説明

ポジ型リフトオフレジスト組成物及びパターン形成方法

【解決手段】(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤、(C)アルカリ可溶性セルロース樹脂、(D)式量180〜800である芳香族ヒドロキシ化合物を含有し、アルカリ可溶性セルロース樹脂(C)の含有量がアルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対して3〜30質量部であることを特徴とするポジ型リフトオフレジスト組成物。
【効果】本発明のポジ型リフトオフレジスト組成物は、良好な保存安定性を有し、高感度で、現像後の残膜率(=現像後膜厚/ソフトベーク後膜厚)が95%以上で、切れ込みが大きいリフトオフ形状を得るために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型リフトオフレジスト組成物及びリフトオフレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の基板上にアルミニウム、銅、タンタル等の種々の金属配線パターンを形成する手段として、リフトオフ法が知られている。リフトオフ法は、例えば、基板上にレジスト組成物を塗布し、マスクを介して露光し、現像して基板上にレジストパターンを形成した後、該レジストパターン上及び金属基板上に金属膜をスパッタリング法、蒸着法等により形成し、次いでレジストパターンと該パターン上の金属膜を一緒に剥離して、基板上に金属配線を形成するというものである。このリフトオフ法において用いられる望ましいレジストパターン形状は、レジストパターンの下部(基板接地部分)にマイクログルーブと呼ばれるアンダーカットを有する形状である。
【0003】
このような形状を有する従来のポジ型リフトオフレジスト組成物の報告としては、特開平8−69111号公報(特許文献1)や特開平10−97066号公報(特許文献2)等においてなされている。両報告は構成成分が異なっているものの、芳香族ヒドロキシ化合物によりアンダーカットを発生させるという点では、共通性を有している。これは、基板近傍にアンダーカットを発生させ、そのサイズをコントロールする上で、芳香族ヒドロキシ化合物が適度なアルカリ溶解速度を有するためである。また、特開2001−235872号公報(特許文献3)においては、基板密着性を向上させる手法が報告されている。しかしながら、前述の材料では、切れ込み深さ長が大きくなった場合、膜べりと表現される未露光部のレジスト膜が現像時に現像されて薄膜化する現象が生じてしまい、所望の切れ込み深さ長とレジスト膜厚を同時に維持することが困難であった。そのため、現像後の膜べりを抑制した切れ込み深さの大きいポジ型リフトオフレジスト組成物が待ち望まれていた。
【0004】
特開2004−94229号公報(特許文献4)では、ポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜30,000であるノボラック樹脂の水酸基の水素原子が、3〜27モル%の割合で1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換された高分子化合物とアルカリ可溶性セルロース樹脂からなるポジ型フォトレジスト組成物を報告しているが、該発明の組成では、基板近傍にアンダーカットを発生させることができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−69111号公報
【特許文献2】特開平10−97066号公報
【特許文献3】特開2001−235872号公報
【特許文献4】特開2004−94229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、現像後の残膜率(=現像後膜厚/ソフトベーク後膜厚)が95%以上で、アンダーカットの大きなポジ型リフトオフレジスト組成物及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行なった結果、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤、(C)アルカリ可溶性セルロース樹脂、(D)式量180〜800である芳香族ヒドロキシ化合物を含有し、更に上記(C)成分を特定量使用することにより、膜べりを抑制しつつ、効果的にアンダーカットを大きくすることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記のポジ型リフトオフレジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供する。
[1](A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤、(C)アルカリ可溶性セルロース樹脂、(D)式量180〜800である芳香族ヒドロキシ化合物を含有し、アルカリ可溶性セルロース樹脂(C)の含有量がアルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対して3〜30質量部であることを特徴とするポジ型リフトオフレジスト組成物。
[2](B)成分のキノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤が2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、下記一般式(1)もしくは(2)で示される化合物又はトリヒドロキシベンゾフェノンもしくはテトラヒドロキシベンゾフェノンから選ばれた化合物のうち、一つもしくは複数のヒドロキシ基の水素原子をナフトキノンジアジドスルホニル基で置換した化合物から選ばれるものであり、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対し20〜55質量部を配合した[1]記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【化1】


