説明

ボイラシステム及びボイラシステムの運用方法

【課題】ボイラシステムを酸素燃焼運転から空気燃焼運転へ切り替える際に、電力供給を安定化させるとともに、ボイラ機器類の損傷を抑制する。
【解決手段】ボイラシステム100は、ボイラ10から排出される排ガスを処理する排ガス処理系統14から分岐して排ガスの一部を燃焼用ガスとしてボイラに循環供給する排ガス循環ライン28と、空気中の窒素と酸素とを分離する酸素発生装置40で分離された酸素ガスを燃焼用ガスとしてボイラに供給するOライン42とを備え、酸素発生装置で分離された窒素ガスを排出するNライン48から分岐してOラインに接続される分岐Nライン70のNバルブ74、及び酸素発生装置に空気を取り込む分離用空気ライン46から分岐して酸素発生装置をバイパスしてOラインに接続されるバイパスライン72のバイパスバルブ76の少なくとも一方を開にして、酸素燃焼運転から空気燃焼運転へ切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラシステム及びボイラシステムの運用方法に係り、例えば石炭等の化石燃料を主な燃料とする火力発電用のボイラシステムにおいて、ボイラの燃焼方式を酸素燃焼方式と空気燃焼方式とで切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭等の化石燃料を主な燃料とする火力発電用のボイラシステムとして、例えば特許文献1に記載されているように、酸素燃焼方式のボイラシステムが知られている。
【0003】
酸素燃焼方式のボイラシステムは、酸素分離装置を用いて空気中から酸素を分離して酸素ガスを生成し、生成された酸素ガスを燃料の燃焼用ガスとしてボイラに供給する一方、ボイラから排出された排ガスを循環させて燃焼用ガスとしてボイラに供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−147162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1等の従来技術は、ボイラの酸素燃焼運転と空気燃焼運転とを適切に切り替えることについて考慮されていない。
【0006】
すなわち、例えばボイラの酸素燃焼運転時に、排ガスを循環させる排ガス循環ライン或いは排ガスを循環させる排ガス循環ファン等に何らかの不具合が生じて酸素燃焼運転の継続が困難となった場合には、酸素燃焼運転から空気燃焼運転へ切り替える必要がある。
【0007】
この場合、ボイラに燃焼用ガスとして空気を供給する空気ライン及び空気送風ファンを別途設けておいて、排ガス循環ライン或いは排ガス循環ファン等に何らかの不具合が発生したら、空気送風ファンを起動して空気燃焼運転に切り替えることが考えられる。
【0008】
しかしながら、空気送風ファンを起動してから、燃焼用ガス(空気)の流量等が空気燃焼運転に適切な条件に達するまでには所定の時間が必要である。その間、燃料(例えば石炭)の供給を停止すれば、電力供給も一時的に停止することになり好ましくない。一方、電力供給の停止を避けるため、燃料の供給を継続した場合、一時的に燃焼用ガス中の酸素濃度が高まって、燃焼温度が上昇するから、バーナ、水壁、過熱器、後部伝熱面などのボイラ機器類の損傷を招くおそれがある。
【0009】
そこで本発明は、ボイラシステムを酸素燃焼運転から空気燃焼運転へ切り替える際に、電力供給を安定化させるとともに、ボイラ機器類の損傷を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のボイラシステムは、燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラと、このボイラから排出される排ガスが通流されるダクトと、このダクトに設けられた脱硝装置、予熱器、集塵装置、及び脱硫装置の少なくとも1つ以上を含む排ガス処理系統と、この排ガス処理系統のいずれかの位置から分岐して排ガスの一部を燃料の燃焼用ガスとして循環させてボイラに供給する排ガス循環ラインと、大気から取り込まれた空気中の窒素と酸素とを分離する酸素発生装置と、この酸素発生装置で分離された酸素ガスを燃焼用ガスとしてボイラに供給するOラインとを備えて構成される。
【0011】
