説明

ポリイミド複合フレキシブルシートとその製造方法

【課題】接着剤を使用せずに、優れた接着性としての機械特性、高耐熱性、サイズ安定性を有するポリイミド複合フレキシブルシートおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、環化後のガラス転移温度がそれぞれ280〜300℃範囲内、300〜350℃範囲内および190〜280℃範囲内にあるポリアミン酸を順序よく金属箔上に塗布し、次いで、加熱によりポリアミン酸を環化させてポリイミドを形成し、その後、高温プエスにより更に銅箔を接着させ、両面に金属箔を有するプレス配線用ポリイミド樹脂複合フレキシブルシートとその製造方法であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂複合フレキシブルシートの製造方法および該方法により製造されるポリイミド複合フレキシブルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミドフィルムは、耐高温性、優れた化学特性、高絶縁性および優異な機械強度など優れた特性を有するので、多くの技術分野において広く使用されている。例えば、芳香族ポリイミドフィルムは、連続式芳香族ポリイミドフィルム/金属フィルムの複合シートとして、フレキシブルプリント配線板(FPC)の製造に使用され、自動粘着テープのキャリヤーテープ(TAB)およびリードオンチップ(lead-on-chip)(LOC)テープなどに用いられ、特に、フレキシブルプリント配線板はすでにノート型コンピューター、消費型電子製品、携帯電話などの通信設備材料として広く利用されている。
【0003】
プリント配線板の製造中、すでに多くの耐熱性プラスチックフィルム(例えば、芳香族ポリイミドフィルム)が金属箔との積層に使用されている。金属箔との積層に際し、現在多くの周知の芳香族ポリイミドフィルムは、通常、熱硬化性接着剤を用いて、芳香族ポリイミドフィルムと金属箔とを積層させている。その方法としては、主にエポキシ樹脂やアクリル酸系樹脂などを熱硬化性接着剤として用い、これをポリイミドフィルムの両面に塗装し、次に、オーブン中で溶剤を除去し、接着剤をBステージ(即ち、熱硬化性樹脂の中間反応段階)に保ち、更に、加熱圧合方法により金属箔をフィルムの上下両面に張り合わせ、最後にオーブン中高温下で熱硬化させ、Cステージ(即ち、熱硬化性樹脂の最終反応段階)を経て、フレキシブル両面配線板を製造する方法が採用されている。
【0004】
しかし、熱硬化性接着剤の耐熱性は、通常、不足しがちであり、多くは、高くとも200℃以下でしかその接着性を保つことができない。そのため、多くの周知の接着剤は、高温処理を必要とする複合フィルムの製作には用いることができず、例えば、溶接を必要とする場合や高温下で使用されるプリント配線フレキシブルシートなどには用いることができない。利用上必要とされる耐熱性と難燃性を獲得するために、現在、熱硬化性樹脂としてハロゲン含有の難燃剤と臭素含有樹脂やハロゲンフリーの含リン系樹脂などが使用されている。しかし、ハロゲン含有の熱硬化性樹脂は焼却の際、ダイオキシンなどの有毒ガスを生じ、環境を汚染する問題がある。また、熱硬化性樹脂接着剤を介して貼り合わせたフレキシブルシートは、膨張係数が高く、耐熱性不良で、サイズ安定性も悪いなど欠点が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本出願人は、熱硬化性接着剤を介してフレキシブルシートを製造する場合の上記欠点に鑑みて、ポリイミド前駆体である各種類のポリアミン酸を用い、金属箔上に塗布し、次いで高温下圧合し、ポリアミン酸を環化することで、接着性が良く、耐熱性の高い、且つ、サイズ安定性にも優れ、ハロゲンとリンを含有しないフレキシブルシートの製造に成功し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリイミド複合フレキシブルシートは、金属箔、ガラス転移温度が280〜300℃範囲内にあるポリイミドフィルム、ガラス転移温度が300〜350℃範囲内にあるポリイミドフィルム、およびガラス転移温度が190〜280℃範囲内にあるポリイミドフィルムが、この順序で積層されたものである。
【0007】
本発明のポリイミド樹脂複合フレキシブルシートの製造方法は、環化後のガラス転移温度(Tg)が、それぞれ280〜300℃の範囲、300〜350℃の範囲と190〜280℃の範囲にあるポリアミン酸を順序に金属箔上に塗布し、加熱することでポリアミン酸を環化し、ポリイミドを形成することにより接着させ、次いで、高温圧合することに金属箔と接着させて、両面に金属箔を有するプリント配線板用の複合フレキシブルシートを製造する方法である。
【0008】
本発明のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法によれば、先に、例えば、銅箔などの金属箔上に、高Tgのポリアミン酸樹脂(a)を塗布し、金属箔に高接着性を与え、しかも得られるポリイミド複合フレキシブルシートのTgを高め、次に、更に高いTgのポリアミン酸樹脂(b)を塗布し、得られるポリアミン酸複合フレキシブルシートに優れた機械的特性と電気特性を付与し、最後に、比較的低いTgを有するポリアミン酸樹脂(c)を塗布し、金属箔に加工しやすい貼り合わせ性と金属箔に対する高接着性を有するポリイミド複合フレキシブルシートを製造することができる。
【0009】
その製造方法としては、下記の製造工程を含む。
(a)環化後のガラス転移温度が280〜300℃の範囲内にある第一のポリアミン酸樹脂を金属箔上に均一に塗布し、オーブン中90〜140℃で焼付け接着させ、更に150〜200℃で加熱乾燥して溶剤を除去する工程。
(b)溶剤を除去し、ポリアミン酸樹脂を塗布した金属箔を取り出し、第一ポリアミン酸樹脂の塗布層上に、環化後のガラス転移温度が300〜350℃の範囲内にある第二ポリアミン酸樹脂を塗布し、次いで、オーブン中90〜140℃で焼付け接着させ、150〜200℃で加熱乾燥して溶剤を除去する工程。