(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5である。)
[3](C)成分のアルカリ可溶性セルロース樹脂が下記構造式(3)
【化2】


[式中、R1は独立に、酸価30〜150を示す範囲において、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基又は下記構造式(4)
【化3】


(式中、R’は炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。)
で表される有機基であり、かつR1中の上記式(4)で表される有機基の割合が単位グルコース環あたり平均2〜30モル%であり、sは2〜10,000の整数である。]
で表されるものである[1]又は[2]記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
[4](D)成分の芳香族ヒドロキシ化合物が下記式(1),(2),(5)
【化4】


(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5である。)
【化5】


(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rfはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、又は下記式(6)で示される基であって、Ra、Rb、Rcの少なくとも一つ及びRd、Re、Rfの少なくとも一つはベンゼン環にヒドロキシ基が付加した構造を有する。式中、x、yはそれぞれ0〜3の整数である。)
【化6】


(式中、v、wはそれぞれ0〜3の整数である。)
で示される化合物から選ばれるものであり、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対し2〜70質量部を配合した[1]〜[3]のいずれかに記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のレジスト組成物を基板に塗布する工程と、次いで加熱処理後、フォトマスクを介して放射線もしくは電子線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
[6][5]記載の方法で基板上に形成したレジストパターン全面にメタル層を形成し、次いでレジストパターンと該パターン上に形成されたメタル層とを剥離することにより基板上にメタルパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポジ型リフトオフレジスト組成物は、良好な保存安定性を有し、高感度で、現像後の残膜率(=現像後膜厚/ソフトベーク後膜厚)が95%以上で、切れ込みが大きいリフトオフ形状を得るために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ポジ型リフトオフレジスト組成物により形成されるレジストパターンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明に係る単層リフトオフ工程用ポジ型リフトオフレジスト組成物は、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤、(C)アルカリ可溶性セルロース樹脂、(D)式量180〜800である芳香族ヒドロキシ化合物を必須成分とする。
【0012】
(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂については、フェノール類とアルデヒド類の縮合反応生成物により、合成することができる。前記フェノール類としては、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール等のキシレノール類、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノール等のアルキルフェノール類、p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール等のアルコキシフェノール類、p−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等のイソプロペニルフェノール類、ビスフェノールA等のポリヒドロキシフェノール類等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのフェノール類の中では、特にm−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノールが好適に用いられる。
【0013】
前記アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、フルフラール、フリルアクロレイン、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアルデヒド類の中では、入手のしやすさからホルムアルデヒドが好適である。
【0014】
フェノール類とアルデヒド類との縮合反応生成物は、酸性触媒の存在下、公知の方法で製造することができる。その際の酸性触媒としては、塩酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等を使用することができる。このようにして得られた縮合生成物は、分画等の処理を施すことによって、低分子領域をカットしたものを用いることもできる。
【0015】
本発明においては、特にm−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノールのフェノール類から選ばれる数種の混合フェノールとホルムアルデヒドとの縮合によって得られるノボラック樹脂が好ましく、中でもゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(溶媒テトラヒドロフラン)によるポリスチレン換算値の重量平均分子量が2,000〜20,000が好ましく、より好ましくは2,500〜15,000の範囲にあるノボラック樹脂である。
【0016】
(B)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤としては、公知の2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等、工業的に生産されているものに限らず、下記一般式(1)もしくは(2)で示される化合物又はトリヒドロキシベンゾフェノンもしくはテトラヒドロキシベンゾフェノンから選ばれた化合物のうち、一つもしくは複数のヒドロキシ基の水素原子をナフトキノンジアジドスルホニル基で置換した感光剤を添加する形で用いることができる。
【0017】
【化7】


(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5である。)
【0018】
中でも、フェノール性ヒドロキシ基の65モル%以上がナフトキノンジアジドスルホン酸によりエステル化されていることがリフトオフパターン形成上好ましい。本発明において、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対する感光性成分の配合量は、20〜55質量部が好ましく、より好ましくは25〜50質量部、最も好ましくは30〜45質量部である。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
(C)成分としてのアルカリ可溶性セルロース樹脂とは、下記構造式(3)
【化8】


