説明

ポジ型感光性組成物

【課題】低い誘電率を有し、コントラストを向上したEL素子絶縁膜形成用のポジ型感光性組成物、ポジ型感光性組成物により製造された絶縁膜及びEL素子を提供すること。
【解決手段】有機顔料を含有するEL素子絶縁膜形成用のポジ型感光性組成物を用いることによる。ポジ型感光性組成物は、(1)有機顔料、並びに
(2)非化学増幅型のレジストにおいて通常使用される(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)キノンジアジド基含有化合物、又は
(3)化学増幅型のレジストにおいて通常使用される(D)活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物及び(E)酸の作用によりアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する樹脂、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL素子絶縁膜形成用のポジ型感光性組成物、ポジ型感光性組成物から形成された絶縁膜を備えるEL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ELディスプレイの絶縁層として使用される材料は、画素を仕切る役割を持ち、隣の画素へ電気がリークしないように絶縁性を持つ必要がある。従来、前述の材料はポリイミドや感光性組成物により形成されてきた。近年、ELディスプレイが、例えば20インチを超えるように大型化するのに伴い、画面のコントラストを向上する要求が高まっている。しかしながら、従来技術では、発光する画素と画素との間は透明な材料により仕切られているため、コントラストを向上することは困難であった。
【0003】
そこで、前述の材料としてカーボンブラック等によって着色したレジスト等の感光性組成物を用いることにより、コントラストを向上させる試みが提案されている(特許文献1)。特許文献1には、光重合性化合物、光重合開始剤、黒色顔料を含有し、さらに有機顔料を含有する、低誘電率のネガ型感光性組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平2007−249045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術によるネガ型感光性組成物を用いてEL素子用絶縁膜を形成する場合には、感光性組成物のフロー性が低いという問題がある。また、例えば、形成した絶縁膜の上に別の部材を形成する場合、塗布するレジスト等の感光性組成物の絶縁膜への塗布性が低く、塗りムラが発生するという問題もある。さらに、EL素子に非発光部が存在するという問題もある。非発光部発生の原因は、ITO(インジウムスズオキシド)等の金属膜基材上にネガ型感光性組成物を塗布し、露光後に非露光部分を除去する工程において残渣が発生し、この残渣によりEL素子における通電が阻害されたためであり、残渣の発生が少ない感光性組成物が望ましい。
【0005】
そこで、本発明では、前述の課題を解決し、絶縁膜を形成することが可能なポジ型感光性組成物を提供することを目的とする。また、本発明では、ポジ型感光性組成物から形成された絶縁膜を備えるEL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ELディスプレイの発光画素を区切る部材を着色し、特に有機顔料を含有するポジ型感光性組成物を使用することが前述の課題の解決に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明によれば、有機顔料を含有するEL素子絶縁膜形成用のポジ型感光性組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記の感光性組成物により形成された絶縁膜を備えるEL素子を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機顔料を含有するポジ型感光性組成物を用いて絶縁膜を形成することにより、顔料を添加した際のフロー性が良好で、形成した絶縁膜に別の感光性組成物を塗布する際の塗りムラの発生を抑制した低誘電率のEL素子用絶縁膜を形成することが可能となった。さらに、本発明に係るポジ型感光性組成物は、ELパネルの通電を阻害する残渣が発生しないという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明に係るポジ型感光性組成物は、
(1)有機顔料、及び
(2)(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)キノンジアジド基含有化合物、又は
(3)(D)活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物及び(E)酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂成分
を含有する。ここで、(A)成分及び(B)成分は非化学増幅型のレジストにおいて通常使用され、(D)成分及び(E)成分は化学増幅型のレジストにおいて通常使用される。本発明に係るポジ型感光性組成物は、(2)の成分を使用する場合には、(C)分子量が1,000以下のフェノール性水酸基含有化合物をさらに含有してもよい。また、(3)の成分を使用する場合には、(F)アルカリ可溶性樹脂をさらに含有してもよい。さらに、前述の成分に加え、後述するその他の成分を含有してもよい。本発明におけるポジ型感光性組成物は、(2)に記載の成分も、(3)に記載の成分も限定されず従来公知の成分から適宜選択することができる。
【0011】
[有機顔料]
本発明に係るポジ型感光性組成物は、有機顔料を含有する。この有機顔料を含有することにより、絶縁膜を形成することができる。また、形成された絶縁膜の形状安定性を向上させ、有機顔料の量を調整することにより絶縁膜のテーパー角を調整することが可能となる。さらに、例えば、補色の関係にある有機顔料を数種類組み合わせることにより、EL素子の種々の態様に応じて、最適な色調、明度を有する遮光膜を形成することができる。
【0012】
