説明

ボディの塗装に漆を用いたエレキギターまたはエレキベース

【課題】音響特性を改良し美観を向上させたエレキギターおよびエレキベースを提供する。
【解決手段】ボディとして厚さ42mmバスウッド材を加工した板を用いた。この板には、表面にエレキギターまたはベースに必要な電子部品を収納する座繰り部を、裏面にはブリッジを支えるために必要な部品を収納する座繰り部設け、さらにはブリッジを装着するための貫通孔を設けたものを用いた。ヘラを用いて生漆をボディ全体に染み込ませ、3日間、湿度77%、温度26度に設定された漆室で乾燥させた。そして、軽く全体を800番、1000番のサンドペーパーを用いて研磨を行い下地を作った。次に、生漆をゴムつきのへらで全体に延ばして、柔らかい布を丸めたもので木地に刷り込んでいった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特別な塗装を施したボディを用いて製作したエレキギターまたはエレキベースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレキギター・ベースのボディ塗装にはニトロセルロース、ポリエステル、ポリエチレン、ニスなどの石油化学系の素材が使われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の塗装剤は、木地の保護、楽器の美観を向上することに資するが、塗装皮膜が厚くなる傾向がある。これは、ボディの振動伝達効率に影響をあたえ音質にも影響を及ぼす。本発明は以上のような欠点をなくすためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のエレキギターまたはエレキベースは、拭き漆技法にて塗装されたボディを用いて製作されたことを特徴とする。
【0005】
本発明における拭き漆技法とは、ボディに生漆をヘラや布によって木地表面に直接刷り込み、乾燥させ、研磨する技法であって、従来の塗装材料よりも薄い塗装皮膜を作り、木地の表面を硬化させる方法である。
【発明の効果】
【0006】
上記の拭き漆技法を用いれば、従来の塗装方法より塗装皮膜を薄くすることができるので、楽器の美観を維持しつつも、ボディの持つ振動伝達効率をさげない。よって、全音域に渡って音の鮮やかな立ち上がり感を得ることができ、さらには倍音特性を向上させることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本実施例では、ボディとして厚さ42mmバスウッド材を加工した板を用いた。この板には、表面にエレキギターまたはベースに必要な電子部品を収納する座繰り部を、裏面にはブリッジを支えるために必要な部品を収納する座繰り部設け、さらにはブリッジを装着するための貫通孔を設けたものを用いた。塗装作業に入る前にバスウッド材の両面と側面を、サンドペーパーを用いて木地を研磨した。サンドペーパーは120番、240番、400番、800番、1000番、1200番と、徐々に目を細かくしていき、木地表面から完全に傷や凹みを除去した。漆は硬化させる際に湿気が必要となるため、ボディ材に歪みを生ずる恐れがあるため、これらの座繰りならびに貫通孔にマスキングを行い木地内部への湿気の侵入を防いだ。そして、ヘラを用いて生漆をボディ全体に染み込ませ、3日間、湿度77%、温度26度に設定された漆室で乾燥させた。そして、軽く全体を800番、1000番のサンドペーパーを用いて研磨を行い下地を作った。次に、生漆をゴムつきのへらで全体に延ばして、柔らかい布を丸めたもので木地に刷り込んでいった。温度、湿度とも、下地作りと同条件の漆室で乾燥させてから、800番、1000番のサンドペーパーによる研磨を行った。木地を保護する塗装皮膜を徐々に形成するために、この工程を15回繰り返した。最後の4回は、独特の風合いとつやを出していくために上摺漆と言われる上質の漆を刷り込んだ。そして、1週間乾燥させ完全に硬化したことを確認した後に、艶を出すために菜種油と蝋色粉で磨き上げた。かくして得られた漆塗装ボディの片面に、ピックアップ、ボリューム、トーン、スイッチなどの電装部品、ブリッジなどのハードウエア類、ボディ上端に別に用意したネックの下端部を取り付け、弦を張り、エレキギターとして完成させた。
図1は本発明の漆塗装をしたボディー1を示す。2はピックアップ収納部座繰り、3はボリューム、トーンコントロールならびにスイッチ収納部座繰り、4はブリッジを装着するための貫通孔、5はアウトプットジャック収納部座繰り、6はネック取り付け部、7はネックである。漆は硬化させる際に高い湿度が必要になるため、ボディに歪みを生じる恐れがあることから、上記図面1から6の場所にマスキングを行って木地内部への湿気の侵入を防いだ。また、ネックは演奏性を考慮して従来の塗装を採用した。
【0008】
着色したい場合は、下地を作る前の工程で、直接ボディとする木地に染料や色素等を刷り込む。
【0009】
木目の粗いものや、導管の大きな木地をボディ材に使用する際には、漆の刷り込み回数を5回ほど増やすのが望ましい。
【0010】
漆室の温度と湿度は天候に応じて微調整することが望ましい。
【産業上の利用の可能性】
【0011】
上述したように、本発明で得られるエレキギターまたはエレキベースは、従来の塗装材にない美観を提供し、音色を発生させるので広く音楽界で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のボディの一例を示す説明図
【符号の説明】
【0013】
1 ボディ本体
2 ピックアップ収納部座繰り
3 ボリューム、トーンコントロールならびにスイッチ収納部座繰り
4 ブリッジを装着するための貫通孔
5 アウトプットジャック収納部座繰り
6 ネック取り付け部
7 ネック



【特許請求の範囲】
【請求項1】
拭き漆技法で塗装されたボディを用いて製作されたことを特徴とするエレキギター、またはエレキベース。































【図1】
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【公開番号】特開2010−8849(P2010−8849A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170006(P2008−170006)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(308020478)
【Fターム(参考)】