説明

ボラジン化合物の製造方法およびボラジン化合物合成用反応容器

【課題】ボラジン化合物を合成する際に、反応中のボラジン化合物の反応容器外への流出を抑制し、合成中のボラジン化合物の発火を防止する手段を提供する。
【解決手段】0.1MPa以上の耐圧圧力を有する反応容器中でボラジン化合物を合成する段階を有する、ボラジン化合物の製造方法、または、0.1MPa以上の耐圧圧力を有する、ボラジン化合物合成用反応容器により、上記課題は解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボラジン化合物に関する。ボラジン化合物は、例えば、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層、エッチストッパー層を形成するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
情報機器の高性能化に伴い、LSIのデザインルールは、年々微細になっている。微細なデザインルールのLSI製造においては、LSIを構成する材料も高性能で、微細なLSI上でも機能を果たすものでなければならない。
【0003】
例えば、LSI中の層間絶縁膜に用いられる材料に関していえば、高い誘電率は信号遅延の原因となる。微細なLSIにおいては、この信号遅延の影響が特に大きい。このため、層間絶縁膜として用いられ得る、新たな低誘電率材料の開発が所望されていた。また、層間絶縁膜として使用されるためには、誘電率が低いだけでなく、耐湿性、耐熱性、機械的強度などの特性にも優れている必要がある。
【0004】
かような要望に応えるものとして、分子内にボラジン環骨格を有するボラジン化合物が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。ボラジン化合物は分子分極率が小さいため、形成される被膜は低誘電率である。その上、形成される被膜は、耐熱性にも優れる。
【0005】
ボラジン化合物としては、これまでに種々の化合物が提案されている。例えば、ホウ素部位がアルキル基で置換されたアルキルボラジン化合物は、低誘電率材料として非常に優れた特性を有する(例えば、特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2000−340689号公報
【特許文献2】特開2003−119289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ボラジン化合物はフラスコ等を反応容器として用い、実験室レベルで少量合成されるのみであった。一方、ボラジン化合物の有用性に鑑み、今後の大量生産を念頭に置くと、スケールアップされたより大きな反応容器中で大量に合成する必要が生じることが予想される。
【0007】
ここで、ボラジン化合物を合成する際の温度条件の上限値は、通常200〜250℃程度である。一方、例えばボラジン化合物の1つであるN,N’,N”−トリメチルボラジンの発火点は192℃である。従って、反応中にボラジン化合物が反応容器外へ流出して酸素と接触すると、場合によっては流出したボラジン化合物が発火してしまい、ボラジン化合物の製造を中止せざるを得ない状況も生じうる。
【0008】
ここで、ボラジン化合物を大量に製造するに当たって、一般的な化合物の合成に用いられる金属製の反応容器などを反応容器として採用する場合を考えてみる。かような反応容器は通常、大気圧程度の雰囲気下においては呼吸しており、反応容器内の気体と外気とは容器の内外をある程度行き来している。従って、化合物の合成に従来一般的に用いられている反応容器をそのまま用いてボラジン化合物を合成しようとすると、合成されたボラジン化合物が反応容器外へ流出し、発火する危険性がある。
【0009】
そこで本発明は、ボラジン化合物を合成する際に、反応中のボラジン化合物の反応容器外への流出を抑制し、合成中のボラジン化合物の発火を防止する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、所定の値以上の耐圧圧力を有する容器をボラジン化合物合成用の反応容器として採用することにより、反応中のボラジン化合物の反応容器外への流出、およびこれに伴う合成中のボラジン化合物の発火が効果的に防止されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、0.1MPa以上の耐圧圧力を有する反応容器中でボラジン化合物を合成する段階を有する、ボラジン化合物の製造方法である。
【0012】
また、本発明は、0.1MPa以上の耐圧圧力を有する、ボラジン化合物合成用反応容器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボラジン化合物を合成する際に、反応中のボラジン化合物の反応容器外への流出が抑制され、合成中のボラジン化合物の発火が防止されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1は、0.1MPa以上の耐圧圧力を有する反応容器中でボラジン化合物を合成する段階を有する、ボラジン化合物の製造方法である。
【0015】
本発明の製造方法では、所定の耐圧圧力を有する反応容器中において、ボラジン化合物を合成する。これにより、ボラジン化合物を合成する際に、反応中のボラジン化合物の反応容器外への流出が抑制され、合成中のボラジン化合物の発火が防止されうる。従って、本発明によれば、極めて安全なボラジン化合物の製造方法が提供されうる。また、本発明によれば、合成中の反応容器中への外気の流入が抑制されうるが、外気は酸素以外の不純物をも含む。従って、本発明の製造方法によれば、高純度のボラジン化合物が製造されうる。
【0016】
