによって、しかもL−配置を損なわない化学的方法工程の本発明による使用に際して、直接L−メチオニンを得ることができる。専らL−ホモセリンを使用する場合には、最終的に純粋なL−メチオニンが得られ、これは製薬及び食品に使用するために直接使用することができ、動物飼育においても慣用のD,L−メチオニンに比して高いバイオ効率によって優れている。本発明による方法のこの態様は通常非常に有利である。
【0032】
有利な方法の1つでは、L−ホモセリン含有発酵液汁から水分除去によって製造したL−ホモセリン含有固体生成物を使用する。これは、発酵の副産物をL−メチオニンの段階で最後の精製工程で先ず除去することができ、従って精製費用を節約することができるという利点を有する。場合により発酵の副産物及び/又は随伴物質が次の反応を妨げないか又はむしろ最終生成物中で必要である場合には、これらが最終生成物中に残留してもよい。これは特に、これら自体が栄養学的に有用であり、L−メチオニンを飼料製造用に使用する場合がそうである。このような栄養学的に有用な化合物には、例えばその他のアミノ酸又は蛋白質が該当する。
【0033】
従ってL−メチオニン及びL−ホモセリンの発酵による製造の副産物及び/又は随伴物質から成る混合生成物も本発明の目的である。
【0034】
L−ホモセリン含有発酵液汁は有利には、L−ホモセリンを排出する微生物を好適な培養培地で培養することによって製造する。
【0035】
微生物としては、有利には細菌、特にはコリネバクテリア又はエシェリヒア属の細菌を使用する。
【0036】
更に発酵液汁中のL−ホモセリンの濃度が少なくとも1g/lであるのが有利であると実証された。
【0037】
意外にも、L−及び/又はD−ホモセリンの化学的変換を直接メチルメルカプタン(MeSH)を用いて場合により酸性触媒の存在で実施することができることを見出した。これは、唯一の化学工程が直接最終生成物L−メチオニンを生じるという利点を有する。その際メチルメチカプタンを大過剰に使用し、未使用のメチルメルカプタンを次いで容易に分離し、再生することができる。それはアミノ酸とは反対に室温で気体の化合物であるからである。
【0038】
その際、1〜100、有利には1〜50モル当量のMeSHを使用するのが有利であると実証された。
【0039】
反応を促進し、収率を高めるために、pka≦3を有するブレンステッド酸から成る群から選択した酸性触媒を使用することも有利であると判明した。
【0040】
このような酸は、例えばHCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)である。固体触媒としてNafionは特に、反応後に反応混合物から容易に分離し、再生することができるという利点を有する。
【0041】
同じくルイス酸−触媒を使用する場合も有利である。ここで、特に、AlCl、ZnCl、BF*OEt、SnCl、FeClの群から選択した少なくとも1種の低分子ルイス酸を有するルイス酸触媒が挙げられる。
【0042】
ここで特に良好に回収することができる強酸性イオン交換体、特に場合により置換された、例えばジビニルベンゼンで、架橋されたポリスチレンスルホン酸樹脂も有利であると実証された。
【0043】
しかし、ゼオライト、モンモリロナイト及び(WO−及びCsO)含有酸化アルミニウムの群から成る不均一系酸性触媒も本発明により使用することができる。前記酸化アルミニウムでは、WO−含量5〜15%及びCsO含量5〜15%を有するものが有利である。
【0044】
有利には反応を溶液及び/又は懸濁液中で水及び/又は有機溶剤の存在で実施する。反応を水の存在で実施する場合には、L−ホモセリンを含有する、場合により固体含分不含の水性発酵溶液から直接出発するのが有利である。それは、その場合にはその他の後処理工程を有利にも省略することができるからである。しかし水分含有の粗−L−ホモセリンも相応して有利に使用することができる。
【0045】
例えば、本発明により水及び/又はC−〜C−ケトン、有利にはメチルイソブチルケトン(MIBK)又はアセトン、直鎖又は枝分れC−〜C−アルコール、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートの群から選択した低分子有機溶剤を使用することができる。しかしメチルメルカプタンを、相応して過剰に使用して、溶剤又は少なくとも補助溶剤として使用することもできる。
【0046】
本発明のもう一つの有利な態様によれば、L−及び/又はD−ホモセリンのメチオニンへの化学的変換方法を、第1工程でホモセリンのC−原子に脱離基Yを導入することによって式II
【化6】

