説明

ホームゲート装置及び安全柵

【課題】プラットホーム上の人が軌道上に人が転落する事故と、走行する列車に接触する事故を防止する、低コストで設置でき、列車の種類により異なるドア間隔の違い及びドア数の違いにも対応できるホームゲート装置にする。また、該装置とともに丈夫でありかつ低コストで設置できる安全柵にする。
【解決手段】ホームゲート装置1は、駅のプラットホーム100に到着した列車のドアに対向して設置される門形のゲート枠2を有し、該ゲート枠2の内側に、列車のドアの開閉とともに昇降機構を動作させて上下方向に開閉する仕切り材6が設けられている。安全柵50は、該ホームゲート装置1,1間に位置するプラットホーム個所に設置される枠材51を有し、枠材51で囲まれた内側に溶接金網52が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホーム上の人が軌道上に転落する事故および通過中の列車に接触する事故を防止する、上下方向に開閉するホームゲート装置と、このホームゲート装置とともに設置される安全柵に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホーム上の人が軌道上に転落する事故および通過中の列車に接触する事故を防止することは、鉄道各社の重要かつ緊急課題である。
鉄道局長が各地方運輸局長に宛てた平成15年12月5日付「国鉄技第159号」の「ホーム柵設置促進に関する検討 報告書」によれば、ホームからの転落要因の55%が酔客によるものであり、視覚障害者の50%が転落経験あると記載されている。同報告書に記載はないが、プラットホーム上の人が走行中の列車に接触する事故も少なくない。
【0003】
これらの事故を防止するため、既に一部の駅では、プラットホーム上にこれらの事故防止用のホームドア装置(可動式ホーム柵)が設置済みである。
そして、最近では、国土交通省もホームドア装置の設置のための法整備を検討し、このための支援も表明している。
【0004】
従来技術によるホームドア装置は、120cm程度の高さのドア(引戸)を夫々戸袋内から突合せ方向に出没させて列車のドア前方を開閉させる可動柵型のホームドア装置(特許文献1)と、プラットホームの内側と外側とを2枚の引戸を備えた壁面で仕切るスクリーン式のホームドア装置(東京の営団地下鉄南北線等に設置済)と、の2種類に大別される。
【0005】
特許文献1によるホームドア装置は、プラットホーム上に設置した戸袋内から、引戸式の2枚のホームドアを突合せ方向にスライド移動させて、列車のドア前方に位置する乗降用通路を開閉させる構造を具備し、ホームドアの開閉動作はリニアモータで行なわれる。
現在設置済の可動柵型のホームドア装置は、列車のドアに対向する位置に設置され、引戸方式の2枚のドアの横に、前後方向に厚みがある金属製箱型構造の戸袋が設けられ、この戸袋が横方向に隣り合って安全柵を形成している。
現在設置済のスクリーン式のホームドア装置は、その壁面に乗降用の開口部が設けられ、ドアはこの開口を開閉する方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−20657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現在、ホームドア装置(ホーム柵)の普及は順調であるとは言えない。その原因には、現在実用化されているホームドア装置には、(1)ドアの位置の異なる列車を運行している路線に対応できない。(2)ホーム幅が十分に確保できない個所において、車いす使用者の円滑な移動に支障が生じる場合がある。(3)ホーム有効幅が減少することにより、ホーム上の旅客流動に支障を及ぼす場合がある。(4)カーブのあるプラットホームに対応できない。
また、ホームドアの普及が遅れている原因に、鉄道会社による多額の設置コスト負担がある
【0008】
また、戸袋構造の安全柵は、ホームドア装置の一部であるとして、高級感をもたせたつくりになっている。このため、戸袋の設置にも高額な費用負担が必要であった。
【0009】
本発明は、上記の各不具合を解消できる、上下開閉型のホームゲート装置と、このホームゲート装置と併用する、製造コストと設置コストが抑えられた安全柵を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係るホームゲート装置は、
