説明

ポストキュアインフレータのリム交換装置

【課題】交換作業の自動化が図れると共に、加硫機のダウンタイムを削減して生産性の向上が図れ、かつコストダウンも図れるポストキュアインフレータのリム交換装置を提供する。
【解決手段】第一の支持体13と第二の支持体16とで挟持した加硫済タイヤ内に圧縮気体を封入して膨脹冷却を行なうポストキュアインフレータにおいて、前記第一の支持体の第一のフランジ12に装着される外側リム11と前記第二の支持体の第二のフランジ15に装着される内側リム14の内周部に設けられた環状溝41と、前記第一のフランジと前記第二のフランジに水平方向へ出没自在に複数設けられ突出状態では前記環状溝41に係合して外側リム及び内側リムの第一のフランジ及び第二のフランジからの離脱を阻止する係合部材42と、を有するクランプ・アンクランプ機構26を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫済タイヤの膨脹・冷却を行うポストキュアインフレータ(POST CURE INFLATOR:略してPCIと称す)におけるリムの交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
強度メンバとしてナイロンコード等が使用されているタイヤにあっては、加硫機から搬出される未冷却・加硫済タイヤに圧縮気体を注入して該タイヤを膨脹させた状態で冷却するためにポストキュアインフレータが使用される。
【0003】
従来のターンオーバー式(上下反転式)のポストキュアインフレータにおいては、内側リム(ポストキュアインフレータ本体の旋回中心に近い方)及び外側リムがそれぞれ取付フランジにボルト締めされており、タイヤの膨脹反力は両リムを介してリム中央空間部を貫通するように設けられたバヨネットロック機構により保持される構成となっている。
【0004】
そして、加硫機から送出された未冷却・加硫済タイヤは前記バヨネットロック機構を開放し、流体圧シリンダにより外側リムを遠ざけた状態にしてから、コンベヤ装置を介して、又は、加硫機に付属されたアンローダ又はポストキュアインフレータに付属されたローダによって、一方のリム上に据置き、把持・膨脹が完了すると反転させて他方の組のリムの方へのタイヤの給排出を行なう方法が多く採用されている。
【0005】
このようなポストキュアインフレータは、一般に、リムを交換することにより、複数種のビード径のタイヤが処理可能とされている。特許文献1では、上述したポストキュアインフレータのように、リムがボルト締め等されるものにあっては、その交換作業が手作業になり、作業者の負担が大きく長い交換時間を要することを懸念し、例えば、図7に示すようなリム交換装置を提案して、リムの交換作業の簡易化を図っている。
【0006】
図7に示すように、上リムサポート200aには、Oリング201aを介して上リムアタッチメント202aが嵌合され、固定用金具203aで固定される。同様に、下リムサポート200bには、Oリング201bを介して上リムアタッチメント202bが嵌合され、固定用金具203bで固定される。そして、上,下リムアタッチメント202a,202bにOリング204a,204bを介して上,下リム205a,205bがそれぞれ装着される。
【0007】
この装着の際には、上,下リム205a,205bが、上,下リムアタッチメント202a,202bの周方向の複数箇所に予め植設された上,下リム位置決め用ガイドピン206a,206bにより、それぞれ水平面での位置決めがなされると共に、上,下リム装着用金具207a,207bと上,下リム装着用シリンダ208a,208bにより、それぞれ装着(チャッキング)されるようになっている。上,下リム装着用金具207a,207bは予め上,下リム205a,205bの周方向の複数箇所にそれぞれボルト結合(外段取り)されると共に、上,下リム装着用シリンダ208a,208bは、上,下シリンダ取付用金具209a,209bを介して上,下リムアタッチメント202a,202bの上記上,下リム装着用金具207a,207bに対応した位置にそれぞれ横向きに取着される。尚、上記上,下シリンダ取付用金具209a,209bには、上,下リム装着用シリンダ208a,208bの他に、図示しない上,下リム取外し用シリンダがそれぞれ縦向きに取着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−70833号公報
【特許文献2】特願2008−155375号
