説明

ポリウレタン樹脂形成性組成物、シール材及び中空糸膜モジュール

【課題】大型の中空糸膜モジュールの製造にも適用でき、接着性及び耐熱性に優れ、硬度の温度依存性が低く、水に浸漬したときに当該水中への溶出物の量がきわめて少ない硬化樹脂を形成することができるポリウレタン樹脂形成性組成物を提供する。
【解決手段】イソシアネート成分を含有する主剤(A)と、ポリオール成分を含有する硬化剤(B)とからなるポリウレタン樹脂形成性組成物において;前記イソシアネート成分として、イソシアネート基含有化合物(a1)と、官能基数が8の化合物を開始剤として得られる特定の分子量分布を有する多官能ポリエーテルポリオール(b1)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーが含有され;前記ポリオール成分として、ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸と、トリメチロールアルカンとから得られるヒマシ油系変性ポリオール(b2)が含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂形成性組成物、シール材及び中空糸膜モジュールに関する。更に詳しくは、接着性及び耐熱性に優れ、硬度の温度依存性が低く、水に浸漬したときに溶出物の量がきわめて少ない硬化樹脂を形成することができるポリウレタン樹脂形成性組成物、当該組成物を硬化して得られるシール材、当該シール材によって、複数の中空糸膜の集束体の端部における中空糸膜相互の隙間が封止されてなる中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液処理器、浄水器、工業用水処理装置を構成する中空糸膜モジュール(中空糸膜型濾過装置)用のシール材として、常温での可撓性、接着性及び耐薬品性に優れているポリウレタン樹脂を用いることが、広く知られている。
【0003】
近年、特に工業用水処理装置には、処理能力の更なる向上が求められる背景上、中空糸膜モジュールは、日々、大型化される傾向にある。このため、使用するシール材としても、中空糸膜モジュールの大型化に対応できるものが要求されるようになってきている。
【0004】
従来、血液処理器や浄水器を構成する膜モジュール用のシール材を得るための組成物として、アミン系ポリオールを硬化剤の成分として用いるポリウレタン樹脂形成性組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、このポリウレタン樹脂形成性組成物は、硬化速度が高過ぎることから、大型の中空糸膜モジュールの製造に適用できない。このため、特に工業用水処理装置の用途として実用化するには不十分である。
【0005】
また、血液処理器や浄水器を構成する膜モジュール用のシール材を得るための組成物として、アミン系ポリオールと、特定の活性水素含有基を有するポリオキシアルキレン化合物とを硬化剤の成分として併用するポリウレタン樹脂形成性組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、このポリウレタン樹脂形成性組成物により得られるシール材は、耐熱性に劣り、水に浸漬したときに当該水中への溶出物の量が多い。このため、特に工業用水処理装置の用途として実用化するには不十分である。
【0006】
また、中空糸膜モジュール用のシール材を得るための組成物として、公称官能基数が6以上のポリエーテルポリオールを硬化剤の成分として用いるポリウレタン樹脂形成性組成物からなるものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、このポリウレタン樹脂形成性組成物により得られるシール材は、水に浸漬したときに当該水中への溶出物の量が多い。このため、特に工業用水処理装置の用途として実用化するには不十分である。
【0007】
また、膜モジュール用のシール材を得るための組成物として、過剰の有機ポリイソシアネートと、側鎖に少なくとも1個のメチル基を有するアルキレン(炭素数2〜5)グリコールとから得られるプレポリマーを、主剤の成分として用いるポリウレタン樹脂形成性組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
しかし、このポリウレタン樹脂形成性組成物により得られるシール材は、耐熱性に劣ることから、特に工業用水処理装置の用途としては実用化するには不十分である。
【0008】
また、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物として、イソシアネート成分(主剤)とポリオール成分(硬化剤)とからなり、ポリオール成分としてヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンとから得られるヒマシ油系変性ポリオールを用いる組成物が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
しかし、このポリウレタン樹脂形成性組成物によって得られるシール材は、硬度の温度依存性が高く、高温環境下において十分な硬度を有するものとならない。このため、特に工業用水処理装置の用途として、更なる改良が望まれる。
【0009】
このように、従来公知のポリウレタン樹脂形成性組成物によって得られるシール材は、何れも、大型の中空糸膜モジュールにより構成される工業用水処理装置の用途として実用化するには不十分であり、この用途において十分に実用可能なシール材(当該シール材を得るためのポリウレタン樹脂形成性組成物)の提供が強く望まれている。
【特許文献1】特開平6−100649号公報(第2〜4頁)
【特許文献2】特開2000−128952号公報(第2〜4頁)
【特許文献3】特開2002−128858号公報(第2〜5頁)
【特許文献4】特開平9−48835号公報(第2〜4頁)
【特許文献5】特開2005−89491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述の背景を踏まえてなされたものである。
本発明の第1の目的は、大型の中空糸膜モジュールの製造にも適用することができ、接着性及び耐熱性に優れ、硬度の温度依存性が低く、水に浸漬したときに当該水中への溶出物の量がきわめて少ない硬化樹脂を形成することができるポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の第2の目的は、大型の中空糸膜モジュールにも対応することができ、接着性及び耐熱性に優れ、硬度の温度依存性が低く、水に浸漬したときに当該水中への溶出物の量がきわめて少ない硬化樹脂からなるシール材を提供することにある。
【0012】
本発明の第3の目的は、接着性及び耐熱性に優れ、硬度の温度依存性が低く、水に浸漬したときに当該水中への溶出物の量がきわめて少ない硬化樹脂からなるシール材によって、複数の中空糸膜の集束体の端部における中空糸膜相互の隙間が封止されてなる、生産性及び耐久性に優れた中空糸膜モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明(第1の発明)のポリウレタン樹脂形成性組成物は、イソシアネート成分を含有する主剤(A)と、ポリオール成分を含有する硬化剤(B)とからなるポリウレタン樹脂形成性組成物において;主剤(A)を構成するイソシアネート成分として、イソシアネート基含有化合物(a1)と、官能基数が8の化合物を開始剤として得られるポリエーテルポリオールであって、これをGPCにより測定したポリプロピレンポリオール換算の分子量分布において、分子量600〜900の領域にピークトップを有し、全ピーク面積の75PA%(ピーク面積比率に係る割合「%」を「PA%」と記載する)以上を占めるメインピークが存在し、当該メインピークにおける数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が1.3以下である多官能ポリエーテルポリオール(b1)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーが含有され;硬化剤(B)を構成するポリオール成分として、ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸と、トリメチロールアルカンとから得られるヒマシ油系変性ポリオール(b2)が含有されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明(第2の発明)のポリウレタン樹脂形成性組成物は、イソシアネート成分を含有する主剤(A)と、ポリオール成分を含有する硬化剤(B)とからなるポリウレタン樹脂形成性組成物において、主剤(A)を構成するイソシアネート成分として、イソシアネート基含有化合物(a1)と、多官能ポリエーテルポリオール(b1)と、多官能ポリエーテルポリオール(b1)以外のポリオール(b3)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーが含有され、硬化剤(B)を構成するポリオール成分として、ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸と、トリメチロールアルカンとから得られるヒマシ油系変性ポリオール(b2)が含有されていることを特徴とする。
