ボイラの制御装置、及びボイラの制御方法
【課題】本発明は、ボイラから排出される排ガス中の窒素酸化物の濃度を所望の値に低減し、脱硝装置に注入する余剰のアンモニアが下流側に流出することを抑制するボイラの制御装置を提供する。
【解決手段】燃料と空気を供給するバーナと、ボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートを備えたボイラと、ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置が設置された装置のバーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御装置において、前記ボイラの制御装置には前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段を備えて構成した。
【解決手段】燃料と空気を供給するバーナと、ボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートを備えたボイラと、ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置が設置された装置のバーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御装置において、前記ボイラの制御装置には前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段を備えて構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラント等に設置され、石炭等の燃料を燃焼してこのプラントの作動蒸気を発生するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電プラント等に設置され、石炭等の燃料を燃焼してこのプラントの作動蒸気を発生するボイラから排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を除去する技術として、ボイラの下流側に脱硝装置を設置して排ガスダクト内にアンモニア(NH3)を注入し、アンモニアの存在下で触媒を用いて窒素酸化物を還元する方式が採用されている。
【0003】
この脱硝装置の脱硝触媒層で起こる脱硝反応は、選択的接触還元反応であり、その反応は次の化学式による。
【0004】
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O ・・・(1)
(1)式に示すように、選択的接触還元反応では排ガス中の窒素酸化物とアンモニアが1対1のモル比で反応する。窒素酸化物と比較してアンモニア注入量が相対的に少ない場合は、窒素酸化物を還元できず、煙突から排出される窒素酸化物が多くなる。
【0005】
逆に、窒素酸化物と比較してアンモニア注入量が相対的に多い場合は、脱硝装置の後流側に設置されているエアヒータにアンモニアが流入し、これが原因でエアヒータの目詰まりが起こる。
【0006】
これらの不具合の現象を回避するには、窒素酸化物濃度の分布に合わせ、アンモニアを過不足なく注入する必要がある。
【0007】
特開平9−75673号公報には、アンモニアを過不足無く注入するため、アンモニア注入ノズルと脱硝触媒層との間に、複数個に分割したガス混合器を設けるとともに、その複数個のガス混合器の各々に対応させてアンモニア注入ノズルを分割して配置し、かつノズル毎にアンモニア注入量を可変とした脱硝装置に関する技術が記載されている。
【0008】
窒素酸化物とアンモニアは1対1のモル比で反応するので、脱硝装置入口の窒素酸化物濃度を低減するとアンモニア消費量を低減でき、プラントの運転費用を低減できる。
【0009】
特開平5−33906号公報には、ボイラ出口排ガス中の酸素濃度の設定値と、計測した酸素濃度の値が一致するようにバーナ、及びエアポートから供給する空気流量を決定する技術が記載されている。また、酸素濃度の設定値を適切に与えることで、ボイラ排ガス中の未燃分、及び窒素酸化物の濃度が規制値を超えない範囲内において、運転費用を低減できる技術が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平9−75673号公報
【特許文献2】特開平5−33906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
脱硝装置の入口における窒素酸化物濃度分布は、バーナ、及びエアポートから供給する空気量の配分で変わる。そのため、空気量の配分条件によっては、脱硝装置入口の窒素酸化物濃度の分布が偏り、局所的に窒素酸化物濃度が高くなる場合がある。
【0012】
この領域の窒素酸化物を還元するのに必要なアンモニア量が、1本のアンモニア注入ノズルから供給できるアンモニア量の上限を超えてしまう場合、その領域の窒素酸化物を還元できずに窒素酸化物濃度が所望の濃度に低下しない可能性がある。
【0013】
また、供給したアンモニアが窒素酸化物濃度の高い空間で全て反応できず、残ったアンモニアが脱硝装置の下流側に流出する。脱硝装置の下流にアンモニアが流出すると、エアヒータ目詰まりの原因となるばかりか、周囲環境に対しても好ましくない状況にする。
【0014】
本発明の目的は、ボイラから排出される排ガス中の窒素酸化物の濃度を所望の値に低減すると共に、脱硝装置に注入する余剰のアンモニアが脱硝装置の下流側に流出することを抑制するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のボイラの制御装置は、燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置とが設置された装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御装置において、前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段が備えられていることを特徴とする。
【0016】
また本発明のボイラの制御装置は、燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とが設置されており、前記脱硝装置の上流側で該脱硝装置に流入する燃焼ガスにアンモニアを供給するアンモニア注入ノズルが配設された装置の前記アンモニア注入ノズルから注入するアンモニア量を制御するボイラの制御装置において、前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルの予測値に基づいて前記アンモニア注入ノズルから供給するアンモニア量を決定するアンモニア量決定手段が備えられていることを特徴とする。
【0017】
また本発明のボイラの制御装置は、燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とが設置されており、前記脱硝装置の上流側で該脱硝装置に流入する燃焼ガスにアンモニアを供給するアンモニア注入ノズルが配設された装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量及び前記アンモニア注入ノズルから注入するアンモニア量を制御するプラントの制御装置において、前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足し、かつ前記脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が低くなるように、前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段と、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルの予測値に基づいて前記アンモニア注入ノズルから供給するアンモニア量を決定するアンモニア量決定手段とが備えられていることを特徴とする。
【0018】
本発明のボイラの制御方法は、バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナからボイラ内に供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置とを備えた装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御方法において、前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前記領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、バーナもしくはエアポートから供給する空気量を決定して前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御することを特徴とする。
【0019】
また本発明のボイラの制御方法は、バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナから供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスにアンモニアを注入して前記燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とを備えた装置の前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御するようにしたボイラの制御方法において、前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前記領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルによる予測値に基づいて供給するアンモニア量を決定して前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御することを特徴とする。
【0020】
また本発明のボイラの制御方法は、バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナからボイラ内に供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスにアンモニアを注入して前記燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とを備えた装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御すると共に、前記燃焼ガス中に供給するアンモニアの供給量を制御するようにしたボイラの制御方法において、前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前期脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が、前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、バーナもしくはエアポートから供給する空気量を決定して前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御すると共に、更に前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルによる予測値に基づいて供給するアンモニア量を決定して前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ボイラから排出される排ガス中の窒素酸化物の濃度を所望の値に低減すると共に、脱硝装置に注入する余剰のアンモニアが脱硝装置の下流側に流出することを抑制するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施例であるボイラの制御装置及びボイラの制御方法について図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の一実施例であるボイラの制御装置及びボイラの制御方法について図1を参照して次に説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施例であるボイラの制御装置の構成を示す概略図である。
【0025】
図1において、ボイラ1には、燃料となる微粉炭と空気を供給するバーナ2と、空気が供給されるアフタエアポート3が設置されている。
【0026】
バーナ2から供給された燃料の微粉炭はボイラ1内で燃焼して高温の燃焼ガスが発生する。尚、微粉炭は微粉炭用配管4を通じてバーナ2に供給され、空気は空気用配管5を通じてバーナ2とアフタエアポート3に供給されている。
【0027】
ボイラ1に配設された熱交換器16には給水ポンプ15を備えた給水用配管14を通じて給水が供給されており、この熱交換器16において供給された給水はボイラ1を流下する高温の燃焼ガスによって加熱されて高温、高圧の蒸気となる。
【0028】
この高温高圧の蒸気を熱交換器16から蒸気タービン17に供給してこの蒸気タービン17を駆動し、該蒸気タービン17によって発電機18を回転させて電気を発電する。
【0029】
ボイラ1では微粉炭を燃焼させて発生した燃焼ガスは、前記したように熱交換器16にて熱交換した後に、ボイラ1の下流側に配設された排ガスダクト19に入り、この排ガスダクト19の下流側に設置された脱硝装置40に流入する。
【0030】
脱硝装置40の入口側の排ガスダクト19には、複数のアンモニア注入ノズル10、11が配設さられている。
【0031】
これらのアンモニア注入ノズル10、11の上流側には、それぞれ混合器8、9が接続されている。
【0032】
混合器8には空気用配管13とアンモニア用配管12とが配設されており、この空気用配管13から供給される加圧空気と、アンモニア用配管12とアンモニア流量調節弁6を通過して供給されるアンモニアとを前記混合器8で混合する。
【0033】
この混合器8で加圧空気を混合したアンモニアはアンモニア注入ノズル11に供給され、アンモニア注入ノズル11から排ガスダクト19内に噴出して下流の脱硝装置40に流入する。
【0034】
同様に混合器9には空気用配管13とアンモニア用配管12とが配設されており、この空気用配管13から供給される加圧空気と、アンモニア用配管12とアンモニア流量調節弁7を通過して供給されるアンモニアとを前記混合器9で混合する。
【0035】
この混合器9で加圧空気を混合したアンモニアはアンモニア注入ノズル10に供給され、アンモニア注入ノズル10から排ガスダクト19内に噴出して下流の脱硝装置40に流入する。
【0036】
アンモニア用配管12に設置した複数のアンモニア流量調節弁6、7は、制御装置100から出力する操作信号310によって個別に弁開度が制御され、複数の混合器8、9に供給するアンモニアの量を個別に調整できるように構成されている。
【0037】
尚、図1の実施例には図示していないが、バーナ2、及びアフタエアポート3は、一般的にはボイラ1に複数本配置されている。
【0038】
ボイラ1に設置したバーナ2、及びアフタエアポート3に供給する空気を供給する空気用配管5には、空気量を調節できるように図示していない空気流量調節弁が設置されており、この空気流量調節弁の開度も制御装置100から出力する操作信号310によって個別に弁開度が制御されるように構成されている。
【0039】
また、本実施例では排ガスダクト19内のアンモニア注入ノズル10、11、排ガスダクト19外の混合器8、9、及びアンモニア流量調節弁6、7をそれぞれ2箇所に配置しているが、配置する数、及び配置する位置は任意に変更してよい。
【0040】
また、排ガスダクト19内に混合器8、9を設置することや、燃焼ガスの流路を分割するような仕切り板を排ガスダクト19内に配置することも可能である。
【0041】
ボイラ1には、ボイラの運転状態を把握するため、ボイラ1の状態量を計測する種々の計測器が配置されている。例えば、ボイラ1に供給される燃料流量、及び空気流量は、微粉炭用配管4に設置した流量計測器20、及び空気用配管5に設置した21によってそれぞれ計測する。
【0042】
また、脱硝装置40の入口、及び出口の窒素酸化物濃度は、脱硝装置40入口側の排ガスダクト19内に設置した濃度計測器30、31、及び脱硝装置40出口側の排ガスダクト19内に設置した濃度計測器32、33によってそれぞれ計測する。
【0043】
これらの計測器で計測した各計測値210は、制御装置100の外部インターフェイス200に送信される。尚、図1には記載していないが、前述した計測器以外にも種々の計測器がボイラ1には設置されている。例えば、蒸気温度、燃焼ガス流量、アンモニア流量なども計測しており、これらの値も全て制御装置100に送信される。
【0044】
制御装置100は、演算装置として補正指令パラメータ決定手段500、アンモニア基準値計算手段600、アンモニア補正指令値計算手段700、アンモニア流量調節弁開度計算手段900、空気量基準値計算手段1100、空気量補正指令値計算手段1200、空気量調節弁開度計算手段1300をそれぞれ設置している。
【0045】