そして、上記課題を解決するため、酸素発生装置で分離された窒素ガスを排出するNラインから分岐してOラインに接続される分岐Nライン、及び酸素発生装置に空気を取り込む分離用空気ラインから分岐して酸素発生装置をバイパスしてOラインに接続されるバイパスラインの少なくとも一方を有しており、分岐Nラインに設けられたNバルブ及びバイパスラインに設けられたバイパスバルブの少なくとも一方による流量制御により、ボイラの酸素燃焼と空気燃焼とを切り替え可能に構成されてなることを特徴としている。
【0012】
すなわち、例えば排ガス循環ライン或いは排ガス循環ファン等に何らかの不具合が発生したら、Nバルブ及びバイパスバルブの少なくとも一方を開にして、分岐Nラインを流れる窒素ガス及びバイパスラインを流れる空気の少なくとも一方の流量を増加させる。これによれば、いったん分離された窒素ガスを酸素ガスに混合して燃焼用ガスとしてボイラに供給するか、或いは酸素発生装置をバイパスした空気をそのまま燃焼用ガスとしてボイラに供給するので、空気燃焼運転に切り替えることができる。これに加えて、別途空気ライン及び空気送風ファンを設けて空気送風ファンを起動して空気燃焼運転に切り替える場合における、燃焼用ガス(空気)の流量等が空気燃焼運転に適切な条件に達するまでの所定の時間が不要である。したがって、燃料の供給を停止して電力供給も一時的に停止することや、燃料の供給を継続して一時的に燃焼用ガス中の酸素濃度が高まって燃焼温度が上昇してボイラ機器類の損傷を招くことを抑制することができる。
【0013】
また、本発明のボイラシステムの運用方法は、燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラから排出される排ガスが通流するダクトに設けられた脱硝装置、予熱器、集塵装置、及び脱硫装置の少なくとも1つ以上を含む排ガス処理系統のいずれかの位置から排ガスの一部を分岐させて、排ガス循環ラインを介して燃料の燃焼用ガスとしてボイラに循環供給するとともに、大気から取り込まれた空気中の窒素と酸素とを分離する酸素発生装置により分離された酸素ガスを燃焼用ガスとしてOラインを介してボイラに供給するものであって、分離された窒素ガスを排出するNラインから分岐してOラインに接続される分岐Nラインを通流する窒素ガス、及び大気から空気を取り込む分離用空気ラインから分岐して酸素発生装置をバイパスしてOラインに接続されるバイパスラインを通流する空気の少なくとも一方の流量制御により、ボイラの酸素燃焼と空気燃焼とを切り替えるものである。
【0014】
より具体的には、排ガス循環ラインがOラインに接続されており、この排ガス循環ラインを通流する排ガスとこのOラインを通流する酸素ガスが混合されて、両ラインの接続部より下流側の燃焼用ガスラインを介してボイラに供給される場合、ボイラの酸素燃焼時にボイラに循環供給される排ガスの通流異常を検出したら、分岐Nラインに設けられたNバルブ、及びバイパスラインに設けられたバイパスバルブの少なくとも一方を開とするとともに、燃焼用ガスラインに空気ラインを介して空気を供給する空気送風ファンを起動し、空気送風ファンの負荷があらかじめ設定された値に到達したら、Oラインの分岐Nラインとの接続部及びバイパスラインとの接続部より上流側に設けられたOバルブと、Nバルブとを除々に閉とするとともに、空気ラインに設けられた空気バルブを徐々に開とすることにより、ボイラを酸素燃焼から空気燃焼へ切替えるよう構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボイラシステムを酸素燃焼運転から空気燃焼運転へ切り替える際に、電力供給を安定化させるとともに、ボイラ機器類の損傷を抑制することを課題とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のボイラシステムの全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態のボイラシステムにおける各ガス量、石炭量、ボイラ投入全ガス量、空気送風ファンの負荷、O濃度、炉内温度、電力量の推移の一例を示す図である。
【図3】ボイラシステムの酸素燃焼時に運転の継続が困難となった場合に、ボイラ運転を停止し、運転停止後に空気燃焼に切替え、ボイラ運転を復旧する場合の比較例を示す図である。