[式中、Yはハロゲン(=塩素、臭素又は沃素)、スルホニルオキシ(=p−トルエンスルホニルオキシ[pTsO]、CSO、HCSO、HSO又はCFSO)、スルフェート(OSOH)又はホスフェート(OPOH)を表す]の化合物を製造し、次いで化合物IIを第2工程でMeSHと反応させてL−メチオニン、D−メチオニン又はL−及びD−メチオニンの相応する混合物にすることで実施することができる。
【0047】
脱離基Yの導入は、Y=ハロゲンの場合に、第1工程で相応してホモセリンをPCl、PCl、BBr、PI、POCl、SOCl又はSOBrと反応させることによって有利に行うことができる。
【0048】
Y=スルホニルオキシの場合には、脱離基Yの導入は、第1工程で相応してかつ有利に、p−トルエンスルホン酸クロリド(p−TsCl)、CSOCl、HCSOCl、HSOCl又はCFSOClと反応させることによって有利に行うことができる。
【0049】
これに対してY=スルフェートの場合には、脱離基Yを導入するために第1工程で例えば相応してSO、HSO又はオレウムを使用し、Y=ホスフェートの場合には、有利にはYを導入するためにポリ燐酸を使用する。
【0050】
4位に相応する脱離基Yを導入することによるホモセリンの活性化後に、次の工程でMe−S−基をYの置換によって特に容易に導入することができる。
【0051】
この置換は、有利には式IIの化合物をMeSHと塩基性又は酸性触媒の存在で反応させることによって行われる。
【0052】
塩基性触媒としては、特にNaOH、KOH、ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン又はアルカリ−又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩又は炭酸水素塩が好適であり、その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表し、アルカリ土類はマグネシウム、カルシウム又はバリウムを表す。
【0053】
酸性触媒としては、特にHCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロルエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)が好適である。
【0054】
反応は有利には有機溶剤及び/又は水の存在で行う。
【0055】
その際、有機溶剤としては有利には、C−〜C−ケトン、有利にはメチルイソブチルケトン(MIBK)又はアセトン、直鎖又は枝分れC−〜C−アルコール、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートの群から選択した低分子有機溶剤を使用する。
【0056】
本発明のもう一つの有利な態様によれば、L−及び/又はD−ホモセリンのメチオニンへの化学的変換方法を、第1工程で酸性触媒による環化によって式IIIの相応する2−アミノ−4−ブチロラクトン及びその塩(式IV)
【化7】

[式中、XはCl、Br、I、HSO、(SO1/2、HPO、(HPO1/2、(PO1/3又はR’−SO(R’=メチル、エチル、フェニル、トシル)を表す]を製造し、次いで第2工程でMeSHと反応させてL−メチオニン、D−メチオニン又はL−及びD−メチオニンの相応する混合物にすることで実施することができる。その際特に塩は、中間で貯蔵するか又は輸送することができる安定な中間段階であってよく、これはかなり有利である。
【0057】
酸性触媒として、pka≦3を有するブレンステッド酸から成る群から選択した酸が好適である。
【0058】
その際酸性触媒として、HCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)を使用する。
【0059】
同様に酸性触媒として強酸性イオン交換体樹脂及びその際特に、場合により置換された、有利にはジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンスルホン酸樹脂が好適である。
【0060】
(WO−及びCsO)含有酸化アルミニウム、ゼオライト及びモンモリロナイトの群から成る不均一系酸性触媒を本発明により使用することもできる。前記酸化アルミニウムでは、WO−含量5〜15%及びCsO含量5〜15%を有するものが有利である。
【0061】
同じくルイス酸−触媒を使用することができ、特に、AlCl、ZnCl、BF*OEt、SnCl、FeClの群から選択した低分子ルイス酸を使用することができ、これらは入手可能であり、コストが安い。
【0062】
本発明のもう一つの有利な態様によれば、ホモセリンのメチオニンへの化学的変換方法を、下記の工程:(a)L−及び/又はD−ホモセリンのアシル化剤を用いる式V
【化8】

[式中、R=水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表す]のN−アシル−L−及び/又はD−ホモセリンへのN−アシル化、(b)工程(a)で得たN−アシル−ホモセリンVのMeSHとの塩基性又は酸性触媒の存在における式VI
【化9】

のN−アシル−メチオニンへの反応、(c)工程(b)で得たN−アシル−L−及び/又はD−メチオニンの相応するメチオニンへの加水分解を実施することで行うことができる。
【0063】
反応条件の正確な選択によって工程(a)で初めに相応するO−アシル−ホモセリンを生成し、次いでこれをN−アシル−ホモセリンVに変換させるか又は直接工程Vで生成する。
【0064】
工程(a)でアシル化するために、有利には一般式R−CO−Xのアシル化剤を使用するが、その際X=RCOO、OR(R=メチル又はエチル)、Cl、Brであってよく、R及びRは同一又は異なるものであってよく、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表す。
【0065】
工程(b)で塩基性触媒としては、NaOH、KOH、ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン又はアルカリ−又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩又は炭酸水素塩が好適であり、その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表し、アルカリ土類はマグネシウム、カルシウム又はバリウムを表す。
【0066】
工程(b)で酸性触媒としては、特にHCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)が好適である。
【0067】
本発明のもう一つの有利な態様によれば、ホモセリンのメチオニンへの化学的変換方法を、下記の工程:(a)L−及び/又はD−ホモセリンのアシル化剤を用いる式V
【化10】

[式中、Rは水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表す]のN−アシル−L−及び/又はD−ホモセリンへのN−アシル化、(b)工程(a)で得た化合物VのC4−原子での脱離基Yの導入による式VI
【化11】

[式中、Yはハロゲン(=塩素、臭素又は沃素)、スルホニルオキシ(=pTsO、CSO、HCSO又はHSO)、スルフェート(OSOH)又はホスフェート(OPOH)を表す]の化合物への変換、(c)工程(b)で得た化合物VIのMeSHとの塩基性又は酸性触媒の存在におけるN−アシル−L−メチオニン、N−アシル−D−メチオニン又は式VII
【化12】

