説明

ポインティングデバイス

【課題】 静電容量の出力特性の最適化を容易に実現することができるポインティングデバイスを提供する。
【解決手段】
ポインティングデバイスは、弾性変形体33の第2電極部23に対向する面と、第2電極部23の面には前記弾性変形体の中心軸Oから遠位側に位置する部位と、近位側に位置する部位とをそれぞれ備えている。弾性変形体33が揺動した際に、遠位側に位置する部位同士よりも近位側に位置する部位同士の方が先に絶縁膜を介して互いに接するように、弾性変形体33の第2電極部23に対向する面を傾斜面35として形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば携帯電話、パーソナルコンピュータ、ゲーム機等の電子機器の入力装置として用いられ、操作量に応じたレベルの出力を発生できるようにしたポインティングデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のポインティングデバイスとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成のものが提案されている。特許文献1に記載の構成では、絶縁膜にて覆われた電極を有する基板上に導電性を有する弾性変形体がキー操作により揺動変形可能に配置されている。そして、キーが操作されていない状態では、弾性変形体の前記電極に対して相対する面が、該電極に対して離間するように配置されている。
【0003】
又、該キーが押圧されることにより、弾性変形体が変形されて、該弾性変形体の電極に相対する面が電極に対して接近される。そして、弾性変形体が揺動変形されたとき、その弾性変形体と電極との間の間隔の変化に応じて静電容量が変化し、その静電容量の変化が出力されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−304247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1のポインティングデバイスにおいては、次のような問題があった。すなわち、特許文献1に記載の構成では、弾性変形体の電極に対して接近離間される面が、一対の突起間に形成され、これらの一対の突起がキー操作によって圧潰されることにより、前記面が電極に接近される。
【0005】
従って、両突起の圧潰量が多くなるにつれ、そのためのキー操作に強い力が必要となり、操作力或いは操作量に応じた、静電容量のリニアな変化出力を得ることができず、操作力に対応したリニアな出力特性を得るのが困難である。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、静電容量の出力特性の適正化を容易に実現することができるポインティングデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、静電容量検出電極が配置された基板上に導電性を有する弾性変形体を配置するとともに、その弾性変形体上にはキーベースを揺動可能に設け、キーベースが揺動されたとき、弾性変形体の変形により前記静電容量検出電極と弾性変形体との間の位置関係が変化して、それに応じた静電容量の変化を示す電気信号が出力されるようにしたポインティングデバイスにおいて、前記弾性変形体には前記静電容量検出電極を挟んだ2位置で基板に当接する脚部を形成するとともに、両脚部間に脚部より低い突起を形成し、その突起と一方の脚部との間において同弾性変形体の静電容量検出電極と対向する位置には、突起から離れるに従って静電容量検出電極に近接する被検出面を形成したことを特徴とするポインティングデバイスを要旨とするものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記静電容量検出電極を複数の電極により環状に形成するとともに、被検出面を静電容量検出電極と対応するように環状に形成し、前記両脚部をそれぞれ静電容量検出電極の内径側及び外径側の外方に配置するとともに、前記突起を静電容量検出電極の外径側の外方に配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記被検出面を傾斜面としたことを特徴とする。
(作用)
従って、請求項1に記載の発明においては、キーベースが揺動されると、両脚部間の突起が基板上に当接し、その状態で被検出面が静電容量検出電極に対して突起より離間する側から徐々に、かつ操作量に応じて比例的に接近する。このため、静電容量検出電極からは、操作量に応じたリニアな検出出力が発生される。従って、ポインティングデバイスに接続された外部機器を操作量に応じて正確に制御動作させることが可能になる。
【0010】
請求項2に記載の発明においては、静電容量検出電極が複数の電極により環状に形成されるとともに、被検出面も環状をなしているため、キーベースを360度の範囲の所要の方向に揺動させることにより、操作量を表す静電容量の変化出力のほかに、方向性を持たせた信号の出力を得ることができ、前記外部機器に対して、前記請求項1の作用に加えて、方向性を有する制御動作を行わせることが可能になる。