前記補正指令パラメータ決定手段500は、空気量決定手段550、及びアンモニア量決定手段560によって構成される。
【0046】
また制御装置100は、データベースとして計測値データベース400、補正指令値計算用パラメータデータベース800をそれぞれ設置している。
【0047】
さらに制御装置100は、外部とのインターフェイスとして外部入力インターフェイス200、及び外部出力インターフェイス300を備えている。
【0048】
そして外部入力インターフェイス200を介してこれらの計測器で計測した各計測値210を制御装置1の内部に取り込む。
【0049】
外部入力インターフェイス200に取り込んだ計測値210は、該外部入力インターフェイス200から計測値101として計測値データベース400に送信されて時刻と共に保存され、またアンモニア基準値計算手段600、アンモニア補正指令値計算手段600、アンモニア流量調節弁開度計算手段900、空気量基準値計算手段1100、空気量補正指令値計算手段1200、空気量調節弁開度計算手段1300に前記計測値101を送信するように構成されている。
【0050】
空気量基準値計算手段1100では、計測値101を用いて空気量基準値121を計算し、空気量補正指令値計算手段1200では、計測値101と補正指令パラメータ120を用いて空気量補正指令値122を計算する。
【0051】
制御装置100に設けた加算器125では、空気量基準値121と空気量補正指令値122を加算して、空気量要求値123を計算する。
【0052】
空気量調節弁開度計算手段1300では、計測値101と空気量要求値123を用いて、空気量調節弁開度指令値124を計算する。
【0053】
空気量調節弁開度指令値124は、外部出力インターフェイス310を介して制御装置100からボイラ1に送信され、バーナ2及びアフタエアポート3の空気量を調節する図示していない弁の開度を操作する。
【0054】
尚、空気量基準値計算手段1100、空気量補正指令値計算手段1200では、バーナ2から供給する総空気量や、ボイラ1の前面から供給する総空気量など、複数のバーナ2、及びアフタエアポート3を1つのグループとし、そのグループ毎の空気量を計算するようにしてもよい。
【0055】
アンモニア基準値計算手段600は、計測値101を用いて、アンモニア基準値107を計算する。
【0056】
アンモニア補正指令値計算手段700は、計測値101と補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存されているアンモニア補正指令パラメータ105を用いて、アンモニア補正指令値106を計算する。
【0057】
制御装置100に設けた加算器108では、アンモニア基準値107とアンモニア補正指令値106を加算し、アンモニア要求値109を計算する。
【0058】
アンモニア流量調節弁開度計算手段900では、アンモニア要求値109と、計測値101に含まれるアンモニア計測値が一致するように、アンモニア流量調節弁6、7のアンモニア流量調節弁開度指令値110を計算する。
【0059】
アンモニア流量調節弁開度指令値110は、外部出力インターフェイス300を介して、制御装置100からアンモニア流量調節弁6、7に送信される。
【0060】
補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存する補正指令パラメータ103は、補正指令パラメータ決定手段500で計算、更新する。
【0061】
補正指令パラメータ決定手段500では、計測値データベース400からの計測値102と補正指令値計算用パラメータデータベース800からの補正指令パラメータ104を用いて、補正指令パラメータ103を計算する。
【0062】
尚、図1では全ての演算装置、データベースがアンモニア流量調節弁の制御装置100の内部に配置してあるが、これらの一部を外部に配置し、ネットワークを介して信号を送受信するようにしてもよい。
【0063】
図2は、本実施例であるボイラの制御装置における動作フローチャート図である。
【0064】
図2に示すように、本実施例の制御装置100における動作フローチャートはステップ1000、ステップ1010、ステップ1020、ステップ1030、ステップ1040、ステップ1050、ステップ1060、ステップ1070を組み合わせて実行する。
【0065】
まずステップ1000では、ボイラ1の運転状態を計測器で計測した計測値210を制御装置100の外部インターフェイス200に取り込む。
【0066】
ステップ1010では、制御装置100のアンモニア基準値計算手段600と空気量基準値計算手段1100を動作させ、外部インターフェイス200から計測値101をアンモニア基準値計算手段600と空気量基準値計算手段1100に伝送してアンモニア基準値107と空気量基準値121をそれぞれ計算する。
【0067】
ステップ1020では、補正制御を実施するかどうかを判定する。判定の方法は任意に設計できる。例えば、ボイラ1が負荷変化運転を実施している時、バーナパターンを切替ている時、燃料となる石炭の種類を変更している時、スートブロワを動作させている時、脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が目標値よりも高い時などに、補正制御を実施するようにできる。
【0068】
補正制御を実施する場合、ステップ1030に進み、補正制御を実施しない場合はステップ1070に進む。
【0069】
ステップ1030では、補正指令パラメータを更新するかどうかを判定し、更新する場合はステップ1040に進んでパラメータを更新し、更新しない場合はステップ1050に進む。
【0070】
ステップ1050では、アンモニア補正指令値計算手段700、及び/或いは空気量補正指令値計算手段1200を動作させ、アンモニア補正指令値計算手段700にて計測値101と補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存されているアンモニア補正指令パラメータ105を用いてアンモニア補正指令値106を計算する。
【0071】
また、空気量補正指令値計算手段1200にて計測値101と補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存されている補正指令パラメータ120を用いて空気量補正指令値122を計算する。
【0072】
ステップ1060では、加算器108にてアンモニア基準値計算手段600で計算したアンモニア基準値107と、アンモニア補正指令値計算手段700で計算したアンモニア補正指令値106とを加算してアンモニア要求値109を計算し、その後、アンモニア流量調節弁開度計算手段900を動作させてアンモニア流量調節弁開度指令値110を計算する。
【0073】
また、加算器125にて空気量基準値計算手段1100で計算した空気量基準値121と、空気量補正指令値計算手段1200で計算した空気量補正指令値122とを加算して空気量要求値123を計算し、その後、空気量流量調節弁開度計算手段1300を動作させて空気流量調節弁開度指令値124を計算する。
【0074】
ステップ1070では、ステップ1060のアンモニア流量調節弁開度計算手段900で計算したアンモニア流量調節弁開度指令値110、及び/或いは空気量調節弁開度計算手段1300で計算した空気量調節弁開度指令値124に従って、外部インターフェイス300を介してボイラ1の排ガスダクト19内に配設したアンモニア注入ノズル10、11に供給するアンモニアの流量を調節するアンモニア流量調節弁6、7、及び/或いはボイラ1に配設した空気用配管5を通じてバーナ2及びアフタエアポート3に空気を供給する空気量を調節する図示していない弁とをそれぞれ操作する。
【0075】
その後、ステップ1000に戻り、同様の動作を繰り返す。
【0076】
図3(a)は本実施例の制御装置100に設けたアンモニア基準値計算手段600における制御ロジック図の一実施例であり、図3(b)は制御装置100に設けたアンモニア流量調節弁開度計算手段900の制御ロジック図の一実施例である。
【0077】
また、図3(c)は制御装置100に設けた空気量基準値計算手段1100の制御ロジック図の一実施例であり、図3(d)は制御装置100に設けた空気量調節弁開度計算手段1300の制御ロジック図の一実施例である。
【0078】
尚、図3(c)は、ボイラ1のバーナ2から供給する総空気量の基準値を計算する制御ロジック図である。
【0079】
図3(a)に示した本実施例の制御装置100に設けたアンモニア基準値計算手段600の制御ロジックを構成する乗算器610では、ボイラ1の状態量を計測した計測値101の1つである燃焼ガス流量601と脱硝装置40の入口NOx濃度602とを掛け合わせ、NOx量603を計算する。
【0080】
更にアンモニア基準値計算手段600の制御ロジックを構成する乗算器620では、このNOx量603とモル比設定値604を掛け合わせ、アンモニア基準値計算手段600の出力となるアンモニア基準値107を計算する。これにより、脱硝装置40の入口NOxを還元するのに必要なアンモニア量の基準値が計算される。
【0081】
図3(b)に示した本実施例の制御装置100に設けたアンモニア流量調節弁開度計算手段900の制御ロジックを構成する加減算器910では、加算器108でアンモニア基準値107とアンモニア補正指令値106を加算して計算したアンモニア要求値109からボイラ1の状態量を計測した計測値101の1つであるアンモニア計測値901を減算し、アンモニア偏差902を計算する。
【0082】
更にアンモニア流量調節弁開度計算手段900の制御ロジックを構成するPI制御器(比例積分制御器)920では、このアンモニア偏差902を用いて、アンモニア流量調節弁開度計算手段900の出力となるアンモニア流量調節弁開度指令値110を計算する。
【0083】
前記PI制御器920は、アンモニア偏差902がゼロに近づくように、アンモニア流量調節弁開度指令値110を決定するように動作する。
【0084】
図3(c)に示した本実施例の制御装置100に設けた空気量基準値計算手段1100の制御ロジックを構成する加減算器1110では、酸素濃度設定値1102からボイラ1の状態量を計測した計測値101の1つである酸素濃度計測値1103を減算し、酸素濃度偏差1104を計算する。
【0085】
空気量基準値計算手段1100の制御ロジックを構成するPI制御器1120では、この酸素濃度偏差1104を用い、酸素濃度補正値1105を計算する。
【0086】
空気量基準値計算手段1100の制御ロジックを構成する加算器1140では、ボイラ1に対する要求出力に基づいて計算された空気総量設定値1101と前記酸素濃度補正値1105を加算して、ボイラ1に投入する空気の総量である空気総量指令値1106を計算する。
【0087】
これにより、ボイラ1の出口の酸素濃度が、酸素濃度設定値と一致するのに必要な空気流量を算出する。
【0088】
更に空気量基準値計算手段1100の制御ロジックを構成するゲイン1130では、前記空気総量指令値1106に一定の値を乗じて(図10(a)では0.8)、空気量基準値計算手段1100の出力となるバーナ2から供給する空気量基準値121を計算する。
【0089】
図3(d)に示した本実施例の制御装置100に設けた空気量調節弁開度計算手段1300の制御ロジックを構成する加減算器1310では、加算器125で空気量基準値121と空気量補正指令値122を加算して計算した空気量要求値123からボイラ1の状態量を計測した計測値101の1つである空気量計測値1301を減算し、空気量偏差1302を計算する。
【0090】
更に空気量調節弁開度計算手段1300の制御ロジックを構成するPI制御器1320は、この空気量偏差1302を用いて、空気量調節弁開度計算手段1300の出力となる空気量調節弁開度指令値124を計算する。
【0091】
前記PI制御器1320は、空気量偏差1302がゼロに近づくように、アンモニア流量調節弁開度指令値124を決定するように動作する。
【0092】
次に、本実施例の制御装置100に設けた空気量補正指令値計算手段1200について説明する。空気量補正指令値計算手段1200では、ボイラ1から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素などの有害物質を低減するため、空気量基準値計算手段1100から出力される空気量基準値121を調整する空気量補正指令値122を計算する。
【0093】
制御装置100に設けた補正指令パラメータ決定手段500では、空気量補正指令値122を計算するのに必要な補正指令パラメータ120を計算する。
【0094】
制御装置100に設けた補正指令パラメータ決定手段500に備えられた空気量決定手段550では、強化学習などの最適化手法を用いて、ボイラ1に供給する空気量を決定する。決定した空気量がボイラ1に供給されるように、補正指令パラメータ決定手段500で補正指令パラメータ103を導出し、補正指令値計算用パラメータデータベース800を経由して補正指令パラメータ120を空気量補正指令値計算手段1200に入力して該空気量補正指令値計算手段1200にて空気量補正指令値122を計算する。
【0095】
制御装置100の補正指令パラメータ決定手段500に設けた空気量決定手段550で使用する強化学習理論の詳細な説明は、例えば“強化学習(Reinforcement Learning)、三上貞芳・皆川雅章共訳、森北出版株式会社、2000年12月20日出版”に述べられているので、ここでは強化学習の概念のみを説明する。
【0096】
図4に補正指令パラメータ決定手段500に設けられた空気量決定手段550で学習する強化学習理論による制御の概念を示す。この強化学習理論による制御の概念では、学習手段510は制御対象520に対して操作指令501を出力し、制御対象520は制御指令501に従って動作する。この時、制御指令501による動作により制御対象520の状態が変化する。変化した状態が学習手段510にとって望ましいか、または、望ましくないか、また、それらがどの程度かを示す量である報酬502を制御対象520から受取る。
【0097】
実際には制御対象520から受取る情報は制御対象520の状態量であって、それに基づいて学習手段510で報酬502を計算するのが一般的である。一般に、望ましい状態に近づくほど報酬502が大きくなり、望ましくない状態になるほど報酬502が小さくなるように設定される。
【0098】
学習手段510は試行錯誤的に操作を実施して、報酬502が最大になる(すなわち、できるだけ望ましい状態に近づく)ような操作方法を学習することにより、制御対象520の状態に応じて適切な操作(制御)ロジックが自動的に構築される。
【0099】
教師付学習理論は、予め成功事例を教師データとして提供する必要があり、新規プラントで運転データがない場合や、現象が複雑で予め成功事例を準備できない場合には不向きである。これに対して強化学習理論は教師なし学習に分類され、自らが試行錯誤的に望ましい操作を生成する能力を持っている点で、制御対象の特性が必ずしも明確でない場合に対しても適用可能な利点を持っている。
【0100】
しかし、プラントの運転データのみで学習するためには、学習に必要な運転データが十分蓄積されるまで待つ必要があるため、効果を発揮するまでに長時間を要する。また、試行錯誤的に学習するため、運転上望ましくない状態になる可能性もあり、場合によっては安全面で支障をきたす恐れもある。
【0101】
そこで、本実施例の制御装置100においては、制御対象であるボイラ1を模擬する補正指令パラメータ決定手段500の空気量決定手段550に備えたモデルを対象に、どのような操作信号を生成するのが良いかを予め学習する。
【0102】
空気量決定手段550に備えたこのモデルは、ボイラ1の構造を模擬しており、その燃焼(反応)、ガス流動、伝熱のプロセスを差分法、有限体積法、有限要素法等の数値解析手法を用いて計算する。
【0103】
数値解析の解析精度が高い方が望ましいが、本発明は解析手法に特徴があるのでは無く、解析手法を限定しないため数値解析方法に関する説明は省略するが、一般に計算対象であるボイラ1の形状を計算格子(メッシュ)に分割し、格子内の物理量を計算する。
【0104】
前記空気量決定手段550に備えたモデルによる数値解析によって、ボイラ1の燃焼ガスの温度、燃焼ガス成分の濃度、燃焼ガスの流速と流れの方向等が計算結果として出力される。この数値解析によって様々な操作条件における現象を計算し、ボイラ1の窒素酸化物、一酸化炭素濃度の計測位置における両者の濃度を計算する。
【0105】
計測位置の計算結果は、その断面の計算格子(メッシュ)ごとに計算される。ボイラ1の運転開始後は、制御装置100に設置した計測値データベース400に保存されている計測値102を用いて、モデル特性とプラント特性が一致するように、空気量決定手段550に備えた前記モデルを修正することもできる。
【0106】
尚、本実施例の制御装置では、最適化手法として強化学習を適用する場合について述べたが、進化的計算手法など、別の最適化アルゴリズムを用いて制御装置200の補正指令パラメータ決定手段500を構築することもできる。
【0107】
