ホログラムシールおよび偽造防止用光学積層体
【課題】 ホログラム画像の視認性を向上させ、加えて、偽造防止効果の高いホログラムシールを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、基材上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、反射性薄膜層が銀合金薄膜層を有し、かつ銀合金薄膜層に隣接する両面または片面にセラミックス材料が形成されてなる積層構造であることを特徴とする光学薄膜を用いることにより、ホログラム画像の視認性を向上させ、加えて、偽造防止効果の高いホログラムシールを提供することができる。
【解決手段】 本発明は、基材上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、反射性薄膜層が銀合金薄膜層を有し、かつ銀合金薄膜層に隣接する両面または片面にセラミックス材料が形成されてなる積層構造であることを特徴とする光学薄膜を用いることにより、ホログラム画像の視認性を向上させ、加えて、偽造防止効果の高いホログラムシールを提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム絵柄の視認性を向上させたホログラムシールに関する。加えて、本発明のホログラムシールを用いた場合の偽造防止効果の高い偽造防止用光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは光の干渉効果を利用して画像を立体的に再生する技術である。ホログラムの作製には高度な製造技術が用いられ、かつ箔状に形成することが可能であるため、例えば、紙幣、有価証券、債券、小切手、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、パスポートや免許証などの各種証明書、高額商品のパッケージ等の偽造、模造及び複製の防止に利用されている。
【0003】
ホログラムシールは基板上に凹凸画像が形成されており、凹凸による光の回折効果によって画像が浮かび上がる方式である。ホログラムシールには通常画像の輪郭を際立たせるための反射性薄膜層が設けられる。反射性薄膜層の効果によってホログラム画像の輪郭が明瞭に浮かび上がって視認性が向上することで偽造防止効果が高くなるのみならず、装飾性にも寄与するため一層商品価値が増大する。
【0004】
反射性薄膜層は、例えば酸化チタンを用いて単層で形成することができる(特許文献1参照)。しかしながら、この場合、視感平均反射率は27%程度である。視感平均反射率が27%程度では明るさが十分でないためホログラム画像が周囲の明るさに埋没して際立たない。反射率が低いとホログラム画像が暗くなるため視認性が悪くかつ装飾効果に劣るのみならず、本来の偽造防止効果が十分に発揮されなくなる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−358925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、ホログラムシールにおけるホログラム画像の視認性を向上させ、加えて、偽造防止効果の高い光学積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、基材上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、
反射性薄膜層が銀合金薄膜層単層からなる、あるいは、銀合金薄膜層の両面または片面にセラミックス材料が積層されていることを特徴とするホログラムシールである。
これによると、反射性薄膜層が銀合金薄膜層からなることで反射率が増大し、ホログラム画像が明るくなり、画像の視認性が向上する。更に、セラミックス薄膜層を銀合金薄膜層に隣接する両面または片面に設けることによって、反射性薄膜層における反射光の色の制御の自由度を増すことが可能となる。セラミックス薄膜層は銀合金薄膜層を腐食から防ぐ役割も果たし、結果として、ホログラムシールのセキュリティ性が向上し、更に装飾性を加味することができるようになる。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記反射性薄膜層の両面、または片面に硬化性透明樹脂による絵柄が印刷されており、前記反射性薄膜層のみが形成されている部分と、前記反射性薄膜層と硬化性透明樹脂層の積層構造が形成されている部分からなることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシールである。
反射性薄膜層のみが形成されている部分と、反射性薄膜層と硬化性透明樹脂層の積層構造が形成されている部分では反射率、かつ/または、色が異なるため装飾性が向上し、結果としてより一層の偽造防止効果が期待できる。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記反射性薄膜層の積層構造中に、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含する部分と、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含しない部分からなることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシールである。
反射性薄膜層の積層構造中に、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含する部分と、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含しない部分を形成することによって反射率、かつ/または、色の異なる部分ができるため装飾性が向上し、結果としてより一層の偽造防止効果が期待できる。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記銀合金薄膜層の銀合金が、銀中に金、銅、白金、錫、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ネオジウム、パラジウム、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、あるいはこれら金属元素のうち2種類以上を含有されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホログラムシールである。
銀の薄膜は、酸素、硫黄、ハロゲン、アルカリ等によって腐食しやすく、結果として凝集、マイグレーション等を引き起こして外観が損なわれる。しかし、銀中に上記他の金属元素を含有させることにより銀の化学的安定性を向上することができる。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のホログラムシールを用いた偽造防止用光学積層体である。