【特許文献3】特許第2670251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されたようなものにあっては、上,下リム205a,205bの交換時に、上,下リム位置決め用ガイドピン206a,206bを介して周方向の位相合わせが必要となることから、自動化が図れないという問題点があった。また、上,下リム205a,205bに上,下リム装着用金具207a,207bの取付け、取外しが必要であることから、手間を要するという問題点もあった。この手間を省くため、常時上,下リム装着用金具207a,207bを取り付けた状態にすると、上,下リム205a,205bの保管時に嵩張るという欠点がある。また、上,下リムアタッチメント202a,202bに取着されるリム着脱用のアクチェエータ(上,下リム装着用シリンダ208a,208bと上,下リム取外し用シリンダ)も多くなるという問題点もあった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、交換作業の自動化により省人化が図れると共に、交換作業に要する時間の短縮により段替え時の加硫機のダウンタイムを削減して生産性の向上が図れるポストキュアインフレータのリム交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するための本発明に係るポストキュアインフレータのリム交換装置は、下記のように構成される。
(1)加硫済タイヤの一方側のビードをリムを介して支持する略環状の第一のフランジと、前記加硫済タイヤの他方側のビードをリムを介して支持する略環状の第二のフランジと、を備え、前記第一のフランジと前記第二のフランジとで挟持した前記加硫済タイヤ内に圧縮気体を封入して膨脹冷却を行なうポストキュアインフレータにおいて、
前記第一のフランジと前記第二のフランジに装着されるリムの内周部に設けられた溝と、前記第一のフランジと前記第二のフランジに水平方向へ出没自在に設けられ突出状態では前記溝に係合して前記リムの前記フランジからの離脱を阻止する係合部材と、を有するクランプ・アンクランプ機構を設けたことを特徴とする。
(2)また、前記クランプ・アンクランプ機構は、前記係合部材が棒状に形成され収納空間内において常時第一のバネにより突出方向に付勢されていると共に、前記係合部材に同係合部材の軸線と直角方向に傾斜面で係合すると共に収納空間内において常時第二のバネにより前記係合部材が突出する方向に付勢されて前記傾斜面と反対側の端部を前記収納空間から突出したくさび部材を有し、かつ前記くさび部材の前記傾斜面と反対側の端部を前記第二のバネの付勢力に抗して押圧することで前記くさび部材が係合部材に深く係合して同係合部材を没動させ前記リムの前記フランジからの離脱を可能とするアクチュエータを備えたことを特徴とする。
(3)また、前記くさび部材は、前記アクチェエータの非作動時に前記係合部材が第一のバネにより付勢されて前記溝に係合した状態においても前記係合部材に対し浅く係合することを特徴とする。
(4)また、前記アクチェエータは、第一のフランジ側のクランプ・アンクランプ機構においてはポストキュアインフレータ本体の上方又は下方に設置されたリフターに設置されると共に、前記第二のフランジ側のクランプ・アンクランプ機構においては同第二のフランジ側に設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(1)の構成によれば、装着用金具取付等のリムへの機外作業が無いと共にリム交換時の装着の際における周方向の位相合わせが不要となるので、ローダ等で自動で装着することが可能となり、交換作業の自動化により省人化が図れると共に、交換作業に要する時間の短縮により段替え時の加硫機のダウンタイムを削減して生産性の向上が図れる。
(2)の構成によれば、クランプ・アンクランプ機構をくさび機構を用いて簡略化することができると共にアクチェエータを効果的な位置に設置できる。
(3)の構成によれば、クランプ・アンクランプ機構の組付時等リムの非装着状態で前記アクチェエータの非作動時に、前記係合部材が収納空間から不用意に抜け出すことが防止される。
(4)の構成によれば、アクチェエータを効果的な位置に設置できると共に、ターンオーバー式(上下反転式)のポストキュアインフレータにおいてはアクチェエータの設置数を可及的に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1を示すポストキュアインフレータ本体部の断面図である。
【図2】リフター部の断面図である。
【図3A】クランプ・アンクランプ機構のクランプ状態を示す要部断面図である。
