説明

ホワイトバランス制御装置及び制御方法並びに記憶媒体

【課題】 合焦レベルに対応してホワイトバランス動作の許可、禁止を制御し、また、被写体の色温度に追従してホワイトバランス補正動作のホールドまたは禁止を行い、ホワイトバランス制御を実施可能とするホワイトバランス制御装置及び制御方法並びに記憶媒体の提供。
【解決手段】 映像信号を利用するホワイトバランス制御装置であって、画面を複数のブロックに分割した信号を用いて制御を行う制御システムにおいて、被写体の合焦レベルを検出する合焦レベル検出手段を有し、該合焦レベル検出手段の出力に応じてホワイトバランスの制御を複数の動作状態に切り替えることを特徴とするホワイトバランス制御装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホワイトバランス制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のビデオカメラ等を初めとする映像機器の進歩は目覚ましく、オートフォーカス制御、オートホワイトバランス制御などの性能改善技術が目立っている。ところで、ビデオカメラ等に用いられるオートホワイトバランス装置は、外部センサを使用せず、撮像素子の出力を用いて操作を行うものが主流となっている。更に、最近のホワイトバランス装置では、被写体の状況を細かく把握し、有彩色の影響を避けるために、信号処理回路から得られる色差信号R−Y、B−Y、輝度信号Yを、画面に対応する細かなブロックに分割し、各分割ブロック毎に得られる信号の値から白に近い色信号成分を抽出してホワイトバランス制御に用いるものが多くなってきている。
【0003】図8は、ビデオカメラに搭載された、画面を複数のブロックに分割してホワイトバランスを行う従来装置の一例を示したブロック図である。
【0004】図8において、レンズ101、絞り102を通過した被写体像は撮像素子103上に結像される。撮像素子103からは光電変換された原色信号R、G、Bが出力される。R、G、Bの各信号は、夫々バッファアンプ104、105、106で増幅された後、A/D変換器107、108、109に入力され、アナログ信号からデジタル信号に変換される。
【0005】デジタル信号に変換されたR、B信号はホワイトバランスアンプ110、111に各々供給される。ホワイトバランスアンプ110、111は後述するマイクロコンピュータ118からの制御信号に基づいて利得制御される。ホワイトバランスアンプ110、111から出力されたR、B信号とA/D変換器108から出力されたG信号はマトリックス回路112に供給される。マトリックス回路112は、入力されたR、G、B信号から輝度信号Y、色差信号R−Y、B−Yを生成する。生成されたY、R−Y、B−Yの各信号はD/A変換器113、114、115に供給されアナログ信号となり、図示しないエンコーダに供給され、標準テレビジョン信号に変換された後、モニタに表示されたり、磁気記録装置に供給されたりする。また、記録装置の中にはデジタル信号の儘記録するものもあった。
【0006】一方、マトリックス回路112からのY、R−Y、B−Y信号は画面分割部116にも供給される。画面分割部116では1画面分のY、R−Y、B−Y信号を図9に示すように縦8×横16の128個のブロックに分割する。平均値演算部117では分割された各ブロック毎にY、R−Y、B−Y信号の平均値を演算し出力する。平均値演算部117からの128組のY、R−Y、B−Y信号は、マイクロコンピュータ118に入力され色差信号と輝度信号の値が、或る範囲内に存在するブロックの信号のみが抽出(以降、白抽出処理と呼ぶ)され、白抽出処理された信号のみを積分する。
【0007】この場合の白抽出範囲の一例を図10に示す。図10は縦軸をR−Y、横軸をB−Yとした無彩色の被写体の色温度変化に伴う色差信号のベクトル変化を示す図である。
【0008】いま、色温度が屋外に相当する7000Kでホワイトバランスがとれていた場合、屋内の白熱電球(約3000K)下の無彩色の被写体を撮影した場合の色差信号はP1に位置する。逆に屋内の白熱電球でホワイトバランスがとれていた場合、屋外(約7000K)の無彩色の被写体を撮影した場合の色差信号はP2に位置する。つまり、無彩色の被写体の色温度に伴う色差信号の変化は、図10の斜線部分内で変化することになる。