【0015】
また、前記イソシアネート基末端プレポリマーを得るために使用するポリオール(b3)の少なくとも一部が、ヒマシ油系変性ポリオール(b2)であることが好ましい。
【0016】
本発明のシール材は、本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られることを特徴とする。
【0017】
本発明のシール材は、中空糸膜モジュール用のシール材として好適である。
【0018】
本発明の中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜の集束体の端部における中空糸膜相互の隙間が、本発明のシール材により封止されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
(1)本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物によれば、接着性及び耐熱性に優れ、硬度の温度依存性が低く(広い温度領域において温度による硬度の変化が小さく)、水に浸漬したときに当該水中への溶出物の量がきわめて少ない(低溶出物性にきわめて優れた)硬化樹脂を形成することができる。
【0020】
(2)本発明のシール材は、接着性に優れているので、濾過装置のハウジング基材との間に高い接着力が得られるとともに、複数の中空糸膜の集束体の端部を強固に結束させることができる。
本発明のシール材は、耐熱性に優れているので、スチーム滅菌処理を施した後であっても、基材に対する接着力を高い割合で保持することができる。
本発明のシール材は、硬度の温度依存性が低いので、広い温度領域において確実なシール性能を確保することができる。
本発明のシール材を水と接触させても、当該水中への溶出物の量はきわめて少ない。
【0021】
(3)本発明の中空糸膜モジュールは、濾過装置としての優れた性能を有し、生産性及び耐久性にも優れている。また、大型化された工業用水処理装置を構成するよう大型化することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
<ポリウレタン樹脂形成性組成物>
本発明の組成物は、イソシアネート成分を含有する主剤(A)と、ポリオール成分を含有する硬化剤(B)とからなる。
【0023】
<主剤(A)>
本発明の組成物の主剤(A)には、イソシアネート成分として、
(1)イソシアネート基含有化合物(a1)と、多官能ポリエーテルポリオール(b1)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(以下、「イソシアネート基末端プレポリマー〔I〕」ともいう。);及び
(2)イソシアネート基含有化合物(a1)と、多官能ポリエーテルポリオール(b1)と、ポリオール(b3)とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー(以下、「イソシアネート基末端プレポリマー〔II〕」ともいう。)から選ばれた少なくとも1種のイソシアネート基を末端に有するプレポリマーが含有されている。
【0024】
(1)イソシアネート基含有化合物(a1):
前記イソシアネート基末端プレポリマーを得るために使用されるイソシアネート基含有化合物(a1)は、分子中にイソシアネート基を含有する化合物であり、例えば、炭素数(イソシアネート基中の炭素原子を除く炭素原子の数、以下同じ)2〜18の脂肪族系イソシアネート、炭素数4〜15の脂環式系イソシアネート、炭素数6〜20の芳香族系イソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族系イソシアネートを挙げることができる。
【0025】
また、これら一連のイソシアネートにおけるイソシアネート基の一部又は全部について、イソシアヌレート変性、ビュレット変性、アロファネート変性、ウレトジオン変性、ウレトンイミン変性、カルボジイミド変性、オキサゾリドン変性、アミド変性、イミド変性等の変性を行って得られる化合物をも挙げることができる。
【0026】
炭素数2〜18の脂肪族系イソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、ビス(2−イソシアネートエチル)カーボネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等を挙げることができる。
【0027】
炭素数4〜15の脂環式系イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート等を挙げることができる。
【0028】
炭素数6〜20の芳香族系イソシアネートとしては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、及びこれらの混合物;以下「MDI」と略記)、ナフタレンジイソシアネート、ベンゼン環を3個以上有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0029】
炭素数8〜15の芳香脂肪族系イソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジイソシアネートエチルベンゼン等を挙げることができる。
【0030】
本発明においては、イソシアネート基含有化合物(a1)として、芳香族系イソシアネートまたは芳香族系イソシアネートの一部について、前述の一連の変性を行って得られるものを使用することが好ましい。特に、MDIまたはMDIの一部について、前述の一連の変性を行って得られるものを使用することがより好ましい。中でも、成形時の作業環境に優れ、且つ、シール材に要求される物性(例えば、硬度などの機械的強度)が良好な硬化樹脂を形成することができる等の観点から、MDIまたはMDIの一部をカルボジイミド変性して得られるものを使用することが特に好ましい。
【0031】
(2)多官能ポリエーテルポリオール(b1):
前記イソシアネート基末端プレポリマーを得るために使用される多官能ポリエーテルポリオール(b1)は、官能基数が8の化合物を開始剤として、これにアルキレンオキサイドを付加することにより得ることができる。
【0032】
ここに、開始剤として使用される「官能基数が8の化合物」としては、シュークローズを挙げることができる。
また、付加される「アルキレンオキサイド」としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど、炭素数が2〜4個のアルキレンオキサイドを挙げることができる。これらのうち、水中への溶出物の量がきわめて少ない硬化樹脂(低溶出物性に特に優れたシール材)を形成することができるという観点から、プロピレンオキサイドが好ましい。
【0033】
多官能ポリエーテルポリオール(b1)をGPCによって測定したポリプロピレンポリオール換算の分子量分布には、分子量が600〜900の領域にピークトップを有し、全ピーク面積の75PA%以上を占めるメインピークが存在する。
多官能ポリエーテルポリオール(b1)の分子量分布において、メインピークのピークトップ分子量は、通常600〜900とされ、好ましくは630〜870とされる。ピークトップ分子量が600未満である場合には、得られる組成物により形成される硬化樹脂(シール材)が硬くなり過ぎて、成形後にクラック等が発生しやすくなる。
一方、ピークトップ分子量が900を超える場合には、得られる組成物により形成される硬化樹脂が高温環境下において十分な硬度を有するものとならない。
【0034】
また、多官能ポリエーテルポリオール(b1)の分子量分布において、全ピーク面積に対するメインピークの割合は、通常75PA%以上とされ、好ましくは85PA%以上とされる。メインピークの割合が75PA%未満である場合には、得られる組成物により形成される硬化樹脂(シール材)を水に浸漬したときに、当該水中への溶出物の量を十分に抑制することができない(後述する比較例2〜4参照)。
