説明

ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂から残留物を除去するための膜分離法

本発明は、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造法に関する。該方法は、(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し、そして(b)水性組成物を膜分離装置の膜に通すことによって水性組成物を透過物と濃縮物に分離することを含む。濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含む。透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満を含む。削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂は、紙製品用の湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、クレープ加工用接着剤、木材製品用接着剤のための硬化剤、及びその他の製品を製造するのに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びそのような樹脂を含む組成物から、AOX種、塩、及びその他の低分子量化学種のような残留物を除去するための方法に関する。このプロセス中の樹脂の損失は約5重量%未満に限定される。本発明はまた、本発明の方法に従って製造された残留物含有量の少ないポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、並びにその組成物及び製品、例えば紙製品用の湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、クレープ加工用接着剤、及び木材製品接着剤用の硬化剤にも関する。ある態様において、本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、並びにその組成物及び製品は、貯蔵中残留物を低水準に維持し、AOX種及び無機塩化物の量を削減する。
【背景技術】
【0002】
湿潤紙力増強樹脂は、紙及び板紙にこれらの製品が濡れたときの強度を増強するために製造時に添加されることが多い。湿潤紙力増強樹脂を用いて製造された紙は、一般的に濡れたときでもその強度の少なくとも10〜50%を保持する。これに対し、そのような樹脂を使用せずに製造された紙は、濡れると通常その強度の3〜5%しか保持しない。湿潤紙力が増強された紙は、紙タオル、牛乳及びジュースの容器、紙袋、及び段ボール箱用ライナーボードなど様々な用途に有用である。
【0003】
湿潤紙力増強樹脂は紙の乾燥紙力も増強する。乾燥紙力は重要な紙の性質である。低コストを達成するために高収率木材パルプを紙に使用するという製紙業者の最近の傾向を考えると特にそうである。これらの高収率木材パルプから得られる紙は一般的に高精製パルプから製造された紙と比べると乾燥紙力に著しく劣る。
【0004】
紙力増強に使用されるのと類似した樹脂はクレープ加工用接着剤として使用されることも多い。フェイシャルティッシュ、トイレットペーパー、又はペーパータオルのような紙製品の製造において、ペーパーウェブは従来、柔軟性及びバルク感といった望ましいテクスチャ特性を付与するためにクレープ加工プロセスに付されている。クレープ加工プロセスは、典型的にはウェブ(紙の場合セルロースウェブ)をヤンキードライヤーのような回転するクレープ加工用シリンダに接着させ、その後接着したウェブをドクターブレードで剥離することを含む。ドクターブレードに対するウェブの衝撃でウェブ内の繊維−繊維結合の一部が破断し、ウェブにしわやひだが発生する。
【0005】
この破断の程度は、ウェブとクレープ加工用シリンダ表面の間の接着程度を含むいくつかの要因に依存する。強固な接着は柔軟性を増すが、一般的に多少の強度損失を伴う。接着力を増大するには、クレープ加工用接着剤を使用して、ウェブがその水分含有量に由来して有しうる何らかの天然の接着力を増強すればよい。水分含有量はウェブがどの程度予備乾燥されているかに応じて広く変動する。
【0006】
望ましいクレープ加工用接着剤は、良好なクレープができるのに丁度良い強固さでシートをドラムに接着しつつ、一方では吸収性と柔軟性を付与し、紙強度の損失もなるべく少なく抑えるものである。乾燥ドラムへの接着が強固すぎると、シートは紙むけ(pick)し又はさらにはドクターブレードを“塞ぎ(plug)”(すなわちブレードの下にのめり込み(underride))、乾燥ドラムに巻き付くことがある。接着が不十分であると、シートは簡単に剥がれすぎてあまりにも少ないクレープ加工しか受けないことになる。クレープ加工用接着剤は、クレープ加工の程度を制御することに加えて、ドライヤー表面の摩耗も防止し、ドクターブレードとドライヤー表面の間に潤滑性も提供し、そして化学腐食も削減するものであるべきである。
【0007】
この樹脂は、加工木材製品(エンジニアードウッド、エンジニアリングウッド)、例えば、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、ウェハーボード、ファイバーボード(中密度及び高密度繊維板を含む)、パラレルストランドランバー(PSL)、ラミネーテッドストランドランバー(LSL)、及び類似製品の製造に使用される接着製剤用の接着剤又は硬化剤として使用することもできる。そのような接着剤組成物は、合板又は単板積層材(LVL)の製造にも使用できる。エンジニアードウッドは、接着剤で接合された小さい木材パーティクルに基づいたリグノセルロース系複合材料と言うこともできる。エンジニアードウッド及びその他の種類の有用材料を製造する際のこれらの接着剤の塗布は、ローラーコーティング、ナイフコーティング、押出、カーテンコーティング、フォーム(foam)コーター、及びスプレーコーター、例えばスピニングディスク樹脂アプリケーターによって達成できる。樹脂は大豆粉又は分離大豆タンパクのようなタンパク源と組み合わせて接着剤にする。官能化ポリアミン−エピクロロヒドリン樹脂は、典型的にはアゼチジニウム及びアミノクロロヒドリン官能基を両方とも含有し、加熱するとこれらの官能基が接着剤/リグノセルロース系中の利用可能なアミン、アルコール、及びカルボン酸と反応する。
【0008】
ポリアミノポリアミド−エピハロヒドリン(PAE)樹脂などのポリアミン−エピハロヒドリン樹脂は、製紙業界で湿潤紙力増強樹脂、乾燥紙力増強樹脂、及びクレープ加工用接着剤として普通に使用されている。これらの樹脂は大量のエピハロヒドリン加水分解産物及び無機塩化物を含有していることが多く、職場の安全及び環境上の理由から望ましくない。例えば、市販のポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂は、典型的には、0.5〜10重量パーセント(乾燥基準)のエピクロロヒドリン副産物の1,3−ジクロロプロパノール(1,3−DCP)、2,3−ジクロロプロパノール(2,3−DCP)、及び3−クロロプロパンジオール(CPD)を含有している。エピクロロヒドリン副産物のレベルを削減したそのような樹脂の製造が多くの研究の主題となっている。職場の安全と環境上の圧力が高まって、エピクロロヒドリン副産物及びその他の吸着性有機ハロゲン(AOX)化学種のレベルの少ない樹脂が製造されている。AOXは樹脂の吸着性有機ハロゲンの含有量であり、炭素への吸着によって測定できる。AOX種は、エピクロロヒドリン及びその副産物の1,3−DCP、2,3−DCP、及びCPD、並びに樹脂のポリマー骨格に結合した有機ハロゲンを含む。無機塩化物(例えば塩化物塩)の除去は、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の腐食性を低減し、所望の反応性官能基(すなわち樹脂ポリマー骨格上のアゼチジニウム部分)の損失を最小限化する。
【0009】
ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂中のAOX種の量を樹脂の製造中に削減するためのいくつかの方法が考案されている。一つの方法は、樹脂の合成に使用されるエピハロヒドリンの量を削減することで、米国特許第5,171,795号及び5,714,552号に教示されている。別の方法は、樹脂の製造プロセス全体の制御を維持することで、米国特許第5,017,642号に教示されている。さらに別の方法は、樹脂をその製造工程中に非ポリマー性アミンで処理することで、米国特許第5,614,597号に教示されている。クロロヒドリン残留物は、粘度上昇を行った後、無機塩基とアミンの両方を加えることによって除去することもでき、これについては米国特許第5,019,606号;独特許公開DE4114657;及び欧州特許EP0512423に教示されている。さらに、米国特許第5,189,142号、5,239,047号、及び5,364,927号には、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂中の有機結合した塩素の含量のの削減が教示されている。
【0010】
ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂中のAOX種の量を削減するための合成後処理も知られている。例えば、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、及びエピクロロヒドリンはいずれもアルカリで処理してグリセロールにすることができる。エピハロヒドリン及びエピハロヒドリン加水分解物は塩基と反応させて塩化物イオン及び多価アルコールにすることができる。これについては、米国特許第4,975,499号及び5,019,606号に教示されている。米国特許第5,256,727号には、エピハロヒドリン及びその加水分解産物を二塩基性リン酸塩又はアルカノールアミンと等モル割合で反応させて、塩素化有機化合物を非塩素化種に変換することが教示されている。米国特許第5,470,742号;5,843,763号;及び5,871,616号には、微生物又は微生物由来の酵素を使用して、エピハロヒドリン及びエピハロヒドリン加水分解産物を湿潤紙力増強組成物から湿潤強度の有効性を減じることなく除去する方法が教示されている。米国特許第5,972,691号及びWO96/40967には、湿潤紙力増強組成物を、該樹脂を低pHで安定化後、無機塩基で合成後処理して有機ハロゲン含有量を削減し、その後微生物又は酵素で処理する方法が教示されている。米国特許第6,056,855号;6,057,420号;6,342,580 B1号、及びWO01/18093 A1には、樹脂を炭素吸着剤で処理する方法が教示されている。米国特許第5,516,885号及び6,376,578 B1、及びWO92/22601には、ハロゲン化副産物をイオン交換樹脂を用いて樹脂から除去する方法が教示されている。
【0011】
EP1135427 B1には、AOX含有量の削減されたエピクロロヒドリン−架橋ポリアミドアミンを樹脂の水溶液の限外ろ過によって製造する方法が記載されている。EP1135427 B1には塩の除去又は塩化物の選択的除去は開示されていない。米国特許第5,009,789号には、重合ゾーンで製造される異なる分子量の合成水溶性樹脂、例えばユリア−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、及びポリアミドアミン−エピクロロヒドリン樹脂の分離及び再使用法が教示されている。米国特許第5,009,789号には、分離は元の乾燥樹脂含有量の少なくとも5重量パーセントが透過物中に分離されるように行うことが教示されている。米国特許第6,056,967号及びWO00/67884には、初期分子量分布を有する水溶性のアミノ含有縮合物又は付加物の混合物の水溶液を膜による限外ろ過に付す方法が開示されている。この場合、縮合物又は付加物は多様な樹脂から選ばれる。Journal of Applied Polymer Science,vol.30,pp.4099−4111(1985)には、ポリアミドアミン−エピクロロヒドリン樹脂が限外ろ過によって複数のフラクションに分離できることが開示されている。米国出願公開第2001/0034406号は、その限外ろ過法を10,000ドルトン以下の低分子量フラクションに限定し、特開2002−201267はその限外ろ過法を3,000〜30,000ドルトンの範囲の分子量に限定している。米国特許第5,643,430号は、窒素含有エピハロヒドリン系樹脂の水溶液中の有機及び無機ハロゲン含有量を削減する方法を開示している。該方法は該水溶液を電気透析処理に付することを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,171,795号
【特許文献2】米国特許第5,714,552号
【特許文献3】米国特許第5,017,642号
【特許文献4】米国特許第5,614,597号
【特許文献5】米国特許第5,019,606号
【特許文献6】独特許公開DE4114657
【特許文献7】欧州特許EP0512423
【特許文献8】米国特許第5,189,142号
【特許文献9】米国特許第5,239,047号
【特許文献10】米国特許第5,364,927号
【特許文献11】米国特許第4,975,499号
【特許文献12】米国特許第5,019,606号
【特許文献13】米国特許第5,256,727号
【特許文献14】米国特許第5,470,742号
【特許文献15】米国特許第5,843,763号
【特許文献16】米国特許第5,871,616号
【特許文献17】米国特許第5,972,691号
【特許文献18】WO96/40967
【特許文献19】米国特許第6,056,855号
【特許文献20】米国特許第6,057,420号
【特許文献21】米国特許第6,342,580 B1号
【特許文献22】WO01/18093 A1
【特許文献23】米国特許第5,516,885号
【特許文献24】米国特許第6,376,578 B1号
【特許文献25】WO92/22601
【特許文献26】EP1135427 B1
【特許文献27】米国特許第5,009,789号
【特許文献28】米国特許第6,056,967号
【特許文献29】WO00/67884
【特許文献30】米国出願公開第2001/0034406号
【特許文献31】特開2002−201267号
【特許文献32】米国特許第5,643,430号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Journal of Applied Polymer Science,vol.30,pp.4099−4111(1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のアプローチを考慮しても、引き続きポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造における更なる改良、具体的にはAOX種、塩化物塩及びその他の低分子量種のような残留物をそのような樹脂から除去するための方法における更なる改良を求める需要がある。特に、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂系組成物、例えば湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、クレープ加工用接着剤、及び木材製品用接着剤から残留物を除去するより効率的で費用効果的な方法に対する需要が依然としてある。また、AOX及び無機塩化物含有量の低いポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びポリアミン−エピハロヒドリン樹脂組成物、並びにそのような樹脂を含む紙製品及び木材製品に対する需要もある。
【0015】