【0011】
請求項3に記載の発明においては、被検出面を傾斜させることにより、請求項1又は請求項2の作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明においては、静電容量の変化に応じた出力特性の適正化を図ることができ、外部制御機器を操作量に応じて正確に動作させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、この発明の一実施形態を、図1〜図5に基づいて説明する。
図1及び図3に示すように、この実施形態のポインティングデバイスにおいて、ガラス布基材エポキシ樹脂積層板等の硬い絶縁材よりなる基板21の上面には、複数の接地側電極22aと電源側電極22bとが同一円周上で所定間隔おきに配列され、これらの接地側電極22a及び電源側電極22bにより環状の第1電極部22が構成されている。基板21の上面は、平らなフラット面に形成されている。接地側電極22a,電源側電極22bは、スイッチ用電極に相当する。
【0014】
この第1電極部22の内周側において、基板21の上面には、4つの扇形電極23aが第1電極部22と同心状に配列形成され、これらの扇形電極23aにより環状の第2電極部23が構成されている。又、各電極部22〜24は、銅箔をエッチングによりパターン化して形成されたものである。ここで第1電極部22の接地側電極22aと電源側電極22bは、銅箔を露出させたものとなっている。第2電極部23は、銅箔上にレジストにて絶縁処理が施されている。又、第3電極部24の接地側電極24aの内周側の一部分と電源側電極24bは銅箔が露出されており、残りの他の部分はレジストにて絶縁処理されている。図1の拡大図には、扇形電極23a表面に設けられたレジスト23bが示されている。第2電極部23は、静電容量検出電極に相当する。
【0015】
前記第2電極部23の内側において、基板21の上面には、円環状の接地側電極24a及び円板状の電源側電極24bが同第2電極部23と同心状に配列形成され、これらの接地側電極24a及び電源側電極24bにより第3電極部24が構成されている。第3電極部24の電源側電極24bは、センタ電極に相当する。
【0016】
前記第1電極部22の外側に位置するように、基板21には一対の位置決め孔26が形成されている。
図1及び図2に示すように、前記基板21の上面には合成樹脂製の保持部材27が固定されている。保持部材27の中央の下面側には円形状の第1保持部28が凹設形成されるとともに、中央の上面側には第1保持部28よりも小径の第2保持部29が凹設形成されている。第2保持部29の底面と保持部材27の上面との間には、透孔29aが形成されている。保持部材27の下面外周部には一対の第1位置決めピン(図示しない)が突設されるとともに、上面外周部には一対の第2位置決めピン31が突設されている。そして、図示しない第1位置決めピンを基板21の前記位置決め孔26に嵌合させることにより、保持部材27が基板21上の所定位置に位置決めされている。基板21の上部には金属製のカバー32がその一部に形成された図示しない位置決め孔を保持部材27の第2位置決めピン31に嵌合させることにより、保持部材27の外周や、他の電装品25等を覆う所定の位置に位置決め固定されている。
【0017】
前記基板21の上面には円板状の弾性変形体33が保持部材27の第1保持部28内に収容保持した状態で配置されている。この弾性変形体33は、例えばシリコーンゴムの母材にカーボン等の導電性材を混練することにより、導電性,弾力性及び柔軟性を有するように形成されている。
【0018】
弾性変形体33の下面外周には、リング状の脚部33aが下方に突出されている。弾性変形体33は、同脚部33aにより、前記第2電極部23の外径側外方において基板21に当接して支持されている。弾性変形体33の下面において、脚部33aよりも内周側には、円環状の突起34(図4参照)が、脚部33aと同心円となるように突出され、前記第1電極部22に対向している。
【0019】
そして、弾性変形体33が変形して、突起34が接地側電極22a及び電源側電極22bに接触することにより、それらの電極22a,22b間を短絡するようになっている。
弾性変形体33の中央部下面には、断面円形の凹部33bが形成されている。凹部33bと対応するように基板21上には、横断面が円形をなすドーム状の接点板36が配置されている。接点板36は、SUS(ステンレス鋼)等の金属薄板から形成されており、縦断面が上方に円弧状に膨らむドーム部36aと、ドーム部36aの下部周縁に設けられた円形リング状のフランジ部36bとを備えている。接点板36の上面側は絶縁処理が施されており、弾性変形体33と電気的に分離している。一方、接点板36の下面側は電気的に導通可能となっている。接点板36のフランジ部36bは、前記第3電極部24の接地側電極24aに接続されている。
【0020】