続いて、本発明の製造方法について、詳細に説明する。
【0017】
本発明の製造方法において合成されるボラジン化合物の合成方法の具体的な形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0018】
一例を挙げると、ボラジン化合物は、下記化学反応式1に示すように、MBH(Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である)で表される水素化ホウ素アルカリと、(RNHX(Rは水素原子またはアルキル基であり、n=1のときXはハロゲン原子であり、n=2のとき硫酸基である)で表されるアミン塩とを、溶媒中で反応させることにより合成可能である(例えば、Howard Steinberg,ORGANOBORON CHEMISTRY Volume 2,Interscience Publishers,p.221−222を参照)。
【0019】
【化1】

【0020】
以下、かような合成方法を例に挙げて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はかような合成方法によりボラジン化合物を合成する形態のみには限定されない。
【0021】
水素化ホウ素アルカリ(MBH)において、Mは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。水素化ホウ素アルカリの例としては、水素化ホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素リチウムが挙げられる。
【0022】
アミン塩((RNHX)において、Rは水素原子またはアルキル基であり、Xは硫酸基またはハロゲン原子である。そして、Xがハロゲン原子である場合にはnは1であり、Xが硫酸基である場合にはnは2である。ハロゲン原子は、好ましくは塩素原子である。n=2のとき、Rは、同一であっても異なっていてもよい。合成反応の収率や取り扱いの容易性を考慮すると、Rは好ましくは同一のアルキル基である。アルキル基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。アルキル基の有する炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1個である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これら以外のアルキル基が用いられてもよい。アミン塩の例としては、塩化アンモニウム(NHCl)、モノメチルアミン塩酸塩(CHNHCl)、モノエチルアミン塩酸塩(CHCHNHCl)、モノメチルアミン臭化水素酸塩(CHNHBr)、モノエチルアミンフッ化水素酸塩(CHCHNHF)、硫酸アンモニウム((NHSO)、モノメチルアミン硫酸塩((CHNHSO)が挙げられる。
【0023】
使用する水素化ホウ素アルカリおよびアミン塩は、合成するボラジン化合物の構造に応じて選択すればよい。例えば、ボラジン環を構成する3つの窒素原子にメチル基が結合しているN,N’,N”−トリメチルボラジンを製造する場合には、アミン塩として、モノメチルアミン塩酸塩などの、Rがメチル基であるアミン塩を用いればよい。
【0024】
水素化ホウ素アルカリとアミン塩との混合比は、特に限定されないが、アミン塩の使用量を1モルとした場合に、水素化ホウ素アルカリの使用量を1〜1.5モルとすることが好ましい。
【0025】
さらに、ホウ素原子に結合した水素原子(水素化ホウ素アルカリ由来)をさらにアルキル基により置換することも可能である。かような手法としては、例えば、上記化学反応式1で得られたボラジン化合物をグリニャール試薬と反応させればよい。
【0026】
合成用の溶媒としては、特に制限されないが、例えば、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。
【0027】
水素化ホウ素アルカリとアミン塩との反応条件は、特に限定されない。反応温度は、好ましくは20〜250℃、より好ましくは50〜240℃、さらに好ましくは100〜220℃である。さらには、反応後にも200〜250℃程度の温度で熟成させることが好ましい。上記範囲で反応させると、水素発生量の制御が容易である。反応温度は、K熱電対などの温度センサーを用いて測定されうる。
【0028】
また、アルキルボラジン化合物は、出発物質としてB,B’,B”−トリクロロ−N,N’−N”−トリアルキルボラジンなどのハロゲン化ボラジン化合物を原料として、グリニャール試薬を用いて当該化合物の塩素原子をアルキル基で置換することによっても合成されうる(D.T.HOWORTH and L.F.HOHNSTEDT,J.Am.Chem.Soc.,82,3860(1960)を参照)。
【0029】
以上の合成方法により合成されたボラジン化合物は、下記化学式1で表される。
【0030】
【化2】

【0031】
