説明

ポリイソシアネートおよびポリオールを含んでいるコーティング組成物

ポリイソシアネート、ポリオール、イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応のための、金属に基づいた触媒、チオール官能性化合物、およびカルボン酸を含んでいるコーティング組成物であって、該カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているコーティング組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート、ポリオール、イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応のための、金属に基づいた触媒、チオール官能性化合物、およびカルボン酸を含んでいるコーティング組成物に関する。本発明は、該コーティング組成物を調製するための部材のキットおよび該組成物を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプのコーティング組成物は、特許文献1によって知られている。この文献は、ポリオールとポリイソシアネートとの間の触媒された反応によって製造されたポリウレタン、およびこれらの反応混合物に基づいたコーティング組成物に関する。メルカプト化合物および/またはポリフェノールから選択されたモル過剰の錯化剤との反応によって錯体化されたスズおよび/またはビスマス触媒によって、該反応は触媒される。該組成物は、揮発性の酸を含んでいてもよい。ギ酸および酢酸が具体的に挙げられている。
【0003】
許容される特性を有するコーティングが公知の組成物から調製されることができるけれども、特に、高いまたは非常に高い非揮発性含有物量、すなわち揮発性有機化合物(VOC)の低い含有量が要求される場合には、硬化されるコーティングの硬化速度、ポットライフ、および外観特性のバランスのさらなる改良が要求される。たとえば、比較的低い量の硬化触媒を使用すると、取り込まれた溶媒および/またはガスによって引き起こされるコーティングの欠陥の危険性が減少される。しかし、これは比較的長い乾燥時間およびコーティングの硬さの減少も同様にもたらし、垂れおよび/または吸塵の危険を伴う。高い処理量のコーティング操作の観点から、比較的長い乾燥時間は望ましくない。さらにその上、短い乾燥時間を得るために高い硬化触媒仕込み量を含んでいる低VOCコーティング組成物は、乾燥中のコーティング内の気泡の安定化の問題を生じ、乾燥されたコーティング層中にピンホールをもたらす。ピンホールはコーティング層の外観および耐久性を損なう。したがって、公知のコーティング組成物では、高い硬化速度、長いポットライフ、低いVOC含有量、および硬化されたコーティングの良好な外観の非常に良好なバランスが達成されることができない。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0454219号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、特性、すなわち施与粘度における揮発性有機溶媒の低い含有量、高い硬化速度、および長いポットライフの有利なバランスを有し、良好な外観特性、特にピンホールの低い発生し易さ、および良好な硬さをもたらすコーティング組成物を、本発明は提供しようとしている。加えて、自動車外面仕上げ塗装に要求される他の特性、たとえば可撓性、耐傷付き性、光沢、耐久性、耐化学薬品性および耐紫外線性を発現する硬化されたコーティングをも、該コーティング組成物は提供しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は今、ポリイソシアネート、ポリオール、イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応のための、金属に基づいた触媒、チオール官能性化合物、およびカルボン酸を含んでいるコーティング組成物であって、該カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているコーティング組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のコーティング組成物は、特性、すなわち施与粘度における揮発性有機溶媒の低い含有量、高い硬化速度、および長いポットライフの有利なバランスを提供し、該有利なバランスは良好な外観特性、特にピンホールの低い発生し易さ、および良好な硬さをもたらす。加えて、自動車外面仕上げ塗装に要求される他の特性、たとえば可撓性、耐傷付き性、光沢、耐久性、耐化学薬品性および耐紫外線性を発現する硬化されたコーティングをも、該コーティング組成物は提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