前述のように、強化学習では報酬を最大化する操作方法を学習する。従って、報酬の設計方針(報酬の計算方法)が学習結果に大きな影響を与える。例えば、ボイラ1の出口の窒素酸化物濃度が低いほど報酬が大きくなるように設計すれば、窒素酸化物濃度が低くなる操作条件を学習できる。
【0108】
このように報酬を設計することで、窒素酸化物濃度を低減でき、窒素酸化物を還元するのに使用するアンモニア量が少なくなるため、ボイラ1の運転コストを低減できる。
【0109】
本実施例のボイラの制御装置100では、以下に述べる理由により、報酬の設計方法をさらに工夫している。
【0110】
脱硝装置40の入口における窒素酸化物濃度分布は、バーナ2、及びエアポート3からボイラ1に供給する空気量の配分で変わる。そのため、空気量の配分条件によっては、窒素酸化物濃度の分布が偏り、局所的に窒素酸化物濃度が高くなる場合がある。
【0111】
この局所的に窒素酸化物濃度が高くなる領域の窒素酸化物を還元するのに必要なアンモニア量が、1本のアンモニア注入ノズルから供給できるアンモニア量の上限を超えてしまう場合、その領域の窒素酸化物を還元できずに規制値を逸脱するという問題が生じる。
【0112】
また、供給したアンモニアが脱硝装置40で全て反応できず、残ったアンモニアが脱硝装置40の下流側に設置したエアヒータに流入する可能性もある。
【0113】
これらの現象を回避するには、脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度分布が偏らないように、ボイラ1のバーナ2、及びアフタエアポート3から供給する空気の配分を調整する必要がある。
【0114】
そこで、本実施例のボイラの制御装置では、窒素酸化物の総量だけでなく、窒素酸化物濃度の分布も考慮して報酬を設計する。
【0115】
図5は、本実施例における脱硝装置40の入口断面での窒素酸化物濃度の分布を考慮した報酬の設計方法を説明する説明図である。
【0116】
図5の左側部分に示すように、脱硝装置40の入口断面を複数の領域、本実施例では縦4区分、横4区分の合計16区分の領域に区切り、領域毎に窒素酸化物濃度の目標値を設定する。
【0117】
この領域毎における窒素酸化物濃度の目標値の設定は、図1の制御装置100の補正指令値計算用パラメータデータベース800に操作員が外部から入力することによって行われる。
【0118】
図5の左側部分に示されたNOx濃度目標値では、脱硝装置40の入口断面の中央の中心から縦2区分、及び横2区分に亘る合計4区分の領域がNOx濃度を少々濃く表示しているように少し高い値に設定されている。
【0119】
尚、図1には記載されていないが、制御装置100には脱硝装置40の入口の領域毎に、窒素酸化物濃度の目標値を外部から入力するためのインターフェイスが備えられており、これを用いて操作員は領域毎における窒素酸化物濃度の目標値を前記補正指令値計算用パラメータデータベース800に入力できる。
【0120】
また、窒素酸化物濃度の目標値を、排ガスダクト19内に配設したアンモニア注入ノズル10,11から供給されるアンモニアの噴霧範囲、噴霧量を基に自動的に決定することもできる。すなわち、1本のアンモニア注入ノズル10、11から供給できる最大噴霧量と噴霧範囲、及び脱硝装置40で除去可能な窒素酸化物の最大量を基に、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が所望の濃度になるように、脱硝装置40の入口の窒素酸化物の目標条件を決定する。
【0121】
次に、前記補正指令パラメータ決定手段500に備えられた空気量決定手段550における空気流量の操作条件に基づいて脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度分布を推定する。最後に、脱硝装置40の入口の領域毎に窒素酸化物濃度の目標値と推定値の誤差を計算し、誤差が小さい程報酬が大きくなるようにする。
【0122】
図5の右側上部に示した操作例aでは、脱硝装置40の入口の断面におけるNOx濃度において、脱硝装置40の入口断面の中央の中心から縦下方に1区分、横右方に1区分の1区分の領域がNOx濃度を特に濃く表示しているように局所的に窒素酸化物濃度が高い領域が存在し、この窒素酸化物濃度が高い領域では目標値との誤差が大きいため、報酬値は小さい。
【0123】
一方、図5の右側下部に示した操作例bでは、脱硝装置40の入口の断面におけるNOx濃度において、脱硝装置40の入口断面の中央の中心から縦に2区分、横に2区分の合計4区分の領域がNOx濃度を少々高く表示しているように目標値と推定値との誤差が、操作例aよりも小さいため、報酬は大きくなる。
【0124】
本実施例の制御装置100の補正指令パラメータ決定手段500に設置した空気量決定手段550では、窒素酸化物の総量が少ない程大きくなる報酬と、図5で説明した報酬とを組み合わせて(加算して)、強化学習に用いる報酬を計算する。
【0125】
上記した報酬を計算することによって、窒素酸化物の総量が少ない状態で、さらに窒素酸化物濃度の分布がその目標値と近くなるような供給空気の配分を学習できる。この学習の結果として、図5の操作例bで示したようなNOx濃度分布の結果が得られる供給空気量の操作条件を学習する。
【0126】
尚、図5では脱硝装置入口の断面を4×4=16の領域に分割しているが、分割数は任意である。また、図5では、全領域を均等に分割しているが、分割が粗い箇所と細かい箇所があるようにしてもよい。
【0127】
図6は、補正指令パラメータ決定手段500に設置した空気量決定手段550において本実施例における脱硝装置40の入口断面での窒素酸化物濃度分布を推定する推定方法の一例を説明する説明図である。
【0128】
図6に示すように、本実施例では補正指令パラメータ決定手段500に設置した空気量決定手段550に、負荷、スートブロワ経過後時間、炭種、バーナパターン、燃料流量、空気流量を入力として、脱硝装置40の入口断面を複数に区分した各領域の窒素酸化物濃度を予測するニューラルネットワークを構築する。
【0129】
前記空気量決定手段550のニューラルネットワークの重みパラメータは、ニューラルネットワークの入力と出力の関係が、窒素酸化物濃度は数値解析を用いた計算結果、及び制御装置100の計測値データベース400に保存されている情報と一致するように調整する。
【0130】
尚、本実施例では窒素酸化物濃度の推定にニューラルネットワークを用いたが、その他の方法を用いて領域毎の窒素酸化物濃度を推定してもよい。
【0131】
図7は、本実施例の制御装置100に設置した補正指令パラメータ決定手段500に設けられた空気量決定手段550で学習する強化学習の試行錯誤の過程で得られた、負荷変化に伴う脱硝装置入口における窒素酸化物濃度分布の変化を説明する説明図である。
【0132】
本実施例のボイラ1を備えた火力発電プラントでは、電力需要に合わせて出力を変化させる負荷変化運転を実施する。図7(a)は、出力の変化方法の一例を説明しており、時刻T1まで出力M1で運転し、その後出力をM2まで上昇させ、時刻T3で出力がM2に到達した後、出力をM2に固定する例が図示されている。
【0133】
図7(b)は、補正指令パラメータ決定手段500に設けられた空気量決定手段550のモデルを用いて、時刻T1、T2、T3における脱硝装置入口断面の窒素酸化物濃度を推定した結果であって、左側欄には窒素酸化物濃度分布の目標値を、右側欄には操作例Aと操作例Bにおける窒素酸化物濃度分布の推定値を夫々示す。
【0134】
図7(b)において、時刻T1、T2、T3における操作例Aと操作例Bの窒素酸化物の総量は同じである。この場合、窒素酸化物の総量のみを指標とした報酬を用いた学習では、操作例Aと操作例Bとの優劣をつけることができない。
【0135】
時刻T2、T3のそれぞれにおいて、操作例Aでは窒素酸化物濃度分布に局所的に濃度が高くなる偏りがあるが、操作例Bでは窒素酸化物濃度分布に局所的に濃度が高くなる偏りがない。従って、操作例Bの方が望ましい操作方法である。
【0136】
本実施例の制御装置100では、補正指令パラメータ決定手段500に設けられた空気量決定手段550によって、図5で説明した脱硝装置40の入口断面における窒素酸化物濃度分布を考慮した報酬を用いて学習する。
【0137】
前記空気量決定手段550では、図7(b)に示すように、各時刻に脱硝装置40の入口断面を複数に区分した各領域での窒素酸化物濃度分布の目標値を設定する。そしてこの空気量決定手段550にて、設定した窒素酸化物濃度分布の目標値を用いて各時刻T1、T2、T3で算出した目標値との差である報酬の総和が最大となるような操作方法を学習させる。
【0138】
前記空気量決定手段550では、図7(b)に示すように操作例Aよりも操作例Bの報酬の値が大きいので、操作例Bの結果が得られたときの空気流量の操作方法を学習できる。
【0139】
この空気量決定手段550で学習した前述の学習結果は、本実施例の制御装置100の補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存される。
【0140】
制御装置100の空気量指令値計算手段1200では、補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存されている補正指令パラメータ120を用いて、ボイラ1のバーナ2、及びアフタエアポート3から供給される空気量が、前述の学習によって得られた操作条件となるように、空気量補正値122を計算する。以上で、空気量指令値計算手段1200の説明を終了する。
【0141】
次に、制御装置100のアンモニア補正指令値計算手段700を説明する。
【0142】
アンモニア補正指令値計算手段700では、ボイラ1から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物を還元し、かつアンモニア流出量を低減するため、アンモニア基準値計算手段600から出力したアンモニア基準値107を調整するアンモニア補正指令値106を計算する。
【0143】
制御装置100の補正指令パラメータ決定手段500では、空気量補正指令値計算手段1200から出力する空気量補正指令値122を計算するのに必要な補正指令パラメータ120を計算する。
【0144】
補正指令パラメータ決定手段500に備えられているアンモニア量決定手段560では、排ガスダクト19内に配設したアンモニア注入ノズル10、11から脱硝装置40の入口に注入するアンモニア量を決定する。
【0145】
図1の制御装置100に示すように、脱硝装置40の入口にアンモニア注入ノズル10、11から注入するアンモニア流量は、アンモニア基準値計算手段600で計算したアンモニア基準値107と、アンモニア補正制御指令計算手段700で計算したアンモニア補正値106を用いて決定する。
【0146】
アンモニア基準値計算手段600で計算したアンモニア基準値107は、図3(a)に示すように、脱硝装置入口NOx濃度の計測値を用いて計算する。
【0147】
この脱硝装置入口NOx濃度の計測値は、窒素酸化物の濃度を分析するための燃焼ガスの採取時間分だけ遅れる。また、アンモニア用配管12、13に設置したアンモニア流量調節弁6、7を操作してから、実際にアンモニア注入ノズル10、11から脱硝装置40の入口にアンモニアが注入されるまでは、アンモニア貯蔵設備からアンモニア用配管12、13を通じて脱硝装置40までの滞留時間分遅れる。
【0148】
従って、負荷変化中など、脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度分布が変化するような場合は、アンモニア基準値107に基づいてアンモニア流量調節弁6、7を制御しても、アンモニア量の過不足の問題が生ずる。
【0149】
この場合、ボイラ1の煙道より系外へ排出されるNOx濃度あるいはアンモニアの流出量は増加する。これを抑制するため、本実施例の制御装置100ではアンモニア要求値を先行的に補正するアンモニア補正指令値計算手段700を備えている。
【0150】
図8は、制御装置100のアンモニア補正指令値計算手段700における動作内容と、その効果を説明する図である。
【0151】
図8(a)は、出力の変化方法の一例を説明する図であり、図7(a)と同一の図なのでその説明を省略する。
【0152】
図8(b)は、排ガスダクト19の断面図である。図1に示したように濃度計測器30、32、アンモニア注入ノズル10は排ガスダクト19の上部に配置され、濃度計測器31、33、アンモニア注入ノズル11は排ガスダクト19の下部に配置される。
【0153】
図8(c)及び図8(d)は、図8(a)に示したように出力を変化させた場合における脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度、及びアンモニア注入ノズル10、11から供給されるアンモニアの流量の経時変化を示す説明図である。
【0154】
図8(c)は、本実施例の制御装置100で、アンモニア補正制御指令計算手段700を機能させなかった場合の例であり、図8(d)は本実施例の制御装置100で、アンモニア補正制御指令計算手段700を使用してアンモニア要求値109を計算した場合の例である。
【0155】
まず、脱硝装置40の上部出口における窒素酸化物濃度について説明すると、図8(c)では、負荷変化中の時間T1からT3の間で、脱硝装置40の上部出口における窒素酸化物濃度が制限値を越えている状況を示している。
【0156】
そこで図8(d)に示すように本実施例の制御装置100に設置したアンモニア補正制御指令計算手段700を使用することで、負荷変化中の時間T1からT3の間でアンモニア流量が図8(c)の時(図8(d)中の点線)よりも多くなる。
【0157】
これにより窒素酸化物を還元でき、脱硝装置40の上部の出口における窒素酸化物濃度が実線で表したように制限値以下に抑制した状況を示している。
【0158】
次に、脱硝装置40の下部出口における窒素酸化物濃度について説明する。
【0159】
図8(c)では、脱硝装置40の下部出口における窒素酸化物濃度は負荷変化中の時間T1からT3の間で低くなっている。
【0160】
この時間帯では、窒素酸化物よりもアンモニア流量が相対的に多く、アンモニアが過剰となっている。このような場合、脱硝装置40より下流側にあるエアヒータに余剰のアンモニアが流れ込み、エアヒータの目詰まりの原因となる。
【0161】
そこで図8(d)に示すように本実施例の制御装置100に設置したアンモニア補正制御指令計算手段700を使用することで、負荷変化中の時間T1からT3の間でアンモニア流量が図8(c)の時(図8(d)中の点線)よりも実線で表したように少なくなり、余剰のアンモニアがエアヒータに流れ込むのを抑制できる。
【0162】
このように、本実施例の制御装置100では、アンモニア流量調節弁6、7から供給するアンモニア流量を個別に操作でき、アンモニア補正指令値106も個別に設定できる。
【0163】
その効果として、負荷変化中でも脱硝装置40の入口断面における全領域の窒素酸化物濃度を制限値以下に抑制できる。さらに余剰のアンモニアがエアヒータに流れ込むのを抑制でき、エアヒータの目詰まりを防止できる。
【0164】
図9は、本実施例の制御装置100に設置したアンモニア補正指令値計算手段700から出力される負荷変化中におけるアンモニア補正指令値106の計算例を説明する図である。
【0165】
図9は、負荷変化開始後からの経過時間と、アンモニア補正指令値計算手段700で計算して出力されるアンモニア補正指令値106の値の関係図である。
【0166】
図9において、時刻X3までアンモニア補正指令値106の流量はゼロで、その後、時刻X3から時刻X4までに流量X1まで上昇させる。時刻X4から時刻X5まで流量をX1に保ち、その後、時刻X5から時刻X6までに流量X2まで減少させる。時刻X6から時刻X7まで流量をX2に保ち、その後、時刻X7から時刻X8までに流量をゼロまで減少させる。
【0167】
補正指令値パラメータデータベース800には、流量X1〜X2、時刻X3〜X8までの値が保存されており、アンモニア補正指令値計算手段700では、これらの値を参照しながらアンモニア補正指令値106を計算する。
【0168】
補正指令パラメータデータベース800には、負荷変化率、負荷変化幅、炭種、バーナパターン等のボイラ運転条件に対応させて、アンモニア補正指令パラメータ105を保存する。即ち、負荷変化運転だけでなく、炭種切替、バーナパターン切替時にも、窒素酸化物濃度の変化に合わせてアンモニアを供給できる。
【0169】
アンモニア補正指令値計算手段700では、計測値101からボイラ1の運転条件を把握し、これに対応する補正指令パラメータを補正指令値計算用パラメータデータベース800から取得してアンモニア補正指令値106を計算する。
【0170】
尚、図9では流量X1〜X2、時刻X3〜X8の8つの補正指令パラメータでアンモニア補正指令値106を算出する例を示しているが、補正指令パラメータの数は任意に変更でき、図9よりも複雑な形をしたアンモニア補正指令値106を算出することもできる。
【0171】
また、図9ではアンモニア補正指令値106を線形(直線)に増減しているが、2次曲線のような関数を用いて、アンモニア補正指令値106を増減させるようにしてもよい。
【0172】