駅のプラットホームに到着した列車のドアに対向して該プラットホームの側端近傍個所に立設される門形のゲート枠と、該ゲート枠の内側に配置された仕切り材と、該仕切り材を上下移動させるモータ駆動方式の昇降機構と、該モータ駆動を電気的に制御する制御部とを有し、
前記左側支柱と右側支柱には、前記仕切り材の両端部が突入する縦長のガイド部が設けられ、
前記昇降機構は、前記左側支柱と右側支柱の前記各ガイド部に沿う該左側支柱と右側支柱の内側に設けられ、
前記制御部には、プラットホームに到着した列車のドア開閉スイッチのスイッチ信号を受信して前記仕切り材を上下いずれかの方向に開閉させる信号制御回路、または、車掌又は駅員による手動スイッチ操作により前記仕切り材を上下いずれかの方向に開閉させる信号制御回路、或いは、プラットホーム又はその近傍に設置した列車検知手段から発信される信号を受信して前記仕切り材を上下いずれかの方向に開閉させる信号制御回路が設けられ、
前記仕切り材が、人の邪魔にならない上方位置まで上昇したときにこの位置で自動停止し、人の背丈以下の高さであり且つ人が簡単に乗り越えられない高さまで下降したときにこの位置で自動停止するように、前記制御部を介したモータ駆動制御が行われるように構成されているところに特徴がある。
【0011】
本発明によるホームゲート装置は、列車のドア前方を含めたプラットホーム上の側縁近傍面に設置される。
このホームゲート装置は、前記仕切り材がプラットホームに到着した列車のドアに対向する位置になるように設置される。
前記仕切り材を下方の停止位置に移動させた状態にさせると、プラットホーム上の人が軌道上に落下する事故、および、プラットホーム上の人が進行中の列車に接触する事故は防止される。このホームゲート装置の側方におけるこれらの事故は後述する安全柵を設置することにより防止される。
そして、プラットホームに到着した列車から乗客の乗降が行われるまでには、前記仕切り材は、人の邪魔にならない高さまで上昇して停止し、これにより、列車のドアに通じる通路が開放される。
前記仕切り材は、その昇降及び支持が前記昇降機構により行われ、前記ガイド部に沿った垂直方向に上下移動して開閉する。このため、上下開閉型ドアと称してもよい。この点で、横スライド方向の引戸型のドアを備えた従来のホームドア装置とは全く異なる。
【0012】
前記仕切り材の両端部は、前記左側支柱と右側支柱に設けられている縦長のガイド部内に突入した状態を維持させたまま、これらのガイド部に沿って昇降するため、仕切り材の人による押し付けや倒れ込みなどによる押し倒しは、これらのガイド部により阻止される。
【0013】
前記仕切り材は、人の背丈以上の邪魔にならない高さまで上昇すると、この位置で自動停止し、人が簡単に乗り越えられない高さ(例えば上端の高さが120cm)になると、この位置で自動停止する。これらの停止は前記昇降機構の移動位置を検知するセンサ又はリミットスイット等のスイッチ類による検知により行われ、或いは前記モータの回転数又は回転数或いは駆動時間を制御するプログラムにより行われる。
【0014】
前記仕切り材の昇降制御は、前記制御部を通じたモータ制御により行われる。
この制御部は、列車の車掌又は駅員による列車のドア開閉スイッチの操作、或いは、駅のホームに設置したスイッチの操作、プラットホーム又はその近傍に設置した列車検知手段から発信される信号の受信、のいずれかにより行われる。
【0015】
前記ドア開閉用スイッチは列車のドアの開閉制御が行われ、同時に、列車から前記制御部に向けて、前記モータ駆動のための無線パルス信号が出力される。
【0016】
駅に設置した前記スイッチと前記制御部とは信号線で接続され、該スイッチには前記仕切り材の上昇用押ボタンと下降用押ボタンとが設けられている。
【0017】
最適な前記列車検知手段としては、プラットホーム側又はその近傍の設けた列車の速度検知センサが挙げられる。このセンサはプラットホームに到着した列車の速度が所定速度(例えば5km/h)以下に低下すると、前記仕切り材を上昇させるモータ制御信号を前記制御部に向けて発信し、前記速度が前記所定速度以上になると、前記仕切り材を下降させるモータ制御信号を前記制御部に向けて発信する。この速度検知センサは、公知の速度検知センサであり、例えば、ドップラー式センサ、2個の位置検知センサによる検知時間差を利用したもの、カメラを用いた光学式センサなどが挙げられる。
【0018】