【0009】ここで、実用的な色温度範囲3000K〜7000Kでホワイトバランスを制御することを考えると、図10の斜線内の信号のみを用いればよいことになる。この領域を以降、白抽出範囲と呼ぶ。また光のスペクトルが緑がかっている蛍光灯下でのホワイトバランスを考慮するため、一般的な白抽出範囲は少しG方向に広がっている。白抽出処理においては、上記色差信号の制限のほかに輝度信号Yにも制限を加える場合があった。例えば、輝度信号Yが標準の明るさの50%である50IRE以上のYレベルとなる制限を加えたりしていた。
【0010】マイクロコンピュータ118は色差信号が上記白抽出範囲に入り、且つ輝度信号が50IRE以上のものだけを抽出し、抽出された色差信号の平均値を演算する。そして演算された色差信号R−Y、B−Yの平均値が0になるような制御信号を、図8に示すホワイトバランスアンプ110、111に出力してホワイトバランス補正を行っていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】然しながら上述の従来例においては、次のような問題点があった。
【0012】即ち、前述のようなホワイトバランス装置が搭載される一般的な映像機器では、被写体に自動的に焦点を合わせる、所謂オートフォーカス機能を持っている。この場合、被写体にフォーカスが合焦している場合は、被写体の色分布が映像信号中に正確に反映されるため、画面分割により被写体の色を細かく把握することができる。然し、急なパンニング等でフォーカスがボケている場合は、被写体の色を細かく把握することができないため、正しいホワイトバランス補正が行えない場合があった。
【0013】図11、図12は、問題点を説明するための被写体を示す図である。
【0014】図11はフォーカスが合っている状態での画面分割の様子を示す図であり、図12はフォーカスがボケている状態での画面分割の様子を示す図である。図11のようにフォーカスが合っている状態では、分割された領域アドレス(H、V)=(6、1)、(6、2)、(7、5)、(8、5)の領域には白い花の部分があるので、正確な白が抽出される。然し、図12のようにフォーカスがボケている状態では、図11と同じ領域アドレス(H、V)=(6、1)、(6、2)、(7、5)、(8、5)の領域には白い花の部分の信号が在るものの、フォーカスがボケているため、周辺の色と混じってしまい、正確な色の抽出ができなくなってしまう。このような状態で白抽出された値は、周辺の色成分も含まれてしまっているので、この状況でホワイトバランス補正を行うと、被写体の状況によっては、間違ったホワイトバランス補正をしてしまう虞れがある。
【0015】図13は、図12の被写体の白い花の背景が緑色と仮定した場合に、色が混ざる様子を示した色差ベクトル図である。フォーカスのボケにより、白い花の信号Paと背景の緑Pbが混ざってしまい、マイクロコンピュータ118が読み込む時点では、薄い緑Pcとなってしまう。このPcは前述した白抽出範囲内にあるため、マイクロコンピュータ118は、Pcを白く補正しようとする。図14はホワイトバランス補正後の色差ベクトル図である。ホワイトバランス補正後のPc′はベクトルの中心に補正される。すると、本来の被写体の白い花PaはPa′に誤補正され、背景の緑もPb′に誤補正されてしまう。その結果白い花の部分は紫がかってしまい、背景の緑色も薄くなってしまい、本来の色と異なって補正されてしまうという問題点が生じる場合があった。
【0016】本発明は、上述の状況に鑑みて成されたもので、合焦レベルに対応してホワイトバランス動作の許可、禁止を制御し、また、被写体の色温度に追従してホワイトバランス補正動作のホールドまたは禁止を行い、ホワイトバランス制御を実施可能とするホワイトバランス制御装置及び制御方法並びに記憶媒体を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0018】(1)映像信号を利用するホワイトバランス制御装置であって、画面を複数のブロックに分割した信号を用いて制御を行う制御システムにおいて、被写体の合焦レベルを検出する合焦レベル検出手段を有し、該合焦レベル検出手段の出力に応じてホワイトバランスの制御を複数の動作状態に切り替えることを特徴とするホワイトバランス制御装置。
【0019】(2)複数の動作状態は、ホワイトバランス動作を許可する状態と、ホワイトバランス動作を禁止する状態とで構成されることを特徴とする前項(1)記載のホワイトバランス制御装置。