【図3B】クランプ・アンクランプ機構のアンクランプ状態を示す要部断面図である。
【図4】内側リムと外側リムの断面図である。
【図5A】係合部材の説明図である。
【図5B】くさび部材の説明図である。
【図6】リム交換の動作図である。
【図7】従来のリム交換装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るポストキュアインフレータのリム交換装置を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例1を示すポストキュアインフレータ本体の断面図、図2はリフター部の断面図、図3はクランプ・アンクランプ機構のクランプ状態を示す要部断面図、図3Bはクランプ・アンクランプ機構のアンクランプ状態を示す要部断面図、図4は内側リムと外側リムの断面図、図5Aは係合部材の説明図、図5Bはくさび部材の説明図、図6はリム交換の動作図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、図示しない加硫機(本体)で加硫処理された加硫済タイヤを保持してインフレート処理を行うポストキュアインフレータ(PCI)は、ポストキュアインフレータ本体10とリフター100とを備える。
【0017】
ポストキュアインフレータ本体10は、図1に示すように、加硫済タイヤの一方側のビード(図示せず)を外側リム11を介して支持する第一のフランジ12を有する第一の支持体13と、第一の支持体13と連結されて他方側のビード(図示せず)を内側リム14を介して支持する第二のフランジ15を有する第二の支持体16とを備える。
【0018】
図示例では、第一の支持体13及び第二の支持体16は二組備えられ、加硫済タイヤを二つ保持可能な所謂ターンオーバー式(上下反転式)のポストキュアインフレータで構成されている。尚、本発明に係るポストキュアインフレータの本来的な構造及び動作は、特許文献2で本出願人が既に提案したものと同様なので、これを参照し、ここではリム交換装置に特化して説明する。
【0019】
そして、二つの第二の支持体16を水平な軸回り(図1中の回転中心O参照)で回転可能に支持する回転体17は、第二の支持体16に係止されたいずれか一方または両方の第一の支持体13と共に、図示しない吊部材を介して駆動手段により水平方向に移動されると共に、前記リフター100はいずれか一方の第一の支持体13を着脱可能に支持して上下方向に昇降させるようになっている。
【0020】
次に、第一の支持体13及び第二の支持体16について詳述する。先ず、二つの第二の支持体16は、回転体17に軸対称に、それぞれ径方向に突出するようにして取り付けられており、それぞれ、径方向外方に向かって開口する略筒状の本体部18と、本体部18の内部から同軸に進退可能な有底略円柱状の係合部19と、本体部18に取り付けられた前述の第二のフランジ15とを有する。
【0021】
前記係合部19は、本体部18内部で摺動可能な外筒部20と、外筒部20基端に設けられた底部21と、外筒部20内部で底部21から突出した略円筒状の内筒部22とを有する。係合部19は、公知の技術(例えば、特許文献3参照)により、本体部18に対して軸方向に進退し、位置を調整することが可能であり、これにより第一のフランジ12と第二のフランジ15との離間距離を調整して様々な加硫済タイヤを保持することが可能になっている。尚、図示例では、離間距離が異なる二組の第一のフランジ12及び第二のフランジ15が便宜上示されているが、実際には同一サイズの加硫済タイヤをインフレート処理するので離間距離は等しい。
【0022】
また、外筒部20の先端内周面には内方に向って係止爪20aが突出している。そして、外筒部20には、係止爪20aによって、非円形状、より具体的には略三角形状の開口20cが形成されている。尚、外筒部20の内周面には、後述する第一の支持体13のビード掴み用爪31を支持、案内するガイド軸34を挿脱可能に、軸方向に沿ってガイド挿入溝20dが形成されている。
【0023】
また、第二のフランジ15は、小径部15aと大径部15bとに分割形成された(一体形成でも良い)略環状の部材で、本体部18に固定されており、係合部19が軸方向に進退可能に挿通されている。第二のフランジ15には、内側リム14が固定され、加硫済タイヤの他方側のビードが支持される。
【0024】
また、第二のフランジ15において内側リム14よりも径方向内方には、加硫済タイヤを内側リム14を介して支持する支持面25aから反対側の面25bまで貫通する図示しない通気孔が形成されている。そして、図示しないが、通気孔において支持面25aと反対側の面25bの開口には、圧縮気体を供給する供給手段が接続されており、これにより第二のフランジ15に支持された加硫済タイヤの内部に圧縮気体を充填して膨張させることが可能になっている。