本発明のホログラムシールを使用することによってホログラム画像の視認性を向上させ、加えて、偽造防止効果の高い偽造防止用光学積層体を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のホログラムシールは、銀合金薄膜層を用いることによって反射率を増大し、視認性を向上させることができる。銀合金薄膜層に隣接してセラミックス層を形成すれば、反射性薄膜層の反射光の色を調整することができる。加えて、硬化性透明樹脂層を反射性薄膜層の両面、片面に形成する、あるいは、反射性薄膜が硬化性透明樹脂層を含むことによって、ホログラムシールの見込み角によって色の変化をさせることで偽造防止効果、および、装飾性の付与が可能となる。硬化性透明樹脂層の膜厚を調整することによって見込み角による色の変化も調整することができる。本発明のホログラムシールを偽造防止用光学積層体に用いることでセキュリティ保護に対する信頼性を向上することが可能となる。
本発明のホログラムシールは、CRT、液晶表示装置、PDP、窓ガラス、眼鏡、ゴーグル等の光学物品に設けられるフィルタとしても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明のホログラムシール1の一例を示す断面図を用いて説明する。図1は3層で構成された反射性薄膜層6、および硬化性透明樹脂層5からなるホログラム用光学薄膜層10を有するホログラムシール1の構成を示す断面図である。基材2上に剥離性保護層3が形成され、剥離性保護層3の上にホログラム形成層4が形成され、ホログラム形成層4の上に硬化性透明樹脂層5が形成され、硬化性透明樹脂層5を覆うように反射性薄膜層6が形成され、反射性薄膜層6を覆うように接着層11が形成されてなる。
【0014】
基材2としては、無機化合物成形物または有機化合物成形物が挙げられる。成形物の形状としては、表面が平滑であれば特に限定されず、板状、ロール状等が挙げられる。また、基材2は、無機化合物成形物または有機化合物成形物の積層体であってもよい。
【0015】
無機化合物成形物としては、例えば、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、無アルカリガラス、鉛ガラス等が挙げられる。有機化合物成形物としては、紙、合成紙、プラスチック等が挙げられる。特にプラスチックとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、ポリエチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等が挙げられる。
【0016】
基材2の厚さは、目的の用途に応じて適宜選択され、通常5〜300μmである。有機化合物成形物には、公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
【0017】
剥離性保護層3は、ホログラム形成層4と被接着物で基材2、例えば紙、プラスチック、ガラスなど無機・有機化合物成形物に対する接着性を有し、加えて、接着層11に較べて接着力が弱く、続いて行われるホログラム形成層4の積層に対して安定性を備えていればいかなるものでも構わない。例えば、熱可塑性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂あるいはこれらにオイルシリコン、脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛等を添加した有機化合物である。あるいは無機化合物を使用してもよい。
【0018】
剥離性保護層3の形成の一例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの混合物を用いてグラビア印刷法により、乾燥温度110℃で厚さ1.5μmを積層することができる。
【0019】
ホログラム形成層4はエンボス成形を行う際のプレス加工性に優れ、剥離性保護層3との接着性が良好であり、かつ硬化性透明樹脂層5及びホログラム用光学薄膜6との密着性に優れていればいかなるものでの構わない。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の熱硬化性樹脂等、あるいはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物等が使用できる。これらの樹脂等の混合物、2種類以上の樹脂等を積層して硬化した積層体、あるいは2種類以上の樹脂等を張り合わせた物も使用できる。
【0020】
ホログラム形成層4のレリーフ面は、微細な凹凸のパターンが形成されたニッケル製のホログラムスタンパを用いて加熱押圧するなどの周知の方法で形成できる。ホログラム形成層4表面に微細な凹凸のレリーフパターンが形成できるならフォトリソグラフィー等の他の手法を用いても構わない。
【0021】
ホログラム形成層4のレリーフ面上には防食剤を塗布して銀合金薄膜層8の腐食、劣化を防止する保護層を形成してもよい。本発明に使用する防食剤としては金属を防食する性能を有するものであれば如何なる材料でも構わない。
【0022】
防食剤としては、アミン類およびその誘導体、ピロール環を有する物、トリアゾール環を有する物、ピラゾール環を有する物、チアゾール環を有する物、イミダゾール環を有する物、インダゾール環を有する物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0023】
防食剤を塗布する方法としては、スプレー法、マイクログラビア法、スクリーンコート法、ディップコート法等のウェットプロセスに加えて、蒸着法、CVD法、プラズマ重合法等の真空ドライプロセスにより成膜することができる。防食剤の成分の有効範囲に関しては、防食剤を成膜した箇所の表面に成分が存在する場合のみならず、成分が内部に浸透して表面以外の箇所でも存在する場合も含む。
【0024】
硬化性透明樹脂層5は文字や絵柄のパターンで構成される。硬化性透明樹脂層5に形成する印刷パターンは任意に決定できる。
【0025】
硬化性透明樹脂層5は可視光領域の光に対して透過性があり、ホログラム形成層4のレリーフ面に形成したときに硬化すれば如何なる材料でも構わない。例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹、ビニル系樹脂、フタル酸系樹脂、ビニルブチラール樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、アノレギンド樹脂、ブチノレ化アミノアノレデヒド樹脂、アミノープラスト樹脂等の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0026】
硬化性透明樹脂層5の形成方法としては、シルクスクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の従来公知の印刷法や塗布方式を用いることができる。
【0027】
図1に示す反射性薄膜層6は、銀合金薄膜層の両面をセラミックス材料で挟んだ3層構造であり、ホログラム形成層に近い側の層から、セラミックス薄膜層7、銀合金薄膜層8、セラミックス薄膜層9の順に積層されている。
【0028】