有機顔料としては、ペリレンブラック等の従来公知の黒色有機顔料のほか、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものが挙げられる。
【0013】
C.I.ピグメントイエロー1(以下、「C.I.ピグメントイエロー」は同様で番号のみ記載する。)、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、55、60、61、65、71、73、74、81、83、86、93、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、185;
【0014】
C.I.ピグメントオレンジ1(以下、「C.I.ピグメントオレンジ」は同様で番号のみ記載する。)、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、55、59、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1(以下、「C.I.ピグメントバイオレット」は同様で番号のみ記載する。)、19、23、29、30、32、36、37、38、39、40、50;
【0015】
C.I.ピグメントレッド1(以下、「C.I.ピグメントレッド」は同様で番号のみ記載する。)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、155、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、192、193、194、202、206、207、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、243、245、254、255、264、265;
【0016】
C.I.ピグメントブルー1(以下、「C.I.ピグメントブルー」は同様で番号のみ記載する。)、2、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66;
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37;
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、C.I.ピグメントブラウン28;
C.I.ピグメントブラック1。
【0017】
有機顔料の含有量は、本発明のポジ型感光性組成物から形成された絶縁膜における膜厚1μmあたりのOD値が0.3〜2.0となるように調整されることが好ましい。OD値は、例えばペリレンブラック有機顔料のような従来公知の黒色顔料を用いることにより調整しても、前述した有機顔料の中から2種以上を組み合わせて使用して調整してもよい。また、黒色顔料と1種類以上の他色の顔料とを組み合わせることにより調整してもよい。したがって、選択される顔料によるが、本発明に係るポジ型感光性組成物の固形分に対して5質量%〜120質量%、好ましくは、10質量%〜100質量%含有することが好ましい。また、有機顔料を含有することにより、本発明のポジ型感光性組成物から形成される絶縁膜における誘電率は10未満となる。
【0018】
[(A)アルカリ可溶性樹脂]
(A)成分としては、例えば、フェノール類(フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール等)と、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド前駆体、プロピオンアルデヒド、2−ヒドロキシベンズアルデヒド、3−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシベンズアルデヒド等)及び/又はケトン類(メチルエチルケトン、アセトン等)とを、酸性触媒存在下に縮合させて得られるノボラック樹脂、ヒドロキシスチレンの単独重合体、ヒドロキシスチレンと他のスチレン系単量体との共重合体、ヒドロキシスチレンとアクリル酸又はメタクリル酸あるいはその誘導体との共重合体等のヒドロキシスチレン系樹脂、アクリル酸、メタクリル酸、あるいはその誘導体、又はこれらの共重合体等のアクリル系樹脂等が挙げられる。(A)成分は本発明に係るポジ型感光性組成物の固形分に対して10質量%〜70質量%、好ましくは、20質量%〜50質量%含有することが好ましい。
【0019】
[(B)キノンジアジド基含有化合物]
(B)成分は、キノンジアジド基含有化合物であり、特に下記一般式(b1)
【化1】

[上記一般式(b1)中、Rb1〜Rb8は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、又は炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を表し、Rb10及びRb11は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、Rb9が水素原子、又は炭素原子数1〜6のアルキル基の場合、Qは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は下記一般式(b2)
【化2】

[上記一般式(b2)中、Rb12及びRb13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、又は炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を表し、cは1〜3の整数を表す。]で表される残基を表し、QがRb9の末端と結合する場合は、QはRb9及び、QとRb9との間の炭素原子と共に、炭素原子数3〜6のシクロアルキレン鎖を構成し、a及びbは1〜3の整数を表し、dは0〜3の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。]で表される化合物と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル化合物とのエステル化反応生成物(非ベンゾフェノン系PAC)が、高感度であり、低NA条件下でも解像性に優れ、さらにマスクリニアリティやDOFの点から好ましい。
【0020】