【0025】
また、第二のフランジ15と内側リム14との間には、リム交換装置としての後述するクランプ・アンクランプ機構26が設けられる。さらに、第二のフランジ15には、リム押出しアクチュエータ(エアシリンダ等)27が周方向に少なくとも二箇所設置される。このリム押出しアクチュエータ27は、クランプ・アンクランプ機構26がアンクランプ状態でも小径部15aの外周面に装着したOリング28の抵抗等で内側リム14が自重のみでは外れないので設けられる。
【0026】
次に、各第一の支持体13は、第二の支持体16と同軸として配設されるロック軸30と、ロック軸30が挿通された略環状の第一のフランジ12と、第一のフランジ12に固定された外側リム11上に支持される加硫済タイヤの一方側のビード(図示せず)を係止するための係止部材であるビード掴み用爪31と、ビード掴み用爪31を支持する支持ディスク33と、ロック軸30に略平行に配設され、第一のフランジ12及び支持ディスク33を軸方向に案内するガイド軸34とを有する。尚、第一のフランジ12は小径部12aと大径部12bとに分割形成されているが、一体形成されても良い。
【0027】
ロック軸30は、略円柱状の部材で、第一のフランジ12に挿通され、該第一のフランジ12を軸方向に進退可能としている。また、ロック軸30は、第二の支持体16の係合部19の外筒部20に挿入可能な外径を有すると共に、ロック機構として、先端外周面には径方向外方へ突出するロック爪30aが形成されている。ロック爪30aは、その外縁が係止爪20aによる開口20cに挿入可能に、該開口20cの形状と対応した非円形形状で、即ち本実施例では略三角形状に形成されている。
【0028】
また、ロック軸30の先端には、軸方向に凹部30bが形成されており、ロック軸30を外筒部20内部に挿入する際に、内筒部22をガイドとして挿入可能になっている。ロック軸30の基端側には、略環状のストッパ35が一体形成されている。一方、ロック軸30の基端面には軸方向に沿って角穴30cが形成されており、後述する切替手段106の駆動軸109の角頭部109aが嵌合可能となっている。また、ストッパ35は、ロック軸30から径方向外方へ張り出しており、これにより第一のフランジ12を基端側の所定位置で係止することが可能となっている。
【0029】
また、ロック軸30において、ストッパ35の基端側には、径方向外方へ張り出す係止フランジ36が回転可能に嵌挿される。さらに、係止フランジ36よりも基端側には非円形状の内周面を有したリング部材37が軸方向に進退可能に外装される。このリング部材37は係止フランジ36に回転不能に軸支されて図示しないバネ部材により係止フランジ36から離間する方向に付勢されてロック軸30を廻り止めしている。即ち、ロック軸30の非円形状の外周部と嵌合するのである。
【0030】
また、ガイド軸34は、本実施例では、三つ備え、ロック軸30の径方向外方に、軸回りに等角度となる位置に配設されている。そして、第一のフランジ12には、各ガイド軸34が挿通される貫通孔12cが形成される。ここで、ガイド軸34は、先端がロック軸30のロック爪30aよりも基端側に位置するように配置され、係止フランジ36に固定されている。
【0031】
また、第一のフランジ12と外側リム11との間には、リム交換装置としての後述するクランプ・アンクランプ機構26が設けられる。尚、前述したビード掴み用爪31及び支持ディスク33の構成は特許文献2(図4及び図6等)に開示されたものと同様であるのでこれを参照して詳しい説明は省略する。また、ビード掴み手段としては、特許文献2(図4及び図6等)に開示されたものに限定されず、種々の構成のものが考えられる。
【0032】
一方、リフター100は、図2に示すように、上下方向に延設され、ビーム材101に固定されているガイド102によって上下方向に進退可能に支持されたスライダ103と、第一の支持体13を支持する支持板104と、ビーム材101に固定された油圧シリンダ105とを有する。支持板104には図示しない挿通孔が形成されていて、スライダ103が進退可能に挿通されている。そして、スライダ103の上端は、支持板104の上板104aに接続されている。
【0033】
油圧シリンダ105はビーム材101に上向きに支持され、そのピストンロッド先端が支持フレーム113を介して支持板104に固定されている。そして、リフター100は油圧シリンダ105の伸縮作動で支持板104及び支持板104に支持された第一の支持体13を、ビーム材101上で上下方向に移動させることが可能となっている。
