説明

ボルト接合構造

【課題】部材のボルト通孔にボルトを容易に通すことができ、締付けトルクの管理が不要で、しかも、複数の部材を、滑りを生じないしっかりとした一体化状態にすることができるボルト接合構造を提供する。
【解決手段】ボルト軸4aと部材1,2のボルト通孔1a,2aを囲む周囲面との間に筒状の詰め物3が配置され、詰め物3は、ボルト頭部4bとナット5によってボルト軸線方向に潰れ変形をしてボルト軸線方向と直交する内外方向に張り出し、各部材1,2のボルト通孔1a,2aを囲む周囲面とボルト軸4aとの間隔を一定に保つスペーサーを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のプレート51,52を、図3(ハ)に示すような滑りを生じないしっかりとした一体化状態にするボルト接合方法として、図3(イ)(ロ)に示すように、それらに設けられたボルト通孔53,54にボルト55を通し、ナット56を螺合させ、締め付けることによって、2枚のプレート51,52を高力ボルト接合で面摩擦接合状態にすることは、従来より知られている。
【特許文献1】特開2004−92282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ナット56の締付けによる高力ボルト接合では、締付けトルクの管理が厳しく要求されるため、資格者の少ないあるいはいない環境では、採用が難しいという問題がある。
【0004】
また、各プレート51,52に設けるボルト通孔53,54の直径サイズを小さくしてボルト軸55aとの間の隙間をなくすことも考えられるが、それでは、ボルト通孔53,54にボルト55を通すのが非常に厄介なものになると共に、そのようにすることの限界もある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、部材のボルト通孔にボルトを容易に通すことができると共に、高力ボルト接合のような締付けトルクの管理が不要であり、しかも、複数の部材を、滑りを生じないしっかりとした一体化状態にすることができるボルト接合構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、接合する複数の各部材に設けられた貫通のボルト通孔にボルトが通され、ボルト軸にナットが螺合されて締めつけられたボルト接合構造において、
前記ボルト軸と各部材のボルト通孔を囲む周囲面との間に筒状の詰め物が配置され、該詰め物は、ボルト頭部とナットによってボルト軸線方向に潰れ変形をしてボルト軸線方向と直交する内外方向に張り出し、各部材のボルト通孔を囲む周囲面とボルト軸との間隔を一定に保つスペーサーを形成していることを特徴とするボルト接合構造によって解決される(第1発明)。
【0007】
このボルト接合構造では、筒状の詰め物が、ボルト頭部とナットによってボルト軸線方向に潰れ変形をしてボルト軸線方向と直交する内外方向に張り出し、各部材のボルト通孔を囲む周囲面とボルト軸との間隔を一定に保つスペーサーを形成しているので、該詰め物によって、複数の部材を、滑りを生じないしっかりとした一体化状態にすることができる。
【0008】
しかも、このように筒状の詰め物によって複数の部材を一体化する構造であるので、各部材のボルト通孔のサイズはボルト軸より充分に大きくすることができて、ボルトをボルト通孔に容易に通すことができると共に、高力ボルト接合のような締付けトルクの管理も不要である。
【0009】
また、上記の課題は、接合する複数の各部材に設けられた貫通のボルト通孔にボルトが通され、ボルト軸にナットが螺合されて締めつけられたボルト接合構造において、
前記各部材は、ボルト通孔を囲む周縁部が立ち上げられて先細錘状部に形成されたプレート部を備え、各先細錘状部は、ボルト頭部とナットによってボルト軸線方向に潰れ変形をしてボルト軸線方向と直交する内方向に張り出し、その先端周囲部がボルト軸の周囲部に当接していることを特徴とするボルト接合構造によって解決される(第2発明)。
【0010】
このボルト接合構造では、各部材のボルト通孔における先細錘状部が、ボルト頭部とナットによってボルト軸線方向に潰れ変形をしてボルト軸線方向と直交する内方向に張り出し、その先端周囲部がボルト軸の周囲部に当接しているので、該先細錐状部によって、複数の部材を、滑りを生じないしっかりとした一体化状態にすることができる。
【0011】