【0035】
また、多官能ポリエーテルポリオール(b1)の分子量分布において、メインピークにおける数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、通常1.3以下とされ、好ましくは1.2以下とされる。比(Mw/Mn)が1.3を超える場合には、得られる組成物により形成される硬化樹脂(シール材)を水に浸漬したときに、当該水中への溶出物の量を十分に抑制することができない。
【0036】
多官能ポリエーテルポリオール(b1)全体についてのポリプロピレンポリオール換算の数平均分子量(Mn)は400〜700であることが好ましく、更に好ましくは450〜650とされる。
また、多官能ポリエーテルポリオール(b1)の水酸基価(実測値)は350〜650mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは400〜600mgKOH/gとされる。
【0037】
イソシアネート基末端プレポリマー〔I〕を得るための反応において、イソシアネート基含有化合物(a1)の有するイソシアネート基と、多官能ポリエーテルポリオール(b1)の有する活性水素基との当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、通常1.1〜130.0とされ、好ましくは3.0〜90.0、更に好ましくは5.0〜80.0とされる。当該当量比(イソシアネート基/活性水素基)を5.0〜80.0とすることにより、シール材の形成時(中空糸膜モジュールの製造時)の成形加工性に特に優れた組成物が得られる。なお、イソシアネート基末端プレポリマー〔I〕を得るための反応は、通常行われるウレタン化反応である。
【0038】
イソシアネート基末端プレポリマー〔I〕のイソシアネート基含有量は、通常8〜30質量%とされ、好ましくは10〜28質量%、更に好ましくは13〜26質量%とされる。イソシアネート基含有量が13〜26質量%であるイソシアネート基末端プレポリマー〔I〕を使用することにより、シール材の形成時(中空糸膜モジュールの製造時)の成形加工性に特に優れた組成物が得られる。
【0039】
(3)ポリオール(b3):
イソシアネート基末端プレポリマー〔II〕にあっては、多官能ポリエーテルポリオール(b1)とともに、多官能ポリエーテルポリオール(b1)以外のポリオール(b3)が使用される。
ポリオール(b3)を併用して得られるイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を使用することによれば、シール材の形成時(中空糸膜モジュールの製造時)の成形加工性の向上を図ることができる。
【0040】
「ポリオール(b3)」としては、例えば、低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール(多官能ポリエーテルポリオール(b1)を除く)、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等を挙げることができる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
「低分子ポリオール」としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールAなどの2価のポリオール(低分子グリコール);例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズなどの3〜8価のポリオールが挙げられる。
低分子ポリオールの分子量は、通常50〜200とされる。
【0042】
「ポリエーテル系ポリオール(多官能ポリエーテルポリオール(b1)を除く)」としては、上記低分子ポリオールを開始剤とし、これにアルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2〜4個のアルキレンオキサイド)を付加して得られる重合物が挙げられ、具体的には、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、PTMG、およびエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物であるチップドエーテル等が挙げられる。
ポリエーテル系ポリオールの分子量は、通常200〜7000とされ、好ましくは500〜5000とされる。分子量が500〜5000のポリエーテル系ポリオールを使用することにより、シール材の形成時(中空糸膜モジュールの製造時)の成形加工性に特に優れた組成物が得られる。
【0043】
「ポリエステル系ポリオール」としては、ポリカルボン酸(脂肪族飽和もしくは不飽和ポリカルボン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、リシノール酸、2量化リノール酸および/または芳香族ポリカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)と、ポリオール(上記低分子ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオール)との縮合重合により得られるポリオールが挙げられる。
ポリエステル系ポリオールの分子量は、通常200〜5000とされ、好ましくは500〜3000とされる。分子量が500〜3000のポリエステル系ポリオールを使用することにより、シール材の形成時(中空糸膜モジュールの製造時)の成形加工性に特に優れた組成物が得られる。
【0044】
「ポリラクトン系ポリオール」としては、グリコール類やトリオール類の重合開始剤に、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン等、および/またはβ−メチル−δ−バレロラクトン等を、有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物等の触媒の存在下で、付加重合させて得られるポリオールが挙げられる。
ポリラクトン系ポリオールの分子量は、通常200〜5000とされ、好ましくは500〜3000とされる。分子量が500〜3000のポリラクトン系ポリオールを使用することにより、シール材の形成時(中空糸膜モジュールの製造時)の成形加工性に特に優れた組成物が得られる。
【0045】
「ヒマシ油系ポリオール」としては、ヒマシ油(ヒマシ油脂肪酸のトリグリセライド);ヒマシ油脂肪酸とポリオール(上記低分子ポリオール及び/又はポリエーテルポリオール)との反応により得られる線状または分岐状ポリエステル、例えばヒマシ油脂肪酸のジグリセライド、モノグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンとのモノ、ジ、またはトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールとのモノ、ジ、またはトリエステル等が挙げられる。
ヒマシ油系ポリオールの分子量は、通常300〜4000とされ、好ましくは500〜3000とされる。分子量が500〜3000のヒマシ油系ポリオールを使用することにより、シール材の形成時(中空糸膜モジュールの製造時)の成形加工性に特に優れた組成物が得られる。
【0046】
「ポリオレフィン系ポリオール」としては、ポリブタジエン、又はブタジエンとスチレンもしくはアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したポリブタジエン系ポリオールが挙げられる。
【0047】
その他、末端にカルボキシル基および/またはOH基を有するポリエステルにアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールも挙げられる。
【0048】
上述したポリオールのうち、ポリエステル系ポリオールおよびヒマシ油系ポリオールが好ましく、中でも、ヒマシ油系ポリオールが特に好ましく、特に、ポリオール(b3)として、硬化剤(B)の必須成分として使用されるヒマシ油系変性ポリオール(b2)に該当する化合物であることが好ましい。
ポリオール(b3)としてヒマシ油系ポリオール、特に、ヒマシ油系変性ポリオール(b2)を使用して得られる組成物によれば、成形時の作業環境に優れるとともに、シール材に要求される物性が良好な硬化樹脂を形成することができ、しかも、シール材の生産性、延いては、中空糸膜モジュール(濾過装置)の生産性の向上も図ることができる。
【0049】