【0034】
支持板104には、ロック軸30を回転させて第一の支持体13と第二の支持体16との着脱を行う切替手段106と、支持板104に接続された第一の支持体13の第一のフランジ12を進退させるエアシリンダ107が設けられる。切替手段106は、支持板104の中心部を軸受108を介して回動自在に貫通する駆動軸109と、支持板104に横向きに揺動自在に支持されて前記駆動軸109を回動させるエアシリンダ110とを有する。駆動軸109の先端はロック軸30の角穴30cと対応する断面略矩形状の角頭部109aに形成されて角穴30cに着脱自在に嵌合しており、駆動軸109の下端はクランク機構111を介してエアシリンダ110のピストンロッド先端と連結している。尚、図2中112は支持板104に植設された突上げ部材で、この突上げ部材112でリング部材37を突き上げることでロック軸30の回転不能状態が解放されて回転可能となる。
【0035】
従って、図2に示すように、リフター100の油圧シリンダ105の伸長作動により、駆動軸109の角頭部109aがロック軸の角穴30cに嵌合し支持板104で第一の支持体13を支持すると共に突上げ部材112でリング部材37を突き上げてロック軸30の回転不能状態を解放し、切替手段106のエアシリンダ110を伸縮作動させることでロック軸30を回転させることが可能となる。
【0036】
そして、切替手段106によってロック軸30を回転させることにより、第二の支持体16の係合部19の開口20cに対する第一の支持体13のロック爪30aの位相を軸回りに調整し、係合部19の外筒部20へのロック軸30の挿脱を可能とすると共に、挿入した状態でロック軸30を回転させることで、ロック爪30aと係止爪20とを係合させて、第一の支持体13と第二の支持体16とを一体とすることが可能である(図1参照)。
【0037】
次に、前述したクランプ・アンクランプ機構26を第一のフランジ12側に例をとって説明するが、第二のフランジ15側も後述するリムクランプ・アンクランプアクチュエータ(エアシリンダ等)40の設置個所以外は同様の構造である。
【0038】
クランプ・アンクランプ機構26は、図3A,図3B,図4,図5A及び図5Bに示すように、第一の支持体13の第一のフランジ12に装着される外側リム11の内周部に設けられた環状溝(特に環状に限定されず、円弧状に長い溝でも良い)41と、前記第一のフランジ12に水平方向へ出没自在に複数設けられ突出状態では前記環状溝41に係合して前記外側リム11の前記第一のフランジ12の小径部12aからの離脱を阻止する係合部材42と、を有する。
【0039】
図示例では、前記環状溝41は、前記小径部12aの外周面と嵌合する外側リム11の内周面に形成されたテーパ面11a(図4参照)に形成される。このテーパ面11aは、第一のフランジ12の大径部12b側の開口部に向かって徐々に大径に形成され、例えば第二のフランジ15に装着される内側リム14として用いられた場合等において、前述したリム押出しアクチュエータ27の伸長ストロークを短縮してその負荷の軽減を図るとともに、例えば外側リム11の第一のフランジ12への取り付け時等において、ガイドの役割を果たしている。
【0040】
また、前記係合部材42が概ね丸棒状に形成され収納空間(穴)43内において常時第一のバネ44により突出方向に付勢されていると共に、前記係合部材42に同係合部材42の軸線と直角方向に傾斜面45aで係合すると共に収納空間(穴)46内において常時第二のバネ47により前記係合部材42が突出する方向に付勢されて前記傾斜面45aと反対側の端部を前記収納空間46から突出した概ね丸棒状のくさび部材45を有する。
【0041】
尚、前記収納空間43は小径部12aに形成され、これに連通する収納空間46は小径部12aと大径部12bとこの大径部12bに付設された収納ブラケット48とに跨って形成される。また、前記係合部材42は、図5Aに示すように、環状溝41に係合する突起部42cとガイド板部42bとこのガイド板部42bの両側に形成された傾斜面部42aとを有すると共に、前記くさび部材45は、図5Bに示すように、前記傾斜面部42aと係合してくさび作用を奏する前述した傾斜面45aとこの傾斜面45aを一側に設けて前記ガイド板部42bを挟むようにして嵌合する二股状部45bと前述した収納ブラケット48からの抜け出しを防止する環状突部45cとを有する。このようにして、係合部材42のガイド板部42bをくさび部材45の二股状部45bが挟むようにして嵌合するので、丸棒状に形成された両部材42,45の回転が阻止できて円滑に動作される。