【図4】従来の酸素燃焼方式ボイラシステムの基本的な構成で、石炭を停止せずに空気燃焼に切替えた場合の比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用してなるボイラシステム、及びボイラシステムの運用方法の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態のボイラシステムの全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態のボイラシステム100は、石炭等の化石燃料を主な燃料として燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラ10と、ボイラ10から排出される排ガスが通流されるダクト12と、ダクト12に設けられた排ガス処理系統14とを備えて構成されている。
【0019】
主な燃料である石炭は、バンカ16に貯められており、バンカ16からフィーダ18及び燃料搬送ガスライン20を介してミル22に供給される。石炭はミル22で粉砕された後、ウィンドボックス24内に設けられたバーナ26を介してボイラ10に供給され、燃焼用ガスによって燃焼される。排ガス処理系統14は、ダクト12を通流する排ガスを処理する脱硝装置、予熱器、集塵装置、排ガスヒーター、脱硫装置等の機器が順次並べて設けられている。ただし、排ガス処理系統14は、これらの機器の全てが設けられている必要はなく、排ガス処理の用途に応じた機器が適宜設けられていればよい。
【0020】
また、ボイラシステム100は、排ガス処理系統14のいずれかの位置から分岐して排ガスの一部を燃料の燃焼用ガスとして循環させてボイラ10に供給する排ガス循環ライン28を備えており、排ガス循環ライン28には、排ガス循環ライン28を通流する排ガスの流量を調整可能な排ガスバルブ30と、排ガスを循環させる排ガス循環ファン32とが設けられている。
【0021】
一方、ボイラシステム100は、大気から取り込まれた空気中の窒素と酸素とを分離する酸素発生装置40と、酸素発生装置40で分離された酸素ガスを燃焼用ガスとしてボイラ10に供給するOライン42とを備えている。
【0022】
酸素発生装置40は、コンプレッサー44により大気から取り込まれ分離用空気ライン46を介して送られた空気中の窒素と酸素とを分離して酸素ガス(高酸素濃度ガス)を生成してOライン42へ送る。酸素ガスが分離された窒素ガスは、Nライン48を介して排出されるようになっている。Oライン42には、Oライン42を通流する酸素ガスの流量を調整可能なOバルブ50が設けられている。
【0023】
排ガス循環ライン28はOライン42に接続されており、Oライン42を通流する酸素ガスは、排ガス循環ライン28を通流する排ガスと合流して混合される。その後、混合ガスは、排ガス循環ライン28とOライン42との接続部より下流側の燃焼用ガスライン52を通流し、ウィンドボックス24を介してボイラ10に供給されて燃料を燃焼させる。また、燃焼用ガスライン52を通流する酸素ガス及び排ガスの混合ガスの一部は燃料搬送ガスライン20に導かれて燃料を搬送する。
【0024】
また、ボイラシステム100は、空気ライン60を介して燃焼用ガスライン52に空気を供給する空気送風ファン62(FDF:Forced Draft Fan)を備えており、空気ライン60には、空気ライン60を通流する空気の流量を調整可能な空気バルブ64が設けられている。
【0025】
このように構成される本実施形態のボイラシステムは、いわゆる酸素燃焼方式のボイラシステムである。すなわち、化石燃料を主体とした現在の火力発電システムにおいて、地球温暖化の一因であるCOの排出削減が求められており、特に、CO排出量の多い石炭焚ボイラでは必要不可欠である。石炭焚ボイラにおけるCO排出削減の技術には、化学吸収法、酸素燃焼法、及び高蒸気条件化(USC)の3方法が知られている。このうち酸素燃焼法は、従来の空気燃焼とは異なり、酸素を酸化剤として使用するとともに排ガスを循環させることで、排ガス中のNをCOに置換し、CO濃度を例えば90%以上に高める方法であり、COの回収を容易にできる長所を有している。
【0026】