ポリオール(b3)の水酸基価は20〜1500mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは100〜1300mgKOH/gとされる。水酸基価が100〜1300mgKOH/gであるポリオール(b3)を使用することにより、主剤として作業上好適な粘度を有するイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕が得られるとともに、得られる組成物によれば、耐熱性に優れた硬化樹脂(シール材)を形成することができる。
【0050】
イソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を得るために使用される多官能ポリエーテルポリオール(b1)と、ポリオール(b3)との質量割合〔(b1)/(b3)〕としては、1/99〜99/1であることが好ましく、更に好ましくは5/95〜80/20、特に好ましくは10/90〜60/40とされる。
質量割合〔(b1)/(b3)〕=10/90〜60/40であることにより、主剤として作業上好適な粘度を有するイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕が得られるとともに、得られる組成物によれば、耐熱性に特に優れた硬化樹脂(シール材)を形成することができる。
【0051】
イソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を得るための反応において、イソシアネート基含有化合物(a1)の有するイソシアネート基と、多官能ポリエーテルポリオール(b1)およびポリオール(b3)の有する活性水素基との当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、通常1.1〜130.0とされ、好ましくは3.0〜90.0、更に好ましくは5.0〜80.0とされる。当該当量比(イソシアネート基/活性水素基)を5.0〜80.0とすることにより、シール材の形成時(中空糸膜モジュールの製造時)の成形加工性に特に優れた組成物が得られる。なお、イソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を得るための反応は、通常行われるウレタン化反応である。
【0052】
イソシアネート基末端プレポリマー〔II〕のイソシアネート基含有量は、通常8〜25質量%とされ、好ましくは10〜24質量%、更に好ましくは13〜23質量%とされる。イソシアネート基含有量が13〜23質量%であるイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を使用することにより、シール材の形成時(中空糸膜モジュールの製造時)の成形加工性に特に優れた組成物が得られる。
【0053】
<イソシアネート基末端プレポリマー>
主剤(A)を構成するイソシアネート成分として、多官能ポリエーテルポリオール(b1)を使用して得られる、イソシアネート基末端プレポリマー〔I〕及び/又はイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕が含有されていることにより、本発明の組成物は、ポットライフが長くて、硬化時の反応進行が緩やかなものとなる。従って、工業用水処理装置を構成する大型の中空糸膜モジュール(中空糸膜型濾過装置)を製造する際にも適用することができる。
しかも、本発明の組成物により形成される硬化樹脂(シール材)は、硬度の温度依存性が低い(広い温度領域において温度による硬度の変化が小さい)ものとなる。また、当該組成物を使用して製造された中空糸膜モジュール(中空糸膜型濾過装置)は、濾過流量の温度依存性(温度による流量変化)、中空糸膜の分画性能の温度依存性(温度による分画性能の変化)も低い。
多官能ポリエーテルポリオール(b1)を使用しないで得られるイソシアネート基末端プレポリマーを主剤とする場合には、ヒマシ油系変性ポリオール(b2)を含有する硬化剤(B)を使用しても、硬度の温度依存性が低い硬化樹脂を形成することができない(後述する比較例1参照)。
【0054】
また、本発明の組成物においては、多官能ポリエーテルポリオール(b1)を、主剤(A)を構成するイソシアネート基末端プレポリマーを得るための原料として使用しているので、水に浸漬したときに当該水中への溶出物の量がきわめて少ない(低溶出物性にきわめて優れた非汚染性の)硬化樹脂を形成することができる。従って、多官能ポリエーテルポリオール(b1)の導入量を増加させることができ、この結果、得られる組成物により形成される硬化樹脂(シール材)における硬度の温度依存性を確実に低下させることができる。
多官能ポリエーテルポリオール(b1)を硬化剤の構成成分としてのみ使用する組成物によっては、形成される硬化樹脂における硬度の温度依存性を十分に低くすることができず、また、形成される硬化樹脂を水に浸漬したときに当該水中への溶出物の量を抑制することができない。
【0055】
<硬化剤(B)>
本発明の組成物の硬化剤(B)には、ポリオール成分として、ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸と、トリメチロールアルカンとから得られるヒマシ油系変性ポリオール(b2)が含有されている。
【0056】
(1)ヒマシ油系変性ポリオール(b2):
ヒマシ油系変性ポリオール(b2)は、ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸と、トリメチロールアルカンとから得られる変性体(ヒマシ油のトリメチロールアルカン変性体、及び/又は、ヒマシ油脂肪酸のトリメチロールアルカン変性体)である。
ヒマシ油系変性ポリオール(b2)は、ヒマシ油とトリメチロールアルカンとのエステル交換反応;ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンとのエステル反応により得ることができる。
ここに、「ヒマシ油」の主成分は、リシノール酸のトリグリセライドであり、「ヒマシ油」には水素添加ヒマシ油が含まれる。
また、「ヒマシ油脂肪酸」の主成分はリシノール酸であり、「ヒマシ油脂肪酸」には、水素添加ヒマシ油脂肪酸が含まれる。
また、「トリメチロールアルカン」としては、例えばトリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタン、トリメチロールヘキサン、トリメチロールヘプタン、トリメチロールオクタン、トリメチロールノナン及びトリメチロールデカンを挙げることができる。
【0057】
ヒマシ油系変性ポリオール(b2)の数平均分子量は150〜2000であることが好ましく、更に好ましくは300〜1200とされる。数平均分子量が300〜1200のヒマシ油系変性ポリオール(b2)を使用して得られる組成物によれば、シール材に要求される物性(特に機械的特性)が良好な硬化樹脂を形成することができる。
【0058】
ヒマシ油系変性ポリオール(b2)の平均水酸基価は80〜1600mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは120〜600mgKOH/g、特に好ましくは300〜400mgKOH/gとされる。
平均水酸基価が120〜600mgKOH/gのヒマシ油系変性ポリオール(b2)を使用して得られる組成物によれば、シール材に要求される物性(特に機械的特性)が良好な硬化樹脂を形成することができる。
中でも、平均水酸基価が300〜400mgKOH/gのヒマシ油系変性ポリオール(b2)を使用して得られる組成物によれば、シール材に要求される物性が良好な硬化樹脂を形成することができ、しかも、シール材の生産性、延いては、中空糸膜モジュール(濾過装置)の生産性の向上も図ることができる。
【0059】
ヒマシ油系変性ポリオール(b2)は、GPC測定によるトリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合、GPC測定による数平均分子量(Mn)が450以上であるピーク面積比が85PA%以上、且つ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5以下であることが好ましい。これらの条件を満足するヒマシ油系変性ポリオール(b2)を用いて得られる本発明の組成物によれば、水に浸漬したときに、当該水中への溶出物の量がきわめて少ない硬化樹脂(シール材)を形成することができる。なお、このGPC測定では、3官能のポリプロピレンポリオールから得られた検量線を用いた。
【0060】
前記溶出物の量(程度)は、日本薬局方収載の「プラスチック製医薬品容器試験法」における「水性注射剤容器試験」に準じた溶出物試験方法により測定され、試験液と空試験液との間の過マンガン酸カリウム消費量の差を指標値として表される。本発明においては、該差は1.0mL以下であることが好ましく、更に好ましくは0.7mL以下、特に好ましくは0.5mL以下とされる。