[式中、R1は独立に、酸価30〜150を示す範囲において、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基又は下記構造式(4)
【化9】


(式中、R’は炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基、又はシクロヘキシレン基である。)
で表される有機基であり、かつR1中の上記式(4)で表される有機基の割合が単位グルコース環あたり平均2〜30モル%であり、sは2〜10,000の整数である。]
で表されるアルカリ可溶性セルロース樹脂を含有するものである。
【0020】
このアルカリ可溶性セルロース樹脂は、導入されたカルボキシアルキル基が酸性では解離せず、それ自身が疎水性で耐酸性を示すが弱酸性から中性領域では解離するため、水性又はアルカリ性液中で溶解し、また露光光源に対して透明な樹脂バインダーとなる。このアルカリ可溶性セルロースを含有することにより、上記理由によって高感度になり、アンダーカットを大きくすることができる。
【0021】
式(3)において酸価30に満たない場合、感度向上やアンダーカット促進の効果が少なく、また150より多いとパターン形成後、残膜量が少なくなる場合がある。
【0022】
また、R1は独立に、酸価30〜150を示す範囲において水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基又は上記構造式(4)で表される有機基であり、かつR1中の上記式(4)で表される有機基の割合が単位グルコース環あたり平均2〜30モル%である。
【0023】
1としては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ter−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等の炭素数1〜8のアシル基が挙げられる。また、式(4)中のR’としてはエチレン基等の炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基が挙げられる。
【0024】
1中の上記式(4)で表される有機基の割合は、単位グルコース環あたり平均2〜30モル%であるが、特に5〜25モル%が好ましい。上記式(4)で表される有機基の割合が2モル%未満だと現像時のアルカリ液中での溶解性が劣り、30モル%を超えるとアルカリ液中での溶解性が大きくなりすぎ、現像後の膜減りの原因となる。またsは2〜10,000の整数であり、特に100〜5,000が好ましい。
【0025】
式(3)で表されるアルカリ可溶性セルロース樹脂(C)の配合量は、(A)成分のアルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対して3〜30質量部であり、特に7〜20質量部配合するのが好ましい。3質量部未満では、アンダーカット促進の効果が小さく、所望のアンダーカットサイズが得難くなる。一方30質量部を超えると、水性アルカリ性液中での組成物の溶解度が増し、残膜性に劣り、またアンダーカットが大きくなりすぎ、パターン形成が困難となる。
【0026】
本発明において、前記(C)アルカリ可溶性セルロース樹脂と併せて溶解促進成分となる(D)式量180〜800である芳香族ヒドロキシ化合物は、ベンゼン環の個数が、好ましくは2〜15個、より好ましくは3〜10個、特に好ましくは3〜7個であり、かつヒドロキシ基の数とベンゼン環の数の比率が、好ましくは0.4〜3.0、より好ましくは0.5〜2.0、最も好ましくは0.6〜1.5である。ヒドロキシ基の数が少ないと、アルカリ現像液に対する溶解速度が小さくなり、所望の切れ込みサイズを得ることができなくなり、多くなりすぎると密着性が低下するおそれがある。また、式量が800を超える芳香族ヒドロキシ化合物の場合、本発明の効果を低下してしまうため、適さない。具体的には、式量800を超える芳香族ヒドロキシ化合物を配合した場合、狙いとするアンダーカットが小さくなってしまい、本発明の効果が得られない。本発明においては、ヒドロキシ基の一部がアシル化されていても構わない。その場合、アシル化は定法によって行なうことができる。
【0027】
この場合、(D)成分の芳香族ヒドロキシ化合物としては、下記式(1),(2)、更に式(5)で示される化合物が好適に用いられる。
【化10】


(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5である。)
【0028】
【化11】


(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rfはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、又は下記式(6)で示される基であって、Ra、Rb、Rcの少なくとも一つ及びRd、Re、Rfの少なくとも一つはベンゼン環にヒドロキシ基が付加した構造を有する。式中、x、yはそれぞれ0〜3の整数である。)
【0029】
【化12】


