説明

ボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管

【課題】単純な構造で、地上障害物に影響されることなく効率的に削孔することができるボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管を提供する。
【解決手段】ボーリング削孔装置1の削孔管10の先端位置を検出する先端位置検出システムにおいて、削孔管10内に、この削孔管10の先端位置を検出する位置測定装置30を設けるとともに、この位置測定装置30で測定した位置データを無線信号に変換する無線信号発生装置50を設け、削孔管10の胴部12の一部に導線72を巻きつけてコイル70を形成し、このコイル70によって無線信号発生装置50で変換された無線信号を送信するように構成し、地上に、無線信号を受信するための受信装置90を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング削孔装置の削孔管の先端位置を検出しながら削孔する先端位置検出システムおよび削孔管に関する。
【背景技術】
【0002】
斜めボーリングや水平ボーリングでは、ロッド先端に均一に荷重がかからない場合が多いため、高精度な削孔を行うためには、先端の位置を常時計測する技術が必要となる。
【0003】
ボーリングの先端の位置を検出するシステムとしては、従来、(1)間欠的に測定器をボーリングロッド(削孔管)内に挿入して測定するものと、(2)削孔管のヘッド部分に測定器を設置するものの2つのタイプがあった。
【0004】
(1)の削孔管のタイプには、ボーリングロッド内に傾斜計と方位計からなる測定器を挿入するものと、ジャイロセンサーからなる測定器を挿入するものとがある。これらの測定器は、削孔した孔を通して、地上のボーリングマシン側から削孔管の内部に挿入されるようになっている。
【0005】
(2)の削孔管のタイプには、マッドパルス方式(削孔管内の掘削流体の圧力変動を利用)と、ハードワイヤ方式(電線)と、電磁場(EM(Electro−Magnetic))方式とがある。
【0006】
マッドパルス方式は、ロッド先端に設置した計測器の測定信号を掘削用泥水の圧力変化に変換して伝送し、その圧力変化をロッド上部の圧力センサで測定する方式である。この方式によれば、掘削孔内の泥水を伝送媒体としているので、大深度までの測定が可能である。
【0007】
一方、ハードワイヤ方式は、ロッド先端に設置した計測器の測定信号を、削孔管内に配設した電線を使用して地上側へ送信する方式である。この方式によれば、計測器に必要な電力を、電線を通して地上より送ることができ、管内電源が不要である上に、電送速度が非常に速いという利点がある。
【0008】
電磁場方式は、ロッド先端の内部に電磁コイルを設置して電磁場を発生させ、地上において電磁場の強度を測定して、ロッド先端の位置を測定する方式である。この方式では、管内の発信アンテナと地上の受信アンテナとの間で情報の伝送ができるため、計測内容が単純で作業性が高いといった利点がある。
【0009】
その他には、特許文献1に示すようなものもあった。このボーリング削孔装置は、ボーリングヘッド内に、その位置や傾き等を計測する測定装置と、この測定装置で計測された計測データを送信する送信器とを備えており、ボーリングヘッドの上方の地上に受信器を設けて、この受信器で位置情報を受信するようになっていた。
【特許文献1】特開平10−30392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記した(1)の間欠的に測定器をボーリングロッド(削孔管)内に挿入して測定するものでは、削孔作業を止めて測定器を挿入する必要があるので、施工時間全体が長くなってしまうという問題があった。さらに、データ処理の際に、削孔担当者に結果をフィードバックするのに時間を要するといった問題もあった。
【0011】
また、(2)の削孔管のマッドパルス方式では。圧力変換装置等が必要であり、現状の技術では装置が非常に大きくなるとともに、コストがかかるといった問題があった。
【0012】
さらに、ハードワイヤ方式では、削孔管内にケーブルを接続することで作業性が悪くなるといった問題と、削孔管の回転に対するケーブルの供回りを常に防ぐようにする配慮が必要であり構造が複雑となるといった問題があった。
【0013】