別途記載のない限り、本明細書中に引用したすべての特許、特許出願、論文、テキスト及びいずれかその他の刊行物は、それらが本開示と矛盾しない限り、それらの全文を引用によって本明細書に援用する。本開示は、これらの特許、特許出願、論文、テキスト及びいずれかその他の刊行物が本開示と矛盾する範囲ではそれらに優先する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様において、本発明は、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造法に関する。該方法は、(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し、そして(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって前記水性組成物を透過物と濃縮物に分離することを含み、前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満を含む。
【0017】
別の態様は、前記残留物がエピクロロヒドリン、DCP、CPD、塩、低分子量種、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる本発明の方法である。
別の態様は、前記塩が塩化物イオンを含む本発明の方法である。
【0018】
別の態様は、前記ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂がポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂を含む本発明の方法である。
別の態様は、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分12.5%で約50ppm未満である本発明の方法である。
【0019】
別の態様は、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂のDCP含有量が前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分12.5%で約100ppm未満である本発明の方法である。
【0020】
さらに別の態様は、本発明の方法に従って製造された樹脂を含む紙製品又は木材製品の製造に使用するための接着剤組成物である。
さらに別の態様において、本発明は、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造法に関する。該方法は、(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって前記水性組成物を透過物と濃縮物に分離し(前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物を含む);そして(c)前記濃縮物をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理することを含み、塩基処理された濃縮物はpH1及び50℃で24時間貯蔵された場合に乾燥基準で約250ppm未満のCPDしか生じない。
【0021】
別の態様は、前記透過物が前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満をさらに含む本発明の方法である。
別の態様は、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂がポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂を含む本発明の方法である。
【0022】
さらに別の態様は、本発明の方法に従って製造された樹脂を含む紙製品又は木材製品の製造に使用するための接着剤組成物である。
別の態様は、(c)の濃縮物をゲル化貯蔵安定な組成物を得るのに足る条件下で少なくとも一種の酸性剤で処理することをさらに含む本発明の方法である。
【0023】
別の態様は、前記追加工程の酸性剤が非ハロゲン含有酸である本発明の方法である。
さらに別の態様は、本発明の該方法に従って製造された樹脂を含む紙製品又は木材製品の製造に使用するための接着剤組成物である。
【0024】
さらに別の態様において、本発明は、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造法に関する。該方法は、(a)少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理し;(b)膜分離装置に塩基処理された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして(c)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離することを含み、前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物を含み、そして前記濃縮物はpH1及び50℃で24時間貯蔵された場合に乾燥基準で約250ppm未満のCPDしか生じない。
【0025】
別の態様は、前記透過物が前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満をさらに含む本発明の方法である。
別の態様は、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂がポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂を含む本発明の方法である。
【0026】
さらに別の態様は、本発明の該方法に従って製造された樹脂を含む紙製品又は木材製品の製造に使用するための接着剤組成物である。
別の態様は、(a)の塩基処理された組成物を(b)の前にゲル化貯蔵安定な組成物を得るのに足る条件下で少なくとも一種の酸性剤で処理することをさらに含む本発明の方法である。
【0027】
別の態様は、前記追加工程の酸性剤が非ハロゲン含有酸である本発明の方法である。
さらに別の態様は、本発明の該方法に従って製造された樹脂を含む紙製品又は木材製品の製造に使用するための接着剤組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書中では、別途記載のない限り、(1)すべてのパーセンテージ、部、比率などは重量による;(2)化合物又は成分への言及は、該化合物又は成分単独への言及であることも、他の化合物又は成分と組み合わされた化合物又は成分、例えば化合物の混合物、溶液、及び組成物への言及であることもある;(3)量、濃度、又はその他の値もしくはパラメーターの上方の好適値及び下方の好適値の一覧は、追加の範囲が別に開示されているかどうかにかかわらず、上方の好適値及び下方の好適値の任意のペアから形成されるすべての範囲を具体的に開示する;(4)用語“組成物”の定義は溶液を含む;(5)用語“全固形分”は揮発物(例えば溶媒)を少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂又はその組成物から除去した後に残る固形分と定義される;(6)用語“活性固形分”は全固形分の少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂部分と定義される。
【0029】
本明細書中に別途記載のない限り、(1)用語“クレープ加工用助剤”、“クレープ加工用樹脂”、“クレープ加工剤”及び“クレープ加工用接着剤”は互換的に使用され、いずれも明細書全体を通じて同じ意味を有する;(2)用語“3−クロロ−1,2−プロパンジオール”、“3−クロロプロパンジオール”、“3−モノクロロプロパンジオール”、“モノクロロプロパンジオール”、“クロロプロパンジオール”、“CPD”、“3−CPD”、“MCPD”、及び“3−MCPD” は互換的に使用され、いずれも明細書全体を通じて同じ意味を有する;(3)用語“ポリアミノポリアミド−エピハロヒドリン樹脂”、“ポリアミノアミド−エピハロヒドリン樹脂”、“ポリアミドポリアミン−エピハロヒドリン樹脂”、“ポリアミンポリアミド−エピハロヒドリン樹脂”、“アミノポリアミド−エピハロヒドリン樹脂”、及び“ポリアミド−エピハロヒドリン樹脂”、及び“PAE”は互換的に使用され、いずれも明細書全体を通じて同じ意味を有する;(4)用語“活性固形分”、“活性成分”、“活性分”及び“活性”は互換的に使用され、いずれも明細書全体を通じて同じ意味を有する;(5)用語“残留物”及び“残留成分”は互換的に使用され、いずれも明細書全体を通じて同じ意味を有する。
【0030】
本発明は、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂並びにその組成物から、活性成分の損失を最小限に抑えながら膜分離によって残留物を除去するための方法に関する。本方法の結果、有効性が高く残留物量が低いポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びその組成物が得られる。それによって、性能安定性が改良され、樹脂又はそのような樹脂を含む組成物の腐食性が低減される。さらに、この技術は、残留物の除去に使用されているその他の技術、例えば塩基性イオン交換、バイオ脱ハロゲン化、炭素吸着、及び溶媒抽出より費用効果的でもある。
【0031】
一般に、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物は、本発明の方法に従って、膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む初期水性組成物を装入し、その後この初期水性組成物を膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離することによって製造できる。濃縮物は、膜を通過しない初期組成物の部分である。透過物は、膜の通過後に回収される初期組成物の部分である。濃縮物は、等しい活性成分基準で初期水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含む。透過物は初期水性組成物から除去された残留物及び初期水性組成物中に含有されているポリアミン−エピハロヒドリン樹脂中の活性成分の約5重量%未満を含む。
【0032】
従って、本発明は、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物の製造法に関する。該方法は、(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって前記水性組成物を透過物と濃縮物に分離することを含み、前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満を含む。
【0033】
濃縮物及び透過物中の残留物量は膜依存性である。膜は異なる“拒絶”水準を有する。例えば、本発明の好適な膜は塩化物に比べて硫酸塩を“拒絶”するので、濃縮物は透過物より塩化物量が低くなる。好適な膜の別の例では、濃縮物と透過物は、膜分離装置に装入された水性組成物と同じDCP及びCPDの量を有する。一つの好適な膜の別の例では、膜分離装置に装入された水性組成物と比べて濃縮物は低い含量のDCP及びCPDを有し、透過物は高含量のDCP及びCPDを有する。本発明において、濃縮物は、等しい活性成分基準で出発の水性組成物より低い含量の残留物を有する。
【0034】
本発明の方法によれば、透過物は、好ましくは初期水性組成物中に含有される少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の約5重量%未満しか含まない。言い換えれば、本発明の方法によるポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物からの残留物の除去は、透過物へのポリマー及びオリゴマーフラクションの流失が初期組成物中に含有されるポリマー及びオリゴマーの約5重量%未満に限定される形で達成できる。本発明の方法は、ポリマー及びオリゴマーフラクションの損失を約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.4重量%未満、約0.3重量%未満、約0.2重量%未満、約0.1重量%未満、又は約0.05重量%未満に限定しながら、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物から残留物を除去するのにも使用できる。
【0035】
前述のように、本発明の方法は、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びその組成物から残留物を除去するのに使用できる。本明細書中で言う残留物とは、AOX種、例えばエピハロヒドリン及びエピハロヒドリン副産物の1,3−ジクロロプロパノール(1,3−DCP)、2,3−ジクロロプロパノール(2,3−DCP)、及び3−クロロプロパンジオール(CPD);有機及び無機塩、例えば塩化物塩;並びにその他の低分子量種、例えばモノマー性化合物を含む。本明細書中では低分子量種は、分子量1000ドルトン未満の分子、イオン、及びラジカルと定義される。
【0036】
無機塩、好ましくは塩化物塩は、本発明の方法によってポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びその組成物から、活性成分の損失を最小限に抑えながら除去できる。組成物の全固形分に対し、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂組成物からの無機塩含有量の除去率は、約20重量%より大、約40重量%より大、約60重量%より大、約80重量%より大、約90重量%より大、約95重量%より大、約98重量%より大でありうる。又は約99重量%より大という除去率も本発明の方法によって達成可能である。
【0037】
塩化物塩の除去は、水性組成物の腐食性を低減し、特にポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びその他のエピクロロヒドリン系樹脂中のアゼチジニウム官能基の損失を長期間最小限に抑えるために特に望ましい。従って、本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、及びその組成物は、老化(経時変化)中のアゼチジニウムの損失が削減される。本発明の方法によれば、塩化物塩は、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びその組成物から、活性成分の損失を最小限に抑えながら除去することもできる。少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂又はその組成物の全固形分に対するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂からの塩化物塩含有量の除去率約20重量%より大、約30重量%より大、約40重量%より大、約50重量%より大、約60重量%より大、約70重量%より大、約80重量%より大、約90重量%より大、約95重量%より大、約98重量%より大、約99重量%より大、又は約100重量%が本発明の方法によって達成できる。塩化物塩は、その他の塩、例えば硫酸塩に対して好ましくは選択的に除去される。塩化物塩含有量の、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の総塩含有量に対する選択的除去の重量比は、約1.1:1.0、約1.5:1.0、約2.0:1.0、約3.0:1.0、約4.0:1.0、約5.0:1.0、約6.0:1.0、約7.0:1.0、約8.0:1.0、約9.0:1.0、約10:1.0、約15:1.0、約20:1.0、約30:1.0、約40:1.0、約50:1.0、約60:1.0、約70:1.0、約80:1.0、約90:1.0、又は約100:1でありうる。
【0038】