(c)次に、上記の第二ポリアミン酸樹脂を塗布した金属箔を取り出し、第二ポリアミン酸樹脂塗布層上に、環化後のガラス転移温度が190〜280℃の範囲内にある第三ポリアミン酸樹脂を塗布した後、オーブン中90〜140℃で焼付け接着させ、次に150〜200℃で加熱乾燥して溶剤を除去する工程。
(d)次に、三層のポリアミン酸樹脂塗布層を有する金属箔を、窒素雰囲気のオーブンに放置し、160〜190℃、190〜240℃、270〜320℃および330〜370℃の温度で、この順序で加熱して、ポリアミン酸のポリイミド化(環化)反応を行う工程。
(e)次に、冷却後取り出し、圧合機やローラープレスして、320〜370℃と10〜200Kgfの圧力下、別の金属箔と貼り合わせ、両面金属箔のポリイミド複合フレキシブルシートを製造する工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接着剤を使用しなくとも、接着性に優れた機械的特性、高耐熱性とサイズ安定性などを有するポリイミド複合フレキシブルシートを提供することができる。
また、本発明によれば、前記ポリイミド複合フレキシブルシートを製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリイミド複合フレキシブルシートは、金属箔、ガラス転移温度が280〜300℃範囲内にあるポリイミドフィルム、ガラス転移温度が300〜350℃の範囲内にあるポリイミドフィルム、およびガラス転移温度が190〜280℃範囲内にある第3ポリイミドフィルムを、この順序で積層されてなる。
【0012】
本発明のポリイミド樹脂複合フレキシブルシートの製造方法は、環化後のガラス転移温度(Tg)が、それぞれ280〜300℃の範囲、300〜350℃の範囲および190
〜280℃の範囲にあるポリアミン酸をこの順序に金属箔上に塗布し、加熱することでポリアミン酸を環化して、ポリイミドを形成することにより接着させ、次いで、高温圧合することで金属箔と接着させて、両面に金属箔を有するプリント配線板用の複合フレキシブルシートを製造する方法である。
【0013】
例えば、銅箔などの金属箔上に、高Tgのポリアミン酸樹脂(a)を塗布し、金属箔に高接着性を与え、しかも得られるポリイミド複合フレキシブルシートのTgを高め、次に、更に高いTgのポリアミン酸樹脂(b)を塗布し、得られるポリアミン酸複合フレキシブルシートに優れた機械的特性と電気特性を付与し、最後に、比較的低いTgを有するポリアミン酸樹脂(c)を塗布してポリイミド複合フレキシブルシートを製造する。
【0014】
その製造方法としては、下記の製造工程(a)〜(e)を含む。
(a)環化後のガラス転移温度が280〜300℃の範囲内にある第一のポリアミン酸樹脂を金属箔上に均一に塗布し、オーブン中90〜140℃で焼付け接着させ、更に150〜200℃で加熱乾燥して溶剤を除去する工程。
(b)溶剤を除去し、ポリアミン酸樹脂を塗布した金属箔を取り出し、第一ポリアミン酸樹脂の塗布層上に、環化後のガラス転移温度が300〜350℃の範囲内にある第二ポリアミン酸樹脂を塗布し、次いで、オーブン中90〜140℃で焼付け接着させ、150〜200℃で加熱乾燥して溶剤を除去する工程。
(c)次に、上記の塗布した金属箔を取り出し、第二ポリアミン酸樹脂塗布層上に、環化後のガラス転移温度が190〜280℃の範囲内にある第三ポリアミン酸樹脂を塗布した後、オーブン中90〜140℃で焼付け接着させ、次に150〜200℃で加熱乾燥して溶剤を除去する工程。
(d)次に、三層のポリアミン酸樹脂塗布層を有する金属箔を、窒素雰囲気のオーブンに放置し、160〜190℃、190〜240℃、270〜320℃および330〜370℃の温度で、この順序で加熱して、ポリアミン酸のポリイミド化(環化)反応を行う工程。
(e)次に、冷却後取り出し、圧合機やローラープレスして、320〜370℃と10〜200Kgfの圧力下、別の金属箔と貼り合わせ、両面金属箔のポリイミド複合フレキシブルシートを製造する工程。
【0015】
本発明のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法において、使用されるポリアミン酸樹脂は、下記式(I)のジアミンと下記式(II)のジカルボン酸無水物との反応
により得られる。
【0016】
2N−R1−NH2 (I)
式(I)中、R1はフェニレン基、−Ph−X−Ph−基(Xは単結合、ハロゲン原子
で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、又は−SO2−基を示す。)、炭素数2〜14の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜30の
脂環族炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、−Ph−O−R2−O−Ph−
基(R2はフェニレン基又は−Ph−X−Ph−基を示し、かつ、Xは単結合、ハロゲン
原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、又は−SO2−基を示す。)を示す。
【0017】
【化1】

【0018】
式(II)中、Yは炭素原子2〜12を含む脂肪族基、炭素原子4〜8を含む脂環族基、炭素数6〜14の単環又は多環芳香族基、>Ph−X−Ph<基(Xは単結合、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−Ph−O−、−O−、−CO−、−S−、−SO−、又は−SO2−基を示す。)を示す。
【0019】