上記一般式(b1)に該当するフェノール化合物としては、例えば、
〔1〕QがRb9の末端と結合しておらず、Rb9が水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、Qが一般式(b2)で表される残基を表し、nが0を表すトリスフェノール型化合物、及び
〔2〕QがRb9の末端と結合しておらず、Rb9が水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、Qが水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、nが1〜3の整数を表すリニア型ポリフェノール化合物が好ましい。
【0021】
トリスフェノール型化合物として、より具体的には、トリス(4−ヒドロシキフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等を挙げることができる。
【0022】
リニア型ポリフェノール化合物として、より具体的には、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−ヒドロキシフェノール、2,6−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール等のリニア型3核体フェノール化合物;1,1−ビス〔3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル〕イソプロパン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン等のリニア型4核体フェノール化合物;2,4−ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシベンジル]−4−メチルフェノール等のリニア型5核体フェノール化合物等を挙げることができる。
【0023】
また、トリスフェノール型化合物及びリニア型ポリフェノール化合物以外の、一般式(b1)に該当するフェノール化合物としては、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4−トリヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルメタン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−フルオロ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン等のビスフェノール型化合物;1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、等の多核枝分かれ型化合物;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の縮合型フェノール化合物等が挙げられる。これらのフェノール化合物は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記一般式(b1)で表される化合物のフェノール性水酸基の全部又は一部をナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化する方法は、常法により行うことができる。例えば、ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドを上記一般式(b1)で表される化合物と縮合させることにより得ることができる。具体的には、例えば上記一般式(b1)で表される化合物と、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4(又は5)−スルホニルクロライドとを、ジオキサン、n−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン等の有機溶媒に所定量溶解し、ここにトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ等の塩基性触媒を1種以上加えて反応させ、得られた生成物を水洗、乾燥して調製することができる。
【0025】
(B)成分としては、ナフトキノンジアジドエステル化物の他に、他のナフトキノンジアジドエステル化物も用いることができ、例えばポリヒドロキシベンゾフェノンや没食子酸アルキル等のフェノール化合物とナフトキノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応生成物等も用いられ得る。これら他のナフトキノンジアジドエステル化物の使用量は(B)成分中、80質量%以下、特には50質量%以下であることが好ましい。(B)成分は、本発明に係るポジ型感光性組成物の固形分に対して5質量%〜60質量%、好ましくは、10質量%〜40質量%含有することが好ましい。
【0026】
[(C)分子量が1,000以下のフェノール性水酸基含有化合物]
上述した(A)成分及び(B)成分の他に、さらに(C)成分として、分子量が1,000以下のフェノール性水酸基含有化合物を増感剤として配合してもよい。この(C)成分は、感度向上効果に優れており、(C)成分を用いることにより、低NA条件下においても、高感度、高解像度であり、さらにはマスクリニアリティに優れた材料が得られる。(C)成分の分子量は1,000以下、好ましくは700以下であり、実質的には200以上、好ましくは300以上である。
【0027】
このような(C)成分としては、感度向上剤、あるいは増感剤として一般に感光性組成物に用いられるフェノール性水酸基含有化合物であって、好ましくは上記分子量の条件を満足するものであれば、特に制限はなく、1種又は2種以上を任意に選択して用いることができる。そして、中でも、下記一般式(c1)
【化3】

[上記一般式(c1)中、Rc1〜Rc8は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、又は炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を表し、Rc10及びRc11は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、Rc9が水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基の場合、Qは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は下記一般式(c2)で表される残基