本発明の方法によれば、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びその組成物からの残留成分の除去は、そのような樹脂の溶液の膜分離、例えばナノろ過及び限外ろ過によって達成される。多くの異なる膜分離法及び運転モードが本発明に使用できる。好適な運転モードは、バッチ、変形バッチ、一連の連続ステージ、定量式ダイアフィルトレーション(constant volume diafiltration)、及び不連続式ダイアフィルトレーションなどである。膜を選択する際の重要な因子は、除去する残留物の種類、膜汚染の可能性、供給材料及び生成物のpH、収率損失、膜効率、及び透過物の流量などである。透過物の流量は、体積流量、すなわち膜を通過する溶媒及び溶質の流量である。体積流量は典型的には、体積/膜面積/時間又はlmh(リットル/m/h)又はGFD(ガロン/ft/日)で表される。体積流量は、静水圧差、浸透圧、透過係数、温度、及び膜の関数である。一般に、ナノろ過膜が、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びその組成物からの残留物の効率的な除去に関してあらゆる所望の属性を示すことが分かっているが、限外ろ過膜も使用できる。ナノろ過は、除去できる成分の分子サイズに関して逆浸透と限外ろ過の間に入る。ナノろ過の公称分子量カットオフは1000ドルトン以下である。さらに、ナノフィルタは典型的には限外フィルタより高圧で運転される。
【0039】
150ドルトン〜1000ドルトンの公称分子量カットオフを有するナノろ過膜が、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びその組成物から最小限の生成物収率損失で残留物を除去するのに有効であることが分かった。特定タイプの膜の場合、生成物収率損失は、典型的には分子量カットオフが増大すると増大する。限外ろ過膜も、より大量の出発供給材料を除去してしまうことを犠牲にすれば、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂及びその組成物から残留物を除去することは可能であるが、収率損失はさらに大きくなり、透過物中に含有される有機物も増加する。透過物中の含有有機物の増加は、透過物が廃棄される場合、特に廃水プラントで処理される場合、望ましくない。
【0040】
本発明の膜分離法の運転圧力及び温度は、主に使用される膜の制限によって決まる。それでも、本発明の膜分離法の運転圧力は、約10psig〜約2000psig、約15psig〜約1500psig、約20psig〜約1000psig、約30psig〜約800psig、約40psig〜約700psig、約50psig〜約500psig、約100psig〜約400psig、約100psig〜約500psig、約100psig〜約700psig、約100psig〜約800psig、約100psig〜約1000psig、約100psig〜約1500psig、約100psig〜約2000psig、約200psig〜約400psig、約200psig〜約500psig、約200psig〜約700psig、約200psig〜約800psig、約200psig〜約1000psig、約200psig〜約1500psig、又は約200psig〜約2000psigの範囲でありうる。特定の膜はそれ自身の最適運転圧力範囲を有している。高流量は高い運転温度で達成可能である。膜分離法の温度が高くなると透過物の流量は増大する。透過物が高流量になるほど方法の効率は増大する。高温で運転するのが好適であるが、高温はポリアミン−エピハロヒドリン樹脂にとって有害で、アゼチジニウム官能基の損失と分子量の変化をもたらす。
【0041】
本発明の膜分離法の運転温度は、約0℃〜約90℃、約5℃〜約80℃、約10℃〜約70℃、約15℃〜約60℃、約20℃〜約50℃、約15℃〜約90℃、約15℃〜約80℃、約15℃〜約70℃、約15℃〜約60℃、約15℃〜約50℃、約15℃〜約40℃、約20℃〜約40℃、約20℃〜約60℃、約20℃〜約70℃、約25℃〜約40℃、約25℃〜約60℃、又は約25℃〜約70℃でありうる。
【0042】
水及び水性溶媒及び水性溶液が好適な溶媒である。本発明の方法の目的の場合、別途記載のない限り、水のほか、水性溶媒及び水性溶液はさらに溶解固体及びガス、並びにメタノール、エタノール及び酢酸エチルのようなその他の溶媒を含んでいてもよい。溶媒対供給材料の比率は、所望の残留物量を達成するために変動してよい。溶媒対供給材料の比率は、供給材料中の残留物の出発濃度と最終生成物中の標的残留物の両方に依存する。典型的な比率は、約0.1:1〜約100:1、約0.2:1〜約60:1、約0.5:1〜約40:1、約1:1〜約20:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約10:1、約0.5:1〜約20:1、約0.5:1〜約10:1、約0.5:1〜約5:1、約1:1〜約10:1、約1:1〜約5:1の範囲である。供給材料に対して等しい体積の溶媒は1ウォッシュ又は1体積と言うことができる。典型的な体積は、0.2〜約50、0.5〜約40、約1〜約20、約2〜約10、約3〜約5、約0.2〜約20、約0.2〜約10、約0.2〜約5、約0.5〜約20、約0.5〜約10、約0.5〜約5、約1〜約20、約1〜約10、又は約1〜約5の範囲である。
【0043】
本発明の膜分離法は、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を提供する。残留物が削減される量は供給材料の量及び溶媒の量に依存する。溶媒で希釈する前の初期供給材料に対して、本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂のDCP及びCPDの量は、約99.99%、約99.9%、約99.5%、約99%、約95%、約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%及び約10%低減できる。
【0044】
本発明では、最初に装入された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を濃縮物と透過物に分離した後、濃縮物は初期装入水性組成物より高い活性成分量を有する。濃縮物の残留物量は初期装入水性組成物中の残留物量より高いことも低いこともある。しかしながら、活性成分を同じ量に標準化すると、濃縮物のほうが初期装入水性組成物より低い残留物量を有する。本発明の場合、等しい活性成分基準とは、活性成分量を、比較される組成物において活性成分の量が同じになるように標準化することと定義される。例えば、10%の活性成分を有する200Kgの初期装入水性組成物が、20%の活性成分を有する100Kgの濃縮物組成物と100Kgの透過物に分離された場合、初期装入水性組成物と濃縮物は等しい活性成分基準を有することになる。
【0045】
本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂のDCPの量は、少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分12.5%で約5000ppm未満、活性成分12.5%で約2000ppm未満、活性成分12.5%で約1000ppm未満、活性成分12.5%で約800ppm未満、活性成分12.5%で約700ppm未満、活性成分12.5%で約600ppm未満、活性成分12.5%で約500ppm未満、活性成分12.5%で約400ppm未満、活性成分12.5%で約300ppm未満、活性成分12.5%で約200ppm未満、活性成分12.5%で約100ppm未満、活性成分12.5%で約50ppm未満、活性成分12.5%で約20ppm未満、活性成分12.5%で約10ppm未満、活性成分12.5%で約5ppm未満、活性成分12.5%で約1ppm未満、又は活性成分12.5%で約0.5ppm未満でありうる。
【0046】
本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂のCPDの量は、少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分12.5%で約1000ppm未満、活性成分12.5%で約800ppm未満、活性成分12.5%で約700ppm未満、活性成分12.5%で約600ppm未満、活性成分12.5%で約500ppm未満、活性成分12.5%で約400ppm未満、活性成分12.5%で約300ppm未満、活性成分12.5%で約200ppm未満、活性成分12.5%で約100ppm未満、活性成分12.5%で約50ppm未満、活性成分12.5%で約20ppm未満、活性成分12.5%で約10ppm未満、活性成分12.5%で約5ppm未満、活性成分12.5%で約1ppm未満、又は活性成分12.5%で約0.5ppm未満でありうる。
【0047】
一態様においては、水性の非塩化物の塩溶液が塩化物イオンの除去を促進する好適な溶媒である。好ましくは、非塩化物塩溶液は、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、亜硝酸カリウム、及び/又はリン酸二水素カリウムを含む。好ましくは、非塩化物塩溶液は、硫酸ナトリウム及び硫酸水素ナトリウムを含む。
【0048】
本発明の膜分離法はバッチ式で運転することも連続式で運転することもできる。希釈水は、一度に加えても、段階的に加えても、又は連続法で供給材料との固定比として加えてもよい(リサイクルされる場合もされない場合もある)。スパイラル、チューブラー、又は振動クロスフロー膜が容認可能である。ナノろ過又は限外ろ過膜を使用するいずれかの機器又は装置が容認可能である。
【0049】
膜の運転モードは、バッチ、変形バッチ、一連の連続ステージ、定量式ダイアフィルトレーション、及び不連続式ダイアフィルトレーションなどである。これらは膜分離の分野の専門家には周知の運転モードである。ステージは通常1〜5の間で変動し、所望であればそれより多くてもよい。温度はステージごとに変動しうる。運転モードは混合してもよい。例えば、ダイアフィルトレーションの後にバッチ又は連続運転のいずれかで濃縮工程を行うことができる。運転モードの最適な選択は、濃度、温度、圧力、及び不純物の所望の削減の関数としての膜の流量に依存する。
【0050】
濃縮物組成物の全固形分及び/又は活性固形分の濃度は、初期の固形分濃度より低いことも、同一であることも、又は高いこともある。初期供給材料の固形分は、約0.5%〜約50%、約1%〜約30%、約2%〜約25%、約3%〜約20%、約4%〜約15%、約5%〜約10%、約3%〜約30%、約3%〜約25%、約3%〜約20%、約3%〜約15%、約3%〜約10%、約4%〜約20%、約4%〜約10%、約5%〜約20%、約5%〜約15%、約1%〜約25%、約1%〜約20%、約1%〜約15%、約1%〜約10%、約2%〜約25%、約2%〜約20%、約2%〜約15%、又は約2%〜約10%でありうる。最終生成物の固形分は、約4%〜約50%、約5%〜約40%、約10%〜約30%、約10%〜約25%、約12.5%〜約25%、約12.5%〜約20%、又は約15%〜約20%でありうる。
【0051】
膜装置は膜汚染の影響を最小限にするように設計されている。膜汚染は透過物の流量を減退させるので、同じ水準の生産性を達成するにはコストを追加して膜面積を大きくすることが要求される。装置設計を最適化することに加えて、膜汚染の影響を最小限にするクリーニングプロトコルも経済的に存立可能な方法の達成に向けて重要である。典型的には、膜システムは8〜24時間ごとにクリーニング組成物でクリーニングされる。本発明の場合、酸、好ましくは塩酸、リン酸、硝酸、硫酸及び/又はクエン酸の水溶液が水よりも汚染除去(従って透過物の流量回復)により有効である。典型的には、クリーニング組成物はpHの低下及び温度の上昇に伴って効果を増すが、装置の膜材料には最小許容pH及び最大許容温度の制限がある。好ましくは、クリーニング組成物はpH4未満、好ましくはpH3未満である。好ましくは、クリーニング組成物は約30℃以上、好ましくは約40℃以上、及び好ましくは約50℃以上である。クリーニング組成物は界面活性剤を含有していてもよい。酸によるクリーニング工程の後の苛性クリーニング工程(好ましくはpH10〜12、所望により界面活性剤を含有)も好適なクリーニング法である。
【0052】
ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、特に紙に湿潤強度を付与する目的で使用されるものは、本発明の膜分離法に従って処理できる。本明細書中で一般的に言及されるポリアミン−エピハロヒドリン樹脂は、ポリアミノポリアミド−エピハロヒドリン樹脂、ポリアルキレンポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、ポリアミノユリーレン(polyaminourylene)−エピハロヒドリン樹脂、コポリアミド−ポリユリーレン−エピハロヒドリン樹脂、ポリアミド−ポリユリーレン−エピハロヒドリン樹脂などであるが、これらに限定されない。エピハロヒドリンは好ましくは各場合においてエピクロロヒドリンである。とはいえ、エピハロヒドリンは、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、又はそれらの混合物であってもよい。本発明の目的のために特に好適な樹脂は、ポリアミノアミド−エピクロロヒドリン湿潤紙力増強樹脂で、米国特許第2,926,154号;3,332,901号;3,891,589号;3,197,427号;4,240,935号;4,857,586号;6,554,961号;7,081,512号;欧州特許公開第0349935号;英国特許第865,727号;及び米国特許出願番号09/629,629;09/592,681;09/363,224;及び09/330,200に記載されている。これらの樹脂は、エピクロロヒドリン系樹脂及び窒素含有カチオン性ポリマーを含む。いずれもエピクロロヒドリン反応物から誘導されたものである。さらに、本発明の膜分離法によって処理されるポリアミノアミド−エピクロロヒドリン樹脂は、デラウェア州ウィルミントンのHercules Incorporatedから入手できるKymene(登録商標)ブランドのポリアミノアミド−エピクロロヒドリン樹脂、例えばKymene(登録商標)557H、Kymene(登録商標)621、Kymene(登録商標)821、Kymene(登録商標)557LX、Kymene(登録商標)SLX2、Kymene(登録商標)617、Kymene(登録商標)625、Kymene(登録商標)624、Kymene(登録商標)20X−Cel、Kymene(登録商標)217LX、Kymene(登録商標)G3 X−Cel、Kymene(登録商標)Plus、Kymene(登録商標)450、及びKymene(登録商標)736湿潤紙力増強樹脂であろう。これらの公知樹脂の製造法も上記引用文献に開示されている。
【0053】
本発明の方法に従って製造されるポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の分子量は、約2000ドルトンより大、好ましくは約5000ドルトンより大である。好ましくは、本発明の方法に従って製造されるポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の分子量は、約5000ドルトン〜約1,000,000ドルトン、さらに好ましくは約10,000ドルトン〜約500,000ドルトンである。本発明の方法に従って製造されるポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の分子量は、約10,000ドルトン〜約2,000,000ドルトン、約20,000ドルトン〜約2,000,000ドルトン、約50,000ドルトン〜約2,000,000ドルトン、約100,000ドルトン〜約2,000,000ドルトン、約20,000ドルトン〜約1,000,000ドルトン、約50,000ドルトン〜約1,000,000ドルトン、約100,000ドルトン〜約1,000,000ドルトン、約20,000ドルトン〜約500,000ドルトン、約50,000ドルトン〜約500,000ドルトン、又は約100,000ドルトン〜約500,000ドルトンでありうる。
【0054】
本発明の方法に従って処理できるエピクロロヒドリン含有樹脂は、式(I)のN−クロロヒドリン基及び式(II)の異性体の3−ヒドロキシアゼチジニウムクロリド基の存在を特徴とする。
【0055】
【化1】