又、ドーム部36aは、その中央の内頂部が電源側電極24bと接触して配置されている。そして、ドーム部36aは、弾性変形体33の下方移動により凹むように弾性変形することにより、第3電極部24の電源側電極24bに接触して、同第3電極部24の電極24a,24b間を短絡するようになっている。すなわち、接点板36と、電源側電極24bとは、スイッチを構成する。又、接点板36は、ドーム状構造体に相当する。なお、弾性変形体33の凹部33bの内頂面中央は、接点板36のドーム部36aの頂点に常時当接している必要はなく、後述する操作キー39が操作されていないときは離間するように配置し、操作キー39にて押圧操作された際に接点板36のドーム部36aの頂点に当接するようにしてもよい。
【0021】
弾性変形体33の下面において、前記突起34と凹部33bとの間は、第2電極部23と対応する部位とされており、該部位には、被検出面としての円環状の傾斜面35が基板21上の第2電極部23に接近離間可能に対応するように形成されている。すなわち、傾斜面35は、弾性変形体33の中心軸O(図1参照)から遠位側に位置する部位よりも近位側に位置する部位の方が、第2電極部23に対し離間距離が短くなるように形成されている。本実施形態では、傾斜面35を含む部位の厚みは、近位側の部位から、遠位側の部位に向かって厚みが薄くなるように形成されて、近位側の端部の脚部35aが基板21の上面に対して接点板36のフランジ部36bを挟み込んだ状態で当接支持されている。
【0022】
又、この構成により、弾性変形体33が押下変形された際に、前記遠位側に位置する部位よりも近位側に位置する部位の方が先にレジスト23bを介して、第2電極部23(扇形電極23a)の表面に対して接近する。そして、傾斜面35と基板21上の第2電極部23(扇形電極23a)との間の間隔が変化することにより、その間隔変化に伴って傾斜面35と第2電極部23間の静電容量が変化する。従って、前記4つの扇形電極23aと、各扇形電極23aと対向する傾斜面35は、それぞれコンデンサを構成している。
【0023】
そして、4つの扇形電極23aと傾斜面35からなる各コンデンサの静電容量変化は、基板21に設けた図示しない信号回路を介して、各CV変換素子(図示しない)に出力されて電圧に変換される。そして、同軸方向に位置するコンデンサに関する静電容量値に応じた電圧値の差分を取ることにより、後述する操作キー39の傾動操作量に応じたポインタ座標値を得ることができるようにされている。
【0024】
そして、傾斜面35は、図1に示すように断面視した場合、直線状に形成されている。又、突起34の弾性変形体33下面からの突出量は、前記脚部33a,35aの弾性変形体33下面からの突出量よりも若干少なくされている。このことによって、後述する操作キー39が操作されずに、弾性変形体33が弾性変形しない状態では、突起34は、基板21上における第1電極部22の接地側電極22a及び電源側電極22bに対して離間して配置される。又、操作キー39の操作により、弾性変形体33が押圧されたときには、突起34は第1電極部22の接地側電極22a及び電源側電極22bに対して接触可能である。
【0025】
前記弾性変形体33上には絶縁性の合成樹脂よりなる円板状のキーベース37が保持部材27の第2保持部29内に揺動可能に収容保持した状態で載置され、そのキーベース37の上面中央には前記透孔29a内に位置する段差部37aが突出形成されている。段差部37aの中央には、前記透孔29aから上方へ突出する取付ボス38が突設されている。キーベース37の取付ボス38には操作キー39が嵌着されて止めピン40により抜け止め固定され、その操作キー39の上面にはゴム製の操作部41が設けられている。そして、操作者がこの操作キー39の操作部41の上面外周の一部を押圧操作して、キーベース37を任意の方向に揺動させたときには、弾性変形体33が弾性変形される。
【0026】
前記保持部材27とキーベース37との間には、第1規制構造42と第2規制構造43とが、分離した状態で別々に配置されている。すなわち、図2に示すように、第1規制構造42は、キーベース37の中心部を通る軸線C1と直交する面内におけるキーベース37の回転以外の移動を規制するようになっている。図2に示すように、第2規制構造43は、軸線C1を中心とするキーベース37の回転Mを規制するようになっている。前記第1規制構造42は、保持部材27の第2保持部29の内周面によって形成された円形状の規制面としての規制内周面44と、キーベース37の外周面に形成された円形の規制面としての規制外周面45とから構成されている。また、前記第2規制構造43は、保持部材27の第2保持部29の透孔29aの内周縁に等間隔おきで形成された4つの規制凹部46と、キーベース37の段差部37aの外周に等間隔おきで形成された4つの規制凸部47とから構成されている。
【0027】
次に、前記のように構成されたポインティングデバイスの作用を説明する。