本発明によるホームゲート装置は、製造時に、前記ゲート枠上部の横枠部の長さと、左右の昇降機構を連動させる駆動軸の長さを変更するだけで、ドアの位置の異なる列車を運行している路線に対応させた横幅の設定が可能になる。例えば、列車の隣り合う2箇所のドアに対応させた横幅のあるホームゲート装置にすることも可能である。この横幅の設定ができると、ホーム幅が十分に確保できない個所を外した個所に支柱を設置することも可能になる。しかも、支柱をプラットホーム上に立設させる構造は、ホーム有効幅の減少個所が少ない。
【0019】
また、本発明によるホームゲート装置は、前記仕切り材の両端部を支持させて昇降する構造である。このため、カーブのあるプラットホームの場合も、このこのカーブに合わせた曲面を持つ仕切り材を使用することにより対応できる。
【0020】
請求項2の発明に係るホームゲート装置においては、
更に、前記昇降機構は、無限連鎖チェーンとスプロケットを用いたチェーン駆動機構、無限連鎖ベルトとスプロケット又はプーリを用いたベルト駆動機構、ワイヤーと該ワイヤーの巻取り部とを用いたワイヤー引き上げ式の駆動機構、リニアモータ、のいずれかで構成されている。
【0021】
チェーン駆動機構、ベルト駆動機構、ワイヤー引き上げ式の駆動機構は、いずれも簡単な構造で、低コストで実装できる。リニアモータは低コストで実装することが困難であるが、スプロケットが不要であるため、前記左右の支柱の太さが抑えられる。
【0022】
請求項3の発明に係るホームゲート装置においては、
請求項1又は2に記載の構成の上、更に、前記制御部には、該仕切り材の下方に人や物などの障害物の検知をするセンサが信号接続され、前記仕切り材が下方移動モードにあるときに該センサを駆動させて、該センサによる前記検知があると、この検知信号に基づいて前記仕切り材の下方移動を一時停止させる信号制御回路が実装されている。
【0023】
このセンサは、LEDと、LED光を受光する受光素子及びこれらの駆動回路を備えた光センサが挙げられ、LEDと受光素子は仕切り材下方の両横になる前記左右の支柱またはその近傍個所に振り分けて設置される。
【0024】
請求項4の発明に係るホームゲート装置においては、
請求項1乃至3のいずれかの項に記載の構成の上、更に、前記制御部には、前記仕切り材の外側となる前記プラットホーム先端部に取り残された人及び物を検知する第2センサが信号接続され、該仕切り材が下方移動モード及び下方停止位置にあるときに該第2センサによる前記検知があると、この検知信号に基づいて前記仕切り材の下方移動を一時停止させる信号制御回路が実装されている。
【0025】
この第2センサも前記センサと同様に、LEDと、LED光を受光する受光素子及びこれらの駆動回路を備えた光センサが挙げられ、LEDと受光素子は前記左右の支柱またはその近傍個所に振り分けて設置される。
【0026】
請求項5の発明に係るホームゲート装置においては、
請求項1乃至4のいずれかの項に記載の構成の上、更に、前記制御部には、手動によるスイッチ操作により前記仕切り材を上昇及び下降させる非常用スイッチが信号接続されている。
【0027】
この非常用スイッチは、前記仕切り材の外側に人や物を残したまま、仕切り材を下方の閉位置まで下降させたときに、仕切り材を一時的に上方移動させるためにある。このため、この非常用スイッチは、左右の支柱の手の届く高さの個所またはその近傍個所に取り付けられている。
【0028】
請求項6の発明に係るホームゲート装置においては、
請求項1乃至5いずれかの項に記載の構成の上、更に、前記制御部には、前記仕切り材の下端停止位置から途中高さまでの間における昇降速度を低速で行ない、該途中高さから上端停止位置までの間における昇降速度を比較的高速で行なう信号制御回路が実装されている。
【0029】
列車のドアの開閉動作は瞬時に行われる。本発明のホームゲート装置の仕切り材の昇降は、安全にしかもこの時間帯で行う必要があるため、人に接触する可能性がある高さでは低速で行われ、人に接触する可能性が無い或いは極めて少ない高さでは高速行われるように、高さ途中で速度変化させるようにした。
【0030】
請求項7の発明に係る安全柵は、
隣り合う前記複数のホームゲート装置相互間のプラットホーム上に設置される安全柵であって、
前記プラットホーム上に立設した向きで設置固定する取付け部を有する枠材を有し、該枠材で囲まれた内側に、溶接金網、金網入り強化ガラス板、強化プラスチック板、金属板、複数本の横並びする縦桟、のいずれかが固定された薄形構造を有しているところに特徴がある。
【0031】