【0056】
本発明の膜分離法に従って処理されるポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造に使用できる好適なポリアミンは、ジカルボン酸、又はその誘導体をメチルビス(3−アミノプロピル)アミンと、又は2〜4個の炭素を有する2〜4個のアルキレン基、2個の第一級アミン基、及び1〜3個の第二級アミン基を含有するポリアルキレンポリアミンと反応させることによって製造される。ポリアミノアミドの製造に適切なジカルボン酸誘導体は、エステル、無水物及び酸ハロゲン化物などである。ポリアルキレンポリアミンからポリアミノアミドを製造するための手順は米国特許第2,926,154号に記載されている。ポリアミノアミドを製造するためにメチルビス(3−アミノプロピル)アミンを利用する手順は米国特許第5,338,807号及び5,994,449号に記載されている。
【0057】
上記について更に詳しく述べると、ポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂は、エピクロロヒドリンと、ポリアルキレンポリアミン及び約2〜約10個の炭素原子を含有する飽和脂肪族二塩基性カルボン酸から誘導されたポリアミドとの水溶性ポリマー性反応生成物を含む。本発明のための好適なポリアミノアミドは、ジカルボン酸、又はその誘導体を、2〜4個の炭素を有する2〜4個のアルキレン基、2個の第一級アミン基、及び1〜3個の第二級アミン基を含有するポリアルキレンポリアミンと反応させることによって製造される。ポリアミノアミドの製造に適切なジカルボン酸誘導体は、エステル、無水物及び酸ハロゲン化物などである。このタイプの樹脂は、酸性、アルカリ性又は中性条件下のいずれで製造されたにせよ、紙に湿潤強度を付与する。さらに、そのような樹脂はセルロース繊維に対して直接的に適用できるので経済的である。繊維の方は製紙工場で使用されている稠度の希釈水性懸濁液中にある。
【0058】
本明細書中で使用を想定しているカチオン性樹脂の製造においては、最初に二塩基性カルボン酸をポリアルキレンポリアミンと、水溶性ポリアミドが生成するような条件下で反応させ、次いでこれをエピハロヒドリンと反応させて、一般的に式(III)の構造を有する反復単位を含有する樹脂を形成させる。
【0059】
【化2】