また、電磁場方式では、ロッド先端で発生した電磁場の強度を、地上において測定しているが、電磁場の伝送距離が数メートルと短いので、地上の受信アンテナはロッドの直上に配置する必要があるため、地上に建物等の障害物がある場合には、測定することができないといった問題があった。
【0014】
さらに、特許文献1に記載のボーリング削孔装置においても、ボーリングヘッド内に設けられた送信器は信号の送信距離が数メートルと短いので、電磁場方式と同様に、地上の受信器はボーリングヘッドの直上に配置する必要があるため、地上に障害物がある場合には測定することができないといった問題があった。
【0015】
そこで、本発明は前記の問題を解決すべく案出されたものであって、単純な構造で、地上障害物に影響されることなく削孔管の先端位置を検出することができるボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、ボーリング削孔装置の削孔管の先端位置を検出する先端位置検出システムにおいて、前記削孔管内に、この削孔管の先端位置を検出する位置測定装置を設けるとともに、この位置測定装置で測定した位置データを無線信号に変換する無線信号発生装置を設け、前記削孔管の胴部の一部に導線を巻きつけてコイルを形成し、このコイルによって前記無線信号発生装置で変換された無線信号を送信するように構成し、地上に、前記無線信号を受信するための受信装置を設けたことを特徴とするボーリング削孔装置の先端位置検出システムである。
【0017】
このような構成によれば、コイルの導線の巻き数および巻き径を大きくすることができ、無線信号発生装置で変換された無線信号の送信距離を大幅に伸ばすことができる。したがって、ボーリング削孔装置の先端部分が建築物等の障害物の下方を削孔中であってもその位置(削孔管の先端位置)を検出することができる。これによって、削孔管の先端位置に基づいてボーリング削孔装置の作動を制御することができ、精度の高い削孔を行うことができる。さらに、ハードワイヤ方式のように、削孔管内にケーブルを接続する必要がないので作業性が悪くなることもなく、ケーブルの供回りを防ぐ機構を設ける必要がなく構造の複雑化を防止できる。また、従来のマッドパルス方式のように、圧力変換装置を設ける必要がないので、ボーリング削孔装置の巨大化およびコストアップを防止することができる。さらに、かかるボーリング削孔装置では、削孔作業を止めることなく先端位置を検出できる。また、受信装置をボーリング削孔装置の作動を制御する制御装置に接続すれば、先端部分の位置に応じて即座にボーリング削孔装置の作動を制御することができ、データ処理の際に、削孔担当者に結果をフィードバックするのに時間を要することはない。したがって、施工時間全体を短縮でき、効率的な削孔を行うことができる。
【0018】
請求項2に係る発明は、前記導線が、前記削孔管の胴部の一部に設けられた筒状部材に巻きつけられたことを特徴とする請求項1に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システムである。
【0019】
このような構成によれば、削孔管とは別体の筒状部材に導線を巻きつけるので、筒状部材をコイルと同等の長さにすれば、導線の巻きつけ作業が行いやすく、また、コイル部分の運搬も容易に行うことができる。
【0020】
請求項3に係る発明は、前記位置測定装置および前記無線信号発生装置が、前記削孔管と分離可能な容器内に収容されており、回収可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システムである。
【0021】
このような構成によれば、削孔が終了した後に、容易に位置測定装置と無線信号発生装置を回収することができ、これら装置の再利用を図ることができ、コストダウンを達成することができる。また、内部が空洞になった削孔管のみを地中に敷設することは、地盤改良を行う上で有用になる。
【0022】
請求項4に係る発明は、前記容器が、耐圧容器にて構成されていることを特徴とする請求項3に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システムである。
【0023】
このような構成によれば、削孔管が過度に屈曲した場合でも、容器が変形することはないので、位置測定装置および無線信号発生装置が損傷するのを防止することができる。
【0024】
請求項5に係る発明は、前記位置測定装置が、衝撃吸収材を介して前記削孔管に固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システムである。