本発明に係るホームゲート装置は、戸袋を不要としている。このため、前後厚みが狭い薄型の安全柵の設置が可能になる。とくに、前記枠材で囲まれた内側に溶接金網が固定された安全柵は、金網の縦線と横線の交差個所が溶接により固着されているため丈夫で変形が小さい。また、低コストで設置できる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の発明に係るホームゲート装置による、門形のゲート枠の内側に配置されている仕切り材を上下方向に移動させて開閉させる構成は、プラットホームに沿った方向の長さが自由に設定できる。この結果、ドアの位置の異なる列車を運行している路線に対応させたホームゲート装置、および、列車の隣り合う2箇所のドアに対応させた横幅のあるホームゲート装置にすることが可能になった。
また、このように横幅の設定が自由であると、ホーム幅が十分に確保できない個所を外した個所に支柱を設置することが可能になる。
また、支柱をプラットホーム上に立設させる構造とした結果、ホーム有効幅の減少が抑えられ、ホーム上の旅客流動に対する支障も小さい。
また、両端部を支持させて昇降する仕切り材を用いた結果、プラットホームのカーブに沿う仕切り材の使用が可能になった。
【0033】
請求項2の発明に係るホームゲート装置による、チェーン駆動、ベルト駆動、ワイヤー引き上げ式による昇降機構は、構造が簡易で低コストで実装できる。また、リニアモータを用いると、スプロケットが不要であるため、左右の支柱の太さが抑えられる。このため設置面積が抑えられ、プラットホーム上の旅客流動に対する支障が小さい。
【0034】
請求項3の発明に係るホームゲート装置によれば、前記仕切り材が下方移動モードにあり、仕切り材の下方に人がいるときには、この人をセンサで検知して仕切り材の下方移動を一時停止させることができる。このため、仕切り材が旅客の頭に接触する危険性が防止される。
【0035】
請求項4の発明に係るホームゲート装置によれば、前記仕切り材の外側となる前記プラットホーム先端部に取り残された人及び物がある場合には、仕切り材の下方移動を一時停止させて、ホームゲート装置の内側に脱出する状態をつくる。
【0036】
請求項5の発明に係るホームゲート装置によれば、仕切り材の外側に人や物を残したまま仕切り材を下方の閉位置まで移動させた場合でも、仕切り材の上昇させる非常用スイッチを操作して、安全なホームゲート装置の内側に脱出する状態をつくる。
を設けて、
【0037】
請求項6の発明に係るホームゲート装置によれば、仕切り材の下端停止位置から途中高さまでの間における昇降速度を低速にさせ、この途中高さから上端停止位置までの間の昇降速度を比較的高速にさせて、列車のドアの開閉動作と開閉タイミングを合わせるようにした。この結果、ホームゲート装置の開閉が列車の運行時間に影響を与えることは殆どない。
【0038】
請求項7の発明に係る安全柵によれば、隣り合う前記複数のホームゲート装置相互間のプラットホーム上に設置される枠材で囲まれた内側に、溶接金網などの薄形構造の仕切りを固定させて構成した結果、丈夫で変形が小さく、低コストで設置できる安全柵にすることができるようになった
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明を実施するための形態が次の実施例の欄に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】プラットホーム上のホームゲート装置と安全柵を軌道側から見た斜視図。
【図2】同じくプラットホーム上から見た正面図。
【図3】同じく列車速度による仕切り材の開閉制御方法を示した平面図。
【図4】(a)は列車速度検知により仕切り材を開放させる方向のモータ制御を行うブロック図、(b)は列車速度検知により仕切り材を閉じる方向のモータ制御を行なうブロック図。
【図5】ホームゲート装置の一部を破断して示した平面断面図。
【図6】一方の支柱内に配設されている昇降機構を透視して示した斜視図。
【図7】同じく他方の昇降機構を透視して示した斜視図。
【図8】ホームゲート装置が同じく開放時の状態をプラットホーム上から見た正面図。
【図9】同じく平面断面図。
【図10】プラットホーム上のホームゲート装置を列車とともに見た側面断面図。
【図11】同じく平面断面図。
【図12】ホームゲート装置の制御ブロック図。
【図13】(a)は安全柵の一部を示した正面図、(b)は同じく側面断面図。
【実施例】
【0041】