【0042】
さらに、前記くさび部材45の前記傾斜面45aと反対側の端部を前記第二のバネ47の付勢力に抗して押圧することで前記くさび部材45が係合部材42に深く係合して同係合部材42を没動させ前記外側リム11の前記第一のフランジ12からの離脱を可能とする前述したリムクランプ・アンクランプアクチュエータ40を備えている。尚、本実施例では、リムクランプ・アンクランプアクチュエータ40は二つの内側リム14の場合は、それぞれ対応する第二のフランジ15に設置される(本体部18でも良い)が、二つの外側リム11の場合は、リフター100の支持板104上に設置される。これは、外側リム11のアンクランプ動作は第一の支持体13がリフター100の支持板104上に支持(連結)された状態の時にのみ行われるからである。従って、外側リム11にあっては、リムクランプ・アンクランプアクチュエータ40がリフター100側に設置されていることとリム押出しアクチェエータ27を不要としているため、前述した特許文献1より少ないアクチュエータでリムの着脱が可能となる。
【0043】
さらにまた、前記くさび部材45は、前記リムクランプ・アンクランプアクチュエータ40の非作動時に前記係合部材42が第一のバネ44により付勢されて前記環状溝41に係合した状態においても前記係合部材42に対し浅く係合するようになっている(図3A参照)。従って、クランプ・アンクランプ機構26の組付時等リムの非装着状態で前記リムクランプ・アンクランプアクチュエータ40の非作動時に、前記係合部材42が収納空間43から不用意に抜け出すことが防止される。
【0044】
このように構成されるため、ポストキュアインフレータの本来的な構造及び動作は、前述した構成から特許文献2を参照すれば自明であるので詳しい説明は省略し、ここでは図6を用いてリム交換装置に特化して説明する。
【0045】
(1)のステップで、外側リム11に内側リム14が積み重ねられた状態でローダHによりポストキュアインフレータのリフター100へ搬送する。尚、この際、外側リム11と内側リム14は、接触面内径部に互いに嵌合するテーパ部を設ける等により、センタリングされた状態である。
【0046】
(2)のステップで、リフター100上には予め第一の支持体13が第二の支持体16と分離して支持されている。この際、ロック軸30は切替手段106により第二の支持体16における係合部19の外筒部20への挿脱が可能になっている(図2参照)。また、外側リム11と第一のフランジ12の大径部12bとの間にはOリング28の抵抗により隙間が生じるが問題は無い。尚、クランプ・アンクランプ機構26は、図3Bに示したアンクランプ状態である。
【0047】
(3)のステップで、リフター100を(2)のステップの状態から油圧シリンダ105の伸長作動により上昇させ、第一の支持体13のロック軸30を真上に位置する第二の支持体16における係合部19の外筒部20へ挿入し、外側リム11は第一のフランジ12に、内側リム14は第二のフランジ15にそれぞれ密着・嵌合する。そして、クランプ・アンクランプ機構26を、図3Aに示したクランプ状態する。次いで、ロック軸30は切替手段106により第二の支持体16における係合部19の外筒部20に対しロックし得る回転位相に切り替えられる。
【0048】
(4)のステップで、リフター100を油圧シリンダ105の収縮作動により下降させれば、第一の支持体13が第二の支持体16に連結され、ターンオーバー式(上下反転式)のポストキュアインフレータにおける一方側のリム装着が完了する。この後、他方側のリム装着は、回転体17を反転させた後、(1)のステップから(4)のステップへと繰り返せば良い。
【0049】
尚、リム取り外しは、逆の動作を行えば良いことは自明であるので説明は省略する。ただし、前述した(3)のステップで、リフター100を油圧シリンダ105の収縮作動により下降させる時に、リム押出しアクチュエータ27を作動させて内側リム14を第二のフランジ15から離脱させる必要がある。
【0050】
このようにして、本実施例では、リム交換時に周方向の位相合わせが不要であるクランプ・アンクランプ機構26を設けると共に、リムへ取り付ける、クランプ・アンクランプに用いる金具等を不要とした。
【0051】