【0025】
このような構成によれば、位置測定装置は、削孔時の振動に影響を受けることなく位置を検出することができ、精度の高い位置検出および削孔を行うことができる。
【0026】
請求項6に係る発明は、前記位置測定装置が、前記削孔管に対して相対回転可能な軸部材に固定されており、前記軸部材には、前記位置測定装置の鉛直方向を一定に保持するためのおもり部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システムである。
【0027】
このような構成によれば、位置測定装置の鉛直方向が一定に保持されるので、容易に傾斜角や回転角を正確に検出することができ、精度の高い位置検出および削孔を行うことができる。
【0028】
請求項7に係る発明は、ボーリング削孔装置のボーリングマシンによって削孔内に押し込まれる円筒状の胴部を有する削孔管であって、前記胴部の一部に設けた筒状部材に導線を巻きつけて無線信号送信用のコイルを形成したことを特徴とするボーリング削孔装置の削孔管である。
【0029】
このような構成の削孔管によれば、導線の巻き数および巻き径が大きいコイルを形成できるので、無線信号の送信距離を大幅に伸ばすことができる。したがって、ボーリング削孔装置の先端部分が建築物等の障害物の下方を削孔中であってもその位置(削孔管の先端位置)を検出することができ、精度の高い削孔を行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ボーリング削孔装置を単純な構造とすることができ、地上障害物に影響されることなく削孔管の先端位置を検出することができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図1は本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管を実施するための最良の実施の形態を示した全体断面図、図2は本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管を実施するための最良の実施の形態を示した断面図、図3は本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管のコイルを示した一部破断側面図、図4は本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管の無線信号発生装置とコイルの接続状態を示した断面図、図5は回収用ノブと回収用治具を示した断面図である。
【0033】
まず、本実施の形態に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管の構成を説明する。
【0034】
図1に示すように、斜めボーリングや水平ボーリングを行うボーリング削孔装置1は、削孔管10を、地上に設置されたボーリングマシン2で後方から押し込んで地中に推進させていく装置である。削孔管10の先端には削孔ヘッド11が設けられている。削孔ヘッド11の先端部はテーパ状に傾斜して形成されており、直線削孔時には、削孔管10および削孔ヘッド11を回転させながら削孔し、曲線削孔時には、削孔管10および削孔ヘッド11を非回転の状態で圧入することで削孔ヘッド11の傾斜部分に作用する土圧で曲線推進するようになっている。削孔管10の内部には、削孔管10の先端位置(削孔ヘッド11の位置)を検出する位置測定装置30が設けられている。また、削孔管10の内部には、位置測定装置30で測定した位置データを無線信号に変換する無線信号発生装置50が、位置測定装置30と電気的に接続されて設けられている。なお、位置測定装置30と無線信号発生装置50は、図2に示すように、後記する容器(耐圧容器15)内に収容されている。
【0035】
図2に示すように、削孔管10の胴部12の一部には、無線信号発生装置50で変換された無線信号を地上へ送信するためのコイル70が形成されている。コイル70は、削孔管10の胴部12の一部に設けた筒状部材71に巻きつけられた導線72からなる。なお、本実施の形態では、筒状部材71に導線72を巻きつけるように構成されているが、削孔管の胴部に導線を直接巻きつけてもよい。地上には、コイル70から発信された無線信号を受信するための受信装置90が設けられている。
【0036】
