説明

ポリアミック酸樹脂組成物及びその製造方法、並びにこれを用いたポリイミド金属積層体

【課題】本発明は、ポリアミック酸樹脂組成物及びその製造方法、並びにこれを用いたポリイミド金属積層体に関するに関する。
【解決手段】本発明の前記ポリアミック酸樹脂組成物は、下記化学式1のエポキシ化合物を含むことにより、ポリイミド化反応時に界面でブリスタリング現象が生じることを防止することができる。
[化学式1]


(前記化学式1中、X、Xはそれぞれ独立して、−C2m−CHで置換または非置換され、Y-またはY-のうち何れか一つ以上は、


または


(p、qは1〜5の整数)から選択され、m、nは1〜5の整数、rは1〜10の自然数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸樹脂組成物及びその製造方法、並びにこれを用いたポリイミド金属積層体に関する。より詳細には、前記ポリアミック酸樹脂組成物は、特定構造のエポキシ化合物を含むことによりブリスタリング現象が生じることを抑制するポリアミック酸樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Ciruit Board)の製造に使用されるフレキシブル金属箔積層体(Flexilbe Metal Clad Laminate)(以下「金属積層体」という)は、伝導性金属箔(metal foil)と絶縁樹脂との積層体であり、これを用いて微細回路を加工することができ、狭い空間で折り曲げることができる。これにより、金属積層体は、電子機器の小型化及び軽量化の傾向に伴い、ノートパソコン、携帯情報端末、小型ビデオカメラ及び記憶ディスクなどに対する活用が増大している。
【0003】
金属積層体は、金属箔とポリイミド層で構成された単面金属積層体、及び2層の金属箔の間にポリイミド層が存在する両面金属積層体がある。
【0004】
金属積層体の製造方法は、硬化方式によりロールツーロール(roll to roll)工程とバッチ(batch)工程に分けられる。
【0005】
バッチ工程は、バッチ硬化の前後に金属箔とポリイミドとの間で発生しやすい粘着を防止するための前後工程が必要であり、ロールの単位長さが短い必要があるため、生産性が低下するという問題がある。
【0006】
ロールツーロール工程は、金属箔上にポリイミド前駆体であるポリアミック酸樹脂をコーティング、乾燥した後、巻き取る前に熱を加えてから硬化する方式である。これは、従来のバッチ方式の問題点である生産性低下を克服し、加工時間とコストを減少できる利点がある。しかし、前記ロールツーロール硬化工程は、短時間で硬化が行われなければならないため、硬化中に急激な熱を加えることによるブリスタリング(Blistering)、急激な膨張、収縮によるしわなど様々な不良現象が発生しやすい。
【0007】
通常、金属積層体は、1層以上のポリイミド層で構成されるが、生産性を高めるために1層のポリイミド金属積層体を構成する。反面、2層以上のポリイミド金属積層体は、金属箔と積層体との間の反り(warpage)及びカール(curl)を防止し、接着性、機械的物性、電気的特性などの物性を向上させることができる。しかし、ポリイミド層間の界面において接着力が十分でない場合、2層以上のポリイミド金属積層体は、1層ポリイミド金属積層体に比べてロールツーロール硬化中に剥離現象(Delamination)及び急激な水分及び溶剤の揮発によるブリスタリング現象が発生しやすいため、これを解決するために生産速度を下げなければならないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、ポリイミド金属積層体の製造時にポリイミド層においてブリスタリングが生じない金属積層体を提供することを目的とする。より具体的に、本発明は、金属箔上に2層以上のポリアミック酸樹脂組成物をコーティングし、ロールツーロール硬化によりポリイミド金属積層体を製造する際、金属箔の上部に1層以上の特定構造のエポキシ化合物を添加したポリアミック酸樹脂組成物をコーティングして金属積層体を製造することにより、ポリイミド層間の界面においてブリスタリングが生じる現象を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の技術的課題を解決するためのポリアミック酸樹脂組成物は、下記化学式1から選択される何れか一つ以上のエポキシ化合物を含むことを特徴とする。
[化学式1]


