説明

ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体およびその製造方法

【課題】絶縁性と耐熱寸法安定性と薄さを併せ持つ板状体を提供する。
【解決手段】芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを重縮合して得られる非熱可塑性ポリイミドからなる平均繊維径が0.01〜5μmの繊維集合体(F)とエポキシ樹脂(E)とを含む板状体であり、該板状体の厚さが0.1〜10μmで、かつ面方向の平均線膨張係数が−5〜15ppm/℃であることを特徴とするポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極薄(10μm以下)のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体とその製造方法に関する。さらには、該板状体に銅などの金属層を積層した金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体およびこれを使用したプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携帯電子機器の軽薄短小化と高密度化の進展に伴って、FPC、TAB、COF等用の配線基板の軽薄化が進展し、これらの配線基板用の銅貼フィルム(FCL)の薄膜化の要求が高い。そのため、銅層の薄膜化と薄くて高強度で、低線膨張係数の絶縁性基板が求められている。
従来のFPCとして、3層FPCは、接着剤層が存在するため、薄層化には限界があるとともに、接着剤層の耐熱性、電気特性、機械強度などの問題もある。
上記欠点を補うFPCとして、接着剤層の存在しない2層FPC(例えば、ポリイミドフィルム層と銅層で構成)があるが、この2層フレキシブル銅張積層板の製法としては、銅箔の片面又は両面にポリイミドの前駆体であるポリアミド酸のワニスを塗布した後、熱処理を施してイミド化させるキャスト法や、銅箔と熱可塑性ポリイミド樹脂フィルムを熱プレスして熱融着させるラミネート法や、銅片を高真空中で加熱蒸発させてポリイミドフィルム表面に薄膜として凝着させる乾式製膜方法、又はメッキ液中での化学還元反応によりポリイミドフィルム表面に銅を析出させて銅層を形成する無電解メッキ法やメッキ法(湿式製膜方法)などの方法がある。
しかしながら、上記方法で2層からなる銅張積層板を作製するにあたって、材料(ポリイミドフィルム又は銅箔)の薄さに起因するハンドリング性の問題があり、ポリイミドフィルム層及び銅層の厚みが、いずれも10μm以下の2層FPCを作製することが困難であった。
【0003】
これらの課題解決を目的として、初期引張弾性率が4GPa以上のポリイミド重合体からなる厚みが10μm以下のポリイミドフィルムの片面又は両面に、厚みが10μm以下の銅層を直接形成する方法(特許文献1参照)が提案されているが、蒸着やスパッタリングなどによる直接銅層形成時にポリイミドフィルムが熱収縮や熱伸張による反りや皺などの熱変形、変質、或いは破損が生じやすいなどの問題があり、また、銅層との接着性などにおける課題が残るものである。
また、他の方法として、微細フェノール樹脂系繊維を必須成分とする不織布に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグ層を加熱加圧成形してなるプリント配線基板用樹脂積層板(特許文献2参照)や、アラミド繊維、ポリアミド繊維、液晶ポリマー繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ガラス繊維、ホウ酸アルミナ短繊維、ホウ酸マグネシウム短繊維から選ばれる繊維を少なくとも構成材とする長尺の不織布に熱硬化性樹脂硬化物が含浸され、その両面又は片面に金属箔が一体化されたプリント配線板用長尺積層体(特許文献3参照)や、ポリイミド繊維補強樹脂板(特許文献4参照)などが提案されている。しかしながら、これらの方法では、実際に薄くすることには限界がある。また、耐熱性、線膨張係数の金属層との乖離、厚さの制限などの全てを解決し得るものではないし、フレキシブル銅張積層板などの分野で求められる特性を充分満足するものではない。
【特許文献1】特開平 08−156176号公報
【特許文献2】特開2006−005269号公報
【特許文献3】特開2004−241647号公報
【特許文献4】特開平 11−200210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記問題を解決し、高品質FPCの効率生産を実現し、電子機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し、配線パターンが微細化した屈曲性及び耐熱性に優れた金属層積層薄状体を提供することを目的に鋭意研究を重ねた結果、特定の物性を有するポリイミド繊維強化板状体が、乾式製膜方法などにおける熱挙動においても金属層積層体作成に満足すべき板状体であり、銅などの金属層との密着が充分であり、かつ皺や剥離の極めて少ない金属層積層体と、それによって得られる金属層の導体パターンを十分な接着強度で保持し、冷却・加熱による熱履歴にも耐え得る、信頼性の高い配線基板として満足できることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1. 芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを重縮合して得られる非熱可塑性ポリイミドからなる平均繊維径が0.01〜5μmの繊維集合体(F)とエポキシ樹脂(E)とを含む板状体であり、該板状体の厚さが0.1〜10μmで、かつ面方向の平均線膨張係数が−5〜15ppm/℃であることを特徴とするポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