位置測定装置30は、傾斜角計と方位角計(ともに図示せず)を備えており、削孔ヘッド11の傾斜角度と方位角度とをリアルタイムで計測することが可能となっている。傾斜角計と方位角計は、ともに無線信号発生装置50の処理手段(電子基盤51)に電気的に接続されている。傾斜角計と方位角計とはともにハウジング31内に収容されて一体化されている。
【0037】
傾斜角計と方位角計を収容するハウジング31は、無線信号発生装置50とともに、削孔管10と分離可能な容器内に収容されており、削孔完了後に回収可能となるように構成されている。削孔管10と分離可能な容器は、耐圧容器15にて構成されている。耐圧容器15は、削孔管10の内周面と所定の間隔をあけて配置される円筒状に形成されており、削孔管10内で削孔管10と同芯に配置されている。耐圧容器15の前部には、削孔方向前方に延出する前方軸部材13が設けられ、耐圧容器15の後部には、削孔方向後方に延出する後方軸部材14が設けられている。前方軸部材13と後方軸部材14は板ばね式の固定部材(セントライザー)16で削孔管10内部の軸芯部に固定されており、耐圧容器15が常時削孔管10の軸芯部に位置するように構成されている。具体的には、固定部材16は、前方軸部材13と後方軸部材14に固定されており、ばね部材が径方向外側に付勢することで、削孔管10の内周面に押圧されている。これによって、固定部材16は、耐圧容器15を削孔管10に回転不可能に固定するようになっており、耐圧容器15が削孔管10とともに回転するように構成されている。さらに、固定部材16は、削孔管10の内周面に所定の付勢力(水圧による付勢力)で押圧することで、耐圧容器15を削孔管10に固定するように構成されており、削孔終了後に耐圧容器15を削孔管10から引き抜く際には、水圧を除圧して、さらに削孔管10と固定部材16との各接点の摩擦抵抗に打ち勝つ力で耐圧容器15を牽引することで、耐圧容器15が、削孔管10の内周面に沿って回収されるようになっている。また、前方軸部材13の前部には、削孔ヘッド11が一体的に固定されている。
【0038】
ハウジング31は、耐圧容器15の内部に回転可能に支持されている。具体的には、ハウジング31の前部には、削孔方向前方に延出する前方軸部材32が設けられており、ハウジング31の後部には、削孔方向後方に延出する後方軸部材33が設けられている。そして、前方軸部材32および後方軸部材33は、それぞれ軸受34,34を介して回転可能に軸支されている。すなわち、位置測定装置30は、削孔管10に対して相対回転可能な軸部材(前方軸部材32および後方軸部材33)に固定されていることとなる。
【0039】
前方軸部材32の外周面の周方向の一部には、おもり部材35が設けられており、削孔管10が回転する場合でも、おもり部材35が取り付けられた部分が常に下側になるように前方軸部材32が軸受34に対して相対的に回転するようになっている。これによって、位置測定装置30の鉛直方向は一定に保持されることとなる。すなわち、おもり部材35は、位置測定装置30の回転防止機能を有することとなる。
【0040】
なお、本実施の形態では、後方軸部材33の外周面の周方向の一部にも、おもり部材35が設けられている。後方軸部材33に設けられるおもり部材35も、前方軸部材32に設けられるおもり部材35と同じ周方向位置に取り付けられている。これによって、位置測定装置30の回転防止機能が高められる。
【0041】
ハウジング31の前部の前方軸部材32の取付け部分には、衝撃吸収材であるショックアブソーバー36が設けられている。すなわち、ハウジング31の前部には、ショックアブソーバー36を介して前方軸部材32が取り付けられていることとなる。また、ハウジング31の後部の後方軸部材33の取付け部分にも、衝撃吸収材であるショックアブソーバー36が設けられている。すなわち、ハウジング31の後部には、ショックアブソーバー36を介して後方軸部材33が取り付けられていることとなる。ショックアブソーバー36は、ゴム等の弾性部材で形成された板材を積層して形成されてなる積層ゴムにて構成おり、削孔管10の軸方向に板材が積層されるように配置されている。
【0042】
後方軸部材33の後方には、回転する物体に電力や信号を伝達するためのスリップリング37が設けられている。スリップリング37の後方には、位置測定装置30の構成部品の一部であり、回転角を検出するセンサであるポテンショメータ38が設けられている。ポテンショメータ38は耐圧容器15の内部に耐圧容器15とともに回転するように固定されており、また、耐圧容器15と削孔管10とはともに回転する。したがって、ポテンショメータ38は、削孔管10の回転角度を計測する回転角計となる。