銀合金薄膜層8の材料としては、銀を主成分とし、銀中に金、銅、白金、錫、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ネオジウム、パラジウム、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、ロジウムを添加した合金である。これら金属元素は、2種類以上を銀に含有させてもよい。
【0029】
銀に他の金属元素を添加する理由は次のようである。銀の薄膜は、酸素、硫黄、ハロゲン、アルカリ等によって腐食しやすく、結果として凝集、マイグレーション等を引き起こして外観が損なわれるが、しかし、銀に他の金属元素を含有させると銀の化学的安定性が向上するからである。したがって、これらの金属元素を銀に含有させる場合、その含有量は、銀合金薄膜層8の光学性能を悪化させずに耐腐食性に寄与する程度であればよく、0.1原子%〜20原子%程度である。
【0030】
セラミックス層7及び9は銀合金薄膜層8を外界の腐食・劣化起因物質から保護する役割を果たして耐環境性を向上させるのみならず、反射性薄膜層6の光学的性能にも寄与する。銀合金薄膜層8に隣接するセラミックス薄膜層の構成を選択することによって反射性薄膜層6の反射率を調整できるのみならず、ホログラム用光学薄膜層10の色相も調整可能になる。
【0031】
セラミック薄膜層7及び9の具体的な材料としては、二酸化チタン(n=2.3)、二酸化ジルコニウム(n=2.1)、硫化亜鉛(n=2.3)、二酸化セリウム(n=2.0〜2.4)、酸化亜鉛(n=2.0)、酸化タンタル(n=2.1)、酸化インジウム(n=2.0)、酸化錫(n=2.0)、酸化ビスマス(n=1.9〜2.4)、酸化ハフニウム(n=2.0)、酸化ニオブ(n=2.2)、酸化イットリウム(n=1.8)、セレニウム化亜鉛(n=2.6)、窒化シリコン(n=1.7)、フッ化マグネシウム(n=1.38)、フッ化カルシウム(n=1.25)、フッ化セリウム(n=1.63)、フッ化アルミニウム(n=1.36)、二酸化珪素(n=1.46)、酸化アルミニウム(n=1.63)、酸化マグネシウム(n=1.7)、フッ化ランタン(n=1.6)、フッ化アルミニウムナトリウム(n=1.35)、窒化チタン(n=1.4)の少なくとも1種類以上から選ばれることが望ましい。ここでnは屈折率を表す。一方、消衰係数は可視光の波長領域全体でゼロであることが望ましい。
【0032】
セラミックス薄膜層7及び9の材料は必ずしも同じでなくてもよく、適宜選択できる。加えて、銀合金薄膜層及びセラミックス薄膜層の数や配置の順番に関しても、所望の光学薄膜層の特性が得られるなら限定しない。更には、セラミックス薄膜層を形成せず、銀合金薄膜層8単層の構成でも構わない。
【0033】
セラミックス薄膜層7及び9は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、CVD法、湿式塗工法等の従来公知の方法により形成できる。
【0034】
反射性薄膜層6が銀合金薄膜層を有することで反射率が増大し、ホログラム画像が明るくなって画像の視認性が向上する。更に、セラミックス薄膜層を銀合金薄膜層に隣接して設けることによって反射性薄膜層6における反射光の色の制御の自由度を増すことが可能になる。セラミックス薄膜層は銀合金薄膜層を腐食から防ぐ役割も果たす。結果として、ホログラムシールのセキュリティ性が増し、更に装飾性を加味することができるようになる。
【0035】
また、硬化性透明樹脂層5及び反射性薄膜層6の配置に関しては、反射性薄膜層6の両面または片面に硬化性透明樹脂層5を形成、もしくは、反射性薄膜層6の積層構造中に硬化性透明樹脂層5を形成でき、更には、硬化性透明樹脂層5を形成せず、反射性薄膜層6単層の構成でも構わない。反射性薄膜層6単層の場合は、反射性薄膜層6を形成した部分全体で反射率の高いホログラムシールを得ることができるため、明るい偽造防止用光学積層体になる。
【0036】
接着層11は剥離性保護層3よりも被接着物に対する接着力が強く、反射性薄膜層6を変質、変色、劣化させるものでなければいかなるものでも構わない。接着層11の材料としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系接着剤、ポリエステル系ポリアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
接着層11の材料には銀合金薄膜層8の腐食・劣化防止のため防食剤を含有させてもよい。防食剤としては保護層で用いた材料と同じものが使用できる。
【0038】
接着層11の形成方法としては、シルクスクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の従来公知の印刷法や塗布方式を用いることができる。
【0039】
図1のホログラムシール1は接着層11を紙、プラスチックカード、ガラス等の被接着物に密着して張り合わせ、剥離性保護層3と基材2の界面で基材2を剥離して使用される。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0041】
<実施例1>
図2は反射性薄膜層の片面に硬化性透明樹脂層を有するホログラムシール1の構成を示す断面図である。基材2には厚さ12μmのポリエステルフィルムを用い、基材2の上に剥離性保護層3としてアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの混合物にオイルシリコンを添加した熱可塑性樹脂をグラビア印刷法によって形成した。剥離性保護層3の上にアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を重量比5:2で混合した混合物を用いてホログラム形成層4を形成した。ホログラム形成層4のレリーフ面全面に防食剤として2‐ヘプタデシルイミダゾールをメタノールの溶媒に溶解した溶液をマイクログラビア法により塗布し、保護層12を形成した。
【0042】
保護層12の一部を覆うように硬化性透明樹脂層5をアクリルを用いてシルクスクリーン印刷法によって絵柄を印刷して物理膜厚で400nm形成した。アクリル中には銀合金の腐食を防止するための防食剤として2‐ヘプタデシルイミダゾールをメタノールの溶媒に溶解した溶液を含有させた。
【0043】
続いて、ホログラム形成層4と硬化性透明樹脂層5の全面を覆うように3層構成の反射性薄膜層6を形成した。まず、硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で34nm成膜してセラミックス薄膜層7を形成した。セラミックス薄膜層7の上に銀中に金1.5原子%および銅0.5原子%を含有する銀合金をスパッタリング法により堆積させ、物理膜厚で20nm成膜して銀合金薄膜層8を形成した。更に銀合金薄膜層8の上に硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で77nm成膜しセラミックス薄膜層9を形成した。
図3に反射性薄膜層6を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は55%と高い値であった。図4に反射性薄膜層6の見込み角を0〜90°まで変化させたときのa*b*色度図を示す。
【0044】