該コーティング組成物に使用するのに適したイソシアネート官能性架橋剤は、少なくとも2のイソシアネート基を含んでいるイソシアネート官能性化合物である。好ましくは、該イソシアネート官能性架橋剤はポリイソシアネート、たとえば脂肪族、脂環式または芳香族のジ、トリ、もしくはテトライソシアネートである。ジイソシアネートの例は、1,2−プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ω,ω’−ジプロピルエーテルジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、トランスビニリデンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(Desmodur(商標)W)、トルエンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI(商標))、1,5−ジメチル−2,4−ビス(2−イソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、およびジイソシアナトナフタレンを含む。トリイソシアネートの例は、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、およびリシントリイソシアネートを含む。ポリイソシアネートの付加物およびオリゴマー、たとえばビウレット、イソシアヌレート、アロファネート、ウレトジオン、ウレタン、およびこれらの混合物も包含される。このようなオリゴマーおよび付加物の例は、ジイソシアネート、たとえばヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートの2分子とジオール、たとえばエチレングリコールとの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの3分子と水1分子との付加物(Bayer社のDesmodur Nの商標下に入手可能)、トリメチロールプロパンの1分子とトルエンジイソシアネートの3分子との付加物(Bayer社のDesmodur Lの商標下に入手可能)、トリメチロールプロパンの1分子とイソホロンジイソシアネートの3分子との付加物、ペンタエリスリトールの1分子とトルエンジイソシアネートの4分子との付加物、m−α,α,α’,α’−テトラメチルキシレンジイソシアネートの3モルとトリメチロールプロパンの1モルとの付加物、1,6−ジイソシアナトヘキサンのイソシアヌレート3量体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのウレトジオン2量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのビウレット、1,6−ジイソシアナトヘキサンのアロファネート、およびこれらの混合物である。さらにその上、イソシアネート官能性モノマー、たとえばα,α’−ジメチル−m−イソプロペニルベンジルイソシアネートの(コ)ポリマーが使用に適している。
【0008】
好適なポリオールの例は、少なくとも2のヒドロキシル基を含んでいる化合物を含む。これらはモノマー、オリゴナー、ポリマー、およびこれらの混合物であることができる。ヒドロキシ官能性のオリゴナーおよびモノマーの例は、ヒマシ油、トリメチロールプロパン、およびジオールである。国際特許出願公開第98/053013号に記載されたような分枝鎖ジオール、たとえば2−ブチルエチル−1,3−プロパンジオールが特に挙げられることができる。
【0009】
好適なポリマーの例は、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、メラミンポリオール、ならびにこれらの混合物および混成物を含む。このようなポリマーは一般に当業者に知られており、商業的に入手できる。好適なポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、およびこれらの混合物は、たとえば国際特許出願公開第96/20968号および欧州特許出願公開第0688840号に記載されている。好適なポリウレタンポリオールの例は国際特許出願公開第96/040813号に記載されている。
【0010】
さらなる例はヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、アルキド、およびデンドリマー性ポリオール、たとえば国際特許出願公開第93/17060号に記載されたものを含む。潜在性ヒドロキシ官能性化合物、たとえば二環式オルトエステル、スピロオルトエステル、スピロオルトシリケートの基、または二環式アミドアセタールを含んでいる化合物を、コーティング組成物は含んでいることもできる。これらの化合物およびその使用方法は、それぞれ国際特許出願公開第97/31073号、国際特許出願公開第2004/031256号、および国際特許出願公開第2005/035613号に記載されている。
【0011】
上述のように、本発明のコーティング組成物は、イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応のための、金属に基づいた触媒も含んでいる。このような触媒は当業者に知られている。コーティング組成物の非揮発性物質当たりで計算されて、一般に0.001〜10重量%、好ましくは0.002〜5重量%の量で、より好ましくは0.01〜1重量%の量で、該触媒は使用される。金属に基づいた触媒中の好適な金属は亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム、ビスマス、およびスズを包含する。コーティング組成物がスズに基づいた触媒を含んでいることが好まれる。スズに基づいた触媒の周知の例は、ジメチルスズジラウレート、ジメチルスズジバーサテート、ジメチルスズジオレエート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、およびスズオクトエートである。
【0012】