本実施例の制御装置100に設置した補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存する補正指令パラメータは、予めオペレータによって設定できる。また、補正指令パラメータ決定手段500を用いて、補正指令パラメータを自動調整することもできる。
【0173】
図10は、本実施例の制御装置100に設置した補正指令パラメータ決定手段500において、補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存する補正指令パラメータの初期値を決定する実施例を説明する図である。
【0174】
補正指令パラメータ決定手段500に設置したアンモニア量決定手段560では、脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度の推定結果を基に、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が制限値を越えないようにするために必要なアンモニア量を求める。
【0175】
補正指令パラメータ決定手段500では、このアンモニア量が供給されるように補正指令パラメータの初期値を決定する。以下、図10を用いて説明する。
【0176】
アンモニア量決定手段560では、まず、図5(b)に示した脱硝装置40の入口におけるNOx濃度分布の計算結果を用いて、図10(a)に示すように排ガスダクト19の上部と下部の窒素酸化物濃度の経時変化を予測する。
【0177】
次に、図10(a)に示した排ガスダクト19の上部と下部の窒素酸化物濃度の経時変化の予測結果に基づいて、前記アンモニア量決定手段560では図10(b)に示すように、窒素酸化物を還元するのに必要なアンモニア流量を計算する。
【0178】
次に、図10(c)に示すように、アンモニア基準値の予想値を、図3(a)に示したロジック図に基づいたアンモニア基準値計算手段600によって計算する。
【0179】
尚、図10(c)で点線で示した曲線は、図10(b)に実線で示した曲線と同じ曲線である。
【0180】
そして、補正指令パラメータ決定手段500のアンモニア量決定手段560ではでは、図10(d)に示すように、図10(b)に実線で示した曲線から図10(c)に実線で示した曲線を減算した両者の差となるアンモニア補正値106の曲線を決定し、このアンモニア補正値106の曲線に基づいてアンモニア補正パラメータを決定する。
【0181】
図11は、本実施例の制御装置100に設置した補正指令パラメータ決定手段500におけるアンモニア補正指令パラメータ105の決定方法を説明する図である。
【0182】
補正指令パラメータ決定手段500では、2つのステップでアンモニア補正指令パラメータを調整する。まず、第1のステップでは、ボイラ1の運転条件に基づいて、脱硝装置40の入口、及び出口における窒素酸化物濃度の変化特性を予測する。
【0183】
次に、第2のステップでは、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が制限値以下となるように、補正指令パラメータを決定、更新する。
【0184】
このように、本実施例の制御装置100に設置した補正指令パラメータ決定手段500では、脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度を予測し、この予測結果を用いてアンモニアを先行的に補正する。
【0185】
図11(a)は、補正指令パラメータ決定手段500でアンモニア補正指令パラメータを調整する上記第1のステップの説明図である。
【0186】
図11(a)に示すように、本実施例の補正指令パラメータ決定手段500では、負荷、負荷変化率、負荷変化幅、スートブロワ経過後時間、炭種、バーナパターン、燃料流量、空気流量を入力として、脱硝装置40の入口を複数の領域に区分した各領域の窒素酸化物濃度の変化特性を予測するニューラルネットワークを構築する。
【0187】
このニューラルネットワークの重みパラメータは、入力と出力の関係が、窒素酸化物濃度は数値解析を用いた計算結果、及び計測値データベース400に保存されている情報と一致するように調整する。
【0188】
尚、本実施例の補正指令パラメータ決定手段500では窒素酸化物濃度の推定にニューラルネットワークを用いたが、その他の方法を用いて領域毎の窒素酸化物濃度を推定するようにしてもよい。
【0189】
図11(b)及び図11(c)は、補正指令パラメータ決定手段500でアンモニア補正指令パラメータを調整する上記第2のステップの説明図である。
【0190】
図11(b)の上図はアンモニア補正指令値の経時変化を示したグラフであり、図11(b)の下図はその時の脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度の経時変化を示したグラフである。
【0191】
11(b)の下図のグラフに示すように、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が制限値を超過している。このような場合、補正指令パラメータ決定手段500では、図11(c)に示すようにアンモニア補正指令値が増加するように補正指令パラメータを更新する。
【0192】
これにより、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が制限値を超過することを抑制する。
【0193】
尚、図1には図示していないが、本実施例の制御装置100と画像表示装置を接続し、制御装置100で使用している信号、及びデータベースの情報を画像表示装置上に表示するように構成できる。
【0194】
これにより、プラントオペレータに補正指令値パラメータの修正方法、及び修正時の効果を分かりやすく提供できる。
【0195】
尚、本実施例では、補正指令パラメータ決定手段500で補正指令パラメータを自動更新する方式を説明したが、補正指令パラメータの更新方法をプラントのオペレータに提供し、これを参考にしてオペレータが手動でアンモニア補正指令パラメータを変更することも可能である。
【0196】
本発明の実施例によれば、ボイラから排出される排ガス中の窒素酸化物の濃度を所望の値に低減すると共に、脱硝装置に注入する余剰のアンモニアが脱硝装置の下流側に流出することを抑制するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明は火力発電プラント等に設置され、石炭等の燃料を燃焼してこのプラントの作動蒸気を発生するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の一実施例であるボイラの制御装置の構成を示す概略図。
【図2】図1に示した本実施例のボイラの制御装置における動作フローチャート図。
【図3】本実施例の制御装置におけるアンモニア基準値計算手段、アンモニア流量調節弁開度計算手段、空気量基準値計算手段、及び空気流量調節弁開度計算手段をそれぞれ示す各制御ロジック図。
【図4】強化学習理論による制御の概念を示す説明図。
【図5】本実施例における脱硝装置の入口断面での窒素酸化物濃度の分布を考慮した報酬の設計方法の説明図。
【図6】本実施例における脱硝装置の入口断面での窒素酸化物濃度分布の推定方法の説明図。
【図7】本実施例の制御装置に設置した補正指令パラメータ決定手段に設けられた空気量決定手段で学習する強化学習の試行錯誤の過程で得られた負荷変化に伴う脱硝装置の入口断面の窒素酸化物濃度分布変化の説明図。
【図8】本実施例の制御装置に設置したアンモニア補正指令値計算手段の動作内容とその効果を説明する説明図。
【図9】本実施例の制御装置に設置したアンモニア補正指令値計算手段で計算するアンモニア補正指令値の計算例の説明図。
【図10】本実施例の制御装置に設置した補正指令パラメータ決定手段において補正指令値計算用パラメータデータベースに保存する補正指令パラメータの初期値を決定する説明図。
【図11】本実施例の制御装置に設置した補正指令パラメータ決定手段におけるアンモニア補正指令パラメータを決定する説明図。
【符号の説明】
【0199】
1:ボイラ、2:バーナ、3:アフタエアポート、4: 燃料(微粉炭)用配管、5:空気用配管、6 :アンモニア流量調節弁、7:アンモニア流量調節弁、8:混合器、9:混合器、10:アンモニア注入ノズル、11:アンモニア注入ノズル、12:アンモニア用配管、13:空気用配管、14:給水用配管、15 :給水ポンプ、16:熱交換器、17:蒸気タービン、18:発電機、19:排ガスダクト、20 :流量計測器、21:流量計測器、30:濃度計測器、31:濃度計測器、32:濃度計測器、33:濃度計測器、40:脱硝装置、100:制御装置、200:外部入力インターフェイス、210 :計測値、300:外部出力インターフェイス、310:操作信号、400:計測値データベース、500: 補正指令パラメータ決定手段、550:空気量決定手段、560:アンモニア量決定手段、600:アンモニア基準値計算手段、700:アンモニア補正指令値計算手段、800:補正指令値計算用パラメータデータベース、900:アンモニア流量調節弁開度計算手段、1100:空気量基準値計算手段、1200:空気量補正指令値計算手段、1300:空気量調節弁開度計算手段。
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラント等に設置され、石炭等の燃料を燃焼してこのプラントの作動蒸気を発生するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電プラント等に設置され、石炭等の燃料を燃焼してこのプラントの作動蒸気を発生するボイラから排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を除去する技術として、ボイラの下流側に脱硝装置を設置して排ガスダクト内にアンモニア(NH3)を注入し、アンモニアの存在下で触媒を用いて窒素酸化物を還元する方式が採用されている。
【0003】
この脱硝装置の脱硝触媒層で起こる脱硝反応は、選択的接触還元反応であり、その反応は次の化学式による。
【0004】
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O ・・・(1)
(1)式に示すように、選択的接触還元反応では排ガス中の窒素酸化物とアンモニアが1対1のモル比で反応する。窒素酸化物と比較してアンモニア注入量が相対的に少ない場合は、窒素酸化物を還元できず、煙突から排出される窒素酸化物が多くなる。
【0005】
逆に、窒素酸化物と比較してアンモニア注入量が相対的に多い場合は、脱硝装置の後流側に設置されているエアヒータにアンモニアが流入し、これが原因でエアヒータの目詰まりが起こる。
【0006】
これらの不具合の現象を回避するには、窒素酸化物濃度の分布に合わせ、アンモニアを過不足なく注入する必要がある。
【0007】
特開平9−75673号公報には、アンモニアを過不足無く注入するため、アンモニア注入ノズルと脱硝触媒層との間に、複数個に分割したガス混合器を設けるとともに、その複数個のガス混合器の各々に対応させてアンモニア注入ノズルを分割して配置し、かつノズル毎にアンモニア注入量を可変とした脱硝装置に関する技術が記載されている。
【0008】
窒素酸化物とアンモニアは1対1のモル比で反応するので、脱硝装置入口の窒素酸化物濃度を低減するとアンモニア消費量を低減でき、プラントの運転費用を低減できる。
【0009】
特開平5−33906号公報には、ボイラ出口排ガス中の酸素濃度の設定値と、計測した酸素濃度の値が一致するようにバーナ、及びエアポートから供給する空気流量を決定する技術が記載されている。また、酸素濃度の設定値を適切に与えることで、ボイラ排ガス中の未燃分、及び窒素酸化物の濃度が規制値を超えない範囲内において、運転費用を低減できる技術が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平9−75673号公報
【特許文献2】特開平5−33906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
脱硝装置の入口における窒素酸化物濃度分布は、バーナ、及びエアポートから供給する空気量の配分で変わる。そのため、空気量の配分条件によっては、脱硝装置入口の窒素酸化物濃度の分布が偏り、局所的に窒素酸化物濃度が高くなる場合がある。
【0012】
この領域の窒素酸化物を還元するのに必要なアンモニア量が、1本のアンモニア注入ノズルから供給できるアンモニア量の上限を超えてしまう場合、その領域の窒素酸化物を還元できずに窒素酸化物濃度が所望の濃度に低下しない可能性がある。
【0013】
また、供給したアンモニアが窒素酸化物濃度の高い空間で全て反応できず、残ったアンモニアが脱硝装置の下流側に流出する。脱硝装置の下流にアンモニアが流出すると、エアヒータ目詰まりの原因となるばかりか、周囲環境に対しても好ましくない状況にする。
【0014】
本発明の目的は、ボイラから排出される排ガス中の窒素酸化物の濃度を所望の値に低減すると共に、脱硝装置に注入する余剰のアンモニアが脱硝装置の下流側に流出することを抑制するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のボイラの制御装置は、燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置とが設置された装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御装置において、前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段が備えられていることを特徴とする。
【0016】
また本発明のボイラの制御装置は、燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とが設置されており、前記脱硝装置の上流側で該脱硝装置に流入する燃焼ガスにアンモニアを供給するアンモニア注入ノズルが配設された装置の前記アンモニア注入ノズルから注入するアンモニア量を制御するボイラの制御装置において、前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルの予測値に基づいて前記アンモニア注入ノズルから供給するアンモニア量を決定するアンモニア量決定手段が備えられていることを特徴とする。
【0017】
また本発明のボイラの制御装置は、燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とが設置されており、前記脱硝装置の上流側で該脱硝装置に流入する燃焼ガスにアンモニアを供給するアンモニア注入ノズルが配設された装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量及び前記アンモニア注入ノズルから注入するアンモニア量を制御するプラントの制御装置において、前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足し、かつ前記脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が低くなるように、前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段と、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルの予測値に基づいて前記アンモニア注入ノズルから供給するアンモニア量を決定するアンモニア量決定手段とが備えられていることを特徴とする。
【0018】
本発明のボイラの制御方法は、バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナからボイラ内に供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置とを備えた装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御方法において、前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前記領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、バーナもしくはエアポートから供給する空気量を決定して前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御することを特徴とする。
【0019】
また本発明のボイラの制御方法は、バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナから供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスにアンモニアを注入して前記燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とを備えた装置の前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御するようにしたボイラの制御方法において、前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前記領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルによる予測値に基づいて供給するアンモニア量を決定して前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御することを特徴とする。