(前記化学式1中、X、Xはそれぞれ独立して、−C2m−CHで置換または非置換され、Y-またはY-のうち何れか一つ以上は、

または

(p、qは1〜5の整数)から選択され、m、nは1〜5の整数、rは1〜10の自然数である。)
【0010】
前記エポキシ化合物は全組成物に対して1〜10重量%使用されることが好ましい。
【0011】
前記ポリアミック酸樹脂組成物は、溶媒に、芳香族ジアミン、前記化学式1から選択される何れか一つ以上のエポキシ化合物、芳香族ジアンヒドリドを添加した後、混合して重合反応させる段階を含んで製造する。
【0012】
本発明は、前記ポリアミック酸樹脂組成物を金属箔の一面に塗布した1層以上のポリイミド層を含むポリイミド金属積層体を有する。
【0013】
前記ポリイミド金属積層体は、前記金属箔とポリイミド層との間にビスマレイミド系、イミダゾール系、イミダゾールトリアジン系化合物を添加したポリアミック酸樹脂組成物からなる接着剤層をさらに含むことができる。
【0014】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0015】
本発明において、ポリアミック酸樹脂組成物は、下記化学式1から選択される何れか一つ以上の特定構造のエポキシ化合物を含む。より具体的に、本発明のポリアミック酸樹脂組成物は、芳香族ジアミン、芳香族ジアンヒドリド、溶媒、及び下記化学式1のエポキシ化合物を含む。
[化学式1]


(前記化学式1中、X、Xはそれぞれ独立して、−C2m−CHで置換または非置換され、YまたはYのうち何れか一つ以上は、

または

(p、qは1〜5の整数)から選択され、m、nは1〜5の整数、rは1〜10の自然数である。)
【0016】
本発明は、金属箔の上部に、前記構造のエポキシ化合物を添加したポリアミック酸組成物を2層以上積層することにより多層のポリイミド層を形成することができる。この際、前記ポリアミック酸組成物は、ポリイミド層同士の間におけるブリスタリング現象を防止することができる。
【0017】
前記エポキシ化合物は、全組成物に対して1〜10重量%使用されることが好ましく、2〜5重量%使用されることがより好ましい。前記含量範囲のエポキシ基は多層からなるポリイミドの層間界面の接着力を向上してブリスタリングを抑制することができる。前記エポキシ化合物の含量が1重量%未満である場合にはブリスタリング現象が発生し、10重量%を超える場合には耐熱性が低下する。
【0018】
好ましくは、前記エポキシ化合物は下記化学式2〜4の化合物を使用することが好適である。
[化学式2]


(前記化学式2中、iは0〜10の自然数である。)
[化学式3]


(前記化学式3中、jは0〜10の自然数である。)
[化学式4]