【0020】(3)複数の動作状態は、ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態と、現状の儘の制御値でホールドする状態とで構成されることを特徴とする前項(1)記載のホワイトバランス制御装置。
【0021】(4)映像信号を利用するホワイトバランス制御装置であって、画面を複数のブロックに分割した信号を用いて制御を行う制御システムにおいて、被写体の合焦レベルを検出する合焦レベル検出手段を有し、該合焦レベル検出手段の出力に応じてホワイトバランスの制御速度を切り替えることを特徴とするホワイトバランス制御装置。
【0022】(5)合焦レベル検出手段は、映像信号の所定の高域成分を焦点電圧として出力することを特徴とする前項(1)、または(4)記載のホワイトバランス制御装置。
【0023】(6)合焦レベル検出手段の出力は、自動焦点調節に用いるものであることを特徴とする前項(1)、または(4)記載のホワイトバランス制御装置。
【0024】(7)ホワイトバランス動作を許可、または禁止する状態で構成される複数の動作状態の切り替えは、合焦レベルが小さい場合は、ホワイトバランス動作を禁止し、合焦レベルが大きい場合は、ホワイトバランス動作を許可することを特徴とする前項(1)記載のホワイトバランス制御装置。
【0025】(8)ホワイトバランス動作を許可する合焦レベルは、ホワイトバランス動作を禁止する合焦レベルより高い値に設定することを特徴とする前項(7)記載のホワイトバランス制御装置。
【0026】(9)ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態と、現状の儘の制御値でホールドする状態との切り替えは、合焦レベルが小さい場合は、ホワイトバランス動作をホールドし、合焦レベルが大きい場合は、ホワイトバランス動作を追従動作させることを特徴とする前項(3)記載のホワイトバランス制御装置。
【0027】(10)ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態の合焦レベルは、現状の儘の制御値でホールドする状態の合焦レベルより高い値に設定することを特徴とする前項(9)記載のホワイトバランス制御装置。
【0028】(11)ホワイトバランスの制御速度の切り替えは、合焦レベルが小さい場合は、合焦レベルが大きい場合に比べて、ホワイトバランスの制御速度を遅くすることを特徴とする前項(4)記載のホワイトバランス制御装置。
【0029】(12)映像信号を利用するホワイトバランス制御装置の画面を複数のブロックに分割した信号を用いて制御を行う制御方法において、被写体の合焦レベルを検出するステップと、検出結果の出力に応じてホワイトバランスの制御動作を許可または禁止する状態とで構成される複数の動作状態を切り替えるステップと、ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態と現状の儘の制御値でホールドする状態とにおいて、合焦レベル検出結果の出力に応じてホワイトバランスの制御速度を切り替えるステップと、また、映像信号の所定の高域成分を焦点電圧として出力する合焦レベル検出ステップと、また、合焦レベル検出結果の出力を自動焦点調節に用いるステップと、合焦レベルが小さい場合はホワイトバランス動作を禁止し、合焦レベルが大きい場合はホワイトバランス動作を許可するステップと、また、ホワイトバランス動作を許可する合焦レベルをホワイトバランス動作を禁止する合焦レベルより高い値に設定するステップと、ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態と現状の儘の制御値でホールドする状態との切り替えを、合焦レベルが小さい場合は、ホワイトバランス動作をホールドし、合焦レベルが大きい場合は、ホワイトバランス動作を追従動作させるステップと、また、ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態の合焦レベルを、現状の儘の制御値でホールドする状態の合焦レベルより高い値に設定するステップと、ホワイトバランスの制御速度の切り替えを、合焦レベルが小さい場合は、合焦レベルが大きい場合に比べて、ホワイトバランスの制御速度を遅くするステップとを含むことを特徴とする制御方法。
【0030】(13)前項(12)記載の制御方法を実現するためのプログラムを格納したことを特徴とする記憶媒体。