【化4】

[上記一般式(c2)中、Rc12及びRc13は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、又は炭素原子数3〜6のシクロアルキル基を表し、gは0〜3の整数を表す。]で表される残基を表し、QがRc9の末端と結合する場合は、QはRc9及び、QとRc9との間の炭素原子と共に、炭素原子数3〜6のシクロアルキレン鎖を構成し、e及びfは1〜3の整数を表し、hは0〜3の整数を表し、mは0〜3の整数を表す。]で表されるフェノール化合物が好ましい。
【0028】
具体的には、例えば上記(B)成分において例示した、フェノール化合物のナフトキノンジアジドエステル化物において用いられる、フェノール化合物の他、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルフェニルメタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(3−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(2−tert−ブチル−4,5−ジヒドロキシフェニル)−フェニルメタン等のトリスフェニル型化合物を好適に用いることができる。中でもビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、1−[1−(4−ヒロドキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンが好ましい。
【0029】
(C)成分の配合量は、添加する場合には(A)成分に対し0〜70質量%、好ましくは〜60質量%の範囲とされる。
【0030】
[活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物(D)]
(D)成分としては、活性光線又は放射線の照射により、直接若しくは間接的に酸を発生する物質である。(D)成分を、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(E)成分((E)成分については後述する。)と組み合わせて用いることにより、露光部分では酸が発生し、これが酸解離性溶解抑制基による保護を解離する。その結果、その露光部分がアルカリ可溶性となり、現像の際に露光部分だけが選択的に除去されて所定形状のパターンが得られる。
【0031】
このような酸発生剤は、従来公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような光酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩等のオニウム塩系光酸発生剤、オキシムスルホネート系光酸発生剤、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類等のジアゾメタン系光酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系光酸発生剤、イミノスルホネート系光酸発生剤、ジスルホン系光酸発生剤等が知られている。
【0032】
オニウム塩系光酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。その中でも、フッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が好ましい。
【0033】
オキシムスルホネート系光酸発生剤の例としては、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリル等が挙げられる。その中でも、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0034】
ジアゾメタン系光酸発生剤の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0035】
上述したような(D)成分は、単独で用いることも、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
また、(D)成分の配合量は、本発明に係るポジ型感光性組成物の固形分に対し、0.05〜5質量%とすることが好ましい。(D)成分の配合量を0.05質量%以上とすることによって充分な感度が得られるようになり、また、5質量%以下とすることによって溶剤に対する溶解性が向上して均一な溶液が得られ、保存安定性が向上する傾向がある。
【0037】
[酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(E)]
上記樹脂成分としては、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する、酸解離性溶解抑制基を有するノボラック樹脂、ヒドロキシスチレン系樹脂、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位と(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位とを有する共重合体等が好ましい。なお、(α−低級アルキル)アクリル酸は、カルボキシ基が結合するα位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸と、このα位の炭素原子に低級アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜5の低級アルキル基)が結合しているα−低級アルキルアクリル酸の一方又は両方を表す。(E)成分は、本発明に係るポジ型感光性組成物の固形分に対し10質量%〜80質量%、好ましくは、20質量%〜60質量%含有することが好ましい。
【0038】
[その他の成分]