本発明のポリイミド複合フレキシブルシート及びその製造方法において、環化後のガラス転移温度が280〜300℃の範囲内にある第一ポリアミン酸樹脂は、単一ベンゼン環を含有するジアミンモノマー及び単一ベンゼン環を含有するジカルボン酸無水物モノマー及びその他のジアミンモノマーとその他のジカルボン酸無水物モノマーとを反応させることにより得られ、総ジアミンモノマー/総ジカルボン酸無水物モノマーのモル比率が0.5〜2.0範囲内、より好ましくは0.75〜1.25範囲内にあることを条件とする。さらに、単一ベンゼン環を含むジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜20/80範囲内にあり、単一ベンゼン環を含有するジカルボン酸無水物モノマー/その他のジカルボン酸無水物モノマーとのモル比が40/60〜20/80の範囲内にあることを条件とする。
【0020】
本発明の方法において、環化後のガラス転移温度が300〜350℃の範囲内にある第二ポリアミン酸樹脂は、単一ベンゼン環を含有するジアミンモノマーと単一ベンゼン環を含有するジカルボン酸無水物モノマー及びその他のジアミンモノマーとその他ジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、総ジアミンモノマー/総ジカルボン酸無水物モノマーとのモル比率が0.5〜2.0の範囲内、より好ましくは0.75〜1.25の範囲内にあることを条件とする。さらに、単一ベンゼン環を含有するジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーとのモル比が95/5〜80/20の範囲内にあり、単一ベンゼン環を含有するジカルボン酸無水物モノマー/その他ジカルボン酸無水物モノマーとのモル比が80/20〜60/40範囲内にあることを条件とする。
【0021】
本発明の方法において、環化後のガラス転移温度が190〜280℃の範囲内にある第三ポリアミン酸樹脂は、少なくとも二つのベンゼン環を含有するジアミンモノマーと二つのベンゼン環を含有するジカルボン酸無水物モノマーおよびその他のジアミンモノマーとその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、総ジアミンモノマー/総ジカルボン酸無水物モノマーとのモル比率が0.5〜2.0の範囲内、より好ましくは0.75〜1.25の範囲内にあることを条件とする。さらに、少なくとも二つのベンゼン環を含有するジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜100/0の範囲内にあることを条件とする。
【0022】
本発明において、ポリアミン酸を製造する際に使用されるジカルボン酸無水物の具体例としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4、4'−オキソジフタル酸
二無水物(ODPA)、3,3',4,4'− ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BP
DA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブチルテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,2
',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4'−(パラ−フェニルジオキシ)ジフタル酸二無水物、4
,4'−(メタ−フェニルジオキシ)ジフタル酸二無水物、2,3,6,7−ナフチルテ
トラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフチルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフチルテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリリンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アンスリルテトラカルボン酸二無水物、または1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらジカルボン酸無水物は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なかでも、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4'−オキソジフタ
ル酸二無水物(OPDA)、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)が好ましいジカルボン酸無水物として挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明において、ポリアミン酸の製造に用いられるジアミンの具体例としては、芳香族ジアミンが挙げられ、例えば、パラ−フェニレンジアミン(PDA)、4,4'−オキシ
ジアニリン(ODA)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン(BAPS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'
−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3'−ジヒドロキシビフェニル(BAPB)、ビ
ス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フ
ェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記のジアミンは単独で用いてもよく、また2種以上混合して用いてもよい。なかでも、パラ−フェニルジアミン(PDA)、4,4'−オキシジアニリン(ODA)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベ
ンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン(BAPS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3'−ジヒドロキシビフェニル(BAPB)などが好ましい芳香族ジアミンとして用いられる。