【0031】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0032】図1は、本発明のホワイトバランス制御装置に係る撮像装置の構成例を示すブロック図、図2は、フォーカスレンズ位置と焦点電圧の関係を示す説明図、図3は、本発明の第1の実施例におけるマイクロコンピュータの動作を示すフローチャート、図4は、フォーカスレンズ位置と焦点電圧の関係において、制御切り替え閾値電圧を示す説明図、図5は、本発明の第2の実施例におけるマイクロコンピュータの動作を示すフローチャート、図6は、本発明の第3の実施例におけるマイクロコンピュータの動作を示すフローチャート、図7は、本発明の第3の実施例における焦点電圧と制御量の関係を示す説明図、図8は、従来例の撮像装置の構成例を示すブロック図、図9は、画面分割状態を示す説明図、図10は、白抽出範囲を示す説明図、図11は、フォーカスが合焦している被写体と画面分割状態を示す説明図、図12は、フォーカスがボケている被写体と画面分割状態を示す説明図、図13は、従来例のマイクロコンピュータに入力されるフォーカスがボケている状態での色差信号を示す色差ベクトル図、図14は、従来例のフォーカスがボケている状態でのホワイトバランス補正後の色差信号を示す色差ベクトル図である。
【0033】(第1の実施例)以下、本発明の第1の実施例について図面を参照して説明する。
【0034】図1は、本発明に係る撮像装置を示すブロック図である。図中、従来例と同一構成要素は、従来と同様の働きをするため説明を省略する。図1において、バッファアンプ104、105、106からの信号は、オートフォーカス(自動焦点調節装置)に用いる信号を生成するAF評価信号生成回路119にも入力される。
【0035】ここで一般的なオートフォーカス装置について説明する。
【0036】一般的なオートフォーカス装置は、被写体像を光電変換して得られた映像信号中より画面の鮮鋭度を検出し、それが最大となるようにフォーカスレンズを制御して焦点調節を行うようにしたTVAF方式が主流になりつつある。AF評価信号生成回路119は、一般に、或る帯域のバンドパスフィルターにより抽出された映像信号の高周波信号のレベル(以下、焦点電圧)から画面の鮮鋭度を検出し、焦点電圧として出力する。通常被写体像を撮影した場合、図2に示すように、焦点が合うに従って焦点電圧は大きくなり、そのレベルが最大になる点を合焦位置としている。マイクロコンピュータ118は、AF評価信号生成回路119からの信号を基にフォーカス制御部にて上述した演算を行い、フォーカスモータ制御信号をモータードライバ120に出力してオートフォーカス制御を行うようになっている。
【0037】次に、マイクロコンピュータ118内部でのホワイトバランス制御部の処理の流れを説明する。図3は、マイクロコンピュータ内の処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】図1及び図3において、画面分割部116、平均値演算部117で画面を縦8×横16の128個のブロックに分割され、且つ各ブロック毎に平均化されたY、R−Y、B−Y信号がステップS300にて色差、輝度データとしてマイクロコンピュータ118のメモリ内に取り込まれる。次に、ステップS301にて、128組のデータを1組づつ順次処理するためのブロック水平座標x、垂直座標yをリセットする。ステップS302では、各分割ブロックの色差成分AVR(R−Y(x,y)),AVR(B−Y(x,y))の値を調べて、図10で示す白抽出範囲内にあるかどうかをチェックする。白抽出範囲内であれば、ステップS303にて、同じブロックの輝度信号平均値AVR(Y(x,y))が所定の値以上かどうかを判断する。この処理は、輝度の低過ぎる被写体の場合は、白い可能性が少ないので低輝度の値を除外する為に行うものである。例えば、50IRE以上かどうかを判断するように設定する。ステップS302、S303の二つの判定でYESと判断されると、白抽出条件を満たしたとして、ステップS304にてAVR(R−Y(x,y))の積分を行う。同様にステップS305ではAVR(B−Y(x,y))の積分を行い、ステップS306ではAVR(Y(x,y))の積分を行う。一方、ステップS302、S303の二つの判定でNOと判断され、白抽出条件を満たしていない場合は、積分処理S304〜S306は行われない。