本発明に係るポジ型感光性組成物では、必要に応じて添加剤を配合することができる。具体的には、増感剤、分散剤、分散助剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等が挙げられる。
【0039】
また、本発明に係るポジ型感光性組成物は、希釈のための溶剤や、消泡剤、界面活性剤等を添加してもよい。
【0040】
ここで、本発明に係るポジ型感光性組成物に添加可能な溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、ぎ酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
中でもプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、3−メトキシブチルアセテートは、有機顔料等の不溶性成分の分散性を良好にすることができるため、好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテートを用いることが特に好ましい。溶剤は、本発明に係るポジ型感光性組成物の固形分100質量部に対して50質量部〜500質量部の範囲で用いることができる。
【0042】
上記界面活性剤として、例えばストリエーション防止等のために添加することができ、例えばフロラードFC−430、FC431(商品名、住友3M(株)製)、エフトップEF122A、EF122B、EF122C、EF126(商品名、トーケムプロダクツ(株)製)等のフッ素系界面活性剤、XR−104、メガファックR−08(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)等を用いることができる。
【0043】
本発明に係るポジ型感光性組成物の調整方法としては、前述の各成分を全て攪拌機で混合することにより得られる。なお、得られた混合物が均一なものとなるようフィルターを用いてろ過してもよい。
【0044】
[EL素子の形成]
本発明に係るポジ型感光性組成物を用いてEL素子を形成する手順は次による。まず、本発明に係るポジ型感光性組成物を、基板上に、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いて塗布する。基板は、光透過性を有する基板であれば、特に限定されるものではない。例えば、ガラス板、石英板、透明又は半透明の樹脂板等が挙げられる。一般的なEL素子では、上記基板には、透明電極が形成されている。この透明電極は下部電極となる。この透明電極は、例えば、ITO(インジウムスズオキサイド)で形成される。この下部電極は、ストライプ状等にパターン化されている。
【0045】
また、基板とポジ型感光性組成物との密着性を向上させるために、基板にシランカップリング剤を塗布しておいてもよい。
【0046】
このポジ型感光性組成物を塗布後、乾燥させて溶剤を除去する。乾燥方法は特に限定されず、例えば(1)ホットプレートにて80℃〜120℃、好ましくは90℃〜100℃の温度にて60秒間〜120秒間乾燥する方法、(2)室温にて数時間〜数日放置する方法、(3)温風ヒーターや赤外線ヒーター中に数十分〜数時間入れて溶剤を除去する方法、のいずれの方法を用いてもよい。
【0047】
次いで、ポジ型のマスクを介して、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して部分的に露光する。照射するエネルギー線量は、ポジ型感光性組成物の組成によっても異なるが、例えば30mJ/cm〜2000mJ/cm程度が好ましい。
【0048】
次いで、露光後の膜を、現像液により現像することによって所望の形状にパターニングする。現像方法は特に限定されず、例えば浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
【0049】
次いで、現像後のパターンを200℃程度でポストベークする。以上により、所定の形状を有する絶縁膜を形成することができる。絶縁膜の厚みとしては、通常0.3μm〜20μmの範囲内で設定することができ、好ましくは0.5μm〜10μm、さらに好ましくは0.8μm〜6μmである。
【0050】
上記絶縁膜は、EL素子におけるブラックマトリクスとなりうる。この絶縁膜は、例えば上記透明電極(下部電極)を囲むように形成される。
次いで、透明基板上に、発光層が形成される。この発光層は、例えば、蒸着あるいはインクジェット方式で、R,G,Bの各色の発光材料を所定の位置に付与することにより形成される。また、上記絶縁膜の断面形状がテーパー状(底辺が上辺よりも長い台形状)であることが好ましい。また、形成した絶縁膜の上部にさらに別の部材を形成する場合には、レジスト等が形成した絶縁膜の各隔壁に塗布される。この際、形成した絶縁膜用パターンの各隔壁のテーパー角が小さいと、優れた塗布性を得ることができるが、テーパー角が大きいと塗布性が悪化し、塗りムラが生じる原因となる。したがって、形成するテーパー角が小さいほうが望ましい。本発明に係るポジ型感光性組成物では、テーパー角を40度以下に抑えることが望ましい。テーパー角が40度を越えると塗布性が悪化し、塗りムラが生じる原因となる。
【0051】
その後、発光層上に上部電極が形成される。この上部電極は、例えばAl等の金属を蒸着することにより形成される。
また、発光層をインクジェット方式で形成する場合には、上記絶縁膜により開口部を設け、この開口部にインクを付与することにより形成することができる。
上記では、下部電極、発光層、及び上部電極の3層構造を示したが、これに限定されず、下部電極、正孔注入層、発光層、電子注入層、及び上部電極の5層構造、下部電極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層、上部電極の7層構造等の構造であってもよい。
【実施例】
【0052】
[参考例1]
下記成分を混合してポジ型感光性組成物Aを調製した。
(A)成分(アルカリ可溶性樹脂):m−クレゾール/p−クレゾール=60/40(モル比)の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとを用いて常法により合成した、Mw=3000のノボラック樹脂 15質量部