さて、このポインティングデバイスにおいて、図1は、操作キー39が操作されてないフリーの状態を示している。この状態においては、弾性変形体33の外周側の脚部33aと、内周側の脚部35aとが基板21の上面に接していて、第1電極部22に対向する突起34が同第1電極部22から、第2電極部23に対向する傾斜面35が同第2電極部23からそれぞれ離間している。この状態において、図5に示すように、操作キー39の操作部41を押圧操作して、キーベース37を揺動する。すると、弾性変形体33が弾性変形されて、その下面の突起34の一部が基板21上の第1電極部22の接地側電極24aと電源側電極24bとに接触されて、それらの間が短絡(オン)する。この短絡によって、図示しないICに起動信号が入力され、スリープ状態にあったICが起動する。
【0028】
又、この操作キー39の押圧操作時には、その傾動操作量に応じて、弾性変形体33の傾斜面35と基板21上の第2電極部23との間の間隔が変化し、その間隔変化に伴い静電容量が変化して、その静電容量の変化が出力される。これによって、操作部41の傾動操作量に応じたポインタ座標値を得ることができる。
【0029】
又、操作キー39の上面中央部を軸線C1方向に押圧操作したときには、弾性変形体33の中央部が弾性変形され、ドーム形の接点板36が下方に反転される。これにより、第3電極部24の接地側電極24aと電源側電極24bとが接続されて、操作を確定する信号等が出力される。
【0030】
(比較例との比較)
次に、本実施形態の効果を確認するために、比較例を作成し、実施形態とのポインティングデバイスとの比較試験を行った。本実施形態の静電容量の出力曲線と、比較例の静電容量の出力曲線とを図6に示す。
【0031】
なお、比較例の構成は、図9に示されており、前記実施形態と同一構成については同一符号を付す。実施形態と比較例の両ポインティングデバイスの大きさ及び材質は、同じとした。そして、比較例の弾性変形体33Aは、実施形態の弾性変形体33と下記のように構成が異なっている。すなわち、比較例においては、本実施形態の構成中の、突起34が省略されている。比較例の弾性変形体33Aの下面には、第1電極部22と、第2電極部23との両電極に対向する傾斜面35Aが設けられている。又、傾斜面35Aを備えた部位において、弾性変形体33Aの中心軸Oから遠位側に位置する部位は、肉厚が厚くされ、近位側へ行くほど肉厚が薄くなるように形成されている。
【0032】
このように構成されていることにより、弾性変形体33Aが、傾動した際に、傾斜面35Aの遠位側の最も肉厚が厚い部分が第1電極部22と接触されて実施形態の突起34のようなスイッチ機能を発揮する。又、第2電極部23と対向する傾斜面35Aにおいては、弾性変形体33Aの中心軸O(なお、中心軸Oは実施形態と同様のため図9では図示しない)から遠位側の部位(肉厚が厚い部位)から、接近を開始し、その後、近位側の部位(肉厚が薄い部位)が接近するように構成されている。
【0033】
さて、本実施形態において、操作キー39の操作により、キーベース37が揺動されると、前述のように、弾性変形体33が変形されて、突起34が第1電極部22に接触する。これと同時に、操作キー39に対する操作量、すなわち押下量に応じて、傾斜面35が第2電極部23に接近する。この場合、すでに突起34が第1電極部22の上面に当たっているため、弾性変形体33の突起34と前記脚部35aとの間の部分、すなわち傾斜面35の部分が、突起34の弾力性によりある程度の反発を受けながら脚部35aと基板21との当接部を中心に下方へ撓曲するようにして変形する。従って、傾斜面35は、第2電極部23に対して脚部35aと基板21との当接部側から順次接近する。このため、傾斜面35と第2電極部23との間の隙間は、少しずつ、かつ比例的な経緯を辿りながら狭くなっていき、このため、操作キー39の操作量に応じたリニアな静電容量の変化出力を得ることができ、ポインティングデバイスに接続された外部機器を操作量に応じて正確かつ円滑に制御できる。
【0034】
また、操作キー39が操作されていない状態で、このポインティングデバイスに振動が付与された場合には、突起34が第1電極部22に接触することはあるが、その状態では、傾斜面35の両端側がこの突起34と脚部35aとの2箇所で支持されるため、傾斜面35が第2電極部23に対してそれ以上接近することは抑制される。従って、第2電極部23の静電容量変化初期を不感帯として設定して、わずかな操作入力があっても、レベルの出力を行わないようにしたり、外部機器側で操作として扱わないようにすることにより、外部機器の誤動作を防止できる。
【0035】
これに対し、比較例においては、操作キー39の操作により、弾性変形体33が変形されると、傾斜面35Aの端部35Bが第2電極部23に接触する。従って、これに続いて傾斜面35Aが第2電極部23に容易に接近して、それらの間の間隙が急激に狭くなる。このため、静電容量の出力が急激に変化した後に、ただちに飽和し、外部機器を円滑に制御するのが困難である。
【0036】