【0061】
硬化剤(B)を構成するポリオール成分としてヒマシ油系変性ポリオール(b2)が含有されてなる本発明の組成物により形成される硬化樹脂(シール材)は、接着性及び耐熱性について特に優れたものとなる。これにより、当該硬化樹脂からなるシール材(好適には、中空糸膜モジュール又は平膜モジュールに用いる膜シール材)をハウジングに接着させた後、これにスチーム滅菌処理を施してもハウジングに対する接着力が高い割合で保持される。また、当該シール材は、高温下において長時間の使用が可能となる。また、当該組成物を使用して製造された中空糸膜モジュール(中空糸膜型濾過装置)は、濾過流量の温度依存性(温度による流量変化)、中空糸膜の分画性能の温度依存性(温度による分画性能の変化)も低い。
ヒマシ油系変性ポリオール(b2)を含有しない硬化剤を、上記の主剤(A)とともに使用してなる組成物によって形成される硬化樹脂(シール材)は、硬度の温度依存性が高く、接着性及び耐熱性に劣るものとなる(後述する比較例5参照)。
【0062】
(2)活性水素基含有化合物:
本発明においては、硬化剤(B)中に、ヒマシ油系変性ポリオール(b2)以外の活性水素基含有化合物(以下、「活性水素基含有化合物(b4)」という。)が含有されていてもよい。
【0063】
活性水素基含有化合物(b4)としては、低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール(ヒマシ油系変性ポリオール(b2)を除く)、ポリオレフィン系ポリオールなどのポリオールを挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの具体例としては、イソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を得るために使用する「ポリオール(b3)」の例示化合物と同一の化合物を挙げることができる。但し、活性水素基含有化合物(b4)として使用する「ポリエーテル系ポリオール」には、更に、多官能ポリエーテルポリオール(b1)が含まれる。
【0064】
活性水素基含有化合物(b4)としては、また、低分子ポリアミンや低分子アミノアルコール(例えば、アミノ化合物のオキシアルキル化誘導体であるN,N,N´,N´−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]エチレンジアミン等の、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイドもしくはエチレンオキサイド付加物、モノ、ジおよびトリエタノールアミン、N−メチル−N,N´−ジエタノールアミン等)等といったアミン系化合物も挙げることができる。
【0065】
硬化剤(B)中におけるヒマシ油系変性ポリオール(b2)と、活性水素基含有化合物(b4)との含有割合〔(b2)/(b4)〕としては、1/99〜100/0であることが好ましく、特に好ましくは100/0とされる。
【0066】
<主剤(A)と硬化剤(B)の混合割合>
本発明の組成物において、主剤(A)と硬化剤(B)の混合割合としては、主剤(A)を構成するイソシアネート成分(イソシアネート基末端プレポリマー〔I〕および/またはイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕)の有するイソシアネート基と;硬化剤(B)を構成するポリオール成分(必須であるヒマシ油系変性ポリオール(b2)および任意である活性水素基含有化合物(b4))の有する活性水素基とのモル比(イソシアネート基/活性水素基)が0.8〜1.6となるような割合であることが好ましく、更に好ましくは0.9〜1.2となるような割合、特に好ましくは1.0〜1.1となるような割合とされる。このような混合割合で得られる組成物によれば、耐久性に優れ、水中への溶出物の量がきわめて少ない硬化樹脂(シール材)を形成することができる。
【0067】
なお、本発明の組成物には、公知のウレタン化触媒が含有されていてもよい。
「ウレタン化触媒」としては、有機スズ化合物などの金属化合物系触媒;トリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ビスジメチルアミノエチルエーテル(BDMAEA)などの3級アミン触媒等を挙げることができる。
【0068】
<シール材及び中空糸膜モジュール>
本発明のシール材は、本発明の組成物を硬化することにより得られる。
具体的には、主剤(A)と硬化剤(B)とからなる本発明の組成物を室温下に調製し、0℃〜100℃、好ましくは30℃〜80℃、更に好ましくは30℃〜60℃の温度条件下に、主剤(A)を構成するイソシアネート成分と、硬化剤(B)を構成するポリオール成分とを反応・硬化させることにより好適に形成することができる。
なお、ゲル化時間の短縮化や組成物の粘度低下を図る目的で、必要に応じて、混合前に、主剤(A)及び硬化剤(B)の各々を、30〜60℃に加温してもよい。
【0069】
本発明のシール材は、ポットライフの長い本発明の組成物から得られるので、大型の中空糸膜モジュールにも対応することができる。
本発明のシール材は、接着性に優れているので、濾過装置のハウジング基材との間に高い接着力が得られるとともに、複数の中空糸膜の集束体の端部を強固に結束させることができる。
本発明のシール材は耐熱性に優れているので、ハウジングなどの被着体に接着させた状態でスチーム滅菌処理を施しても、接着力が高い割合で保持される。例えば、ポリカーボネート樹脂からなるハウジングに接着させたシール材に、121℃の雰囲気下で20分間にわたるスチーム滅菌処理を施しても、接着強度の保持率は70%以上、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上になり、シール材に要求される耐熱性を十分に具備することができる。
本発明のシール材は、シール材として好適な硬度〔ショアD硬度で30〜85(25℃)〕を有し、かつ、硬度の温度依存性が低いので、広い温度領域において確実なシール性能を確保することができる。
本発明のシール材を水と接触させても、当該水中への溶出物の量はきわめて少ない。
本発明のシール材は、50℃の条件気下で5万回程度の繰り返し加圧を行っても破損することはなく、シール材に要求される耐久性を十分に具備する。
【0070】
このような優れた諸性能は、ポットライフが長い組成物(本発明の組成物)から得られるものであっても十分に発揮される。従って、本発明のシール材により、複数の中空糸膜の集束体の端部における中空糸膜相互の隙間が封止されてなる本発明の中空糸膜モジュール(中空糸膜型濾過装置)は、長時間の連続使用にも十分に耐えうるほどに優れた耐久性を有するものとなる。
【0071】
しかも、本発明の組成物は、長いポットライフを有するので、近年大型化の傾向にある中空糸膜モジュール(中空糸膜型濾過装置)においても、極めて安定した生産性で得ることができる。
【0072】
本発明の中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜の集束体の端部における中空糸膜相互の隙間が、本発明の組成物を硬化して得られるシール材によって封止されてなる。
本発明の中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜の集束体の端部における中空糸膜相互の隙間を本発明の組成物により封止し、当該組成物を硬化させて本発明のシール材を形成し(これにより、当該シール材によって中空糸膜相互の隙間が封止される)、当該集束体をハウジング内に収容することにより製造することができる。
本発明の中空糸膜モジュール(中空糸膜型濾過装置)の具体的構造としては、特開平11−5023号公報に記載の構造を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例によってなんら限定して解釈されるものではない。
【0074】
〔製造例1:主剤(A)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、4,4′−MDI「ミリオネートMT(商品名)」(日本ポリウレタン工業(株)製)233gと、4,4′−MDIのカルボジイミド変性体「ミリオネートMTL−C(商品名)」(日本ポリウレタン工業(株)製,イソシアネート基含有量=28.6質量%)591gとを仕込み、液の昇温及び攪拌を開始した。液温度が50℃に達したところで、下記のポリオール(b31)105gと、下記のポリオール(b11)71gとを添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、主剤(A)を構成するイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を得た。以下、これを「主剤(A−1)」という。主剤(A−1)のイソシアネート基含有量は21.0質量%、25℃における粘度は3400mPa・sであった。