【0043】
ポテンショメータ38の後部には、無線信号発生装置50を構成する電子基盤51とバッテリ52が設けられている。バッテリ52は、電子基盤51に接続されている。電子基盤51は、位置測定装置30の一部となるポテンショメータ38と電気的に接続されているとともに、スリップリング37を介してハウジング31内の位置測定装置30である傾斜角計と方位角計と電気的に接続されている。電子基盤51は、位置測定装置30で測定した位置データを無線信号に変換してコイル70に送信するように構成されており、位置データを常時送信可能となっている。また、電子基盤51は、記憶部(図示せず)を備えており、位置測定装置30で測定した位置データを保存可能で且つ常時読み出し可能に構成されている。電子基盤51には、コイル70に接続される接続端子53に延びる配線54が設けられている。
【0044】
コイル70は、無線信号発生装置50で変換された無線信号を地上の受信装置90(図1参照)に送信するためのものであって、図2および図3に示すように、削孔管10の一部として構成されている。コイル70は、削孔管10の胴部12の一部に設けた筒状部材71に巻きつけられた導線72にて構成されている。筒状部材71は、削孔管10,10同士の連結部分に設けられており、削孔管10の胴部12の一部を構成するようになっている。筒状部材71は、削孔管10と略同等の径を有し、コイル70に必要な軸方向長さを有する円筒状に形成されている。筒状部材71の外周面には、所定深さの断面矩形状の凹部73が円周方向に沿って円環状に形成されており、信号を送信するアンテナのケーシングを構成している。この筒状部材71の凹部73には、導線72が巻きつけられている。巻きつけられた導線72の表面には、保護コーティング層74が形成されている。保護コーティング層74は、例えば硬質エポキシにて導線72全体を被覆するように形成されており、削孔表面地盤との摩擦に対する耐久性を備えている。保護コーティング層74の表面は、筒状部材71の凹部73の軸方向両側の鍔状部分77(図3参照(筒状部材71の最大径部))の表面と面一になるように構成されている。すなわち、保護コーティング層74の削孔方向前後(軸方向両側)には鍔上部分77が形成されることになる。これによって、削孔時には、削孔方向(削孔管10の軸方向)に見て、鍔上部分77が削孔の表面土砂を押し退けることとなり、保護コーティング層74の磨耗を低減することができる。このように、削孔管10とは別体で、削孔管10よりも短い筒状部材71に導線72を巻きつけることによって、導線72の巻きつけ作業が行いやすく、また、コイル70部分の運搬および搬入も容易に行うことができる。
【0045】
図4に示すように、筒状部材71の内周面の後端部には、耐圧容器15に設けられた接続端子53が装着されるキー溝75が形成されている。キー溝75は、断面矩形状に形成されており、内側および後方に開口するように形成されている。キー溝75には、接続端子が後方から着脱自在に挿入される。キー溝75の接続部には、凹部73の導線72に延びる配線76が接続されている。
【0046】
図5に示すように、耐圧容器15の後方の後方軸部材14の後端には、削孔作業を終了した後の回収時に回収治具20が係止される回収用ノブ17が形成されている。回収用ノブ17は、後方に向かうに連れて縮径する三角錐状に形成されており、三角錐の底面部分を回収治具20で係止することで、耐圧容器15を後方に牽引できるようになっている。
【0047】
図1に示すように、受信装置90は、ボーリングマシン2の近傍に配置されており、ボーリングマシン2の作動を制御する制御装置91に接続されている。制御装置91は、受信装置90で受信された削孔ヘッド11の位置データ(傾斜角、方位角、回転角)に基づいて、削孔管10の推進速度や回転角度を調整するようになっている。
【0048】
次に、前記構成のボーリング削孔装置1の先端位置検出システムおよび削孔管10の削孔作業工程およびその作用を説明する。
【0049】
かかるボーリング削孔装置1を用いて削孔を行うに際しては、削孔ヘッド11を先端に備えた削孔管10をボーリングマシン2にセットし、削孔管10を後方から地中に押し込むことで削孔ヘッド11が地盤土砂を押し退けて、削孔管10が推進していく。
【0050】