好適なチオール官能性化合物は、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、1,3−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、メチルチオグリコレート、2−メルカプト酢酸、メルカプトコハク酸、およびシステインを包含する。同様に好適なのは、チオール官能性カルボン酸とポリオールとのエステル、たとえば2−メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、11−メルカプトウンデカン酸、およびメルカプトコハク酸のエステルである。このようなエステルの例は、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトプロピオネート)、およびトリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)を含む。このような化合物のさらなる例は、ポリオール出発物、たとえばトリメチロールプロパンおよびジメチロールプロピオン酸に基づいた超分枝鎖ポリオールの核からなり、これが続いて3−メルカプトプロピオン酸およびイソノナン酸でエステル化される。これらの化合物は欧州特許出願公開第0448224号および国際特許出願公開第93/17060号に記載されている。
【0013】
Sのエポキシ官能性化合物への付加生成物も、チオール官能性化合物を与える。これらの化合物は以下の式、すなわちT[(O−CHR−CH−O)CHCHXHCHYH]の構造を有することができ、この式でTはm価の有機部分であり、Rは水素またはメチルであり、nは0〜10の整数であり、XおよびYは酸素またはイオウであり、ただしXおよびYは等しくない。このような化合物の実例は、Cognis社からCapcure(商標)3/800の商標下に商業的に入手できる。
【0014】
チオール官能性基を含んでいる化合物を調製するための他の合成法は、ハロゲン化アリールまたはアルキルをNaHSと反応させて、ペンダントのメルカプト基をそれぞれアリールおよびアルキル化合物中へと導入すること、グリニャール試薬をイオウと反応させて、ペンダントのメルカプト基を該構造中へと導入すること、求核反応、求電子反応またはラジカル反応によってポリメルカプタンをポリオレフィンと反応させること、ならびにジスルフィドの反応を含む。
【0015】
好まれるチオール官能性化合物は、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、およびCapcure 3/800である。
【0016】
本発明の他の実施態様では、チオール基は共有結合によって樹脂に結合されることができる。このような樹脂は、チオール官能性ポリウレタン樹脂、チオール官能性ポリエステル樹脂、チオール官能性重付加ポリマー樹脂、チオール官能性ポリエーテル樹脂、チオール官能性ポリアミド樹脂、チオール官能性ポリ尿素樹脂、およびこれらの混合物を包含する。HSとエポキシ基または不飽和炭素−炭素結合含有樹脂との反応、ヒドロキシル官能性樹脂とチオール官能性酸との間の反応によって、およびイソシアネート官能性ポリマーとチオール官能性アルコールあるいはジまたはポリメルカプト化合物のいずれかとの反応によって、チオール官能性樹脂は調製されることができる。
【0017】
コーティング組成物の非揮発性物質当たりで計算されて、一般に0.001〜10重量%、好ましくは0.002〜5重量%、より好ましくは0.01〜2重量%の量で、チオール官能性化合物は存在する。用いられる、金属に基づいた触媒のタイプおよび量に、チオール官能性化合物のチオール当量に、およびコーティング組成物の所望の特性の側面に、チオール官能性化合物の実際の量は左右される。ある実施態様では、該組成物が金属に基づいた触媒の金属原子を超えるモル過剰のチオール基を含んでいるように、チオール官能性化合物を使用することが有益であり得る。
【0018】
上述のように、本発明のコーティング組成物はカルボン酸を含んでおり、該カルボン酸のカルボニル基はπ電子系と共役している。好適なカルボン酸の例は、芳香族カルボン酸、すなわちそのカルボン酸基が共有単結合を介して芳香族環に結合されているところのカルボン酸である。この場合、該カルボン酸のカルボニル基は芳香族π電子系と共役している。芳香族カルボン酸はモノカルボン酸またはポリカルボン酸であることができる。フタル酸、アルキルおよび/またはアルコキシ置換フタル酸、無水フタル酸の半エステル、アルキルおよび/またはアルコキシ置換無水フタル酸の半エステル、安息香酸、アルキルおよび/またはアルコキシ置換安息香酸、ならびにこのような芳香族モノおよびポリカルボン酸の混合物を、好適な例は含む。安息香酸が好まれる芳香族カルボン酸である。
【0019】
他の実施態様では、カルボン酸はアルファ−ベータ不飽和カルボン酸である。この場合、該カルボン酸のカルボニル基は炭素−炭素二重または三重結合のπ電子系と共役している。好適なアルファ−ベータ不飽和カルボン酸の例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、フマル酸、ソルビン酸、桂皮酸、およびマレイン酸である。同様に好適なのは、フマル酸およびマレイン酸の半エステル、たとえばモノメチルマレエート、モノエチルマレエート、またはこれらに対応するフマレートである。
【0020】