2. 繊維集合体(F)の全板状体に占める質量比率が10〜60質量%である前記1記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
3. 非熱可塑性ポリイミドが、少なくとも芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドである前記1または2記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
4. 繊維集合体(F)が静電紡糸によって得られたものである前記1〜3のいずれかに記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
5. 前記1〜4のいずれかに記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の少なくとも片面に、金属層が積層された金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
6. 金属層が銅または銅を主成分とする金属である前記5記載の金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
7. 前記5または6記載の金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体から製造されたプリント配線基板。
8. 芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを重縮合して得られるポリアミド酸を静電紡糸してポリイミド前駆体繊維集合体を形成する工程、ポリイミド前駆体繊維集合体をイミド化処理して平均繊維径が0.01〜5μmのポリイミド繊維集合体(F)となす工程、ポリイミドの繊維集合体(F)が10〜60質量%となるようエポキシ樹脂(E)を含浸させる工程及びエポキシ樹脂を硬化させる工程とを少なくとも含むことを特徴とする前記1記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体においては、強度、耐衝撃性、靭性、可とう性等に優れた極薄(10μm以下)で、かつ面方向の平均線膨張係数が−5〜15ppm/℃である板状体を提供することができ、この板状体の金属層積層体から配線パターンが微細化した耐熱性に優れ、かつ寸法安定性に優れたFPC及び、TAB、COF、COG用フィルム基板を得ることができ、電子機器の小型化、軽量化、高密度配線化に対応し得る。
また、本発明のポリイミド繊維強化板状体は、穴あけをしたときに繊維と樹脂との界面での剥離が起きることがないため、その穴にメッキをしてもマイグレーションが起きるという問題がなく、銅などの金属層との密着が充分であり、かつ皺や剥離の極めて少ない金属層積層体を得ることができるため、冷却・加熱の繰り返しの熱履歴にも耐え得る、信頼性の高い配線基板として満足できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における繊維集合体とは、綿状、抄紙状、不織布状などに繊維がランダムにあるいは規則的に集合した状態をいう。本発明における繊維集合体としては、不織布が好ましく、より好ましくは、複合紡糸法、高速紡糸法、静電紡糸法などで得られた不織布である。
【0008】
本発明における繊維集合体を形成する非熱可塑性ポリイミドは、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドである。ここで、非熱可塑性ポリイミドとは、(1)ポリマー鎖中の繰り返し単位中のイミド単位の濃度が高い、及び(2)平面状の芳香族イミド基が直線的または平面的に配列し剛直分子鎖を形成する、ことにより、分子が強い会合状態にあるため、明確な融点およびガラス転移温度を示さないものを意味する。
好ましくは下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
中でも特にA.のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基を有するポリイ
ミドの組み合わせが好ましい。
前記のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられ、該ジアミンは、単独であっても二種以上を用いることも可能である。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明で用いるポリイミドは、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0013】
さらに、前記事項に限定されず下記の芳香族ジアミンを使用してもよいが、好ましくは全芳香族ジアミン類の30モル%未満であれば下記に例示される前記ベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種または二種以上、併用してのポリイミドである。全ジアミン類の30モル%未満であれば下記に例示されるジアミン類を併用してのポリイミドであってもよい。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0014】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0015】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0016】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルフォン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0017】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0018】