のN−アシル−L−及び/又はD−メチオニンの相応する混合物への反応、(d)工程(c)で得たN−アシル−L−及び/又はD−メチオニンVIIのL−及び/又はD−メチオニンへの加水分解を実施することで行うことができる。
【0068】
その際、化合物Vの生成は反応条件の正確な選択によって、初めに生成したO−アシル−ホモセリンをN−アシル−ホモセリンに変換するか又は現場ラクトン化及びアシル化を次の閉環と組み合わせることによって行われる。
【0069】
工程(a)でアシル化するために、有利には一般式R−CO−Xのアシル化剤を使用するが、その際X=RCOO、OR(R=メチル又はエチル)、Cl又はBrであり、R及びRは同一又は異なるものであってよく、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表す。
【0070】
脱離基Yの導入は、Y=ハロゲンの場合に、第1工程で相応してホモセリンを、PCl、BBr、PI、SOCl又はSOBrと反応させることによって有利に行うことができる。
【0071】
Y=スルホニルオキシの場合には、脱離基Yの導入は、第1工程で相応してかつ有利に、p−トルエンスルホン酸クロリド(p−TsCl)、CSOCl、HCSOCl、HSOCl又はCFSOClと反応させることによって有利に行うことができる。これに対してY=スルフェートの場合には、脱離基Yを導入するために第1工程で例えば相応してSO、HSO又はオレウムを使用する。Y=ホスフェート(OPOH)の場合には、有利には脱離基Yを導入するために、第1工程で例えばポリ燐酸を使用する。
【0072】
4位に相応する脱離基Yを導入することによるN−アシル−ホモセリンの活性化後に、次の工程でMe−S−基をYの置換によって特に容易に導入することができる。
【0073】
工程(c)で塩基性触媒として、特にNaOH、KOH、ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン又はアルカリ−又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩又は炭酸水素塩が好適であり、その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表し、アルカリ土類はマグネシウム、カルシウム又はバリウムを表す。
【0074】
工程(c)で酸性触媒としては、特にHCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)が好適である。
【0075】
本発明のもう一つの有利な態様によれば、L−及び/又はD−ホモセリンのメチオニンへの化学的変換方法を、下記の工程:(a)L−及び/又はD−ホモセリンのアシル化剤を用いる式VIII
【化13】

[式中、Rは水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表す]のN−アシル−L−及び/又はD−ホモセリンラクトンへのN−アシル化及び閉環、(b)工程(a)で得たN−アシル−ホモセリンラクトンのMeSHとの塩基性又は酸性触媒の存在における式VII
【化14】