図5に硬化性透明樹脂層5上に反射性薄膜層6を形成した場合のホログラム用光学薄膜層10を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は50%であった。図6にホログラム用光学薄膜層10の見込み角を0〜90°まで変化させたときのa*b*色度図を示す。ホログラム用光学薄膜層10は硬化性透明樹脂層5の光の干渉効果によって見込み角の違いで色が様々に変化するが、一方、反射性薄膜層6は見込み角による色の変化が少ない。
【0045】
反射性薄膜層6の上に接着層11として、塩化ビニル−酢酸ビニル重合体、ポリエステル樹脂、メチルエチルケトン、トルエン、及び防食剤として2‐ヘプタデシルイミダゾールを含有させた混合物をグラビア印刷法により形成してホログラムシール1を完成させた。
【0046】
ホログラムシール1を正面から見たとき反射性薄膜層6の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、ホログラム用光学薄膜層10の色が見込み角で多彩に変化するため偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0047】
<実施例2>
図7は反射性薄膜層の積層構造中に硬化性透明樹脂層を有するホログラムシール1の構成を示す断面図である。ホログラム用光学薄膜層10の構成以外は実施例1と同様に作製したホログラムシール1を得た。ホログラム用光学薄膜層10の層構成に関しては次のように作製した。先ず、硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で34nm成膜してセラミックス薄膜層7を形成した。セラミックス薄膜層7の上に銀中に金1.5原子%および銅0.5原子%を含有する銀合金をスパッタリング法により堆積させ、物理膜厚で20nm成膜して銀合金薄膜層8を形成した。銀合金薄膜層8の一部を覆うように硬化性透明樹脂層5をアクリルを用いてシルクスクリーン印刷法によって絵柄を印刷して物理膜厚で500nm形成した。更に銀合金薄膜層8と硬化性透明樹脂層5の全面を覆うように硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で77nm成膜しセラミックス薄膜層9を形成した。
【0048】
図8にホログラム用光学薄膜10を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は40%であった。図9に真正面からホログラム用光学薄膜10を見たときのa*b*色度図を示す。
【0049】
ホログラムシール1を正面から見たとき反射性薄膜6の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、ホログラム用光学薄膜層10の色が見込み角で多彩に変化するため偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0050】
<比較例1>
図10は硬化性透明樹脂層を有さず、反射性薄膜層の構成が単層であるホログラムシール1の構成を示す断面図である。反射性薄膜層6の材料が酸化チタンであること、および硬化性透明樹脂層が無いこと以外は実施例1と同様に作製したホログラムシール1を得た。保護層が無いのは反射性薄膜層6の材料が銀合金ではなく、銀よりもずっと腐食し難い酸化チタンだからである。反射性薄膜層6に関しては次のように作製した。酸化チタンを電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で68nm成膜して単層の反射性薄膜層6を形成した。
【0051】
図11に反射性薄膜層6を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は25%と低い値であった。図12に反射性薄膜層6の見込み角を0〜90°まで変化させたときのa*b*色度図を示す。反射性薄膜層6は反射率が低く、見込み角による色の変化が少ないため、ホログラム画像の輪郭が明瞭にならなかった。加えて、偽造防止効果、および装飾性の付与に関しても、見込み角のよる色の変化が少ないため実施例1ないし2と較べて十分でなかった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のホログラム用光学薄膜を有するホログラムシールの一構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1におけるホログラムシールの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1における反射性薄膜の反射スペクトル図である。
【図4】本発明の実施例1における反射性薄膜のa*b*色度図である。
【図5】本発明の実施例1におけるホログラム用光学薄膜の反射スペクトル図である。
【図6】本発明の実施例1におけるホログラム用光学薄膜のa*b*色度図である。
【図7】本発明の実施例2におけるホログラムシールの構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例2におけるホログラム用光学薄膜の反射スペクトル図である。
【図9】本発明の実施例2におけるホログラム用光学薄膜のa*b*色度図である。
【図10】本発明の比較例1におけるホログラムシールの構成を示す断面図である。
【図11】本発明の比較例1における反射性薄膜の反射スペクトル図である。
【図12】本発明の比較例1における反射性薄膜のa*b*色度図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ホログラムシール
2 基材
3 剥離性保護層
4 ホログラム形成層
5 硬化性透明樹脂層
6 反射性薄膜層
7、9 セラミックス薄膜層
8 銀合金薄膜層
10 ホログラム用光学薄膜層
11 接着層
12 保護層
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム絵柄の視認性を向上させたホログラムシールに関する。加えて、本発明のホログラムシールを用いた場合の偽造防止効果の高い偽造防止用光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは光の干渉効果を利用して画像を立体的に再生する技術である。ホログラムの作製には高度な製造技術が用いられ、かつ箔状に形成することが可能であるため、例えば、紙幣、有価証券、債券、小切手、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、パスポートや免許証などの各種証明書、高額商品のパッケージ等の偽造、模造及び複製の防止に利用されている。
【0003】
ホログラムシールは基板上に凹凸画像が形成されており、凹凸による光の回折効果によって画像が浮かび上がる方式である。ホログラムシールには通常画像の輪郭を際立たせるための反射性薄膜層が設けられる。反射性薄膜層の効果によってホログラム画像の輪郭が明瞭に浮かび上がって視認性が向上することで偽造防止効果が高くなるのみならず、装飾性にも寄与するため一層商品価値が増大する。
【0004】