前記の芳香族テトラカルボン酸類は例えば芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられるが、ポリイミド中で70モル%以上使用することが好ましく、特にピロメリット酸を70モル%以上使用することが好ましい。
【0019】
【化5】

【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0022】
さらに、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば前記限定に係らず下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0023】
前記芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを反応(重合)させてポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。またその粘度はブルックフィールド粘度計による測定で10〜2000Pa・s、好ましくは100〜1000Pa・sのものが、安定した送液が可能であることから好ましい。重合反応は、有機溶媒中で撹拌および/または混合しながら、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して進められるが、必要により重合反応を分割するなどして、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。
さらに、ポリイミドまたは線状ポリアミド酸の分子末端を炭素−炭素二重結合を有する末端基で封止するために無水マレイン酸等を用いることが出来る。無水マレイン酸の使用量は、芳香族ジアミン成分1モル当たり0.001〜1.0モル比である。
【0024】
紡糸によって得られる不織布の種々の特性を改善する目的で、無機もしくは有機フィラー等の添加剤を配合することもできる。ポリイミドと親和性の低い添加剤の場合、その大きさは、得られるポリイミド繊維の直径より小さいものが好ましい。大きいものであると、静電紡糸中に添加剤が析出し、糸切れを起こす原因となる。添加剤を配合する方法としては、例えば、必要量の添加剤をポリイミド重合の反応系中にあらかじめ添加しておく方法とポリイミド重合の反応終了後に必要量の添加剤を添加する方法が挙げられる。重合阻害をしない添加剤の場合は前者の方が均一に添加剤の分散した不織布が得られるので好ましい。
ポリイミドの重合反応終了後に必要量の添加剤を添加する方法の場合、超音波による攪拌、ホモジナイザーなどによる機械的な強制攪拌が用いられる。
本発明で用いるポリイミド不織布は平均繊維径が0.01〜5μmである繊維より形成される。平均繊維径が0.01μmより細いと、補強効果が充分ではなく好ましくない。また、平均繊維径が5μmより太いと、目標とする厚みのポリイミド板状体が作成でないため好ましくない。より好ましい平均繊維径は0.02〜2μmであり、更に好ましい平均繊維径は0.05〜1μmである。
前記の繊維径の細いポリイミド不織布を製造する方法としては、複合紡糸法、高速紡糸法、静電紡糸法などが挙げられ、0.01〜5μmの繊維径の繊維等が得られる手法であれば特に限定されないが、他の方法より簡便に少ない工数で紡糸することが可能である静電紡糸法が最も好ましい。以下静電紡糸法により製造する方法について説明する。
【0025】
静電紡糸法とは、溶液紡糸の一種であり、一般的には、ポリマー溶液にプラスの高電圧を与え、それがアースやマイナスに帯電した表面にスプレーされる過程で繊維化を起こさせる手法である。静電紡糸装置の一例を図1に示す。図1において、静電紡糸装置1には、繊維の原料となるポリマーを吐出する紡糸ノズル2と紡糸ノズル2に対向して、対向電極5とが配置されている。この対向電極5はアースされている。高電圧をかけ荷電したポリマー溶液は、紡糸ノズル2から対極電極5に向けて吐出されて繊維化される。ポリイミドを有機溶媒に溶解した溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を対向電極に向けて曳糸し、形成される繊維状物質を捕集基板に累積することによって不織布を得ることができる。ここでいう不織布とは既に溶液の溶媒が留去され、不織布となっている状態のみならず、溶液の溶媒を含んでいる状態も示している。
溶媒を含んだ不織布の場合、静電紡糸後に、溶剤除去を行う。溶剤を除去する方法としては、例えば、貧溶媒中に浸漬させ、溶剤を抽出する方法や熱処理により残存溶剤を蒸発させる方法などが挙げられる。
溶液槽3としては、材質は使用する有機溶剤に対し耐性のあるものあれば特に限定されない。また、溶液槽3中の溶液は、機械的に押し出される方式やポンプなどにより吸い出される方式などによって、電場内に吐出することができる。
紡糸ノズル2としては、内径0.1〜3mm程度のものが望ましい。ノズル材質としては、金属製であっても、非金属製であっても良い。ノズルが金属製であればノズルを一方の電極として使用することができ、ノズル2が非金属製である場合には、ノズルの内部に電極を設置することにより、押し出した溶解液に電界を作用させることができる。生産効率を考慮し、ノズルを複数本使用することも可能である。また、一般的には、ノズル形状としては、円形断面のものを使用するが、ポリマー種や使用用途に応じて、異型断面のノズル形状を用いることも可能である。