【0060】
式中、zは1〜10、好ましくは2〜10の整数であり、mは1〜4の整数であり、nは1〜8の整数であり、yは約2〜約10000、好ましくは約5〜約3000の整数である。負の対イオンXは単純アニオンを表す。これはポリマー鎖に共有結合していない。一般的にXは塩化物イオンであるが、他のアニオン、例えば硫酸水素イオン及び硫酸イオンと交換可能である。
【0061】
本発明の方法に従って処理できる式(III)の好適な樹脂は、式(IV)の構造を有するPAE樹脂である。
【0062】
【化3】

【0063】
式中、nは約2〜約10000、好ましくは約5〜約3000の整数である。テトラ置換第四級窒素原子は正に荷電しているのでカチオン性である。窒素原子は4員環(すなわち3−ヒドロキシアゼチジニウム基)の一部である。その他の荷電していないポリマー単位もこのタイプの樹脂のポリマー鎖に沿って共存している。いくつかの負に荷電した(すなわちアニオン性)基がポリマー上に存在したとしても、ポリマー鎖沿いの正味の電荷は正である。負の対イオンXは単純アニオンを表す。これはポリマー鎖に共有結合していない。一般的にXは塩化物イオンであるが、他のアニオン、例えば硫酸水素イオン及び硫酸イオンと交換可能である。
【0064】
本発明の方法に従って処理されるPAE樹脂の製造に使用できるジカルボン酸は、2〜10個の炭素原子を含有する飽和脂肪族二塩基性カルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸などである。脂肪族鎖に3〜8個の炭素原子を有し、2個のカルボキシレート部分を結合している飽和二塩基酸及びその誘導体、例えばアジピン酸、ジメチルアジペート、グルタル酸、及びジメチルグルタレートが好適である。二つ以上の飽和二塩基性カルボン酸のブレンドも使用できる。二塩基性カルボン酸の誘導体、例えばエステル、半エステル、酸ハロゲン化物、及び無水物も本発明に使用できる。例えば、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジメチルグルタレート、ジエチルグルタレート、ジメチルスクシネート、及びジエチルスクシネートなどである。二つ以上の二塩基性カルボン酸の誘導体のブレンド、並びに一つ又は複数の二塩基性カルボン酸の誘導体と二塩基性カルボン酸とのブレンドも使用できる。
【0065】
本発明の方法に従って処理されるPAE樹脂の製造に使用できるポリアルキレンポリアミンは、ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン、ポリブチレンポリアミン、ポリペンチレンポリアミン、ポリヘキシレンポリアミンなどを含む。それらの混合物を使用してもよい。ポリエチレンポリアミンは経済的に好適なクラスの代表である。ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びジプロピレントリアミンのような、まずまず純粋な形態で得られるポリアミンの他、混合物及び各種の粗ポリアミン材料も本発明の方法に従って処理されるPAE樹脂の製造に使用できる。例えば、アンモニアと二塩化エチレンの反応によって得られ、塩化物、水、過剰のアンモニア及びエチレンジアミンの除去程度にしか精製されていないポリエチレンポリアミンの混合物も十分な出発材料である。従って、“ポリアルキレンポリアミン”という用語は、上記ポリアルキレンポリアミンのいずれか又はそのようなポリアルキレンポリアミン及びその誘導体の混合物のことを言い、それらを含む。本発明の方法に従って処理されるPAE樹脂の製造に適切な追加のポリアミンは、ビス−ヘキサメチレントリアミン(BHMT)、メチルビスアミノプロピルアミン(MBAPA)、及びその他のポリアルキレンポリアミン(例えばスペルミン、スペルミジン)などである。好ましくは、ポリアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びジプロピレントリアミンである。
【0066】
場合によっては、ポリアミド−エピクロロヒドリン複合体の反応性を変えるために、ポリアミド分子上の第二級アミノ基の間隔を増大するのが望ましいこともある。これは、ポリアルキレンポリアミンの一部分を、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのようなジアミンで置換することによって達成できる。この目的のために、約80%までのポリアルキレンポリアミンを分子当量のジアミンで置き換えることができる。通常、約50%以下の置換でこの目的は果たされる。少なくとも3個の炭素原子を含有する適当なアミノカルボン酸(例えば6−アミノヘキサン酸)又はそのラクタム(例えばカプロラクタム)も本発明において間隔の増大に使用するのに適切である。
【0067】
二酸及びポリアルキレンポリアミンからプレポリマーを製造するために、反応物の混合物を好ましくは常圧で約125℃〜約200℃の温度で好ましくは約0.5〜約4時間加熱する。減圧を使用する場合、約75℃〜約150℃といった低温が使用できる。この重縮合反応は副産物として水を生成するので蒸留によって除去する。この反応が終了したら、得られた生成物は、約50重量%の全ポリマー固形分の濃度で水に溶解できる。
【0068】
二酸の代わりにジエステルを使用する場合、プレ重合は低温、好ましくは常圧で約100℃〜約175℃で実施できる。この場合、副産物はアルコールであり、そのアルコールの種類はジエステルのアイデンティティに依存する。例えば、ジメチルエステルを使用した場合、アルコール副産物はメタノールであるが、エタノールはジエチルエステルから得られる副産物である。減圧を使用する場合、約75℃〜約150℃といった低温が使用できる。
【0069】
前述のポリアミドをカチオン性熱硬化性樹脂に変換するに当たっては、それをエピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンと、約0℃超〜、好ましくは約15℃〜約100℃、好ましくは約20℃〜約80℃、好ましくは約25℃〜約70℃、又は好ましくは約35℃〜約70℃の温度で、25℃における20%固形分の溶液の粘度がガードナー・ホルト・スケールで約C以上に達するまで反応させる。木材接着剤用の硬化剤はA又はBのガードナー・ホルト粘度を有しうる。この反応は、反応を穏やかにするために好ましくは水溶液中で実施される。必ずしも必要ではないが、pH調整を実施して架橋速度を増減することもできる。
【0070】
所望の粘度に到達したら、十分な水を加えて樹脂溶液の固体含有量を所望の量、すなわち約15重量%程度に調整することができる。生成物は約25℃に冷却し、次いで十分な酸を加えてpHを約6未満、好ましくは約5未満、又は好ましくは約4未満に下げることによって安定化させ、ゲル化安定性を改良することによって貯蔵できるようにする。塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、硝酸、ギ酸、リン酸、及び酢酸のような任意の適切な無機又は有機酸が生成物の安定化に使用できる。硫酸のような非ハロゲン含有酸が好適である。
【0071】
湿潤紙力増強剤の場合、エピハロヒドリン対第二級アミン基のモル比が2.0より大きいポリアミド/エピハロヒドリン反応で形成されたPAE樹脂が使用できるが、モル比は約1.5未満、好ましくは約1.4未満であるのが好適である。一例として、アジピン酸対ジエチレントリアミンのモル比1.0対1.0で製造されたポリアミドの場合、下記式を用いてエピハロヒドリン対第二級アミン基のモル比が計算できる。(F11/92.5)/(F9/213.3)。式中、F11はエピクロロヒドリン重量(100%基準)であり、F9はポリ(アジピン酸−コ−ジエチレントリアミン)の乾燥重量である。
【0072】
低い又は高いアゼチジニウム含量を有するPAE樹脂が本発明の方法に従って処理できる。湿潤紙力増強剤として高い効果を有するには、PAE中のアゼチジニウム含量は好ましくは最大化される。従って、本発明の方法に従って処理されるPAE樹脂のアゼチジニウム含量は約35モル%より大、好ましくは約40モル%より大、さらに好ましくは約45モル%より大、最も好ましくは約50モル%より大で、好適範囲は約40モル%〜約80モル%、約40モル%〜約75モル%、約45モル%〜約75モル%、約45モル%〜約70モル%、又は約50モル%〜約75モル%でありうる。アゼチジニウム及びその他の種のモルパーセントは13C NMRによって測定できる。
【0073】
クレープ加工剤の場合、PAE樹脂は、エピハロヒドリン対第二級アミン基のモル比が約0.50未満、さらに好ましくは約0.25未満、さらには0.1未満になることさえある(好適な下限は約0.05)ポリアミド/エピハロヒドリン反応で形成された樹脂を含むのが好適である。さらに、本発明によるクレープ加工剤は湿潤紙力増強剤ほど多くの架橋官能性は必要ないので、湿潤紙力増強剤よりアゼチジニウム含量は低くてよい。従って、好ましくはクレープ加工剤のアゼチジニウム含量は約10モル%未満で、好適な範囲は約5モル%〜約10モル%である。アゼチジニウム及びその他の種のモルパーセントは13C NMRによって測定できる。
【0074】
第三級アミン官能基を含有するプレポリマーから誘導されたクレープ加工剤の場合、クレープ加工剤は好ましくは約30モル%未満の第四級アミノハロヒドリン(例えばアミノクロロヒドリン)含有量を有するが、本発明による湿潤紙力増強剤は、約30モル%を上回る第四級アミノハロヒドリン(例えばアミノクロロヒドリン)含有量を有する。さらに、理論に拘束されるつもりはないが、ジエチレントリアミンのような第二級アミン化合物はアゼチジニウム基を形成するが、メチルビス(3−アミノプロピル)アミンのような第三級アミンタイプの化合物は第四級アミノクロロヒドリン基を形成すると考えられる。第三級アミンタイプの化合物の例は、アジピン酸とメチルビス(3−アミノプロピル)アミンの反応生成物(第三級アミンプレポリマーをもたらす)などであるが、これに限定されない。このプレポリマーは、第四級アミノハロヒドリン基を含有する第三級アミン系樹脂の製造に使用される。
【0075】
本発明の方法によって製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物は、それ以上の処理をせずに使用できる。しかしながら、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又は少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む組成物は、本発明の膜分離法の前及び/又は後に種々のプロセスによって処理できる。例えば、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂又は少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む組成物は、樹脂溶液中のAOX種、例えばエピハロヒドリン及びエピハロヒドリン副産物、例えばエピクロロヒドリン及びエピクロロヒドリン副産物、例えばDCP及びCPDを除去するプロセスによって処理できる。利用できる処理法又は樹脂を限定せずに、ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物は、本発明の膜分離法の前及び/又は後に、米国特許第5,516,885号及びWO92/22601に開示されているような塩基イオン交換カラムを用いて;WO93/21384に開示されているような炭素吸着を用いて;米国法定発明登録H1613に開示されているような抽出、例えば酢酸エチル;又はWO96/40967;米国特許第5,470,742号;5,843,763号;5,972,691号;5,871,616号;及び米国特許出願第09/629,629号に開示されているようなバイオ脱ハロゲン化を用いて処理することができる。さらに、米国特許第6,554,961号;7,175,740号;7,081,512号;及び米国特許出願第09/592,681号、09/363,224号、及び09/330200号に開示されているようなCPD形成種の削減又は除去法のいずれかの組合せも、PAE樹脂、又はその組成物に対して、そのような樹脂又は少なくとも一種のそのような樹脂を含む組成物を本発明の膜分離法に付する前及び/又は後に実施してもよい。
【0076】
本発明の膜分離法を受ける前又は後に、PAE樹脂、又はその組成物は、塩基性剤で処理してCPD形成種を削減又は除去することができる。さらに、塩基処理の後に酸処理を用いてゲル化安定性の増強を提供することもできる。さらに、塩基処理を受ける前又は後に、PAE樹脂、又はその組成物は塩基性イオン交換、イオン交換、バイオ脱ハロゲン化又は炭素吸着によって処理することもできる。同様に、酸処理を受ける前又は後に、PAE樹脂、又はその組成物は塩基性イオン交換、イオン交換、バイオ脱ハロゲン化又は炭素吸着によって処理することもできる。塩基処理と組み合わせた場合、得られる樹脂は、非常に低含量のDCP、CPD及び塩化物のほか、非常に低含量のCPD形成種(ポリマー結合CPD(PB−CPD)としても知られる)しか含有しないはずである。膜分離法と塩基処理を組み合わせると、低コスト製品及び/又はさらに改良された性能を提供することができる。さらに、そのような組合せは、エピクロロヒドリン対アミンの比率が1.10:1.0より高くても、非常に低含量のDCP、CPD及び塩化物のほか、低含量のPB−CPDも提供する。CPD形成種に関して言えば、理論にとらわれるわけではないが、例えばポリアミノポリアミド中の酸基が、例えばポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂の製造中にエピクロロヒドリンと反応して少量のクロロヒドロキシプロピルエステル種(以後CPDエステルとも呼ぶ)を樹脂骨格上に形成すると考えられている。経時変化によるCPDエステルの加水分解で、CPDが生じ、酸基が再生される。図1にこのCPDエステルの形成と加水分解を示す。
【0077】
【化4】