【0024】
上記のジカルボン酸無水物とジアミンとの反応は、非プロトン極性溶剤中で行われるが、非プロトン極性溶剤としては、特に限定はなく、反応物および反応生成物と反応しないものであればよい。その具体例としては、例えば、N,N'−ジメチルアセチルアミド(
DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF
)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、クロロホルム(CHCl3)、ジクロ
ロメタンなどが挙げられる。なかでも、N−メチルピロリドン(NMP)、またはN,N
'−ジメチルアセチルアミド(DMAc)などが好ましく用いられる。
【0025】
上記のジカルボン酸無水物とジアミンとの反応は、通常、室温から90℃の温度範囲内、より好ましくは30〜75℃の温度範囲内で行われ、かつ、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸無水物とのモル比率は0.5〜2.0の範囲内であり、より好ましくは0.75〜1.25の範囲内である。それぞれのポリアミン酸の製造の際に用いられるこれらジカルボン酸無水物とジアミンは、それぞれ2種類以上が用いられ、その種類は特に限定されないが、必須とされるポリイミドの最終用途により決定される。
【0026】
環化後のガラス転移温度が280〜300℃の範囲内にある第一ポリアミン酸に用いられるジアミンとして、少なくともパラ−フェニルジアミン(PDA)を含み、かつ、ジカルボン酸無水物として、少なくともピロメリット酸二無水物(PMDA)を含むのが好ましく、しかも、下記条件を満たす必要がある。即ち、パラ−フェニルジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーのモル比が60/40〜20/80の範囲内にあり、ピロメリット酸二無水物モノマー/その他のジカルボン酸無水物モノマーのモル比が40/60〜20/80の範囲内にある必要がある。
【0027】
環化後のガラス転移温度が300〜350℃の範囲内にある第二ポリアミン酸に用いられるジアミンとして、少なくともパラ−フェニルジアミン(PDA)を含み、かつ、ジカルボン酸無水物として、少なくともピロメリット酸無水物(PMDA)を含むのが好ましく、しかも、下記条件を満たす必要がある。即ち、パラ−フェニルジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーのモル比が95/5〜80/20の範囲内にあり、ピロメリット酸二無水物モノマー/その他のジカルボン酸無水物モノマーのモル比が80/20〜60/40の範囲内にある必要がある。
【0028】
また、環化後のガラス転移温度が190〜280℃の範囲内にある第三ポリアミン酸に使用されるジアミンとして、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン(BAPS)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'−オキシジ
アニリン(ODA)、と4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3'−ジヒドロキシビフェニル(BAPB)などの少なくとも二つのベンゼン環を含有するジアミンモノマーから選ばれる少なくとも一種を含み、かつ、ジカルボン酸無水物として、4,4'−オ
キシジフタル酸二無水物(OPDA)、3,3',4,4'− ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4‘−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水
物(BTDA)などの二つのベンゼン環を含有するジカルボン酸無水物モノマーから選ばれる少なくとも一種を含むのが好ましく、しかも、下記の条件を満たす必要がある。即ち、少なくとも二つのベンゼン環を含有するジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜100/0の範囲内にある必要がある。
【0029】
本発明のポリイミド複合フレキシブルシートとその製造方法において用いられる、例えば銅箔などの金属箔の厚さは、特に制限はなく、複合フレキシブルシートの最終用途により決定されるが、通常、12〜70μmの範囲内にあり、かつ、第1ポリイミドフィルム、第2ポリイミドフィルム、および第3ポリイミドフィルムの厚さは、それぞれ下記の条件を満たす必要がある。
【0030】
【数1】

【実施例】
【0031】
本発明を下記の合成例と実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
合成例
(a)ポリアミン酸−1の合成
攪拌機と窒素導入管を備えた四つ口反応フラスコ中、窒素ガスを流量20cc/minで吹き込みながら、パラ−フェニルジアミン(PDA)を5.4g(0.05モル)反応フラスコに入れ、N−メチルピロリドン(NMP)を用いて溶解させ、15分後、4,4'−オキシジアニリン(ODA)10g(0.05モル)を加え、溶解させると共に温度
を15℃に保持した。
【0032】
別に攪拌子を備えた第一フラスコに、3,3',4,4'− ビフェニルテトラカルボン
酸無水物(BPDA)8.82g(0.03モル)とNMP15gを加え、攪拌して溶解させ、その後、この第一フラスコ中の内容物を上記反応フラスコ中に入れ、窒素ガス導入下、攪拌して1時間反応させた。
【0033】
また、別に第二フラスコを準備し、3,3',4,4'− ベンゾフェノンテトラカルボ
ン酸二無水物(BTDA)16.1g(0.05モル)とNMP30gとを加え、攪拌して溶解させた。この第二フラスコ中の内容物を上記反応フラスコに加え、窒素ガス導入下、攪拌して1時間反応させた。
【0034】