図1乃至図3に示す本発明1実施形態のホームゲート装置1は、プラットホーム100上の側縁辺りにおける列車200のドア201,201に向き合う個所に設置される。
ホームゲート装置1は、内側が中空の右側支柱3と左側支柱4と鴨居に相当する横枠5とが組み合わされた門形のゲート枠2を備える。
ゲート枠2とプラットホーム100とによって囲まれた空間内には、仕切り材6が上下方向に開放制御が行える状態で配置され、仕切り材6がプラットホーム100の先端方向に向けた乗降客の移動を阻止する。
ホームゲート装置1の上下高さは、仕切り材6の上下移動距離と、プラットホーム100上の天井(屋根)とが考慮された高さである。ホームゲート装置1のプラットホーム100に沿う方向の横幅は、プラットホーム100に停車する列車のドアの位置及び数等が考慮された上、製造段階で設定される。すなわち、この横幅は、製造工場で自由に設定して製作できる。
ゲート枠2のプラットホーム100上に向けた設置は、右側支柱3と左側支柱4の下端部に設けられている平面視略方形状の厚板金属製の座3a,4aをプラットホーム100上にボルト止めする方法で行われている。
【0042】
図2及び図3に示すように、プラットホーム100に列車が到着していないときには、仕切り材6は下方の停止位置にある。この位置では仕切り材6の上端縁の高さHはプラットホーム100上から100〜120cmの位置にある。ホームゲート装置1の側方には安全柵50が設置されている。このため、プラットホーム100上の人が、ゲート枠2の内側から軌道上に落下する事故、および、通過する列車に接触する事故が防止される。
【0043】
仕切り材6の開閉は、図4に示すように、列車の速度を検知する方法で行う。図4によれば、2個の光学式又は音波式の反射センサ60,61により列車200を検知し、双方の検知時間差を比較演算回路部62で演算して、例えば、列車200の速度が5km/h以下の場合には、仕切り材6を上昇させ、5km/h以上の場合には仕切り材6を下降させるモータ制御を行う。図5(a)及び(b)にはこれらの検知に基づくモータ制御のフロー図が示されている。
【0044】
図6乃至図8に示すように、右側支柱3と左側支柱4の各対向面には、縦長の切欠き部からなるガイド部3b、4bが設けられており、仕切り材6の両端部はイド部3b、4b内に突入した状態にある。
仕切り材6は、その両端部が右側支柱3と左側支柱4の内部に配置されたチェーン駆動機構に装着支持されており、右側支柱3に装着されているモータ10の駆動によりチェーン駆動機構が上下いずれかの方向に回動して、仕切り材6を上昇又は下降させる。
【0045】
これらのチェーン駆動機構の駆動は、正転及び逆転するモータ10駆動制御で行われる。モータ10には減速ギヤ11が組み付けられて、仕切り材6の最適な昇降速度を維持させている。図6では作図上、モータを省略して描かれている。
図6及び図7に示す一方の片側のチェーン駆動機構は、減速ギヤ11の出力軸12と連動する、右側支柱3の上部内にあるチェーンスプロケット14と、右側支柱3の下部内に円滑回転自在に支持されたチェーンスプロケット18と、これらのチェーンスプロケット14,18間に懸架されたチェーンC1で構成されている。
図6及び図8に示す他方の片側のチェーン駆動機構は、減速ギヤ11の出力軸12と連動する連結軸15を介してモータ駆動する、左側支柱4の上部内にあるチェーンスプロケット17と、左側支柱4の下部内に円滑回転自在に支持されたチェーンスプロケット23と、これらのチェーンスプロケット17,23間に懸架されたチェーンC2で構成されている。
【0046】
図6乃至図8に示すように、チェーンC1,C2の途中高さの個所には、仕切り材6の側端部を掛止させる取付部材19,24が装着されており、仕切り材6は取付部材19,24に装着支持されて、チェーンC1,C2の上下回動とともに上昇下降する。仕切り材6を押す方向の外圧が作用しても縦長の切欠き部からなるガイド部3b、4bがこの外圧を受け止める。
【0047】
仕切り材6は、軽量かつ堅牢で撓みの少ない枠材の内側面に、ステンレス薄板、アルミ板、FRP等の堅牢なプラスチック板、幌生地、金網等のいずれかよりなる軽量な素材とする材料が固定されたもので構成されている。枠材は仕切り材6の張りを持たせた形状維持と撓みを防止する。
図示していないが、仕切り板6は平面視においてカーブした形状のものを用いてもよい。
【0048】
仕切り材6は、チェーン14,17を介して左右の支柱3,4間に水平姿勢に支持されており、モータMの駆動によりチェーン14,17を上下回動させると、チェーン仕切り材6は右側支柱3と左側支柱4の各対向面に設けられている縦長の切欠部3a,4aに沿って上下移動する。