【0075】
〔製造例2:主剤(A)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、4,4′−MDI「ミリオネートMT(商品名)」234gと、4,4′−MDIのカルボジイミド変性体「ミリオネートMTL−C(商品名)」596gとを仕込み、液の昇温及び攪拌を開始した。液温度が50℃に達したところで、下記のポリオール(b21)136gと、下記のポリオール(b11)34gとを添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、主剤(A)を構成するイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を得た。以下、これを「主剤(A−2)」という。主剤(A−2)のイソシアネート基含有量は21.0質量%、25℃における粘度は1900mPa・sであった。
【0076】
〔製造例3:主剤(A)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、4,4′−MDI「ミリオネートMT(商品名)」236gと、4,4′−MDIのカルボジイミド変性体「ミリオネートMTL−C(商品名)」602gとを仕込み、液の昇温及び攪拌を開始した。液温度が50℃に達したところで、下記のポリオール(b21)97gと、下記のポリオール(b11)65gとを添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、主剤(A)を構成するイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を得た。以下、これを「主剤(A−3)」という。主剤(A−3)のイソシアネート基含有量は21.0質量%、25℃における粘度は3200mPa・sであった。
【0077】
〔製造例4:主剤(A)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、4,4′−MDI「ミリオネートMT(商品名)」239gと、4,4′−MDIのカルボジイミド変性体「ミリオネートMTL−C(商品名)」607gとを仕込み、液の昇温及び攪拌を開始した。液温度が50℃に達したところで、下記のポリオール(b21)62gと、下記のポリオール(b11)92gとを添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、主剤(A)を構成するイソシアネート基末端プレポリマー〔II〕を得た。以下、これを「主剤(A−4)」という。主剤(A−4)のイソシアネート基含有量は21.0質量%、25℃における粘度は5600mPa・sであった。
【0078】
〔製造例5:主剤(A)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、4,4′−MDI「ミリオネートMT(商品名)」163gと、4,4′−MDIのカルボジイミド変性体「ミリオネートMTL−C(商品名)」735gとを仕込み、液の昇温及び攪拌を開始した。液温度が50℃に達したところで、下記のポリオール(b11)102gを添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、主剤(A)を構成するイソシアネート基末端プレポリマー〔I〕を得た。以下、これを「主剤(A−5)」という。主剤(A−5)のイソシアネート基含有量は23.5質量%、25℃における粘度は2200mPa・sであった。
【0079】
〔製造例6:主剤(比較用)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、4,4′−MDI「ミリオネートMT(商品名)」100gと、4,4′−MDIのカルボジイミド変性体「ミリオネートMTL−C(商品名)」650gとを仕込み、液の昇温及び攪拌を開始した。液温度が50℃に達したところで、下記のポリオール(b31)250gを添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、比較用の主剤を構成するイソシアネート基末端プレポリマーを得た。以下、これを「主剤(A−6)」という。主剤(A−6)のイソシアネート基含有量は19.0質量%、25℃における粘度は1700mPa・sであった。
【0080】
〔製造例7:主剤(比較用)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、4,4′−MDI「ミリオネートMT(商品名)」233gと、4,4′−MDIのカルボジイミド変性体「ミリオネートMTL−C(商品名)」591gとを仕込み、液の昇温及び攪拌を開始した。液温度が50℃に達したところで、下記のポリオール(b31)105gと、下記のポリオール(b12)71gとを添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、比較用の主剤を構成するイソシアネート基末端プレポリマーを得た。以下、これを「主剤(A−7)」という。主剤(A−7)のイソシアネート基含有量は21.0質量%、25℃における粘度は2100mPa・sであった。
【0081】
〔製造例8:主剤(比較用)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、4,4′−MDI「ミリオネートMT(商品名)」236gと、4,4′−MDIのカルボジイミド変性体「ミリオネートMTL−C(商品名)」602gとを仕込み、液の昇温及び攪拌を開始した。液温度が50℃に達したところで、下記のポリオール(b21)97gと、下記のポリオール(b12)65gとを添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、比較用の主剤を構成するイソシアネート基末端プレポリマーを得た。以下、これを「主剤(A−8)」という。主剤(A−8)のイソシアネート基含有量は21.0質量%、25℃における粘度は2300mPa・sであった。
【0082】
〔製造例9:主剤(比較用)の製造〕
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、4,4′−MDI「ミリオネートMT(商品名)」163gと、4,4′−MDIのカルボジイミド変性体「ミリオネートMTL−C(商品名)」735gとを仕込み、液の昇温及び攪拌を開始した。液温度が50℃に達したところで、下記のポリオール(b12)102gとを添加し、窒素雰囲気下、70℃で3時間にわたり攪拌混合することによって反応させて、比較用の主剤を構成するイソシアネート基末端プレポリマーを得た。以下、これを「主剤(A−9)」という。主剤(A−9)のイソシアネート基含有量は23.5質量%、25℃における粘度は1700mPa・sであった。
【0083】
〔調製例1:硬化剤(B)の調製〕
ポリオール(b21)からなる硬化剤(B)を準備した(100質量部)。以下、これを「硬化剤(B−1)」という。
【0084】
〔調製例2:硬化剤(比較用)の調製〕
ポリオール(b31)80質量部と、ポリオール(b32)20質量部とを混合することにより、比較用の硬化剤(B−2)を調製した。
【0085】
上記の主剤を得るために使用したポリオール、及び、硬化剤として使用したポリオールは、下記のとおりである。
【0086】
〔ポリオール(b11)〕
シュークローズ(官能基数=8.0)を開始剤としてプロピレンオキサイドを付加して得られる多官能ポリエーテルポリオール(b1),商品名「エクセノールEL−455S」(旭硝子(株)製)。
このポリオール(b11)について、GPCによってポリプロピレンポリオール換算の分子量分布を測定した(分子量分布を図1に示す)。また、この分子量分布から、メインピークのピークトップ分子量、面積割合、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、比(Mw/Mn)、ポリオール(b11)全体についての数平均分子量(Mn)を求めた。結果を下記に示す。
【0087】
・メインピークのピークトップ分子量:788
・メインピークの面積割合:89.1PA%