【0078】
PAE樹脂又はその組成物を、本発明の膜分離法に付する前又は後に少なくとも一種の塩基性剤で処理する場合、少なくとも一種の塩基性剤は、少なくとも一種のPAE樹脂又はその組成物に、少なくとも一種のPAE樹脂又はその組成物においてCPD形成種の十分な加水分解が達成されるのに適切な条件下で加える。好ましくは、時間、温度、pH、出発粘度、固体含有量、及びPAE樹脂のエピハロヒドリン対アミンの比率といった条件のバランスを取って、加水分解反応を可能にしつつ、少なくとも一種のPAE樹脂又はその組成物の性能(例えば湿潤紙力の有効性)の劣化を最小限に抑え、かつ望ましくないほど高い樹脂粘度にならないようにする。CPD形成種の加水分解は、時間、温度、pH、出発粘度、固体含有量、及びPAE樹脂のエピハロヒドリン対アミンの比率といった条件のバランスを取ることによって高い固形分濃度で実施できる。
【0079】
少なくとも一種のPAE樹脂又はその組成物の粘度は、塩基処理中、出発粘度から増加することも減少することもあるが、前述の反応条件によっては同一又は実質的に同一に保つこともできることに注意する。例えば、湿潤紙力増強剤の場合、粘度は処理時間の最初の部分で出発粘度を維持又は減少し、その後処理時間の終わりで維持又は所望の粘度に増加する(これに限定されない)。例えば、出発のブルックフィールド粘度が約100〜300cpsで、約20〜約22重量%の活性固形分を有する樹脂の場合、条件は、苛性処理の後、活性固形分約18〜約20重量%で樹脂粘度は維持又は減少するように選ばれるのが好適である。
【0080】
上記に関して、反応混合物の粘度を反応が進行不能になるような粘度未満に保持するために、ポリマーの分解又は分子量の増加などの副反応を最小限に留める又は少なくともバランスを取るのが好適である。好ましくは、粘度は、Brookfield LVDV−II+ Programmable Viscometerを用いて25℃で、又はBrookfield DV II+,Spindle LV2のような同等品を用い、粘度に応じて60又は100rpmで測定する。プログラマブル粘度計の場合、使用される手順は、Operating Instructions,Manual No.M/97−164に準拠する。この粘度計は、インストラクションマニュアルに従ってサンプルの粘度に対して適正なスピンドル及びrpmが使用された場合に限り、粘度を決定する。
【0081】
さらに、好ましくは温度、pH及び塩基性剤の濃度といった条件は反応中に変えられることに注意する。例えば、反応混合物の粘度が所望されるより高速度で増加する場合、温度を下げればよい。
【0082】
塩基処理の温度は、少なくとも約20℃、約25℃〜約65℃、約30℃〜約60℃、約35℃〜約55℃、及び好ましくは約35℃〜約50℃でありうる。反応時間は、約5分〜約3時間、約10分〜約2時間、及び約20分〜約1時間でありうる。pHは、約9.5〜13、約10〜約12.5、約10.5〜約13.5及び好ましくは約10.5〜約12.5の間で変動しうる。好適なpH値は約35℃〜約50℃の好適な温度範囲で測定される。好適なpH値は塩基性剤の添加5分後に測定される。pHは、好ましくは塩基処理中低下するがままにする。
【0083】
塩基処理には有機塩基及び無機塩基の両方が使用できる。塩基は任意のプロトン受容体と定義される(Advanced Organic Chemistry,第3版;Jerry March;John Wiley & Sons;ニューヨーク,1985,pp.218−36参照)。典型的な塩基は、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、トリアルキルアミン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、アンモニア、有機アミン、アルカリ金属硫化物、アルカリ土類硫化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類アルコキシド、及びアルカリ金属リン酸塩、例えばリン酸ナトリウム及びリン酸カリウムなどである。好ましくは、塩基は、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、又はアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムである。最も好ましくは、塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びそれらの組合せを含む無機塩基を含む。これらは特に低コスト及び利便性という点で好適である。
【0084】
そこで、本発明は、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物の製造法にも関する。該方法は、(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離し(前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物を含む);そして(c)前記濃縮物をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理することを含み、得られた組成物はpH1及び50℃で24時間貯蔵された場合に乾燥基準で約250ppm未満のCPDしか生じない。(b)から得られた透過物は、前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満をさらに含みうる。
【0085】
本発明はさらに、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造法に関する。該方法は、(a)少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理し;(b)膜分離装置に塩基処理された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして(c)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離することを含み、前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物を含み、そして前記濃縮物はpH1及び50℃で24時間貯蔵された場合に乾燥基準で約250ppm未満のCPDしか生じない。(c)から得られた透過物は、前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満をさらに含みうる。
【0086】
塩基処理の後、米国特許第7,081,512号(引用によってその全文を本明細書に援用する)に記載されているように、好ましくは酸処理を採用する。温度は少なくとも約35℃、好ましくは約40℃〜約75℃、さらに好ましくは約45℃〜約70℃、なおさらに好ましくは約50℃〜約70℃、なおさらに好ましくは約50℃〜約65℃でありうる。反応時間は約20分〜約5時間、好ましくは約30分〜約4時間、さらに好ましくは約40分〜約3時間、さらに好ましくは約50分〜約2.5時間でありうる。好適な処理温度と時間は反比例する。処理温度が低ければ処理時間は増加するのが好ましい。塩基処理プロセス中に形成されたエポキシド官能基の多くを、酸処理プロセス中にクロロヒドリン官能基に変換させるのが好適である。
【0087】
そこで、本発明はさらに、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物の製造法にも関する。該方法は、(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離し(前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物を含む);(c)前記濃縮物をCPD形成種の削減及び除去の少なくとも一方を行う条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理し(得られた組成物はpH1及び50℃で24時間貯蔵された場合に乾燥基準で約250ppm未満のCPDしか生じない);そして(d)(c)から得られた組成物をゲル化貯蔵安定組成物を得るのに足る条件下で少なくとも一種の酸性剤で処理することを含む。(b)から得られた透過物は、前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満をさらに含みうる。
【0088】
本発明はさらに、削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物の製造法にも関する。該方法は、(a)少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂をCPD形成種を削減/除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理し、(b)(a)からの塩基処理された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂をゲル化貯蔵安定組成物を得るのに足る条件下で少なくとも一種の酸性剤で処理し、(c)膜分離装置に(b)からの酸処理された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し、そして(d)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離することを含み、前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(c)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、前記透過物は(c)の水性組成物から除去された残留物を含み、そして前記濃縮物はpH1及び50℃で24時間貯蔵された場合に乾燥基準で約250ppm未満のCPDしか生じない。(d)から得られた透過物は、前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満をさらに含みうる。
【0089】
酸処理のpHは、約1.5〜約3.5、約1.8〜3.5、好ましくは約1.8〜約3.2、好ましくは約2.0〜約3.0、さらに好ましくは約2.2〜約2.8の間で変動しうる。好適なpH値は25℃で測定される。好適な酸処理pHは所望の樹脂粘度に依存する。好適な範囲内でpHを上げると粘度も増加する。理論にとらわれたくないが、この酸処理プロセス中のpHと粘度の関係は、架橋反応とポリマー粘度を低下させる反応とのバランスによるものである。処理中は酸性剤を定期的に又は連続的に添加することによってpH値を維持するのが好適である。本発明においては有機及び無機酸の両方が使用できる。酸は任意のプロトン供与体と定義される(Advanced Organic Chemistry,第3版;Jerry March;John Wiley & Sons;ニューヨーク,1985,pp.218−36参照、引用によって本明細書に援用する)。適切な酸は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、硝酸、ギ酸、リン酸、及び酢酸などである。硫酸のような非ハロゲン含有酸が好適である。
【0090】
本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、及びその組成物は削減された量の吸着性有機ハロゲン(AOX)を有する。本発明の方法に従って処理されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物の初期AOX含有量は、等しい活性物量で、非処理樹脂中の初期含有量の約75%未満、好ましくは初期含有量の約60%未満、好ましくは初期含有量の約50%未満、好ましくは初期含有量の約40%未満、好ましくは初期含有量の約30%未満、好ましくは初期含有量の約20%未満、好ましくは初期含有量の約10%未満に削減できる。AOXの分析にはMitsubishi Kasei Corporationの機器(モデルTOX−10Σ)が使用できる(操作マニュアルに記載の手順を用いる)。
【0091】
本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、及びその組成物は、過度のCPDの形成なしに貯蔵することが可能である。CPDの存在量は以下の酸試験を用いて測定できる。撹拌機付き容器にポリアミン−エピハロヒドリン樹脂又はその組成物の一部を装入する。pHを96重量%硫酸で1.0に調整する。容器を封止し、50℃の水浴に入れ、撹拌しながら50℃に維持する。24時間時点で容器から一定分量を取り出し、以下に記載の様式でガスクロマトグラフィー(GC)によって分析し、CPDの存在量を測定する。
【0092】
本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、及びその組成物は、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、クレープ加工用接着剤、及びその他の接着剤組成物のような組成物の製造に使用できる。これらの組成物は各種の紙製品の製造に使用できる。従って、本発明はさらに、本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、及びその組成物を含む湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、クレープ加工用接着剤、及びその他の接着剤組成物のような組成物にも関する。本発明はまた、本発明の方法に従って製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、及びその組成物を含む紙製品にも関する。
【0093】
本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含む樹脂を用いる紙の製造法は、(a)水性パルプ懸濁液を用意し;(b)前記水性パルプ懸濁液に、本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を加え;そして(c)(b)で製造された水性パルプ懸濁液をシート状にし、乾燥させて紙を得ることを含む。プロセス(a)の水性パルプ懸濁液は、当該技術分野で周知の手段、例えば公知の機械的、化学的、及びセミケミカルなどのパルプ化法によって得られる。通常、機械的磨砕及び/又は化学的パルプ化工程の後、パルプを洗浄し、残ったパルプ化薬品及び可溶化木材成分を除去する。漂白又は未漂白(未晒)パルプ繊維のいずれでも本発明の方法に利用できる。リサイクルされたパルプ繊維も使用に適切である。(b)で本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物をパルプスラリーに、パルプの乾燥重量を基にして好適な最小量の約0.1重量%、さらに好ましくは約0.2重量%加える。樹脂の好適な最大量は約5重量%、さらに好ましくは約3重量%、最も好ましくは約1.5重量%である。少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物は、一般的に水性組成物の形態で添加される。さらに、紙に通常使用されるその他の材料、例えばサイズ剤、顔料、ミョウバン、増白剤、染料及び乾燥紙力増強剤も、当該技術分野で周知の量で添加してもよい。(c)は製紙分野の専門家に周知の手順に従って実施される。
【0094】
本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含む紙製品は、過度のCPDの形成なしに貯蔵することが可能である。そのような紙製品は初期のCPDの含量も低いが、長期の貯蔵時間にわたってこの低含量を維持できる。本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を1重量%の添加量で製造した紙製品は、2週間、好ましくは少なくとも6ヶ月、なおさらに好ましくは少なくとも1年もの期間貯蔵した場合に、約600ppb未満のCPD、さらに好ましくは約300ppb未満のCPD、さらに好ましくは約200ppb未満のCPD、さらに好ましくは約100ppb未満のCPD、なおさらに好ましくは約50ppb未満のCPD、なおさらに好ましくは約10ppb未満のCPD、なおさらに好ましくは約1ppb未満のCPDしか含有し得ない。
【0095】
さらに、本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を約1重量%の添加量で製造した紙製品は、2週間、さらに好ましくは少なくとも6ヶ月、なおさらに好ましくは少なくとも1年もの期間貯蔵した場合に、CPDの含有量に約300ppb未満の増加、さらに好ましくは約200ppb未満のCPD、さらに好ましくは約100ppb未満のCPD、なおさらに好ましくは約50ppb未満のCPD、なおさらに好ましくは約10ppb未満のCPD、なおさらに好ましくは約1ppb未満のCPDの増加しかない。言い換えると、本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を用いて製造された紙製品は、貯蔵安定性を有し、わずか1日でも1年を超える期間貯蔵でも紙製品に過剰のCPD含有量を生じない。本発明の方法によって製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物は、紙製品、例えば包装用板紙グレード、ティッシュ及びタオルグレード、特に水性環境、特に熱水性環境に曝される紙製品、例えばティーバッグ、コーヒーフィルタなどに、最小量のCPD形成しか示さない。紙は、本発明の方法によって製造された少なくとも一種のPAE樹脂、又はその組成物を約1重量%以外の添加量で添加することによって製造することもできるが、CPD含有量は添加量に対して補正されるべきである。例えば、樹脂を0.5重量%の添加量で添加することによって製造され、CPDの測定含有量が50ppbの紙製品の場合、1重量%の添加量を基にして補正されたCPDは100ppbとなる(50ppb/0.5%添加量)。
【0096】
紙製品中のCPDを測定するには、欧州規格EN 647(日付1993年10月)に記載の方法に従って紙製品を水で抽出する。5.80グラムの塩化ナトリウムを20mLの水抽出物に溶解する。この加塩水性抽出物を20グラム容量のExtrelutカラムに移し、15分間かけてカラムを飽和させた。3mLの酢酸エチルで3回の洗浄とカラムの飽和後、Extrelutカラムを300mLの溶出液が回収されるまで約1時間溶出する。300mLの酢酸エチル抽出物を、500mLのKuderna−Danish濃縮装置を用いて約5mLに濃縮する。必要であれば、マイクロKuderna−Danish装置を用いてさらなる濃縮を行ってもよい。濃縮された抽出物を実施例の部に記載の手順及び機器構成を用いてGCにより分析する。
【0097】
繊維性ウェブは、本発明の方法によって製造されたポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物をクレープ加工用接着剤として用いてクレープ加工することができる。その加工法は、(1)本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含むクレープ加工用接着剤を、ウェブ乾燥用表面又はウェブに塗布し;(2)繊維性ウェブを乾燥用表面に対してプレスしてウェブの乾燥用表面への接着を実行し;そして(3)ウェブを乾燥用表面からドクターブレードのようなクレープ加工用器具を用いて剥がし、繊維性ウェブにクレープ加工を施すことによる。(1)でクレープ加工用接着剤は好ましくはウェブ乾燥用表面に塗布する。好適な繊維性ウェブはセルロースウェブである。好ましくは、クレープ加工用接着剤は、約0.1重量%〜約10重量%、さらに好ましくは約0.25重量%〜約5重量%、最も好ましくは約0.5重量%〜約2重量%の樹脂又は樹脂組成物を含有する水溶液の形態で塗布される。乾燥重量基準で、クレープ加工するパルプ又は紙の乾燥重量を基にして最小量約0.001重量%、さらに好ましくは約0.005重量%、最も好ましくは約0.01重量%が使用される。好ましくは、使用されるクレープ加工用接着剤の最大量は約2重量%、さらに好ましくは約1重量%、最も好ましくは約0.5重量%である。商業的クレープ加工操作で最もよく使用されている乾燥用表面はヤンキードライヤーで、接着剤の水性組成物は、ほとんどの場合、スプレーによってクレープ加工用シリンダ又はドラムに塗布される。あるいは、繊維性ウェブに好ましくはスプレーによって塗布することにより加えてもよい。セルロースウェブ、すなわち紙の場合、クレープ加工用接着剤は、抄紙機の湿潤端で湿潤ウェブに塗布することによって加えることができる。場合によっては、クレープ加工用接着剤をシートにする前のパルプに加えることも可能でありうる。その他の成分、特にウェブの乾燥用表面への接着を改変する特別の薬品を、本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含むクレープ加工用接着剤と併せて使用することもできる。そのような薬品は、剥離剤又は可塑剤としても知られており、水溶性ポリオール、グリコール、ポリエチレングリコール、糖、オリゴ糖、及び炭化水素油などである。
【0098】