さらに、別に第三フラスコを取り、ピロメリット酸二無水物(PMDA)4.36g(0.02モル)とNMP10gとを加え、攪拌して溶解させた。この第三フラスコ中の内容物を上記反応フラスコに入れ、窒素ガス導入下、攪拌して1時間反応させた。次いで、15℃温度下、さらに4時間反応させ、ポリアミン酸樹脂を得た。
【0035】
このポリアミン酸樹脂0.5gを取り、NMP100mlに溶かし、25℃でその特性粘度(IV)を測定した結果、0.85dl/gを示し、環化後のガラス転移温度(Tg)の測定結果は290℃であった。
【0036】
表1に示す成分と用量で、同様の製法によりポリアミン酸1−2、1−3を合成し、その特性粘度(IV)と環化後のガラス転移温度(Tg)を測定し、その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(b)ポリアミン酸−2の合成
攪拌機と窒素導入管を備えた四つ口反応フラスコ中、窒素ガスを20cc/minの流
量で吹き込みながら、パラ−フェニルジアミン(PDA)9.72g(0.09モル)を加え、N−メチルピロリドン(NMP)で溶解させ、15分後に4,4'−オキシジアニ
リン(ODA)2g(0.01モルを加え、溶解させると共に温度を15℃に保持した。
【0039】
別に攪拌子を備えた第一フラスコを準備し、これに3,3',4,4'− ビフェニルテ
トラカルボン酸無水物(BPDA)5.88g(0.02モル)とNMP15gとを加え、攪拌して溶解させ、次いで、この第一フラスコの内容物を上記の反応フラスコ内に加え、窒素ガスを導入しながら攪拌して1時間反応させた。
【0040】
また、別に第二フラスコを取り、ピロメリット酸二無水物(PMDA)17.44g(0.08モル)とNMP30gとを加え、攪拌して溶解させた。この第二フラスコの内容物を上記の反応フラスコ中に加入、窒素ガスを持続導入し、攪拌して1時間反応させた。次に、15℃の温度下で、さらに4時間反応させてポリアミン酸樹脂を得た。
【0041】
得られたポリアミン酸樹脂0.5gを取り、NMP100mlに溶かし、25℃でその特性粘度(IV)を測定した結果、0.75dl/gを示し、環化後のガラス転移温度(Tg)の測定結果は338℃であった。
【0042】
表2に示す成分と用量で、同様の製法によりポリアミン酸2−2と2−3とを合成し、その特性粘度(IV)と環化後のガラス転移温度(Tg)を測定し、その結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
(c)ポリアミン酸−3の合成
攪拌機と窒素導入管を備えた四つ口反応フラスコ中、窒素ガスを20cc/minの流
量で吹き込みながら、2,2'−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホ
ン(BAPP)41g(0.1モル)を加え、N−メチルピロリドン(NMP)で溶解させ、15分後、別に攪拌子を有する第一フラスコ内に、3,3',4,4'− ビフェニル
テトラカルボン酸無水物(BPDA)2.94g(0.01モル)とNMP15gとを加え、攪拌して溶解させ、次いで、この第一フラスコの内容物を上記の反応フラスコ中に入れ、窒素ガスを持続導入し、攪拌しながら1時間反応させた。
【0045】
また、別に第二フラスコを取り、3,3',4,4'− ベンゾフェノンテトラカルボン
酸二無水物(BTDA)とNMP15gとを加え、攪拌して溶解させた。この第二フラスコの内容物を上記の反応フラスコ内に入れ、窒素ガスを持続導入しながら、攪拌して1時間反応させた。
【0046】
さらに、別に第三フラスコを準備し、4,4'−オキシジフタル酸二無水物(ODPA
)6.2g(0.02モル)とNMP30gとを加え、攪拌して溶解させた。この第三フラスコの内容物を上記の反応フラスコ中に加え、窒素ガスを持続導入しながら攪拌して1時間反応させた。次いで、15℃の温度下で、さらに4時間反応させ、ポリアミン酸樹脂を得た。このポリアミン酸樹脂0.5gをとり、NMP100mlに溶かし、25℃で特性粘度(IV)を測定した結果、0.95dl/gであり、環化後のガラス転移温度(Tg)は223℃であった。
【0047】
表3に示す成分と用量で、同様の製法によりポリアミン酸3−2、3−3、3−4と3−5とを合成し、その特性粘度(IV)と環化後のガラス転移温度(Tg)を測定し、その結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
上記の表中、各符号は下記の意味を示す。
BPDA:3,3’,4,4’− ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;
BTDA:3,3’,4,4’− ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;
DSDA:3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物;
ODA:4,4'−オキシジアニリン
BAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン;
BAPB:4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3’−ジヒドロキシビフェニル;
BAPS:ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン;
TPE−R:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン;
APB:1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン。
【0050】
実施例1〜実施例18と比較例1〜比較例6