また、操作キー39が操作されていない状態で、このポインティングデバイスに振動が付与された場合には、傾斜面35Aの端部35Bが第1電極部22に接触する。このとき、それにともない傾斜面35Aが第2電極部23に対して接近するとともに、さらに接近状態を倍加するように弾性変形体33が傾斜面35Aの端部35Bと基板21との当接部を中心にして第2電極部23側に撓曲するおそれがある。従って、外部機器が誤動作することがある。
【0037】
図6(a)は、例えばx軸方向に操作荷重を印加した場合に得られた比較例と、実施形態のポインティングデバイスとの静電容量の出力曲線を示している。「x実施形態」の曲線で示されるように、本実施形態は、リニアな出力特性が得られ、本実施形態では、操作荷重の増加に対して、出力がほぼ比例的に増加する。それに対して、比較例では、「x比較例」の曲線に示されるように初期操作荷重で出力が急激に増加し、その後は、飽和して増加しない。従って、比較例においては、不感帯を広いレンジで確保すると、すなわち、動作信頼性を得ようとすると、その不感帯の外側の変化量が少ないため、細かな制御を行い得ない。また、不感帯のレンジを狭くすると、誤動作を頻発するおそれがある。なお、図6(a)において、「y比較例」、「y実施形態」の線は、x軸方向に操作荷重を印加した場合における、y軸方向に位置するコンデンサの出力を示している。ここにおいて、x軸方向への操作に対して、比較例は、y軸方向において高いレベルの出力が表れている。これは、比較例においては、傾斜面35が第2電極部23に接近してしまうために、y軸方向においても同様に第2電極部23に接近するのが原因である。従って、ここにおいても、比較例は誤動作のおそれがある。
【0038】
この実施形態のポインティングデバイスの出力曲線を性能要求に合わせて最適化する場合、傾斜面35の傾斜角度(弾性変形体33が、操作されていない状態の時の、基板21に対する傾斜角度)を調整すればよい。例えば、傾斜面35の傾斜角度が大きいほど、静電容量の出力曲線(操作荷重−出力)は、操作荷重の増加に対して、出力の増加率を少なくできる。
【0039】
又、図6(b)は、比較例と、実施形態のポインティングデバイスに対して、x軸方向に操作荷重を印加して、第1電極部22に対するスイッチ機能を試験した結果である。同図に示すように、本実施形態の方が、狭い領域の操作荷重で、オンオフができる。それに対して、比較例の方では、広い領域の操作荷重でオンオフされることになる。
【0040】
すなわち、スイッチング機能において、本実施形態の方が、比較例に比較して、小さな操作荷重でオンオフできる。このことは、弾性変形体33下面からの突起34の突出量を設計時に調整することにより、操作荷重に対する動作の適正化を図ることができることを意味している。
【0041】
以上は、ポインティングデバイスに対する操作をx軸方向において行った場合を例にして説明したが、y軸方向等、他の方向、すなわち360度の全方向においても同様な結果を得ることができるのはもちろんである。
【0042】
(変形例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
○ 図7に示すように、前記実施形態の脚部33aを省略して、弾性変形体33の外周部を嵌合部とし、その嵌合部を脚部として、保持部材27の内周面に設けたリング状の嵌合溝27aに嵌合してもよい。このようにしても、前記実施形態と同様の作用効果を実現できる。
【0043】
○ 前記実施形態では、弾性変形体33の下面に傾斜面35を設けたが、傾斜面35を省略して、例えば、図8に示すように第2電極部23と対向する部位の肉厚を同じ厚みとした平面を有するようにし、その代わりに、基板21に扁平な円錐面を形成し、この円錐面上に第1電極部22と、第2電極部23を設けてもよい。この場合、弾性変形体33が、傾動した際に、弾性変形体33の下面において、弾性変形体33の中心軸Oに対して近位側に位置する部位から、第2電極部23に接近を開始し、その後、遠位側の部位が接近するように構成する。このように構成しても、前記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0044】
○ 基板21は、前記実施形態では、ガラス布基材エポキシ樹脂積層板等の硬い絶縁材より構成したが、ポリイミドフィルム等で形成した可撓性基板にて構成してもよい。
(他の技術的思想)
前記実施形態及び変形例から把握される技術的思想であって、請求項に記載以外の技術的思想を以下に列挙する。
【0045】
(1) 前記基板には、前記突起と接触可能なスイッチ用電極を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載のポインティングデバイス。このように構成すれば、弾性変形体の突起とスイッチ用電極との接触距離を、突起部の突出量を調整することによりスイッチ機能の最適化ができ、スイッチ機能の最適化と、静電容量の出力曲線の最適化を独立して行うことができる。
【0046】