(式中、v、wはそれぞれ0〜3の整数である。)
【0030】
本発明において、(D)芳香族ヒドロキシ化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。その配合量は、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対して、好ましくは2〜70質量部、より好ましくは5〜60質量部、特に好ましくは10〜50質量部である。
【0031】
本発明においては、上記各成分以外に、塗布性を向上するために用いられている界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、ノニオン系、フッ素系、シリコーン系の各種界面活性剤を用いることができるが、中でも非イオン性のものが好ましく、例えばフロラードFC−430(住友スリーエム社製)、X−70−092、X−70−093(いずれも信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0032】
更に、本発明のポジ型リフトオフレジスト組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリヒドロキシスチレン等のアルカリ可溶性樹脂、2−ベンゼンアゾ−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノアゾベンゼン等のアゾ化合物やクルクミン等の染料、顔料等の各種配合剤を添加することができる。
【0033】
本発明で用いられる溶剤として、例えば、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸3−メトキシブチル、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3−エトキシエチルプロピオネート、3−エトキシメチルプロピオネート、3−メトキシメチルプロピオネート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ジアセトンアルコール、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、テトラメチレンスルホン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、酢酸アルキルエステル、乳酸アルキルエステルである。これらの溶剤は単独でも2種以上混合してもよい。
【0034】
なお、溶剤の使用量は適宜選定されるが、通常アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対し100〜9,800質量部が好適である。
【0035】
本発明のポジ型リフトオフレジスト組成物を用いたリフトオフ工程におけるレジストパターン形成方法は、定法であれば特に限定されるものでない。Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG等の基板に加え、Au、Ti、W、Cu、Ni−Fe、Ta、Zn、Co、Pb等の金属基板、有機反射防止膜等の基板上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等の適当な塗布方法により、所望の膜厚になるよう塗布し、ホットプレート上で60〜150℃、1〜10分間、好ましくは80〜120℃、1〜5分間プリベークする。次いで、紫外線、遠紫外線、電子線等から選ばれる光源、好ましくは300nm以上の露光波長で目的とするパターンを所定のマスクを通じて露光を行う。露光量は1〜1,000mJ/cm2程度、好ましくは10〜800mJ/cm2程度となるように露光することが好ましい。ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0036】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜60分間、好ましくは0.5〜10分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の定法で現像することにより基板上に目的のパターンが形成される。次いで、金属膜をスパッタリング法、蒸着法等により形成した後、レジストパターンと該パターン上の金属膜を一緒に剥離して、基板上に金属配線を形成すればよい。
【実施例】
【0037】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0038】
[合成例1]ノボラック樹脂の合成
撹拌機、コンデンサー、温度計を装着した3つ口フラスコにp−クレゾール75.7g(0.7mol)、m−クレゾール32.5g(0.3mol)、37質量%ホルムアルデヒド水溶液52.3g(0.549mol)及び重縮合触媒であるシュウ酸2水和物0.30g(2.40×10-3mol)を仕込み、フラスコをオイルバスに浸し、内温を100℃に保持し、1時間重縮合を行った。反応終了後、500mLのMIBK(メチルイソブチルケトン)を加え、30分撹拌した後、水層を分離し、MIBK層に抽出された生成物を300mLの純水で5回水洗、分液し、エバポレーターにて4mmHgで150℃の減圧ストリップを行い、重量平均分子量(Mw)8,000のノボラック樹脂(87g)を得た。なお、Mwの測定は、東ソー(株)製、GPCカラム(G−2000H6・2本、G−3000H6・1本、G−4000H6・1本)を用い、流量1.5mL/min.,溶出溶媒THF、カラム温度40℃で行った。
【0039】
[実施例1〜6、比較例1〜6]
合成例1で得られたアルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部と、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンの66モル%がナフトキノンジアジド−5−スルホン酸でエステル化されたキノンジアジド化合物(東洋合成工業(株)製、NT−200)(I)、アルカリ可溶性セルロースA(信越化学工業(株)製、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート:酸価92、カルボキシベンゾイル基20モル%含有)(II)、下記式(7),(8)に示す芳香族ヒドロキシ化合物(III)(比較例6のみ式(8)の芳香族ヒドロキシ化合物を配合、それ以外については式(7)の芳香族ヒドロキシ化合物を配合)を表1の配合比で混合し、塗布性向上のため界面活性剤としてX−70−093(信越化学工業(株)製オルガノシロキサンポリマー)を0.1質量部添加し、乳酸エチルと酢酸ブチルの混合比が85質量部と15質量部である溶剤で均一溶液とした後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過し、ポジ型リフトオフレジスト溶液を調製した。
【0040】
【化13】