このとき、位置測定装置30(傾斜角計、方位角計および回転角計(ポテンショメータ38))は、削孔管10先端の削孔ヘッド11の傾斜角、方位角、回転角をそれぞれ計測する。ここで、傾斜角計と方位角計は、軸受34で回転可能に支持されるとともにおもり部材35で鉛直方向が一定に保持されたハウジング31内に収容されているので、削孔管10の回転に影響されることなく、傾斜角および方位角を正確に計測することができる。また、ポテンショメータ38は、削孔管10とともに回転する耐圧容器15に固定されているので、削孔管10の回転角を正確に計測することができる。
【0051】
さらに、削孔管10の推進時には、コイル70が削孔内を移動することになるが、導線72の周囲には保護コーティング層74が形成されているので、導線72が損傷することはない。さらに、保護コーティング層74の削孔方向前後には、筒状部材71の鍔状部分77が位置しているので、削孔時には、削孔方向に見て、鍔上部分77が削孔の表面土砂を押し退ける堰の役目を果たすこととなり、保護コーティング層74の磨耗を低減することができる。
【0052】
また、傾斜角計と方位角計を収容するハウジング31は、ショックアブソーバー36を介して削孔管10に固定されているので、削孔時の振動はショックアブソーバー36で吸収され傾斜角計と方位角計に伝わることはない。したがって、傾斜角計と方位角計は、掘削時の振動の影響を受けることなく位置を正確に検出することができ、精度の高い位置検出ができる。
【0053】
さらに、ハウジング31がスリップリング37を介して無線信号発生装置50に接続されているので、計測された傾斜角と方位角の位置データは、削孔管10とともに回転する無線信号発生装置50と、傾斜角計および方位角計を収容するハウジング31とが相対回転している場合であっても、配線(図示せず)等が捻れることなく位置データを電子基盤51に伝達することができる。計測された回転角の位置データは、ポテンショメータ38と無線信号発生装置50がともに回転するので、通常の配線(図示せず)によって電子基盤51に直接伝達される。
【0054】
電子基盤51に伝達された位置データは、無線信号に変換されて、配線54および接続端子53を介してコイル70にリアルタイムで送信される。電子基盤51は、位置測定装置30で測定した位置データを保存可能で且つ常時読み出し可能に構成されているので、後にプリントアウトすることができ書類作成等に便利である。
【0055】
ここで、コイル70は、削孔管10の胴部12と略同径の筒状部材71に導線72を巻き付けて形成されているので、従来のように削孔管の内部に設けられていたコイルと比較して、導線72の巻き数および巻き径を大きくすることができ、無線信号発生装置50で変換された無線信号の送信距離を大幅に伸ばすことができる。これによって、ボーリング削孔装置1の先端部分が建築物等の障害物の下方を削孔中であっても、ボーリングマシン2の近傍の受信装置90で位置データの無線信号を受信することができる。そして、受信装置90で受信された位置データの無線信号は、制御装置91に伝達される。このようなコイル70を用いれば、検出された削孔管10の先端部の位置をボーリングマシン2の作動を制御する制御装置91に常時伝達することができる。したがって、制御装置91は、リアルタイムで正確な位置データ(傾斜角、方位角、回転角)に基づいて、削孔管10の推進速度や回転角度を調整して、ボーリングマシン2の作動を制御することができ、精度の高い削孔が行われる。
【0056】
さらに、耐圧容器15内にバッテリ52を設けているので、従来のハードワイヤ方式のように、削孔管内に給電やデータ伝達用のケーブルを接続する必要がないので削孔の作業性が悪くなることはない。また、ケーブルの供回りを防ぐ機構を設ける必要はないので、構造の複雑化を防止できる。さらに、従来のマッドパルス方式のように、圧力変換装置を設ける必要がないので、ボーリング削孔装置の巨大化およびコストアップを防止することができる。
【0057】
そして、かかるボーリング削孔装置1では、削孔作業を止めることなく削孔管10の先端位置を検出できる。また、受信装置90を制御装置91に直接接続しているので、削孔管10の先端部分の位置に応じて即座にボーリング削孔装置の作動を制御することができ、従来のようにデータ処理の際に削孔担当者に結果をフィードバックするのに時間を要することはない。したがって、施工時間全体を大幅に短縮でき、効率的な削孔を行うことができる。
【0058】