対向電極5としては、図1に示すロール状の電極や平板状、ベルト状の金属製電極など用途に応じて、種々の形状の電極を使用することができる。
【0026】
また、これまでの説明は、電極が繊維を捕集する基板を兼ねる場合であるが、電極間に捕集する基板となる物を設置することで、そこにポリイミド繊維を捕集してもよい。この場合、例えばベルト状の基板を電極間に設置することで、連続的な生産も可能となる。
また、一対の電極で形成されているのが一般的ではあるが、さらに異なる電極を導入することも可能である。一対の電極で紡糸を行い、さらに導入した電位の異なる電極によって、電場状態を制御し、紡糸状態を制御することも可能である。
電圧印加装置4は特に限定されるものではないが、直流高電圧発生装置を使用できるほか、ヴァン・デ・グラフ起電機を用いることもできる。また、印加電圧は特に限定するものではないが、一般に3〜100kV、好ましくは5〜50kV、より好ましくは5〜30kVである。なお、印加電圧の極性はプラスとマイナスのいずれであっても良い。
電極間の距離は、荷電量、ノズル寸法、紡糸液流量、紡糸液濃度等に依存するが、10〜15kVのときには5〜20cmの距離が適切であった。
【0027】
次に静電紡糸法による具体的製造手法について説明する。
まず、ポリアミド酸を有機溶媒に溶解した溶液を製造する。本発明の製造方法における溶液中のポリアミド酸の濃度は0.1〜30質量%であることが好ましい。ポリアミド酸の濃度が0.1質量%より小さいと、濃度が低すぎるため不織布を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと得られる不織布の繊維径が大きくなり好ましくない。より好ましい固形分濃度は1〜20質量%である。
溶液を形成する有機溶媒とは、ポリアミド酸を上記濃度内に溶解すれば特に限定されない。紡糸を行う際、ポリアミド酸を製造した重合溶液のまま使用することも可能であり、また、ポリマーの貧溶媒を用い、ポリアミド酸を析出、洗浄を行い、精製したものをポリマーの良溶媒に再溶解させ溶液として使用することも可能である。得られたポリイミド繊維に支障がない場合は、重合溶媒をそのまま使用することが好ましい。
ポリマーの溶媒には、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、プロパノール、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸などの揮発性の高い溶媒や、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、N−メチルモルホリン−N−オキシド、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジオキソラン、エチルメチルカーボネート、メチルホルマート、3−メチルオキサゾリジン−2−オン、メチルプロピオネート、2−メチルテトラヒドロフラン、スルホランなどの揮発性が相対的に低い溶媒が挙げられる。または、上記溶剤を2種以上混合させて用いることも可能である。
【0028】
紡糸をする雰囲気として、一般的には空気中で行うが、二酸化炭素などの空気よりも放電開始電圧の高い気体中で静電紡糸を行うことで、低電圧での紡糸が可能となり、コロナ放電などの異常放電を防ぐこともできる。また、水がポリマーの貧溶媒である場合、紡糸ノズル近傍でのポリマー析出が起こる場合がある。そのため、空気中の水分を低下させるために、乾燥ユニットを通過させた空気中で行うことが好ましい。
次に捕集基板に累積される不織布を得る段階について説明する。本発明においては、該溶液を捕集基板に向けて曳糸する間に、条件に応じて溶媒が蒸発して繊維状物質が形成される。通常の室温であれば捕集基板上に捕集されるまでの間に溶媒は完全に蒸発するが、もし溶媒蒸発が不十分な場合は減圧条件下で曳糸しても良い。この捕集基板上に捕集された時点で遅くとも前記の繊維が形成されている。また、曳糸する温度は溶媒の蒸発挙動や紡糸液の粘度に依存するが、通常は、0〜50℃である。そして多孔質繊維がさらに捕集基板に累積されて不織布が製造される。
【0029】
不織布の目付量は、特に限定されるものではないが、0.1〜50g/mであるのが好ましい。また、その厚さは0.1〜10μmであるのが好ましい。不織布の厚さが0.1μmより薄いと、自己支持性が乏しいため好ましくない。また、不織布の厚さが10μmより厚いと、目標とする極薄のポリイミド板状体が作成でないため好ましくない。より好ましい厚みは、1〜10μmであり、さらに好ましい厚みは2〜10μmである。
前記の不織布は必要であれば、各種用途に適合するように、後処理を実施することができる。例えば、緻密化または厚み精度を整えるためのカレンダー処理、親水処理、撥水処理、界面活性剤付着処理、純水洗浄処理などを実施することができる。
ポリイミド繊維の全板状体に占める質量比率は、ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂に対して10〜60質量%である。10質量%未満であると、補強効果が充分ではなく好ましくない。また、60質量%を超えると成形することが困難になる場合が多い。より好ましい質量比率は15〜60質量%であり、さらに好ましい質量比率は20〜60質量%である。
【0030】
本発明のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の線膨張係数は、−5〜15ppm/℃であるのが好ましい。線膨張係数が−5ppm/℃より小さい、もしくは15ppm/℃より大きい場合は、例えばシリコンウェハーの線膨張係数である0ppm/℃との乖離が大きくなり、信頼性に重大な影響を及ぼすため好ましくない。より好ましい線膨張係数は−3〜13ppm/℃であり、さらに好ましい線膨張係数は0〜10ppm/℃である。