表4と表5に示す組成により、上記の合成例で得たポリアミン酸樹脂1を細い棒を用いて、厚さ18μmの銅箔上に厚さ3μmとなるように均一に塗布し、オーブン中、120℃で3分間と180℃で5分間、それぞれ焼付けて溶剤を除去した。ポリアミン酸を塗布し、すでに乾燥を終えた銅箔を取り出し、次にポリアミン酸2を厚さ17μmとなるように塗布し、その後オーブン中、120℃で3分間と180℃で7分間、焼付けて溶剤を除去する。さらに、上記塗布した銅箔を取り出し、ポリアミン酸3を厚さ3μmになるように塗布し、次いで、オーブン中、120℃で3分間と180℃で5分間、それぞれ焼付けて溶剤を除去した。次に、得られた銅箔を窒素ガス雰囲気のオーブン中、180℃で1時間、220℃で1時間、300℃で0.6時間、350℃で0.5時間それぞれ放置し、ポリアミン酸のポリイミド化(環化)反応を行い、冷却後取り出し、平坦なプレスを用いてバッチ(batch)圧合し、またはローラープレスで連続して圧合し、340℃、100k
gf圧力下、別の銅箔を貼り合わせ、両面のフレキシブルプリント配線板圧合銅箔を製作した。このフレキシブルシートの構造は、銅箔/ポリイミド1(280℃<Tg<300℃)/ポリイミド2(300℃<Tg<350℃)/ポリイミド3(190℃<Tg<280℃)/銅箔であった。
【0051】
通常、両面の銅箔からなる圧合フレキシブルプリント配線シートの製造過程は、図1で示される。即ち、先にそれぞれのポリアミン酸樹脂を合成し、次いで、順序よくそのポリアミン酸樹脂を塗布し、次にそのポリアミン酸樹脂を環化させてポリイミド樹脂を形成し、その後、ポリイミド樹脂を積層したフレキシブルシートを銅箔とプレスにより貼り合わせ、次いでフレキシブルシートの物性と外観を検査した後、バッチ包装する。
【0052】
上記のフレキシブルシートの製造は、図2〜図4に示される設備で行われる。まず、図2に示される塗布設備によりポリアミン酸樹脂の塗布を行い、巻解ロール(15)を用いて銅箔を上記の塗布設備に送り、塗布ヘッド(16)により位置(11)で塗布し、オーブン(14)を経て第1段階の焼付けを行い溶剤を除去し、次いで、塗布ヘッド(16’)を用い位置(12)でポリアミン酸樹脂2を塗布し、オーブン(14’)で第2段階の焼付けを行い溶剤を除去し、最後に、塗布ヘッド(16’’)を用いて位置(13)でポリアミン酸樹脂3を塗布し、オーブン(14’’)で第3段階の焼付けを行い、溶剤を除去し、その一端を巻取ロール(17)により巻き取り、それぞれ異なる3層のポリアミン酸樹脂層を塗布した銅箔リールを得る。
【0053】
次に、図3に示す環化装置を用い、上記の銅箔を巻解ロール(21)に巻取り、オーブン(24)の入口先と出口先にそれぞれ設置されているガイドローラー(22,22)を経てオーブン(24)と窒素ガスオーブン(25)中、ヒートプレート(26)を用いて加熱環化させ、別端を巻取ローラー(23)により巻取り、それぞれ異なる3層のポリイミド層を有する銅箔リードを得る。
【0054】
最後に、図4に示すプレス装置を用い、上記により得たそれぞれ異なる3層のポリイミド層を有する銅箔リードを巻解ローラー(32)に置き、同時に、別の巻取ローラー(31)に銅箔リードを放置し、それぞれガイドローラー(33および34)のガイドにより、高温プレスローラー(35)を通過させ、両面に銅箔を有する銅箔をプレス加工し、ガイドローラー(36および37)を通過させ、巻取ローラー(39)に巻取る。その中、
該ガイドローラー(33、34および36)と高温プレスローラー(35)は、窒素ガスオーブン(39)内に設置されている。
【0055】
得られた銅箔は、IPC−TM650 2.2.9により剥離強度試験を行い、また、
熱比重分析計を用いて熱膨張度を測定し、さらに、IPC−TM650 2.2.4によ
りサイズ安定性を測定した。その結果を表4および表5に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、環化後のガラス転移温度(Tg)の異なるポリアミン酸樹脂を用いることで、詳しくは、Tgが280〜300℃範囲にある高接着性ポリアミン酸樹脂を銅箔上に塗布し、次に、優れた機械特性を有するTgが300〜350℃範囲内にあるポリアミン酸樹脂を支持層として利用し、最後に、Tgが相対的に低く190〜280℃範囲内の高接着性ポリアミン酸樹脂を塗布し、次いで高温ローラーまたはプレスを利用し、別の銅箔をプレス貼り合わせると共に、ポリアミン酸のイミド化(環化)反応を行うことで、熱安定性とサイズ安定性共に優れた両面プリント配線用のフレキシブルシートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】両面シートからなるフレキシブルプリント配線銅箔シートの商業的生産過程を示す。
【図2】本発明の製造方法を実施する際に使用される塗布設備の概観図を示す。
【図3】本発明の製造方法を実施する際に使用される環化装置の概観図を示す。
【図4】本発明の製造方法を実施する際に使用されるプレス装置の概観図を示す。
【符号の説明】
【0060】
11・・・ポリアミン酸樹脂1の塗布位置
12・・・ポリアミン酸樹脂2の塗布位置
13・・・ポリアミン酸樹脂3の塗布位置
14、24、25、29・・・オーブン
15、21、31、32・・・巻解ローラー
16、16’、16’’ ・・・塗布ヘッド
17、23、39・・・巻取ローラー
22、33、34、36、37・・・ガイドローラー
26・・・ヒートプレート
35・・・プレスローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔、ガラス転移温度が280〜300℃範囲内にある第1ポリイミドフィルム、ガラス転移温度が300〜350℃範囲内にある第2ポリイミドフィルム、およびガラス転移温度が190〜280℃範囲内にある第3ポリイミドフィルムが、この順序で積層されてなるポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項2】
下記式(I)で表されるジアミン;
2N−R1−NH2 (I)
〔式中、R1はフェニレン基、−Ph−X−Ph−基(Xは単結合、ハロゲン原子で置