削孔作業が終了した後は、削孔管10の後方から回収治具20を備えた回収装置(図示せず)を挿入して、回収治具20を後方軸部材14後端の回収用ノブ17に係止させて耐圧容器15に接続する。そして、耐圧容器15を、回収装置でボーリングマシン2側に牽引して、位置測定装置30および無線信号発生装置50を耐圧容器15ごと回収する。このとき、耐圧容器15を削孔管10に固定している固定部材16は、例えば水圧などによる所定の付勢力で削孔管10の内周面に押圧されて弾性的に固定されているが、水圧を除圧して、さらに削孔管10と固定部材16との各接点の摩擦抵抗に打ち勝つ牽引力で耐圧容器15を牽引することで、固定部材16が削孔管10の内周面を摺動して、耐圧容器15が削孔管10から引き抜かれて回収される。また、耐圧容器15から突出している接続端子53は、キー溝75の後端の開口部分から後方に抜き去られる。なお、耐圧容器15の先端には削孔ヘッド11が固定されており、削孔ヘッド11も同時に回収される。このようにすれば、容易に位置測定装置30と無線信号発生装置50を回収することができ、これらの装置30,50の再利用を図ることができ、コストダウンを達成することができる。特に、位置測定装置30と無線信号発生装置50は、耐圧容器15内に収容されているので、削孔中に削孔管10が過度に屈曲した場合でも、耐圧容器15が変形することはないので、位置測定装置30および無線信号発生装置50が損傷するのを防止することができ、これらの装置30,50を確実に再利用できる。また、耐圧容器15の回収後は、先端が解放されて内部が空洞になった削孔管10のみを地中に敷設することができ、地盤改良を行う上で非常に有用になる。
【0059】
図6は本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管を実施するための最良の他の実施の形態を示した断面図である。
【0060】
本実施の形態では、位置測定装置30等を収容する容器が二つの耐圧容器25a,25bにて構成されている。前方の耐圧容器25aの前方には前方軸部材13が設けられ、後方の耐圧容器25bの後方には後方軸部材14が設けられている。前方の耐圧容器25aと後方の耐圧容器25bとは所定の間隔を隔てて配置されており、前方の耐圧容器25aと後方の耐圧容器25bとは中間軸部材18を介して接続されている。前方軸部材13、後方軸部材14および中間軸部材18はそれぞれ固定部材16を介して削孔管10に固定されている。
【0061】
前方の耐圧容器25aには、傾斜角計と方位角計とこれらを収容するハウジング31、およびスリップリング37が収容されている。ハウジング31の前後には、図2に示した実施の形態と同様に、ショックアブソーバー36を介して前方軸部材32と後方軸部材33がそれぞれ設けられている。そして、前方軸部材32および後方軸部材33は、それぞれ軸受34,34を介して回転可能に軸支されている。前方軸部材32および後方軸部材33の外周面には、おもり部材35がそれぞれ設けられており、位置測定装置30(傾斜角計と方位角計)の鉛直方向は一定に保持されている。後方軸部材33の後部にはスリップリング37が設けられており、互いに相対回転するハウジング31と耐圧容器25a間の配線を可能としている。
【0062】
後方の耐圧容器25bには、位置測定装置30の構成部品の一部であるポテンショメータ38が設けられている。ポテンショメータ38の後部には、無線信号発生装置50を構成する電子基盤51とバッテリ52が設けられている。電子基盤51には、コイル70に接続される接続端子53に延びる配線54が設けられている。
【0063】
なお、その他の構成については図2に示したボーリング削孔装置1と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0064】
前記のような構成によれば、図1ないし図5に示した実施の形態と同様の作用効果を得られる他に、耐圧容器25a,25bが分割されて小型化されているので、回収時に取り回ししやすく、曲率半径の小さい削孔であっても容易に回収することができる。
【0065】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施の形態では、位置測定装置30は、傾斜角計、方位角計および回転角計で構成されているが、これに限られるものではない。例えば、ジャイロであってもよい。この場合も前記実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管を実施するための最良の実施の形態を示した全体断面図である。