反射性薄膜層は、例えば酸化チタンを用いて単層で形成することができる(特許文献1参照)。しかしながら、この場合、視感平均反射率は27%程度である。視感平均反射率が27%程度では明るさが十分でないためホログラム画像が周囲の明るさに埋没して際立たない。反射率が低いとホログラム画像が暗くなるため視認性が悪くかつ装飾効果に劣るのみならず、本来の偽造防止効果が十分に発揮されなくなる。
【0005】
【特許文献1】特開2004−358925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、ホログラムシールにおけるホログラム画像の視認性を向上させ、加えて、偽造防止効果の高い光学積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、基材上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、
反射性薄膜層が銀合金薄膜層単層からなる、あるいは、銀合金薄膜層の両面または片面にセラミックス材料が積層されていることを特徴とするホログラムシールである。
これによると、反射性薄膜層が銀合金薄膜層からなることで反射率が増大し、ホログラム画像が明るくなり、画像の視認性が向上する。更に、セラミックス薄膜層を銀合金薄膜層に隣接する両面または片面に設けることによって、反射性薄膜層における反射光の色の制御の自由度を増すことが可能となる。セラミックス薄膜層は銀合金薄膜層を腐食から防ぐ役割も果たし、結果として、ホログラムシールのセキュリティ性が向上し、更に装飾性を加味することができるようになる。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記反射性薄膜層の両面、または片面に硬化性透明樹脂による絵柄が印刷されており、前記反射性薄膜層のみが形成されている部分と、前記反射性薄膜層と硬化性透明樹脂層の積層構造が形成されている部分からなることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシールである。
反射性薄膜層のみが形成されている部分と、反射性薄膜層と硬化性透明樹脂層の積層構造が形成されている部分では反射率、かつ/または、色が異なるため装飾性が向上し、結果としてより一層の偽造防止効果が期待できる。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記反射性薄膜層の積層構造中に、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含する部分と、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含しない部分からなることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシールである。
反射性薄膜層の積層構造中に、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含する部分と、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含しない部分を形成することによって反射率、かつ/または、色の異なる部分ができるため装飾性が向上し、結果としてより一層の偽造防止効果が期待できる。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記銀合金薄膜層の銀合金が、銀中に金、銅、白金、錫、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ネオジウム、パラジウム、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、あるいはこれら金属元素のうち2種類以上を含有されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホログラムシールである。
銀の薄膜は、酸素、硫黄、ハロゲン、アルカリ等によって腐食しやすく、結果として凝集、マイグレーション等を引き起こして外観が損なわれる。しかし、銀中に上記他の金属元素を含有させることにより銀の化学的安定性を向上することができる。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のホログラムシールを用いた偽造防止用光学積層体である。
本発明のホログラムシールを使用することによってホログラム画像の視認性を向上させ、加えて、偽造防止効果の高い偽造防止用光学積層体を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のホログラムシールは、銀合金薄膜層を用いることによって反射率を増大し、視認性を向上させることができる。銀合金薄膜層に隣接してセラミックス層を形成すれば、反射性薄膜層の反射光の色を調整することができる。加えて、硬化性透明樹脂層を反射性薄膜層の両面、片面に形成する、あるいは、反射性薄膜が硬化性透明樹脂層を含むことによって、ホログラムシールの見込み角によって色の変化をさせることで偽造防止効果、および、装飾性の付与が可能となる。硬化性透明樹脂層の膜厚を調整することによって見込み角による色の変化も調整することができる。本発明のホログラムシールを偽造防止用光学積層体に用いることでセキュリティ保護に対する信頼性を向上することが可能となる。
本発明のホログラムシールは、CRT、液晶表示装置、PDP、窓ガラス、眼鏡、ゴーグル等の光学物品に設けられるフィルタとしても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明のホログラムシール1の一例を示す断面図を用いて説明する。図1は3層で構成された反射性薄膜層6、および硬化性透明樹脂層5からなるホログラム用光学薄膜層10を有するホログラムシール1の構成を示す断面図である。基材2上に剥離性保護層3が形成され、剥離性保護層3の上にホログラム形成層4が形成され、ホログラム形成層4の上に硬化性透明樹脂層5が形成され、硬化性透明樹脂層5を覆うように反射性薄膜層6が形成され、反射性薄膜層6を覆うように接着層11が形成されてなる。
【0014】
基材2としては、無機化合物成形物または有機化合物成形物が挙げられる。成形物の形状としては、表面が平滑であれば特に限定されず、板状、ロール状等が挙げられる。また、基材2は、無機化合物成形物または有機化合物成形物の積層体であってもよい。
【0015】
無機化合物成形物としては、例えば、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、無アルカリガラス、鉛ガラス等が挙げられる。有機化合物成形物としては、紙、合成紙、プラスチック等が挙げられる。特にプラスチックとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、ポリエチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等が挙げられる。
【0016】
基材2の厚さは、目的の用途に応じて適宜選択され、通常5〜300μmである。有機化合物成形物には、公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