式中、各Rおよび各Rは、それぞれ同一であってもよいし異なってもよく、水素原子またはアルキル基である。ボラジン化合物の例としては、ボラジン、N,N’,N”−トリメチルボラジン、N,N’,N”−トリエチルボラジン、N,N’,N”−トリ(n−プロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(iso−プロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(n−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(sec−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(iso−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(tert−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(1−メチルブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(2−メチルブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(neo−ペンチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(1,2−ジメチルプロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(1−エチルプロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(n−ヘキシル)ボラジン、N,N’,N”−トリシクロヘキシルボラジン、N,N’−ジメチル−N”−エチルボラジン、N,N’−ジエチル−N”−メチルボラジン、N,N’−ジメチル−N”−プロピルボラジン、B,B’,B”−トリメチルボラジン、B,B’,B”−トリエチルボラジン、B,B’,B”−トリ(n−プロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(イソプロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(n−ブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(イソブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(tert−ブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(1−メチルブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(2−メチルブチル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(ネオペンチル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(1,2−ジメチルプロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(1−エチルプロピル)ボラジン、B,B’,B”−トリ(n−ヘキシル)ボラジン、B,B’,B”−トリシクロヘキシルボラジン、B,B’−ジメチル−B”−エチルボラジン、B,B’−ジエチル−B”−メチルボラジン、B,B’−ジメチル−B”−プロピルボラジンなどが挙げられる。なお、製造されるボラジン化合物の耐水性等の安定性や取扱い性を考慮すると、ボラジン化合物は、N−アルキルボラジンであることが好ましい。
【0032】
合成されたボラジン化合物は、必要に応じて精製されうる。ボラジン化合物の精製方法としては、例えば、蒸留精製が用いられる。
【0033】
蒸留精製装置の大きさや種類は、環境や規模に応じて決定されればよい。例えば、大量のボラジン化合物を処理するのであれば、工業的規模の蒸留塔が用いられうる。少量のボラジン化合物を処理するのであれば、蒸留管を用いた蒸留精製が用いられうる。例えば、少量のボラジン化合物を処理する蒸留装置の具体例としては、3つ口フラスコにクライゼン型の連結管でリービッヒ冷却管を取り付けた蒸留装置が用いられうる。ただし、このような蒸留装置を用いる実施形態に、本発明の技術的範囲が限定されるわけではない。
【0034】
蒸留精製の際の温度は特に制限されず、合成されたボラジン化合物の種類に応じて適宜設定されうる。一例を挙げると、通常は100〜150℃程度である。
【0035】
本発明の製造方法は、ボラジン化合物を、0.1MPa以上の耐圧圧力を有する反応容器中において合成する点に特徴を有する。
【0036】
「耐圧圧力」とは、密閉された容器をある一定の初期圧力(本願では0.1MPaとする)を有する雰囲気下に置いて当該雰囲気の圧力を上昇させた場合に、当該雰囲気が当該容器の内部に流入しうる時点の雰囲気圧力から、初期圧力(0.1MPa)を減じた圧力を意味する。つまり、雰囲気の圧力が「耐圧圧力+初期圧力(0.1MPa)」を超えると、当該雰囲気が容器の内部に流入しうるのである。従って、本発明において、初期圧力が0.1MPa(ほぼ大気圧に等しい)である雰囲気下にてボラジン化合物を合成する場合には、雰囲気の圧力が0.2MPa以上となっても当該雰囲気が流入しない反応容器中でボラジン化合物を合成することになる。
【0037】
本発明の第2は、本発明の第1の合成方法に用いられうる合成用容器をも提供する。すなわち、本発明の第2は、0.1MPa以上の耐圧圧力を有する、ボラジン化合物合成用反応容器である。
【0038】
本発明の合成用反応容器の耐圧圧力は、上述した通り0.1MPa以上であり、好ましくは0.2MPa以上であり、さらに好ましくは0.3MPa以上である。なお、反応容器の耐圧圧力が0.1MPa未満であると、ボラジン化合物の合成時にボラジン化合物が反応容器外へ流出し、酸素との接触により発火する虞がある。
【0039】
ここで、反応容器の内部への雰囲気の流入防止という観点からは、反応容器の耐圧圧力の上限値は特に制限されない。ただし、反応容器の重量等の取扱い易さという観点からは、反応容器の耐圧圧力は、好ましくは2.0MPa以下であり、より好ましくは0.5MPa以下である。ただし、これらの範囲を外れる形態もまた、採用されうる。
【0040】