これにより、(1)人手を要していた交換作業の自動化が可能となり、省人化が可能となる、(2)手作業が不要となり、安全性が向上する、(3)リムの交換作業に必要な時間が短縮でき、段替え時の加硫機生産停止時間を短縮できる、(4)リムへ取り付ける、クランプ・アンクランプに用いる金具等を不要としたので、機外での準備作業等が不要であると共にリムの保管等においても嵩張ることがないのでスペース的に有効である、(5)リム着脱用アクチュエータを効果的に設置したのでその数量を減らすことができる、(6)クランプ・アンクランプ機構26は、既設機に対しても、ポストキュアインフレータ本体10を入れ替えることなく、改造にて設置できるので安価で済む、等の効果が得られる。
【0052】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能なことは言うまでもない。例えば、クランプ・アンクランプ機構26の係合部材42はくさび部材45を用いずに直接電磁式のアクチュエータ等で動作させても良い。また、ターンオーバー式(上下反転式)のポストキュアインフレータに限定されず、第一の支持体13と第二の支持体16とを一組だけ設けたポストキュアインフレータにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るポストキュアインフレータのリム交換装置は、ターンオーバー式(上下反転式)のポストキュアインフレータに用いて好適である。
【符号の説明】
【0054】
10 ポストキュアインフレータ本体
11 外側リム
12 第一のフランジ
13 第一の支持体
14 内側リム
15 第二のフランジ
16 第二の支持体
17 回転体
18 本体部
19 係合部
26 クランプ・アンクランプ機構
27 リム押出しアクチュエータ
30 ロック軸
30a ロック爪
34 ガイド軸
35 ストッパ
37 リング部材
40 リムクランプ・アンクランプアクチュエータ
42 係合部材
42a 傾斜面
43 収納空間
44 第一のバネ
45 くさび部材
45a 傾斜面
46 収納空間
47 第二のバネ
100 リフター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫済タイヤの一方側のビードをリムを介して支持する略環状の第一のフランジと、前記加硫済タイヤの他方側のビードをリムを介して支持する略環状の第二のフランジと、を備え、前記第一のフランジと前記第二のフランジとで挟持した前記加硫済タイヤ内に圧縮気体を封入して膨脹冷却を行なうポストキュアインフレータにおいて、
前記第一のフランジと前記第二のフランジに装着されるリムの内周部に設けられた溝と、前記第一のフランジと前記第二のフランジに水平方向へ出没自在に設けられ突出状態では前記溝に係合して前記リムの前記フランジからの離脱を阻止する係合部材と、を有するクランプ・アンクランプ機構を設けたことを特徴とするポストキュアインフレータのリム交換装置。
【請求項2】
前記クランプ・アンクランプ機構は、前記係合部材が棒状に形成され収納空間内において常時第一のバネにより突出方向に付勢されていると共に、前記係合部材に同係合部材の軸線と直角方向に傾斜面で係合すると共に収納空間内において常時第二のバネにより前記係合部材が突出する方向に付勢されて前記傾斜面と反対側の端部を前記収納空間から突出したくさび部材を有し、かつ前記くさび部材の前記傾斜面と反対側の端部を前記第二のバネの付勢力に抗して押圧することで前記くさび部材が係合部材に深く係合して同係合部材を没動させ前記リムの前記フランジからの離脱を可能とするアクチュエータを備えたことを特徴とする請求項1に記載のポストキュアインフレータのリム交換装置。
【請求項3】
前記くさび部材は、前記アクチェエータの非作動時に前記係合部材が第一のバネにより付勢されて前記溝に係合した状態においても前記係合部材に対し浅く係合することを特徴とする請求項2に記載のポストキュアインフレータのリム交換装置。
【請求項4】
前記アクチェエータは、第一のフランジ側のクランプ・アンクランプ機構においてはポストキュアインフレータ本体の上方又は下方に設置されたリフターに設置されると共に、前記第二のフランジ側のクランプ・アンクランプ機構においては同第二のフランジ側に設置されることを特徴とする請求項2又は3に記載のポストキュアインフレータのリム交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−25425(P2011−25425A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170810(P2009−170810)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】