ところで、酸素燃焼方式のボイラシステムにおいては、酸素燃焼運転と空気燃焼運転とを適切に切り替えることが求められている。つまり、ボイラの酸素燃焼運転時に、例えば排ガス循環ライン28或いは排ガス循環ファン32等に何らかの不具合が生じて、酸素燃焼運転の継続が困難となった場合には、酸素燃焼運転から空気燃焼運転へ切り替える必要がある。この場合、ボイラ10に燃焼用ガスとして空気を供給する空気ライン及び空気送風ファンを別途設けておいて、排ガス循環ライン28或いは排ガス循環ファン32等に何らかの不具合が発生したら、空気送風ファンを起動して空気燃焼運転に切り替えることが考えられる。
【0027】
しかしながら、空気送風ファンを起動してから、燃焼用ガス(空気)の流量等が空気燃焼運転に適切な条件に達するまでには所定の時間が必要である。その間、燃料(例えば石炭)の供給を停止すれば、電力供給も一時的に停止することになり好ましくない。一方、電力供給の停止を避けるため、燃料の供給を継続した場合、一時的に燃焼用ガス中の酸素濃度が高まって、燃焼温度が上昇するから、バーナ、水壁、過熱器、後部伝熱面などのボイラ機器類の損傷を招くおそれがある。
【0028】
本実施形態のボイラシステムは、この点に鑑みてなされたものであり、ボイラシステムを酸素燃焼運転から空気燃焼運転へ切り替える際に、電力供給を安定化させるとともに、ボイラ機器類の損傷を抑制するものである。以下、本実施形態のボイラシステムの特徴部について説明する。
【0029】
ボイラシステム100は、Nライン48から分岐してOライン42に接続される分岐Nライン70、及び分離用空気ライン46から分岐して酸素発生装置40をバイパスしてOライン42に接続されるバイパスライン72を備えて構成されている、また、分岐Nライン70には、分岐Nライン70を通流する窒素ガスの流量を調整可能なNバルブ74が設けられており、バイパスライン72には、バイパスライン72を通流する空気の流量を調整可能なバイパスバルブ76が設けられている。なお、本実施形態のボイラシステム100は、分岐Nライン70及びバイパスライン72の両方を備えているが、これらの少なくとも一方を備えていればよい。
【0030】
ボイラシステム100は、Nバルブ74及びバイパスバルブ76の少なくとも一方による流量制御により、ボイラ10の酸素燃焼と空気燃焼とを切り替え可能に構成されている。
【0031】
すなわち、酸素燃焼時には、酸素発生装置40から供給される高酸素濃度ガスと、排ガス循環ライン28から供給される排ガスとがボイラ10の燃焼用ガスとして用いられる。この時、Oバルブ50は開、Nバルブ74及びバイパスバルブ76は閉、排ガスバルブ30は開、空気バルブ64は閉となっている。
【0032】
例えば酸素燃焼時に排ガス循環ライン28に何らかの不具合が発生し、流れる排ガスの流通が停止するなどの異常が発生した場合、排ガス循環ライン28に設けられている図示していないガス流量センサによりこれを検出する。排ガス循環ライン28を介して循環供給される排ガスの通流異常が検出されたら、図示していない制御手段が、Nバルブ74及びバイパスバルブ76の少なくとも一方を開とするとともに、空気送風ファン62を起動する。
【0033】
そして、空気送風ファン62の負荷が設定値、例えば100%に到達したら、Oバルブ50及びNバルブ74を徐々に閉とするとともに、空気バルブ64を徐々に開とする。最終的には、酸素発生装置40を停止して、Oバルブ50及びNバルブ74を全閉として、ボイラ10を酸素燃焼から空気燃焼へ切替える。
【0034】
以上のように、本実施形態のボイラシステム100によれば、いったん分離された窒素ガスを酸素ガスに混合して燃焼用ガスとしてボイラ10に供給するか、或いは酸素発生装置40をバイパスした空気をそのまま燃焼用ガスとしてボイラ10に供給できるので、酸素燃焼運転から空気燃焼運転に切り替えることができる。これに加えて、別途設けた空気送風ファン62を起動して空気燃焼運転に切り替える場合における、燃焼用ガス(空気)の流量等が空気燃焼運転に適切な条件に達するまでの所定の時間が不要である。したがって、燃料の供給を停止して電力供給も一時的に停止することや、燃料の供給を継続して一時的に燃焼用ガス中の酸素濃度が高まって燃焼温度が上昇してボイラ機器類の損傷を招くことを防止することができる。
【0035】
なお、本実施形態のボイラシステムは、既存の空気燃焼式ボイラシステム、すなわち空気送風ファン62から供給される空気のみで、ボイラ負荷ほぼ100%までの必要な燃焼用ガスとしての空気を供給できるようなボイラシステムを基にして、酸素発生装置40及びこれに関連する構成を設けて、酸素燃焼式ボイラシステムとしても使用できるものを前提としている。