図2及び図3に示すように、プラットホーム100に列車200が到着しても、列車200のドア201が開くまでは、仕切り板6は下方の停止位置にある。
【0049】
図7乃至図9に示すように、仕切り材6は、プラットホーム100に到着した列車200のドア201,201の開放動作とともに、あるいはその直前に、プラットホーム100上の乗降客の邪魔にならない高さまで上昇して停止するようにモータ制御されている。
この邪魔にならない高さは、例えば、仕切り板6の下端部が200cm〜250cmにある。仕切り材6が上昇しているとき、および上方で停止しているときには、左側支柱4の軌道側に向けた面の上部に設けられている赤ランプL1が点灯して、仕切り材6が上方に開いた状態にあることを列車200の車掌が確認できるようにしている。
そして、列車200のドア201,201の閉動作とともに、あるいは列車200の出発直後に、下降する。仕切り材6が下方の停止位置に移動すると、前述したように、プラットホーム100上の人が、ゲート枠2の内側から軌道上に落下する事故、および、通過する列車に接触する事故が防止される。
【0050】
本発明実施形態のホームゲート装置1は、図1、図5及び図9に示すように、仕切り材6の下方にいる乗客をLED2と光センサS2とからなるセンサ装置を対向させて設けてある。このセンサ装置は、仕切り材6が下降モードにあるときに作動して、仕切り材6の下方に乗客がいるときに、これを検知して、仕切り材6の下方移動を一時停止させ、乗降客の注意を促すランプL1を点灯させ、ブザーWを鳴動させる信号を制御部に発信する。
【0051】
また、本発明実施形態のホームゲート装置1は、図1、図5、図9乃至図11に示すように、LED2と光センサS2からなるセンサ装置を仕切り材6の外側になる個所に対向させて設けて、プラットホーム先端部に取り残された乗客や物を検知したときには、仕切り材6の下方移動を一時的に停止させるようにしてある。
また、駆け込み乗車により、閉じたドア201,201と仕切り材6の間に人が取り残される不測の事態が生じた場合には、仕切り材6を一時的に上昇させる非常用スイッチ36が、手の届く個所に設けられている。
【0052】
仕切り材6の上昇開始から途中高さまでの間に至る速度と、この途中高さから下降し終えるまでの速度は、乗降客に危険とならないように、低速度で行われ、この速度制御は制御部に搭載した、モータ駆動タイマー、または仕切り材6の昇降位置検知スイッチにより行われる、
【0053】
図12は上記の各制御を実行する制御回路ブロック図を示しており、この制御部30には、列車のドアの開閉スイッチから送られる信号の受信部32の他、以下の電気及び電子部品が信号接続されている。31はAC電源を入力してDC変換する電源入力部、37は、モータの正転及び逆転の操作を行う手動スイッチ、33はプラットホーム側又はその近傍に設けた列車の速度検知センサであり、このセンサはプラットホームに到着した列車の速度が所定速度(例えば5km/h)以下に低下すると、前記仕切り材を上昇させるモータ制御信号を前記制御部に向けて発信し、前記速度が前記所定速度以上になると、前記仕切り材を下降させるモータ制御信号を前記制御部に向けて発信する。
L2は赤ランプ、L3は青ランプ、43,44は仕切り板6の昇降停止位置を検知するリミットスイッチ、45はLED1の駆動回路部、46は光センサS1の駆動回路部、47はLED2の駆動回路部、48は光センサS2の駆動回路部であり、これらの電気及び電子部品等が制御部に信号接続されている。
制御部30は、マイコン制御又はシーケンス制御、あるいはこれらの双方による制御を行う。
【0054】
図13は、ホームゲート装置とともに設置される安全柵50を示している。本実施形態の安全柵50は、プラットホーム上に立設した向きで設置固定する取付け部を有する枠材51を有し、枠材51で囲まれた内側に、溶接金網52が固定された薄形構造の安全柵であり、溶接金網52を用いると、縦線と横線とが電気溶接により接合されているため丈夫であり、安全柵50を低コストで製造できる。
この安全柵50は、図1及び図2及び図5に示すように、ホームゲート装置1の側方のプラットホーム100上に設置される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るホームゲート装置および安全柵は、従来のホームドア装置が有する不具合を解消する。このため、駅のプラットホーム上の設備装置の分野において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0056】