【図2】本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管を実施するための最良の実施の形態を示した断面図である。
【図3】本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管のコイルを示した一部破断側面図である。
【図4】本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管の無線信号発生装置とコイルの接続状態を示した断面図である。
【図5】回収用ノブと回収用治具を示した断面図である。
【図6】本発明に係るボーリング削孔装置の先端位置検出システムおよび削孔管を実施するための最良の他の実施の形態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ボーリング削孔装置
2 ボーリングマシン
10 削孔管
12 胴部
15 耐圧容器
16 固定部材
25a 耐圧容器
25b 耐圧容器
30 位置測定装置
32 前方軸部材(軸部材)
33 後方軸部材(軸部材)
35 おもり部材
36 ショックアブソーバー(衝撃吸収材)
50 無線信号発生装置
70 コイル
71 筒状部材
72 導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング削孔装置の削孔管の先端位置を検出する先端位置検出システムにおいて、
前記削孔管内に、この削孔管の先端位置を検出する位置測定装置を設けるとともに、この位置測定装置で測定した位置データを無線信号に変換する無線信号発生装置を設け、
前記削孔管の胴部の一部に導線を巻きつけてコイルを形成し、このコイルによって前記無線信号発生装置で変換された無線信号を送信するように構成し、
地上に、前記無線信号を受信するための受信装置を設けた
ことを特徴とするボーリング削孔装置の先端位置検出システム。
【請求項2】
前記導線は、前記削孔管の胴部の一部に設けられた筒状部材に巻きつけられた
ことを特徴とする請求項1に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システム。
【請求項3】
前記位置測定装置および前記無線信号発生装置は、前記削孔管と分離可能な容器内に収容されており、回収可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システム。
【請求項4】
前記容器は、耐圧容器にて構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システム。
【請求項5】
前記位置測定装置は、衝撃吸収材を介して前記削孔管に固定されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システム。
【請求項6】
前記位置測定装置は、前記削孔管に対して相対回転可能な軸部材に固定されており、
前記軸部材には、前記位置測定装置の鉛直方向を一定に保持するためのおもり部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のボーリング削孔装置の先端位置検出システム。
【請求項7】
ボーリング削孔装置のボーリングマシンによって削孔内に押し込まれる円筒状の胴部を有する削孔管であって、
前記胴部の一部に設けた筒状部材に導線を巻きつけて無線信号送信用のコイルを形成した
ことを特徴とするボーリング削孔装置の削孔管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−150919(P2008−150919A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342263(P2006−342263)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000194756)成和リニューアルワークス株式会社 (32)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【出願人】(000141082)株式会社キャプティ (22)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】