換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、又は−SO2−基を示す。)、炭素数2〜14の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜30の脂環
族炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、−Ph−O−R2−O−Ph−基(
2はフェニレン基又は−Ph−X−Ph−基を示し、かつ、Xは単結合、ハロゲン原子
で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、又は−SO2−基を示す。)を示す。〕;
と下記式(II)で表されるジカルボン酸無水物;
【化1】

[式中、Yは炭素数2〜12を含む脂肪族基、炭素数4〜8を含む脂環族基、炭素数6〜14の単環又は多環芳香族基、>Ph−X−Ph<基(Xは単結合、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−Ph−O−、−O−、−CO−、−S−、−SO−、又は−SO2−基を示す。)を示す。]
との反応により得られるポリアミン酸樹脂を用い、さらにポリイミド化(環化)反応を行うことにより得られることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項3】
前記第1ポリイミドはガラス転移温度が280〜300℃の範囲内にあり、単ベンゼン環を含むジアミンモノマーと単ベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマー及びその他のジアミンモノマーとその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応より得られ、総ジアミンモノマー/総ジカルボン酸無水物モノマーのモル比率が0.5〜2.0の範囲内にあ
り、かつ、単ベンゼン環を含むジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーのモル比が60/40〜20/80の範囲内にあり、単ベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマー/その他のジカルボン酸無水物モノマーのモル比が40/60〜20/80の範囲内にあることを条件とする請求項1に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項4】
前記第2ポリイミドはガラス転移温度が300〜350℃の範囲内にあり、単ベンゼン環を含むジアミンモノマーとモノベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマー及びその他のジアミンモノマーとその他のジカルボン無水物モノマーとの反応により得られ、総ジアミンモノマー/総ジカルボン酸無水物モノマーのモル比率が0.5〜2.0の範囲内にあり、かつ、単ベンゼン環を含むジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーのモル比が95/5〜80/20の範囲内にあり、単ベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマー/その他のジカルボン酸無水物モノマーのモル比が80/20〜60/40の範囲内にあることを条件とする請求項1に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項5】
前記第3ポリイミドはガラス転移温度が190〜280℃の範囲内にあり、少なくとも二つのベンゼン環を含むジアミンモノマーと二つのベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマーおよびその他のジアミンモノマーとその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、総ジアミンモノマー/総ジカルボン酸無水物モノマーのモル比率が0.5〜2.0の範囲内であり、かつ、少なくとも二つのベンゼン環を含有するジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜100/0の範囲内にあることを条件とする請求項1に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項6】
前記金属箔の厚さが、12〜70μm範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項7】
前記金属箔が、銅箔であることを特徴とする請求項6に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【請求項8】
前記第1ポリイミドフィルム、第2ポリイミドフィルムと第3ポリイミドフィルムの厚さが、それぞれ下記条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリイミド複合フレキシブルシート。
【数1】

【請求項9】
下記の製造工程を含むことを特徴とするポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法;
(a)環化後のガラス転移温度が280〜300℃範囲内にある第1ポリアミン酸樹脂を金属箔上に均一に塗布し、オーブン中90〜140℃で焼付け、次いで150〜200℃で焼付けて溶剤を除去する工程;
(b)次に、該ポリアミン酸樹脂を塗布し、溶剤を除去した金属箔を取出し、次いで、第1ポリアミン酸樹脂塗布層の上に、環化後のガラス転移温度が300〜350℃の範囲内にある第2ポリアミン酸樹脂を塗布し、その後、オーブン中90〜140℃で焼付け、次いで150〜200℃で焼付けて溶剤を除去する工程;
(c)次に、該塗布金属箔を取出し、更に第2ポリアミン酸樹脂塗布層上に、環化後のガラス転移温度が190〜280℃の範囲内にある第3ポリアミン酸樹脂を塗布し、次いで、オーブン中90〜140℃で焼付け、その後、150〜200℃で焼付けて溶剤を除去する工程;