ステップS307では、次に処理するブロック座標をインクリメントする処理を行う。例えば、最初は、(x,y)=(0,0),(1,0),(2,0)…(15,0)とインクリメントされ、図9の画面分割図での一番上の1行のデータを順次処理する。次に、(x,y)=(0,1),(1,1),(2,1)…(15,1)となり図9の2行目を処理し、最終的に、(x,y)=(0,7),(1,7),(2,7)…(15,7)と最後のブロック座標まで順次インクリメントする処理を行う。ステップS308にて、128ブロック全てのデータを処理したと判断されるまでステップS302〜S307の処理を行う。ステップS308で、全てのブロックを処理したと判断されると、次のステップへ進む。ステップS309にて、最終的に白抽出された輝度の積分値AVR_Yと、色差の積分値AVR_RY、AVR_BYを基に、WB(ホワイトバランス)補正データの目標値を算出する。このステップS300〜S309の処理を纏めて、ホワイトバランス補正データ演算処理S3とする。
【0039】次に、ステップS310にて、AF評価信号生成回路119より焦点電圧Vinを読み込む。次にステップS311にて基準焦点電圧Vref1と比較する。ステップS311で読み込まれた焦点電圧Vinが基準焦点電圧Vref1より小さいと判定された場合は、ステップS312にてWB追従動作フラグをLoにする。ステップS311で読み込まれた焦点電圧Vinが基準焦点電圧Vref1より大きいと判定された場合は、ステップS313にて基準焦点電圧Vref2と比較する。ステップS313で読み込まれた焦点電圧Vinが基準焦点電圧Vref2より大きいと判定された場合は、ステップS314にてWB追従動作フラグをHiにする。次に、ステップS315においてWB追従動作フラグがHiかLoかを判定する。WB追従動作フラグがHiの場合には、ステップS316にて、ホワイトバランス補正データを徐々にステップS309で得られた目標値に近付ける処理を行い、被写体の色温度変化に追従させるホワイトバランス動作をする。ステップS315にてWB追従動作フラグがLoの場合には、ステップS317にて、ホワイトバランス補正データを現状の儘の値でホールドする処理を行う。
【0040】ここで比較対象となる基準焦点電圧Vref1,Vref2について説明する。基準焦点電圧Vref1,Vref2は、図4に示すように焦点が大きくボケていると判定できる電圧の付近に各々設定する。Vref1よりVref2を高めに設定してあるため、一度S311→S312の処理でWB追従動作フラグがLoに設定されると、ステップS313にて焦点電圧VinがVref2よりも大きいと判定されるまでWB追従動作フラグはLoのままである。また、一旦S313→S314の処理でWB追従動作フラグがHiに設定されると、ステップS311にて焦点電圧VinがVref1よりも小さいと判定されるまでWB追従動作フラグはHiのままである。つまり、ホワイトバランスを追従動作させる焦点電圧を、ホワイトバランス動作をホールドさせる焦点電圧よりも高く設定することにより、各々の動作の切り替えにヒステリシスをもたせることができる。
【0041】この構成動作によりフォーカスが合焦している場合、即ち、被写体の色情報が正確に取りこめる状態では、ホワイトバランス制御を被写体に追従するように動作させ、フォーカスがボケていて被写体の色情報が正確に取りこめずに、誤ったホワイトバランス制御を行う虞れがある場合は、ホワイトバランス補正をホールドさせることができる。その結果、誤ったホワイトバランス補正を防止することが可能になる。
【0042】更に、カメラの急激なパンニングなどの場合にも、焦点電圧Vinが低下するので、パンニングの影響などにより被写体の色情報が正確に取りこめない状態でのホワイトバランス誤補正も削減できる効果がある。
【0043】(第2の実施例)以下、本発明の第2の実施例について説明する。