しかも、このように先細錘状部によって複数の部材を一体化する構造であるので、各部材のボルト通孔のサイズはボルト軸より充分に大きくすることができて、ボルトをボルト通孔に容易に通すことができると共に、高力ボルト接合のような締付けトルクの管理も不要である。
【0012】
第2発明において、プレート部が2つであり、両プレート部は、先細錘状部を反対方向に向けるように配置されると共に、ボルト頭部側とナット側の双方にワッシャーが備えられ、各ワッシャーは、皿ワッシャーからなって、その凹側をプレートの先細錘状部の側に向けるようにして備えられ、先細錘状部の先端周囲部をボルト軸の周囲部に当接させる誘導を行うようになされているとよい(第3発明)。
【0013】
この場合は、皿ワッシャーの誘導作用によって、各先細錘状部をボルト軸線方向にきれいに潰れ変形させ、その先端周囲部をボルト軸の周囲部にきれいに当接させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のボルト接合構造は、以上のとおりのものであるから、部材のボルト通孔にボルトを容易に通すことができると共に、高力ボルト接合のような締付けトルクの管理が不要であり、しかも、複数の部材を、滑りを生じないしっかりとした一体化状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に示す第1実施形態のボルト接合構造は、2枚のプレート1,2を、筒状の詰め物3を用いて、ボルト4とナット5で接合したものである。図1(ロ)(ハ)に示すように、各プレート1,2には、ボルト4の軸部4aを容易に通すことができるサイズのボルト通孔1a,2aが設けられており、詰め物3は、例えば金属製などの円筒材からなって、その内周サイズはボルト軸4aの外周サイズよりも大きく、外周サイズはボルト通孔1a,2aのサイズよりも小さく、長さ寸法は両プレート1,2の合計厚さ寸法よりも大きく設定されている。
【0017】
接合は、図1(ハ)に示すように、筒状詰め物3をプレート1,2の各ボルト通孔1a,2aにわたすように挿入すると共に、筒状詰め物3内にボルト4の軸部4aを通し、ボルト軸4aの先端部にナット5を螺合し、図1(ニ)に示すように、締め付けていき、ボルト頭部4bとナット5によって筒状詰め物3にボルト軸線方向の潰れ変形をさせていけばよい。すると、筒状詰め物3の周壁部は、ボルト軸線方向と直交する内外方向に波状をなして張り出していき、筒状詰め物3は、各プレート1,2のボルト通孔1a,2aを囲む周囲面とボルト軸4aとの間隔を一定に保つスペーサーとなる。なお、6はワッシャーである。
【0018】
上記のボルト接合構造では、筒状詰め物3が、ボルト頭部4bとナット5によってボルト軸線方向に潰れ変形をしてボルト軸線方向と直交する内外方向に張り出し、各プレート1,2のボルト通孔1a,2aを囲む周囲面とボルト軸4aとの間隔を一定に保つスペーサーに形成されているので、該詰め物3によって、図1(イ)に示すように、2枚のプレート1,2を、滑りを生じないしっかりとした一体化状態にすることができる。
【0019】
しかも、このように筒状詰め物3によって2枚のプレート1,2を一体化する構造であるので、各プレート1,2のボルト通孔1a,2aのサイズはボルト軸4aより充分に大きくすることができて、ボルト4をボルト通孔1a,2aに容易に通すことができると共に、高力ボルト接合のような締付けトルクの管理も不要である。
【0020】
図2に示す第2実施形態のボルト接合構造も、同じく、2枚のプレート1,2をボルト4とナット5で接合したものであるが、本実施形態では、筒状詰め物は省略され、図2(ロ)に示すように、各プレート1,2のボルト通孔1a,2aを囲む周縁部1b,2bが、パンチング加工などによって立ち上げられた先細錘状部に形成されている。そして、両プレート1,2は、先細錘状部1b,2bを反対方向に向けるように配置されると共に、ボルト頭部4b側とナット5側の双方にワッシャー7,7が備えられ、各ワッシャー7は皿ワッシャーからなって、その凹側をプレートの先細錘状部の側に向けるようにして備えられている。
【0021】
接合は、図2(ハ)に示すように、ボルト4を一方の皿ワッシャー7を介してプレート1,2のボルト通孔1a,2aに通し、ボルト軸4aの先端にもう一方の皿ワッシャー7を介してナット5を螺合し、図2(ニ)に示すように、締め付けていき、ボルト頭部4bとナット5によって各プレート1,2の先細錘状部1b,2bを、ボルト軸線方向に潰れ変形させていけばよい。すると、先細錘状部1b,2bは、ボルト軸線方向と直交する内方向に張り出し、その先端周囲部がボルト軸4aの周囲部に当接した状態となって接合状態が形成される。