反応容器のサイズや材質等の具体的な形態については特に制限はない。実験室レベルで少量のボラジン化合物を合成するためには、小さい反応容器を用いればよい。また、工業レベルで大量のボラジン化合物を合成するためには、大きい反応容器を用いればよい。また、反応容器の耐圧圧力は、反応容器を構成する材料の種類を適切に選択し、容器壁の厚みなどを適切に調節することにより、制御されうる。なお、反応容器は、労働安全衛生法に基づく第二種圧力容器の定義に適合しているものであることが好ましい。
【0041】
反応容器の材質については、例えば、ハステロイ類、ステンレス類などの金属材料などが採用されうる。なかでも、耐圧圧力が高いという観点からは、反応容器はハステロイ類から構成されることが好ましい。
【0042】
ボラジン化合物は、特に限定されないが、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層、エッチストッパー層などの形成に用いられうる。その際には、ボラジン化合物がそのまま用いられてもよいし、ボラジン化合物に改変を加えた化合物が用いられてもよい。ボラジン化合物またはボラジン化合物の誘導体を重合させた重合体を、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層の原料として用いてもよい。以下、「ボラジン化合物」、「ボラジン化合物の誘導体」および「これらに起因する重合体」をまとめて、「ボラジン環含有化合物」と称する。
【0043】
ボラジン環含有化合物を用いて、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層を形成する手法としては、例えば、ボラジン環含有化合物を含む溶液状またはスラリー状の組成物を調製し、これを所望の部位に塗布することによって、塗膜を形成する手法が用いられうる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例を用いて本発明の実施の形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには制限されない。
【0045】
<実施例>
まず、ボラジン化合物合成用反応容器として、ハステロイC製の反応容器を準備した。準備した反応容器の耐圧圧力を測定したところ、1.0MPaであった。この際、反応容器の耐圧圧力の測定は、当該反応容器にリークバルブを設置し、23℃にて当該反応容器中に窒素ガスを充填して、当該反応容器からリークバルブを介して窒素ガスがリークを開始する際の充填圧力を圧力計を用いて測定し、測定値から雰囲気圧力を減じることにより算出した。
【0046】
上記で準備した反応容器に冷却管を設置し、窒素置換しながら、脱水処理したアミン塩であるメチルアミン塩酸塩(33.5g)、および溶媒であるトリグライム(98.6g)を仕込み、反応系を100℃まで昇温した。
【0047】
一方、水素化ホウ素アルカリである水素化ホウ素ナトリウム(21.0g)を準備し、これを別途準備したトリグライム(88.7g)中に添加して、スラリーを調製した。
【0048】
上記で調製した水素化ホウ素ナトリウムのスラリーを、上記で100℃に昇温した反応容器に1時間かけてゆっくりと添加した。
【0049】
スラリー添加終了後、反応系を200℃まで2時間かけて昇温し、さらに200℃にて2時間熟成して、N,N’,N”−トリメチルボラジンを合成した。
【0050】
なお、上記合成中、反応容器に北側式検知管を設置することにより合成中の反応容器からのN,N’,N”−トリメチルボラジンの漏れの有無をモニターしたが、合成中のボラジン化合物の漏れは検知されなかった。
【0051】
<比較例>
まず、ボラジン化合物合成用反応容器として、ハステロイC製の反応容器を準備した。準備した反応容器の耐圧圧力を上記の実施例と同様の手法により測定したところ、0.05MPaであった。
【0052】
その後、上記の実施例と同様の手法によりN,N’,N”−トリメチルボラジンを合成した。しかしながら、反応系を100℃に昇温した時点で、北側式検知管により反応容器からのN,N’,N”−トリメチルボラジンの漏れが検知されたため、反応容器を冷却させることにより反応を中止させた。なお、100℃の時点で反応を中止させたのは、100℃にてボラジン化合物が反応容器から漏れることにより容器外へ流出する場合、反応および熟成の一般的な条件である200℃程度の温度条件下では当然に容器外へボラジン化合物が流出し、発火することが予想されるためである。
【0053】
従って、以上の実施例および比較例に示す結果から、所定の値以上の耐圧圧力を有する反応容器中でボラジン化合物を合成することで、合成中のボラジン化合物の発火が防止され、極めて安全にボラジン化合物が合成されうることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1MPa以上の耐圧圧力を有する反応容器中でボラジン化合物を合成する段階を有する、ボラジン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ボラジン化合物がN−アルキルボラジンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
0.1MPa以上の耐圧圧力を有する、ボラジン化合物合成用反応容器。
【請求項4】
容器を構成する材料がハステロイ類である、請求項3に記載のボラジン化合物保存用容器。

【公開番号】特開2007−137865(P2007−137865A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337685(P2005−337685)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】