(2) 前記弾性変形体の中央部下面に凹部を設け、その凹部と対応する基板の上面には、弾性変形可能な導電性のドーム状構造体を配置し、ドーム状構造体の上面には、センタ電極を配置し、前記ドーム状構造体と、前記センタ電極とによりスイッチを構成したことを特徴とする請求項1〜3、前記他の技術的思想(1)のうちいずれか1項に記載のポインティングデバイス。このように構成すれば、キーベースをセンタ電極に対して押圧操作されるスイッチを備えたポインティングデバイスにおいて、請求項1乃至請求項3、前記他の技術的思想(1)の効果を、実現できる。
【0047】
(3) 内径側の脚部を被検出面と連続してその端部に形成したことを特徴とする請求項2,3,前記他の技術的思想(1)項,(2)項のうちのいずれか1項に記載のポインティングデバイス。このように構成すれば、キーベースが揺動された際に、被検出面がその端部の脚部を中心に円滑に回動するようにして弾性変形体が変形されるため、リニアな静電容量の変化を示す出力を得ることができる。
【0048】
(4) 前記静電容量検出電極が基板のフラット面上に配置されており、前記弾性変形体の被検出面は、前記静電容量検出電極の面に対して傾斜面となるように形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3、前記他の技術的思想(1)〜(3)項のうちのいずれか1項に記載のポインティングデバイス。このように構成すると、静電容量の出力特性の適正化のために、被検出面の傾斜角度を調整する場合、弾性変形体の傾斜面の角度を変更するのみでよく、適正化が容易である。
【0049】
(5) 前記静電容量検出電極の面は、基板の円錐面上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3、前記他の技術的思想(1)〜(4)項のうちのいずれか1項に記載のポインティングデバイス。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】一実施形態のポインティングデバイスを示す要部縦断面図。
【図2】図1の3−3線における断面図。
【図3】図1のポインティングデバイスにおける基板を示す平面図。
【図4】同じく弾性変形体を示す底面図。
【図5】図1のポインティングデバイスの動作状態を示す要部縦断面図。
【図6】(a)は、実施形態と比較例において、x軸荷重を印加した場合の静電容量の出力曲線図、(b)は、実施形態と比較例において、x軸荷重を印加した場合のスイッチ機能の出力特性図。
【図7】別例を示す要部断面図。
【図8】別例を示す要部断面図。
【図9】比較例の要部断面図。
【符号の説明】
【0051】
21…基板、23…第2電極部、23a…扇形電極(静電容量検出電極)、23b…レジスト、22a…接地側電極22a(スイッチ用電極)、22b…電源側電極22b(スイッチ用電極)、24b…電源側電極(センタ電極)、33…弾性変形体、33b…凹部、 34…突起、35…傾斜面(被検出面)、36…接点板(ドーム状構造体)、37…キーベース、39…操作キー、O…中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量検出電極が配置された基板上に導電性を有する弾性変形体を配置するとともに、その弾性変形体上にはキーベースを揺動可能に設け、キーベースが揺動されたとき、弾性変形体の変形により前記静電容量検出電極と弾性変形体との間の位置関係が変化して、それに応じた静電容量の変化を示す電気信号が出力されるようにしたポインティングデバイスにおいて、
前記弾性変形体には前記静電容量検出電極を挟んだ2位置で基板に当接する脚部を形成するとともに、両脚部間に脚部より低い突起を形成し、その突起と一方の脚部との間において同弾性変形体の静電容量検出電極と対向する位置には、突起から離れるに従って静電容量検出電極に近接する被検出面を形成したことを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項2】
前記静電容量検出電極を複数の電極により環状に形成するとともに、被検出面を静電容量検出電極と対応するように環状に形成し、前記両脚部をそれぞれ静電容量検出電極の内径側及び外径側の外方に配置するとともに、前記突起を静電容量検出電極の外径側の外方に配置したことを特徴とする請求項1に記載のポインティングデバイス。
【請求項3】
前記被検出面を傾斜面としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のポインティングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−331327(P2006−331327A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157852(P2005−157852)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【Fターム(参考)】