の相応するN−アシル−メチオニンへの反応、(c)工程(b)で得たN−アシル−L−及び/又はD−メチオニンの温度>95℃における相応するメチオニンへの加水分解を実施することで行うことができる。
【0076】
工程(a)でアシル化するために、有利には一般式R−CO−Xのアシル化剤を使用するが、その際X=RCOO、OR(R=メチル又はエチル)、Cl又はBrであり、R及びRは同一又は異なるものであってよく、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表す。その際、工程(a)のN−アセチル化は、最初に生成したO−アシル−ホモセリンをN−アシル−ホモセリンに変換し、次いで閉環を行うことによってか又は現場で行われるラクトン化及び直接N−アシル化の組合せによって行われる。
【0077】
更に、工程(a)のアシル化で溶剤として、有利にはカルボン酸RCOOH又はRCOOH(その際、R又はRは前記したものを表す)を、場合によりその他の補助溶剤の存在で使用するが、これはC−〜C−ケトン、有利にはMIBK又はアセトン、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートから成る群から成る。
【0078】
工程(a)の塩基性触媒としては、有利にはピリジン誘導体、有利にはジメチルアミノピリジン(DMAP)又はカルボニルジイミダゾールを使用する。
【0079】
その際、工程(a)は有利には温度20〜100℃、特に50〜90℃で行う。
【0080】
その際、工程(b)の塩基性触媒としては、有利にはC原子最高48個を有するテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、アルカリ−又はアルカリ土類金属水酸化物、−炭酸塩、−炭酸水素塩、−酢酸塩(その際、アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表し、アルカリ土類はマグネシウム、カルシウム又はバリウムを表す)、C原子最高36個及びN原子1〜4個を有する第3アミン、テトラ(C−C−アルキル)−グアニジン、二環式アミン、有利にはDBU(1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン)及びTBD(1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン)、ピリジン及び強アルカリイオン交換体樹脂から成る群から選択した触媒を使用する。
【0081】
工程(b)でその他に有利に使用される塩基性触媒は、一般式NRのトリアルキルアミンであるが、その際R、R及びRは同一又は異なるものであってよく、線状又は枝分れC−〜C12−アルキル基、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル又はs−ブチルを表す。
【0082】
極めて特に有利な塩基性触媒は、N(メチル)、N(メチル)(エチル)、N(メチル)(エチル)、N(エチル)、N(n−プロピル)、N(エチル)(iプロピル)又はN(n−ブチル)であるが、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、DBU、TBD、ヘキサメチレンエトラアミン、テトラメチルエチレンジアミン又はテトラメチルグアニジンでもある。
【0083】
塩基性触媒として、RN−ヒドロキシド、Li−、Na−、K−、Rb−、Cs−ヒドロキシド、Mg−、Ca−、Ba−ヒドロキシドも特に有利に使用されるが、その際、R、R、R及びRは同一又は異なるものであってよく、線状又は枝分れC−〜C12−アルキル基、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル又はs−ブチルを表す。
【0084】
特に有利な塩基性触媒としてRNR−置換された、架橋されたポリスチレン樹脂も使用されるが、その際、R、R及びRは同一又は異なるものであってよく、線状又は場合により枝分れC−〜C−アルキル基、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルを表す。
【0085】
工程(b)で反応の迅速かつできる限り完全な進行を達成するために、ヒドロキシド−又はN−当量として計算して、1〜20モル当量の塩基、有利には1〜10モル当量の塩基を使用する。
【0086】
しかし、工程(b)で酸性触媒を使用する場合には、pka<3を有するブレンステッド酸又はルイス酸から成る群から選択した酸性触媒を使用するのが有利である。
【0087】
その際酸性触媒として、有利にはHCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)を使用する。
【0088】
しかし酸性触媒として、反応実施後に容易に分離可能である強酸性イオン交換体樹脂を使用することもできる。
【0089】
その際有利には、場合により置換された、有利にはジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンスルホン酸樹脂を使用する。
【0090】
(WO−及びCsO)含有酸化アルミニウム、ゼオライト及びモンモリロナイトの群から成る不均一系酸性触媒を本発明により使用することもできる。前記酸化アルミニウムでは、WO−含量5〜15%及びCsO含量5〜15%を有するものが有利である。
【0091】
ここで、ルイス酸−触媒も有利に使用される。
【0092】
その際ルイス酸として、AlCl、ZnCl、BF*OEt、SnCl、FeClの群から選択した低分子ルイス酸を使用する。
【0093】
工程(b)の反応を有機溶剤中の溶液及び/又は懸濁液中で実施するのも有利である。
【0094】
その際、溶剤として水及び/又はC−〜C−ケトン、有利にはMIBK又はアセトン、直鎖又は枝分れC−〜C−アルコール、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートの群から選択した少なくとも1種の低分子有機溶剤を使用することができる。
【0095】
工程(c)の加水分解は、水性の溶液及び/又は懸濁液中で実施することができる。
【0096】
しかし付加的に、C−〜C−ケトン、有利にはMIBK又はアセトン、直鎖又は枝分れC−〜C−アルコール、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートの群から選択した少なくとも1種の低分子有機溶剤を使用することも有利であろう。
【0097】
その際、工程(c)の反応は通常温度90〜180℃、有利には100〜160℃、特に120〜150℃、極めて特に有利には130〜140℃で行う。
【0098】
工程(c)の加水分解反応を促進するために、付加的に酸性、塩基性又はルイス酸−触媒又は酸性及びルイス酸−触媒の組合せの存在で操作することができる。
【0099】
本発明による生物工学的工程及び化学的工程の組合せを含むメチオニン法は、慣用の方法に比して、L−メチオニンを供給すべきである特に経済的で安全な方法に対する前記要求を考慮して、総じてより多くの利点を有する。
【0100】
先ず第一に、プロペン(又はアクロレイン)の代わりの糖を使用することによって、メチオニン製造が、先ず現在の原料費用の観点から、他方では上昇を続けている原油価格と無関係になることによって、より経済的に実施することができることになる。
【0101】
第二に、使用された糖が再生可能な原料であるので、資源保護に貴重な貢献を果たす。更に糖は工業的中間生成物アクロレイン及び青酸に比して遙かに危険性が低いので、原料として糖をこれらの原料の代わりに使用することによって、製造方法の危険性を著しく減少させ、従って安全性を高める。
【0102】
第三に、L−ホモセリンのエナンチオマー特異的な製造を可能にする発酵工程と好適な比較的温和な化学的方法工程との組合せによって、ラセミ体化なしのL−ホモセリンのL−メチオニンへの変換が可能になり、このようにしてエマンチオマー純粋なL−メチオニンが得られる。前記したように、L−メチオニンは現在製造されるD,L−メチオニンと比してより高い生物学的利用能を有する。
【0103】
第四に、前記したような組み合せ製造方法を用いるエナンチオマー純粋なL−メチオニンの製造によって、L−メチオニンの純粋な生物工学的方法での製造に伴う最初に記載した問題を容易に克服することができる。
【0104】
次に本発明を実施例につき詳説するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0105】
L−ホモセリンのL−メチオニンへの直接反応
例1
不均一系触媒(Al担体上のWO7〜10%/CsO7〜10%−製造者−Degussa)を用いる反応
【化15】

【0106】
L−ホモセリン(生物工学的に製造)及び微細に粉砕した不均一系触媒をオートクレーブ中に装入し、MeSHを液体として添加した。引き続きオートクレーブを140℃で2、5時間加熱した。放圧し、MeSHを除去した後、20%NaOH水溶液で洗浄した。引き続き濾過し、HPCL分析により、理論値の3%の収率のL−メチオニンが得られた。
【0107】
比較用:純粋なAl−担体を用いる同様な試験により痕跡のメチオニンが得られた。
【0108】
例2 − i−プロピルリオール(iPrSH)及び酸/ルイス酸を用いる反応(特許請求項目に入らない)
【化16】

【0109】
iPrSH(20ml)をHBrで徐々にガス処理した。引き続きL−ホモセリン(10ミリモル)を添加し、混合物を10分間攪拌した。その後、AlCl(40ミリモル)を添加し、反応混合物を室温で4時間攪拌した。反応混合物をHO/HClでクウェンチし、次いでNaOHで塩基性にした。Al(OH)の吸引濾過後、濾液溶液を濃縮乾燥させ、HPCLで分析した。(1)の収率=8.2%。
【0110】
C−4原子におけるL−ホモセリンの活性化及びL−メチオニンへの反応
例3 − 硫酸塩による活性化及び引き続いてのNaSMeによる求核的置換
【化17】