1の実施態様では、そのカルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているところのカルボン酸は、ポリマー骨格に結合されていることができ、たとえばポリエステルの調製の際の不完全転化の結果としてポリエステル中に存在するカルボン酸基である。カルボン酸基が比較的高い分子量のポリマー骨格に結合されていると、おそらくは立体障害の故にカルボン酸の有益な効果は低度に顕著になる。したがって、該酸がポリマー骨格に結合されているならば、該ポリマーの数平均分子量は1,000まで、または800までであることが好まれる。カルボン酸は好適には非ポリマー形態で用意される。
【0021】
そのカルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているところのカルボン酸は一般に、金属に基づいた触媒またはチオール官能性化合物よりも高い重量割合で存在する。用いられる、金属に基づいた触媒のタイプおよび量に、チオール官能性化合物のタイプおよび量に、使用される具体的なカルボン酸のタイプおよび分子量に、およびコーティング組成物の所望の特性の側面に、カルボン酸の実際の量は左右される。カルボン酸の好適な量の例は、コーティング組成物の非揮発性物質当たりで計算されて0.1〜18重量%、または0.2〜10重量%、または0.5〜5重量%である。
【0022】
本発明に従うコーティング組成物では、イソシアネート官能性基とヒドロキシル基との当量比は0.5〜4.0、好ましくは0.7〜3.0、より好ましくは0.8〜2.5である。一般に、コーティング組成物中のヒドロキシ官能性バインダーとイソシアネート官能性架橋剤との重量比は、非揮発性含有物当たり85:15〜15:85、好ましくは70:30〜30:70である。
【0023】
コーティング組成物は、特に低分子量バインダーが任意的に1以上の反応性希釈剤と一緒に使用されるならば、揮発性希釈剤なしに使用され施与されることができる。あるいは、コーティング組成物は任意的に揮発性有機溶媒を含んでいてもよい。好ましくは、コーティング組成物は、全組成物当たり500g/l未満、より好ましくは480g/l未満、最も好ましくは420g/l以下の揮発性有機溶媒を含んでいる。該組成物の非揮発性含有物は、普通、固形分含有物と呼ばれ、全組成物当たり好ましくは50重量%超、より好ましくは54重量%超、最も好ましくは60重量%超である。
【0024】
好適な揮発性有機希釈剤の例は、炭化水素、たとえばトルエン、キシレン、Solvesso 100、ケトン、テルペン、たとえばジペンテン、もしくは松根油、ハロゲン化炭化水素、たとえばジクロロメタン、エーテル、たとえばエチレングリコールジメチルエーテル、エステル、たとえばエチルアセテート、エチルプロピオネート、n−ブチルアセテート、またはエーテルエステル、たとえばメトキシプロピルアセテート、もしくはエトキシエチルプロピオネートである。また、これらの化合物の混合物も使用されることができる。
【0025】
所望であれば、1以上のいわゆる「規制免除溶媒」をコーティング組成物中に含めることが可能である。規制免除溶媒とは、スモッグを生成する大気中の光化学反応に関与しない揮発性有機化合物である。これは有機溶媒であり得るが、日光の存在下に窒素酸化物と反応するのに非常に長い時間がかかるので、その反応性は無視できると、米国環境保護庁はみなしている。塗料およびコーティングへの使用が承認されている規制免除溶媒の例は、アセトン、メチルアセテート、パラクロロベンゾトリフルオリド(Oxsol 100の名称下に商業的に入手可能)、および揮発性メチルシロキサンを含む。また、三級ブチルアセテートは規制免除溶媒とみなされている。
【0026】
本発明に従うコーティング組成物中には、上記の成分に加えて他の成分が存在することができる。このような化合物は、バインダーおよび/または反応性希釈剤であることができ、任意的に前述のヒドロキシ官能性化合物および/またはイソシアネート官能性架橋剤と架橋されることができる反応性基を含んでいてもよい。このような他の化合物の例は、ケトン樹脂、アスパルギン酸エステル、ならびに潜在性または非潜在性アミノ官能性化合物、たとえばオキサゾリジン、ケチミン、アルジミン、ジイミン、二級アミン、およびポリアミンである。これらおよび他の化合物は当業者に知られており、とりわけ米国特許第5214086号に挙げられている。
【0027】
コーティング組成物はさらに、コーティング組成物に普通に使用される他の成分、添加剤または助剤を含んでいることができ、たとえば顔料、染料、界面活性剤、顔料分散助剤、レベリング剤、湿潤剤、クレーター防止剤、消泡剤、垂れ防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、およびフィラーである。
【0028】
ヒドロキシ官能性バインダーおよびイソシアネート官能性架橋剤を含んでいるコーティング組成物に普通であるように、本発明に従う組成物は限定されたポットライフを有する。したがって、該組成物は好適には多成分組成物として、たとえば二成分組成物としてまたは三成分組成物として提供される。したがって、本発明は、
a) ポリオールを含んでいるバインダーモジュール、
b) ポリイソシアネートを含んでいる架橋剤モジュール、および
c) 任意的に、揮発性有機溶媒を含んでいる希釈剤モジュール