(前記化学式4中、kは0〜10の自然数である。)
【0019】
本発明において、前記溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルスルホンアミド、スルホキシド、硫酸ジメチル、スルホラン、ブチロラクトン、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグリム、トリグリムなどを使用することができる。これらの溶媒はそれぞれ単独にあるいは2種以上を組み合わせて使用することができ、このうちDMAc、NMP及びDMFなどが好ましい。溶媒の使用量は、各成分を均一に溶解するために十分な量であれば好ましく、溶媒に対する溶質の含量(Solid contents)は10〜20重量%であることが好ましい。
【0020】
前記芳香族ジアミンは、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4´−ジアミノ−2´−メトキシベンズアニリド、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノ−2,2´−ジメチルビフェニル、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、2,2´−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4´−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェノール、4,4´−ジアミノフェニルプロパン、3,3´−ジアミノベンゾフェノン、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられ、これらのジアミン化合物はそれぞれ単独にあるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。前記芳香族ジアミンは全組成物に対して40〜45重量%使用することが好ましい。
【0021】
前記芳香族ジアンヒドリドは、好ましくは、3,3´,4,4´−ビフェニルジアンヒドリド(3,3,´4,4´−Biphenyl dianhydride(BPDA))、ピロメリト酸ジアンヒドリド(pyromellitic dianhydride)、ベンゾフェノンジアンヒドリド(benzophenone dianhydride)、またはオキシジフェニルジアンヒドリド(oxydiphenyl dianhydride)などを使用することができる。前記芳香族ジアンヒドリドは全組成物に対して40〜45重量%使用することが好ましい。
【0022】
前記ポリアミック酸樹脂組成物は、溶媒に芳香族ジアミンを十分に溶解してからエポキシ化合物を添加し、芳香族ジアンヒドリドを入れて混合した後、重合反応させて製造する。
【0023】
本発明は、前記ポリアミック酸樹脂組成物を金属箔の一面に塗布した1層以上のポリイミド層を含むポリイミド金属積層体を有する。
【0024】
前記ポリイミド金属積層体の製造方法は、金属箔の一面に前記ポリアミック酸樹脂組成物を塗布してコーティングした後、乾燥してから硬化させる。乾燥は100℃〜200℃にて30秒〜30分間行い、硬化は350℃〜450℃にて2分〜60分間行われる。乾燥は、130℃〜180℃にて1分〜10分間行われることが好ましく、硬化は370℃〜420℃にて5分〜20分間行われることが好ましい。このように製造された単面金属積層体は、プラズマ処理方法、コロナ処理方法などにより表面改質することができる。
【0025】
前記製造方法により製造された単面金属積層体は、ラミネーションにより両面金属積層体を製造することができる。この際、ラミネーション温度は300℃〜400℃であり、350℃〜390℃であることが好ましいが、これに限定されない。前記ポリイミド層の厚さの範囲は、好ましくは3μm〜100μmであり、より好ましく10μm〜50μmである。
【0026】
前記ポリイミド金属積層体は、前記金属箔とポリイミド層との間にビスマレイミド系、イミダゾール系、イミダゾールトリアジン系化合物を添加したポリアミック酸樹脂組成物からなる接着剤層をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、1層以上のポリイミド層に前記エポキシ化合物を添加することにより、金属箔上に2層以上のポリイミドで積層された金属積層体のポリイミド層間の界面で発生するブリスタリング問題を解消し、ポリイミド層間の界面接着力を向上させることができる。これにより、界面で発生するブリスタリングを最大限に抑制し、結果、2層以上積層された金属積層体の生産速度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について具体的に説明するために例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0029】
[製造例]
ポリアミック酸樹脂組成物は、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PDA)、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)で構成され、エポキシ化合物であるYDCN500−90P(国都化学製)、YDPN−638(国都化学製)、N865(国都化学製)を使用する。下記表1はポリアミック酸樹脂組成物の組成比を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
前記A〜Gは、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒に対する溶質含量(Solid contents)が13wt%、芳香族ジアミンとジアンヒドリドのモル比が1.01:1になるようにし、エポキシ化合物を添加して窒素雰囲気下で反応させた。
【0032】
[実施例1]
前記表1の組成物Eを12μmの電解(Electro deposited;ED、以下「ED」とする)銅箔にコーティングして第一の層を形成する。ポリイミドの厚さは5μmになるようにする。このようにコーティングして形成された第一の層は140℃にて10分間乾燥する。次に、組成物Bをポリイミドの厚さが10、20、30、40μmになるように前記第一の層にコーティングして第二の層を形成した後、140℃にて10分間乾燥する。その後、ロールツーロール硬化装置で分当たり40℃の昇温速度で常温から380℃まで昇温しながら硬化し、ポリイミドフレキシブル金属積層体を製造した。以下、下記の物性を評価し、その結果を表2に示した。
【0033】
物性評価
ブリスタリング数:10cm×10cmで発生するブリスタリング数の5回の平均値を記録する。ブリスタリングのない場合には「なし」と記録し、全面にブリスタリングが発生して測定が不可能な場合には「層間完全分離」と記録する。
【0034】
[実施例2]
前記表1の組成物Bの代わりに組成物Cを使用することを除き実施例1と同一の方法でポリイミドフレキシブル金属積層体を製造した。その後、下記の物性を評価し、その結果を表2に示した。
【0035】
[実施例3]
前記表1の組成物Bの代わりに組成物Dを使用することを除き実施例1と同一の方法でポリイミドフレキシブル金属積層体を製造した。その後、下記の物性を評価し、その結果を表2に示した。
【0036】
[実施例4]
前記表1の組成物Fを12μmのED銅箔にコーティングして第一の層を形成する。ポリイミドの厚さは5μmになるようにする。このようにコーティングして形成された第一の層は140℃にて10分間乾燥する。次に、組成物Aをポリイミドの厚さが10、20、30、40μmになるように前記第一の層にコーティングして第二の層を形成した後、140℃にて10分間乾燥する。その後、ロールツーロール硬化装置で分当たり2℃の昇温速度で常温から380℃まで昇温しながら硬化し、ポリイミドフレキシブル金属積層体を製造した。その後、下記の物性を評価し、その結果を表2に示した。
【0037】
[実施例5]
前記表1の組成物Fの代わりに組成物Gを使用することを除き実施例5と同一の方法でポリイミドフレキシブル金属積層体を製造した。その後、下記の物性を評価し、その結果を表2に示した。
【0038】
[比較例1]
前記表1の組成物Bの代わりに組成物Aを使用することを除き実施例1と同一の方法でポリイミドフレキシブル金属積層体を製造した。その後、下記の物性を評価し、その結果を表2に示した。
【0039】
【表2】