【0111】
L−ホモセリン(19.4ミリモル)に濃HSO(10ml)を冷却下で加えた。生じた反応混合物をホモセリンが溶解するまで30分間攪拌した。引き続き溶液を室温で3時間放置した。その後反応溶液を−78℃に冷却したジエチルエーテル800ml中に入れ、よく攪拌し、上澄み液を傾斜除去した。固体を−78℃でジエチルエーテル各200mlで3回洗浄した。帯白黄色固体を吸引濾過後、油ポンプ真空中で2時間乾燥させた。硫酸塩エステル(2)の収率:88.0%。
【0112】
硫酸塩エステル(19ミリモル)をDMSO(20ml)中に溶解させ、NaSMe(50ミリモル)を加えた。この反応溶液を80℃で攪拌し、90分後HPLCを用いて分析した−L−メチオニンの収率:19.6%。溶剤としてN−メチルピロリドン(NMP)中での試験の反復により、10分後にL−メチオニン33.6%が得られた。
【0113】
L−ホモセリンの環化及びL−メチオニンへの反応
例4 − 2−アミノ−4−ブチロラクトン−ヒドロクロリド−塩の製造
ラクトン生成による活性化及び引き続いてのNaSMeによる求核的置換
【化18】

【0114】
L−ホモセリン(0.84ミリモル)に濃HCl600ml(6.1モル)を加えた。溶液を全て溶解し終わるまで約15分間攪拌し、引き続き水を真空下で1.5時間に渡り除去した。残分を乾燥させた。収率:2−アミノ−4−ブチロラクトンヒドロクロリド−塩99%。
【0115】
例5 − 2−アミノ−4−ブチロラクトン−ヒドロクロリド−塩のL−メチオニンへの反応
【化19】

【0116】
2−アミノ−4−ブチロラクトンヒドロクロリド塩(22ミリモル)をオートクレーブ中のHCl−飽和エタンスルホン酸(0.2モル)中に装入し、液体形のMeSH(0.83モル)をこの混合物に加えた。引き続きオートクレーブを閉じ、70℃で5時間加熱した。放圧し、冷却後、反応溶液をHPCLを用いて分析した。L−メチオニン収率は21%であった。
【0117】
例6 − 2−アミノ−4−ブチロラクトン−ヒドロブロミド−塩のL−メチオニンへの反応
【化20】

【0118】
高圧オートクレーブ中で臭化アルミニウム(75ミリモル)を注意深くMeSH(50ml)に添加した。引き続きアミノラクトンの臭化物塩(Aldrichから得た)(25ミリモル)を添加した。オートクレーブを室温で1時間、その後40℃で2時間震盪した。オートクレーブを冷却し、放圧した。MeSHを除去後、残分を水でクウェンチし、pH値をNaOHで塩基性にした。生じた沈殿を濾過により除去した。L−メチオニン収率は33%であった。
【0119】
例7 − 2−アミノ−4−ブチロラクトン−ヒドロクロリド−塩の2−アミノ−4−メチルチオ酪酸への反応
【化21】

【0120】
アミノラクトンの塩化物塩(10ミリモル)並びにAlCl(30ミリモル)をオートクレーブ中に装入し、MeSH(30ml)を徐々に加え、攪拌した。引き続き混合物を室温で71時間攪拌した。混合物を水でクウェンチした後、2−アミノ−4−メチルチオ酪酸の収率はHPLCにより27%と判明した。
【0121】
例8 − 2−アミノ−4−ブチロラクトン−ヒドロクロリド−塩の2−アミノ−4−イソプロピルチオ酪酸への反応(特許請求項目には入らない)
【化22】

【0122】
i−プロピルチオール(iPrSH、20ml)にAlCl(30ミリモル)を加え、攪拌した。引き続きアミノラクトンの塩化物塩(10ミリモル)を加え、混合物を室温で24時間攪拌した。反応混合物を水でクウェンチした後、2−アミノ−4−イソプロピルチオ酪酸の収率はHPLCにより77%と判明した。
【0123】
例9 − 2−アミノ−4−ブチロラクトン−ヒドロクロリド−塩のL−メチオニンへの反応
【化23】

【0124】
2−アミノ−4−ブチロラクトン−ヒドロクロリド−塩(70ミリモル)及びTBD(1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン)(140ミリモル)をオートクレーブ中に装入し、液体MeSHを加えた。閉じたオートクレーブを70℃に2.5時間加熱した。引き続きオートクレーブを軽く冷却し、放圧した。MeSHを除去し、残分をHPCLを用いて検査した。L−メチオニン収率は21%であった。
【0125】
例10 − L−ホモセリンの環化及びN−アシル−2−アミノ−4−ブチロラクトンへのN−アシル化及びN−アシル−L−メチオニン(L−メチオニンの先駆物質)への更なる反応
【化24】