【0020】
また本発明のボイラの制御方法は、バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナからボイラ内に供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスにアンモニアを注入して前記燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とを備えた装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御すると共に、前記燃焼ガス中に供給するアンモニアの供給量を制御するようにしたボイラの制御方法において、前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前期脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が、前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、バーナもしくはエアポートから供給する空気量を決定して前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御すると共に、更に前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルによる予測値に基づいて供給するアンモニア量を決定して前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ボイラから排出される排ガス中の窒素酸化物の濃度を所望の値に低減すると共に、脱硝装置に注入する余剰のアンモニアが脱硝装置の下流側に流出することを抑制するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施例であるボイラの制御装置及びボイラの制御方法について図面を用いて以下に説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の一実施例であるボイラの制御装置及びボイラの制御方法について図1を参照して次に説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施例であるボイラの制御装置の構成を示す概略図である。
【0025】
図1において、ボイラ1には、燃料となる微粉炭と空気を供給するバーナ2と、空気が供給されるアフタエアポート3が設置されている。
【0026】
バーナ2から供給された燃料の微粉炭はボイラ1内で燃焼して高温の燃焼ガスが発生する。尚、微粉炭は微粉炭用配管4を通じてバーナ2に供給され、空気は空気用配管5を通じてバーナ2とアフタエアポート3に供給されている。
【0027】
ボイラ1に配設された熱交換器16には給水ポンプ15を備えた給水用配管14を通じて給水が供給されており、この熱交換器16において供給された給水はボイラ1を流下する高温の燃焼ガスによって加熱されて高温、高圧の蒸気となる。
【0028】
この高温高圧の蒸気を熱交換器16から蒸気タービン17に供給してこの蒸気タービン17を駆動し、該蒸気タービン17によって発電機18を回転させて電気を発電する。
【0029】
ボイラ1では微粉炭を燃焼させて発生した燃焼ガスは、前記したように熱交換器16にて熱交換した後に、ボイラ1の下流側に配設された排ガスダクト19に入り、この排ガスダクト19の下流側に設置された脱硝装置40に流入する。
【0030】
脱硝装置40の入口側の排ガスダクト19には、複数のアンモニア注入ノズル10、11が配設さられている。
【0031】
これらのアンモニア注入ノズル10、11の上流側には、それぞれ混合器8、9が接続されている。
【0032】
混合器8には空気用配管13とアンモニア用配管12とが配設されており、この空気用配管13から供給される加圧空気と、アンモニア用配管12とアンモニア流量調節弁6を通過して供給されるアンモニアとを前記混合器8で混合する。
【0033】
この混合器8で加圧空気を混合したアンモニアはアンモニア注入ノズル11に供給され、アンモニア注入ノズル11から排ガスダクト19内に噴出して下流の脱硝装置40に流入する。
【0034】
同様に混合器9には空気用配管13とアンモニア用配管12とが配設されており、この空気用配管13から供給される加圧空気と、アンモニア用配管12とアンモニア流量調節弁7を通過して供給されるアンモニアとを前記混合器9で混合する。
【0035】
この混合器9で加圧空気を混合したアンモニアはアンモニア注入ノズル10に供給され、アンモニア注入ノズル10から排ガスダクト19内に噴出して下流の脱硝装置40に流入する。
【0036】
アンモニア用配管12に設置した複数のアンモニア流量調節弁6、7は、制御装置100から出力する操作信号310によって個別に弁開度が制御され、複数の混合器8、9に供給するアンモニアの量を個別に調整できるように構成されている。
【0037】
尚、図1の実施例には図示していないが、バーナ2、及びアフタエアポート3は、一般的にはボイラ1に複数本配置されている。
【0038】
ボイラ1に設置したバーナ2、及びアフタエアポート3に供給する空気を供給する空気用配管5には、空気量を調節できるように図示していない空気流量調節弁が設置されており、この空気流量調節弁の開度も制御装置100から出力する操作信号310によって個別に弁開度が制御されるように構成されている。
【0039】
また、本実施例では排ガスダクト19内のアンモニア注入ノズル10、11、排ガスダクト19外の混合器8、9、及びアンモニア流量調節弁6、7をそれぞれ2箇所に配置しているが、配置する数、及び配置する位置は任意に変更してよい。
【0040】
また、排ガスダクト19内に混合器8、9を設置することや、燃焼ガスの流路を分割するような仕切り板を排ガスダクト19内に配置することも可能である。
【0041】
ボイラ1には、ボイラの運転状態を把握するため、ボイラ1の状態量を計測する種々の計測器が配置されている。例えば、ボイラ1に供給される燃料流量、及び空気流量は、微粉炭用配管4に設置した流量計測器20、及び空気用配管5に設置した21によってそれぞれ計測する。
【0042】
また、脱硝装置40の入口、及び出口の窒素酸化物濃度は、脱硝装置40入口側の排ガスダクト19内に設置した濃度計測器30、31、及び脱硝装置40出口側の排ガスダクト19内に設置した濃度計測器32、33によってそれぞれ計測する。
【0043】
これらの計測器で計測した各計測値210は、制御装置100の外部インターフェイス200に送信される。尚、図1には記載していないが、前述した計測器以外にも種々の計測器がボイラ1には設置されている。例えば、蒸気温度、燃焼ガス流量、アンモニア流量なども計測しており、これらの値も全て制御装置100に送信される。
【0044】
制御装置100は、演算装置として補正指令パラメータ決定手段500、アンモニア基準値計算手段600、アンモニア補正指令値計算手段700、アンモニア流量調節弁開度計算手段900、空気量基準値計算手段1100、空気量補正指令値計算手段1200、空気量調節弁開度計算手段1300をそれぞれ設置している。
【0045】
前記補正指令パラメータ決定手段500は、空気量決定手段550、及びアンモニア量決定手段560によって構成される。
【0046】
また制御装置100は、データベースとして計測値データベース400、補正指令値計算用パラメータデータベース800をそれぞれ設置している。
【0047】
さらに制御装置100は、外部とのインターフェイスとして外部入力インターフェイス200、及び外部出力インターフェイス300を備えている。
【0048】
そして外部入力インターフェイス200を介してこれらの計測器で計測した各計測値210を制御装置1の内部に取り込む。
【0049】
外部入力インターフェイス200に取り込んだ計測値210は、該外部入力インターフェイス200から計測値101として計測値データベース400に送信されて時刻と共に保存され、またアンモニア基準値計算手段600、アンモニア補正指令値計算手段600、アンモニア流量調節弁開度計算手段900、空気量基準値計算手段1100、空気量補正指令値計算手段1200、空気量調節弁開度計算手段1300に前記計測値101を送信するように構成されている。
【0050】
空気量基準値計算手段1100では、計測値101を用いて空気量基準値121を計算し、空気量補正指令値計算手段1200では、計測値101と補正指令パラメータ120を用いて空気量補正指令値122を計算する。
【0051】
制御装置100に設けた加算器125では、空気量基準値121と空気量補正指令値122を加算して、空気量要求値123を計算する。
【0052】
空気量調節弁開度計算手段1300では、計測値101と空気量要求値123を用いて、空気量調節弁開度指令値124を計算する。
【0053】
空気量調節弁開度指令値124は、外部出力インターフェイス310を介して制御装置100からボイラ1に送信され、バーナ2及びアフタエアポート3の空気量を調節する図示していない弁の開度を操作する。
【0054】
尚、空気量基準値計算手段1100、空気量補正指令値計算手段1200では、バーナ2から供給する総空気量や、ボイラ1の前面から供給する総空気量など、複数のバーナ2、及びアフタエアポート3を1つのグループとし、そのグループ毎の空気量を計算するようにしてもよい。
【0055】
アンモニア基準値計算手段600は、計測値101を用いて、アンモニア基準値107を計算する。
【0056】
アンモニア補正指令値計算手段700は、計測値101と補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存されているアンモニア補正指令パラメータ105を用いて、アンモニア補正指令値106を計算する。
【0057】
制御装置100に設けた加算器108では、アンモニア基準値107とアンモニア補正指令値106を加算し、アンモニア要求値109を計算する。
【0058】
アンモニア流量調節弁開度計算手段900では、アンモニア要求値109と、計測値101に含まれるアンモニア計測値が一致するように、アンモニア流量調節弁6、7のアンモニア流量調節弁開度指令値110を計算する。
【0059】
アンモニア流量調節弁開度指令値110は、外部出力インターフェイス300を介して、制御装置100からアンモニア流量調節弁6、7に送信される。
【0060】
補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存する補正指令パラメータ103は、補正指令パラメータ決定手段500で計算、更新する。
【0061】
補正指令パラメータ決定手段500では、計測値データベース400からの計測値102と補正指令値計算用パラメータデータベース800からの補正指令パラメータ104を用いて、補正指令パラメータ103を計算する。
【0062】
尚、図1では全ての演算装置、データベースがアンモニア流量調節弁の制御装置100の内部に配置してあるが、これらの一部を外部に配置し、ネットワークを介して信号を送受信するようにしてもよい。
【0063】
図2は、本実施例であるボイラの制御装置における動作フローチャート図である。
【0064】
図2に示すように、本実施例の制御装置100における動作フローチャートはステップ1000、ステップ1010、ステップ1020、ステップ1030、ステップ1040、ステップ1050、ステップ1060、ステップ1070を組み合わせて実行する。
【0065】
まずステップ1000では、ボイラ1の運転状態を計測器で計測した計測値210を制御装置100の外部インターフェイス200に取り込む。
【0066】
ステップ1010では、制御装置100のアンモニア基準値計算手段600と空気量基準値計算手段1100を動作させ、外部インターフェイス200から計測値101をアンモニア基準値計算手段600と空気量基準値計算手段1100に伝送してアンモニア基準値107と空気量基準値121をそれぞれ計算する。
【0067】
ステップ1020では、補正制御を実施するかどうかを判定する。判定の方法は任意に設計できる。例えば、ボイラ1が負荷変化運転を実施している時、バーナパターンを切替ている時、燃料となる石炭の種類を変更している時、スートブロワを動作させている時、脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が目標値よりも高い時などに、補正制御を実施するようにできる。
【0068】
補正制御を実施する場合、ステップ1030に進み、補正制御を実施しない場合はステップ1070に進む。
【0069】
ステップ1030では、補正指令パラメータを更新するかどうかを判定し、更新する場合はステップ1040に進んでパラメータを更新し、更新しない場合はステップ1050に進む。
【0070】
ステップ1050では、アンモニア補正指令値計算手段700、及び/或いは空気量補正指令値計算手段1200を動作させ、アンモニア補正指令値計算手段700にて計測値101と補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存されているアンモニア補正指令パラメータ105を用いてアンモニア補正指令値106を計算する。
【0071】
また、空気量補正指令値計算手段1200にて計測値101と補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存されている補正指令パラメータ120を用いて空気量補正指令値122を計算する。
【0072】
ステップ1060では、加算器108にてアンモニア基準値計算手段600で計算したアンモニア基準値107と、アンモニア補正指令値計算手段700で計算したアンモニア補正指令値106とを加算してアンモニア要求値109を計算し、その後、アンモニア流量調節弁開度計算手段900を動作させてアンモニア流量調節弁開度指令値110を計算する。
【0073】
また、加算器125にて空気量基準値計算手段1100で計算した空気量基準値121と、空気量補正指令値計算手段1200で計算した空気量補正指令値122とを加算して空気量要求値123を計算し、その後、空気量流量調節弁開度計算手段1300を動作させて空気流量調節弁開度指令値124を計算する。
【0074】
ステップ1070では、ステップ1060のアンモニア流量調節弁開度計算手段900で計算したアンモニア流量調節弁開度指令値110、及び/或いは空気量調節弁開度計算手段1300で計算した空気量調節弁開度指令値124に従って、外部インターフェイス300を介してボイラ1の排ガスダクト19内に配設したアンモニア注入ノズル10、11に供給するアンモニアの流量を調節するアンモニア流量調節弁6、7、及び/或いはボイラ1に配設した空気用配管5を通じてバーナ2及びアフタエアポート3に空気を供給する空気量を調節する図示していない弁とをそれぞれ操作する。
【0075】
その後、ステップ1000に戻り、同様の動作を繰り返す。
【0076】
図3(a)は本実施例の制御装置100に設けたアンモニア基準値計算手段600における制御ロジック図の一実施例であり、図3(b)は制御装置100に設けたアンモニア流量調節弁開度計算手段900の制御ロジック図の一実施例である。
【0077】
また、図3(c)は制御装置100に設けた空気量基準値計算手段1100の制御ロジック図の一実施例であり、図3(d)は制御装置100に設けた空気量調節弁開度計算手段1300の制御ロジック図の一実施例である。
【0078】
尚、図3(c)は、ボイラ1のバーナ2から供給する総空気量の基準値を計算する制御ロジック図である。
【0079】
図3(a)に示した本実施例の制御装置100に設けたアンモニア基準値計算手段600の制御ロジックを構成する乗算器610では、ボイラ1の状態量を計測した計測値101の1つである燃焼ガス流量601と脱硝装置40の入口NOx濃度602とを掛け合わせ、NOx量603を計算する。
【0080】
更にアンモニア基準値計算手段600の制御ロジックを構成する乗算器620では、このNOx量603とモル比設定値604を掛け合わせ、アンモニア基準値計算手段600の出力となるアンモニア基準値107を計算する。これにより、脱硝装置40の入口NOxを還元するのに必要なアンモニア量の基準値が計算される。
【0081】
図3(b)に示した本実施例の制御装置100に設けたアンモニア流量調節弁開度計算手段900の制御ロジックを構成する加減算器910では、加算器108でアンモニア基準値107とアンモニア補正指令値106を加算して計算したアンモニア要求値109からボイラ1の状態量を計測した計測値101の1つであるアンモニア計測値901を減算し、アンモニア偏差902を計算する。
【0082】