1 (本発明実施形態の)プラットホームドア装置
2 ゲート枠
3 右側支柱
4 左側支柱
6 仕切り材
10 モータ
50 安全柵
52 溶接金網
100 プラットホーム
200 列車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅のプラットホームに到着した列車のドアに対向して該プラットホームの側端近傍個所に立設される門形のゲート枠と、該ゲート枠の内側に配置された仕切り材と、該仕切り材を上下移動させるモータ駆動方式の昇降機構と、該モータ駆動を電気的に制御する制御部とを有し、
前記左側支柱と右側支柱には、前記仕切り材の両端部が突入する縦長のガイド部が設けられ、
前記昇降機構は、前記左側支柱と右側支柱の前記各ガイド部に沿う該左側支柱と右側支柱の内側に設けられ、
前記制御部には、プラットホームに到着した列車のドア開閉スイッチのスイッチ信号を受信して前記仕切り材を上下いずれかの方向に開閉させる信号制御回路、または、車掌又は駅員による手動スイッチ操作により前記仕切り材を上下いずれかの方向に開閉させる信号制御回路、或いは、プラットホーム又はその近傍に設置した列車検知手段から発信される信号を受信して前記仕切り材を上下いずれかの方向に開閉させる信号制御回路が設けられ、
前記仕切り材が、人の邪魔にならない上方位置まで上昇したときにこの位置で自動停止し、人の背丈以下の高さであり且つ人が簡単に乗り越えられない高さまで下降したときにこの位置で自動停止するように、前記制御部を介したモータ駆動制御が行われるように構成されていることを特徴とするホームゲート装置。
【請求項2】
前記昇降機構は、無限連鎖チェーンとスプロケットを用いたチェーン駆動機構、無限連鎖ベルトとスプロケット又はプーリを用いたベルト駆動機構、ワイヤーと該ワイヤーの巻取り部とを用いたワイヤー引き上げ式の駆動機構、リニアモータのいずれかで構成されている、請求項1に記載のホームゲート装置。
【請求項3】
前記制御部には、更に、該仕切り材の下方に人や物などの障害物の検知をするセンサが信号接続され、前記仕切り材が下方移動モードにあるときに該センサを駆動させて、該センサによる前記検知があると、この検知信号に基づいて前記仕切り材の下方移動を一時停止させる信号制御回路が実装されている、請求項1又は2に記載のホームゲート装置。
【請求項4】
前記制御部には、更に、前記仕切り材の外側となる前記プラットホーム先端部に取り残された人及び物を検知する第2センサが信号接続され、該仕切り材が下方移動モード及び下方停止位置にあるときに該第2センサによる前記検知があると、この検知信号に基づいて前記仕切り材の下方移動を一時停止させる信号制御回路が実装されている、請求項1乃至3のいずれかの項に記載のホームゲート装置。
【請求項5】
前記制御部には、更に、手動によるスイッチ操作により前記仕切り材を上昇及び下降させる非常用スイッチが信号接続されている、請求項1乃至4のいずれかの項に記載のホームゲート装置。
【請求項6】
前記制御部には、前記仕切り材の下方における端停止位置から途中高さまでの間における昇降速度を低速で行ない、該途中高さから上方における停止位置までの間における昇降速度を比較的高速で行なう信号制御回路が実装されている、請求項1乃至5のいずれかの項に記載のホームゲート装置。
【請求項7】
隣り合う前記複数のホームゲート装置相互間のプラットホーム上に設置される安全柵であって、
前記プラットホーム上に立設した向きで設置固定する取付け部を有する枠材を有し、該枠材で囲まれた内側に、溶接金網、金網入り強化ガラス板、強化プラスチック板、金属板、複数本の横並びする縦桟、のいずれかが固定された薄形構造を有していることを特徴とする安全柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−214196(P2012−214196A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121003(P2011−121003)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000176143)三上化工材株式会社 (2)
【Fターム(参考)】