【0126】
L−ホモセリン(2モル)を無水酢酸900ml中に懸濁させ、スパーテル先端量のジメチルアミノピリジン(DMAP)を加えた。徐々に60℃に加温した。約1時間後温度は急速に100℃に上昇した。引き続き反応混合物を80℃で90分間攪拌し、真空下で濃縮乾燥させた。得られた黄色油状物をイソプロパノール(600ml)中に入れ、0℃で一夜放置した。生じた結晶を濾過し、冷イソプロパノールで洗浄し、真空下で乾燥させた。収率は60%でN−アセチル−2−アミノ−4−ブチロラクトンを単離し、純度は99%であった(HPLCによる)。
【0127】
引き続き、N−アセチル−2−アミノブチロラクトン(1eq)をMeSH中で種々の塩基と反応させてN−アセチルメチオニンにした。N−アセチルアミノラクトン、塩基及びMeSHの混合物(14Eq)を密閉したオートクレーブ中で加熱した。冷却し、放圧し、MeSHを除去した後、残留した油状物をHPLCを用いて検査した。その他の詳細並びに得られたN−アセチル−L−メチオニンの収率を下記の表に記載する:
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモセリンから出発して、L−メチオニン、D−メチオニン又はL−及びD−メチオニンの任意の混合物を製造する方法において、下記式I
【化1】

のL−ホモセリン、D−ホモセリン又はL−及びD−ホモセリンの相応する混合物を、化学的変換によりメチオニンに変え、その際中間段階N−カルバモイルホモセリン、4−(2−ブロムエチル)−ヒダントイン及び4−(2−メチルチオエチル)−ヒダントインを経由しないことを特徴とする、ホモセリンからのメチオニンの製法。
【請求項2】
L−及び/又はD−ホモセリンの化学的変換をMeSHを用いて場合により酸性触媒の存在で実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1〜100モル当量、有利には1〜50モル当量のMeSHを使用することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
pka≦3を有するブレンステッド酸から成る群から選択した酸性触媒を使用することを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
酸性触媒として、HCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)を使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ルイス酸−触媒を使用することを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項7】
ルイス酸−触媒として、AlCl、ZnCl、BF*OEt、SnCl、FeClの群から選択した少なくとも1種の低分子ルイス酸を使用することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
酸性触媒として、強酸性イオン交換体樹脂を使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
酸性触媒として、場合により置換された、例えばジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンスルホン酸樹脂を使用することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(WO−及びCsO)含有酸化アルミニウム、ゼオライト及びモンモリロナイトの群から成る不均一系酸性触媒を使用することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
反応を溶液及び/又は懸濁液中で水及び/又は有機溶剤の存在で実施することを特徴とする、請求項2から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水及び/又はC−〜C−ケトン、有利にはMIBK又はアセトン、直鎖又は枝分れC−〜C−アルコール、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートから成る群から選択した、少なくとも1種の低分子有機溶剤を使用することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
L−及び/又はD−ホモセリンの化学的変換を、第1工程でホモセリンのC−原子で脱離基Yを導入することによって式II
【化2】

[式中、Yはハロゲン(=塩素、臭素又は沃素)、スルホニルオキシ(=pTsO、CSO、HCSO、HSO又はCFSO)、スルフェート(OSOH)又はホスフェート(OPOH)を表す]の化合物を製造し、これを次いで第2工程でMeSHと反応させてL−メチオニン、D−メチオニン又はL−及びD−メチオニンの相応する混合物にすることで実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
脱離基Yを導入するために、Y=ハロゲンの場合に、第1工程で相応してPCl、PCl、BBr、PI、POCl、SOCl又はSOBrを使用することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
脱離基Yを導入するために、Y=スルホニルオキシの場合に、第1工程で相応してp−TsCl、CSOCl、HCSOCl、HSOCl又はCFSOClを使用することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
脱離基Yを導入するために、Y=ホスフェートの場合に、第1工程で相応してSO、HSO又はオレウムを使用することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
式IIの化合物とMeSHとの反応を塩基性又は酸性触媒の存在で行うことを特徴とする、請求項13から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
塩基性触媒として、NaOH、KOH、ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン又はアルカリ−又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩又は炭酸水素塩を使用し、その際、アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表し、アルカリ土類はマグネシウム、カルシウム又はバリウムを表すことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
酸性触媒として、HCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)を使用することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
反応を有機溶剤及び/又は水の存在で行うことを特徴とする、請求項17から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
水及び/又はC−〜C−ケトン、有利にはMIBK又はアセトン、直鎖又は枝分れC−〜C−アルコール、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートから成る群から選択した少なくとも1種の低分子有機溶剤を使用することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
L−及び/又はD−ホモセリンの化学的変換を、第1工程で酸性触媒による環化によって式IIIの相応する2−アミノ−4−ブチロラクトン又はその塩(式IV)
【化3】

[式中、XはCl、Br、I、HSO、(SO1/2、HPO、(HPO1/2、(PO1/3又はR’−SO(R’=メチル、エチル、フェニル、トシル)を表す]を製造し、次いでこれを第2工程でMeSHと反応させてL−メチオニン、D−メチオニン又はL−及びD−メチオニンの相応する混合物にすることで実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
pka≦3を有するブレンステッド酸から成る群から選択した酸性触媒を使用することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
酸性触媒として、HCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)を使用することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
酸性触媒として強酸性イオン交換体樹脂を使用することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
酸性触媒として、場合により置換された、有利にはジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンスルホン酸樹脂を使用することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(WO−及びCsO)含有酸化アルミニウム、ゼオライト及びモンモリロナイトの群から成る不均一系酸性触媒を使用することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
ルイス酸−触媒を使用することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
ルイス酸触媒として、AlCl、ZnCl、BF*OEt、SnCl、FeClの群から選択した少なくとも1種の低分子ルイス酸を使用することを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
L−及び/又はD−ホモセリンの化学的変換を、下記の工程:
(a)アシル化剤を用いる式V
【化4】