・メインピークの数平均分子量(Mn):790
・メインピークの重量平均分子量(Mw):798
・メインピークの比(Mw/Mn):1.010
・全体についての数平均分子量(Mn):619
【0088】
〔ポリオール(b12)〕
シュークローズ(官能基数=8.0)を開始剤としてプロピレンオキサイドを付加して得られる比較用の多官能ポリエーテルポリオール,商品名「アデカポリエーテルSC−1000」(旭電化工業(株)製)。
このポリオール(b12)について、GPCによってポリプロピレンポリオール換算の分子量分布を測定した(分子量分布を図2に示す)。また、この分子量分布から、メインピークのピークトップ分子量、面積割合、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、比(Mw/Mn)、ポリオール(b12)全体についての数平均分子量(Mn)を求めた。結果を下記に示す。
【0089】
・メインピークのピークトップ分子量:803
・メインピークの面積割合:60.2PA%
・メインピークの数平均分子量(Mn):811
・メインピークの重量平均分子量(Mw):846
・メインピークの比(Mw/Mn):1.043
・全体についての数平均分子量(Mn):534
【0090】
〔ポリオール(b21)〕(ヒマシ油系変性ポリオール(b2)に相当):
ヒマシ油のトリメチロールプロパン変性体「#1297X(商品名)」(伊藤製油(株)製)、平均官能基数=3.0、水酸基価=340mgKOH/g、トリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合におけるGPC測定値:Mn=450以上のピーク面積比=88PA%、比(Mw/Mn)=1.42。
【0091】
〔ポリオール(b31)〕:
ヒマシ油「URIC H−30(商品名)」(伊藤製油(株)製)、平均官能基数=2.7、水酸基価=160mgKOH/g、トリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合におけるGPC測定値:Mn=450以上のピーク面積比=99PA%、比(Mw/Mn)=1.03。
【0092】
〔ポリオール(b32)〕:
N,N,N´,N´−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、平均官能基数=4.0、水酸基価=760(mgKOH/g)
【0093】
ポリオール(b11)、ポリオール(b12)、ポリオール(b21)及びポリオール(b31)についてのGPCの測定条件は下記のとおりである。
【0094】
〔測定条件〕
(1)測定装置:「HLC−8120(商品名)」(東ソー(株)製)
(2)カラム:充填剤として、「TSKgel G2000HXL(商品名)」および「TSKgel G3000HXL(商品名)」(いずれも東ソー(株)製)をそれぞれ2本ずつ充填した4本のカラムを接続した。
(3)カラム温度:40℃
(4)検出器:RI(屈折率)計
(5)溶離液:テトラヒドロフラン(THF)(流量:1mL/min.、40℃)
【0095】
(6)検量線:以下の商品名(何れも三洋化成工業(株)製)の3官能のポリプロピレンポリオールを用いて、検量線を得た。
・「サンニックスGP−250」(数平均分子量=250)
・「サンニックスGP−400」(数平均分子量=400)
・「サンニックスGP−600」(数平均分子量=600)
・「サンニックスGP−1000」(数平均分子量=1000)
・「サンニックスGP−3000」(数平均分子量=3000)
・「サンニックスGP−4000」(数平均分子量=4000)
・「サンニックスGP−5000」(数平均分子量=5000)
(7)サンプル溶液:サンプル0.05gのTHF10ml溶液
【0096】
また、ポリオール(b21)及びポリオール(b31)について、GPCの測定方法は下記のとおりである。
【0097】
〔測定方法〕
始めに、トリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルについて、3官能のポリプロピレンポリオールを検量線として、屈折率差により検出して得られたチャートから、ピーク面積比、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めた。
次に調製した各サンプルについて、同じ検量線に基づき屈折率差により検出して得られたチャートから、始めに測定したトリメチロールアルカンヒマシ油脂肪酸モノエステルの数平均分子量(Mn)を450とした場合における、ピーク面積比、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求め、これに基いて比(Mw/Mn)を算出した。
【0098】
<実施例1〜5、比較例1〜5>
下記表1および表2に示す組合せに従って、主剤および硬化剤を、液温35℃、イソシアネート基/活性水素基=1.00(モル比)になるように混合して、ポリウレタン樹脂形成性組成物を得た。
【0099】
<ポリウレタン樹脂形成性組成物(硬化物)の評価>
[硬化物の硬度測定]
実施例1〜5および比較例1〜5に係るポリウレタン樹脂形成性組成物の各々を、減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、ステンレス製金型(100mm×100mm×8mm)に仕込んだ。これを25℃で7日間静置キュアした後に脱型し、硬化物(硬化樹脂)を得た。
得られた硬化物の各々について、10℃、25℃および70℃の各温度条件下に、ショアD硬度を測定した。測定結果および硬度比(70℃における硬度/25℃における硬度)を表1および表2に示す。
【0100】
[ハウジングとの接着性]
実施例1〜5および比較例1〜5に係るポリウレタン樹脂形成性組成物の各々を、減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、ポリカーボネート製のハウジング(44mm×10mm)に仕込み(ハウジング上に組成物の層を形成し)、25℃で7日間静置キュアして、当該ハウジング上に硬化物(層)が形成されてなる試験片を作製した。得られた試験片の各々について、ハウジングに対する硬化物の接着強度C0 (=剥離力/接着面積)を測定した。
また、得られた試験片の各々についてスチーム滅菌処理(121℃×20分間)を実施した後、同様にして接着強度Cを測定した。
初期接着強度C0 、スチーム滅菌処理後の接着強度Cおよび接着強度保持率(C/C0 )を表1および表2に示す。
【0101】
[溶出物試験]
実施例1〜5および比較例1〜5に係るポリウレタン樹脂形成性組成物の各々を、減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、離型紙上に約1〜2mmの厚みになるように仕込み(離型紙上に組成物の層を形成し)、25℃で7日間静置キュアした後、離型紙を剥離して硬化物を得た。
得られた硬化物の各々について、日本薬局方収載の「プラスチック製医薬品容器試験法」における「水性注射剤容器試験」に準じた溶出物試験方法により、溶出物の量(試験液と空試験液との間の過マンガン酸カリウム消費量の差による指標値)を測定した。
具体的には、得られた硬化物の各々を細断して、水に浸漬し、121℃による1時間の高圧蒸気滅菌処理を施すことにより試験液を得た。
他方、ブランクとして硬化物を浸漬していない(即ち水のみ)液について同様の処理を施すことにより空試験液を得た。これら両者について、各々、過マンガン酸カリウム消費量を測定し、両者の消費量の差を求めた。この差は、溶出物の量の指標値であり、この値が小さいほど、溶出物の量が少ないことになる)。消費量の差(指標値)を表1および表2に示す。
【0102】
[浄水器としての分画性能]
実施例1〜5および比較例1〜5に係るポリウレタン樹脂形成性組成物の各々を、減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、これを用いて、複数の中空糸膜の集束体の端部における中空糸膜相互の隙間が、当該組成物を硬化してなるシール材により封止された中空糸膜モジュールからなる円柱状の浄水器(中空糸部の長さ600mm・両端のケーシング断面の直径が50mm)を製造した。
これを用いて、0.1質量%の界面活性剤(ポリエチレングリコール−p−イソオクチルフェニルエーテル)溶液中に所定の粒子径のポリスチレンラテックス粒子を分散させた被処理液を濾過し、濾液のラテックス粒子の濃度を日立分光光度計(U−3400)により320nmの波長で測定し、捕捉率90%における粒子径を求めて、分画粒子径の変動を評価した。結果を表1および表2に示す。
【0103】