【0036】
したがって、空気燃焼時の燃焼用ガス供給は、必ずしも空気送風ファン62で全てをまかなう必要は無く、バイパスライン72を通り、バイパスバルブ76によって流量を調節される空気を併用しても良い。また、空気送風ファン62を省略して、専らバイパスライン72を通り、バイパスバルブ76によって流量を調節される空気により空気燃焼運転を行うようにしてもよい。
【0037】
この場合、例えば排ガス循環ライン28を介して循環供給される排ガスの通流異常が検出されたら、Nバルブ74及びバイパスバルブ76の少なくとも一方を開にして、分岐Nライン70を流れる窒素ガス及びバイパスライン72を流れる空気の少なくとも一方の流量を増加させればよい。これによっても、いったん分離された窒素ガスを酸素ガスに混合して燃焼用ガスとしてボイラに供給するか、或いは酸素発生装置をバイパスした空気をそのまま燃焼用ガスとしてボイラに供給するので、空気燃焼運転に切り替えることができる。そして、別途設けた空気送風ファン62を起動して空気燃焼運転に切り替える場合における、燃焼用ガス(空気)の流量等が空気燃焼運転に適切な条件に達するまでの所定の時間が不要である。したがって、燃料の供給を停止して電力供給も一時的に停止することや、燃料の供給を継続して一時的に燃焼用ガス中の酸素濃度が高まって燃焼温度が上昇してボイラ機器類の損傷を招くことを防止することができる。
【0038】
以下、本実施形態のボイラシステムと比較例のボイラシステムの経過時間ごとの各ガス量、石炭量、ボイラ投入全ガス量、空気送風ファンの負荷、O濃度、炉内温度、電力量の推移について説明する。図2は、本実施形態のボイラシステムにおける各ガス量、石炭量、ボイラ投入全ガス量、O濃度、空気送風ファンの負荷、炉内温度、電力量の推移の一例を示す図である。一方、図3,4は、比較例のボイラシステムにおける各ガス量、石炭量、ボイラ投入全ガス量、空気送風ファンの負荷、O濃度、炉内温度、電力量の推移の比較例を示す図である。
【0039】
まず、図2に示すように、本実施形態のボイラシステムにおいて、酸素燃焼時である時刻t0〜t1では、循環ガス量はVa、純O量はVb、石炭量はA1、ボイラ投入全ガス量はV1、酸素濃度はC1、空気送風ファンは負荷0%、炉内温度はT1、電力量はW1で運転している。時刻t1において、循環排ガス(CO)がストップした場合、直ちにNバルブ74を開き、Oを希釈すると同時に、空気送風ファン62を起動する。
【0040】
ここで、Oバルブ50は開のままであり、空気バルブ64は閉のままである。一方、不具合が発生した排ガス循環ライン28に排ガスが流れ込まないように排ガスバルブ30は閉とする。Nによる希釈量はO濃度が21%、N濃度が79%になるように設定する。N投入により、ボイラ投入全ガス量はV1からV3へ増加する。O流量はVbで一定であり、O濃度は、C1から21%に低下する。炉内温度、電力量はT1、W1である。
【0041】
時刻t1〜t2では、O流量はVb、N流量はVc、石炭量はA1、酸素濃度はC1、炉内温度はT1、電力量はW1で一定である。空気送風ファン負荷は0から100%に除々に上昇する。
【0042】
時刻t2において、空気送風ファン62の負荷が100%になったら、酸素発生装置40による空気燃焼から空気送風ファン62による空気燃焼へ切替えを行う。時刻t2〜t4では、Oバルブ50及びNバルブ74を徐々に閉とし、反対に空気バルブ64を徐々に開とすることで、空気送風ファン62による空気燃焼に切替える。O流量はVbから0に減少する。NもVcから0へ減少する。ボイラ投入全ガス量、O濃度、炉内温度、電力量はV3、21%、T1、W1で一定である。
【0043】
本実施形態によれば、炉内温度をT1で一定に保って火炉の破損を抑制し、かつ、電力量をW1で一定に保って電力を安定供給しながら、酸素燃焼から空気燃焼にスムーズに切替えることができる。なお、分岐Nライン70は、燃料搬送ガスライン20、及び燃焼用ガスライン52の燃料搬送ガスライン20の分岐部より上流側に接続することも可能である。また、燃料搬送ガスライン20、及び燃焼用ガスライン52の燃料搬送ガスライン20の分岐部より下流側に接続することも可能である。この場合、Nの投入位置を変えているが、効果は上述の本実施形態と同じである。なお、図2及び以下で説明する図3,4における時刻t1、t2、t3での各操作に関しては、若干の時間幅があってもよい。また、バイパスライン72を通流する空気の流量を徐々に増加させていくことでも上述の本実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