【0044】第2の実施例における構成は第1の実施例と同様なので説明を省略する。第2の実施例の特徴は、マイクロコンピュータ118内部の動作にあり、特に静止画撮影に有効な処理を行わせる点にある。図5は、ホワイトバランス制御部の処理の流れを説明するフローチャートである。図5中、S3は第1の実施例と同様のホワイトバランス補正データ演算処理である。S3の処理が終わるとステップS310にてAF評価信号生成回路119より焦点電圧Vinを読み込む。次に、ステップS311にて基準焦点電圧Vref1と比較する。ステップS311で読み込まれた焦点電圧Vinが基準焦点電圧Vref1より小さいと判定された場合は、ステップS312_2にてWB動作許可フラグをLoにする。ステップS311で読み込まれた焦点電圧Vinが基準焦点電圧Vref1より大きいと判定された場合は、ステップS313にて基準焦点電圧Vref2と比較する。ステップS313で読み込まれた焦点電圧Vinが基準焦点電圧Vref2より大きいと判定された場合は、ステップS314_2にてWB動作許可フラグをHiにする。次に、ステップS315_2においてWB動作許可フラグがHiかLoかを判定し、Hiの場合にはステップS316_2にて、S3で演算されたホワイトバランス補正目標データをダイレクトに出力して、瞬時にホワイトバランス補正が完了する処理を行う。
【0045】一方、ステップS315_2にてWB動作許可フラグがLoの場合には、ステップS317_2にて予め設定した固定値のホワイトバランス補正データを出力する処理を行う。比較する基準焦点電圧Vref1、Vref2とヒステリシス動作については、第1の実施例と同様の動作を行う。
【0046】この構成動作により、静止画撮影を行う場合にフォーカスが合焦している状態、即ち、被写体の色情報が正確に取り込めるような状態になると、瞬時にホワイトバランス補正が完了し、正しいカラーバランスの静止画を得ることができるようになる。
【0047】(第3の実施例)以下、本発明の第3の実施例について説明する。
【0048】第3の実施例における構成は第1の実施例と同様なので説明を省略する。第3の実施例の特徴は、マイクロコンピュータ118内部の動作にあり、焦点電圧に応じてホワイトバランス制御スピードを徐々に変化させる点にある。図6は、ホワイトバランス制御部の処理の流れを説明するフローチャートである。図6中、S3は第1の実施例と同様のホワイトバランス補正データ演算処理である。S3の処理が終わるとステップS310にてAF評価信号生成回路119より焦点電圧Vinを読み込む。
【0049】次に、ステップS611にて基準焦点電圧Vref2と比較する。ステップS611で読み込まれた焦点電圧Vinが基準焦点電圧Vref2より大きいと判定された場合は、ステップS612にて1回当たりの補正ビット数Nに5を代入する。ステップS611で読み込まれた焦点電圧Vinが基準焦点電圧Vref2より小さいと判定された場合は、ステップS613にて基準焦点電圧Vref1と比較する。ステップS613で読み込まれた焦点電圧Vinが基準焦点電圧Vref1より大きいと判定された場合は、ステップS614にてVinとVref1の差分に応じた1回当たりの補正ビット数Nを求める。この場合Nは5〜0の間で変化する。ステップS613で読み込まれた焦点電圧VinがVref1より小さいと判定された場合は、ステップS615にて1回当たりの補正ビット数Nに0を代入する。ステップS616、S617では現在のホワイトバランス補正データを、ステップS611〜S615の処理により得られた1回当たりの補正ビット数Nづつ増減させ、目標値に近付ける処理を行うようにする。本実施例での焦点電圧Vinと1回当たりの補正ビット数Nの関係は図7のようになる。
【0050】上述のような構成動作により、フォーカスが合焦している場合、即ち、被写体の色情報が正確に取り込めるような状態になると、N=5となり高速でホワイトバランス補正を行う。また、フォーカスがボケるに従い、制御スピードは少しづつ遅くなり、大きくボケている場合には、N=0となるため、実質的にホワイトバランス動作をホールドさせることができる。その結果、正確な色情報が得られる条件ではホワイトバランス動作が高速で制御され、色情報があまり正確でない条件ではホワイトバランス動作の速度が遅くなり、大きくフォーカスがボケている場合は、ホールドするようになるので、誤ったカラーバランスになることを防止することが可能になる。