[ポリウレタン樹脂形成性組成物のポットライフ]
実施例1〜5および比較例1〜5に係るポリウレタン樹脂形成性組成物(主剤と硬化剤との合計=100g)の各々を、減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、25℃雰囲気下で、回転粘度計(B型、4号ローター)を用いて粘度上昇を追跡し、主剤と硬化剤との混合を開始した時点から、組成物の粘度が50000mPa・sに到達するまでの時間を、ポットライフとした。結果を表1および表2に示す。
【0104】
【表1】

【0105】

【表2】

【0106】
<実施例7>
実施例1に係るポリウレタン樹脂形成性組成物を用い、ポリスルホン中空糸膜9000本を束ねた集束体の両端部における中空糸膜相互の隙間;および当該集束体が挿入されたカートリッジケース(内径15.4cm、PVC製)と当該集束体との間を、35℃、90分間の遠心接着によりシールし、これを25℃雰囲気下で1週間静置した。
上記のようにして中空糸膜の集束体が挿入されたカートリッジケースをハウジング内にシール材を介して着脱自在に収納することにより、濾過装置として、中空糸型膜モジュールを製造した。この中空糸型膜モジュールを用いて、最高水圧200kPaで温度50℃の水の濾過運転と逆圧濾過を50,000サイクル繰り返したが、シール材部分や中空糸膜に破損は生じなかった。
【0107】
<実施例8>
実施例2に係るポリウレタン樹脂形成性組成物を用い、ポリスルホン中空糸膜22000本を束ねた集束体の両端部における中空糸膜相互の隙間;および当該集束体が挿入されたカートリッジケース(内径22.1cm、ポリカーボネート製)と当該集束体との間を、35℃、90分間の遠心接着によりシールし、これを25℃雰囲気下で1週間静置した。
上記のようにして中空糸膜の集束体が挿入されたカートリッジケースをハウジング内にシール材を介して着脱自在に収納することにより、大型の濾過装置として、中空糸型膜モジュールを製造した。この中空糸型膜モジュールを用いて、実施例7と同様に、最高水圧200kPaで温度50℃の水の濾過運転と逆圧濾過を50,000サイクル繰り返したが、シール材部分や中空糸膜に破損は生じなかった。
【0108】
上記表1に示すように、ポリオール(b11)を使用して得られた主剤(A)と、ポリオール(b21)からなる硬化剤(B)とによる実施例1〜5に係るポリウレタン樹脂形成性組成物は、何れもポットライフが長く、これらの組成物の硬化物(ポリウレタン樹脂)は、何れも、硬度の温度依存性が低く(硬度の変化が小さく)、高温で長時間のスチーム滅菌処理を施しても、ハウジング基材に対する接着強度保持率(C/C0 )が高く、水中への溶出物の量(水の汚染性)がきわめて少なく、分画性能も良好である。
これに対し、上記表2に示すように、ヒマシ油からなるポリオール(b31)を使用して得られた主剤による比較例1に係る組成物の硬化物は、硬度の温度依存性が高い(硬度の変化が大きい)ものであった。
比較用のポリオール(b12)を使用して得られた主剤による比較例2〜4に係る組成物の硬化物は、水中への溶出物の量が多いものであった。
比較用の硬化剤(B−2)による比較例5に係る組成物は、ポットライフが短く、その硬化物は、硬度の温度依存性が高く、接着強度保持率(C/C0 )も低いものであった。
【0109】
また、実施例1に係る組成物(本発明の組成物)を用いて製造された実施例7に係る中空糸型膜モジュールは、繰り返し加圧に対する耐久性が格段に優れている。
【0110】
さらに、実施例2に係る組成物(本発明の組成物)によれば、実施例8に係る中空糸膜モジュールのような大型のものの製造にも確実に適用することができる。また、実施例8に係る中空糸型膜モジュールは、繰り返し加圧に対して優れた耐久性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物(シール材)は、前述のとおり、多くの優れた性能、とりわけ優れた低溶出物性を有する。従って、医療用、工業用分離装置を構成する中空糸膜モジュール(中空糸膜型濾過装置)用のシール材(結束材)として使用することができ、特に大型の中空糸膜モジュール用のシール材として好適に使用することができる。ここに、医療用、工業用分離装置としては、具体的には、血漿分離器、人工肺、人工腎臓、人工肝臓、家庭用・工業用水処理装置等が挙げられる。
【0112】
また、本発明のポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物は、各種の物性、例えば硬度、引張強さ、接着性等に優れていることから、各種の産業用シール材、例えば電気用、自動車用、建築用、土木用シール材或いは各種の緩衝材として、また製紙、製鉄、印刷等の工業用ロール、紙送りロール等のOA機器部品を得るための組成物としても用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明用のポリオール(b11)におけるポリプロピレンポリオール換算の分子量分布を示すチャートである。
【図2】比較用のポリオール(b12)におけるポリプロピレンポリオール換算の分子量分布を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート成分を含有する主剤(A)と、ポリオール成分を含有する硬化剤(B)とからなるポリウレタン樹脂形成性組成物において;
主剤(A)を構成するイソシアネート成分として、
イソシアネート基含有化合物(a1)と、
官能基数が8の化合物を開始剤として得られるポリエーテルポリオールであって、これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリプロピレンポリオール換算の分子量分布において、分子量600〜900の領域にピークトップを有し、全ピーク面積の75%以上を占めるメインピークが存在し、当該メインピークにおける数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が1.3以下である多官能ポリエーテルポリオール(b1)と
を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーが含有され;
硬化剤(B)を構成するポリオール成分として、ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸と、トリメチロールアルカンとから得られるヒマシ油系変性ポリオール(b2)が含有されているポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項2】
イソシアネート成分を含有する主剤(A)と、ポリオール成分を含有する硬化剤(B)とからなるポリウレタン樹脂形成性組成物において、
主剤(A)を構成するイソシアネート成分として、
イソシアネート基含有化合物(a1)と、
請求項1に記載の多官能ポリエーテルポリオール(b1)と、
多官能ポリエーテルポリオール(b1)以外のポリオール(b3)と
を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーが含有され、
硬化剤(B)を構成するポリオール成分として、ヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸と、トリメチロールアルカンとから得られるヒマシ油系変性ポリオール(b2)が含有されているポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項3】
イソシアネート基末端プレポリマーを得るために使用する多官能ポリエーテルポリオール(b1)以外のポリオール(b3)の少なくとも一部が、ヒマシ油系変性ポリオール(b2)である請求項2に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られるシール材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化して得られる中空糸膜モジュール用のシール材。
【請求項6】
複数の中空糸膜の集束体の端部における中空糸膜相互の隙間が、請求項5に記載のシール材により封止されてなる中空糸膜モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−177045(P2007−177045A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375767(P2005−375767)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】