【0017】
剥離性保護層3は、ホログラム形成層4と被接着物で基材2、例えば紙、プラスチック、ガラスなど無機・有機化合物成形物に対する接着性を有し、加えて、接着層11に較べて接着力が弱く、続いて行われるホログラム形成層4の積層に対して安定性を備えていればいかなるものでも構わない。例えば、熱可塑性アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂あるいはこれらにオイルシリコン、脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛等を添加した有機化合物である。あるいは無機化合物を使用してもよい。
【0018】
剥離性保護層3の形成の一例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの混合物を用いてグラビア印刷法により、乾燥温度110℃で厚さ1.5μmを積層することができる。
【0019】
ホログラム形成層4はエンボス成形を行う際のプレス加工性に優れ、剥離性保護層3との接着性が良好であり、かつ硬化性透明樹脂層5及びホログラム用光学薄膜6との密着性に優れていればいかなるものでの構わない。例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の熱硬化性樹脂等、あるいはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物等が使用できる。これらの樹脂等の混合物、2種類以上の樹脂等を積層して硬化した積層体、あるいは2種類以上の樹脂等を張り合わせた物も使用できる。
【0020】
ホログラム形成層4のレリーフ面は、微細な凹凸のパターンが形成されたニッケル製のホログラムスタンパを用いて加熱押圧するなどの周知の方法で形成できる。ホログラム形成層4表面に微細な凹凸のレリーフパターンが形成できるならフォトリソグラフィー等の他の手法を用いても構わない。
【0021】
ホログラム形成層4のレリーフ面上には防食剤を塗布して銀合金薄膜層8の腐食、劣化を防止する保護層を形成してもよい。本発明に使用する防食剤としては金属を防食する性能を有するものであれば如何なる材料でも構わない。
【0022】
防食剤としては、アミン類およびその誘導体、ピロール環を有する物、トリアゾール環を有する物、ピラゾール環を有する物、チアゾール環を有する物、イミダゾール環を有する物、インダゾール環を有する物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0023】
防食剤を塗布する方法としては、スプレー法、マイクログラビア法、スクリーンコート法、ディップコート法等のウェットプロセスに加えて、蒸着法、CVD法、プラズマ重合法等の真空ドライプロセスにより成膜することができる。防食剤の成分の有効範囲に関しては、防食剤を成膜した箇所の表面に成分が存在する場合のみならず、成分が内部に浸透して表面以外の箇所でも存在する場合も含む。
【0024】
硬化性透明樹脂層5は文字や絵柄のパターンで構成される。硬化性透明樹脂層5に形成する印刷パターンは任意に決定できる。
【0025】
硬化性透明樹脂層5は可視光領域の光に対して透過性があり、ホログラム形成層4のレリーフ面に形成したときに硬化すれば如何なる材料でも構わない。例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹、ビニル系樹脂、フタル酸系樹脂、ビニルブチラール樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、アノレギンド樹脂、ブチノレ化アミノアノレデヒド樹脂、アミノープラスト樹脂等の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0026】
硬化性透明樹脂層5の形成方法としては、シルクスクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の従来公知の印刷法や塗布方式を用いることができる。
【0027】
図1に示す反射性薄膜層6は、銀合金薄膜層の両面をセラミックス材料で挟んだ3層構造であり、ホログラム形成層に近い側の層から、セラミックス薄膜層7、銀合金薄膜層8、セラミックス薄膜層9の順に積層されている。
【0028】
銀合金薄膜層8の材料としては、銀を主成分とし、銀中に金、銅、白金、錫、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ネオジウム、パラジウム、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、ロジウムを添加した合金である。これら金属元素は、2種類以上を銀に含有させてもよい。
【0029】
銀に他の金属元素を添加する理由は次のようである。銀の薄膜は、酸素、硫黄、ハロゲン、アルカリ等によって腐食しやすく、結果として凝集、マイグレーション等を引き起こして外観が損なわれるが、しかし、銀に他の金属元素を含有させると銀の化学的安定性が向上するからである。したがって、これらの金属元素を銀に含有させる場合、その含有量は、銀合金薄膜層8の光学性能を悪化させずに耐腐食性に寄与する程度であればよく、0.1原子%〜20原子%程度である。
【0030】
セラミックス層7及び9は銀合金薄膜層8を外界の腐食・劣化起因物質から保護する役割を果たして耐環境性を向上させるのみならず、反射性薄膜層6の光学的性能にも寄与する。銀合金薄膜層8に隣接するセラミックス薄膜層の構成を選択することによって反射性薄膜層6の反射率を調整できるのみならず、ホログラム用光学薄膜層10の色相も調整可能になる。
【0031】
セラミック薄膜層7及び9の具体的な材料としては、二酸化チタン(n=2.3)、二酸化ジルコニウム(n=2.1)、硫化亜鉛(n=2.3)、二酸化セリウム(n=2.0〜2.4)、酸化亜鉛(n=2.0)、酸化タンタル(n=2.1)、酸化インジウム(n=2.0)、酸化錫(n=2.0)、酸化ビスマス(n=1.9〜2.4)、酸化ハフニウム(n=2.0)、酸化ニオブ(n=2.2)、酸化イットリウム(n=1.8)、セレニウム化亜鉛(n=2.6)、窒化シリコン(n=1.7)、フッ化マグネシウム(n=1.38)、フッ化カルシウム(n=1.25)、フッ化セリウム(n=1.63)、フッ化アルミニウム(n=1.36)、二酸化珪素(n=1.46)、酸化アルミニウム(n=1.63)、酸化マグネシウム(n=1.7)、フッ化ランタン(n=1.6)、フッ化アルミニウムナトリウム(n=1.35)、窒化チタン(n=1.4)の少なくとも1種類以上から選ばれることが望ましい。ここでnは屈折率を表す。一方、消衰係数は可視光の波長領域全体でゼロであることが望ましい。
【0032】
セラミックス薄膜層7及び9の材料は必ずしも同じでなくてもよく、適宜選択できる。加えて、銀合金薄膜層及びセラミックス薄膜層の数や配置の順番に関しても、所望の光学薄膜層の特性が得られるなら限定しない。更には、セラミックス薄膜層を形成せず、銀合金薄膜層8単層の構成でも構わない。
【0033】