また、酸素燃焼式のボイラシステムでは、通常、空気送風ファン62は、起動初期のみに用いられるため、設備コスト低減の観点から、例えば50%負荷(ボイラ)までをまかなう容量のもの、つまり通常の空気燃焼式の空気送風ファンに比べ大幅に小容量化したものが用いられる場合がある。
【0045】
そのような場合、排ガス循環ライン28の停止時、空気燃焼に切替えたときの電力量も空気送風ファンの容量による制約を受ける。この点、本実施形態によれば、空気送風ファン62の他に酸素発生装置40側からの空気供給を継続することにより、空気燃焼時の電力量が空気送風ファン62の容量による制約を受けずにすむ。また、空気送風ファン62を省略したシステムとして、起動時を含む全ての空気燃焼過程を酸素発生装置40側のみでまかなうようにすることも可能である。
【0046】
続いて、図3の比較例について説明する。図3は、ボイラシステムの酸素燃焼時に運転の継続が困難となった場合に、ボイラ運転を停止し、運転停止後に空気燃焼に切替え、ボイラ運転を復旧する場合の比較例を示す図である。
【0047】
酸素燃焼時である時刻t0〜t1では、再循環ガス量はVa、純O量はVb、石炭量はA1、ボイラ投入全ガス量はV1、空気送風ファン負荷は0%、酸素濃度はC1、炉内温度はT1、電力量はW1で運転している。
【0048】
時刻t1において、循環排ガス(CO)がストップした場合、Oバルブ50を閉とし、Oを停止すると同時に、フィーダ18を停止することで石炭供給をストップする。このとき、ボイラ投入全ガス量は0となる。直ちに、空気送風ファン62を起動し、空気バルブ64を開き、空気の供給を開始する。O供給の停止及び空気投入によりO濃度はC1から21%となる。炉内温度は燃料停止により低下し、電力供給はストップする。
【0049】
時刻t1〜t2では、循環排ガス量(CO)及びO流量は0である。空気送風ファン負荷が0から100%に増加することで、ボイラ投入ガス量は0からV3に増加する。例えば、このときの所要時間は約30分である。O濃度は21%であり、炉内温度は低下し、電力量は0のままである。
【0050】
時刻t2において、点火し、石炭を投入する。炉内温度及び電力量は上昇し、時刻t3において、炉内温度はT1、電力量はW1となり、完全復旧する。酸素燃焼時に不具合が起こり、電力供給を一時的にストップすることは、電力の安定供給という観点から問題である。このため、酸素燃焼運転の継続が困難となった場合に、石炭を停止せずに酸素燃焼から空気燃焼に切替えることが求められる。
【0051】
続いて、図4の比較例について説明する。図4は、従来の酸素燃焼方式ボイラシステムの基本的な構成で、石炭を停止せずに空気燃焼に切替えた場合の比較例を示す図である。
【0052】
酸素燃焼時である時刻t0〜t1では、循環ガス量はVa、純O量はVb、石炭量はA1、ボイラ投入全ガス量はV1、空気送風ファン負荷は0%、酸素濃度はC1、炉内温度はT1、電力量はW1で運転している。時刻t1において、循環排ガス(CO)がストップした場合、直ちに空気送風ファン62を起動し、空気バルブ64を開き、空気の供給を開始する。石炭量はA1で一定であるが、ボイラ投入全ガス量はV1からV2へ急減する。逆にO濃度は、C1から100%近傍まで急上昇する。
【0053】
時刻t1〜t2では、循環排ガス量(CO)は0であり、Oバルブ50を徐々に閉とすることで、O流量は減少する。ボイラ投入全ガス量はV2からV3へ増加するが、途中に低流量領域が発生する。また、O濃度は100%近傍から21%まで徐々に減少するが、途中に高O濃度領域が発生する。
【0054】
これにより、炉内温度はT1からT2に急上昇し、T2>Tmax(限界温度:例えば2000℃以上)となるため火炉の各部(バーナ、水壁、過熱器、後部伝面等)が破損するおそれがある。
【0055】