【0031】
ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の応用例であるプリント配線基板用ベース基板を説明する。
ここで、「プリント配線基板用ベース基板」とは、絶縁板の少なくとも片面に金属層を積層してなる構成の略平板状の基板である。積層される金属層は、エッチング等の加工によって回路を形成することが意図される回路用の金属層であってもよいし、特に後加工をせずに絶縁板と一緒になって放熱等の目的に用いられる金属層であってもよい。
「プリント配線基板用ベース基板」の用途としては、FPC、TAB用キャリアテープ、COF用基材、CSP用基材などが好ましい。
ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の少なくとも片面に積層される金属は特に限定はなく、好ましくは銅、アルミニウム、ステンレス鋼などである。積層手段は特に問わず、以下のような手段が例示される。
・接着剤を用いて、ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体に金属板を貼り付ける手段。
・ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体と金属板と張り合わせたうえで、熱プレスによって溶着させる手段。
・ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体に蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの真空コーティング技術を用いて金属層を形成する手段。
・ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体に無電解メッキ、電気メッキなどの湿式メッキ法により金属層を形成する手段。
これらの手段を単独で、あるいは組み合わせることによってポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の少なくとも片面に金属層を積層することができる。
【0032】
金属層の厚さは特に制限はないが、当該金属層を回路用(導電性)とする場合には、その金属層の厚さは好ましくは0.1〜10μmであり、より好ましくは0.5〜5μmである。金属層をセミアディティブ法のための電解メッキの下地金属層の一部として使う場合には0.1〜0.5μmである。
本発明で用いる金属層の表面には、金属単体や金属酸化物などといった無機物の塗膜を形成してもよい。また金属層の表面を、カップリング剤(アミノシラン、エポキシシランなど)による処理、サンドプラスト処理、ホーリング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などに供してもよい。同様に、ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の表面をホ−ニング処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などに供してもよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0034】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.ポリイミド不織布、ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
3.ポリイミド不織布の平均繊維径
評価するものを走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影を行い、5000倍または10000倍のSEM画像に映し出された多数の繊維からランダムに20本の繊維を選び、繊維径を測定する。測定した20本の繊維径の平均値を算出し、(平均)繊維径とした。
【0035】
4.ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミド板状体について、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、90〜100℃、100〜110℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を250℃まで行い、100℃から200℃までの全測定値の平均値をCTE(平均値)として算出した。
装置名 : MACサイエンス社製 TMA4000S
サンプル長さ : 10mm
サンプル幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 250℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0036】
5.《基板の評価》穴あけ、形状性判定
ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体に直径100μmの穴をCOレーザーにて100ケ開けて、その穴の内壁部分を実体顕微鏡にて観察して、繊維のはみ出しなどの見られるものを×、そのような異常の見られないものを○として判定した。
【0037】
6.《基板の評価》マイグレーション判定
40μmピッチの櫛形パターンを形成した金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体に電圧(DC60V)を印荷し、85℃・85%RHの恒温恒湿槽(FX412Pタイプ、エタック社製)の中に入れ電圧負荷状態のまま5分毎に絶縁抵抗値を測定し、線間の抵抗値が100Mオーム以下に達する時間を測定し、800時間以上を○、600時間以上800時間未満を△、600時間未満を×として判定した。