【0051】また、本実施例では、Nをデジタルデータのビット数とし、最大値を5、最小値を0にしたが、実質的に補正速度が変化するのであれば、システムに合わせて最適なNの値に合わせれば良い。また、アナログ制御でホワイトバランスを補正するシステムでも、実質的に速度が変化するようになっていれば、Nの単位はそのシステムに合わせれば良いことは言うまでもない。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように本発明の第1の実施例によれば、フォーカスが合焦している場合、即ち、被写体の色情報が正確に取り込める状態では、ホワイトバランス制御を被写体に追従するように動作させ、フォーカスがボケていて被写体の色情報が正確に取り込めずに誤ったホワイトバランス制御を行う虞れがある場合は、ホワイトバランス補正をホールドさせたり、禁止させたりすることができるため、誤ったホワイトバランス補正を防止することが可能になる。同様に急激なパンニング等で被写体の正確な色が把握できない場合のホワイトバランス補正の誤補正も防ぐことができる。
【0053】また、本発明の第2の実施例によれば、静止画撮影を行う場合でフォーカスが合焦している場合、即ち、被写体の色情報が正確に取り込めるような状態になると、瞬時にホワイトバランス補正が完了し、正しいカラーバランスの静止画を得ることができるようになる。
【0054】また、本発明の第3の実施例によれば、フォーカスが合焦している場合、即ち、被写体の色情報が正確に取り込めるような状態では、高速でホワイトバランス補正を行い、フォーカスがボケるに従い制御スピードを遅く動作させることができる。その結果、色情報があまり正確でない条件では、ホワイトバランス動作の速度が遅くなり、大きくフォーカスがボケている場合は、ホワイトバランス動作をホールドするようになる為、誤ったカラーバランスになることを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のホワイトバランス制御装置に係る撮像装置の構成例を示すブロック図
【図2】 フォーカスレンズ位置と焦点電圧の関係を示す説明図
【図3】 本発明の第1の実施例におけるマイクロコンピュータの動作を示すフローチャート
【図4】 フォーカスレンズ位置と焦点電圧の関係において、制御切り替え閾値電圧を示す説明図
【図5】 本発明の第2の実施例におけるマイクロコンピュータの動作を示すフローチャート
【図6】 本発明の第3の実施例におけるマイクロコンピュータの動作を示すフローチャート
【図7】 本発明の第3の実施例における焦点電圧と制御量の関係を示す説明図
【図8】 従来例の撮像装置の構成例を示すブロック図
【図9】 画面分割状態を示す説明図
【図10】 白抽出範囲を示す説明図
【図11】 フォーカスが合焦している被写体と画面分割状態を示す説明図
【図12】 フォーカスがボケている被写体と画面分割状態を示す説明図
【図13】 従来例のマイクロコンピュータに入力されるフォーカスがボケている状態での色差信号を示す色差ベクトル図
【図14】 従来例のフォーカスがボケている状態でのホワイトバランス補正後の色差信号を示す色差ベクトル図
【符号の説明】
101 レンズ
102 絞り
103 撮像素子
104、105、106 バッファアンプ
107、108、109 A/D変換器
110、111 ホワイトバランスアンプ
112 マトリックス回路
113、114、115 D/A変換器
116 画面分割部
117 平均値演算部
118 マイクロコンピュータ
119 AF評価信号生成回路
120 モータードライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 映像信号を利用するホワイトバランス制御装置であって、画面を複数のブロックに分割した信号を用いて制御を行う制御システムにおいて、被写体の合焦レベルを検出する合焦レベル検出手段を有し、該合焦レベル検出手段の出力に応じてホワイトバランスの制御を複数の動作状態に切り替えることを特徴とするホワイトバランス制御装置。
【請求項2】 複数の動作状態は、ホワイトバランス動作を許可する状態と、ホワイトバランス動作を禁止する状態とで構成されることを特徴とする請求項1記載のホワイトバランス制御装置。
【請求項3】 複数の動作状態は、ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態と、現状の儘の制御値でホールドする状態とで構成されることを特徴とする請求項1記載のホワイトバランス制御装置。
【請求項4】 映像信号を利用するホワイトバランス制御装置であって、画面を複数のブロックに分割した信号を用いて制御を行う制御システムにおいて、被写体の合焦レベルを検出する合焦レベル検出手段を有し、該合焦レベル検出手段の出力に応じてホワイトバランスの制御速度を切り替えることを特徴とするホワイトバランス制御装置。