(B)成分(キノンジアジド基含有化合物):2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン1モルと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロライド2モルとのエステル化反応生成物 10質量部
溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート75質量部
【0053】
得られたポジ型感光性組成物を、スピンコーターを用いて膜厚1.2μmになるように、ITO基板に塗布し、90℃で90秒加熱した。さらに、ポジマスクを介して超高圧水銀灯で露光(EXM−1066−E01:オーク社製 エネルギー線量300mJ/cm)し、2.38質量%TMAHを用いて現像後、200℃でベークを行い、膜を形成した。
【0054】
[実施例1〜5]
前記参考例1で調製したポジ型感光性組成物Aと、顔料分散液A〜Dとを混合することにより絶縁膜形成用のポジ型感光性組成物を調製した。その組成については表1のとおりである。なお、表中の数字は「質量部」である。得られたポジ型感光性組成物を、スピンコーターを用いて膜厚1.2μmになるように、ITO基板に塗布し、90℃で90秒加熱した。さらに、ポジマスクを介して超高圧水銀灯で露光(EXM−1066−E01:オーク社製 エネルギー線量300mJ/cm)し、2.38質量%TMAHを用いて現像後、200℃でベークを行い、絶縁膜を形成した。
【表1】

なお、顔料分散液A〜Dは、下記表2に示す組成にて、常法に従いメディアミルにより調製した。なお、表中の数字は「質量部」であり、使用した分散剤はアクリル系である。
【表2】

【0055】
[比較例1]
顔料分散液を、「CFブラックEX−1455」(御国色素社製、カーボンブラック24%含有)に代えた他は実施例1と同様の方法により、絶縁膜を形成した。
【0056】
[比較例2]
下記により、ネガ型感光性組成物を調製した。
ベンジルメタクリレート56質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、36質量部及びグリシジルメタクリレート78質量部をエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート250質量部に溶解させ、アゾビスイソブチロニトリル2質量部を加え、加熱重合を行った。その後、重合禁止剤としてメチルヒドロキノン2質量部を溶解させたアクリル酸40質量部を添加し反応させた。次いで、テトラヒドロフタル酸無水物42質量部を加えて反応させ、樹脂を得た。得られた樹脂の質量平均分子量は3000であった。さらに、有機顔料(青色顔料分散液「CFブルーUM(ブルー顔料20%質量%含有、御国色素株式会社製)全固形分に対し80質量部を混合した。
【0057】
得られたネガ型感光性組成物を、スピンコーターを用いて膜厚1.2μmになるように、ITO基板に塗布し、90℃で90秒加熱した。さらに、ネガマスクを介して紫外線で露光(EXM−1066−E01:オーク社製 エネルギー線量300mJ/cm)し、0.04質量%TMAHを用いて現像後、200℃でベークを行い、絶縁膜を形成した。
【0058】
(評価1:抵抗値、誘電率及びOD値の測定)
上記により形成された絶縁膜について、抵抗値、誘電率及びOD値を評価した。結果を表3に示す。なお、抵抗値はハイレスタIPMCPーHT260(三菱油化社製)を用いて、誘電率は誘電率測定装置「SSM495」(商品名、日本SSM社製)を用いて、OD値は「Gretag Machbeth D−200−2」(商品名、Machbeth社製)を用いてそれぞれ測定した。
【0059】
【表3】

【0060】
以上の結果から、本発明に係るポジ型感光性組成物は、カーボンブラックを用いた例(比較例2)と同様のOD値を有しながら、高抵抗値かつ低誘電率を有する絶縁膜を形成できることが示された。
【0061】
(評価2:テーパー角の測定及び非発光部の有無)
実施例5及び比較例2で形成した絶縁膜について、走査型電子顕微鏡(S−4300、日立社製)によりテーパー角を測定した後、EL素子化を行い画素中の非発光部分の有無を確認した。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
ポジ型感光性組成物(実施例5)を用いた場合には、ネガ型感光性組成物(比較例2)を用いた場合と比較して、テーパー角が小さく、かつ非発光部の発生がなかったことが確認された。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料を含有するEL素子絶縁膜形成用の着色ポジ型感光性組成物。
【請求項2】
アルカリ可溶性樹脂及びキノンジアジド基含有化合物を含有する、請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項3】
活性光線又は放射線照射により酸を発生する化合物及び酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂を含有する、請求項1に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項4】
形成される膜の誘電率が10未満である、請求項1から4のいずれか1項に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項5】
形成される膜のOD値が、膜厚1μmあたり0.3〜2.0である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポジ型感光性組成物。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項に記載のポジ型感光性組成物から形成された膜を備えるEL素子。

【公開番号】特開2009−117266(P2009−117266A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291484(P2007−291484)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】