【0038】
〔製造例1〕
(ポリアミド酸Aの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度は3.9dl/gであった。
【0039】
〔製造例2〕
(ポリアミド酸Bの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、フェニレンジアミン108質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4010質量部を加えて完全に溶解させた後、ジフェニルテトラカルボン酸二無水物293質量部を加え、25℃の反応温度で12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度は4.3dl/gであった。
【0040】
〔製造例3〕
(ポリアクリロニトリルCの作成)
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、平均分子量が13万のポリアクリロニトリルに、N,N−ジメチルアセトアミドを加えて完全に溶解させ、ポリアクリロニトリル溶液Cが得られた。
【0041】
〔製造例4〜9〕
(ポリイミド不織布の作成)
製造例1、2に示す2種のポリアミド酸溶液A、Bを図1に示す装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極5に吐出した。得られたポリアミド酸不織布を、150℃×2分間、220℃×2分間、475℃×4分間の熱処理によりイミド化した。
得られたポリイミド不織布の各種物性を表1に示す。
【0042】
〔製造例10〕
(ポリアクリロニトリル不織布の作成)
製造例3に示すポリアクリロニトリル溶液Cを図1に示す装置を用いて、該溶液を繊維状物質捕集電極5に吐出した。
得られたポリアクリロニトリル不織布の各種物性を表2に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
〔実施例1〜8〕
下記組成のエポキシ樹脂の中に各ポリイミド不織布を含浸せしめ、エポキシ樹脂を含浸したポリイミド不織布を垂直に引き上げ、ロール間を通して余分なエポキシ樹脂を搾り取り、垂直状態にて100℃の熱風中で乾燥させ、プリプレグを作成した。このプリプレグを160℃、120分間、10MPaで加熱加圧成型し、ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体を得た。
<樹脂配合組成>
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂 100質量部
(油化シェル製、商品名:エピコート1045)
ジシアンジアミド 3.5質量部
2−メチルイミダゾール 0.2質量部
N,N’−ジメチルホルムアミド/メチルエチルケトン混合溶媒
【0046】
次いで、スパッタリング、めっきを行った。
各ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体をA4サイズに切り取り、開口部を有するステンレス製の枠に挟んで固定した。この枠をスパッタリング装置内の基板ホルダーに固定した。基板ホルダーと、ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体面は密着するように固定する。このため、基板ホルダー内に冷媒を流すことによってポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の温度を設定できる。次いで、ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体表面のプラズマ処理を行った。プラズマ処理条件はアルゴンガス中で、周波数13.56MHz、出力200W、ガス圧1×10−3Torrの条件であり、処理時の温度は2℃、処理時間は2分間であった。次いで、周波数13.56MHz、出力450W、ガス圧3×10−3Torrの条件、ニッケル−クロム(クロム10質量%)合金のターゲットを用い、アルゴン雰囲気下にてDCマグネトロンスパッタリング法により、1nm/秒のレートで厚さ7nmのニッケル−クロム合金被膜(下地層)を形成し、その後、基板の温度を2℃に設定するよう、基板のスパッタ面の裏面を2℃に温度コントロールした冷媒を中に流した。次いで、基板ホルダーのSUSプレートと接する状態でスパッタリングを行い、厚さ0.25μmの銅薄膜を形成させ、下地金属薄膜形成ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体を得た。ここで、銅およびNiCr層の厚さは蛍光X線法によって確認した。得られた下地金属薄膜形成ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体をプラスチック製の枠に固定し、硫酸銅めっき浴をもちいて、厚さ5μmの銅層を形成した。電解めっき条件は電解めっき液(硫酸銅80g/l、硫酸210g/l、HCl、光沢剤少量)に浸漬、電気を1.5Adm流した。引き続き120℃で10分間熱処理乾燥し、金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体を得た。