(d)次に、3層のポリアミン酸樹脂塗布層を有する該金属箔を窒素ガス雰囲気のオーブンにいれ、160〜190℃、190〜240℃、270〜320℃および330〜370℃の温度で、この順序でそれぞれ加熱して、ポリアミン酸のポリイミド化(環化)反応を行い、ポリイミド複合フレキシブルシートを得る工程。
【請求項10】
前記ポリアミン酸樹脂が、下記式(I)で表されるジアミン;
2N−R1−NH2 (I)
〔式中、R1はフェニレン基、−Ph−X−Ph−基(Xは単結合、ハロゲン原子で置
換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、又は−SO2−基を示す。)、炭素数2〜14の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜30の脂環
族炭化水素基、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、−Ph−O−R2−O−Ph−基(
2はフェニレン基又は−Ph−X−Ph−基を示し、かつ、Xは単結合、ハロゲン原子
で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−、−CO−、−S−、−SO−、又は−SO2−基を示す。)を示す。〕;
と下記式(II)で表されるジカルボン酸無水物;
【化2】

[式中、Yは炭素数2〜12を含む脂肪族基、炭素数4〜8を含む脂環族基、炭素数6〜
14の単環又は多環芳香族基、>Ph−X−Ph<基(Xは単結合、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキレン基、−O−Ph−O−、−O−、−CO−、−S−、−SO−、又は−SO2−基を示す。)を示す。]
との反応により得られることを特徴とする請求項9に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。
【請求項11】
前記第1ポリアミン酸樹脂は環化後のガラス転移温度が280〜300℃の範囲内にあり、単ベンゼン環を含むジアミンモノマーと単ベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマー及びその他のジアミンモノマーとその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、総ジアミンモノマー/総ジカルボン酸無水物モノマーのモル比率が0.5〜2.0の範囲内にあり、かつ、単ベンゼン環を含むジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーのモル比が60/40〜20/80の範囲内にあり、単ベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマー/その他のジカルボン酸無水物モノマーとのモル比が40/60〜20/80の範囲内にあることを条件とする請求項9に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。
【請求項12】
前記第2ポリアミン酸樹脂は環化後のガラス転移温度が300〜350℃の範囲内にあり、単ベンゼン環を含むジアミンモノマーと単ベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマー及びその他のジアミンモノマーとその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、総ジアミンモノマー/総ジカルボン酸無水物モノマーのモル比率が0.5〜2.0の範囲内にあり、かつ、単ベンゼン環を含むジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーのモル比が95/5〜80/20の範囲内にあり、かつ、単ベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマー/その他のジカルボン酸無水物モノマーのモル比が80/20〜60/40の範囲内にあることを条件とする請求項9に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。
【請求項13】
前記第3ポリアミン酸樹脂はガラス転移温度が190〜280℃の範囲内にあり、少なくとも二つのベンゼン環を含むジアミンモノマーと二つのベンゼン環を含むジカルボン酸無水物モノマーおよびその他のジアミンモノマーとその他のジカルボン酸無水物モノマーとの反応により得られ、総ジアミンモノマー/総ジカルボン酸無水物モノマーのモル比率が0.5〜2.0の範囲内であり、かつ、少なくとも二つのベンゼン環を含有するジアミンモノマー/その他のジアミンモノマーとのモル比が60/40〜100/0の範囲内にあることを条件とする請求項9に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。
【請求項14】
前記金属箔の厚さが、12〜70μmの範囲内にあることを特徴とする請求項9に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。
【請求項15】
前記金属箔が、銅箔であることを特徴とする請求項14に記載のポリイミド複合フレキシブルシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−30434(P2008−30434A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6362(P2007−6362)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(595009383)長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司 (23)
【Fターム(参考)】