更にアンモニア流量調節弁開度計算手段900の制御ロジックを構成するPI制御器(比例積分制御器)920では、このアンモニア偏差902を用いて、アンモニア流量調節弁開度計算手段900の出力となるアンモニア流量調節弁開度指令値110を計算する。
【0083】
前記PI制御器920は、アンモニア偏差902がゼロに近づくように、アンモニア流量調節弁開度指令値110を決定するように動作する。
【0084】
図3(c)に示した本実施例の制御装置100に設けた空気量基準値計算手段1100の制御ロジックを構成する加減算器1110では、酸素濃度設定値1102からボイラ1の状態量を計測した計測値101の1つである酸素濃度計測値1103を減算し、酸素濃度偏差1104を計算する。
【0085】
空気量基準値計算手段1100の制御ロジックを構成するPI制御器1120では、この酸素濃度偏差1104を用い、酸素濃度補正値1105を計算する。
【0086】
空気量基準値計算手段1100の制御ロジックを構成する加算器1140では、ボイラ1に対する要求出力に基づいて計算された空気総量設定値1101と前記酸素濃度補正値1105を加算して、ボイラ1に投入する空気の総量である空気総量指令値1106を計算する。
【0087】
これにより、ボイラ1の出口の酸素濃度が、酸素濃度設定値と一致するのに必要な空気流量を算出する。
【0088】
更に空気量基準値計算手段1100の制御ロジックを構成するゲイン1130では、前記空気総量指令値1106に一定の値を乗じて(図10(a)では0.8)、空気量基準値計算手段1100の出力となるバーナ2から供給する空気量基準値121を計算する。
【0089】
図3(d)に示した本実施例の制御装置100に設けた空気量調節弁開度計算手段1300の制御ロジックを構成する加減算器1310では、加算器125で空気量基準値121と空気量補正指令値122を加算して計算した空気量要求値123からボイラ1の状態量を計測した計測値101の1つである空気量計測値1301を減算し、空気量偏差1302を計算する。
【0090】
更に空気量調節弁開度計算手段1300の制御ロジックを構成するPI制御器1320は、この空気量偏差1302を用いて、空気量調節弁開度計算手段1300の出力となる空気量調節弁開度指令値124を計算する。
【0091】
前記PI制御器1320は、空気量偏差1302がゼロに近づくように、アンモニア流量調節弁開度指令値124を決定するように動作する。
【0092】
次に、本実施例の制御装置100に設けた空気量補正指令値計算手段1200について説明する。空気量補正指令値計算手段1200では、ボイラ1から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物、一酸化炭素などの有害物質を低減するため、空気量基準値計算手段1100から出力される空気量基準値121を調整する空気量補正指令値122を計算する。
【0093】
制御装置100に設けた補正指令パラメータ決定手段500では、空気量補正指令値122を計算するのに必要な補正指令パラメータ120を計算する。
【0094】
制御装置100に設けた補正指令パラメータ決定手段500に備えられた空気量決定手段550では、強化学習などの最適化手法を用いて、ボイラ1に供給する空気量を決定する。決定した空気量がボイラ1に供給されるように、補正指令パラメータ決定手段500で補正指令パラメータ103を導出し、補正指令値計算用パラメータデータベース800を経由して補正指令パラメータ120を空気量補正指令値計算手段1200に入力して該空気量補正指令値計算手段1200にて空気量補正指令値122を計算する。
【0095】
制御装置100の補正指令パラメータ決定手段500に設けた空気量決定手段550で使用する強化学習理論の詳細な説明は、例えば“強化学習(Reinforcement Learning)、三上貞芳・皆川雅章共訳、森北出版株式会社、2000年12月20日出版”に述べられているので、ここでは強化学習の概念のみを説明する。
【0096】
図4に補正指令パラメータ決定手段500に設けられた空気量決定手段550で学習する強化学習理論による制御の概念を示す。この強化学習理論による制御の概念では、学習手段510は制御対象520に対して操作指令501を出力し、制御対象520は制御指令501に従って動作する。この時、制御指令501による動作により制御対象520の状態が変化する。変化した状態が学習手段510にとって望ましいか、または、望ましくないか、また、それらがどの程度かを示す量である報酬502を制御対象520から受取る。
【0097】
実際には制御対象520から受取る情報は制御対象520の状態量であって、それに基づいて学習手段510で報酬502を計算するのが一般的である。一般に、望ましい状態に近づくほど報酬502が大きくなり、望ましくない状態になるほど報酬502が小さくなるように設定される。
【0098】
学習手段510は試行錯誤的に操作を実施して、報酬502が最大になる(すなわち、できるだけ望ましい状態に近づく)ような操作方法を学習することにより、制御対象520の状態に応じて適切な操作(制御)ロジックが自動的に構築される。
【0099】
教師付学習理論は、予め成功事例を教師データとして提供する必要があり、新規プラントで運転データがない場合や、現象が複雑で予め成功事例を準備できない場合には不向きである。これに対して強化学習理論は教師なし学習に分類され、自らが試行錯誤的に望ましい操作を生成する能力を持っている点で、制御対象の特性が必ずしも明確でない場合に対しても適用可能な利点を持っている。
【0100】
しかし、プラントの運転データのみで学習するためには、学習に必要な運転データが十分蓄積されるまで待つ必要があるため、効果を発揮するまでに長時間を要する。また、試行錯誤的に学習するため、運転上望ましくない状態になる可能性もあり、場合によっては安全面で支障をきたす恐れもある。
【0101】
そこで、本実施例の制御装置100においては、制御対象であるボイラ1を模擬する補正指令パラメータ決定手段500の空気量決定手段550に備えたモデルを対象に、どのような操作信号を生成するのが良いかを予め学習する。
【0102】
空気量決定手段550に備えたこのモデルは、ボイラ1の構造を模擬しており、その燃焼(反応)、ガス流動、伝熱のプロセスを差分法、有限体積法、有限要素法等の数値解析手法を用いて計算する。
【0103】
数値解析の解析精度が高い方が望ましいが、本発明は解析手法に特徴があるのでは無く、解析手法を限定しないため数値解析方法に関する説明は省略するが、一般に計算対象であるボイラ1の形状を計算格子(メッシュ)に分割し、格子内の物理量を計算する。
【0104】
前記空気量決定手段550に備えたモデルによる数値解析によって、ボイラ1の燃焼ガスの温度、燃焼ガス成分の濃度、燃焼ガスの流速と流れの方向等が計算結果として出力される。この数値解析によって様々な操作条件における現象を計算し、ボイラ1の窒素酸化物、一酸化炭素濃度の計測位置における両者の濃度を計算する。
【0105】
計測位置の計算結果は、その断面の計算格子(メッシュ)ごとに計算される。ボイラ1の運転開始後は、制御装置100に設置した計測値データベース400に保存されている計測値102を用いて、モデル特性とプラント特性が一致するように、空気量決定手段550に備えた前記モデルを修正することもできる。
【0106】
尚、本実施例の制御装置では、最適化手法として強化学習を適用する場合について述べたが、進化的計算手法など、別の最適化アルゴリズムを用いて制御装置200の補正指令パラメータ決定手段500を構築することもできる。
【0107】
前述のように、強化学習では報酬を最大化する操作方法を学習する。従って、報酬の設計方針(報酬の計算方法)が学習結果に大きな影響を与える。例えば、ボイラ1の出口の窒素酸化物濃度が低いほど報酬が大きくなるように設計すれば、窒素酸化物濃度が低くなる操作条件を学習できる。
【0108】
このように報酬を設計することで、窒素酸化物濃度を低減でき、窒素酸化物を還元するのに使用するアンモニア量が少なくなるため、ボイラ1の運転コストを低減できる。
【0109】
本実施例のボイラの制御装置100では、以下に述べる理由により、報酬の設計方法をさらに工夫している。
【0110】
脱硝装置40の入口における窒素酸化物濃度分布は、バーナ2、及びエアポート3からボイラ1に供給する空気量の配分で変わる。そのため、空気量の配分条件によっては、窒素酸化物濃度の分布が偏り、局所的に窒素酸化物濃度が高くなる場合がある。
【0111】
この局所的に窒素酸化物濃度が高くなる領域の窒素酸化物を還元するのに必要なアンモニア量が、1本のアンモニア注入ノズルから供給できるアンモニア量の上限を超えてしまう場合、その領域の窒素酸化物を還元できずに規制値を逸脱するという問題が生じる。
【0112】
また、供給したアンモニアが脱硝装置40で全て反応できず、残ったアンモニアが脱硝装置40の下流側に設置したエアヒータに流入する可能性もある。
【0113】
これらの現象を回避するには、脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度分布が偏らないように、ボイラ1のバーナ2、及びアフタエアポート3から供給する空気の配分を調整する必要がある。
【0114】
そこで、本実施例のボイラの制御装置では、窒素酸化物の総量だけでなく、窒素酸化物濃度の分布も考慮して報酬を設計する。
【0115】
図5は、本実施例における脱硝装置40の入口断面での窒素酸化物濃度の分布を考慮した報酬の設計方法を説明する説明図である。
【0116】
図5の左側部分に示すように、脱硝装置40の入口断面を複数の領域、本実施例では縦4区分、横4区分の合計16区分の領域に区切り、領域毎に窒素酸化物濃度の目標値を設定する。
【0117】
この領域毎における窒素酸化物濃度の目標値の設定は、図1の制御装置100の補正指令値計算用パラメータデータベース800に操作員が外部から入力することによって行われる。
【0118】
図5の左側部分に示されたNOx濃度目標値では、脱硝装置40の入口断面の中央の中心から縦2区分、及び横2区分に亘る合計4区分の領域がNOx濃度を少々濃く表示しているように少し高い値に設定されている。
【0119】
尚、図1には記載されていないが、制御装置100には脱硝装置40の入口の領域毎に、窒素酸化物濃度の目標値を外部から入力するためのインターフェイスが備えられており、これを用いて操作員は領域毎における窒素酸化物濃度の目標値を前記補正指令値計算用パラメータデータベース800に入力できる。
【0120】
また、窒素酸化物濃度の目標値を、排ガスダクト19内に配設したアンモニア注入ノズル10,11から供給されるアンモニアの噴霧範囲、噴霧量を基に自動的に決定することもできる。すなわち、1本のアンモニア注入ノズル10、11から供給できる最大噴霧量と噴霧範囲、及び脱硝装置40で除去可能な窒素酸化物の最大量を基に、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が所望の濃度になるように、脱硝装置40の入口の窒素酸化物の目標条件を決定する。
【0121】
次に、前記補正指令パラメータ決定手段500に備えられた空気量決定手段550における空気流量の操作条件に基づいて脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度分布を推定する。最後に、脱硝装置40の入口の領域毎に窒素酸化物濃度の目標値と推定値の誤差を計算し、誤差が小さい程報酬が大きくなるようにする。
【0122】
図5の右側上部に示した操作例aでは、脱硝装置40の入口の断面におけるNOx濃度において、脱硝装置40の入口断面の中央の中心から縦下方に1区分、横右方に1区分の1区分の領域がNOx濃度を特に濃く表示しているように局所的に窒素酸化物濃度が高い領域が存在し、この窒素酸化物濃度が高い領域では目標値との誤差が大きいため、報酬値は小さい。
【0123】
一方、図5の右側下部に示した操作例bでは、脱硝装置40の入口の断面におけるNOx濃度において、脱硝装置40の入口断面の中央の中心から縦に2区分、横に2区分の合計4区分の領域がNOx濃度を少々高く表示しているように目標値と推定値との誤差が、操作例aよりも小さいため、報酬は大きくなる。
【0124】
本実施例の制御装置100の補正指令パラメータ決定手段500に設置した空気量決定手段550では、窒素酸化物の総量が少ない程大きくなる報酬と、図5で説明した報酬とを組み合わせて(加算して)、強化学習に用いる報酬を計算する。
【0125】
上記した報酬を計算することによって、窒素酸化物の総量が少ない状態で、さらに窒素酸化物濃度の分布がその目標値と近くなるような供給空気の配分を学習できる。この学習の結果として、図5の操作例bで示したようなNOx濃度分布の結果が得られる供給空気量の操作条件を学習する。
【0126】
尚、図5では脱硝装置入口の断面を4×4=16の領域に分割しているが、分割数は任意である。また、図5では、全領域を均等に分割しているが、分割が粗い箇所と細かい箇所があるようにしてもよい。
【0127】
図6は、補正指令パラメータ決定手段500に設置した空気量決定手段550において本実施例における脱硝装置40の入口断面での窒素酸化物濃度分布を推定する推定方法の一例を説明する説明図である。
【0128】
図6に示すように、本実施例では補正指令パラメータ決定手段500に設置した空気量決定手段550に、負荷、スートブロワ経過後時間、炭種、バーナパターン、燃料流量、空気流量を入力として、脱硝装置40の入口断面を複数に区分した各領域の窒素酸化物濃度を予測するニューラルネットワークを構築する。
【0129】
前記空気量決定手段550のニューラルネットワークの重みパラメータは、ニューラルネットワークの入力と出力の関係が、窒素酸化物濃度は数値解析を用いた計算結果、及び制御装置100の計測値データベース400に保存されている情報と一致するように調整する。
【0130】
尚、本実施例では窒素酸化物濃度の推定にニューラルネットワークを用いたが、その他の方法を用いて領域毎の窒素酸化物濃度を推定してもよい。
【0131】
図7は、本実施例の制御装置100に設置した補正指令パラメータ決定手段500に設けられた空気量決定手段550で学習する強化学習の試行錯誤の過程で得られた、負荷変化に伴う脱硝装置入口における窒素酸化物濃度分布の変化を説明する説明図である。
【0132】
本実施例のボイラ1を備えた火力発電プラントでは、電力需要に合わせて出力を変化させる負荷変化運転を実施する。図7(a)は、出力の変化方法の一例を説明しており、時刻T1まで出力M1で運転し、その後出力をM2まで上昇させ、時刻T3で出力がM2に到達した後、出力をM2に固定する例が図示されている。
【0133】
図7(b)は、補正指令パラメータ決定手段500に設けられた空気量決定手段550のモデルを用いて、時刻T1、T2、T3における脱硝装置入口断面の窒素酸化物濃度を推定した結果であって、左側欄には窒素酸化物濃度分布の目標値を、右側欄には操作例Aと操作例Bにおける窒素酸化物濃度分布の推定値を夫々示す。
【0134】
図7(b)において、時刻T1、T2、T3における操作例Aと操作例Bの窒素酸化物の総量は同じである。この場合、窒素酸化物の総量のみを指標とした報酬を用いた学習では、操作例Aと操作例Bとの優劣をつけることができない。
【0135】
時刻T2、T3のそれぞれにおいて、操作例Aでは窒素酸化物濃度分布に局所的に濃度が高くなる偏りがあるが、操作例Bでは窒素酸化物濃度分布に局所的に濃度が高くなる偏りがない。従って、操作例Bの方が望ましい操作方法である。
【0136】
本実施例の制御装置100では、補正指令パラメータ決定手段500に設けられた空気量決定手段550によって、図5で説明した脱硝装置40の入口断面における窒素酸化物濃度分布を考慮した報酬を用いて学習する。
【0137】
前記空気量決定手段550では、図7(b)に示すように、各時刻に脱硝装置40の入口断面を複数に区分した各領域での窒素酸化物濃度分布の目標値を設定する。そしてこの空気量決定手段550にて、設定した窒素酸化物濃度分布の目標値を用いて各時刻T1、T2、T3で算出した目標値との差である報酬の総和が最大となるような操作方法を学習させる。
【0138】
前記空気量決定手段550では、図7(b)に示すように操作例Aよりも操作例Bの報酬の値が大きいので、操作例Bの結果が得られたときの空気流量の操作方法を学習できる。
【0139】
この空気量決定手段550で学習した前述の学習結果は、本実施例の制御装置100の補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存される。
【0140】
制御装置100の空気量指令値計算手段1200では、補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存されている補正指令パラメータ120を用いて、ボイラ1のバーナ2、及びアフタエアポート3から供給される空気量が、前述の学習によって得られた操作条件となるように、空気量補正値122を計算する。以上で、空気量指令値計算手段1200の説明を終了する。
【0141】
次に、制御装置100のアンモニア補正指令値計算手段700を説明する。
【0142】