セラミックス薄膜層7及び9は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、CVD法、湿式塗工法等の従来公知の方法により形成できる。
【0034】
反射性薄膜層6が銀合金薄膜層を有することで反射率が増大し、ホログラム画像が明るくなって画像の視認性が向上する。更に、セラミックス薄膜層を銀合金薄膜層に隣接して設けることによって反射性薄膜層6における反射光の色の制御の自由度を増すことが可能になる。セラミックス薄膜層は銀合金薄膜層を腐食から防ぐ役割も果たす。結果として、ホログラムシールのセキュリティ性が増し、更に装飾性を加味することができるようになる。
【0035】
また、硬化性透明樹脂層5及び反射性薄膜層6の配置に関しては、反射性薄膜層6の両面または片面に硬化性透明樹脂層5を形成、もしくは、反射性薄膜層6の積層構造中に硬化性透明樹脂層5を形成でき、更には、硬化性透明樹脂層5を形成せず、反射性薄膜層6単層の構成でも構わない。反射性薄膜層6単層の場合は、反射性薄膜層6を形成した部分全体で反射率の高いホログラムシールを得ることができるため、明るい偽造防止用光学積層体になる。
【0036】
接着層11は剥離性保護層3よりも被接着物に対する接着力が強く、反射性薄膜層6を変質、変色、劣化させるものでなければいかなるものでも構わない。接着層11の材料としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系接着剤、ポリエステル系ポリアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
接着層11の材料には銀合金薄膜層8の腐食・劣化防止のため防食剤を含有させてもよい。防食剤としては保護層で用いた材料と同じものが使用できる。
【0038】
接着層11の形成方法としては、シルクスクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の従来公知の印刷法や塗布方式を用いることができる。
【0039】
図1のホログラムシール1は接着層11を紙、プラスチックカード、ガラス等の被接着物に密着して張り合わせ、剥離性保護層3と基材2の界面で基材2を剥離して使用される。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0041】
<実施例1>
図2は反射性薄膜層の片面に硬化性透明樹脂層を有するホログラムシール1の構成を示す断面図である。基材2には厚さ12μmのポリエステルフィルムを用い、基材2の上に剥離性保護層3としてアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの混合物にオイルシリコンを添加した熱可塑性樹脂をグラビア印刷法によって形成した。剥離性保護層3の上にアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を重量比5:2で混合した混合物を用いてホログラム形成層4を形成した。ホログラム形成層4のレリーフ面全面に防食剤として2‐ヘプタデシルイミダゾールをメタノールの溶媒に溶解した溶液をマイクログラビア法により塗布し、保護層12を形成した。
【0042】
保護層12の一部を覆うように硬化性透明樹脂層5をアクリルを用いてシルクスクリーン印刷法によって絵柄を印刷して物理膜厚で400nm形成した。アクリル中には銀合金の腐食を防止するための防食剤として2‐ヘプタデシルイミダゾールをメタノールの溶媒に溶解した溶液を含有させた。
【0043】
続いて、ホログラム形成層4と硬化性透明樹脂層5の全面を覆うように3層構成の反射性薄膜層6を形成した。まず、硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で34nm成膜してセラミックス薄膜層7を形成した。セラミックス薄膜層7の上に銀中に金1.5原子%および銅0.5原子%を含有する銀合金をスパッタリング法により堆積させ、物理膜厚で20nm成膜して銀合金薄膜層8を形成した。更に銀合金薄膜層8の上に硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で77nm成膜しセラミックス薄膜層9を形成した。
図3に反射性薄膜層6を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は55%と高い値であった。図4に反射性薄膜層6の見込み角を0〜90°まで変化させたときのa*b*色度図を示す。
【0044】
図5に硬化性透明樹脂層5上に反射性薄膜層6を形成した場合のホログラム用光学薄膜層10を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は50%であった。図6にホログラム用光学薄膜層10の見込み角を0〜90°まで変化させたときのa*b*色度図を示す。ホログラム用光学薄膜層10は硬化性透明樹脂層5の光の干渉効果によって見込み角の違いで色が様々に変化するが、一方、反射性薄膜層6は見込み角による色の変化が少ない。
【0045】
反射性薄膜層6の上に接着層11として、塩化ビニル−酢酸ビニル重合体、ポリエステル樹脂、メチルエチルケトン、トルエン、及び防食剤として2‐ヘプタデシルイミダゾールを含有させた混合物をグラビア印刷法により形成してホログラムシール1を完成させた。
【0046】
ホログラムシール1を正面から見たとき反射性薄膜層6の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、ホログラム用光学薄膜層10の色が見込み角で多彩に変化するため偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0047】
<実施例2>
図7は反射性薄膜層の積層構造中に硬化性透明樹脂層を有するホログラムシール1の構成を示す断面図である。ホログラム用光学薄膜層10の構成以外は実施例1と同様に作製したホログラムシール1を得た。ホログラム用光学薄膜層10の層構成に関しては次のように作製した。先ず、硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で34nm成膜してセラミックス薄膜層7を形成した。セラミックス薄膜層7の上に銀中に金1.5原子%および銅0.5原子%を含有する銀合金をスパッタリング法により堆積させ、物理膜厚で20nm成膜して銀合金薄膜層8を形成した。銀合金薄膜層8の一部を覆うように硬化性透明樹脂層5をアクリルを用いてシルクスクリーン印刷法によって絵柄を印刷して物理膜厚で500nm形成した。更に銀合金薄膜層8と硬化性透明樹脂層5の全面を覆うように硫化亜鉛を電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で77nm成膜しセラミックス薄膜層9を形成した。
【0048】
図8にホログラム用光学薄膜10を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は40%であった。図9に真正面からホログラム用光学薄膜10を見たときのa*b*色度図を示す。
【0049】