【0040】
前記表2で分かるように、実施例1〜実施例5において、本発明のポリイミド金属積層体は、厚さ10μm、20μmの第2のポリイミド層でのブリスタリングが全く現れなかった。これは比較例1と異なり、本発明によるポリイミド金属積層体にエポキシ化合物を添加することにより、ブリスタリング除去の効果が著しく現れたことが確認できる。また、厚さ30μm、40μmの第2のポリイミド層を見ると、実施例1〜実施例5のポリイミド金属積層体は、比較例1で層間分離現象が生じたことと異なり、4〜24個のブリスタリングのみが生じる程度の層間剥離強度を有していることが確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1から選択される何れか一つ以上のエポキシ化合物を含むポリアミック酸樹脂組成物。
[化学式1]


(前記化学式1中、X、Xはそれぞれ独立して、−C2m−CHで置換または非置換され、Y-またはY-のうち何れか一つ以上は、

または

(p、qは1〜5の整数)から選択され、m、nは1〜5の整数、rは1〜10の自然数である。)
【請求項2】
エポキシ化合物は全組成物に対して1〜10重量%使用されることを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸樹脂組成物。
【請求項3】
溶媒に、芳香族ジアミン、下記化学式1から選択される何れか一つ以上のエポキシ化合物、及び芳香族ジアンヒドリドを添加した後、混合して重合反応させる段階を含むポリアミック酸樹脂組成物の製造方法。
[化学式1]


(前記化学式1中、X、Xはそれぞれ独立して、−C2m−CHで置換または非置換され、Y-またはY-のうち何れか一つ以上は、

または

(p、qは1〜5の整数)から選択され、m、nは1〜5の整数、rは1〜10の自然数である。)
【請求項4】
エポキシ化合物は全組成物に対して1〜10重量%使用されることを特徴とする請求項3に記載のポリアミック酸樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜2の何れか一項に記載のポリアミック酸樹脂組成物を金属箔(metal clad)の一面に塗布した1層以上のポリイミド層を含むポリイミド金属積層体。
【請求項6】
金属箔とポリイミド層との間に、ビスマレイミド系、イミダゾール系、イミダゾールトリアジン系化合物を添加したポリアミック酸樹脂組成物からなる接着剤層をさらに含む請求項5に記載のポリイミド金属積層体。

【公表番号】特表2013−515131(P2013−515131A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545850(P2012−545850)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009156
【国際公開番号】WO2011/078553
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(508171000)エスケー イノベーション  シーオー., エルティーディー. (19)
【Fターム(参考)】