本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含むクレープ加工用接着剤は、一般的にクレープ加工用シリンダ又はドラムの表面に通常水溶液又は水性分散液としてスプレーされる。これは熱伝達を改良するので、シートのより効率的な乾燥を可能にする。パルプ紙料がクレープ加工用シリンダに強固に貼り付きすぎていたら、剥離剤をシリンダにスプレーすればよい。剥離剤は典型的には炭化水素油である。これらの薬品はクレープ加工用ブレードでのティッシュウェブの均一な剥離を補助すると同時に、潤滑化し、ブレードを過度の摩耗から保護する。
【0099】
接着剤組成物は、本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物をタンパク質及び/又はリグニンと組み合わせることによって製造できる。適切なタンパク源は、大豆タンパク、血粉、羽毛粉、ケラチン、ゼラチン、コラーゲン、グルテン、及びカゼインなどである。タンパク質はその溶解性、分散性及び/又は反応性を改良するために予備処理又は改変してもよい。米国特許第7,252,735号及び米国特許第7,060,798号は、タンパク質の改変法及びそれらの接着剤への配合法を教示している。好適なタンパク源は大豆である。大豆タンパクは一般に大豆粉(乾燥基準で約50重量%のタンパク質)、濃縮大豆タンパク濃縮(乾燥基準で約65重量%のタンパク質)、及び分離大豆タンパク(SPI、乾燥基準で少なくとも約85重量%のタンパク質)の形態で入手できる。リグニンを使用する場合、それは木材からセルロースパルプを製造するクラフト工程で得られるクラフトリグニンのような工業用リグニンであろう。
【0100】
本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物とタンパク質及び/又はリグニンとの組合せは、成分を合わせ、必要であれば追加の希釈水と共に混合することにより水性混合物として調製される。その他の添加剤、例えば、増量剤、粘度調整剤、脱泡剤、殺生物剤、及び充填剤、例えば小麦粉、樹皮粉、ナッツ殻粉、及びコーン穂軸粉を該接着剤に含めることもできる。接着剤の成分は適切なミキサーで合わせ、均一な混合物が得られるまで撹拌する。接着剤組成物は、典型的には約5〜約75重量%の範囲、さらに好ましくは約10〜約60重量%の範囲、最も好ましくは約20〜約50重量%の範囲の固体含有量で製造される。接着剤組成物中の樹脂対タンパク質及び/又はリグニンの最も有効な比率は、接着される基質、使用されるタンパク質及び/又はリグニンの種類、及び樹脂の物理化学的性質による。接着剤に使用されるタンパク質及び/又はリグニン対樹脂の比率は、好ましくは約100:1〜約0.1:1の範囲、さらに好ましくは約25:1〜約0.5:1の範囲、最も好ましくは約10:1〜約1:1の範囲である。
【0101】
本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含む接着剤混合物のpHは、熱硬化系の反応性を制御するために調整できる。樹脂は中性〜アルカリ性のpH範囲、例えば約pH6〜約pH9で最も反応性があるので、pHをこの範囲に調整することは、pHが約6〜約9の範囲になるために増大する反応性を提供することになる。pH9を超えるある点では、熱硬化系の反応性はポリマー骨格の加水分解のような競合反応のために減退する。
【0102】
本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含む接着剤組成物は熱硬化性材料なので、熱及び所望により圧力の印加によって硬化する。接着剤組成物を硬化するための典型的な温度は約50℃〜約250℃の範囲、さらに好ましくは約80℃〜約200℃の範囲、最も好ましくは約100℃〜約150℃の範囲である。これらの温度における硬化時間は約30秒〜約1時間、さらに好ましくは約1分〜約30分、最も好ましくは約2分〜約10分の範囲であろう。
【0103】
本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含む接着剤組成物は、適切な基質に、該基質に対して約1〜25重量%の範囲、好ましくは約1〜10重量%の範囲、最も好ましくは約2〜8重量%の範囲で添加できる。いくつかの適切な基質の例は、リグノセルロース材料、パルプ、又はグラスファイバーなどであるが、これらに限定されない。前述のように、接着剤組成物は、ローラーコーティング、ナイフコーティング、押出、カーテンコーティング、フォームコーター、及びスプレーコーターの使用によって塗布できる。その一つの例はスピニングディスク樹脂アプリケーターである。
【0104】
接着剤を使用してリグノセルロース複合材料を製造する方法は、“Wood−based Composite Products and Panel Products(木材系の複合製品及びパネル製品)”、木材ハンドブック第10章−エンジニアリング材料としての木材,Gen.Tech.Rep.FPL−GTR−113,463ページ、米国農務省林野部林産物研究所、ウィスコンシン州マディソン(1999)に教示されている。本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含む接着剤組成物を用いていくつかの材料が製造できる。例えば、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、ウェハーボード、ファイバーボード(中密度及び高密度繊維板を含む)、パラレルストランドランバー(PSL)、ラミネーテッドストランドランバー(LSL)、及びその他の類似製品などである。木材、木材パルプ、ストロー(米、小麦又は大麦などの)、亜麻、麻、及びバガスといったリグノセルロース材料が本発明による熱硬化性製品の製造に使用できる。リグノセルロース製品は、典型的には、接着剤を粉末、パーティクル、ファイバー、チップ、フレークファイバー、ウェハー、トリム、削り節、おがくず、ストロー、軸、又は破片の形態の基質とブレンドし、次いで得られたブレンドをプレス及び加熱して硬化材料を得ることによって製造される。リグノセルロース材料の水分含有量は、接着剤組成物とブレンドする前にリグノセルロース材料の総重量に対して約2%〜約20%の範囲にあるべきである。
【0105】
本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含む接着剤組成物は、合板又は単板積層材(LVL)の製造にも使用できる。接着剤組成物は、ベニヤ表面にロールコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング、又はスプレーによって塗布できる。次に複数のベニヤを積み重ねて必要な厚さのシートにする。次に、マット又はシートを熱プレス(例えばプラテン)に入れ、圧縮して材料の合体と硬化を実行してボードにする。ファイバーボードは、ウェットフェルト/ウェットプレス法(wet felted/wet pressed method)、ドライフェルト/ドライプレス法、又はウェットフェルト/ドライプレス法によって製造できる。
【0106】
リグノセルロース系基質のほか、本発明の方法によって製造された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂、又はその組成物を含む接着剤組成物は、グラスウール、グラスファイバー、及びその他の無機材料のような基質と使用することもできる。該接着剤組成物は、リグノセルロース系及び無機系基質の組合せと使用することもできる。
【0107】
本発明をより明確に記載するために、以下の非制限的実施例を例示の目的で提供するが、それらは決して本発明の範囲を制限すると見なされるべきものではない。実施例中のすべての部及びパーセンテージは特に明記しない限り重量による。以下の実施例の部においてNDは“非検出”を示す。
【実施例】
【0108】
ガスクロマトグラフィー(GC)パラメーター
GCを用いてエピクロロヒドリン及びエピクロロヒドリン副産物の含量を測定した。一定分量をExtrelutカラム(EM Science,Extrelut QE,Part#901003−1)に吸収させ、酢酸エチルで抽出した。次に酢酸エチル溶液の一部を、DB−WAX(Megabore,J&W Scientific,Inc.)という30m×0.53mm、膜厚1.5ミクロンのワイドボアキャピラリーカラムで分析した。HP Model 5890シリーズII GCを用いた。使用したデータシステムはMillennium 2010又はHP ChemStationのいずれかであった。炎イオン化検出器(FID)(Hewlett−Packard(HP)Model 5890 GC)を使用した場合、成分はn−オクタノールを内部標準として定量した。電解質伝導度検出器(ELCD)(OI Analytical,Model 5220)又はハロゲン特異的検出器(XSD)(OI Analytical,Model 5360 XSD)を用いた場合、ピークマッチング定量を用いる外部標準法を使用した。FID及びELCD検出の場合、キャリヤーガスは流量10mL/分のヘリウムであった。オーブンプログラムは、35℃で7分間、次いで8℃/分で200℃まで上げ、200℃に5分間保持するというものであった。FIDは、流量30mL/分の水素及び流量400mL/分の空気を250℃で使用した。ELCDはn−プロパノールを電解質として使用し、電解質の流量は反応器温度900℃で50%に設定した。XSD反応器は1100℃で高純度空気流量25mL/分を用いて酸化的モードで運転した。
H NMRの手順とパラメーター(以下の手順は13C NMR測定にも使用された。この方法を用いるアゼチジニウム値は、13C NMR法と相関させるために0.91116を乗じた。本発明におけるアゼチジニウム値は13C NMR法又は相関13C NMR法に基づく。)
サンプル調製:
(1)約1.5重量%のリン酸水溶液を17ccのバイアルに用意した(約10ccのDO)。
(2)(1)の溶液(約10〜20滴)を100gのDOにpH3.0〜3.5が達成されるまで加えた。
(3)受け取ったまま手を加えていないポリアミン−エピハロヒドリン約50mgを5ccバイアルに量り入れた。
(4)DOで緩衝化されたリン酸((2)の溶液)約1ccを5ccのバイアルに加えた。
(5)バイアルの内容物を渦流ミキサーを用いて混合した。
(6)バイアルの内容物を5mmのNMR管にガラスピペットを用いて移した。
【0109】
H NMRスペクトルは、インバース5mmプローブを備えたBRUKER Avance分光計を用いて取得した。H NMRの運転周波数は400MHz(Avance 400)又は500MHz(Avance 500)でデータ収集に十分であった。適当なシグナルの電子積分によって下記アルキル化成分、すなわちポリマー性アミノクロロヒドリン(ACH)及びアゼチジニウムイオン(AZE)のモル濃度が得られた。これら各種の濃度を計算するために、積分値は1プロトンを基準にする必要があった。例えば、1.72〜1.25ppmのスペクトル領域は、ジエチレントリアミン−アジペート骨格のアジペート部分に由来する4個のプロトンを表していたので積分値を4で割った。この値をアルキル化種の計算のためのポリマー公分母(PCD)として用いた。これらの種の化学シフトを以下に示す(アジペートの磁場リファレンス1.5ppmを用いて)。各アルキル化産物の対応する積分値は、以下の例に示すように計算の分子に使用した。
【0110】
4.85〜4.52ppmにおけるAZEシグナルは3個のプロトンを表すので、割る数3が必要とされた;AZEの積分値÷3÷PCD=AZEのモル分率
68〜69ppmにおけるACHシグナルは2個のAZEプロトンと1個のACHプロトンを表す;ACHの積分値−(AZEシグナル÷3×2)÷PCD=ACHのモル分率
以下のスペクトルパラメーターは、Bruker Avance 400でPAE−エピクロロヒドリン樹脂のH NMR分析を行う場合の標準実験条件である。
【0111】
温度 55℃
共鳴周波数 400MHz
#収集データポイント 32K
収集時間 2秒
掃引幅 8278Hz
スキャン数 32
リラグゼーションディレイ 8秒
パルスチップアングル 90°
パルスプログラム zgpr(事前飽和)
処理スペクトルサイズ 32K
アポダイゼーション関数 指数関数
ラインブロードニング 0.3Hz
水抑制(水シグナル消し)のパルス電力量は80−85dB−60ワット 1H トランスミッターであった。過度の電力は隣接シグナルを減弱する−“ソフト”パルス使用のこと
13C NMRパラメーター
13C NMRスペクトルは、10mmブロードバンドプローブを備えたBRUKER AMX分光計を用いて取得した。13C NMRの運転周波数は100MHz(AMX400)又は125MHz(AMX500)でデータ収集に十分であった。いずれの場合もスペクトルは連続Hデカップリングをしながら取得した。適当なシグナルの電子積分によって下記アルキル化成分、すなわちACH、EPX、GLY、及びAZEのモル濃度が得られた。ここで、
ACH=ポリマー性アミノクロロヒドリン
EPX=ポリマー性エポキシド
GLY=ポリマー性グリコール
AZE=アゼチジニウムイオン
これら各種の濃度を計算するために、積分値は1炭素を基準にする必要があった。例えば、20〜42ppmのスペクトル領域は、ジエチレントリアミン−アジペート骨格の6個の炭素を表していたので積分値を6で割った。この値をアルキル化種の計算のためのポリマー公分母(PCD)として用いた。これらの種の化学シフトを以下に示す(アセトニトリルの磁場リファレンス1.3ppmを用いて)。各アルキル化産物の対応する積分値は計算の分子に使用した。以下の例参照。
【0112】
68〜69ppmにおけるACHシグナルは1個の炭素を表す;ACHの積分値÷PCD=ACHのモル分率
69〜70ppmにおけるGLYシグナルは1個の炭素を表す;GLYの積分値÷PCD=GLYのモル分率
51〜52ppmにおけるEPXシグナルは1個の炭素を表す;EPXの積分値÷PCD=EPXのモル分率
73〜74ppmにおけるAZEシグナルは2個の炭素を表すので、割る数2が必要とされる;AZEの積分値/2÷PCD=AZEのモル分率
以下のスペクトルパラメーターは、Bruker AMX400でKymene樹脂又はクレープ加工剤の13C NMR分析を行う場合の標準実験条件である。
【0113】
温度 25℃
共鳴周波数 100MHz
#データポイント 64K
ドウェル時間 20マイクロ秒
収集時間 1.3秒
掃引幅 25000Hz
スキャン数 1K
リラグゼーションディレイ 3秒
パルスチップアングル 70度
パルスプログラム zgdc
処理スペクトルサイズ 64K
アポダイゼーション関数 指数関数
ラインブロードニング 3Hz
比較例1:
Kymene(登録商標)217LX湿潤紙力増強樹脂をHercules Incorporatedから入手した。この製品は低AOX及び低含量のCPD形成種(ポリマー結合CPD、PB−CPD)を有しており、米国特許第7,081,512号に記載の技術を用いて製造された(前記特許は引用によってその全文を本明細書に援用する)。このサンプルは、全固形分21.87%、ブルックフィールド粘度45cps、及びpH2.5を有していた。
実施例1:
膜分離のために、XN−45(ポリアミド、公称カットオフ150ドルトン)膜を備えたV−SEPシリーズL装置を使用した。どちらもカリフォルニア州エメリービルのNew Logic Internationalから入手した。この装置に関する詳細な手順はNew Logic International提供の操作マニュアルに記載されている。供給タンクを冷却し、標的温度、典型的には15〜25℃に維持した。比較例1を、硫酸でpH3に酸性化され、500ppmのソルビン酸カリウム(微生物保存剤として)を含有する水で全固形分8.5%に希釈し、10Kgの溶液を得た。V−SEP装置を始動させ、流量を0.5gal/分に調整した。運転圧力はポンプスピードと背圧弁の調整によって300p.s.i.にセットした。温度は15〜25℃に維持した。透過物の重量と流量をモニターした。透過物を除去して濃縮物の重量を半分に削減し(典型的には5Kgの透過物と5Kgの残留濃縮物)、濃縮物を全固形分16.35%に濃縮した。濃縮物と透過物のサンプルを回収して分析した(表1及び3、Sと表示されたカラム見出し参照)。
塩化物塩の除去工程(サイクルA):
濃縮物に、ほぼ等しい重量の2.0重量%硫酸ナトリウム水溶液(硫酸でpH3に酸性化、500ppmのソルビン酸カリウム含有)を加えた。この溶液の重量は前のサイクルから除去された透過物の重量と等しかった。透過物の重量と流量はモニターされた。透過物は添加された溶液の重量と等しくなるように除去された。濃縮物と透過物のサンプルを回収して分析した(表1参照)。濃縮物と透過物の全固形分は、プロセスが適正に機能していることの確認(例えば膜における漏れがない)と性能ガイダンス提供のためにプロセス中モニターされた。上記透過物を秤量し、等量の2.0重量%硫酸ナトリウム水溶液(硫酸でpH3に酸性化、500ppmのソルビン酸カリウム含有)を上記16.35%固形分の濃縮物に加えた。V−SEP装置を始動させ、流量を0.5gal/分に調整した。運転圧力はポンプスピードと背圧弁の調整によって300p.s.i.にセットした。温度は15〜25℃に維持された。透過物の重量と速度をモニターした。透過物は、透過物の重量が添加した2%硫酸ナトリウム水溶液の重量と等しくなるまで除去された。濃縮物と透過物のサンプルを回収して分析した(表1及び3参照)。サイクルAはあと4回繰り返された。これらの工程中にDCPとCPDも除去された。クリーニングプロセスを平均2サイクルごとに開始した。クリーニング前のサイクルは透過物の流量と運転スケジュール次第であった。
【0114】
クリーニングプロセス:生成物の濃縮物を供給タンクから取り出した。硫酸でpH3に酸性化され、500ppmのソルビン酸カリウムを含有する水溶液を供給タンクに加えた。この水溶液は、所望のプロセス工程によって2.0重量%の硫酸ナトリウムを含有していてもよかった。V−SEP装置を始動させ、流量を0.5gal/分に調整した。運転圧力はポンプスピードと背圧弁の調整によって300psiにセットした。5〜20分間運転の後、装置を停止した。この濃縮物は、システムの生成物損失を最小限にするために取って置き、次のサイクルの希釈液として使用した。4重量%クエン酸水溶液を供給タンクに加えた。V−SEP装置を始動させ、流量を0.5gal/分に調整した。運転圧力はポンプスピードと背圧弁の調整によって300psiにセットした。温度は上昇するに任せた(典型的には約25℃〜約35℃)。約10分〜約30分間運転の後、装置を停止し、クエン酸濃縮物を廃棄した。クエン酸は2サイクルの酸性化水を用いて(典型的には5Kgずつ)システムから除去した。このクリーニング手順の後、生成物の濃縮物を供給タンクに戻した。
塩の除去工程(サイクルB):
濃縮物に、硫酸でpH3に酸性化され、500ppmのソルビン酸カリウムを含有する水を加えた。この溶液の重量は前のサイクルから除去された透過物の重量と等しかった。透過物の重量と流量はモニターされた。透過物は添加された溶液の重量と等しくなるように除去された。濃縮物と透過物のサンプルを回収して分析した(表2及び4参照)。サイクルBはあと4回繰り返された。ただし、最後のサイクルで7%多くの透過物を除去することによって濃縮物を濃縮した。前のサイクルからの透過物を秤量し、等量の水(硫酸でpH3に酸性化、500ppmのソルビン酸カリウム含有)を前のサイクルからの濃縮物に加えた。V−SEP装置を始動させ、流量を0.5gal/分に調整した。運転圧力はポンプスピードと背圧弁の調整によって300p.s.i.にセットした。温度は15〜25℃に維持された。透過物の重量と流量をモニターした。透過物は、透過物の重量が添加された酸性化水の重量と等しくなるまで除去された。濃縮物と透過物のサンプルを回収して分析した(表2及び4参照)。これらの工程中にDCP及びCPDも除去された。クリーニングプロセスを平均2サイクルごとに開始した。クリーニング前のサイクルは透過物の流量と運転スケジュール次第であった。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
DCP、CPD、及び無機塩化物は、所望の任意の量、例えば活性成分の損失を最小限に抑えた非常に低い量にまで削減できる。塩は除去でき、塩化物塩は硫酸塩と交換できる。ポリマーはカチオン性なので、アニオン性の対イオンが必要である。
【0120】
最初の4回の2%硫酸ナトリウム水溶液サイクルについては、DCP及びCPDの分析にFID検出器を使用したことに注意する。50ppmを下回る含量では通常XSD検出器のほうがより正確なデータを提供する。従って、4回目から5回目の2%硫酸ナトリウム水溶液サイクルに予測されるより大きい降下があるのは、おそらく検出器の精度の差によるものである。
実施例2:
実験は実施例1に類似したプロセスを用いて実施した。ただし、硫酸ナトリウム水溶液のサイクルはなく、樹脂としてKymene(登録商標)217LXの代わりにPPD D−1282(全固形分16.1重量%、Hercules Incorporatedから入手)を使用した。PPD D−1282を水で1:1に希釈し、XN−45膜を用いて不連続式ダイアフィルトレーション法で元の出発体積に濃縮した。この希釈−濃縮プロセスを6回繰り返した。結果を以下の表5及び6に示す。DCP及びCPDは回ごとに約半減した。塩含有量の削減はこの膜に部分保持されるために半分未満であった。
【0121】
【表5】