【請求項5】 合焦レベル検出手段は、映像信号の所定の高域成分を焦点電圧として出力することを特徴とする請求項1、または4記載のホワイトバランス制御装置。
【請求項6】 合焦レベル検出手段の出力は、自動焦点調節に用いるものであることを特徴とする請求項1、または4記載のホワイトバランス制御装置。
【請求項7】 ホワイトバランス動作を許可、または禁止する状態で構成される複数の動作状態の切り替えは、合焦レベルが小さい場合は、ホワイトバランス動作を禁止し、合焦レベルが大きい場合は、ホワイトバランス動作を許可することを特徴とする請求項1記載のホワイトバランス制御装置。
【請求項8】 ホワイトバランス動作を許可する合焦レベルは、ホワイトバランス動作を禁止する合焦レベルより高い値に設定することを特徴とする請求項7記載のホワイトバランス制御装置。
【請求項9】 ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態と、現状の儘の制御値でホールドする状態との切り替えは、合焦レベルが小さい場合は、ホワイトバランス動作をホールドし、合焦レベルが大きい場合は、ホワイトバランス動作を追従動作させることを特徴とする請求項3記載のホワイトバランス制御装置。
【請求項10】 ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態の合焦レベルは、現状の儘の制御値でホールドする状態の合焦レベルより高い値に設定することを特徴とする請求項9記載のホワイトバランス制御装置。
【請求項11】 ホワイトバランスの制御速度の切り替えは、合焦レベルが小さい場合は、合焦レベルが大きい場合に比べて、ホワイトバランスの制御速度を遅くすることを特徴とする請求項4記載のホワイトバランス制御装置。
【請求項12】 映像信号を利用するホワイトバランス制御装置の画面を複数のブロックに分割した信号を用いて制御を行う制御方法において、被写体の合焦レベルを検出するステップと、検出結果の出力に応じてホワイトバランスの制御動作を許可または禁止する状態とで構成される複数の動作状態を切り替えるステップと、ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態と現状の儘の制御値でホールドする状態とにおいて、合焦レベル検出結果の出力に応じてホワイトバランスの制御速度を切り替えるステップと、また、映像信号の所定の高域成分を焦点電圧として出力する合焦レベル検出ステップと、また、合焦レベル検出結果の出力を自動焦点調節に用いるステップと、合焦レベルが小さい場合はホワイトバランス動作を禁止し、合焦レベルが大きい場合はホワイトバランス動作を許可するステップと、また、ホワイトバランス動作を許可する合焦レベルをホワイトバランス動作を禁止する合焦レベルより高い値に設定するステップと、ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態と現状の儘の制御値でホールドする状態との切り替えを、合焦レベルが小さい場合は、ホワイトバランス動作をホールドし、合焦レベルが大きい場合は、ホワイトバランス動作を追従動作させるステップと、また、ホワイトバランス動作を被写体の色温度に追従して制御する状態の合焦レベルを、現状の儘の制御値でホールドする状態の合焦レベルより高い値に設定するステップと、ホワイトバランスの制御速度の切り替えを、合焦レベルが小さい場合は、合焦レベルが大きい場合に比べて、ホワイトバランスの制御速度を遅くするステップとを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】 請求項12記載の制御方法を実現するためのプログラムを格納したことを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図3】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2001−61161(P2001−61161A)
【公開日】平成13年3月6日(2001.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−234001
【出願日】平成11年8月20日(1999.8.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】