アンモニア補正指令値計算手段700では、ボイラ1から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物を還元し、かつアンモニア流出量を低減するため、アンモニア基準値計算手段600から出力したアンモニア基準値107を調整するアンモニア補正指令値106を計算する。
【0143】
制御装置100の補正指令パラメータ決定手段500では、空気量補正指令値計算手段1200から出力する空気量補正指令値122を計算するのに必要な補正指令パラメータ120を計算する。
【0144】
補正指令パラメータ決定手段500に備えられているアンモニア量決定手段560では、排ガスダクト19内に配設したアンモニア注入ノズル10、11から脱硝装置40の入口に注入するアンモニア量を決定する。
【0145】
図1の制御装置100に示すように、脱硝装置40の入口にアンモニア注入ノズル10、11から注入するアンモニア流量は、アンモニア基準値計算手段600で計算したアンモニア基準値107と、アンモニア補正制御指令計算手段700で計算したアンモニア補正値106を用いて決定する。
【0146】
アンモニア基準値計算手段600で計算したアンモニア基準値107は、図3(a)に示すように、脱硝装置入口NOx濃度の計測値を用いて計算する。
【0147】
この脱硝装置入口NOx濃度の計測値は、窒素酸化物の濃度を分析するための燃焼ガスの採取時間分だけ遅れる。また、アンモニア用配管12、13に設置したアンモニア流量調節弁6、7を操作してから、実際にアンモニア注入ノズル10、11から脱硝装置40の入口にアンモニアが注入されるまでは、アンモニア貯蔵設備からアンモニア用配管12、13を通じて脱硝装置40までの滞留時間分遅れる。
【0148】
従って、負荷変化中など、脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度分布が変化するような場合は、アンモニア基準値107に基づいてアンモニア流量調節弁6、7を制御しても、アンモニア量の過不足の問題が生ずる。
【0149】
この場合、ボイラ1の煙道より系外へ排出されるNOx濃度あるいはアンモニアの流出量は増加する。これを抑制するため、本実施例の制御装置100ではアンモニア要求値を先行的に補正するアンモニア補正指令値計算手段700を備えている。
【0150】
図8は、制御装置100のアンモニア補正指令値計算手段700における動作内容と、その効果を説明する図である。
【0151】
図8(a)は、出力の変化方法の一例を説明する図であり、図7(a)と同一の図なのでその説明を省略する。
【0152】
図8(b)は、排ガスダクト19の断面図である。図1に示したように濃度計測器30、32、アンモニア注入ノズル10は排ガスダクト19の上部に配置され、濃度計測器31、33、アンモニア注入ノズル11は排ガスダクト19の下部に配置される。
【0153】
図8(c)及び図8(d)は、図8(a)に示したように出力を変化させた場合における脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度、及びアンモニア注入ノズル10、11から供給されるアンモニアの流量の経時変化を示す説明図である。
【0154】
図8(c)は、本実施例の制御装置100で、アンモニア補正制御指令計算手段700を機能させなかった場合の例であり、図8(d)は本実施例の制御装置100で、アンモニア補正制御指令計算手段700を使用してアンモニア要求値109を計算した場合の例である。
【0155】
まず、脱硝装置40の上部出口における窒素酸化物濃度について説明すると、図8(c)では、負荷変化中の時間T1からT3の間で、脱硝装置40の上部出口における窒素酸化物濃度が制限値を越えている状況を示している。
【0156】
そこで図8(d)に示すように本実施例の制御装置100に設置したアンモニア補正制御指令計算手段700を使用することで、負荷変化中の時間T1からT3の間でアンモニア流量が図8(c)の時(図8(d)中の点線)よりも多くなる。
【0157】
これにより窒素酸化物を還元でき、脱硝装置40の上部の出口における窒素酸化物濃度が実線で表したように制限値以下に抑制した状況を示している。
【0158】
次に、脱硝装置40の下部出口における窒素酸化物濃度について説明する。
【0159】
図8(c)では、脱硝装置40の下部出口における窒素酸化物濃度は負荷変化中の時間T1からT3の間で低くなっている。
【0160】
この時間帯では、窒素酸化物よりもアンモニア流量が相対的に多く、アンモニアが過剰となっている。このような場合、脱硝装置40より下流側にあるエアヒータに余剰のアンモニアが流れ込み、エアヒータの目詰まりの原因となる。
【0161】
そこで図8(d)に示すように本実施例の制御装置100に設置したアンモニア補正制御指令計算手段700を使用することで、負荷変化中の時間T1からT3の間でアンモニア流量が図8(c)の時(図8(d)中の点線)よりも実線で表したように少なくなり、余剰のアンモニアがエアヒータに流れ込むのを抑制できる。
【0162】
このように、本実施例の制御装置100では、アンモニア流量調節弁6、7から供給するアンモニア流量を個別に操作でき、アンモニア補正指令値106も個別に設定できる。
【0163】
その効果として、負荷変化中でも脱硝装置40の入口断面における全領域の窒素酸化物濃度を制限値以下に抑制できる。さらに余剰のアンモニアがエアヒータに流れ込むのを抑制でき、エアヒータの目詰まりを防止できる。
【0164】
図9は、本実施例の制御装置100に設置したアンモニア補正指令値計算手段700から出力される負荷変化中におけるアンモニア補正指令値106の計算例を説明する図である。
【0165】
図9は、負荷変化開始後からの経過時間と、アンモニア補正指令値計算手段700で計算して出力されるアンモニア補正指令値106の値の関係図である。
【0166】
図9において、時刻X3までアンモニア補正指令値106の流量はゼロで、その後、時刻X3から時刻X4までに流量X1まで上昇させる。時刻X4から時刻X5まで流量をX1に保ち、その後、時刻X5から時刻X6までに流量X2まで減少させる。時刻X6から時刻X7まで流量をX2に保ち、その後、時刻X7から時刻X8までに流量をゼロまで減少させる。
【0167】
補正指令値パラメータデータベース800には、流量X1〜X2、時刻X3〜X8までの値が保存されており、アンモニア補正指令値計算手段700では、これらの値を参照しながらアンモニア補正指令値106を計算する。
【0168】
補正指令パラメータデータベース800には、負荷変化率、負荷変化幅、炭種、バーナパターン等のボイラ運転条件に対応させて、アンモニア補正指令パラメータ105を保存する。即ち、負荷変化運転だけでなく、炭種切替、バーナパターン切替時にも、窒素酸化物濃度の変化に合わせてアンモニアを供給できる。
【0169】
アンモニア補正指令値計算手段700では、計測値101からボイラ1の運転条件を把握し、これに対応する補正指令パラメータを補正指令値計算用パラメータデータベース800から取得してアンモニア補正指令値106を計算する。
【0170】
尚、図9では流量X1〜X2、時刻X3〜X8の8つの補正指令パラメータでアンモニア補正指令値106を算出する例を示しているが、補正指令パラメータの数は任意に変更でき、図9よりも複雑な形をしたアンモニア補正指令値106を算出することもできる。
【0171】
また、図9ではアンモニア補正指令値106を線形(直線)に増減しているが、2次曲線のような関数を用いて、アンモニア補正指令値106を増減させるようにしてもよい。
【0172】
本実施例の制御装置100に設置した補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存する補正指令パラメータは、予めオペレータによって設定できる。また、補正指令パラメータ決定手段500を用いて、補正指令パラメータを自動調整することもできる。
【0173】
図10は、本実施例の制御装置100に設置した補正指令パラメータ決定手段500において、補正指令値計算用パラメータデータベース800に保存する補正指令パラメータの初期値を決定する実施例を説明する図である。
【0174】
補正指令パラメータ決定手段500に設置したアンモニア量決定手段560では、脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度の推定結果を基に、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が制限値を越えないようにするために必要なアンモニア量を求める。
【0175】
補正指令パラメータ決定手段500では、このアンモニア量が供給されるように補正指令パラメータの初期値を決定する。以下、図10を用いて説明する。
【0176】
アンモニア量決定手段560では、まず、図5(b)に示した脱硝装置40の入口におけるNOx濃度分布の計算結果を用いて、図10(a)に示すように排ガスダクト19の上部と下部の窒素酸化物濃度の経時変化を予測する。
【0177】
次に、図10(a)に示した排ガスダクト19の上部と下部の窒素酸化物濃度の経時変化の予測結果に基づいて、前記アンモニア量決定手段560では図10(b)に示すように、窒素酸化物を還元するのに必要なアンモニア流量を計算する。
【0178】
次に、図10(c)に示すように、アンモニア基準値の予想値を、図3(a)に示したロジック図に基づいたアンモニア基準値計算手段600によって計算する。
【0179】
尚、図10(c)で点線で示した曲線は、図10(b)に実線で示した曲線と同じ曲線である。
【0180】
そして、補正指令パラメータ決定手段500のアンモニア量決定手段560ではでは、図10(d)に示すように、図10(b)に実線で示した曲線から図10(c)に実線で示した曲線を減算した両者の差となるアンモニア補正値106の曲線を決定し、このアンモニア補正値106の曲線に基づいてアンモニア補正パラメータを決定する。
【0181】
図11は、本実施例の制御装置100に設置した補正指令パラメータ決定手段500におけるアンモニア補正指令パラメータ105の決定方法を説明する図である。
【0182】
補正指令パラメータ決定手段500では、2つのステップでアンモニア補正指令パラメータを調整する。まず、第1のステップでは、ボイラ1の運転条件に基づいて、脱硝装置40の入口、及び出口における窒素酸化物濃度の変化特性を予測する。
【0183】
次に、第2のステップでは、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が制限値以下となるように、補正指令パラメータを決定、更新する。
【0184】
このように、本実施例の制御装置100に設置した補正指令パラメータ決定手段500では、脱硝装置40の入口の窒素酸化物濃度を予測し、この予測結果を用いてアンモニアを先行的に補正する。
【0185】
図11(a)は、補正指令パラメータ決定手段500でアンモニア補正指令パラメータを調整する上記第1のステップの説明図である。
【0186】
図11(a)に示すように、本実施例の補正指令パラメータ決定手段500では、負荷、負荷変化率、負荷変化幅、スートブロワ経過後時間、炭種、バーナパターン、燃料流量、空気流量を入力として、脱硝装置40の入口を複数の領域に区分した各領域の窒素酸化物濃度の変化特性を予測するニューラルネットワークを構築する。
【0187】
このニューラルネットワークの重みパラメータは、入力と出力の関係が、窒素酸化物濃度は数値解析を用いた計算結果、及び計測値データベース400に保存されている情報と一致するように調整する。
【0188】
尚、本実施例の補正指令パラメータ決定手段500では窒素酸化物濃度の推定にニューラルネットワークを用いたが、その他の方法を用いて領域毎の窒素酸化物濃度を推定するようにしてもよい。
【0189】
図11(b)及び図11(c)は、補正指令パラメータ決定手段500でアンモニア補正指令パラメータを調整する上記第2のステップの説明図である。
【0190】
図11(b)の上図はアンモニア補正指令値の経時変化を示したグラフであり、図11(b)の下図はその時の脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度の経時変化を示したグラフである。
【0191】
11(b)の下図のグラフに示すように、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が制限値を超過している。このような場合、補正指令パラメータ決定手段500では、図11(c)に示すようにアンモニア補正指令値が増加するように補正指令パラメータを更新する。
【0192】
これにより、脱硝装置40の出口の窒素酸化物濃度が制限値を超過することを抑制する。
【0193】
尚、図1には図示していないが、本実施例の制御装置100と画像表示装置を接続し、制御装置100で使用している信号、及びデータベースの情報を画像表示装置上に表示するように構成できる。
【0194】
これにより、プラントオペレータに補正指令値パラメータの修正方法、及び修正時の効果を分かりやすく提供できる。
【0195】
尚、本実施例では、補正指令パラメータ決定手段500で補正指令パラメータを自動更新する方式を説明したが、補正指令パラメータの更新方法をプラントのオペレータに提供し、これを参考にしてオペレータが手動でアンモニア補正指令パラメータを変更することも可能である。
【0196】
本発明の実施例によれば、ボイラから排出される排ガス中の窒素酸化物の濃度を所望の値に低減すると共に、脱硝装置に注入する余剰のアンモニアが脱硝装置の下流側に流出することを抑制するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明は火力発電プラント等に設置され、石炭等の燃料を燃焼してこのプラントの作動蒸気を発生するボイラの制御装置、及びボイラの制御方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の一実施例であるボイラの制御装置の構成を示す概略図。
【図2】図1に示した本実施例のボイラの制御装置における動作フローチャート図。
【図3】本実施例の制御装置におけるアンモニア基準値計算手段、アンモニア流量調節弁開度計算手段、空気量基準値計算手段、及び空気流量調節弁開度計算手段をそれぞれ示す各制御ロジック図。
【図4】強化学習理論による制御の概念を示す説明図。
【図5】本実施例における脱硝装置の入口断面での窒素酸化物濃度の分布を考慮した報酬の設計方法の説明図。
【図6】本実施例における脱硝装置の入口断面での窒素酸化物濃度分布の推定方法の説明図。
【図7】本実施例の制御装置に設置した補正指令パラメータ決定手段に設けられた空気量決定手段で学習する強化学習の試行錯誤の過程で得られた負荷変化に伴う脱硝装置の入口断面の窒素酸化物濃度分布変化の説明図。
【図8】本実施例の制御装置に設置したアンモニア補正指令値計算手段の動作内容とその効果を説明する説明図。
【図9】本実施例の制御装置に設置したアンモニア補正指令値計算手段で計算するアンモニア補正指令値の計算例の説明図。
【図10】本実施例の制御装置に設置した補正指令パラメータ決定手段において補正指令値計算用パラメータデータベースに保存する補正指令パラメータの初期値を決定する説明図。
【図11】本実施例の制御装置に設置した補正指令パラメータ決定手段におけるアンモニア補正指令パラメータを決定する説明図。
【符号の説明】
【0199】
1:ボイラ、2:バーナ、3:アフタエアポート、4: 燃料(微粉炭)用配管、5:空気用配管、6 :アンモニア流量調節弁、7:アンモニア流量調節弁、8:混合器、9:混合器、10:アンモニア注入ノズル、11:アンモニア注入ノズル、12:アンモニア用配管、13:空気用配管、14:給水用配管、15 :給水ポンプ、16:熱交換器、17:蒸気タービン、18:発電機、19:排ガスダクト、20 :流量計測器、21:流量計測器、30:濃度計測器、31:濃度計測器、32:濃度計測器、33:濃度計測器、40:脱硝装置、100:制御装置、200:外部入力インターフェイス、210 :計測値、300:外部出力インターフェイス、310:操作信号、400:計測値データベース、500: 補正指令パラメータ決定手段、550:空気量決定手段、560:アンモニア量決定手段、600:アンモニア基準値計算手段、700:アンモニア補正指令値計算手段、800:補正指令値計算用パラメータデータベース、900:アンモニア流量調節弁開度計算手段、1100:空気量基準値計算手段、1200:空気量補正指令値計算手段、1300:空気量調節弁開度計算手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置とが設置された装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御装置において、
前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段が備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項2】
燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とが設置されており、前記脱硝装置の上流側で該脱硝装置に流入する燃焼ガスにアンモニアを供給するアンモニア注入ノズルが配設された装置の前記アンモニア注入ノズルから注入するアンモニア量を制御するボイラの制御装置において、
前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルの予測値に基づいて前記アンモニア注入ノズルから供給するアンモニア量を決定するアンモニア量決定手段が備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項3】
燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とが設置されており、前記脱硝装置の上流側で該脱硝装置に流入する燃焼ガスにアンモニアを供給するアンモニア注入ノズルが配設された装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量及び前記アンモニア注入ノズルから注入するアンモニア量を制御するプラントの制御装置において、
前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足し、かつ前記脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が低くなるように、前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段と、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルの予測値に基づいて前記アンモニア注入ノズルから供給するアンモニア量を決定するアンモニア量決定手段とが備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項3のいずれか1項に記載されたボイラの制御装置において、
前記空気量決定手段には、前記脱硝装置入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルと、前記窒素酸化物濃度の目標条件と前記モデルによる窒素酸化物濃度分布の予測値との誤差が小さい程大きくなる評価値が最大となる空気量を強化学習を用いて決定する学習手段とが備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載されたボイラの制御装置において、
前記窒素酸化物濃度の目標条件は、前記アンモニア注入ノズルから供給できる最大噴霧量、及び前記脱硝装置で除去可能な窒素酸化物の最大量を基に決定していることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載されたボイラの制御装置において、
前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割した領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を入力するインターフェイスが備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項7】
バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナからボイラ内に供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置とを備えた装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御方法において、
前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前記領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、バーナもしくはエアポートから供給する空気量を決定して前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御することを特徴とするボイラの制御方法。
【請求項8】
バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナから供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスにアンモニアを注入して前記燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とを備えた装置の前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御するようにしたボイラの制御方法において、
前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前記領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルによる予測値に基づいて供給するアンモニア量を決定して前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御することを特徴とするボイラの制御方法。
【請求項9】
バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナからボイラ内に供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスにアンモニアを注入して前記燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とを備えた装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御すると共に、前記燃焼ガス中に供給するアンモニアの供給量を制御するようにしたボイラの制御方法において、
前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前期脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が、前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、バーナもしくはエアポートから供給する空気量を決定して前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御すると共に、更に前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルによる予測値に基づいて供給するアンモニア量を決定して前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御することを特徴とするボイラの制御方法。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載されたボイラの制御方法において、
前記バーナもしくはエアポートから供給する空気量の決定に際しては、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布で予測するモデルによる予測値を用いて、複数の領域に分割した領域毎の前記窒素酸化物濃度の目標条件と前記モデルによる窒素酸化物濃度分布の予測値の誤差が小さい程大きくなる評価値に基づく空気量を強化学習を用いて決定することを特徴とするボイラの制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載されたボイラの制御方法において、
分割した前記領域毎に設定する前記窒素酸化物濃度の目標条件を、脱硝装置に流入する燃焼ガス中に供給できるアンモニアの最大供給量、及び前記脱硝装置で除去可能な窒素酸化物の最大量を基に決定することを特徴とするボイラの制御方法。
【請求項1】
燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置とが設置された装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御装置において、
前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段が備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項2】
燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とが設置されており、前記脱硝装置の上流側で該脱硝装置に流入する燃焼ガスにアンモニアを供給するアンモニア注入ノズルが配設された装置の前記アンモニア注入ノズルから注入するアンモニア量を制御するボイラの制御装置において、
前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルの予測値に基づいて前記アンモニア注入ノズルから供給するアンモニア量を決定するアンモニア量決定手段が備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項3】
燃料と空気をボイラ内に供給するバーナと、前記バーナからボイラ内に供給された燃料と空気とが燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側に空気を供給するエアポートとを備えたボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とが設置されており、前記脱硝装置の上流側で該脱硝装置に流入する燃焼ガスにアンモニアを供給するアンモニア注入ノズルが配設された装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量及び前記アンモニア注入ノズルから注入するアンモニア量を制御するプラントの制御装置において、
前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して該領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、この領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足し、かつ前記脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が低くなるように、前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を決定する空気量決定手段と、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルの予測値に基づいて前記アンモニア注入ノズルから供給するアンモニア量を決定するアンモニア量決定手段とが備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項3のいずれか1項に記載されたボイラの制御装置において、
前記空気量決定手段には、前記脱硝装置入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルと、前記窒素酸化物濃度の目標条件と前記モデルによる窒素酸化物濃度分布の予測値との誤差が小さい程大きくなる評価値が最大となる空気量を強化学習を用いて決定する学習手段とが備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載されたボイラの制御装置において、
前記窒素酸化物濃度の目標条件は、前記アンモニア注入ノズルから供給できる最大噴霧量、及び前記脱硝装置で除去可能な窒素酸化物の最大量を基に決定していることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載されたボイラの制御装置において、
前記ボイラの制御装置には、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割した領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を入力するインターフェイスが備えられていることを特徴とするボイラの制御装置。
【請求項7】
バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナからボイラ内に供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスに含まれる窒素酸化物を除去する脱硝装置とを備えた装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御するボイラの制御方法において、
前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前記領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、バーナもしくはエアポートから供給する空気量を決定して前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御することを特徴とするボイラの制御方法。
【請求項8】
バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナから供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスにアンモニアを注入して前記燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とを備えた装置の前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御するようにしたボイラの制御方法において、
前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前記領域毎の窒素酸化物濃度が前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルによる予測値に基づいて供給するアンモニア量を決定して前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御することを特徴とするボイラの制御方法。
【請求項9】
バーナから燃料と空気をボイラ内に供給し、このバーナからボイラ内に供給された燃料と空気を燃焼して生成した燃焼ガスの流れ方向下流側となるボイラのエアポートから空気を供給するボイラと、前記ボイラから排出された燃焼ガスにアンモニアを注入して前記燃焼ガスに含まれる窒素酸化物をアンモニアの存在下で触媒を用いて除去する脱硝装置とを備えた装置の前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御すると共に、前記燃焼ガス中に供給するアンモニアの供給量を制御するようにしたボイラの制御方法において、
前記ボイラの制御方法は、前記脱硝装置の入口断面を複数の領域に分割して分割した前記領域毎に窒素酸化物濃度の目標条件を設定し、前期脱硝装置入口の窒素酸化物濃度が、前記窒素酸化物濃度の目標条件を満足するように、バーナもしくはエアポートから供給する空気量を決定して前記バーナ、もしくはエアポートから供給する空気量を制御すると共に、更に前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布を予測するモデルによる予測値に基づいて供給するアンモニア量を決定して前記燃焼ガス中に供給するアンモニア量を制御することを特徴とするボイラの制御方法。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載されたボイラの制御方法において、
前記バーナもしくはエアポートから供給する空気量の決定に際しては、前記脱硝装置の入口の窒素酸化物濃度分布で予測するモデルによる予測値を用いて、複数の領域に分割した領域毎の前記窒素酸化物濃度の目標条件と前記モデルによる窒素酸化物濃度分布の予測値の誤差が小さい程大きくなる評価値に基づく空気量を強化学習を用いて決定することを特徴とするボイラの制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載されたボイラの制御方法において、
分割した前記領域毎に設定する前記窒素酸化物濃度の目標条件を、脱硝装置に流入する燃焼ガス中に供給できるアンモニアの最大供給量、及び前記脱硝装置で除去可能な窒素酸化物の最大量を基に決定することを特徴とするボイラの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−228918(P2009−228918A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71651(P2008−71651)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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