【0122】
【表6】

【0123】
1.測定された%窒素から計算、PPD D−1282供給材料を12.5%活性と仮定。
2.逐次半分希釈及びサンプルの%活性を考慮し、供給材料の%活性から計算。
3.全固形分から測定されたすべての塩を差し引くことによって計算。
4.逐次半分希釈及びサンプルの%活性を考慮し、%活性から計算。
実施例3:
実験は実施例2に類似したプロセスを用いて実施した。ただし、3種類の異なる膜を使用した。PPD D−1282を水で1:1に希釈した。結果を以下の表7に示す。DCP及びCPDは約半減した。塩は部分的に保持され、活性成分は最小限の損失であった。活性成分の損失は膜の種類によって影響を受けた。
【0124】
【表7】

【0125】
1.全固形分から測定されたすべての塩を差し引くことによって計算。
2.PPD D−1282供給材料が半分に希釈されたことを考慮し、%活性から計算。
実施例4:
実施例2の濃縮物D−1282、5体積の水(表5及び6参照)を用いた紙力性能を、二つの製品、Kymene(登録商標)G3−X湿潤紙力増強樹脂及びKymene(登録商標)557H(Hercules Incorporatedより入手)を用いたものと比較した。表8は、膜分離が添加剤の紙力性能に悪影響を及ぼさなかったことを示している。
製紙及び試験の手順:
実験パラメーター:
パルプ:70%/30%のECF漂白硬材(Celbi PP)/軟材(Lapponia Pine)
プロセス水:
硬度: 100ppm CaCO
アルカリ度: 50ppm CaCO
pH: 7.2
温度: 38℃
リファイニング: Pilaoシングルディスクリファイナー
時間&エネルギー: 35Aで13分間
ろ水度: 31°SR
稠度: 1.8%
紙はBarneveld Pilot Paper Machine(BPM)で製造した。
【0126】
坪量: 65g/m
速度: 5.0m/分
圧力ウェットプレス: 2.4バール
プレス後の乾燥分: 40.0%
乾燥用シリンダーの温度: 55、75、95、105、20、20℃
紙の水分含有量: 3.2%
紙の試験:
坪量
サンプルを100cmの面積でダイカットした。これらのサンプルを化学てんびんで測定した。
【0127】
キャリパー(ミクロン)
キャリパー(厚さ)はMessmer Buchel MicrometerモデルM372200を用いて測定した。
【0128】
引張強さ(kN/m)
引張強さは、Zwick引張試験機、クロスヘッド速度20mm/分、15mm幅の一重の紙を用いて測定した。湿潤引張の場合、紙を脱塩水中に2時間浸漬した。乾燥引張は流れ方向(MD)と幅方向(CD)で測定した。サンプルは80℃のオーブン中で30分間オーブン硬化(OC)した。
【0129】
【表8】

【0130】
実施例5:
数社の製造業者の膜をV−SEPシリーズ Model L 試験装置(カリフォルニア州エメリービルのNew Logic Internationalより入手)で試験した。この装置に関する詳細な手順はNew Logic International提供の操作マニュアルに記載されている。Kymene(登録商標)217LXを二つの含量、すなわちA(全固形分約5.5%)及びB(全固形分約16%)に希釈した。透過物及び濃縮物は供給材料の濃度が変化しないようにリサイクルされた。供給材料は膜に25℃及び25バールで送り込まれた。8時間にわたって収集したデータは汚染が最小限であることを示していた。表9のデータは、すべての膜が塩化物選択的であったことを示している。一部の膜は他の膜より塩化物の除去に一段と有効であった。DCP及びCPDのレベルは、Kymene(登録商標)217LXの希釈度と一致していた。
【0131】
【表9】

【0132】
実施例6及び7:
Kymene(登録商標)G3140(PPD D−1282)及びKymene(登録商標)621を、240ftの膜面積を有するパイロット装置でKoch Membrane Systemsのナノろ過膜を用いて処理した。30回のプロセス運転を実施した。パイロット膜試験から以下の結果が得られた。
【0133】
1.DCP及びCPD除去能が示された。
2.塩除去特性が確定された。
3.広い濃度範囲にわたって適切な膜流を生ずる能力が観察された。
【0134】
4.連続及び変形バッチを含む様々な運転モードが容認可能であることがわかった。
5.高固形分の供給材料を処理する能力が示された。
6.膜の性能を維持するには膜のクリーニングが重要であった。クリーニングプロトコルは商業的運転に受け入れ可能であることがわかった。
【0135】
7.収率損失は最小限で、一般的に0.3重量パーセント未満であることがわかった。
実施例6では、110ppmのCPDを有するKymene(登録商標)G3140湿潤紙力増強樹脂(PPD D−1282)を水で希釈して42ppmのCPDにした。希釈されたKymene(登録商標)G3140は、Koch SR3 ナノろ過膜で濃縮し戻されて供給材料と同じ活性ポリマーになった。塩化物含有量は約47%削減された。結果を以下の表10、11、及び12に示す。
【0136】
実施例7では、固形分21%のKymene(登録商標)621をナノろ過膜で変形バッチモードで処理した。DCPは10500ppmから925ppmに削減され、CPDは2300ppmから190ppmに削減された。塩化物は14%減少した。溶媒として硫酸ナトリウム水溶液を用いてプロセスを繰り返すと、塩化物含有量は77%減少した。表13の結果は、残留物及び塩化物の含量を所望の標的含量にまで削減できることを示している。
【0137】
【表10】

【0138】
【表11】

【0139】
【表12】

【0140】
【表13】

【0141】
実施例8:
PPD D−1428(Hercules Incorporatedから入手できるポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂)を、GeaFiltrationの3段階ナノろ過膜システムで処理した。全固形分19.8%、DCP含有量4240ppm及びCPD含有量570ppmの供給材料を水で希釈して固形分2.9%にした。希釈された供給材料を、運転圧力25バール及び運転温度26℃でシングルパスの連続3段階プロセスでナノろ過膜を用いて濃縮した。各段階からの透過物は廃棄したが、濃縮物は一つの段階から次の段階へ順番に流した。濃縮物の体積流量対供給材料の体積流量の比率は、所望の濃縮物パーセント固形分が得られるように調整された。最終濃縮物の濃度は、固形分19.7%、DCP含有量530ppm及びCPD含有量80ppmであった。この実施例は、残留物を高アゼチジニウム“第1世代”樹脂の非常に高い量から所望の標的量に効率的に低減できる一方、標的固形分も達成していることを示している。
実施例9:
PPD D−1430(Hercules Incorporatedから入手できる苛性処理されたポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、米国特許第7,081,512号に記載の技術を用いて製造されたもの)を、GeaFiltrationの3段階ナノろ過膜システムで処理した。全固形分24.7%、DCP含有量1300ppm及びCPD含有量990ppmの供給材料を希釈して固形分14.6%にした。希釈された供給材料を、ナノろ過膜を用い、運転圧力平均25バール及び運転温度27℃でシングルパスの連続3段階プロセスで濃縮した。各段階からの透過物は廃棄したが、濃縮物は一つの段階から次の段階へ順番に流した。濃縮物の体積流量対供給材料の体積流量の比率は、所望の濃縮物パーセント固形分が得られるように調整された。最終濃縮物の濃度は、固形分24.2%、DCP含有量630ppm及びCPD含有量335ppmであった。この実施例は、バッチプロセスで1,3−DCP、3−CPD、及び塩化物残留物の所望の削減が達成できることを示している。
実施例10:
PPD D−1430(Hercules Incorporatedから入手できる苛性処理されたポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、米国特許第7,081,512号に記載の技術を用いて製造されたもの)を、GeaFiltrationの1段階ナノろ過膜システムで処理した。PPD D−1430を希釈して全固形分19.8%、DCP含有量930ppmの供給材料を用意し、0.55体積の水を用いてダイアフィルトレーションした後、ナノろ過膜を用い、平均運転圧力20.5バール及び運転温度26℃でバッチモードで濃縮した。濃縮物は、濃縮物中に所望のDCP含量が達成されるまでリサイクルして膜供給材料及びダイアフィルトレーション水と合わせた。ダイアフィルトレーション後、濃縮物は、所望の活性ポリマー固形分が達成されるまで、濃縮物をダイアフィルトレーション水を加えずに供給タンクにリサイクルすることによって濃縮された。最終濃縮物濃度は固形分24.8%、DCP含有量540ppmであった。この最終濃縮物を希釈して全固形分22.65%にし、pHを硫酸及びギ酸で調整した。表14は、希釈濃縮物のアゼチジニウム(Aze)含量は出発のPPD D−1430よりわずかに低下したものの、ダイアフィルトレーション法を用いることによって1,3−DCP、3−CPD、及び塩化物残留物の所望の削減が達成されたことを示している。
【0142】
【表14】

【0143】
実施例11:
PPD D−1430(Hercules Incorporatedから入手できる苛性処理されたポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、米国特許第7,081,512号に記載の技術を用いて製造されたもの)を、GeaFiltrationの1段階ナノろ過膜システムで処理した。全固形分19.3%で3.7%の塩及び15.6%の活性ポリマー固形分、DCP含有量930ppmを含有する供給材料を、5.8体積の水を用いてダイアフィルトレーションし、次いでナノろ過膜を用い、平均運転圧力21.5バール及び運転温度25℃でバッチモードで濃縮した。ダイアフィルトレーション水を連続的に供給タンクに加え、一定体積を維持した。濃縮物は、濃縮物中に所望のDCP含量が達成されるまでリサイクルして膜供給材料及びダイアフィルトレーション水と合わせた。ダイアフィルトレーション後、濃縮物は、所望の活性ポリマー固形分が達成されるまで、濃縮物をダイアフィルトレーション水を加えずに供給タンクにリサイクルすることによって濃縮された。最終濃縮物は固形分19.7%で、検出し得る量のナトリウムを含有せず、DCP含有量3.2ppmであった。この実施例は、本発明が連続ダイアフィルトレーション法を用いて極めて低含量の残留物を達成できることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして
(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって前記水性組成物を透過物と濃縮物に分離することを含み、
前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、
前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物及び前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満を含む方法。
【請求項2】
前記残留物がエピクロロヒドリン、DCP、CPD、塩、低分子量種、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩が塩化物イオンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂がポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂のCPD含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分12.5%で約50ppm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂のDCP含有量が、前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分12.5%で約100ppm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)膜分離装置に少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;
(b)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって前記水性組成物を透過物と濃縮物に分離し、ここで
前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、
前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物を含み;そして
(c)前記濃縮物をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理することを含み、
塩基処理された濃縮物はpH1及び50℃で24時間貯蔵された場合に乾燥基準で約250ppm未満のCPDしか生じない方法。
【請求項8】
削減された残留物量を有するポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の製造法であって、
(a)少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂をCPD形成種を削減及び/又は除去する条件下で少なくとも一種の塩基性剤で処理し;
(b)膜分離装置に塩基処理された少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を装入し;そして
(c)前記水性組成物を前記膜分離装置の膜に通すことによって透過物と濃縮物に分離することを含み、
前記濃縮物は、等しい活性成分基準で(a)の水性組成物よりも低い残留物量を有する少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂を含む水性組成物を含み、
前記透過物は(a)の水性組成物から除去された残留物を含み、そして
前記濃縮物はpH1及び50℃で24時間貯蔵された場合に乾燥基準で約250ppm未満のCPDしか生じない方法。
【請求項9】
前記透過物が前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記透過物が前記少なくとも一種のポリアミン−エピハロヒドリン樹脂の活性成分の5重量%未満をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂がポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ポリアミン−エピハロヒドリン樹脂がポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
(c)の濃縮物をゲル化貯蔵安定な組成物を得るのに足る条件下で少なくとも一種の酸性剤で処理することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
(a)の塩基処理された組成物を(b)の前にゲル化貯蔵安定な組成物を得るのに足る条件下で少なくとも一種の酸性剤で処理することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記追加工程の酸性剤が非ハロゲン含有酸である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記追加工程の酸性剤が非ハロゲン含有酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法に従って製造された樹脂を含む紙製品又は木材製品の製造に使用するための接着剤組成物。
【請求項18】
請求項8に記載の方法に従って製造された樹脂を含む紙製品又は木材製品の製造に使用するための接着剤組成物。

【公表番号】特表2010−503762(P2010−503762A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529206(P2009−529206)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/020153
【国際公開番号】WO2008/036241
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】