を含んでいる、コーティング組成物を調製するための部材のキットであって、イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応のための、金属に基づいた触媒、チオール官能性化合物、およびそのカルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているところのカルボン酸が、該モジュールの1以上の全体に、別々にまたは一緒に分布している部材のキットにも関する。好まれる実施態様では、金属に基づいた触媒、チオール官能性化合物、およびそのカルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているところのカルボン酸は、モジュールa)およびc)の1以上の全体に、独立にまたは一緒に分布している。該組成物の成分を部材のキットの形で提供することは、該成分が所要のモル比で提供されることができるという追加の利点を有する。したがって、個々の成分の不正確な混合比によって生じる誤差の危険性が最小限に抑えられる。
【0029】
本発明のコーティング組成物は、任意の基体に施与されることができる。基体は、例として金属、たとえば鉄、鋼、およびアルミニウム、プラスチック、木材、ガラス、合成物質、紙、皮革、または他のコーティング層であることができる。該他方のコーティング層は本発明のコーティング組成物から構成されることができ、または別のコーティング組成物であることができる。本発明のコーティング組成物は、クリアコート、ベースコート、着色トップコート、プライマー、およびフィラーとして特段の有用性を示す。本発明のコーティング組成物がクリアコートであるときは、好ましくは着色および/または特殊効果付与ベースコート上に施与される。この場合、該クリアコートは、典型的には自動車の外面上に施与されるような多層ラッカーコーティングのトップ層を形成する。ベースコートは、水媒体性ベースコートであってもまたは溶剤媒体性ベースコートであってもよい。
【0030】
橋梁、パイプライン、工業用プラントもしくは工業用ビルディング、石油およびガス設備、または船舶のようなコーティング対象物に、該コーティング組成物は適している。特に、自動車および大型輸送乗物、たとえば列車、トラック、バス、および飛行機を仕上げ塗装または再仕上げ塗装するのに該組成物は適している。
【0031】
施与されたコーティング組成物は、たとえば0〜60℃の温度で非常に効果的に硬化されることができる。所望であれば、コーティング組成物は、たとえば60〜120℃の範囲内の温度でオーブン硬化されてもよい。あるいは、硬化は(近)赤外線放射によって支援されてもよい。高められた温度で硬化する前に、施与されたコーティング組成物は任意的にフラッシュオフ段階に付されてもよい。
【0032】
本明細書で使用されるコーティング組成物の語句は、接着剤組成物としてのその使用方法も包含することが理解されなければならない。
【0033】
実施例
【0034】

【0035】
ポリエステルポリオールの調製
【0036】
撹拌機、加熱装置、熱電対、充填カラム、凝縮器、および水分離器を備えた反応容器中に、トリメチロールプロパン440重量部、無水ヘキサヒドロフタル酸170重量部、およびEdenor V85の390重量部が入れられた。さらに、構成ブロック当たりで計算されて1重量%の量の85重量%水性リン酸が触媒として添加された。不活性ガス下に温度が240℃まで徐々に上げられた。カラムの頂部温度が102℃を超えないような速度で、反応水が留去された。ヒドロキシ価306mgKOH/gを有するポリエステルが得られるまで、反応が続けられた。
【0037】
ポリアクリレートポリオールの調製
【0038】
重合容器中で、メタクリル酸5.7重量部、ブチルメタクリレート110.3重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート164.7重量部、および三級ブチルメタクリレート224重量部から、n−ブチルアセテート中でポリアクリレートポリオールが調製された。Trigonox B25.3重量部が重合開始剤として使用された。このポリアクリレートポリオール溶液は非揮発性含有物67重量%を有していた。GPCデータ:Mn 2090、Mw 4470、理論的OH価:樹脂固形分当たりで、すなわち溶媒を除いて計算されて140mgKOH/g。
【0039】
コーティング組成物の調製
【0040】
表1に示された成分を混合することによって、本発明に従うコーティング組成物1(実施例1)および比較組成物A〜D(比較例A〜D)が調製された。表1の量は重量部で示される。
【表1】

【0041】
DINカップを用いて粘度が測定され、秒単位で示される。表1に示された粘度は、混合後の初期粘度である。ポットライフは、組成物を混合した後、21秒の粘度に達するまでに要する時間である。
【0042】
比較例A〜Dおよび本発明に従う実施例1のコーティング組成物は、ベースコートで予めコーティングされた金属板にクリアコートとして2また3層でスプレー塗布された。該コーティングは60℃で30分間硬化され、その後室温で保存された。クリアコートの乾燥層厚さは、2層の場合約60μm、3層の場合85μmであった。
【0043】
硬化後、種々のサンプル間のピンホールの数が比較され、1〜10の尺度に基づくポッピング(沸き)の点数(1=ピンホールの激しい発生、10=ピンホールがほとんどないかまたは全くない。)へと変換された。
【0044】
外観がエナメル耐久性(EHO)として表され、一般的外観を判定するために目視で測定された。以下の様相、すなわち光沢、しわ寄り、流れ、および像の鮮映性/明瞭性が考慮に入れられた。これらの様相は1〜10の尺度に基づく一つの点数(1=非常に悪い外観、10=優れた外観)へとまとめられた。
【0045】
60℃で硬化した後の熱いコーティング表面上に指を押し付けることによって、手作業で高温粘着性が測定された。その結果は1〜10の尺度(1=非常に粘着性、10=粘着性なし)に基づいて報告される。