これに対して本実施形態のボイラシステム及びその運用方法によれば、図2に示すように、電力量はW1で一定であり、電力を安定して供給することができる。また、O濃度が100%近傍まで急上昇せず炉内温度が急上昇することもないので、火炉の各部(バーナ、水壁、過熱器、後部伝面等)が破損することを防止することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 ボイラ
12 ダクト
14 排ガス処理系統
28 排ガス循環ライン
30 排ガスバルブ
32 排ガス循環ファン
40 酸素発生装置
42 Oライン
46 分離用空気ライン
48 Nライン
50 Oバルブ
52 燃焼用ガスライン
60 空気ライン
62 空気送風ファン
64 空気バルブ
70 分岐Nライン
72 バイパスライン
74 Nバルブ
76 バイパスバルブ
100 ボイラシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラと、該ボイラから排出される排ガスが通流されるダクトと、該ダクトに設けられた脱硝装置、予熱器、集塵装置、及び脱硫装置の少なくとも1つ以上を含む排ガス処理系統と、該排ガス処理系統のいずれかの位置から分岐して前記排ガスの一部を前記燃料の燃焼用ガスとして循環させて前記ボイラに供給する排ガス循環ラインと、大気から取り込まれた空気中の窒素と酸素とを分離する酸素発生装置と、該酸素発生装置で分離された酸素ガスを前記燃焼用ガスとして前記ボイラに供給するOラインとを備えてなるボイラシステムであって、
前記酸素発生装置で分離された窒素ガスを排出するNラインから分岐して前記Oラインに接続される分岐Nライン、及び前記酸素発生装置に空気を取り込む分離用空気ラインから分岐して前記酸素発生装置をバイパスして前記Oラインに接続されるバイパスラインの少なくとも一方を有し、
前記分岐Nラインに設けられたNバルブ及び前記バイパスラインに設けられたバイパスバルブの少なくとも一方による流量制御により、前記ボイラの酸素燃焼と空気燃焼とを切り替え可能に構成されてなるボイラシステム。
【請求項2】
燃料を燃焼させて蒸気を発生させるボイラから排出される排ガスが通流するダクトに設けられた脱硝装置、予熱器、集塵装置、及び脱硫装置の少なくとも1つ以上を含む排ガス処理系統のいずれかの位置から前記排ガスの一部を分岐させて、排ガス循環ラインを介して前記燃料の燃焼用ガスとして前記ボイラに循環供給するとともに、大気から取り込まれた空気中の窒素と酸素とを分離する酸素発生装置により分離された酸素ガスを前記燃焼用ガスとしてOラインを介して前記ボイラに供給するボイラシステムの運用方法であって、
前記分離された窒素ガスを排出するNラインから分岐して前記Oラインに接続される分岐Nラインを通流する窒素ガス、及び前記大気から空気を取り込む分離用空気ラインから分岐して前記酸素発生装置をバイパスして前記Oラインに接続されるバイパスラインを通流する空気の少なくとも一方の流量制御により、前記ボイラの酸素燃焼と空気燃焼とを切り替えるボイラシステムの運用方法。
【請求項3】
請求項2のボイラシステムの運用方法において、
前記排ガス循環ラインは前記Oラインに接続されており、該排ガス循環ラインを通流する排ガスと該Oラインを通流する酸素ガスは混合されて、両ラインの接続部より下流側の燃焼用ガスラインを介して前記ボイラに供給され、
前記ボイラの酸素燃焼時に前記ボイラに循環供給される排ガスの通流異常を検出したら、
前記分岐Nラインに設けられたNバルブ、及び前記バイパスラインに設けられたバイパスバルブの少なくとも一方を開とするとともに、前記燃焼用ガスラインに空気ラインを介して空気を供給する空気送風ファンを起動し、
前記空気送風ファンの負荷があらかじめ設定された値に到達したら、
前記Oラインの前記分岐Nラインとの接続部及び前記バイパスラインとの接続部より上流側に設けられたOバルブと、前記Nバルブとを除々に閉とするとともに、前記空気ラインに設けられた空気バルブを徐々に開とすることにより、
前記ボイラを酸素燃焼から空気燃焼へ切替えるボイラシステムの運用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−93002(P2012−93002A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238951(P2010−238951)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】