[式中、R=水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表す]のN−アシル−L−及び/又はD−ホモセリンへのN−アシル化、
(b)工程(a)で得たN−アシル−ホモセリンVのMeSHとの塩基性又は酸性触媒の存在における式VI
【化5】

のN−アシル−メチオニンへの反応、
(c)工程(b)で得たN−アシル−L−及び/又はD−メチオニンの相応するメチオニンへの加水分解
を実施することで行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
工程(a)で一般式R−CO−Xのアシル化剤を使用し、その際X=RCOO、OR(R=メチル又はエチル)、Cl、Brであってよく、R及びRは同一又は異なるものであってよく、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表すことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
工程(b)で塩基性触媒として、NaOH、KOH、ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン又はアルカリ−又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩又は炭酸水素塩を使用し、その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表し、アルカリ土類はマグネシウム、カルシウム又はバリウムを表すことを特徴とする、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
工程(b)で酸性触媒として、HCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロル−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)を使用することを特徴とする、請求項30から31までの1項に記載の方法。
【請求項34】
L−及び/又はD−ホモセリンの化学的変換を、下記の工程:
(a)アシル化剤を用いる式V
【化6】

[式中、Rは水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表す]のN−アシル−L−及び/又はD−ホモセリンへのN−アシル化、
(b)工程(a)で得た化合物VのC4−原子における脱離基Yの導入による式VI
【化7】

[式中、Yはハロゲン(=塩素、臭素又は沃素)、スルホニルオキシ(=pTsO、CSO、HCSO又はHSO)、スルフェート(OSOH)又はホスフェート(OPOH)を表す]の化合物への変換、
(c)工程(b)で得た化合物VIのMeSHとの塩基性又は酸性触媒の存在における式VII
【化8】

のN−アシル−L−メチオニン、N−アシル−D−メチオニン又はN−アシル−L−及び/又はD−メチオニンの相応する混合物への反応、
(d)工程(c)で得たN−アシル−L−及び/又はD−メチオニンVIIのL−及び/又はD−メチオニンへの加水分解
を実施するようにして行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
工程(a)で、一般式R−CO−Xのアシル化剤を使用するが、その際X=RCOO、OR(R=メチル又はエチル)、Cl又はBrであり、R及びRは同一又は異なるものであってよく、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表すことを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
脱離基Yを導入するために、Y=ハロゲンの場合に、第1工程で相応してPCl、BBr、PI、SOCl又はSOBrを使用することを特徴とする、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
脱離基Yを導入するために、第1工程で、Y=スルホニルオキシの場合には、相応してp−TsCl、CSOCl、HCSOCl、HSOCl又はCFSOClを、Y=スルフェート(OSOH)の場合には、SO、HSO又はオレウムを、Y=ホスフェート(OPOH)の場合には、ポリ燐酸を使用することを特徴とする、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項38】
工程(c)で塩基性触媒として、NaOH、KOH、ピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン又はアルカリ−又はアルカリ土類金属の酢酸塩、炭酸塩又は炭酸水素塩を使用し、その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表し、アルカリ土類はマグネシウム、カルシウム又はバリウムを表すことを特徴とする、請求項34から37までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
工程(c)で酸性触媒として、HCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)を使用することを特徴とする、請求項34から37までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
L−及び/又はD−ホモセリンの化学的変換を、下記の工程:
(a)アシル化剤を用いる式VIII
【化9】

[式中、Rは水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表す]のN−アシル−L−及び/又はD−ホモセリンラクトンへのN−アシル化及び閉環、
(b)工程(a)で得たN−アシル−ホモセリンラクトンのMeSHとの塩基性又は酸性触媒の存在における式VII
【化10】