ホログラムシール1を正面から見たとき反射性薄膜6の反射光によってホログラム画像の輪郭が際立ち視認性に優れていることが確認された。加えて、ホログラム用光学薄膜層10の色が見込み角で多彩に変化するため偽造防止効果が向上したのみならず装飾性の付与にも有効であることが確認された。
【0050】
<比較例1>
図10は硬化性透明樹脂層を有さず、反射性薄膜層の構成が単層であるホログラムシール1の構成を示す断面図である。反射性薄膜層6の材料が酸化チタンであること、および硬化性透明樹脂層が無いこと以外は実施例1と同様に作製したホログラムシール1を得た。保護層が無いのは反射性薄膜層6の材料が銀合金ではなく、銀よりもずっと腐食し難い酸化チタンだからである。反射性薄膜層6に関しては次のように作製した。酸化チタンを電子ビームを利用した真空蒸着法によって物理膜厚で68nm成膜して単層の反射性薄膜層6を形成した。
【0051】
図11に反射性薄膜層6を真正面から見たときの反射スペクトルを示す。視感平均反射率は25%と低い値であった。図12に反射性薄膜層6の見込み角を0〜90°まで変化させたときのa*b*色度図を示す。反射性薄膜層6は反射率が低く、見込み角による色の変化が少ないため、ホログラム画像の輪郭が明瞭にならなかった。加えて、偽造防止効果、および装飾性の付与に関しても、見込み角のよる色の変化が少ないため実施例1ないし2と較べて十分でなかった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のホログラム用光学薄膜を有するホログラムシールの一構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1におけるホログラムシールの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1における反射性薄膜の反射スペクトル図である。
【図4】本発明の実施例1における反射性薄膜のa*b*色度図である。
【図5】本発明の実施例1におけるホログラム用光学薄膜の反射スペクトル図である。
【図6】本発明の実施例1におけるホログラム用光学薄膜のa*b*色度図である。
【図7】本発明の実施例2におけるホログラムシールの構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例2におけるホログラム用光学薄膜の反射スペクトル図である。
【図9】本発明の実施例2におけるホログラム用光学薄膜のa*b*色度図である。
【図10】本発明の比較例1におけるホログラムシールの構成を示す断面図である。
【図11】本発明の比較例1における反射性薄膜の反射スペクトル図である。
【図12】本発明の比較例1における反射性薄膜のa*b*色度図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ホログラムシール
2 基材
3 剥離性保護層
4 ホログラム形成層
5 硬化性透明樹脂層
6 反射性薄膜層
7、9 セラミックス薄膜層
8 銀合金薄膜層
10 ホログラム用光学薄膜層
11 接着層
12 保護層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、
反射性薄膜層が銀合金薄膜層単層からなる、あるいは、銀合金薄膜層の両面または片面にセラミックス材料が積層されていることを特徴とするホログラムシール。
【請求項2】
前記反射性薄膜層の両面、または片面に硬化性透明樹脂による絵柄が印刷されており、前記反射性薄膜層のみが形成されている部分と、前記反射性薄膜層と硬化性透明樹脂層の積層構造が形成されている部分からなることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシール。
【請求項3】
前記反射性薄膜層の積層構造中に、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含する部分と、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含しない部分からなることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシール。
【請求項4】
前記銀合金薄膜層の銀合金が、銀中に金、銅、白金、錫、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ネオジウム、パラジウム、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、あるいはこれら金属元素のうち2種類以上を含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホログラムシール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のホログラムシールを用いた偽造防止用光学積層体。
【請求項1】
基材上に順に、剥離性保護層、ホログラム形成層、反射性薄膜層、接着層を形成してなるホログラムシールにおいて、
反射性薄膜層が銀合金薄膜層単層からなる、あるいは、銀合金薄膜層の両面または片面にセラミックス材料が積層されていることを特徴とするホログラムシール。
【請求項2】
前記反射性薄膜層の両面、または片面に硬化性透明樹脂による絵柄が印刷されており、前記反射性薄膜層のみが形成されている部分と、前記反射性薄膜層と硬化性透明樹脂層の積層構造が形成されている部分からなることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシール。
【請求項3】
前記反射性薄膜層の積層構造中に、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含する部分と、硬化性透明樹脂による印刷絵柄を包含しない部分からなることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシール。
【請求項4】
前記銀合金薄膜層の銀合金が、銀中に金、銅、白金、錫、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ネオジウム、パラジウム、亜鉛、インジウム、ゲルマニウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム、あるいはこれら金属元素のうち2種類以上を含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のホログラムシール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のホログラムシールを用いた偽造防止用光学積層体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−134510(P2008−134510A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321421(P2006−321421)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]