得られた金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体を使用し、フォトレジスト:FR−200、シプレー社製を塗布・乾燥後にガラスフォトマスクで密着露光し、さらに1.2質量%KOH水溶液にて現像した。次に、HClと過酸化水素を含む塩化第二銅のエッチングラインで、40℃、2kgf/cmのスプレー圧でエッチングし、評価試験に必要な図2に示すような「櫛形パターン」である、導体幅と導体間隔は40μm/40μm、パターン本数は片側20本のテストパターンを形成後、洗浄を行い、125℃、1時間のアニール処理を行った。
得られたポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体、および櫛形パターン付金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の評価結果を表3、表4にそれぞれ示す。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
〔比較例1〕
ポリアクリロニトリル不織布Cを使用する以外は実施例1と同様にして、ポリアクリロニトリル繊維補強エポキシ樹脂を得た。
得られたポリアクリロニトリル繊維補強エポキシ樹脂は、プリプレグを硬化させる際の160℃、120分、10MPa加熱加圧成形中に軟化し、繊維形状を保つことができなかった。
【0050】
〔比較例2〕
ポリイミド不織布の質量分率を80%にする以外は実施例1と同様にして、ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体を得た。
得られたポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体は加工性が悪く、実用性に乏しかった。
【0051】
〔比較例3、4〕
表5の組成を持つガラス繊維布帛、およびカーボン繊維布帛を用いる以外は実施例1と同様にして、ガラス繊維補強エポキシ樹脂、およびカーボン繊維補強エポキシ樹脂を得た。
その結果、目標とする10μm以下の板状体を作成することは不可能であった。
【0052】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体は、絶縁性と耐熱寸法安定性と薄さを併せ持ち、強度、耐衝撃性、靭性、可撓性に優れた板状体であり、この板状体から配線パターンが微細化した耐熱性、寸法安定性に優れたFPCなどを得ることができ、電子機器の小型化、軽量化のために利用可能ある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】静電紡糸装置の概略を示す模式図である。
【図2】櫛型パターンの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 静電紡糸装置
2 紡糸ノズル
3 溶液槽
4 高電圧電源
5 対向電極(捕集基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを重縮合して得られる非熱可塑性ポリイミドからなる平均繊維径が0.01〜5μmの繊維集合体(F)とエポキシ樹脂(E)とを含む板状体であり、該板状体の厚さが0.1〜10μmで、かつ面方向の平均線膨張係数が−5〜15ppm/℃であることを特徴とするポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
【請求項2】
繊維集合体(F)の全板状体に占める質量比率が10〜60質量%である請求項1記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
【請求項3】
非熱可塑性ポリイミドが、少なくとも芳香族テトラカルボン酸類の残基としてピロメリット酸、芳香族ジアミン類の残基としてベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドである請求項1または2記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
【請求項4】
繊維集合体(F)が静電紡糸によって得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の少なくとも片面に、金属層が積層された金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
【請求項6】
金属層が銅または、銅を主成分とする金属である請求項5記載の金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体。
【請求項7】
請求項5または6記載の金属層積層ポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体から製造されたプリント配線基板。
【請求項8】
芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを重縮合して得られるポリアミド酸を静電紡糸してポリイミド前駆体繊維集合体を形成する工程、ポリイミド前駆体繊維集合体をイミド化処理して平均繊維径が0.01〜5μmのポリイミド繊維集合体(F)となす工程、ポリイミドの繊維集合体(F)が10〜60質量%となるようエポキシ樹脂(E)を含浸させる工程及びエポキシ樹脂を硬化させる工程とを少なくとも含むことを特徴とする請求項1記載のポリイミド繊維補強エポキシ樹脂板状体の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−203312(P2009−203312A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45893(P2008−45893)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】