【0022】
このボルト接合構造では、各プレート1,2のボルト通孔1a,2aにおける先細錘状部1b,2bが、ボルト頭部4bとナット5によってボルト軸線方向に潰れ変形をしてボルト軸線方向と直交する内方向に張り出し、その先端周囲部がボルト軸4aの周囲部に当接しているので、該先細錐状部1b,2bによって、プレート1,2を、滑りを生じないしっかりとした一体化状態にすることができる。
【0023】
しかも、このように先細錘状部1b,2bによってプレート1,2を一体化する構造であるので、各プレート1,2のボルト通孔1a,2aのサイズはボルト軸4aより充分に大きくすることができて、ボルト4をボルト通孔1a,2aに容易に通すことができると共に、高力ボルト接合のような締付けトルクの管理も不要である。
【0024】
また、本実施形態では、皿ワッシャー7,7が用いられているので、その誘導作用で、各先細錘状部1b,2bをボルト軸線方向にきれいに潰れ変形させ、その先端周囲部をボルト軸4aの周囲部にきれいに当接させることができる。
【0025】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、2枚のプレートをボルト接合する場合を示したが、3枚以上のプレートをボルト接合する場合に用いることも可能である。また、プレートに限らず各種部材のボルト接合構造に用いることも可能である。更に、ボルトは、ネジ棒にナットを螺合したものからなっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態のボルト接合構造を示すもので、図(イ)は接合状態の一部断面正面図、図(ロ)は一部断面分解正面図、図(ハ)及び図(ニ)は接合方法を順次に示す一部断面正面図である。
【図2】第2実施形態のボルト接合構造を示すもので、図(イ)は接合状態の一部断面正面図、図(ロ)は一部断面分解正面図、図(ハ)及び図(ニ)は接合方法を順次に示す一部断面正面図である。
【図3】背景技術のボルト接合構造を示すもので、図(イ)は一部断面正面図、図(ロ)は同一部断面分解正面図、図(ハ)は滑りを生じた状態の一部断面正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1,2…プレート(部材)
1a,2a…ボルト通孔
1b,2b…先細錘状部
3…筒状詰め物
4…ボルト
4a…ボルト軸
4b…ボルト頭部
5…ナット
7…皿ワッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合する複数の各部材に設けられた貫通のボルト通孔にボルトが通され、ボルト軸にナットが螺合されて締めつけられたボルト接合構造において、
前記ボルト軸と各部材のボルト通孔を囲む周囲面との間に筒状の詰め物が配置され、該詰め物は、ボルト頭部とナットによってボルト軸線方向に潰れ変形をしてボルト軸線方向と直交する内外方向に張り出し、各部材のボルト通孔を囲む周囲面とボルト軸との間隔を一定に保つスペーサーを形成していることを特徴とするボルト接合構造。
【請求項2】
接合する複数の各部材に設けられた貫通のボルト通孔にボルトが通され、ボルト軸にナットが螺合されて締めつけられたボルト接合構造において、
前記各部材は、ボルト通孔を囲む周縁部が立ち上げられて先細錘状部に形成されたプレート部を備え、各先細錘状部は、ボルト頭部とナットによってボルト軸線方向に潰れ変形をしてボルト軸線方向と直交する内方向に張り出し、その先端周囲部がボルト軸の周囲部に当接していることを特徴とするボルト接合構造。
【請求項3】
プレート部が2つであり、両プレート部は、先細錘状部を反対方向に向けるように配置されると共に、ボルト頭部側とナット側の双方にワッシャーが備えられ、各ワッシャーは、皿ワッシャーからなって、その凹側をプレートの先細錘状部の側に向けるようにして備えられ、先細錘状部の先端周囲部をボルト軸の周囲部に当接させる誘導を行うようになされている請求項2に記載のボルト接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−281082(P2008−281082A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124815(P2007−124815)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】