のN−アシル−メチオニンへの反応、
(c)工程(b)で得たN−アシル−メチオニンの温度>95℃におけるメチオニンへの加水分解
を実施することで行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
工程(a)で、一般式R−CO−Xのアシル化剤を使用し、その際X=RCOO、OR(R=メチル又はエチル)、Cl又はBrであり、R及びRは同一又は異なるものであってよく、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、フェニル、モノ−、ジ−又はトリハロゲンアルキル(ハロゲン=F又はCl)、有利にはCF又はCCl、ベンジルオキシカルボニル又はC−〜C−アルキルオキシカルボニル、有利にはt−ブチルオキシカルボニル又はメチルオキシカルボニルを表すことを特徴とする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
工程(a)で溶剤として、カルボン酸RCOOH又はRCOOH(その際、R又はRは前記したものを表す)を、場合により、C−〜C−ケトン、有利にはMIBK又はアセトン、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートから成る群からのその他の補助溶剤の存在で使用することを特徴とする、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
工程(a)で、ピリジン誘導体、有利にはジメチルアミノピリジン(DMAP)又はカルボニルジイミダゾールを触媒として使用することを特徴とする、請求項40から42までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
工程(a)を温度20〜100℃、有利には50〜90℃で行うことを特徴とする、請求項40から43までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
工程(b)で、C原子最高48個を有するテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、アルカリ−又はアルカリ土類金属水酸化物、−炭酸塩、−炭酸水素塩、−酢酸塩(その際、アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表し、アルカリ土類はマグネシウム、カルシウム又はバリウムを表す)、C原子最高36個及びN原子1〜4個を有する第3アミン、テトラ(C−C−アルキル)−グアニジン、二環式アミン、有利にはDBU(1,8−ジアゾビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン)及びTBD(1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセ−5−エン)及び強アルカリ性イオン交換体樹脂並びにピリジンから成る群から選択した塩基性触媒を使用することを特徴とする、請求項40から44までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
塩基性触媒として、一般式NRのトリアルキルアミンを使用し、その際R、R及びRは同一又は異なるものであってよく、線状又は枝分れC−〜C12−アルキル基、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル又はs−ブチルを表すことを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
塩基性触媒として、N(メチル)、N(メチル)(エチル)、N(メチル)(エチル)、N(エチル)、N(n−プロピル)、N(エチル)(iプロピル)又はN(n−ブチル)を使用することを特徴とする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
塩基性触媒として、DABCO、DBU、TBD、ヘキサメチレンテトラアミン、テトラメチルエチレンジアミン又はテトラメチルグアニジンを使用することを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
塩基性触媒として、RN−ヒドロキシド、Li−、Na−、K−、Rb−、Cs−ヒドロキシド、Mg−、Ca−、Ba−ヒドロキシドを使用し、その際、R、R、R及びRは同一又は異なるものであってよく、線状又は枝分れC−〜C12−アルキル基、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル又はs−ブチルを表すことを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
アルカリ性イオン交換体として、RNR−置換された、架橋されたポリスチレン樹脂を使用し、その際、R、R及びRは同一又は異なるものであってよく、線状又は場合により枝分れC−〜C−アルキル基、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルを表すことを特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
工程(b)で、ヒドロキシド−又はN−当量として計算して、1〜20モル当量の塩基、有利には1〜10モル当量の塩基を使用することを特徴とする、請求項40から50までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
工程(b)でpka<3を有するブレンステッド酸又はルイス酸から成る群から選択した酸性触媒を使用することを特徴とする、請求項40から50までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
酸性触媒として、HCl、HBr、HI、HSO、アルカリHSO、HPO、アルカリHPO(その際アルカリはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表す)、ポリ燐酸、C−C12−アルキルスルホン酸、C−C10−アリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸又はテトラフルオロエチレン及びペルフルオロ−3,6−ジオキソ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸から成るコポリマー(Nafion)を使用することを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
酸性触媒として強酸性イオン交換体樹脂を使用することを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
酸性触媒として、場合により置換された、有利にはジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンスルホン酸樹脂を使用することを特徴とする、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
(WO−及びCsO)含有酸化アルミニウム、ゼオライト及びモンモリロナイトの群から成る不均一系酸性触媒を使用することを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
ルイス酸−触媒を使用することを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
ルイス酸触媒として、AlCl、ZnCl、BF*OEt、SnCl、FeClを含む群から選択した少なくとも1種の低分子ルイス酸を使用することを特徴とする、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
工程(b)の反応を有機溶剤中の溶液及び/又は懸濁液中で実施することを特徴とする、請求項40から58までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
水及び/又はC−〜C−ケトン、有利にはMIBK又はアセトン、直鎖又は枝分れC−〜C−アルコール、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートから成る群から選択した少なくとも1種の低分子有機溶剤を使用することを特徴とする、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
工程(c)の加水分解を、水性の溶液及び/又は懸濁液中で実施することを特徴とする、請求項41から60までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
付加的に、C−〜C−ケトン、有利にはMIBK又はアセトン、直鎖又は枝分れC−〜C−アルコール、C−〜C10−カルボン酸エステル、有利には酢酸エチルエステル又は−ブチルエステル、C−〜C−カルボン酸アミド、有利にはDMF又はジメチルアセトアミド、C−〜C10−芳香族物質、有利にはトルエン及びC−〜C−環状カーボネート、有利にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート又はブチレンカーボネートから成る群から選択した少なくとも1種の低分子有機溶剤を使用することを特徴とする、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
工程(c)の反応を温度90〜180℃、有利には100〜160℃、特に120〜150℃、極めて特に有利には130〜140℃で行うことを特徴とする、請求項41から62までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
工程(c)の反応を、付加的に酸性、塩基性又はルイス酸−触媒又は酸性及びルイス酸−触媒の組合せの存在で行うことを特徴とする、請求項41から63までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
使用されるL−ホモセリンが発酵を経て製造されたものであることを特徴とする、請求項1から64までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
L−配置を有するホモセリンのみを使用することを特徴とする、請求項1から64までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
使用されるL−ホモセリンが発酵を経て製造されたものであることを特徴とする、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
L−ホモセリン含有発酵液汁から水分除去によって製造したL−ホモセリンを含有する固体生成物を使用することを特徴とする、請求項65から67までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
L−ホモセリン含有発酵液汁をL−ホモセリンを排出する微生物を好適な培養培地で培養することによって製造したことを特徴とする、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
微生物が細菌であることを特徴とする、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
コリネバクテリア又はエシェリヒア属の細菌であることを特徴とする、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
発酵液汁中のL−ホモセリンの濃度が少なくとも1g/lであることを特徴とする、請求項68から71までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−524615(P2009−524615A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551744(P2008−551744)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050082
【国際公開番号】WO2007/085514
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】