【0046】
硬化されたコーティングの流れおよび滑らかさを検査することによって、レベリングが目視で測定された。その結果は1〜10の尺度(1=非常に不満足なレベリング、10=優れたレベリング)に基づいて報告される。
【0047】
コーティングのいくつかの特性が表2にまとめられる。
【表2】

【0048】
表1から、本発明に従うコーティング組成物は、全ての比較組成物よりも長いポットライフを有することが推定されることができる。表2から、クリアコートの外観は、比較のクリアコートの外観よりも良好であることが推定されることができる。また、本発明に従う実施例1のクリアコートにはピンホールが実質的に存在しない。60℃で30分間硬化した後、全てのサンプルは低い程度の粘着性を示し、これは良好な硬化速度を表している。本発明のコーティング組成物成分が特性の改良されたバランスを有することを、これらの結果は実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート、ポリオール、イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応のための、金属に基づいた触媒、チオール官能性化合物、およびカルボン酸を含んでいるコーティング組成物であって、該カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役していることを特徴とするコーティング組成物。
【請求項2】
カルボン酸が芳香族カルボン酸である、請求項1に従うコーティング組成物。
【請求項3】
カルボン酸がアルファ−ベータ不飽和カルボン酸である、請求項1に従うコーティング組成物。
【請求項4】
イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応のための触媒が、スズ、ビスマス、ジルコニウム、およびこれらの混合物から選択された金属に基づいている、請求項1〜3のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項5】
金属に基づいた触媒の量が、該組成物の非揮発性物質当たりで計算されて0.001〜10重量%の範囲内にある、請求項1〜4のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項6】
チオール官能性化合物の量が、該組成物の非揮発性物質当たりで計算されて0.001〜10重量%の範囲内にある、請求項1〜5のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項7】
カルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているところのカルボン酸の量が、該組成物の非揮発性物質当たりで計算されて0.1〜18重量%の範囲内にある、請求項1〜6のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項8】
揮発性有機溶媒を含んでいる、請求項1〜7のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項9】
揮発性有機溶媒の量が、コーティング組成物リットル当たり420gを越えないものである、請求項8に従うコーティング組成物。
【請求項10】
a) ポリオールを含んでいるバインダーモジュール、
b) ポリイソシアネートを含んでいる架橋剤モジュール、および
c) 揮発性有機溶媒を含んでいる任意的な希釈剤モジュール
を含んでいる、請求項1〜9のいずれか1項に従うコーティング組成物を調製するための部材のキットであって、イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応のための、金属に基づいた触媒、チオール官能性化合物、およびカルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているところのカルボン酸が、該モジュールの1以上に、別々にまたは組合せて、分配されている部材のキット。
【請求項11】
イソシアネート基とヒドロキシル基との付加反応のための、金属に基づいた触媒、チオール官能性化合物、およびカルボン酸のカルボニル基がπ電子系と共役しているところのカルボン酸が、モジュールa)およびc)の1以上に、別々にまたは組合せて、分配されている、請求項10に従う部材のキット。
【請求項12】
自動車および輸送乗物の仕上げ塗装および再仕上げ塗装におけるコーティング層を形成するために、請求項1〜8のいずれか1項に従うコーティング組成物を使用する方法。
【請求項13】
形成されたコーティング層が、多層ラッカーコーティングにおける一層である、請求項12に従う方法。
【請求項14】
形成されたコーティング層が、多層ラッカーコーティングにおけるトップコート層である、請求項13に従う方法。

【公表番号】特表2009−504865(P2009−504865A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526498(P2008−526498)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065355
【国際公開番号】WO2007/020270
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】