【0041】
得られたレジスト溶液をSi基板上に塗布し、ホットプレートにて100℃で120秒間のソフトベークを行ない、3μmのレジスト膜を形成した。次いでレチクルを介しi線ステッパーで露光(ニコン社製、NA=0.5)し、120℃で90秒間加熱した後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で100秒間現像後、純水にて30秒間リンスし、乾燥を行なった。得られたレジストの評価は、未露光部の残膜量を非接触式膜厚計にて測定し、残膜率(=現像後膜厚/ソフトベーク後膜厚)を算出した。最適露光量については、3μmのラインとスペースの繰り返しが等しくなる露光量とした。パターン形状については、電子顕微鏡(日立製)にて断面の形状を観察し、図1に示す横方向の切れ込み量(片側)寸法を測定した。結果を表2に示す。
なお、図1において、A:ライン幅、B:基板との接地幅、C:アンダーカット幅を示している(A=B+2C)。A、B、Cの幅については、当該箇所の場所をSEMの画面で確認し、その場所の切れ込み長さを測定した。
【0042】
本発明によれば、高感度で、現像後の残膜率(=現像後膜厚/ソフトベーク後膜厚)が95%以上となり、切れ込みが大きいリフトオフ形状を得ることができる。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(B)キノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤、(C)アルカリ可溶性セルロース樹脂、(D)式量180〜800である芳香族ヒドロキシ化合物を含有し、アルカリ可溶性セルロース樹脂(C)の含有量がアルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対して3〜30質量部であることを特徴とするポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項2】
(B)成分のキノンジアジドスルホン酸エステル系感光剤が2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、下記一般式(1)もしくは(2)で示される化合物又はトリヒドロキシベンゾフェノンもしくはテトラヒドロキシベンゾフェノンから選ばれた化合物のうち、一つもしくは複数のヒドロキシ基の水素原子をナフトキノンジアジドスルホニル基で置換した化合物から選ばれるものであり、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対し20〜55質量部を配合した請求項1記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【化1】


(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5である。)
【請求項3】
(C)成分のアルカリ可溶性セルロース樹脂が下記構造式(3)
【化2】


[式中、R1は独立に、酸価30〜150を示す範囲において、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアシル基又は下記構造式(4)
【化3】


(式中、R’は炭素数1〜6のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。)
で表される有機基であり、かつR1中の上記式(4)で表される有機基の割合が単位グルコース環あたり平均2〜30モル%であり、sは2〜10,000の整数である。]
で表されるものである請求項1又は2記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項4】
(D)成分の芳香族ヒドロキシ化合物が下記式(1),(2),(5)
【化4】


(式中、jは1又は2、k、m、pはそれぞれ0〜3、nは1〜4、qは1〜3、rは2又は3の整数で、m+p+n≦6、k+q≦5である。)
【化5】


(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rfはそれぞれ独立して水素原子、メチル基、又は下記式(6)で示される基であって、Ra、Rb、Rcの少なくとも一つ及びRd、Re、Rfの少なくとも一つはベンゼン環にヒドロキシ基が付加した構造を有する。式中、x、yはそれぞれ0〜3の整数である。)
【化6】


(式中、v、wはそれぞれ0〜3の整数である。)
で示される化合物から選ばれるものであり、アルカリ可溶性ノボラック樹脂(A)100質量部に対し2〜70質量部を配合した請求項1乃至3のいずれか1項記載のポジ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のレジスト組成物を基板に塗布する工程と、次いで加熱処理後、フォトマスクを介して放射線もしくは電子線で露光する工程と、必要に応じて加熱処理した後、現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法で基板上に形成したレジストパターン全面にメタル層を形成し、次いでレジストパターンと該パターン上に形成されたメタル層とを剥離することにより基板上にメタルパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−108415(P2012−108415A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258738(P2010−258738)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】